絹旗「私が馬鹿っぽい……?」5


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浜面(ついに手に入れたぞ、一日限定十個の手作り大福! 早速茶でも沸かすかな)

絹旗「おや浜面、その箱は何ですか?」

浜面「黒蜜堂の限定大福。いやー、一度食ってみたかったんだよな」

絹旗「むむ、なんだか超美味しそうですね」

浜面「……やらねえぞ」

絹旗「そう言われると無性に食べたくなってきます」

浜面「おい止めろよ?」

絹旗「そんなこと言わずに一口だけ」

浜面「お前の一口は容赦がないんだよ!」

絹旗「今なら私の胸に超触らせてあげる! ……かも」

浜面「ばっ、馬鹿お前! そんなことしたくねえっての!」

絹旗「そんなこと言いながら超動揺しているようですが」

浜面「ああもう、何でもいいから今はこっちにくんな!」

絹旗「待て待てー!」

浜面「絶対嫌だぁあああ!」

絹旗「超待ってください浜面!」

浜面「だから嫌だっつの!」

絹旗「どうして私から逃げるんですか!?」

浜面「白々しい! この大福は俺のだ! こればかりは譲れねえ!」

絹旗「超座布団投げっ!」

浜面「いてっ」

絹旗「超隙ありです!」

浜面「ああっ、俺の大福がぁあああ! テメェこら返しやがれ!」

絹旗「きゃー! 超襲われるー!」

浜面「誰がお前を襲うかっつの!」

滝壺「……」

滝壺(どうしてかな。あの二人のやり取りを見てると胸が痛い)




浜面「とうとう捕まえたぞ!」

絹旗「超まずいです盛った童貞のせいで私の貞操が超ピンチです!」

浜面「その発言はツッコミ待ちか!?」

絹旗「うわぁ、突っ込み待ちだなんて流石浜面超やらしい」

浜面「ちげーよ! 俺が言ったのはあくまでボケとツッコミのツッコミであってだなあ!」

滝壺「なんでやねん」

浜面「え?」

絹旗「はい?」

滝壺「……ごめんね」

浜面「あーいや、別に謝ること無いさ。ちょっと驚いただけだ」

絹旗「そういえば滝壺さんは笑ったら駄目ゲームで超優勝しましたよね。
    やはり笑いには一家言ある人だったのでしょうか」

浜面「あん時は凄かったよなあ」

絹旗「私達のキレの悪いやり取りを前に滝壺さんのツッコミ魂が超刺激されてしまった! こんなところでしょうか?」

滝壺「ううん、私はただ……」

浜面「絹旗、お前なあ」

滝壺(よかった。はまづらは分かってくれたみた―――)

浜面「マジ冴えてるじゃねえか!」

滝壺(なんでやねん!)

絹旗「そうと決まれば浜面、これから笑いの超特訓です!」

滝壺「えっ?」

絹旗「滝壺さんを超満足させる笑いを提供できるようにしましょう!」

浜面「ああそうだな。他でもない滝壺の為だ、質の高い笑いを目指そうぜ!」

絹旗「もぐもぐ……。ええ、頑張りましょう!」

浜面「って、どさくさに紛れて大福食ってやがるだとぉおおお!?
    ちくしょうっ! おいコラ待て、ふざけんな!」

滝壺「あ……」

滝壺(行っちゃった……。ただ二人に混ざりたかっただけなのに……)




―――練習後―――



浜面「布団が吹っ飛んだ!」

絹旗「今日は風が超強いんですね」

浜面「いやお前ここは突っ込めよ!」

絹旗「きゃっ、服の裾が風で捲れ上がりました!」

浜面「ここ室内だから!」

絹旗「ぴらーん」

浜面「今自分で捲ったよな!?」

絹旗&浜面「どうもー、ありがとうございました」

滝壺「……」

滝壺(どうしてこうなったの?)

滝壺(でも二人とも楽しそう。羨ましいな)

浜面(あちゃー、無反応か……)

絹旗(す、滑った……?)

