とある夏雲の座標殺し(ブルーブラッド) > 15


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~第七学区・とある高校裏門~

ステイル「ふー…」

22:45分。ステイル=マグヌスは上条当麻らが通う高校の裏手で煙草をくゆらせていた。
数時間ぶりの一服は待機時間も合わせて一本、また一本と本数を増し、気がつけば片手を超える吸い殻が足元に転がっていた。

ステイル「………………」

立ち上る紫煙につられて見上げる月は蒼白く、どこか病的な輝きがあった。
思えばインデックスを追跡していた時もこんな夜だったかと懐古する。

苦々しく、そして彼女の記憶が奪われずに済んだ数日間の出来事…
思えばそこで上条当麻と縁を持った事がケチのつき始めだと思わなくもなかった。同時に――

ステイル「まさか再びあの吸血殺し(ディープブラッド)と関わる羽目になるとはね…仕事とは言え僕もツキがない」

一度目はアウレオルス=イザードが絡んだ三沢塾での一件。
二度目は『刺突杭剣』絡みでの大覇星祭にてオリアナ=トムソンが誤って姫神秋沙に重傷を負わせた一件。
そして三度目の正直とも言うべき今回は…

ステイル「(あまり愉快な巡り合わせでない事は確かだ。あの女狐め…今度は何を企んでいる)」

アウレオルス=イザードがかつて属していたグノーシズム(異端宗派)から姫神秋沙を守りつつ、かつて刃を交えたオリアナ=トムソンと組んでロンドンまで連れ帰るというこの任務。
あの最終戦争でローラ・スチュアートが命を落とさなかった事が悔やまれる。
組織の存続を安堵すると共に、半ば本気でステイルはそう思っているのだ。

黄泉川「そろそろじゃん。いざという時は私がオフェンス、そっちはディフェンスで良いじゃん?」

手塩「私達は、構わない。優先、されるべきは、安全度と、能率だ」

そして警備員(アンチスキル)のメンバーも姫神を護送するための特殊装甲車の前で最終確認に入っている。
物々しい限りだ、しかし魔術師達を相手にこの護送団でも十分過ぎるとは言えない。
そうステイルが七本目の煙草を吸い終えると――

オリアナ「はぁいお待たせ…皆さんお揃い?」

姫神「………………」

ステイル「(…来たか…)」

対象(パッケージ)のお出ましだ、とステイルは歩を進めた。
インデックスはある人物の所へ預けている。上条当麻が不在の今、実務的な信頼は置けずとも信用には足る人物の元へ――



~とある高校・保健室~

小萌「…結標ちゃん…」

禁書「(…あいさ…)」

23:12分。月詠小萌とインデックスは保健室にいた。
小萌は姫神秋沙からオリアナ=トムソンへ言伝られた『伝言』に導かれて保健室へ、インデックスはステイル=マグヌスからこの避難所に残るように言われての事だ。

禁書「(こもえにはわからないけど、これは魔術なんだよ。多分、効力の薄い時限式の魔術かも)」

横たわる結標の額に手を当て目を瞑りながらインデックスは思案する。
僅かながら力の残滓が場の空気に残されている事、結標の身体が通常よりも穏やかな脈拍、低い体温と言ったまるで仮死か冬眠に近い状態からそれを推察する。

小萌「し、シスターちゃん…結標ちゃんは大丈夫なのですかー?」

禁書「大丈夫なんだよ。じきに目を覚ますはずなんだよ」

小萌「…先生は、先生は力のない自分が悔しくって、悔しくって仕方無いのですっ…!」

小萌は歯噛みする。自分にもっと力があれば、強さがあれば、姫神秋沙や能力者狩りに晒される学生達を守れるのに、望まぬ疎開をただ見送る事などさせないのにと。
姫神は別れが辛くなるからと、吹寄を始めとするクラスメートに別れを告げなかった。
小萌にも感謝の言葉を捧げるも、顔を合わせれば気持ちが挫けてしまうと『伝言』のみを願った。
生徒をそうさせてしまう自分に、小萌は教育者として胸を痛めた。

禁書「それは…私も同じかも」

友人として姫神秋沙を見送れなかった。ステイル達のように護送につく事は出来なかった。
10万3000冊の魔導書を保管する『図書館』たるインデックスの所在がグノーシズム(異端宗派)に割れれば、その矛先がどう向かうかわからないからだ。
今は上条当麻も側にいない。神裂火織も側にいない。身を守る術はただ一つ――

禁書「(とうま…今どこにいるの?)」

鳴らない携帯電話。ようやくメールを少しずつ打てるようになってきたのに。
もう電子レンジを壊さなくなってしばらく経つのに、それを伝えたい上条当麻はいない。
こんな時、上条当麻ならどうするだろうか…それは完全記憶能力を持つインデックスをして、未だ紐解けない命題であった。




