美琴「ちょっとアンタ!」 禁書「なぁに?」 > 07


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涙が枯れるという表現があるが、実際そう簡単には枯れてくれない。

どれくらい時間が経ったのか、御坂美琴は泣き止んだ。

今の私は、きっとみじめな顔をしているだろう。

真っ赤に腫らした目をしているだろう。

そう考えると、ますます個室から出難くなった。


「はぁ……ついてないわね」


ズルズルと鼻をすすり、溜息をつく。

インデックスは、どうしているだろうか。

もしかしたら、自分を探しているかもしれない。


「…………」


もしかしたら、また絡まれているかもしれない。


「…………………」

 

もしかしたら、悪い人について行ってしまってるかもしれない。

そしてその悪い人に騙され、監禁され、脱がされ、体をすみずみまで舐め回され「いやー、みことー、たすけてー」と悲痛な叫びをあ


「させるもんですかっ!」


バン!と勢い良く個室のドアを開く。

洗面台までダッシュし、洗顔。

その後すぐにロビーに舞い戻り、純白の修道服を捜す。


「うわぁぁぁぁぁ!」


彼女の声がした。

ロビーの奥の方、『休憩所』と書かれたプレートのぶら下がった場所のさらに奥。

そこから、彼女の叫びが聞こえた。


「インデックス!?………くっ!」


少数の客の目も気にせず、一心に駆け抜ける。

「遅かったか!」という後悔が焦りと共に背中を這い上がってくる。

休憩所の古びた木製のドア。

そのノブをつかみ、思い切り回して


「インデックス!!」


休憩所に飛び込んだ。

 

禁書「すごーい!何これー!」キラキラキラ

??「ふふふ、これはですね、1960年に公開された時に特定の映画館のみで配布された主演俳優の………」ペラペラ

美琴「でえぇぇぇぇ!」ズガシャーン!

禁書「うわっ!み、みこと、どうしたの?」

??「関西を彷彿とさせる見事な超ズッコケですね。周りの机も巻き込むっていうところが超グッドです」

美琴「な、なに、してるの?」ボロッ

絹旗「!」

禁書「えっとね、さいあいに『映画の超素晴らしさ』を教えてもらってたんだよ!」

美琴「あ、ああそうなの。心配して損したわ」

禁書「心配?」

美琴「なんでもない。こっちの話よ」

絹旗「……………」

美琴「えーっと、はじめまして?」

絹旗「ハ、ハジメマシテ。キ、絹旗最愛デス」カチコチ

美琴「あはは、そんなかしこまらなくてもいいのに」

絹旗「イ、イエ」

絹旗(なんで超電磁砲が超ここにいるんですか!?)

禁書「さいあい、どうしたの?」

絹旗「い、いや超なんといいますか、その」

美琴「まぁ、いきなり年上に話しかけられたら怖いわよね」

絹旗「い、いえ、そうではなくて」

美琴「ところで絹旗さんは何年生?」

絹旗「超中学生ですー!」ウガー!

禁書「ええっ!?そうだったの!?」ビクッ

 

絹旗「………何歳だと思ってたんですか」

禁書「11歳くらいかなーと」

美琴「同じく」

絹旗「もうそれでいいですよぅ……」ガクッ

美琴「いやー、ごめんね」タハハ


禁書「……ねぇ、みこと」

美琴「ん?」

禁書「なんでそんなに眼が真っ赤なの?大丈夫?」

美琴「うえっ!?えーっと、それはー…あの………あのね!その………」

絹旗「…………超こすってたんでしょう?乾燥、してますから」

美琴「そ、そう!それよ」

禁書「なんだ。超こすってただけかー」ホッ

美琴「インデックス、『超』がうつってるわよ」

禁書「うっ……」ブルッ

美琴「?」

禁書「ち、ちょっとおしっこ!」ダッ!

美琴「女の子がおしっこなんて言っちゃダメって何回……………行っちゃった……」

絹旗「…………」

美琴「あ、そういや自己紹介してなかったわね。アタシは」

絹旗「常盤台中学2年、御坂美琴。通称『超電磁砲』」

美琴「!!」

絹旗「ですよね?」

美琴「い、いやー、びっくりびっくり。読心系能力者かー」アハハ…

絹旗「『第四位』」

美琴「!!!」

絹旗「『麦野沈利』『布束砥信』『クローン』『妹達』」

美琴「アンタ………何者?」バチバチッ!

絹旗「私ですか?」


絹旗「『アイテム』元構成員、絹旗最愛です」

美琴「ッ!!」バチッ!