滝壺(決めた、自分の気持ちをはっきり言おう)

滝壺「あのね二人とも、違うの」

絹旗「違うと言いますと?」

滝壺「実はね、私はただ二人に混ざりたかっただけなの」

浜面「なるほどな、三人コントをご所望か!」

滝壺「もういや」




絹旗「ハムとレタスを挟んで……」

麦野「当番でもないのに台所に立つだなんて珍しいわね」

絹旗「麦野ですか。ええ、まあたまには」

麦野「浜面にでも食べさせるの?」

絹旗「どうしてそこで浜面の名前が出てくるのか超理解しかねます!」

麦野「あら、ハズレだったかしら?」

絹旗「……当たりですが」

麦野「やっぱりねー。あ、そういえばアンタ告白したりしないの?」

絹旗「こここ告白っ!? そそそそそんなことまだとても!」

麦野「まだ、ねぇ」

絹旗「あっ」

麦野「つ・ま・り! 今はまだ決心はつかないけどいつかはそうしたいってことかにゃー?」

絹旗「うぅ……」

麦野「あーらら、真っ赤になっちゃって」

絹旗「ああもうっ、あんまりからかわないでください! 麦野の超意地悪っ!」




絹旗「浜面、遊園地に行きますよ!」

浜面「は? なんでまた急に」

絹旗「カナミンのショーがあるんです。超せっかくなので一緒に見に行きましょう」

浜面(そういや俺カナミン好きってことになってんだっけ)

浜面「そうだな。遊園地には長いこと行ってないしいい気分転換になるかもしれん」

絹旗「異性と超二人で遊園地なんて浜面には初めての経験でしょうね」

浜面「図星なのが悲しいな……。って、そういうお前はどうなんだよ」

絹旗「ふふん、浜面と一緒ですよー」

浜面「いやなんでちょっと得意げなんだっつの」

絹旗(サンドイッチを作ったことは直前まで超秘密にしておきましょう。その方が超面白そうですし)

垣根「狙撃手、仕事の時間だ」

狙撃手「内容は?」

垣根「今後ピンセット入手の障害となりそうなアイテムを始末しろ。
    今回の対象は絹旗最愛。こいつの情報は伝えるまでもないな?」

狙撃手「当然。資料は完全に頭に入っている」

垣根「サポートはいるか?」

狙撃手「後始末さえ徹底してくれれば問題ない」

垣根「そうか」

心理(何もかも腑に落ちない命令ね)

心理「ねえ、どうしてあんな指示を出したの?」

垣根「決まってんだろ、邪魔な勢力を削ぐためだよ」

心理「それは嘘。アイテムの核は麦野沈利の破壊力と滝壺理后の追跡力にあるもの。
    いくらでも代替が効く絹旗最愛を殺しても意味が無いわ」

垣根「さっすが心理定規先生は聡いねえ」

心理「ちゃかさないで! ねえ、貴方何を隠してるの?」

垣根「何かを隠しているのはお互い様だろ?」

心理「それはそうだけど……。とにかく、スクールを私情の為に使うようなことだけはよしてちょうだい」

垣根「ハンっ、アレイスターとの直接交渉権を得ようっつー俺の野心にのってきた癖に何言ってんだか」

心理「はぁ、ああいえばこう言う。口の回るチンピラはこれだから手に負えないわ」

垣根(絹旗と狙撃手の相性は最悪、第四位相手の方がまだ不意の付きようがあるかもしれないぐらいだ)

垣根(だがだからこそ狙撃手を出した。絹旗の噛ませ犬としてな)

垣根(今回の目的は絹旗がどの程度暗部に染まっているかを観察すること)

垣根(絹旗が狙撃手を生かしておくか、もしくは殺すにしても躊躇いを見せるようなら、まだ染まり切っていないと言える)

垣根(もし倒した狙撃手を容赦なくぶっ殺すようなら……その時は、また違ったアプローチが必要になるな)



心理(ねえ垣根、私は心配よ。あなたは感情が昂ぶると周りが見えなくなるところがあるから)

