【最終話・終幕! 落ちこぼれ英雄譚!! (後編)】


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 佐天涙子は、学園都市で改造された無能力者である。


才能無しと烙印を押され、その通り、凡俗として過ごしてきた。

彼女はアルカイザーとなったあとも、『最高の英雄』ではなかった。

勝っては調子に乗り。
負けては悔しがり。

それはそれは、凡庸な少女のままだった。


だから、彼女には助けが必要だった。

幸い、彼女には友達がいた。
たくさん、たくさん友達がいた。

そして今も、それは増え続けている。

浅く広い関係かもしれない。
深い相手は数えるほどかもしれない。
その数えるほどの何人かも、数年後にはそこに居ないかもしれない。

それでも、彼女はみんなと、仲良くしたいと思っていた。


自分を支えるモノが、『力』ではなく、『人』だと知っているから。


だから彼女は、もうきっと、二度と望まない。

英雄になることなんて望まない。

大切な人を守る。
大切な日常を過ごす。
大切な未来へ進む。

それが、彼女の望みだから。


だから、これでこのお話は、もうおしまい。



【最終話・終幕! 落ちこぼれ英雄譚!! (後編)】




黒子「ここまでで結構ですの」

上条「けど……」


役目を果たした上条を地上に降ろす。
上条は、まだ不服そうに口元を動かしている。


黒子「辛辣ですが、これ以上できることはありませんの」

上条「……」

黒子「……あなたにも、待っている方がいらっしゃるのでは?」

上条「それは……確かに……」

黒子「今は、その方と一緒に居てあげるのが、あなたのするべきことですわ」


そう言って、黒子は肩にかかった髪をかき上げた。
コットンが翼を広げ、彼女を背に乗せて飛び立った。

地上に残された上条が、別れ際に大声で尋ねる。


上条「じゃあ……お前のするべきことはなんなんだ!!」


黒子は、振り返らずに答えた。


黒子「決まってますの! 私はお姉さまのパートナーですのよ!!」


迷い無くそう宣言し、少女は去っていく。

小さくなる背中を見送って、上条も、自宅へと走っていった。


これで、この話における彼の活躍は終わりである。

二つの世界を股にかける少年も、この物語の中では、ただの「協力者A」にすぎない。
これはあくまで、彼女たちの物語なのだから。




美琴「何かしら……?」


ビル群の中に佇む白い巨体。
真の首領は、たった一度大きく咆えたのを最後に、じっとしたまま動かない。

腕のビーム銃や、例の『反重力クラッシャー』で暴れるかと思いきや、ピクリともしない。

まったくの静止。


美琴「……不気味ね」

佐天「嵐の前の静けさ……ですか?」


美琴のとなりには、顔半分が露出した佐天涙子。
仮面の破れた彼女のことを、アルカイザーと呼ぶのは憚られる。

ひょっとしたら、今この瞬間こそ、佐天が目指していたものなのかも知れない。
「御坂美琴の隣に、対等な者としてならぶ」
それは、名と顔を伏せた、アルカイザーの姿では成し得なかったこと。

御坂美琴の友人、佐天涙子その人が、素顔のまま、同格の戦士として立っている。

その背中を、初春は不思議な気持ちで見つめていた。


そのとき――沈黙が破られた。
真の首領の目玉が裏返り、紅く点滅する。


佐天「あれ……何やってるでしょう?」


真の首領の頭部が、ゆっくりと開いた。

そして、その中から――


美琴「UFO……よね?」


銀の円盤が、無数に飛び立っていく。
空を埋め尽くす大軍勢。


地の底から響くような声が、学園都市中に轟く。


『I came back』 (私は帰ってきた)


『But, there is no whereabouts of me』 (だが、ここは私の居るべき場所ではない)


『I don’t permit』(許せない)


