上条「誰を助けりゃいいんだよ……」 > 10


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とある高校は、昼休みだった。

上条は学校の廊下を速足で歩く。
授業を受けるためではない。小萌から話を聞くためだ。

結標淡希は小萌の同居人らしい。
手掛かりを持っているとすれば彼女だろう。

すれ違う同級生に重役出勤をからかわれながら、彼は職員室へ足を踏み入れた。


「上条ちゃああああああん!!!!」


小さな先生が飛びついて来た。



「せ、先生! どうしたんですか!?」
「どうしたもこうしたも……今までどこで何してたんですか?
 姫神ちゃんも土御門ちゃんも青髪ちゃんも上条ちゃんもいないし、
 みんな揃って連絡つかないし、先生は、先生はぁっ……」


どうやら、多大なご迷惑とご心配をお掛けしてしまっていたらしい。

小萌は昨日立てこもり事件の人質にされたばかりだというのに、
もう生徒のことしか頭にないようだった。

むしろあんな事件に巻き込まれたからこそ、
ただの無断欠席に過剰反応しているのかもしれない。


「とっとにかく、うう、上条ちゃんが無事でよかったですっ……」

泣きじゃくりながら上条の頭を撫でようとするピンク髪の教師。
背が低いので届かなかったが。


「俺は無事だし、姫神も青ピも必ず連れて帰ってみせます。
 それから――結標淡希も」

「結標ちゃんも、ですか? というか土みか」
「先生、結標がどこにいるか分かりませんか? 手掛かりになるようなことなら何でも」

真剣な瞳を向ける上条に、小萌は涙をぬぐって答える。

「それが……先生も分からなくて。
 一週間くらい前から連絡が取れなくなっちゃったのです。
 帰って来ないことはよくあるですけど、電話にもメールにも反応ないのは初めてで、
 それで心配になって、昨日はお休みして探してたんですけど……」

「それが何で打ち止めと遊園地になるんですか?」
「遊園地を捜そうとしたんです。結標ちゃんは遊園地が好きだから。
 他の場所は捜し尽くしてしまったので、一か八かで入ってみたのですよ」

そこで、打ち止めが「ミサカもミサカもー」と言いながらタックルして来たらしい。

「遊園地が好き?」
「はいー。遊園地というより、小さなお子さんがいっぱいいる所が好きみたいですね」
「……?」

結局、遊園地にも結標はおらず、そのまま人質にされ、警備員に保護され、
結標の捜索も彼らに任せて、現在に至るという。


「心当たりはみんな先生が捜した後か」
「先生が思いつくような所にはいなかったですー」

そう言って、小萌は肩を落とした。

「何かの事件に巻き込まれたかもと思うと、先生はもう心配で心配で……」

うぐぐ、と涙ぐむ見た目幼女の先生を、上条は慌ててなだめる。

「せ、先生! 落ち込まないで下さい! 俺が必ず何とかします!」
「上条ちゃんが? 気持ちは嬉しいですけど、これから午後の授業が……」
「待ってて下さい!! 先生!!」


上条は午後もさぼった。




校門の前で大人しく待っていたスフィンクスと合流し、上条は学校を出た。


警備員の詰所には、またしても黄泉川がいた。

「先生、授業は?」
「こっちの台詞じゃん。こんな所で何してる?
 さすが月詠センセんとこは問題児だらけじゃん。うらやましいよ」
「う……」


「ウチの学校の生徒が三人も行方不明だし、月詠センセの同居人もいないし、
 他にも色々問題起こってるし、警備員は大忙しじゃん。交代で授業は休んでるじゃんよ」
「そっか……。結標について分かったことを教えてほしいんだけど」
「学校さぼって何してるんだか……ま、いいか」

ため息をひとつ吐いた後、黄泉川は教えてくれた。

「ちょっと前にね、女の子が黒服の男達に襲われてるって通報があったじゃんよ。
 他の班員が駆け付けたんだけど、現場はすでに無人だった。
 その襲われてた女の子の身体的特徴が、月詠センセんとこの居候に酷似してるって話じゃん」

「黒服の男達?」
「何か、目撃情報によると、宗教団体みたいな怪しい感じの格好だったらしいじゃん」

(……魔術師……)

上条は唇を噛む。


魔術師たちが学園都市に入り込み、何かよからぬことをしているのは間違いない。
現に昨日上条も襲われたし、妹達はローマ正教の魔術師たちに捕えられている。

(一体何をするつもりだ?)


他に手掛かりはないかと尋ねるが、黄泉川は首を横に振った。

「一切なし。今頑張ってるとこじゃん。
 お前とその子の間に何があるのか知らないけど、
 先生たちに任せてさっさと学校に戻るじゃん」

「……はい」

上条は素直にその場を去った。
が、もちろん学校へは戻らない。


スフィンクスとともに近くの通りを歩きながら、上条は考える。

(結標が襲われた現場はからっぽか……)

(一応行ってみるか? ……無意味になりそうだな。
 他に何か手掛かりは……)


ふと、思いついた。

土御門から聞いていた話。


「そうだ、結標は一方通行の同僚? だったことがあるんだっけ」


あまり期待はできなかったが、上条は携帯電話を取り出し、
最近新しく登録された番号へと発信した。


コール十回。

もしや無視されているのでは、と思った所で、相手は応答した。



『이것은 좀비입니까!?』



「!? あ、一方通行……?」
『なンだオマエかよ。何の用だ』

日本語に戻ると途端に知り合いの声だということが確信できた。
間違い電話をしていなかったことにほっと安心し、上条は話し出す。

「お前、韓国にいるのか?」
『丁度いま、ソウルの妹達を救出したとこだ』
「それはよかった。ところで、結標について聞きたいんだけど」
『ハァ……?』



上条が事の次第を簡単に説明する間、一方通行は黙って聞いていた。
色々とカオスな話だが、流石第一位というべきか、彼は大体の事情を呑み込んでくれた。


『オマエ、何かズレた所を斜めに走ってるよな』
「うるさいな。いいから何かヒントない? 結標のヒント」
『つっても、ここンとこ全然顔も合わせてねェし……待てよ』

一方通行が、何か思いついたように声を上げた。
上条が先を促すが、彼はどこか歯切れの悪い調子になる。

『あー、もしかしたら……』
「何だ? 何かあるのか?」

『確か、今日は金曜日だったよな』
「ああ。それで?」

『……第一三学区のよォ』

「うん」

『……東の端になァ……』

「うん」

『幼稚園があるンだわ』

「……うん?」

『そこじゃ毎週金曜の二時からは、お歌と踊りのお稽古って決まってるらしくてよ』

「…………う、うん」

『今から駆け付ければそれに間に合うかも知ンねェから行ってみろ』

「……………………はい?」

ブツン。

と、音がして、通話が切れた。

「何だ今の……?」
「にゃー」

意味が分からなかった。

こんな時にお遊戯会の、しかも稽古なんか眺めてる場合かよと思ったが、
何の手がかりもないのも事実である。

上条はバスを使い、第一三学区へと向かった。


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