心理(私、あなたが思うほど図太くないよ。これでも年相応には憶病なの)

心理(好意を持った相手が死ぬ度に自分の心をいじり、その好意を無関心に変換する)

心理(今までだって誰かが死ぬたびにそんなやり方でなんとか耐えてきたんだもの)

心理「あんな胸糞悪い能力の使い方、貴方に対してはさせないでよね」

垣根「あ? なんか言ったか?」

心理「さてね、空耳じゃないかしら」




絹旗「超到着です!」

浜面「はぁー、けっこう混んでるな」

絹旗「そうですね」

浜面「あー絹旗、そのだな」

絹旗「何でしょう?」

浜面「手ぇ繋がないか?」

絹旗(ままっ、まさか浜面の方からそんなことを言いだしてくれるなんて!)

絹旗「超仕方ないですねえ、超特別に手を繋いであげます!」

浜面「おう」

絹旗(もしかして浜面も私のこと好きでいてくれる……とか? ふ、ふふふ、とうとう私の時代がきたのでしょうか!)

浜面(こいつちっこいからな、迷子になったら困るし拒否されなくてよかった)

浜面「そういやショーは何時からなんだ?」

絹旗「今パンフレットで確認します。……どうやら次のショーは十一時半からみたいですね」

浜面「サンキュ。あと一時間近くあるんだな」

絹旗「それまでは別のアトラクションで時間を潰しましょう」

浜面「メリーゴーランドとか行っとくか?」

絹旗「私はそんなに子供じゃありません!」

浜面「ははは、悪い悪い」

絹旗「もうっ、今度子供扱いしたら超怒りますよ」

浜面「んじゃ何に行きたい? 俺は絶叫系だろうがなんだろうが割と平気だけど」

絹旗「私だって超大人なので何でも平気です!」

浜面「それならお化け屋敷とかどうだ? 何でもここのはやたら怖いと評判らしいぞ」

絹旗「浜面が行きたいのならいいですよ。もっともC級ホラー映画で超鍛えられた私には超余裕でしょうが」

絹旗「ここがお化け屋敷ですか。超暗いだけでちっとも怖くないじゃないですか」

浜面「まあそういうなって、本番はこれからだ」

絹旗「これではホラーとしてはC級以―――ひっ!?」

浜面「おおー、立体感のあるCG映像とは流石学園都市」

絹旗「そっ、そうですね。今のはまあまあ迫力があったかも―――ぎゃっ!?」

浜面「今度の映像もまた精巧だな。うわっ、触ってみるとリアルに生温けぇ!」

絹旗「あああ温かな気体を放出して超それらしくみみ見せているようですね!」

浜面(どもってるどもってる)

絹旗「へ、へへーん! こんなの全っ然怖くないです超余裕です!」

浜面「とか言いながらお前ガチで怖がってんだろ」

絹旗「ばっ、馬鹿なこと超言わないでください! 誰がこんな子供だましなんかに―――いやああああっ!!」

浜面「無理すんなっての」

絹旗「うううぅ」

絹旗(こんなんじゃ絶対心の中で超笑われてますよね……)

浜面「ほら、背中おぶされ」

絹旗「えっ?」

浜面「俺が出口まで連れてってやる。怖かったら目をつぶってていいからさ」

絹旗「はっ、浜面の助けなんか要りま……」

絹旗(いえ、変に強がるのは止めましょう。せっかく浜面が優しくしてくれたんです、私ももう少し素直にならないと)