『Judgment X…』


言い終えるやいなや、百機を超える円盤の軍勢が、地上に対して爆撃を始めた。

ミサイルだ。

無数のミサイルが、豪雨の如く降り注ぐ。


美琴「――――」


一瞬の出来事に、脳が理解を受け付けない。

まるで映画のワンシーン。
まるで現実味が無い。



UFOの群れが、あっというまに第七学区を火の海に変えた。



初春「何……これ?」

美琴「嘘……冗談よね? また、幻覚よね?」


街が燃えていく。
住み慣れた景色が崩壊して、そこら中から阿鼻叫喚が聞こえる。

蹂躙。
戦争。

侵略戦争の光景――――


そこへ――

「何を呆けてるの? 悪の首領との最終決戦なんでしょ?」

美琴「え……あんたは!?」


火の海の中から、人影が近づいてきた。
常盤台の制服を着た、年端もいかない少女。

レベル5である美琴に、対等に口をきく慇懃無礼な態度。


美琴「……心理掌握『メンタルアウト』……!?」

心理「ごきげんよう。超電磁砲『レールガン』」


美琴と並ぶ、常盤台のもう一人のレベル5。
第五位。
心理掌握。


佐天「この人が、第五位……?」

心理「ごきげんようアルカイザーさん。あら。そんなに驚いては馬鹿みたいよ?」

佐天「は……えぇ!?」

美琴「……何をしにきたのよ? まさか手伝いにじゃないでしょ?」

心理「ちょっと人助け」

美琴「は?」

心理「うん。さびしんぼさんのお子ちゃまが居るみたいだから」



心理「ちょっと。あのデカイ子どもを助けてやってくれない? ねぇ、ヒーローさん?」


こともなげに、彼女は言った。




地獄と見紛う火の海の中、まだ、この街の住人は希望を捨てていない。

崩れ落ちた建物が、瓦礫の山になって鎮座する。
それを細腕で掘り返そうと、一人奮闘している者が居た。

ウェーブのかかった長髪。白衣に身を包んだ、妙齢の女性。
木山春生(きやま はるみ)。
元教師の経歴を持つ科学者で、幻想御手を作り出した張本人だ。


「いたいよぉ~!!」

木山「もうちょっとだ……! もう少しだけ待ってくれ!!」


瓦礫の下敷きになって、身動きがとれずにいる子どもを見つけた木山。
彼女とは直接関係の無い、見ず知らずの子どもだ。

だが、放っては置けない。
自身の避難も忘れ、必死に、なれない肉体労働に挑んでいた。


そこへ――

「手を貸すじゃん……!」

木山「警備員……」

特徴的な口調の警備員、黄泉川愛穂が、協力を申し出た。


鉄装「よ、黄泉川先生! 駄目ですよ! 安静に――」

黄泉川「そんな場合じゃないじゃん……! これを切り抜けたらいくらでも入院してやるじゃんよ」


救護室に運ばれていた黄泉川が、のそのそと抜け出して来ていた。
不器用に巻かれた包帯も、よれよれの湿布も、鉄装が施したものだった。
治療のため晒された肌には、火傷の痕が残っている。


黄泉川「ちっ……左手が動かないか……あいつめ! 誰が『トリケラトプス』じゃん!!」

鉄装「無茶しないで下さい先生!」

黄泉川「無茶は通す! 道理は引っ込んでるじゃん!!」




そこから少し離れた位置。

UFOから発射されたミサイルが、その歩道へ真っ直ぐに飛んでくる。

が――
どういうわけか、棒立ちの少年にぶつかった途端、爆発することも無く地面にころがった……


少年「ケッ。こンなもンで俺を殺せるかよ」

少女「そうですね。そうであれば、どれだけ気が楽だったか……」


少年の言葉に、少女が皮肉を言う。

真っ白い少年と、ゴーグルをつけた奇妙な少女。
二人は今しがたまで、とある理由で“殺し合い”をしていた。

だが、この騒ぎでそれどころではなくなった。
少年は自身の能力で幻覚を跳ね除けたが、少女はそうはいかなかった。
幻想に囚われ、何度も何度も“死”を経験“し直した”。
そして――


少女「……」

少年「まだ拗ねてやがンですかァ? このガキはァ……」

少女「ミサカは……アナタに殺される為に生まれました。それなのに……」

少年「……ケッ。てめェが言ったんだろうが」


『殺さないで……助けて……!!』


少女「あれはノーカンです。ミサカは正気ではありませんでした、とミサカは指摘します」

少年「うっせェ。言ったもンは言ったンだよ」


少年は少女の発言を力ずくでねじ伏せる。

それは、彼が心の底で、ずっと聞きたかった言葉だったから。
だから、誰がなんと言おうと覆させたりはしない。


少年は悪党だ。

だから今まで何度も殺してきた。
……“何度”と数えてきたことが、たったの一言で、“何人”に変わった。

だから、悪人はそれを受け止めて、そして、その“続き”を取りやめることにした。


少女「殺してくれないと困ります、とミサカは――」

少年「うるせェ下がってろ」


二人に怪人が襲い掛かる。剣を持った、蒼い体躯の巨人。
だがどんな怪力だろうが、この少年を傷つけることは叶わない。
少年に少し触れただけで、へし折れ、大地に沈んだ。


少年「……うざってェな。とりあえず芳川(よしかわ)の奴でも探すか……」


いつもどおりのぶっきら棒な態度を取りつつも、少年の顔はどこか不安げだった。

崩れて落ちていく街並みを見つめ、物思いに耽っている。
自分の行いを思い返しているのか。
それとも――自分の未来を想像しているのだろうか。
自分がこの街並のように、大きな力によって捻じ伏せられる様を。