~第七学区・発電所~

御坂「!?」

23:17分。第七学区の電力のほとんどを賄う発電所にて御坂美琴は目を見開いた。

ほとんどの風力発電を戦禍によって望めなくなり、絶対的に不足している電力を補うべく力全てを注ぎ込んでいたレベル5第三位『超電磁砲(レールガン)』のレーダーに引っ掛かるものがあったのだ。

御坂「初春さん!全チャンネル開いて!何かおかしいわ!」

初春「はっ、はい!回線616から666、最大望遠でモニタリングします!」

傍らにて生き残っている監視衛星、監視カメラを開くべくキーボードを叩く初春飾利。

就寝時間はとうに過ぎ去っているが、朝から晩まで必要最低限以外は決して離れない御坂のサポートに回るためにこの時間まで起きていたのだ。しかしそれが――

御坂「…なによこれ!?」

御坂の『超電磁砲』は派手な攻撃にばかり目を奪われがちだが、自身を中心とし微弱な電磁波の反射でソナーのように周囲の状況や死角を拾える。

初春「372…1618…4257…まだです!まだ出て来ます!?」

その御坂の警戒網に『突如として』引っ掛かた『ソレ』の数…

今の今まで影も形も感知出来なかった『ソレ』が『忽然と』降って湧いてくる様子が…初春が操作するパソコンの画面に映し出される。

御坂「これは―――?!」




~第七学区・とある高校~

白井「鎧の騎士!?」

御坂『嘘みたいだけど本当なの!夢でも寝ぼけてる訳でもないわよ!初春さん!黒子の携帯にリンク出来る!?』

初春『でっ、出来ます!白井さん!今送りますから通話を切らないで見て下さい!』

23:19分。白井黒子は瞠目していた。交代時間を迎え、これより就寝しようかと思った矢先のエマージェンシーコール。

それは相変わらずほとんど不眠不休で発電所に詰めている御坂美琴からの緊急通信。
その切迫した声色からただならぬ異変を察知した白井は言われるままに耳から携帯を離し画面に目を落とす…するとそこには

白井「…お化けが出て来るにはまだ早い季節ですの。まして足が二本ありますの」

時空を越え中世から抜け出して来たかのような…白銀色に輝く甲冑の騎士団が映り込んでいた。

画面左端には初春がつけくわえたのか、カウンターまでついている、
その数6859…信じられない思いであった。それがこの避難所へ向かうルートを辿っているのだから…!

白井「(ありえませんの!これだけの人数が!大部隊が!誰にも気付かれずにこの学区までやってこれるハズが…!?)」

何もない虚空からいきなり現れでもしない限り、ここまで誰の目にも触れずに侵攻してこれるはずがない。
しかも中世的な甲冑の騎士団はそれぞれ刀剣のみならず、銃器などの近代兵器まで携えている。

その足並みは軍勢である事を差し引いても一糸乱れず、あるで統率された操り人形のような――

白井「固法先輩――!」



~とある高校・放送室~

御坂妹「わかりましたお姉様。直ちに避難勧告を発令させます、とミサカはメタルイーターを組み直しながらスピーカーをオンにします」

23:23分。御坂妹は鉄鋼破り(メタルイーター)を担ぎながら放送室のコンソール全てをオンにしながら御坂美琴と通話していた。

御坂『危ない事は絶対にしないで!もしもの時は逃げて!もしかしたら、もしかしたら…相手は人間じゃないかも知れない!』

御坂妹「…?人間でないとはどういう意味ですか?とミサカはお姉様の言葉に疑問を差し挟みます」

御坂『わからないわよ!ただ、生体電力だとか磁場だとかが全然感じられないの!中身の入ってない人形が歩いてるみたいな感じで!!』

御坂妹「人形…」

場違いに『人形』という言葉という単語に御坂妹は反応する。
それはかつて実験動物として扱われ、唯々諾々と『絶対能力進化計画』に携わっていた頃の自分を思い出すから。

御坂『いい!?約束よ!何があっても!絶対に死――』

御坂妹「わかりました。姉妹の約束ですね、とミサカは電話越しに小指を差し出します」

それを思い返せるだけ、御坂妹にも自我や感情が芽生え始めていた。
少なくとも『姉』に対し、安心させるために軽口を叩ける程度には。
そして無表情ながらもその言葉に嘘はない。『もう一人だって』欠けてやる訳には行かないから。

御坂妹「それでは避難勧告を発令するので通話を終了します、とミサカは礼儀正しく一礼しながら電話を切ります」ピッ

いつだったか、この避難所でのボランティア活動の中で『置き去り』の子供達に読み聞かせた『ピノキオ』の話を思い出す。
木彫り人形であったピノキオが『良心』を手に入れて人間になると言う話のあらましを。

御坂妹「女達の聖戦(ジハード)です、とミサカはアナウンスマイクの調子を確かめながら弾を込め直します」

『お前は世界に一人しかいない』と言ってくれた少年(ヒーロー)はもういない。
だが彼はどこかで生きている。その彼が帰って来る場所を、御坂美琴の世界を、そこで暮らす人々の営みを守るために。
御坂妹は戦う。そう、それはシンプルで――ひどく人間くさい感情。

