とある夏雲の座標殺し(ブルーブラッド) > とある夏雲の織女星祭(サマーフェスティバル) > 04


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~空中庭園・温室~

結標「秋沙、お酒臭い」

姫神「そう?自分では。わからない」

結標「鼻が馬鹿になるまで飲むからよ…これはもう没収ね」

姫神「あっ」

宴もたけなわの最中、姫神秋沙と結標淡希は硝子張りの温室の中に居た。
天空に咲き誇る花火、温室に咲き乱れる蘭の花に取り囲まれながら。

姫神「ひどい。こんな高いお酒。こういう時でもなければ。飲めないのに」

結標「お酒臭い秋沙は嫌い。キスしてても、あんまり嬉しくないわ」

二人の足元には四分の一ほど減った十二年物の白州が転がっており、照明も空調も落とされ暗室と化した視界の中でも――

姫神「じゃあ。もう今日は。キスしない。してあげない」

目元に朱が差し、頬が赤く染まり、首筋から胸元までほんのり上気している。
三角座りの足の間に腰を下ろし、背中から姫神に抱かれる結標。
艶々した黒髪が降りてきて、それが結標の素肌を心地良くくすぐる。

結標「馬鹿ね…私、嫌いとは言ったけれど、しないでなんて言ってないわ」

姫神「淡希はひねくれ者。吹寄さんをおいて。こんな所に私を連れ込んで」

結標「だって」

背後からかかる手に頬を擦り寄せる。滑らかな肌触り。
こうして付き合い始めてから、手先や指先のケアをお互い気を使うようになった。
シャンプーやボディーソープや、石鹸や香水を使うのが一緒になった。
部屋は別々だけれど、寝る時は同じ布団。寝間着を着ている時も、そうでない時もある。

結標「吹寄さんって人と、仲良過ぎて妬けちゃったんだもん…」

姫神「そういう淡希は。吹寄さんとあまり話さなかった。どうして?」

結標「どうして…って言われても」

姫神「吹寄さんの事。好きじゃない?」

姫神の手が結標のシャープな輪郭を滑る。まるで自分が一匹の猫になったような気さえする。
その心地良さに細めていた目を、薄く開ける。答えなくちゃいけないかなと。

結標「そんな事ないわ。秋沙の友達でしょう。いい娘だと思うわ」

握手を交わしただけでわかった。自分とは合わないタイプだと。
好悪の情を抱く以前に、噛み合わないと感じられた。
それは姫神と肌を重ねてからわかった、握手を通した手触り一つで合わないとまで感じられた皮膚感覚の鋭敏化。

姫神「嘘吐き」

スッ…と姫神の人差し指が唇に添えられる。それはいつもの、結標をたしなめる時のそれ。

結標「…やっぱりわかっちゃう?」

姫神「淡希の事は。なんだってわかる。淡希は今。拗ねてる」

スッ…スッ…と唇の上を滑る細い指先。その指を口に含みたい衝動に駆られる。
ふやけるまで舌を絡めて、抗議の意味を兼ねて歯を立ててやりたい。そして

結標「なんだかズルいわ。私は今だって…貴女の事でわからない事だってたくさんあるのに」

姫神「淡希は。私のものだから」

姫神の指先が唇から離れ…代わって手の平が目に覆い被さられる。
心地良い暗闇。伸びをしたくなるほど、気持ち良い暗黒。

姫神「嫉妬。した?」

結標「…したわよ。わざとやってるんじゃないかって思うくらい。友達だって知らなかったら、私なんてもういらないんじゃないかって…考えてしまうくらいに」

結標は以前避難所での映画鑑賞会の時に見たキスシーンのダイアローグを思い出す。
キスの時、目を閉じてする目蓋の裏に広がる暗闇が好きだと。
性格と人格の破綻したヒロインだったが、その部分だけは共感出来た。暗闇でも、優しい暗闇もあるんだと。

姫神「冗談でも。そんな事言わないで」

結標「…っ」

この夏、開けたばかりのピアスごと耳朶を食まれる。
どちらから言い出したかわからない。しかし二人は望んでこれをつけた。
猫(結標)は鎖で繋げない。だからこのピアスは鈴なのだと。