――――。


その視線の先で、何かが煌めいた。

炎の中から飛び出した一筋の光。

それが、得体の知れない白い人工物へと向かって伸びていく。


少年はその光を知らない。

光も、少年を知らない。

二つの物語は今後交わらず。
二人は知り合うことなく、ただ、少年の人生を僅かに逸らした。

……それが良かったのか、それとも悪夢を招くのかは、まだ定かではない……




ビルの屋上を飛び渡り、目標を目指す佐天。
行く手を阻む怪人と円盤を蹴散らし、真っ直ぐに空を突き進んでいく。

地上では――

美琴「邪魔すんじゃないわよぉ!!!」

地を駆け街を蹂躙する機械兵士を、美琴が数万ボルトの電撃で駆逐していく。


そこへ――黒子がテレポートで現れた。


黒子「お姉さま!」

美琴「黒子! アイツ……と、コットンは?」

黒子「あの殿方でしたら帰しましたわ。コットンは、何処かへ飛んでいってしまいましたの」

美琴「そ、そう……無事なのね……」


黒子と、他一名の安否を確認し、ひとまず胸を撫で下ろす美琴。

と言っても、今のような状況では、いつ誰がどうなるか、分かったものではない。

この町に住むほかのレベル5は――
いや、当てにならない。
あの『心理掌握』がまさにそうだった。


美琴『そこまで言うんなら、あんたも手伝いなさいよ』

心理『……は?』

美琴『は? じゃないわよ! あんたの能力なら、怪人の軍勢でもなんでも引き連れて――』

心理『嫌よ。そんなの』


取り付く島もなく、美琴の提案を一蹴してさっさと行ってしまった。
言いたいことだけはハッキリ言い、あとのことは人任せである。

伊達に、常盤台で「女王サマ」などと気取っているわけではなかった。




アルカール「無事かアルカイザー!」

佐天「アルカールさん……!」


空の上でも、佐天がアルカールと合流していた。
二人のヒーローが、第七学区の上空を駆け抜ける。

最後の敵を前に、バラバラだった仲間が揃っていく。
地上と空中、二つのルートで目標に迫り、そして――


佐天「戦闘開始だぁあ!!!」


上空の二人に、円盤の編隊が接近する。
ミサイルの照準を合わせ、二人のいるビルに目掛けて、一斉に発射される。

空を縦横無尽に飛び交う弾道弾。
その一発一発が、ビル一つを崩壊させるほどの火力を持つ。


だが、そんなものに怯むヒーローなどいない。


『『アル・ブラスタアァアアアアア!!!』』


二人から、四方八方に無数の流星群が放たれる。
迫り来るミサイルを対空砲火で全段叩き落し――


佐天『ディフレクトランスッ!!』

アルカール『スカイツイスタァアア!!!』


爆煙を突き破り、二つの閃光が上空へ飛翔する。

佐天の体が光の槍となり、数機の円盤を串刺しにした。
アルカールの巻き起こした竜巻が、周囲の物を巻き込み、粉々に砕いていく。

遠目には、光学兵器が空中編隊を貫いていくように見えるだろう。
だが実際には、たった二人の人間による、ただの『体術』でしかない。

これが超人。
これがサントアリオの戦士。


佐天「見えたっ!!」


円盤をアルカールに任せ、佐天がコッソリと、真の首領へと接近した。
まず近くのビルに降り立ち、敵の背後へ回りこむ。

いかに巨大な“目”を持っていても、正面にしか付いていないのだから。
あの巨体は死角だらけである。


地上に目をやると、すぐそこまで美琴たちが迫っていた。

仕掛けるなら今だ。
二人も合わせてくれるはず。

ビルの屋上で助走をつけ、一気に、白い装甲へと飛び込む――!


佐天『ブライトナックルッ!!!』


右拳を光に変え、真の首領の後頭部へと叩き込んだ。
しかしこの装甲、予想外に分厚く、硬い。

打ち込んだ拳が痺れる。


佐天「くっそ……カッコつけて小手調べなんかするんじゃなかった……!」


続けて攻撃するため、装甲にしがみ付く。

しかし今の攻撃で、当然こちらの存在には気付かれただろう。
上空で編隊を組んでいた円盤のうち何機かが、こちらへ降下してくる。
背後はアレに守らせているらしい。

もちろん、他の迎撃システムも備えている。
例えば、四天王に組み込まれていたような兵器も。


『Lightning web』

佐天「……づっ!!??」


紫電が、装甲の表面を迸る。
佐天の体にも電流が流れ、ショックで体が浮き上がった。


佐天「……っ!? 落ち――!!?」


思わず手を離し、バランスを崩してしまった。
空中に放り出された佐天を、円盤が空から狙い撃つ。


美琴「させるか!」


落下する佐天の目の前に、美琴と黒子の背中が現れる。
テレポートで助けに来たのだ。

美琴の手のひらから、膨大な電撃が放出された。
貫かれた円盤が次々に爆散していく。
その破片を避けるため、黒子が美琴と佐天を抱え、再びテレポートする。

転移先は、またも首領の死角となるビルの上。


佐天「ありがとうございます……助かりました……」

美琴「いいのよ……私も散々迷惑かけちゃったからね」

黒子「佐天さんの攻撃、効かないみたいですわね……」


作戦会議。

このままがむしゃらに攻撃しても、戦果は期待できない。

と、いっても――


美琴「まぁ。“一点突破”しかないでしょう?」

黒子「……ですわね」


決定。
至極単純明快。

「超電磁砲と、アル・フェニックスで集中攻撃。装甲を突き破る」

ただ、それだけ。



真の首領が移動を開始した。
三本の足を器用に動かし、邪魔な建物を崩しながら前進する。

補足くびれた胴体を捻り、一つ目がキョロキョロと忙しなく動き回っている。


美琴「探し物はこっちよ!!」


黒子に転移された美琴が、首領の真上に出現した。
重力に従い、風に制服をはためかせて落下していく。

首領が声に反応し、視線を上げた。
迎撃するため、ビーム銃のついた長い右腕を持ち上げようとする。


しかし、視線の真ん前に突如現れた黒子に、判断力を奪われた。
首領の動きが一瞬止まる。


黒子「スカートのレディを見上げるものではありませんの!!」


その隙に、黒子は両手に“束”で構えた鉄矢を、首領の“黒目”に針山の如く転移させた。

そして再び、“射線”から離れるため姿を消す。


『!!?』


首相の巨体が仰け反り、わずかに後退した。

痛みがあるのではないだろう。
突然の出来事に驚いている。


――そう。
こんな事「想像もしていなかった」。

何せ、「デカイ子ども」なのだから。

そこまでの予想なんて出来ていない。


黒子が奇襲をかけているあいだも、美琴の体は降下を続けていた。
もうすっかり、首領の“目と鼻の先”まで迫っている。

当然――その右手には“コイン”。

腕を電流が流れ、弾かれると同時に――――
音速の三倍で撃ちだされる……!