御坂妹『皆さん―――』

彼女を『人間』にしてくれた、少年の背中が忘れられないがため――




~第七学区・瓦礫の王国~

魔術師C「おいおい!バレんの早いな!やっぱガチャガチャ鳴っから起こしちまったか!?」

兵士「さっ、さあ…私には…」

魔術師C「かーっ!夜這いの基本は抜き足差し足忍び足ってか!ま!いーや!」

とある高校に白銀の騎士団が侵攻する様をモニタリングしていた、数百名から成るグノーシズム(異端宗派)の中の魔術師が高らかな声で歌うように言った。
黒衣の魔術師達の中にあって純白のローブを身に纏った、声が大きいというより『音が外れている』ような話し方で。
御坂妹が出した避難勧告にも眉一つ潜める事なく。

魔術師C「お前らも油売ってねえで行けオラ!ブリキの兵隊(ポーン)ばっかじゃチェスにならねえだろうが!吸血殺し(クイーン)が詰めねえってなあ!」

兵士「は、はい!」

調子っ外れの声音、子供が目を輝かせるような眼差し、そして手にした興奮剤をザラザラとおやつ代わりに食らう。
――誰が信じられよう?この路地裏でくだを巻いている薬物中毒者のようなこの男が…
今や万に届こうかと言う白銀の騎士団を『操って』いる魔術師そのものだと。

魔術師C「ハッ!アウレオルスの野郎もハナからこうしてりゃ良かったんだよ!まっ!いいや!面白いおもちゃをありがとう!気が向きゃガキ共のもいだ首土産に地獄に遊びにいってやるよ!」

それは壊滅した三沢塾から回収したアウレオルス=イザードの黄金錬成(アルス・マグナ)の魔術理論体系を簒奪し…
グノーシズム(異端宗派)の構成員を偽・聖歌隊に仕立て上げ、彼がインデックスを救うために全身全霊を傾けた理論を非常にねじくれ歪んだ形で横取りした魔術

魔術師C「さあて!白銀錬成(テルス=マグナ)のお目見えだ!お代は命で払えクソムシ共があああ!!」

黄金錬成のデッドコピー、下位変換とも言うべき不完全な魔術。
グノーシズム(異端宗派)が目指す、『完全な存在』からすら外れた存在。
だが魔術師にとってはそれで構わない。劣化粗悪の力であろうとこれほどの力を引き出せるならばと




~第七学区・瓦礫の王国2~

本来、アウレオルス=イザードが組み上げた黄金錬成(アルス=マグナ)とは世界の全てをシミュレーションし、呪文で変換し、それを詠唱完了することで神や悪魔が如く力を奮う錬金術の到達点である。

しかしこの魔術師が行使する白銀錬成(テルス=マグナ)は三沢塾から回収した微々たる研究資料、魔術師の独自解釈、口伝にすら劣るねじ曲がった伝言ゲーム、それを異端宗派の構成員を聖歌隊として詠唱させ無理矢理魔術の形にしているに過ぎない。

当然、アウレオルスのように『記憶の忘却』『生命活動の操作』『空間を移動する』などといった生命や意思を持つ人間や生物などには何一つ働きかけられない。
出来る事と言えば無機物…それこそラテン語でテルス(地球・土)からなる物質を操る事だけである。
無から有を生み出すアルス(創造)など望むべくもない。だが

魔術師C「面倒臭え面倒臭え!ノック代わりに一発ぶち込んでやれ!」

命を持たず死を恐れない白銀の騎士団(マリオット)を創製し、チェスゲームの駒のように操る事は出来る。
命令に必ず従い、決して死を厭わず、近代兵器で強化し、魔術の力と聖歌隊の生命が続く限り万に匹敵する不死身の軍勢をどこにでも『錬成』出来るのだ。

御坂美琴のレーダーに突如として触れたのは、文字通り一瞬で『錬成』された軍勢が現れたからだ。
アウレオルス=イザードが『我が名誉は世界の為に』と唱えたなら、それを最低最悪なまでに歪曲した不完全な魔術、それが白銀錬成(テルス=マグナ)

魔術師C「早くしろ早くしろぉ!おっ勃ったもんが萎えちまうだろうよぉ!」

もちろん、発動にはアウレオルスのように『言葉』にせねばならず、それが現実になるには数秒から数分のタイムラグがあるため即応に難がある。
加えてアウレオルスが『鍼』で自らを奮い立たせたそれとは異なり、この魔術師は即効性のある興奮剤を発動の度に服用せねばならない。
異常なまでのハイテンションはその副次作用であり、溶けかけた脳はただの魔術を吐き出すための装置に成り下がっている。

魔術師C「ロケットランチャー!射出数は全弾!対象は…目の前だあああ!!!」

間もなく鳴き出す蝉より縮めた命を、ただ力を得るためだけに捧げた魔術師。
その命を受けて意思無き白銀の騎士達が錬成された近代兵器を構え――




~とある高校・保健室~

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

小萌「シスターちゃん!」

禁書「わぷっ!!」

23:38分。白銀錬成(テルス=マグナ)の一斉掃射を受け校舎が激しい破壊音が包む。
地鳴りのような揺れが腹の底まで突き動かすような衝撃、そして一瞬ではあれど闇夜が赤い閃光に塗り替えられる。