姫神「淡希は。私のもの。違う?」

結標「…違わ…ない…」

姫神「そうじゃない。でしょう」

カリッと歯を立てられる。いっそこのまま奪われたい。しかし今はダメだ。
目出度い席でこのような睦事に耽っているだけで十分背徳的なのに、これ以上を今望んではいけない。

結標「ふっ…ぅんっ!」

姫神「私が。気に入るように答えて」

あの異能者集団の中にあってさえ、結標は強い。
少なくとも並みの魔術師に引けを、並みの戦士に遅れは取らない。
しかしそんな自分が、戦う力一つ持てない少女に指先一本すら自由にさせてもらえないという現実。

姫神「また。こんな格好をしてる」

結標「だって…暑…」

姫神「誰が。口答えをして良いと。許したの」

結標「やっ…ぁ!」

丈の短いスカートから伸びる太股に指先が滑る。調律される楽器も同然だ。
姫神という奏者を得て、結標は歌う。時に高い声で、低い呻きで、甘い囁きで。

姫神「腰を冷やしたら駄目なのに。何度注意しても止めない。私は。私以外に。淡希を見て欲しくないのに」

結標「そんなの…私の…自由じゃない」

耳朶の輪郭を、耳朶の溝を、耳朶の穴を濡れた舌がくねり、這い、押し当て、滑る。
吐息をどこに漏らして良いかわからない。空気を吐き出しているような喘ぎ。

姫神「それでも。淡希を自由にしていいのは。私だけ」

姫神もやはり酔いが回っているのか常より饒舌であった。
それは結標の持つある種の嗜好と、姫神の持つある種の志向が合致している事に由来する。

姫神「淡希は。私に逆らえない」

結標「…噛みつくわよっ」

姫神「させない」

結標「…!」

フレンダが評したように、両者の力関係の天秤は常に姫神にその比重が置かれる。
年下であろうと、戦闘力がなかろうと、そんな価値観が意味を為さない観念。
上条と麦野が完全に同等の立ち位置ならば、姫神と結標は完璧な上下関係。

姫神「淡希はいつもそう。気を引きたくて。悪さをする猫と同じ」

結標「ダ…メ…耳に…息…かけないで」

姫神「今だって。こんな話は外でも出来たのに。わざわざこんな所まで。来たのだって」

先程まで一方通行と焼き肉をつついたり、女同士の輪の中で笑っていた結標淡希はもういない。
ここにいるのは、半ば望んで、半ば期待して、甘い痛みと痺れに苛まれる事を選んだ、姫神秋沙の半身。

姫神「私に。こうして。構ってほしいから。そうでしょう?淡希」

結標「…貴女が!貴女が吹寄さんとばっかりいて…私の事、全然見てくれなかったからじゃない!」

姫神「そう。私が悪かった。だから。吹寄さんを。悪く言わないで」

それを姫神は正しく理解している。それはこのひと月で深い所まで進んだ。
例えるなら、たまの休みを二人が揃って取った時――

結標『どこか行かないの?』

結標は決して『どこに行きたい?』『どこか連れて行って』とは口にしない。
遠回しで、回りくどくて、素直に思った事を口にするのが負けとでも思っているようで。だから――

結標「…また、吹寄さんを庇って…」

姫神「…安心。して?淡希」

望む形で、そのプライドを崩す。プリンの山にスプーンを入れるように。
吹寄に対するそれすら、実のところは姫神が自分に向ける注意や視線を逸らして欲しくないから。
しかし間違っても自分の口からはそれを言いたくないから。言えば認めた事になるから。

姫神「もう。淡希を置いて。どこにも行ったりしないから」

結標「…絶対よ?絶対だからね?秋沙」

姫神「うん」

そう慰めながら、正面を向かせて抱き締める。吹寄には後で謝っておこうと姫神は思った。
まさか拗ねた恋人をなだめていました、などとは流石にまだ言えないから。

姫神「本当に。淡希は猫」

一ヶ月前の事件から、結標は子猫が親猫を探すような目で見る事が時折ある。軽いトラウマなのかも知れない。

結標「猫だって…構わない。私は秋沙の…猫でいいから」

いじり過ぎると怒るくせに、ほったらかしにされ続けると拗ねる。
ご飯も気まぐれに食べたり食べなかったり、気が付くと布団に潜り込んで来たり――

結標「秋沙の…飼い猫でいいから――」

本当に、可愛いなと思った。



~酒と泪と男と女~

服部「うおおおおおおおおおおおおおおおおん!!」

上条「…なんてこった…」

一方その頃…相も変わらず焼酎の牛乳割りを片手にテーブルに男泣きに泣くのは服部半蔵であった。
それを見やるのは同じ卓についた上条当麻と男子一同である。
視線の集中する先は号泣する服部…その原因は――