狙いは首領の大きな目玉――

その、『少し上』。つまり『額』。


『~~~~~~~~~~~!!!??』


首領の体が更に仰け反る。


勿論。まだ終わらない。

火の海と化した第七学区は、彼女にとって、まるで一万の軍勢を背負うようなモノだ。
燃え盛る街並のあちこちから、彼女の力になろうと『炎達』が集まってくる。

宙に浮いた少女の体を、紅蓮の炎が包みこむ。
紅い翼を羽ばたかせ、学園都市上空に、不死鳥が舞い上がった……!



『空間超電磁フェニックス』――――!!!



火の鳥が首領の額に突貫した。
衝突の余波が、辺り一面の建物を瓦解させていく。

奇声を上げて、首領が長い両腕を振り回す。


「こんなのは嫌だ」と、駄々をこねる。


美琴「行け……そのまま……!」


美琴は超電磁砲を撃ったあと、磁力でビルに吸い付き、その様子を見守っていた。
黒子も、どこか近くにいるのだろう。

やることはやった。

あとは、彼女に任せる。


美琴「”ヒーローごっこ”は、もう終わりにしましょう!! 佐天さん!!!」


不死鳥となった『主役』が、巨大な『悪役』に食らい付いている……!


佐天「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


炎の渦の中、佐天の長い髪が激しく靡いている。

……このときすでに、佐天は自身の“異変”に気付いていた。
さっきから目の前をチラつくそれが、目の錯覚だとは微塵も思っていない。
『時』が来たのだと、ただそうとしか思わない。

だから――まだ力は緩めない。


佐天「あぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


“絞りきる”。
出し惜しみは一切無しで、彼女はやり遂げた。


全身全霊の『真アル・フェニックス』を――――







首領の左手に掴まれ、無為に終わるまで……。





佐天「――――そんな」


手のひらにまで施された分厚い装甲が、ろうそくの火を揉み消すように、不死鳥の羽をもいだ。



まだ、足りない。



――握りつぶされる。
いや、こいつ、腕を振りかぶ――――


思考が間に合う前に、佐天の体は高速で吹き飛んでいた。

真の首領から見れば、人間など取るに足らない小ささだ。
軽く放り投げるだけで、とんでもない勢いで飛んでいく。

ジェット機並みのスピードで飛行する佐天の体はやがて、”とある”ビルに激突して止まる。

いまや無人となった「キャンベルビル」が、想定外の衝撃に耐え切れずへし折れ、そのままガラガラと崩れ去った……



壮絶。
というよりは、まるっきり冗談。

どこかの少年漫画のワンシーンか、そうでなければCG満載のハリウッド映画か。

そんな光景を見せられて、ただ呆然とする以外の選択肢など、美琴には無かった。



美琴「………………………………………………………………………………さてんさん?」



そう呟くのが、精一杯の抵抗。

次の瞬間には、美琴の居るビルも首領の右手に撃ち抜かれ。
跡形も残さず崩壊したのだから……




……あれだけやっても、まだ足りなかった。

私たち三人じゃあ、足りなかった……?


……このまま終わるのか?



ふざけるな――――!



しゃきっとしろ!


上等だ!
駄々っ子め!!

よくも好き放題やってくれたな……

今、怖い“お姉さん達”が行ってやる。

そのデカイ目で、ワンワン泣かせてやる。



調子に乗るなよ。

この――――



『甘えんぼ』め。



瓦礫の中から、御坂美琴が立ち上がった。

視界はぼやけているし、体のあちこちがおかしい。
立っていることがすでに『奇跡』だ。

だが、彼女は歩き出す。

もう一度、『奇跡』を起こすために――




学舎の園。
常盤台中学の存在するその特別区にも、当然ブラッククロスの手が回っていた。

むしろ、ただでさえ高位能力者の多いこの地域は尚更危険地帯といえる。
あの「目玉」に幻覚を見せられ、多くの能力者が暴れまわっていたのだ。


「婚后光子」たち三人も、この騒ぎに巻き込まれた被害者だった。

幸いにも外に遊びに出ていたため、学舎の園内部程の戦いには巻き込まれなかったものの、無事とは言い難い。

三人の内の一人、湾内絹保が、怪人に捕まり投げ飛ばされたのだ。

上空数十メートルの高さ。
ヒーローであるアルカイザーや、磁力によって衝撃を和らげられる美琴とは違う。
普通の女子中学生でしかない湾内の体では、その高さからの落下は致命的だ。