絹旗「えっとですね、浜面の言う通り本当は超怖かったんです。だからその……、ありがとうございます」

浜面「元はといえば俺がお化けやしきに行こうって言いだしたんだ。当然の責任だって」

絹旗「そんなことないですよ。これが麦野やフレンダだったら私のことを何とからかうか、想像しただけで超嫌になります」

浜面「ははっ、違いねえ」

絹旗「浜面の背中は超暖かいから好きです」

浜面「そうか? ありがとな」

絹旗「どういたしまして。あ、ずっとおぶったままで重くないですか?」

浜面「心配ねえよ。お前は出るとこ出てな――ゴフゥ!!」

絹旗「超余計なこと言わないでください!」

浜面「ててて……。そう気にすんなっての。まだ成長期なんだしこれからだこれから、うん!」

絹旗「当然です! 将来的には超ナイスバディになってみせます!」

浜面「と、無い胸を張る絹旗最愛であった」

絹旗「これから超締めますがいいですねよろしい超締めます。窒素ヘッドローック!」

浜面「ぐおおおおっギブギブギブぅううう!」

浜面「よしよし、やっとこさ出口だ」

絹旗「そういえばお化け屋敷の出口はショーの会場の超近くでしたよね」

浜面「へえー、お前よく地図見てんだな。そんなこと意識してなかった」

絹旗「えっへん、絹旗サマを舐めてもらっちゃ困ります!」

浜面「わー凄い凄い」

絹旗(この上なく棒読みなのが超気になりますがまあ良しとしましょう)

絹旗「ちょっと早いですが席についておきません?」

浜面「そうだな、どうせ今からじゃ大したことできないしそうすっか」

絹旗「座る席はあまり前にはしないでおきましょう。前の方に大友が座ると小友の超邪魔ですので」

浜面「大友に小友? なんだそりゃ?」

絹旗「大きなお友達小さなお友達の略ですよ。超常識なのに浜面知らないのですか?」

浜面(どうしてだろう、知ってはいけない部類の常識な気がするのは)




どうも、突然ですが半蔵です。
色々ありましたが遊園地で気ぐるみの中の人やってます。

係員「台詞は大丈夫かい?」

半蔵「ええ、一通り頭に叩き込みました」

係員「カナミンショーは今日の目玉だ。敵の子分役とはいえしっかり頼むよ」

半蔵「任せて下さい」

一度まっとうな手段で金を稼いでみよう。
そう決心して斡旋してもらったこの仕事だが、これが意外とやりがいがある。
さて、ステージ脇から観客席を見渡して一つ気合いを入れなおすとするか。

半蔵「うっし、今日も張り切って頑張―――」

浜面「つーかお前いつまで背中にいるんだよ。これじゃ座れねえじゃねえか」

絹旗「ええー、いいじゃありませんか減るものでもないのに」

半蔵「ぶうううううっ!?」

何やってやがるんだあいつ!?
背中に小学生ぐらいの少女背負ってアニメキャラのショーに来るとか予想外すぎるだろ!

浜面「離れろっつの絹旗!」

絹旗「いーやー! 振りほどかれるー!」

半蔵「随分楽しそうだなお前」

浜面「誰が楽しいか! こちとら必死だっつの! ……って、うおっ!? どうして半蔵がここに!?」

半蔵「ここでバイトしてんだよ。というかそれはこっちの台詞だ。
    お前こそこんなとこでどうしたんだ? 背中の子のことも気になるが」

浜面「色々あってな。守りたいもんとやりたいことがどっちもできちまったのよ」

絹旗(ま、守りたいもの……)

半蔵「そいつは羨ましいこって。ま、なんにせよよかったじゃないか。……少しだけさみしい気もするがな」

浜面「よせよせ、根っこは何も変わってねえよ」

半蔵「相も変わらずアッシー君ってか?」

浜面「大きく間違っちゃいねえけど身も蓋もない言い方する奴だなオイ」

絹旗「浜面、この人は誰ですか?」

浜面「ああすまん、置いてけぼりにしてたな。こいつは半蔵、俺のダチだ」

絹旗「ふーん、浜面のお友達ですか」

半蔵「よろしくな、絹旗さん」

絹旗「へっ? どうして私の名前を?」

半蔵「お前らの痴話喧嘩、遠くからでも丸聞こえだったぞ」

絹旗「ちっ、痴話喧嘩ってそんな!」

浜面「バーカ、そんなんじゃねえっての」

絹旗「むっ……」



――――――



狙撃手(ターゲット確認。距離よし風よし機材よし)

狙撃手(ターゲットの半径五メートル以内の人影二。許容範囲内。)