フレンダ『結局、ごめんなさいって訳よ!私、麦野好きだし』

まず、真っ先に声をかけた脚線美も眩しい金髪碧眼の美少女に一刀両断され――

吹寄『上条当麻!姫神さん達どこ行ったか知らない!?あっ、ごめんなさい話の途中で…ところで何の話ですか?』

次いで、オルソラ・神裂についで豊満なバストの女子高生はそれどころですらなく…残る姫神と結標は見当たらない上に――

白井『姫神さんですの?姫神さんなら恋人がいらっしゃいますの(嘘は言っておりませんの!)』

麦野『あー…案内人?もう好きな人いるんじゃなかたっけ…たしか(中庭と図書館で見ちゃったけどフレンダの借りの件があるから本当の事言えないしねー)』

つまり…半蔵は勝負の前から決着が着いてしまっていたのだ。
せめてもの救いは、皆それぞれの事情で優しい嘘をついてくれた事くらいか。

服部「おーいおいおい…おーいおいおい!!!ちくしょお…ちくしょおおおお!」

フィアンマ「光栄に思え忍者。付き合ってやろう」

垣根「女に泣かされんのも男を磨く事になるんだ。飲めよハットリくん」

削板「こん…とは言えんな!流石に!!」

浜面「半蔵、注いでやるよ」

ステイル「………………」つ【タバコ】

土御門「し、鹿肉が運ばれて来たから焼いてやるんだぜい!ほーらディアステーキだにゃー、香ばしいんだにゃー?」

服部「お、お前ら…!」

垣根「いいって事よ。オレが本当の愛を見せてやる」バサッ

服部「!?なに羽出してんだ?!」

一方通行「くっだらねェ…」

上条「そげぶ!」ガッ!

一方通行「なにしやがンだ三下ァ!」

フラれた経験はおろか恋愛経験すらあるのかないのかわからない一方通行を除いて皆が服部に同情した。
この結末は流石の上条当麻ですら救えない。土御門など思いもよらない惨劇にステーキまで焼きはじめる始末だ。
垣根にいたっては何をするつもりなのか白翼をはためかせている

上条「(ホント…帰って来たんだよなあ学園都市)」

思わず、頭上の花火と、眼下の祭り囃子と、周囲の面々とを見渡す。
しみじみと、実感する。帰ってきたのだと。学園都市に

一方通行「なに黄昏てやがンだ三下ァ…似合わねェぞ」

上条「悪い悪い」

それを一方通行が突っ込む。間もなく上がる最後の花火に、思わず『去年の記憶』が蘇る。
『子供の頃に家族と見た』どんな花火の記憶より、鮮やかなそれを――



~ですぺらーどのつまたち~

麦野「…………………」

初春「どうかしましたか?」

滝壺「むぎのが、アンニュイ」

麦野「別にー?」

その様子を見やるは女三人。麦野沈利、初春飾利、滝壺理后の三人である。
麦野の手には強めのウォッカで作られたブラッディシーザーがあり、初春は二杯目のヴァージンブリーズ(ノンアルコール)、滝壺はメロンアイスのシャーベットだった。