婚后が泣き叫び、泡浮が目をそらした。


次の瞬間――空から滑空する白い生物が、その背で落下する湾内を受け止めた。

そしてそのまま怪人に突進すると、口からガスを吹き浴びせて石に変え砕いてしまった。


婚后「コットンちゃん……?」

コットン「キュー!」


優しいお姉さんと、不思議な生き物の再会だった。


婚后「コットンちゃん……良く帰ってきてくれましたわね」

泡浮「湾内さんをありがとうございます! ……えっと、コットン“さん”?」


コットンは、黒子と上条を下ろしたあと、一人で婚后を探していた。
もう一度会いたいと思っていたし、この騒ぎを見て心配になったのだ。

そして勿論、それだけしかしていなかったわけではない。

彼は腐っても警察機構IRPOの一員なのだ。
“するべきこと”は、きちんとこなしている。


コットンの背で、気を失っていた少女が目を覚ました。

友人の無事を確かめようと、婚后たちが駆け寄ると――――

婚后「あら? あなたは……」

泡浮「たしか……佐天さ……え……“アルカイザー”!?」

キャンベルビルの残骸から掘り起こされた「佐天涙子」が、体を無理やりに引き起こしていた。
湾内はその隣で、未だ気を失っている。


佐天「…………婚后さん」

婚后「は、はい!」

佐天「アナタたしか……空力使いでしたよね……?」


全力の『真アル・フェニックス』を破られたというのに、彼女の心はまだ折れない。

彼女一人なら折れていたかもしれない。
しかし今は――


佐天「御坂さんが待ってるんです……いえ、多分待ってくれません。だから、早く――」


一人で戦っているわけではない。


だから、絶対に、決して、死にそうだとしても、『折れない』――――!!


婚后「……無茶をなさる方ですわ」

泡浮「ええ……ですが、カッコよかったですね」

婚后「ふふ、それはそうですわ。なんと言ってもあの方は――――」


婚后「あの“御坂美琴の友達”ですのよ?」



佐天は今、空を飛んでいる。

正確には、空を飛ばされている。


走ったのでは間に合わない。
コットンに乗っていたのでは、勢いが足りない。

だから、「婚后の『発射台』で飛んだ」――

ビルの隙間から覗く、真の首領目掛けて、射出してもらったのだ。


さっきまで飛び回っていた円盤がもう居ない。
アルカールが何とかしてくれたのか。

道は開けている。


佐天「……行こう。皆、“もう一度だけ”力を貸して……限界まで!!!」


街の煉獄が、意思をもって佐天へと集まっていく。
破壊の為の炎が、正義の翼へと変わっていく。

婚后の射出に炎の羽ばたきが追加され、更に速度を増していく。


間に合え。


信じても居ない神に、祈りを捧げた。




美琴「ハァ……ハァ……!!」


ガタガタの体に鞭打って、美琴が階段を駆け上っていく。

ちょうど、首領の額の位置と高さが同じビルを見つけ、その内部へ踏み込んだ。
当然エレベーターなど動いていない。
中の通路を走りぬけ、屋上へ出られる螺旋階段を見つけた。


美琴「もうちょっと……もうちょっと……だから……!!」

美琴「動け……動きなさい……私の体……!!!」


何故、ここまで出来るのだろう?

不思議だ。何の保証も無いのに。
自分でも分からないが、今はこうしなければならない。

いや、こうしなければ、いてもたってもいられないのだ。


一人で無意味なことをしているようにも思える。

それでも――


美琴「ついた……屋上……!!!」


ドアを思い切りブチ開け、全速力でコンクリートの床を疾走した。

真の首領の“真正面”。

思いっきり息を吸い込み、歯を食いしばり、そのまま――



壊れた手すりを無視して、屋上から飛び出した――――!!!



手には何も持っていない。
コインなどとっくに使い果たした。

打ち出す弾丸は“そこ”にはない。



肺いっぱいに吸い込んだ息を、一気に吐き出して、叫んだ。

呼んだ。

この世で、最も信じている、最も信じてくれている「パートナー」の名を――



美琴「黒子ォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」



はい――!!



黒子「はい!!! お姉さま!!!!!」



テレポートで、相棒が弾丸を運んでくれた。

1メートル四方のUFOの残骸。

調度いい。
そっくりそのまま、その空っぽの頭に返してやる。



電流を纏った拳が、弾丸に叩き込まれた。

それが、この“銃”の引き金。



『常盤台の超電磁砲』が、全力全開で撃ち出された――――!!!!



目標は、ブラッククロス、真の首領の“額”。

分厚い装甲には、さっきの攻防での焼け跡が残っている。


もう一度、“連続”で技を叩き込めば、あるいは――――!!
 



そう、“連続”で叩き込まなければならない。

何せ分厚い、未知の金属の装甲だ。
あれを焼き切るには、超電磁砲から間髪入れず、この炎を届けなければならない。


だが、祈ったところで神は居なかった。


佐天「……っ!!???」


佐天の行く手を阻むように、黒い龍が現れた。
大きく口を開け、牙をぎらつかせ、佐天を待ち構えている。

そんなものの相手をする猶予はない。
一瞬でも早く行かなければない。

そんな都合などお構いなく、黒龍の喉からガスが噴出す。

ガスで、炎が押し戻される。
勢いを失う。

間に合わなくなる……!!