小萌「大丈夫ですか!?」

禁書「こほっこほっ…だ、大丈夫なんだよ!」

着弾の瞬間、小萌はその小さな身体を盾にしてインデックスとベッドの結標淡希を庇った。
衝撃に保健室の薬品棚が倒壊し、吊り下げられていた蛍光灯が全て砕け散る。

小萌「(逃げなくちゃ…!)」

また戦争だと月詠小萌は肩を震わせた。手を震わせた。足を震わせた。しかし

小萌「――シスターちゃん!手を貸して下さい!!」

禁書「!!」

歯は決して震わせない。唇を噛んでそれに耐える。
恐怖がある。不安がある。絶望がある。出来るならへたり込んでしまいたくなる。
それでも――月詠小萌は

小萌「結標ちゃんを!連れて逃げるんです!」

禁書「わ、わかったんだよ!!」

二人で未だ目覚めない結標淡希を、インデックスと共に左右より肩を貸すように引きずり下ろす。
このままでは全員の命がない。しかし小萌は小さな身体で、必死に結標を連れて出口を目指そうとする。

小萌「(もう…もう嫌なのです!)」

月詠小萌は逃げ出したくなる『人間』である前に、逃げ出さない『教師』だった。
生徒を後ろに庇えば、戦車の前にだって立ちふさがる。そういう人間だった。

小萌「(嫌なのです!!)」

自分が死を迎える事以上に、生徒が命を落とす事を恐れる…それが、月詠小萌の最大の武器にして信念だった。


そして――




~第七学区・瓦礫の王国3~

魔術師C「撃ち方止め撃ち方止め!弾幕で見えねーだろうが馬鹿野郎!!」

一方、露払いの一斉掃射を叩き込んだ魔術師は爆炎と土煙に吹き荒れた映像ばかり流すモニターを叩いて怒鳴っていた。

自分で白銀錬成(テルス=マグナ)を叩き込んだにも関わらずに、だ。

魔術師C「オラオラオラ!藁の家だろうが土壁の家だろうがレンガの家だろうが狼から逃げらんねえぞクソ豚共!尻尾出せ!噛み切ってやっから!」

興奮気味にモニターを足蹴にしながら魔術師は高らかに笑った。

警告と挨拶代わりに校舎の一つも吹き飛ばせば流石に吸血殺し(ディープブラッド)を引っ張り出せるだろうと。

もちろん、残りの能力者達も残らず回収するつもりではあるが――

兵士「映像、回復します!」

傍らの兵士がモニタリングの解析度を上げる。何割か死んだら死んだらでそれはそれ。

残った死体だって切り刻めば金になる。十字教徒にあるまじき発想である。しかし――


魔術師C「…ああー!?」



その時、モニターに映り込んだのは――




土煙が晴れて行く。


爆炎が引いて行く。


旋風が巻き起こる。


画面が正常に戻る。


熱狂が冷めていく。


魔術師C「オイオイオイ!オイオイオイ!なんだなんだなんなんだコイツはよぉ!?」


闇夜の中にも瀟洒なスーツ姿


アクセントとして鈍く輝くガボールのチェーン


洒脱さと剣呑さと皮肉っぽさを湛えた甘いマスク


それでいて視線で心臓を握り潰すかのような鋭く獰猛な眼差し


そしてなにより目立つのは――背負った月すら霞むほど真白き三対六枚の――


バサアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…!


「中身空っぽのダッチワイフが夜這いだあ?なんの冗談だクソッタレが」


天空を埋め尽くすかのような羽を舞い散らせて降り立つその男――


月明かりの下、闇夜の深きより出でし暗部の皇帝


所属――『スクール』リーダー


序列――『レベル5』『第二位』


能力――『未元物質(ダークマター)』


「悪いが今夜はそういう気分じゃねえんだよ。寝入り端叩き起こしやがって…マジでムカついたぜクソ野郎共が」


名前――『帝督』




垣根「絶  望  し  ろ  テ  メ  エ  ら」




――レベル5第二位『未元物質』垣根帝督、降り立つ――





~とある高校・グラウンド~

魔術師C「ひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっ!質の悪い冗談だ!おい見ろよ!オレ薬のやり過ぎか!?メルヘンな天使サマが見えんぞオイ!」

兵士A「(…なんだ…アレは)」

兵士B「(…ミサイルランチャーとロケットランチャーの一斉掃射だぞ…百や二百じゃきかないんだぞ)」

兵士C「(…それを…)」

とある高校から遠く離れた瓦礫の王国より、モニタリングの前でゲラゲラと溶けた歯を剥き出しにしながら腹を抱えて笑う魔術師。
その画面に映し出された光景にそれぞれ唖然・愕然・呆然とする近衛兵達

垣根「………………」

降り立つ垣根帝督。その後方に聳え立つとある高校の校舎は…元々脆く、崩れかけていた箇所を除いては―――

兵士ABC「「「(無傷で!?)」」」

そう、校舎の表面には一発も痕跡が刻まれていないのだ。
着弾した衝撃こそ校舎を揺るがせたものの、炸裂の威力を完全に遮断して…!