麦野「ただ、男なんていくつになっても馬鹿でガキだな、って」

初春「あははは。そうかも知れませんね」

滝壺「私達、ほったらかし」

三人揃って妙な貫禄とゆとりがあるのは、海千山千の死線を超えてきた故か。
問題だらけの危なっかしい男ばかりの側にいるせいか、奇妙な共感がそこにはあった。

滝壺「籍を入れるって、本当?」

麦野「そうね。年上に生まれてちょっと後悔」

初春「上条さんの方が、年下…だからですか?」

麦野「それもある。アイツが高校出るまでがすごく長く感じられる」

滝壺「でも、ちょっと驚いてる。むぎのは、そういうタイプじゃない気がしてた」

麦野「言うようになったじゃない。滝壺」

らしくもないと自分でも思う。だが、麦野にとってそれは恋や愛という甘い成分は少ない。
今口にしているアルコールのように、やや辛い舌触りですらある。それは

麦野「…私達は、いつ死ぬかわからないから」

初春「………………」

麦野「…アイツの生き方は、命がいくつあっても足りないから。ここまで生き延びてこれたのがもう奇跡みたいなもんね」

滝壺「………………」

麦野「最初はね、思ったの。もし子供でも出来たら危ない事止めてくれるんじゃないかって。でも、無理よね。人殺しの私に子供なんて産めない。産める気がしない。私のエゴのためにそんな事出来ない」

酒には強い方だが、やや酔っているのかも知れないと思った。
しかし『人殺し』というキーワードを聞いてなお、初春は動じない。
もしかすると、本当に全てを知っていて素知らぬ顔をしているのかも知れない。
逆にそれくらい強かで腹が黒くないと垣根の側になどいられないかも知れないと麦野は思った。

麦野「だから――籍だけは入れたい。私達のどちらが先に欠けても、同じお墓に入れるように」

滝壺「…もっと、甘い生活してると思ってた」

麦野「あら?私は今でも十分幸せにしてもらってる。暇さえありゃイチャイチャしてるし、いつかゆっくり旅行だってしてみたい。やりたい事、まだまだたくさんあるよ。クソガキもいるし」

滝壺は知っている。上条と麦野の出会いは殺し合いから始まった。
心の闇全てをぶつけるような殺し合いを三度も繰り返した果てに、麦野は上条の生き方を認めた。そして結ばれた事を

滝壺「旅行って言えば、はまづらが海行きたいって誘われた」

麦野「うわー絶対アンタの水着目当てだよ。下心にもパンツ履かせろってんだ」

初春「ぱ、パンツって…!」

麦野「男なんてみんなスケベよん」

麦野は思う。こんなネガティブ思考に陥っているのを知られたらまた説教されるんだろうなと。
もちろん上条は麦野の悲愴なまでの決意を知らない。麦野もそれを語る事はない。
ただ、その程度の覚悟すらなければ寄り添い続ける事など自分は出来ないと知っているから。

麦野「(あーあ…ホント)」

心中で微苦笑を浮かべる。あの男は何度だって自分を救う、守る、助ける。
お姫様(初春)の傍らにいる王子が垣根なら、女王(自分)の側にいる騎士は上条だと誰よりも信じているから。

麦野「(馬鹿な男に…惚れちゃったなー)」



~空中庭園・天蓋~

白井「先程はお楽しみでしたの」

結標「ブッ」

白井「吹かないでいただけません事?淑女の範にもとりまーすのー♪」

温室から戻って来た結標淡希は、姫神秋沙と共にいた事を勘ぐられないよう時間をずらすべく庭園内をぶらついていた。

その直後である。カルピスを片手に空中庭園内を散策していた白井黒子と遭遇したのは。

結標「いっ、いつから見てたのよ!?」

白井「あら?わたくしほんの戯れに口にしただけですのに…まさか本当にそうでしたの?」

結標「うっ…」

白井「(軽いかまかけのつもりが大当たりですの)」

二人はガーデン内の天蓋のアーチ部分に並んで腰掛けていた。
結標の手には姫神から没収した酒瓶が、白井はコップにペーパーを添えて指先を濡らさぬようにして上品に飲んでいた。
こういう振る舞いの一つ一つが、確かにお嬢様学校の生徒であると今更ながら思い返させる。

白井「はあはあいけないお人ですのはあはあわたくしもお姉様と是非とも薔薇の園で同衾したいと言うのにはあはあお姉様はちっとも靡いて下さいませんのはあはあ」

結標「ちょっと!息が荒いわよ!本当になんでもないったら!」

白井の理想としては薔薇の園らしいが、結標の現実としては百合の城だ。
しかし現実には蘭の温室という。そして硝子張りの暗室から見上げた夜空は奇しくも満月。二人が共闘したあの日の夜そのままに。