佐天「――――え」


突然――目の前の龍が消えた。

跡形も無い。


佐天「…………!!!」


構わない。
好都合なら、何かを考えている暇など無い。


もう一度、不死鳥が大きく羽ばたいた。




「……何か?」

「いや。見事なものだな」


佐天が通過したあと、そこから数百メートル離れた鉄橋の上に、二人の男が居た。

一人は、蒼い魔術師の青年。
そしてもう一人は、漆黒のヒーロー。


アルカール「『オーヴァドライブ』か。時術。実際に見るのは初めてだよ……まぁ、見えてはいないのだがね」

青年「……ここで何をしている」

アルカール「あとは彼女たちに託した。君を守るのが、これからの私の仕事だ」

青年「……」

アルカール「術の発動中は無防備なのだろう?」

青年「ふん……術式を開始する」


魔術師の青年が、目蓋を閉じ精神を集中させる。


陰。陽。
ルーン。アルカナ。
魔術。妖術。
心。
命。

そして、時と空間。

相反する全ての属性を併せ持つ、過去現在未来において、唯一の存在。

蒼い魔術師の、世界の成り立ちに踏み込む禁忌の術式が、この喧騒の中で産声をあげた。


この術が発動すれば、世界は再び隔絶される。

二度と間違いが起きないように、青年は慎重に、厳重に魔力を練り上げていく。


青年「間違いは、僕の手で正そう。それが俺の、生き残った者の使命だ……!」




美琴「…………来た」


本当に来た。

あの子……ああ、本当に……


超電磁砲が首領の額を穿ち、今弾丸が燃え尽きた。
その直後――天空を駆け、不死鳥のように舞い戻ってきた。


佐天「おおぉおおおおおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


真の首領の、その額に手を伸ばす。

分厚い装甲が邪魔だ……
“用”があるのは、その奥だ……!


心理掌握は言った。


心理『“あの子”、この街の出身らしいわね』

心理『生まれたときから研究所暮らし。物心が付くと同時に能力を発現。以降は軟禁状態』

心理『でも体が弱くてね。それ以上の能力開発に、そっちの方がもたなかったの』

心理『そうしたら研究所の連中は、あの子の“脳みそだけ”を摘出した』

心理『……それだけで十分だってさ』

心理『その後。紆余曲折を経てああなりました。めでたしめでたし』

心理『……あんまりピーピー五月蝿く泣かれると、同じタイプの能力者として恥だから』

心理『さっさと助けて。黙らせちゃってくれないかしら?』


悪の秘密結社に、怪人に戦闘員。

合点がいった。
幼稚なはずだ。

だってその黒幕が、「ただの子ども」だったんだから。


ただ特異な環境で特異な才能を持ち合わせていただけの、孤独な子どもだったのだ。

脳みそだけの存在にされて、暗闇で何千何万の時を一人で過ごしてきただけだったのだ。

つまり――


佐天「寂しかったんだね……だから、みんなが幸せそうにしてるのが、許せなかったんだね……」


悪の秘密結社を作って、悪い科学者に、幸せな一般人を殺させて。
そういう自分の遊びに、誰も彼もを巻き込みたかった。

それもこの、「学園都市」で。


佐天「分かるよ……幸せな……何もかも持ってるような人に、腹が立つ感覚って……」


でも――


佐天「それは、人に押し付けちゃいけない感情だよ」


だから。

いけないことをした悪い子には、お仕置きが必要だ。


火力を増し、額の装甲を熔かしていく。

あと少し。

あと少し。



ここで、さっきは失敗した。


美琴「っ!? ――佐天さんっ!!!」


地上から見上げていた美琴の目に、また同じ絶望が映しだされた。
首領の左腕が、額を啄ばむ小鳥を捕まえようと迫る。

このままでは、またさっきの繰り返し。

いや、今度はおそらく立ち上がれない。
美琴も、佐天も。
これがラストチャンスだ。


佐天「ここまで……来て……!」


届かない……
もう少しなのに……

足りない……?


佐天「私たちだけじゃ……駄目だ……お願い……誰か……」



誰か――助けて。



佐天「助けてくれたら……私は……絶対に負けないのに……!!」



…………



……それは「ポジティブ」というのか?

まったく、おかしな女だ。



佐天「………………来てくれたんだ……」



黒い炎が、首領の腕を押し返す。


紅い不死鳥の隣に、黒い凶鳥が現れた。



「これで負けられないぞ! 涙子!!」

佐天「うん……! メタルアルカイザー!!」



紅と黒、二つの炎が混じりあい、遂に――――



佐天「届いたぁっ!!!!!!」



額の装甲をブチ破り、その奥にある、「脳の入ったカプセル」に手を伸ばした――!!!



心理『目玉の上。額のど真ん中に、あの子の「脳みそ」が埋まってるわ』

心理『……本当に……私に言われても困るわよ。ねぇ?』



そうだろう。

もし、何の力も無い私が同じことを言われたら、きっと何も出来なかった。



だから、私は今だけ「借りる」ことにしたんだ。


助けてみせるさ。


例え「借り物」でも、少なくとも――

今の私は『ヒーロー』なんだから!!!







『 空間超電磁空力真アル・ダークフェニックス 』――――!!!!!!!