 

ざわついた空気が肌を舐めまわし、皮膚がピリピリと叫んでいる。

Lサイズのポップコーン2つの影に忍ぶ少女は、笑っていた。

不敵な笑みでは無く、あざけるような笑みでも無く、ただ「お久しぶりです」というような、友好的な笑み。

それは逆に言いようの無い不安や焦燥につながった。

何故そんな笑みを見せるのか。

何を考えているのか。

疑念が疑念を呼ぶ連鎖。

それがじゃらじゃら音をたてて私を縛りつけてゆく。


「アンタ……………今さらなんの用?」


紫電をまとわず、迎撃体制をとる。

空気は依然、弦のように張り詰めたままだ。

 

「ふっ………そんなあからさまに、超構えないでくださいよ」


木製のイスに身をゆだねている少女。

身構えるのでもなくうろたえるのでもなく、ただ憮然に泰然に、超然と座っている。

どっしりとした様子でくつろぐ少女からは、なんとも形容しがたい、言うなれば『オーラ』のようなものが感じられた。


「……………」


ゴクリ、とのどが鳴る

摂氏8℃下の環境で流れる汗が、緊迫し、切迫した心理状態を表している。


一触即発。


そんな空気が御坂美琴を支配した。

 

「何しに来たのかって聞いてるのよ」


鋭い眼光はポップコーンの林を貫通し、彼女の眼光と衝突する。

互いに眼を逸らさず、ジッとした、冷戦が展開された。

約5秒の沈黙。

永久凍土の中に放り込まれたかのようなこの時間は、


「別に。超偶然ですけど?」


彼女の一言で融解した。

 

美琴「偶然なら、なんで正体を明かしたのよ?このままの、初対面の関係で良かったんじゃないの?」

絹旗「…………まぁ、超そう言われればそうですね」

美琴「まさかアンタ、インデックスに接触したのもアタシと話すのが目的?」

絹旗「いえ、超違います」

美琴「なら、インデックスが目的なのね……………!」ギリッ!

絹旗「いや、そんなわけ無

美琴「あの子に何をしたの?勧誘?洗脳?それとも『何かをしようとしてた』のかしら?」

絹旗「いえ、ですから違

美琴「はっ!もしかして……誘拐………っ!?」

絹旗「あの、超電磁砲?話を

美琴「あーあー、そーゆーことか。……………アンタ、」


ーーーー「覚悟は………できてるんでしょうね?」バチバチバチッ!!!




絹旗「だから私の話を超聞いてください!」ガタッ!

 

美琴「何? あの子を狙ってるなら辞世の句すら言わせないわよ?」バチッ!

絹旗「………はぁ。そんな気、さらさらありませんよ」

美琴「じゃあ何?さっさと言いなさいよ」

絹旗「自分が超言わせなかったんじゃないですか……」ボソッ

美琴「なに?」ギロッ

絹旗「い、いえ、なんでも」

絹旗「簡単に言うと、近況報告です」

美琴「はい?近況報告?」

絹旗「ええ。私たち、『アイテム』の」

 

----------

 

美琴「へぇ。アンタたちも大変だったのね」

絹旗「ええ、まぁ」

美琴「でさ、原子崩しを倒した無能力者って、黒髪のツンツンで、身長170㎝くらいの男子高校生?」

絹旗「いえ、超茶髪のボサボサで、身長180㎝くらいの元スキルアウトです」

美琴「なんだ、聞いて損したわ」

絹旗「今の時間を超返還を要求します」

美琴「たった数秒じゃない。チマチマしてると、身長もチマチマしてくるわよ」

絹旗「それは超関係ないでしょう!」ウガー!