垣根「俺の未元物質(ダークマター)に常識は通用しねえ」

既にこの高等学校の敷地は垣根帝督が生み出した対衝撃・対高熱・対爆発に特化した『未元物質』の制圧下にある。
それこそ、核ミサイルでも叩き込まれない限り垣根に揺らぎは有り得ない。

垣根「テメエらみてえなドブ臭えネズミ如きの歯が立つほど、レベル5の看板は安かねえんだよ」

轟ッッ!と竜巻をも凌駕する暴風を生み出しながら垣根は眼下を埋め尽くし、今にもグラウンドに突入して来そうな一万弱はあろうかと言う大軍団を前に一歩も引かない。

魔術師C『おーおー格好いいねえ優男(ロメオ)!ジュリエットとのお楽しみでも邪魔されたか?ああ!?』

それを一体の白銀の騎士を通して吠える魔術師。
実力が未知数であろうと過小評価しない。自分の実力も過大評価しない。
それに垣根帝督の舞い散る六花のような白き翼が――

垣根「前半は多いに認める所だが――」

カッ!と背負った満月よりの月灯りを『回折』し、それを岩をも溶かす殺人光線に変えて放つ!
かつて一方通行に放ったそれとは比べ物にならない、正真正銘の殺人光線。

魔術師C『!』

垣根「後半はいただけねえなドブネズミ。ムカついた」

光の硫酸とも言うべき月灯りを受けて瞬く間に溶解して行く白銀の騎士団。
万を越す錬金術の騎士達の一部が飴細工よりも煮詰められたように溶け落ちて行く。しかし――

魔術師C『錬成する。現出はチャレンジャー2、対象は翼の男、弾丸は全弾発射』

次の瞬間――垣根の眼下に最新鋭のイギリス軍戦車、チャレンジャー2が何十台と『錬成』される!

垣根「!?」

さしものの垣根もこれには目を剥いた。それは戦車にではなく、いきなり虚空から現出された現象に対してだ。
同時に理解する。この声の主が用いる力は自分と同じ、常識の通用しない力…
それは垣根の未元物質(かがく)に対する白銀錬成(まじゅつ)!

ドン!ドン!ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!

轟音と共に横一列から放たれる砲撃。それは垣根・校舎・避難所を含めた全て!

垣根「通すか馬鹿野郎!!!」

それを舞い散る羽の嵐に宿した未元物質でまとめて撃墜して行く。
半ばで撃ち落とされて行く砲弾が爆裂し、夜空を赤く染める爆炎の華が次々に狂い裂く。
熱風が吹き荒れ業火が燃え盛る。大気中の酸素全てを焼き尽くすような炎の蜃気楼。

魔術師C『錬成する。現出は“六枚羽”、対象は翼の男。数は――20!!!』

ブウン!と今度は夜空に白銀のアパッチ戦闘機が『錬成』される。
それはかの浜面仕上を追跡し、絹旗最愛に撃墜された学園都市最新鋭の無人攻撃ヘリ。通称『六枚羽』…それが20機も創製される!

垣根「芸達者な野郎だ。もちっとこじんまりやりゃあパーティーで受けるぜ。ガキにな」

魔術師C『この学園都市を調べる内に気に入っちまったんだ…コイツは格好いいってな!』

垣根「いい歳こいてラジコン遊びかクソ野郎!クリスマスにでも売れ!!」

20機もの戦闘ヘリが猛禽類のように垣根目掛けて空中突進してくる!
垣根は自らの翼を未元物質に変え、熱さ数ミクロンの分子レベルで分断する刃に変える。
疾風のように襲いかかる白銀錬成の六枚羽、閃光のように夜空を旋回しながら一機、二機、三機四機と切り飛ばし宙を舞う垣根!

垣根「(なるほどな。こりゃレベル5以下は相手にならねえ)」

切り飛ばし、吹き飛ばしながらも『解析』と『逆算』を試みながら垣根は戦闘機そのもののように降下し、地面スレスレで白銀錬成の戦車を撃破、誘爆させながら思考する。

垣根「(物質が普通のものと違え。得体の知れねえ何かでねじ曲がってやがる。生成を止めんのは無理だ)」

白銀の騎士、白銀の戦車、白銀の六枚羽、みな通常の鉄鋼などの物質に混じって垣根には理解出来ない力…
『魔術の力場』に歪められ、物理的に破壊する事は出来ても生成そのものを止める手立てがない。