………………


夕日が沈む。


怪人たちは、その殆どが駆逐された。


街に燃え広がった炎は、能力者の協力もあり、すぐに消化された。


残されたのは、瓦礫と化した街。


疲弊した人々。


傷ついた人々。


……大切な人を亡くした人々。


もちろん、ここで物語は終わらない。


悪の組織を滅ぼして、それで「はい、めでたし」とはいかない。



…………



佐天が歩き出した。


美琴「待って」

佐天「……」


その背中を、美琴が呼び止める。


美琴「させないわよ」

佐天「何をですか?」

美琴「とぼけないで」


……ばれてる。

そりゃそうか。


美琴「ヒーローの力の“代償”。その“髪”が、ハッキリ示してくれてるわね」

佐天「……仮面、治しとけばよかった」


佐天の長い髪は。
長く、艶やかだった“黒髪”は、ところどころが、“白く”脱色していた。


佐天「私の体です。私の命です」

美琴「違うわ」

佐天「好きに……使わせてください」

美琴「違うって言ってるでしょ」

佐天「勝手なこと、言わないで下さいよ……」

美琴「あの技は使わせない。悪の組織がいないなら、もうヒーローは終わりでしょ?」

佐天「終わってません……みんな、助けを求めてる……!!」

美琴「それが何? どうして佐天さんが犠牲にならなきゃいけないの!?」

佐天「それで全部、本当に終わるんです!!」

美琴「そうね! 終わるわよ!! あんたの人生がね!!!」


どちらも譲らない。
命を懸けて、この意見だけはどうしても通す。


「佐天さん……」


佐天「――――っ」


背後から声をかけられ、佐天が、美琴を振り切って走り出した。

といっても、そんなに速度は出ていない。
はっきり言って遅い。

それでも、美琴には追いつけない。

もう、歩くのがやっとなのだから……


美琴「待ちなさい……!」

「御坂さん……無理しないで下さい!」

美琴「……ごめん……止められなかった」


声の主は、ニッコリと微笑む。

「全部分かってるから」

そう言いたげな、優しい、包み込むような表情だ。


黒子「お姉さま。行きましょう」

美琴「黒子……でも、どうするの?」

「どうにかするんです」

美琴「どうにかなるの?」

「なります」

黒子「駄目ですのよお姉さま。こうなったら、この子はいうこと聞きませんもの」


佐天は、重い足取りで街を徘徊した。

目に映る全てが、自分に助けを求めているように感じる。
佐天の、最初から一つしかなかった選択肢が、それでより決定的になっていく。


行くあてもなく彷徨っていたが、偶然、柵側中学に行き当たり、中に入っていった。

ここには、思い出が詰まっている。
“あの子”との思い出が。


足を引きずって、階段を上っていく。
4階まで上り、そのまま寄り道せず屋上に出た。

フェンスに囲まれているが、見晴らしのいい場所だ。


そこに、三人は先回りしていた。


佐天「何で……?」

美琴「勘だってさ」

佐天「でたらめ……」

黒子「意外とそういうものですわよ? それに、ここは学園都市ですもの」

佐天「何でもあり、ですか?」

美琴「自分だけの現実『パーソナルリアリティ』よ」

黒子「信じれば叶う。そういう場所ですの」

佐天「……」


ああ、私が無能力者なわけだ。
そんな風には、今の自分には考えられない。
自分を信じるなんて出来ないもの。


でも――――

佐天「……出来るかな?」

そう尋ねたら、きっと彼女は、こう答えてくれるのだ。




初春「 はい! 」




……敵わないなぁ。





佐天「いいですか?」

美琴「せーのっ……ね?」

黒子「わっとと!? ……お姉さま、紛らわしいですの」

初春「あはは! じゃあ、行きましょう!!」


四人で円陣を組んで、輪になるように手を繋いだ。

目を閉じて、お互いの体温を感じる。
ドクン、ドクン、と、鼓動が伝わる。

これが、命の気配。

ヒーローの力の“代償”。


……いや。


ヒーローの、力の“源”。




佐天「せーのっ!!!」








『『『『 ファイナルクルセイド 』』』』










民家から、男女の声が聞こえてくる。


「何よレン! あなたっていつもそう!!」

「エミリア……何が気に入らないんだ?」

「その落ち着き払った態度よ!! どうせ私のこと、馬鹿な女だと思ってるんでしょ!!?」

「そんなこと……おい、エミリア――」

「別れる!!」

「ちょっと待てよ! エミリア!!」


………………


「痴話喧嘩か」

「ちわげんか?」

「人間の男女は、色々と大変なモノらしい」

「あのふたり、きらいなの?」

「ん? ……ああ、いや。どうせすぐに仲直りするさ」

「そうなの?」

「複雑なのだよ。人間の心は。」

「ふーん。あなたは、メカなのにそんなことまでしってるんだね」


そう言って感心する、小さな、丸くて白いロボット。
その隣で、黒くて細身の、傷だらけのロボットが、肩を揺らして“笑った”。


「知ってるさ。教えてもらったからな」



【エピローグ・拝啓! 親愛なる友へ!!】




「あれー? また迷ったかな……?」


ある日曜日。
私は親友に誘われ、新しく出来たアイス屋に向かっているのだが……


「この辺りの筈なんだけどなー……」