美琴「あはは……疑って悪かったわね?」

絹旗「いえ、こちらこそ、超説明不足でした」

美琴「で、あの子………誰だっけ?欧米人の………」

絹旗「……………フレンダ、ですか?」

美琴「ああ、それそれ。あの子はどうなったの?」

絹旗「いえ…………まぁ…………」

美琴「?」

絹旗「………あいつ、私たちを敵に超売ったんです」

美琴「………さしずめ、保身のため、ってとこかしら?」

絹旗「鋭いですね。それで、麦野に超粛清されました」

美琴「……………え?」

絹旗「殺されたんですよ。上半身と下半身が超真っ二つ」

美琴「いや、そんな………」

絹旗「内臓がね、切断面から超出てるんですよ。なんとも滑稽な死に様でしょう?」

美琴「………………」

絹旗「あはははっ!ホント、超いい気味ですよ」アハハハハ

美琴「……………ねぇ」

絹旗「なんですか?『そんなのダメっ!』とでも言いたいんですか?だから表の世界の人間は……」

美琴「もう、やめなさいよ」

絹旗「何がですか?『死者を冒涜するな!』とでも?」アハハ

美琴「違うわよ」

絹旗「じゃあなんですか?」アハハハ

美琴「もうさ、自分を傷つけるのはやめなさいよ」

絹旗「ッ!!」

絹旗「あはは……超何を言ってるんですか。私は何も傷ついてなんか

美琴「じゃあ、なんでそんな辛そうな顔してんのよ」

絹旗「…………」ギリッ

美琴「アンタ本当はさ、悲しいんじゃないの?その、フレンダさんが亡くなって」

絹旗「………レベル5の超推測ですか?それとも事件大好き乙女の超妄想ですか?」

美琴「さぁね。アタシには、なんにもわからないわ」フゥ

絹旗「…………」

美琴「でもね、なんだろうな。なんかさ、アンタがフレンダさんの話する時、なんか痛そうだった」

絹旗「…………」

美琴「ま、それだけよ。根拠もなにも無い、ただの妄想。忘れて」

絹旗「……………なんでですか」

美琴「ん?」

絹旗「あのシスターも、あなたも、なんでそんなに超鋭いんですか…………っ!」

美琴「………顔にでてんのよ、アンタ」

絹旗「くっ………………そうですよ」

美琴「うんうん」

絹旗「私は、フレンダが、あの裏切り者の超クソヤロウが、」

美琴「うん」


絹旗「大、好きだったんです………!」

美琴「!」

絹旗「あぁ、友達うんぬんの好きじゃありませんよ。…………性の超対象としての、好きです」

美琴「ッ!!」

絹旗「ハハッ………超、キモいですよね。…………笑って、下さいよ」

絹旗「女が女を好きになるって………どこの超D級映画ですか。ホント、気持ち悪い」ハハッ

絹旗「ま、超そーゆーことです。さ、笑って下さい」

美琴「……………ホント、滑稽よね」

絹旗「………ッ!」ギリッ

美琴「女が女を好きになるなんて、ホントに気持ち悪い。ありえないわ」

絹旗「……………」

美琴「ホント、ありえ、ない………わよ」ポロポロ

絹旗「………え?」

美琴「気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い!」ポロポロ

絹旗「えっ?あ、あの……」オロオロ

美琴「ホントになんで………」

美琴「好きになんて、なっちゃったんだろうねぇ…………」グスッ

絹旗「! …………まさか」

美琴「…………………どう?自分と同じ性癖を客観視した感想は?」グスッ

絹旗「!!」

美琴「気持ち悪いでしょ?おかしいでしょ?アンタもこんな感じ。気持ち悪いよ。アタシも、アンタも」

絹旗「……………」

美琴「アンタこそさ、笑いなさいよ。指差して、腹かかえて、笑いなさいよ」

絹旗「…………できません」

美琴「そうよね。アンタもアタシも同じ異端だもんね。アタシのことを笑ったら、自分のことを笑ってることになっちゃうんだもんね」

絹旗「……………超、違います」

美琴「何が違うの?同情?偽善?やめてよそんなの。ヘドが出るわ」

絹旗「私たちは………私たちは、」


「同じ痛みを、知ってるじゃありませんか」


美琴「ッ………!」

絹旗「あなた、さっき泣いてたんでしょう?」

美琴「…………」

絹旗「実は私も、泣いてたんですよ。さっき」

美琴「!」

絹旗「そこに、インデックスが超来たんです」

美琴「…………」

絹旗「『君は泣いてもいいんだよ』って超言われちゃいました」

美琴「…………」

絹旗「それと、こんなことも言われましたよ」

絹旗「『誰かを好きになった気持ちを大切にすることは、とってもとっても素敵なことなんだよ』って」

美琴「……………あの子が?」

絹旗「はい。私も超一瞬見失ってましたけど」タハハ…

絹旗「だからあなた……御坂も、好きになった気持ちを、大事にして下さい」

絹旗「それがたった一つのプライドに変わる日だって、来るかもしれないんですから」

美琴「…………くっ…」ウルッ

絹旗「御坂、超大丈夫ですよ」

美琴「絹旗……さん?隣に座っ、て、くれる……かな?」

絹旗「はい」チョコン

美琴「う………ううぅぅぅ」ダキッ

絹旗「……………」ナデナデ

美琴「うええっ……ううぅっ……うえぇぇ……」

絹旗「大丈夫です。大丈夫、ですよ」ナデナデ

 

 

----------

 

ジャーーーーーーゴボゴボゴボ…


禁書「ふぅ」ガチャ

禁書「いやー、大量大量だったんだよ」

禁書「『おしっこ』って言ったのに、遅くなっちゃったかも」ジャバシャバ

禁書「………ん?」ゴソゴソ

禁書「あ、ハンカチ忘れた」

禁書「う~~~、冷たいんだよ……」

禁書「…………」チラッ

禁書「温風の出る箱………『ジェットタオル』………」

禁書「つ、使っても大丈夫なのかな…?」

禁書「いきなり熱風が吹き荒れたり………しないかな?」

禁書「……て、手を入れてみるくらいなら………」ソ~~~…

ウゥ…フォーーーーン!!