垣根「(質量保存の法則もへったくれもねえ。生成を止めようにも潰すアタマが見当たらねえ。消耗戦か、持久戦か、長期戦か)」

鼓膜を震わせる爆音、皮膚をあぶる業火、巻き起こるグラウンドの土埃、熱を帯びて吹き上がる風。垣根帝督1人対白銀の騎士団10413体という絶望的な兵数差。

魔術師C『どうしたどうしたぁ?オレを絶望させるんだろ?なあさせてくれよ…早くしろよおおおおおお!!!』

一方通行を除いて、御坂美琴ですら捌き切れないかも知れない戦況を互角以上に渡り合っているのはひとえに彼の絶対的戦力による。
しかも垣根の背後には学生達が未だ避難しきれていないのだ。
無辜の避難民へ一つの火の粉も飛ばさず、一万の侵略者を一つも討ち漏らせない。

垣根「慌てんじゃねえよ早漏野郎。こちとら一晩に女四人相手にした事はあるが、男相手じゃ気分が乗らねえんだよ」

だが垣根はそんな神経が焼き切れそうなプレッシャーを前にして笑う。笑いが勝手に出てしまうのだ。
敷地全体を覆う未元物質全ての演算、多数の避難民、一万体の敵兵、最低の人海戦術、最悪の物量作戦を前にして、だ。

魔術師C『出せよおおお…吸血殺し(ディープブラッド)を!姫神秋沙を!あの女を出せえええ!』

垣根「ああ?ああ…あの屋根修理の時いた嬢ちゃんか…お断りだクソ野郎。ツラがあんなら洗って出直せ」

魔術師C『?!』

かつて一方通行と交戦した時を思い出す。垣根にとって憎悪に近い敵愾心を持って挑んだ男との戦いはこんなものではなかった。
一方通行は、垣根と戦ってすら周囲に一切の被害も出さなかった。それに比べればこんなものは戦いと呼ぶに値しない。

垣根「(あのクソ野郎(第一位)に出来て…この俺に!垣根帝督に出来ねえ訳がねえだろうが!!)」

友誼や目標などでは断じてない。それは帝(みかど)の字を背負う者の矜持

いずれ倒すあの男以外の誰にも負けてなどやらないという山より高いプライド。

目の前の一万を越す敵より、ただ一つ敗北を喫しただ一人敗れ去った一(いち)の字を持つ男に対する、意地であった。

垣根「女口説くのにツラも出せねえチキン野郎が。数でゴリ押しゃ勝てると思ったか?馬鹿が。お人形遊びやりたきゃテメエの右手で一人遊びしてろ」

魔術師C『チ…キン!!?』

垣根「図星突かれてトサカに来たかチキン野郎?ポーンを(白銀兵)進めようが、ルーク(戦車)を出そうが――キング(帝督)詰ますにゃあテメエじゃ役者不足だ。こそこそ隠れるしか能のねえビショップ(魔術師)に…クイーン(女共)を守るナイト(騎士)はやれねえんだよ!!」

垣根帝督の翼が巨大に、長大に広がる。一方通行との戦いで掴んだ覚醒と進化の力。その力の全てを…今解き放つ。


全てを薙払う右の翼を羽ばたかせ


垣根「(今なら認めてやるクソ野郎(一方通行)…テメエが何を守りたかったかなんざ知ったこっちゃねえ。知りたくもねえ。けどな)」


全てを薙ぎ倒す左の翼をはためかせ


垣根「(――俺にもあんだよ!!譲れねえもんがよ!!!!!!)」


――目蓋をよぎる、花飾りの少女の笑顔―

垣根「お待ちかねだ…もういっぺん絶望しろ」


そして…極限にまで膨れ上がった力の力場…振り上げた翼成る剣が…!


魔術師C『―――!!!』


凱嵐の奔流となって振り下ろされる――!!


垣根「チェックメイトだ――クソ野郎!!!」


その瞬間、白い闇が全ての銀の兵団を『粉砕』した



~とある高校・校舎内~

白井「皆さんお急ぎになって!荷物は捨てて!第六学区まで駆け足ですの!!」

初春「押さないで下さい!押さないで下さい!小さい子から先に出して上げて下さい!!」

固法「こっちよ!裏門から!裏門から出て!早く!!」

未元物質と白銀錬成の激突の最中、風紀委員(ジャッジメント)は校舎内に取り残された学生達を避難誘導していた。
体育館に残された避難民は心理掌握(メンタルアウト)がただ一つ、『第六学区の第二避難所まで逃げよ』という命令を下している。
心理操作など誉められたものではないが、恐惶状態となり暴動に等しいそれらを統率するにはそれが最も適しているからだ。

初春「(垣根さん…!)」

幼い子供から優先して連れ立つ初春飾利の胸は今にも張り裂けそうだった。
最後にカウンターに表示された10413体という数の敵兵を相手取り、自分達を逃がすために戦っている垣根帝督を思うとだ。