狙撃手「時刻11:03、作戦を開始する」




半蔵「それにしてもお前に年下趣味があったとはな。てっきりボイン好きなんだとばかり」

浜面「だからちょっと待て! さっきから勘違いしているようだがコイツは―――」

浜面が弁解しようとしたその時、唐突に銃弾が飛来した。

絹旗「ぐっ!?」

浜面「絹旗っ!」

弾は絹旗の頭に正確に向かい、皮膚に触れる寸前で窒素の壁にぶつかって弾け飛んた。
予想だにしていなかった衝撃に絹旗は思わず顔を歪める。

絹旗(折角の楽しい時間を邪魔するなんてああもう超むかっときました)

絹旗「お二人とも超離れていて下さい。恐らく脳姦趣味の超変態の狙いは私です」

浜面「んなことできるかよ!」

自分だけ逃げることを良しとしない浜面。
そう言って貰えたことに対する嬉しさは絹旗の中に確かにある。
だがそこはリアリストの少女のこと、二人を逃がすのが最善手だという考えは覆らなかった。

絹旗「はっきり言ってお二人が側にいると超やりにくいんです」

浜面「くっ……」

半蔵「行くぞ浜面」

悔しそうに俯く浜面の背を無理やり押し、半蔵は離れた位置へ駆けていった。

絹旗「それでいいんです、浜面」



狙撃手(不意打ちでも血一滴流さないところを見ると、やはりいくら通常弾を撃ち込んでも無駄なのだろう)

狙撃手(早々に変化球に切り替えるとするか)

狙撃銃の先に手をかざす狙撃手。
すると銃の周囲に小さな電光がほとばしった。

狙撃手「さあ、これならどうだ」

彼女の能力はレベル3の電撃使い。
電気を纏わせた銃弾、それが彼女の切り札だった。



絹旗(第二弾がこない。私に銃はきかないと諦めたのでしょうか)

絹旗(いえ、それは楽観的に過ぎます。わざわざ私を超狙ってくるような相手が窒素装甲の存在を知らないとは思えない)

絹旗(となるとこれは違う種類の攻撃の準備期間?)

暗部での経験から編み出したその想像は正しかった。
次なる弾丸が絹旗を襲い、思考をつんざく。

絹旗「うああっ!!」

絹旗(この痺れは……なるほど、電撃ですか)

絹旗(弾丸に能力を付与するとは超器用な真似をする相手です。電力自体は大したこと無いのが救いでしょうか)

実は弾丸にのせられた電撃は、本来なら掠っただけで人の意識を奪いかねないレベルのものだった。
しかし膨大な質量の窒素がその電撃を大幅に削り取り、結果として絹旗の身には大したダメージがいかなかったのだ。

絹旗(さて、と。これからどう反撃したものか)

心の中でそう呟き、狙撃手のいる方向を睨みつける。
絹旗は二発の銃弾から襲撃者の位置におおよその見当をつけていた。

絹旗(こちらにも火器があれば超手っ取り早かったのですが……。こんなことなら飛び道具を持ってくるんでしたね)



狙撃手(まさかこの攻撃も通用しないとは……)

狙撃手の見通しは相当に甘かったと言える。
確かに彼女は窒素装甲の対衝撃性の強さについては十分に把握していた。
だが同時に自分の能力を過信し、結果として碌に対抗策を練らないまま作戦に挑んでしまったのだ。

狙撃手(これが人の少ない場所ならば爆発物を使うという手もあった。だがここでは目立ちすぎる)

彼女は当初手っ取り早く仕事を片づけるつもりでいた為、とにかく油断を突きやすそうなタイミングを狙って襲撃をおこなった。
しかし事が長引くとなると日中の遊園地というシチュエーションはとても荒事を行いやすい環境だとはいえない。
自分の行動の軽率さを後悔しながら引き金を引く。

絹旗「ぐうっ!」

再び電撃弾を撃ち込まれ、絹旗はその場に膝を突いた。
しかしその状態でも視線は狙撃手から離すことがない。
狙撃手はだんだん焦りを隠しきれなくなってきた。

狙撃手(このまま撃ち続けても埒が空かん。かといって攻撃を止めれば即座に距離を詰められるだろうから身を引こうにも引けん)