禁書「ひゃわぁっ!」バッ!

禁書「あ、あったかい風が!フォーンって!フォーンって出てきたんだよ!」ビクビク

禁書「恐ろしきかな科学都市、なんだよ………!」

 

この街に来てから結構になるが、『機械』というものには まだ少々抵抗がある。

爆発する機械、『電子レンジ』。

指を挟んでくる冷たい機械、『冷蔵庫』。

目が回る機械、『洗濯機』。

私の唯一の味方は、喋る箱、『テレビ』のみだ。

そんなことを考えながら、どんどんと冷えてゆく手を合わせ、息を吹きかけた。

ふわりとした温風。

先ほどのびっくりさせる機械、『ジェットタオル』と比べて、幾分も優しく、思いやりのある風。

だが、思いやりと風勢は比例するようで、そよ風程度の温風は、私の手にまた冬を輸入した。


「みことにハンカチ借りよっかな………」


びちゃびちゃの手をブンブンと降ると、冷えた手が棒きれの様に硬くなった気がした。

 

『冷えた手』。

それから、いたずらを思いついた。

氷のように冷たい手を、誰かの暖かい背中に押し付けるという悪魔の計画。

標的はすでに決まっていた。

御坂美琴である。


「むっふっふ、わたしの怖さ、思い知るといいんだよ」


そう一人でつぶやき、猫のような足運びでトイレを出る。

休憩室の木製のドア。

それをそっと開けた。

 

(さぁ、覚悟を………………あれ?)


なんだか、空気がおかしい。

あの2人しかいない休憩室全体の空気が、なんだか『重み』のようなものを孕んでいるような気がする。

磨りガラスすら はめこまれていない、薄い木製のドア。

それを薄っすらと開き中を伺うも、2人いる席は見えない。

もう少し開かなければならないようだが、なんだか、開いてはいけないような、そんな感じがする。

本当に漠然とした、言うなれば『女のカン』。

それがドアを開けることを阻害していた。

 

(なんだろう………?)


恐る恐るドアを、少しずつだが開いていく。

キィィという音。

それと共に、見える2人の姿。


「ーーーー!」


さっき見た、映画を思い出した。

同性愛者のA子、ノーマルのB子。

私はもちろん後者で、前者は異端だと思う。

おそらく日本国の大体数の人間が前者であろう。

そう思うのは、私が、私が所属する環境が、『A子的性癖』とはあまり関係の無いところにいるからなのだろうか。

まぁとにかく、前者は異端である。


が、

 

 

(……え?なんで?)


見えるのは、泣きながら抱き合う2人。

さっきの映画で聞いたレズビアンを指す言葉、『百合』という言葉がポップアップしてきた。


(え………?みことってもしかして……)


ざわり。

胸の奥、心の隙間、そこに釘が打ち込まれた様に身動きが取れなくなる。


(い、いやいや、わたしだって、さいあいを抱きしめたんだよ。そうだよ。あれは、みこと なりの慈悲なんだよ)


必死に自身を洗脳するも、なかなか上手くいかない。

『友達がレズビアンかもしれない』。

そんな疑念が浮かんでは消え、大きくなってまた浮かぶ。

 

『泣いている絹旗最愛を慰めていた』という理由なら、美琴が抱きつき、泣く必要は無い。

『絹旗がせがんできた』という理由なら、応じた美琴も同類だ。


(違うよね?そうだよ、違う違う。みことがレズビアンなワケが)


そこまで思考した時、御坂美琴が絹旗最愛を強く、深く抱きしめた。

絹旗最愛もそれに応じる。

その姿はまさに思い人同士だった。


(みことは………)

(みことは、レズビアンなのかな?)

(だったら、ちょっと汚らわしいかも………)


踵を返し、もう一度、トイレへ向かう。

寒い個室の中、考えることは一つ。

友人、御坂美琴のことだ。

 

(ねぇみこと、どうして?)


返答は、返ってこない。


(どうして?)


胸の中、頭の中、音が反響し、私の孤独を浮き彫りにする。


(どうして?)


冷えた身体に鞭を打つような洋式便器の非情さが、私を凍えさせた。


(どうして?)


ねぇ、みこと、


「どうして…………どうして、わたしじゃないの?」


不意に、頬を冷たい液体が撫でた。

インデックスには、その正体が分からなかった。

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