初春「(絶対…絶対帰って来て下さい…垣根さん!)」

洒脱で、瀟洒で、飄々としていて、皮肉っぽくって、すぐ子供扱いして、それでもちゃんと話を聞いてくれて――

初春「(やっと戦争が終わったのに、離れ離れになるだなんて…嫌です!)」

面白い話をたくさん知っていて、それと同じくらい意地悪な悪戯をしてきて、でも泣いてる時は優しくしてくれて――

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

男子生徒A「またかよクソぉっ!オレらがなにしたってんだよ!!」

鳴り止まない轟音に苛立ちの声を上げる者

女子生徒A「もうイヤ!もうヤダぁ!」

へたり込み泣き叫ぶ者

固法「泣いてるヒマなんてどこにもないの!立って!立ちなさい!!」

その腕を引っ張り上げ奮い立たせる者

男子生徒B「お、表!表になんか魔法使いみたいなのがいるぞ!」

青ざめた表情で悲鳴を上げる者

女子生徒B「こっち!こっちに銃持ってるヤツが来る!」

目尻が裂けんばかりに見開く者

白井「お下がりになって!初春!彼等を連れて逃げて!!」

そんな彼等を守ろうとする者

初春「はい!!!」

初春飾利は駆け出す。生徒達を連れて、『能力者狩り』の人間達の手から逃れるために。
今すぐ全てを捨てて飛び出したい気持ちを押さえ込んで

初春「皆さん!こっちです!右に曲がって真っ直ぐに――」

?「誰か!誰か手を貸して欲しいんだよ!!」

初春「!?」

その時、崩落の音に混じって聞こえて来た、切なる声が初春の足を止めた

禁書「わっ、私とこもえの二人じゃ…難しいかも~!」

小萌「結標ちゃん!結標ちゃん!起きて下さい!目を開けて下さい!お願いです結標ちゃん!!」

その声のする方…そこには子供のように小さな少女と、自分とそう年の変わらない…一目見れば忘れられないような修道女姿の少女。

初春「待っ、待って下さい!今助けに行きます!そこを動かないで下さっ…貴女は!?」

慌てて駆け寄る初春が見たもの…それは両脇から肩を貸し、引きずられて意識を失っている赤髪の少女――


小萌「結標ちゃん!立って!立って下さいなのです!結標ちゃん!!」

初春「(やっぱり、この人)」

それは白井黒子が事件を追っている過程の中で知り得た情報の二重写し。
特徴的な赤毛は顔写真と異なり二つ結びではなくほどかれたまま、まるで死人のように意識を失っている。
その肩に無造作に羽織られただけの霧ヶ丘女学生のブレザーに見覚えは確信に変わる。

初春「(レベル4の…名前は確か!)」



しかし、そこへ――



ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!

傭兵1「クリア(突破)!!」

バリケードを

傭兵2「クリア!クリア!クリア!」

窓ガラスを

魔術師1「油断するな!噛みつかれるぞ!」

防火扉を

障壁を破って続々と侵入して来る兵士達、次々と雪崩込んで来る魔術師達。

初春「―――!!?」

禁書「魔術師!!!」

小萌「みんなっ!!!」

その手には軽機関銃、アサルトナイフ、古めかしい紋章の刻まれた刀剣――

白井「初春!!!!!!」

人を殺めるためだけに生み出された武器達が、人を守るために組織された風紀委員、初春飾利、月詠小萌、インデックスへと殺到する。

白井「(間に合わな―――!?)」

初春「(――死――)」

鉄矢を抜いて構える白井、矢面に立たされ動けない初春。

小萌「やめて…くださいっ!!!」

禁書「こもえ―――!!!」

飛び出し両手を広げる小萌、結標を抱えた悲鳴を上げるインデックス。

この世界にヒーロー(上条当麻)はいない。

この場にピカレスク(垣根帝督)はいない。

この物語に、救いなどない――

ドン!ドン!ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!


渇いた、銃声と共に―――



~3~

姫神『淡い希(のぞみ)だなんて。幸が薄そう』

初対面で人の名前にケチをつけるような失礼な娘に会ったのは、貴女が初めてだった。

姫神『まるで。血の色――』

初対面で人の髪に触れて来るような、喧嘩を売るような真似を許したのは貴女が初めてだった。

姫神『ない。私には帰る場所も。待っていてくれる人も。もういないから』

殆ど初対面で家に連れ帰って住まわせるような、そんな大胆な事をしたのは貴女が初めてだった。

姫神『だから。今日から少しでも大きくなりたい。背伸びじゃなくて。大きく』

私より年下なのに、それを感じさせなかったのは貴女が初めてだった。

姫神『ホタルブクロ。花言葉は。“熱心にやり遂げる”』

私より少女趣味で

姫神『―――“悲しい時の君が大好き”』

私より少しだけ物知りで

姫神『自分だけが。汚いだなんて思わないで』

私に、初めてキスしてくれた貴女――



~2~

白井『“この後”どうするかではありませんの。“この先”どうするかですの』

わからないわよ、わからないまま、ここまで私は来てしまったのだから。

削板『いや。コイツはここ(第七学区)まで自分の足で来た。誰に言われた訳でもなく!迷いながらも自分の出来る事を探して迷っていた目だ!!それにコイツは――根性が、ありそうだ』