狙撃手(今日は裏工作に力を入れていない。消音器を使っているとはいえ、長引けばアンチスキルが駆けつけてきて事態がややこしくなる恐れもある)

狙撃手(考えろ、一体どうすればこの状況を切り抜けられる)

引き金を引きながらも次の手を考える狙撃手。

狙撃手(そうだ、絹旗本人は無理でもあの男なら……)

ついさっきまで絹旗が楽しげに会話していた男、浜面のことを思い浮かべる。

狙撃手(絹旗は暗部の人間。知り合いが撃たれようが一切動揺せず、むしろ自分から狙いが逸れたことを幸いに私へと接近してくるかもしれない)

狙撃手(普段なら避けたい不確実な賭けだ)

狙撃手(だがそれでも状況を打開するにはこれしかない。あの男を撃ち、動揺を誘って隙を作る)



浜面「絹旗……」

浜面は沈痛な面持ちで絹旗のことを見守っていた。
銃弾に襲われてうめき声を上げる絹旗を見るたびに彼の心は痛み、彼女の元に駆けつけたいという衝動が堪え切れなくなりそうになる。
浜面のそんな内心を表情から悟った半蔵は彼の気持ちを他に向けさせようと口を開いた。

半蔵「つーかよ、一体全体お前はどんな世界にいるってんだ?」

浜面「見ての通りだよ。ある意味スキルアウトよりも泥まみれ血塗れな、そんな場所」

でもな、と浜面は続ける。

浜面「幸か不幸か俺はそんな場所に居続けたいと思っちまったんだ」

半蔵「はあーっ、つくづく難儀な奴だなお前」

浜面「違いねえ」

浜面は自嘲めいた苦笑いを浮かべる。
自分に銃口が向けられていることに彼はまだ気が付いていない。
狙撃手を睨みつけていた絹旗だけがそのことをいち早く察し、青ざめた顔で大声を出した。

絹旗「浜面ぁ! 横へ飛んでください!」

浜面「は? 一体何言っ―――」

そして浜面の胸が真紅に染まった。



浜面(な、んだよ、これ……。ああそうか、撃たれたんだな、俺)

半蔵「浜面ぁああああっ!」

絹旗「う、ああ……」

絹旗(私の、私のせいです。きっとさっきまで私と一緒にいたから浜面は……)

浜面「絹…旗………、お前は……自分の心配を……」

絹旗「そそ、そんなの超無理です! だって浜面が!」

半蔵「助けは俺が呼ぶ。絹旗さん、あんたは周りに警戒を」

絹旗「わ、分かりま……した……」

絹旗は狙撃手がいた方に視線を戻したが彼女は既に姿を消していた。

絹旗(位置を変えて再度こちらを狙ってくる可能性もあります。まだ油断はできません)

絹旗は警戒心を緩めず周囲に目を凝らし続けたが、狙撃手が再び姿を現すことはなかった。
数分後救急隊員が駆け付け、浜面は絹旗と半蔵に付き添われながら病院に搬送されていった。



狙撃手「はあっ、はあっ、はあっ……」

垣根「いやー、お疲れお疲れ」

狙撃手「リーダーが何故ここに?」

垣根「不思議だよなー。ほらあれだ、もしかして運命の出会いってやつなんじゃね?」

狙撃手「真面目に答えて!」

垣根「っせーな。何だっていいだろ、テメェが作戦失敗したことに比べりゃよ」

狙撃手「っ……!」

垣根「そう怯えるなって、俺達仲間じゃんよ」

狙撃手「……」

垣根「ま、こう見えて俺は器がでかいんでね。許してやるよ」

狙撃手「すまない……」

垣根「思わぬ収穫もあったことだしな」

狙撃手「収穫というと?」

垣根「や、何でもねえ、こっちの話だ」

垣根(絹旗が他人の怪我に動揺できる程度には人間味を残していると分かった。今回はそれで良しとしよう)