そう呟き、携帯のナビで現在位置を確認する。
あまり来ることの無い学区のため勝手が分からないが、かれこれバスを降りて三十分。
流石に迷ったのは間違いないようだ。


「あ! さっきの道、一本間違えてた……」


仕方ない、引き返そう。

それにしても今日は天気がいい。
だから、今日は平穏無事ないつもの日曜日のはずだ。
たまには、少しぐらいの回り道は構わないよね。

そう思って振り返り、気付いた。


「あれ? ここ通れば早く着きそう……」


携帯の液晶に移された地図と、目の前にある光景を見比べる。
どうやら、地図上には出ない裏道らしい。

回り道は、どうやらしなくても済みそうだった。


学園都市は最先端の科学技術に守られている。
親元を離れ、未成年者が寮暮らしをする街なのだから、それ位のことはやってもらわないと困る。

しかし、実情は違った。
毎日、どこかしらで問題が起こっては、それを解決するために風紀委員やら警備員やらが出動する。

中途半端に『力』を手に入れた輩。
手に入れ損なってヘソを曲げた輩。

そういった連中が群れを成して、自分達よりも弱い人間で憂さを晴らす。

それが学園都市の日常茶飯事だった。

そういった事件の多くは、私が今歩いているような、薄暗く小汚い路地裏で起こる。


「よう。どこ行くんだい?」

「……」


ほら。言ったとおり。

たちの悪い連中が、ずらりと周囲を取り囲んだ。


「ちょっと俺たちと遊ぼうや。なぁ?」

「へっへっ! ガキだけど、まぁ上玉じゃねぇの?」


……ロリコン野郎。


面倒だが、仕方ない。

こういうときは――――


「お-い! お待たせー!!」


そこへ、割って入ってくる奴がいた。


「あん? 何だぁ?」

「すみませーん。ウチのツレがお世話になったようでー……」

「……ちょっと待てよオイ」

「それじゃ! 失礼しまーす!!」


そいつは、私の手を掴んで一気に走り出した。


「ちょ、ちょっと! 私は――」

「いいからいいから!」


そして路地を抜けて、その先の広い公園へ出た。
差し込む太陽が眩しい。

当然、連中が後を追ってくる。

だが――


「ジャッジメントですの!」

「大人しくお縄について下さい!」


二人の少女が――正確には一人の少女が、不逞の輩を一網打尽にした。

手際がいい。
流石は――私のパートナーを名乗るだけのことはある。


美琴「お疲れ黒子」

黒子「はぁ……何故わざわざ問題を引き連れてきますの……?」

美琴「私の所為じゃないわよ。ねぇ?」


私は、親友に同意を求め、振り返った。



そこにいたのは、スキルアウトに囲まれる私を颯爽と救い出した正義の“元”ヒーロー。

長く“白い”髪が、日光に照らされてキラキラと輝いている。


美琴「……それも似合ってるよ」

佐天「あはは! 無理しなくてもいいですよ! ほら、生え際の辺りちょっと黒いんですよ!」

美琴「そう。なら、すぐに黒い佐天さんも見れるのね」

佐天「『黒い佐天さん』って……初春じゃないんだからそんな黒い感じじゃないですよ、私は」

初春「……どういう意味でしょう、佐天さん?」


佐天さんの力は、完全に失われた。

あの後。私たち四人が仲良く気を失っている間に、アルカールさんが回収してしまったらしい。
今の佐天さんは、街を救った“証”を残すだけで、今までどおり、ただの女の子に戻っている。


黒子「固法先輩に引き継いで来ましたわ」

初春「お疲れ様です白井さん。先にアイス食べてますよ」

黒子「ぬが!? ちょっとは待ってくれても良くありませんの!!?」

美琴「さっさと来ないからよ」

黒子「元はといえば……! ぬ、ぐぐ……我慢ですのよ黒子……!!」

佐天「あはは!」


私たちの町は救われた。

彼女は、最強の英雄なんかではなかったけれど。
英雄なんてガラじゃなかったけれど。

そんなことはどうでもいいのだ。
ヒーローとして落ちこぼれでも、全然構わない。



落ちこぼれのヒーローは、私のかけがえのない友達なのだから。










ここに悪は滅びた!






しかし


あらたなる敵がぼくらの街を襲う!






正義は!?







Does justice ever exit?






……あるところに、最強の少年が居た。


少年は『最強』を越える『無敵』を目指し、人を殺し続けてきた。


だが、あるときそれをスッパリ止めてしまう。


当然、彼の仲間だった男は怒り、その原因となった少女を殺害してしまった。
さらに、彼女らのリーダーである少女に細工を仕掛け、抹殺しようと企んだ。


少年をそれを阻止するため奔走し――



『無敵』どころか『最強』どころか、『普通』の生活までも失った。



もはや、一人で生きることも出来ない彼を、少女達は、懸命に救おうとした。


そして――




「目を覚ましたまえ、『アクセラレータ』。いいや……」




少年は、再び力を手に入れた。


愛すべき、少女達を守る為。

全ての罪を償う為に――!!




【新番組】!



【超能力戦士・アクセラレータ3X】!!





Coming soon…






佐天「変身! アルカイザー!!」 




 

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