白井「そうですの?わたくしてっきり、耽美で退廃的な、愛欲にまみれ爛れた逢瀬を想像しておりましたのに」

結標「残念ね。私はこれでも健全な関係を築いているつもり。手遅れの貴女とは違うのよ!」

白井「その割に、先程よりご機嫌斜めでないようで何よりですの」

結標「下世話な娘ねっ」

白井「お互い様ですの」

空中庭園内を走る水路と、数々の草花と木々の香りが夜風に舞い上がって二人の鼻腔をくすぐる。
この二人の救いようのない所は、これでまだ自分だけは健全で健康でいるつもりでいる感性だろう。

白井「はあー…お姉様は相変わらずあの殿方にお熱ですの。全く、どこが良いのやらわたくしにはさっぱりですの」

結標「第四位の男でしょう?一見平凡に見えるけど、あの連中の中で普通にいられるんだからもうまともじゃないわよね」

白井「おかげさまで…お姉様との熱い夏がもう半分を消化してしまいましたの。短冊にあんなにお願いを書きましたのに…“お姉様と結ばれますように”とほんの15枚ほど」

結標「…織姫と彦星も苦笑いね。欲張り過ぎるのは淑女の範からもとるんじゃないの?」

白井「途中でお姉様に止められなければあと倍は書けましたの!」

結標「よくやったわ超電磁砲(レールガン)」b

そう話しながら無意識の手がピアスを開けた耳朶に触れ行く。
そうする事でいつも姫神が感じられるような気がするから。
最初は揃い指輪も考えて…止めた。何故だか指輪では緩く軽く感じられたからだ。

結標「(やっぱり私達って歪んでる?)」

自分の身体の一部に穴を開け、そこに相手の贈り物を身につける。
その事に覚えた奇妙な安堵と充足感。それを姫神に伝えた時、意地悪く浮かべられた笑みを思い出す。

姫神『淡希は。マゾだから』

端から見れば、確かに爛れているのかも知れない。
自分達には砂糖水のような恋も、純水のような愛も似合いそうになかった。
世間一般のカップルがどうであるか、自分達のような同性のペアがどうであるかもよくわからない。いつだって自己流だ。

姫神『大丈夫…そんな淡希が。私は好き』

そう囁かれて愛でられると、不思議な優越感と二人しか知らない秘密を共有している気分になる。
それは支配という名の庇護を受けているからだとも自己分析している。
一時、結標淡希である事から解放されて相手の所有物になれる事。

結標「あー…不健全で不健康で不道徳な関係だわ」

白井「お酒と同じですの。飲み過ぎは身体に悪いとわかっていても、酔いを求めて人はそれを口にいたしますの」

結標「…貴女、本当に中学生?」

白井「ですの」

それでも真っ直ぐ歩けているのは、あの時から自分の中に生まれた真っ直ぐな芯があるから。
折れず、曲がらず、捻れない直向きな想い。今ならわかる気がした。白井黒子のごく一部が、自分の中のごく一部が、重なる。自分達にif(もし)はないとわかっていても


白井「――結標さん?」


風が吹く。天蓋の下に咲く花々を乗せて


結標「――何かしら?」


二人の髪を揺らす、あの夜のように


白井「――一度で、よろしいので」


戻らぬ刻の針が、逆回しされるように


白井「わたくしの事を――」


朧を描く蒼月が、夜風に流された雲に隠れる


白井「“黒子”…とお呼びいただけませんこと?」


そう、もう地上からは誰にも見えず、そして空からは神様すら覗けない。


結標「――いいわ」


木々がざわめき、草花が煽られ、一陣の風が吹く


結標「―――“黒子”―――」


そう、自分達にif(もし)はない。


白井「…ありがとう、ございます…」


しかし――こんな夜風の中に、ありえたかも知れないif(もし)を見てしまうから――


白井「――すっきりいたしましたの!」


だから、白井黒子は微笑む。小悪魔めいたウインクと、天使のようなスマイルで

結標「――私もね」

そして――その時

ヒュウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

結標「あら」

白井「大玉ですの」

地上から天空へと昇り行く流星雨が見えた。かなりの大玉の予感がした。
その赤い大玉は高く高く高く…限界点まで打ち上げられて行き――

ドオーン!ドオーン!ドオーン!ドオーン!


――『I L O V E K A Z A R I』――


ドオーン!ドオーン!ドオーン!ドオーン!