浜面「やれやれ、入院二週間だとさ」

半蔵「お前もしぶといな」

浜面「うっせえ」

半蔵「んじゃ俺は行くわ、午後の仕事があるしな」

浜面「おう。……サンキュな、半蔵」

半蔵「ん」

絹旗「……」

浜面「そーう暗い顔すんなって。そりゃまあ怪我したのはあれだけどさ、こうして生きてるんだし」

絹旗「そういう問題ではありません。ごめんなさい浜面、私のせいで……」

浜面「何言ってるんだよ。これは別にお前のせいじゃないだろ?」

絹旗「いいえ私のせいなんです! 私が浜面を誘いさえしなければ!」

浜面「だからそれが違うってんだ。怪我の原因は銃を撃ってきた奴、それ以上でも以下でもない」

絹旗「ですが……」

浜面「それに前言っただろ? お前の辛いもんは俺が全部受け止めるって。
    百歩譲ってお前がこの怪我の原因の一端を担っているとしても、それならまあ諦めがつく」

絹旗「浜面……」

絹旗「私はあなたのサラッとそういうことが言えるところ、好きですよ」

浜面「ふはははは、単細胞馬鹿だからこそできることもあるってことだ!」

絹旗「……」

浜面「あ、あら? 突っ込みとかフォローとか無し?」

絹旗「私には時々浜面が超眩しく見えます」

浜面「へっ、俺が眩しい?」

絹旗「学園都市にきてから辛いことがいっぱいありました。
    その内暗いことばかり考えるようになって、自分の人生は一体何なんだろうとまで思い始めて……」

浜面「……」

絹旗「本当は普通の女の子が羨ましかった。誰かの手を握りたいっていつも、血に汚れた身なのに一丁前に。
    でもね、そんな後ろ向きだった私が貴方のおかげで作れたんですよ。サンドイッチを」

浜面「サンドイッチ?」

絹旗「浜面には言ってませんでしたが実はほらこのバッグの中に!
    あ、あれ? さっきの戦闘で超崩れてしまったみたいですね、あはは」

浜面「絹旗、お前……」

絹旗「でも作れたんです、誰かのことを思って何かを。今まで壊すばかりだったこの私が。全部あなたのおかげなんです」

浜面「それは買いかぶりだって」

絹旗「客観的に見てそうだとしても、私の中の浜面はそんな存在なんです」

浜面「どれどれ、一つ拝借」

絹旗「ちょ、ちょっと浜面! それ超潰れていますよ!」

浜面「せっかくお前が作ってくれたんだ、食べなきゃ勿体ないだろ? ……うん、美味いじゃないかこれ!」

絹旗「そ、そんな超ぐちゃぐちゃなものを無理して食べることないのに……」

浜面「無理なんかしてないっての。俺は自分が食べたいと思ったから食べてるんだよ」

絹旗「……」

浜面「なあ絹旗、よかったら今度またサンドイッチ作ってくれないか?」

絹旗「……はいっ! あなたが超食べたいものなら何でも作ります!」

浜面「何でも? んじゃ毎朝味噌汁を、なんつってな」

絹旗「は、浜面がそれを超望むのなら」

浜面「へっ!? お、オーケーなの!?」

絹旗「じょじょっ、冗談です超冗談です! ずずず図に乗らないでください浜面の癖に!」

浜面「ちょ、待て、今触られると傷口がブフゥ!」

絹旗「は、浜面ぁああああああああ!!!?」



浜面「入院期間プラス一週間だそうです」

絹旗「超面目ありません……」

浜面「はあーっ、三週間も味気ない病院食を食わなきゃならねえのか」

絹旗「あっ、それなら私が何か作って持ってきます!」

浜面「本当か? それならお願いしようか」

絹旗「超任せておいてください! えっと、手始めに明日は何が食べたいですか?」

浜面「そうだな……。んじゃやっぱり、サンドイッチを」

絹旗「分かりました。今度は具を超変えてみますね!」

浜面「おう、期待して待ってるな」
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