やめて。私は貴方達のように健やかでも、逞しくも、まして強くもないんだから

フレンダ『お綺麗な生き方に逃げてるだけでしょ!汚れた自分と向き合いたくないから!誰かのためにって言い訳が自分に欲しいだけ!誉められて罪悪感を忘れたいだけ!気持ち良いよね自分の能力(ちから)を大義名分(ボランティア)に使えるのは!』

そう。これが私。貴女の言う事は間違ってないわ。腹ただしいほどに正論。
悔しいけれど完敗よ。認めたくないけれど、認めざるを得ないわ

フレンダ『わかるわよ!自分だけ可哀想な子にしないで!私だけ悪い子にしないで!結局、同じ――人殺し(あんぶ)のクセに!!』

自分でも理解してた。こんな私が、こんな眩しい世界で、こんな輝いている人達の中で生きていけるハズなんてないって

木山『――人を愛する事を“病気”などと、どの医学書にも一行たりとも書かれてなどいないよ――』

こんな私が、誰かを好きになるだなんて間違ってたんだ。こんなにも、夢に見るまでに、誰かを思うだなんて間違ってたんだ。

黄泉川『守りたいものがあるからじゃん』

私だって、守りたかった。他人(ヒーロー)任せじゃなくて、汚れた手でも良いから、大切なものを守りたかった。


姫神『―――淡希―――』



ただ、秋沙(あなた)だけを――


~1~

赤(血)と黒(死)の世界しか知らない私達が出逢った、あの青空が眩しくて。

見上げた入道雲が真っ白で、あそこへ向かって飛べる鳥はなんて羨ましいんだろう。

私は飛べない。翼も持てない私は、ただ輝かしい夏の空をなじるだけ。

貴女といるこの場所(せかい)も悪くはなかった。

貴女と見上げた夏雲(そら)も嫌いじゃなかった。

二人で受けた風が、遠くまで飛びたくても飛べない私達を慰めているみたいで。

変わった貴女、変われなかった私、こんなにもチャンス(希望)はあったのに、失って初めて気づいた、貴女という存在。

私だって本当は変わりたい。遠く遠く、離れて行く貴女の手を掴めるまで座標移動(飛び)たかった。

赤(血)と黒(死)だけじゃない。

青(空)と白(雲)もある未来(せかい)が欲しかった。

二色しかない以外の、違った世界を貴女と見たかった。


結標『私と一緒に来るなら、この手を掴んで』


違う、違う、言葉で誤魔化すな。

ありのままの自分の

本当の結標淡希(わたし)が

本当の私(むすじめあわき)が望んでいたものは―――



結標『イエスなら優しく連れて行く。ノーなら乱暴にさらって行く。選んで。好きな方を』



手を引いて欲しかったのは…私だ


誰よりも何よりも…本当に手を引いて欲しかったのは…私だ!



救 わ れ た か っ た の は … 私 の 方 だ ― ― ― ― ― ― ! ! ! ! ! !




~とある高校・校舎内2~

ドン!ドン!ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!

兵士1「ぐあっ!?」

兵士2「ぐはぁっ!!」

魔術師「ぐっ…ほ…っ!」

渇いた銃声が、全てを塗り潰したかに見えた。

初春「…!」

確かに銃弾は三人に向かって放たれた。至近距離で放たれた弾雨の全てが、三人の生命を喰い破る――はずだったのに。

倒れ込んだのは、生殺与奪の全てを握っていたはずの――侵入者達だった。

白井「マシンガンを…テレポートさせましたの!?」

放った銃弾の全てが、三人に触れる事無く

『消失』し

『転送』され

射手目掛けて『空間移動』で突き刺さったのだ。


「―――最悪の、寝覚めだわ―――」


こんな、飛来する銃弾の嵐を空間移動でカウンターを浴びせるだなんて離れ業は自分でも出来はしない。そう白井黒子は息を飲む。


「―――最低の、目覚めだわ―――」


それを可能とするならば、自分と違い手に触れる事無く物質を転送させるような高位の空間移動能力者…
そして唾を飲む白井の知る限り――そんな能力者はただ一人しかいない!!

白井「――遅刻ですのよ?寝坊でもされましたの?」

三人の影から、突き出された軍用懐中電灯、下ろされた赤髪が広がり、怜悧な美貌と鋭利な眼差しと玲瓏たる声音の――


「ええ…あんまり“目覚まし”が五月蝿くってね…こんなに気分の悪い寝起きは自分でも初めてよ」


開いた胸元、伸びやかな足、羽織っただけの霧ヶ丘女学院の制服――

白井「――おはようございます、とでも言えば満足ですの?」

同じレベル4、同じ空間移動能力者、ツインテールと二つ結び、相似形を描きながら決して交わらない光と影――


「なんとでも、おっしゃいなさいな」


風紀委員と暗部、常盤台と霧ヶ丘、鉄矢とコルク抜き、コインの裏と表――


白井「――おはようございます、結標淡希さん?」


0:00分


七日目


結標淡希の日付が変わった――
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