結標・白井「「!!?」」

夜空に、ナイアガラの滝と一緒に大文字で真紅の閃花が咲き乱れた。



~宴の終わりに~

全員「「「なにやってんだ第二位ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」」」

夜空に浮かぶ『I LOVE KAZARI』の未元物質で生成された超特大大玉で放たれた花火に一同からツッコミが入る。
ただ一名、Christian Diorのモード系スーツに身を包んだどや顔の男を除いて。

垣根「言ったろう?俺の愛に常識は通用しねえ。花束より気が利いてんだろ?」

一方通行「気が利いてンじゃなくて気が違ってンだろォがァ!?むしろテメエの頭がお花畑(メルヘン)なンだよ!!!」

こんな事になるなら復活出来なくなるまで擦り潰せば良かったと後悔するは第一位(アクセラレータ)

御坂「ごめん垣根さん…これはないわ」

垣根「安心しろ。自覚はある」

こんな奴が自分より序列が上かと思うと酔いすら醒めるのが第三位(レールガン)

麦野「キモい!キモいィィィィィィ!夏なのに鳥肌止まんねぇぇぇぇぇぇ!」

垣根「舐めてやがるなテメエ。ムカついた」

こんな男は絶滅すべきだと止まらない鳥肌をかきむしるは第四位(メルトダウナー)

心理掌握「      」

青髪「アリかナシで言うたら…アウトや」

口をポカーンとさせるは第五位(メンタルアウト)と第六位(ロストナンバー)

削板「いいぞ第二位!オレは今猛烈に感動しているぞ!」

垣根「ありがとうありがとう」

ズレた感性で涙を噛み締めるは第七位(ナンバーセブン)

滝壺「ダメ。これ以上いけない」

クワッと目を見開いて夜空を見上げるは第八位(AIMストーカー)

結標「…抜けようかな、レベル5…」

こめかみを押さえて目眩に耐えるは第九位。そして――

垣根「どうだ飾利!序列は二位だがお前の一位はこのオレだ!」

初春「垣根さんっ…!」

全員「「「うるせえェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」」」

これ以上ないどや顔の第二位(ダークマター)

上条「………………」

そして一斉に始まるレベル5によるリンチで垣根は笑いながらボコボコにされた。
全てをやり遂げたような、一片の悔いも残さぬイイ笑顔のまま。

上条「父さん…母さん――」


吹寄「な、なんなのアレ」

同じ物などない繰り返しの日々の中で

神裂「に、日本の夏が…」

白紙の行き先へ駆け出すように

服部「見せつけやがってちくしょおおおおおお!」

二本の足で大地を蹴って

御坂妹「悪趣味極まりないですね、ミサカは思い出の付箋をつける事を止めにします」

時に雑踏の中孤独を感じても

絹旗「超キモいです超台無しです」

人は自分以外の何者にもなれない。

心理定規「私、“スクール”辞めるわ…」

暗い夜を飛び越えて

黄泉川「はっはっは!誰かが馬鹿やってるじゃん!」

空に手を伸ばして

ステイル「ふん…馬鹿馬鹿しい」

小さく儚い願いを抱いて

雲川「風流もへったくれもないんだけど」
悲しみに負けずに

フレンダ「ファンタスティック!な訳よ!」

明日を求めて

打ち止め「あれいいな!ってミサカはミサカはあなたのお膝に飛び乗ってみる!」

新たなページに今日を刻んで

オルソラ「あらあら…まあまあ」

何度も道に迷って

佐天「初春逃げてぇぇぇぇぇぇ!」

広がる景色に戸惑って

小萌「お熱いのですよー!」

手にした答えに何度も問い掛けて

土御門「オレもアホだがここまで出来ないんだにゃー」

そして案外簡単な場所にそれを見つける

絶対等速「なんで祭りの日まで働かないないと行けねえんだよぉぉぉ!」

迷った時は思うがまま進め

寮監「来年こそ嫁げますように…と」

焦がれるように手を伸ばせ

姫神「これは。やりすぎ」

かけがえのない幸せの瞬間へ

禁書「すごいおっきい花火なんだよ!」

同じものなどない――希望(マスターピース)へと――

上条「学園都市は、今日も平和ですよ…っと!」


とある夏雲の織女星祭(サマーフェスティバル)・終
ツールボックス

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