【第九話・悪夢! 雨の夜の再会!!】


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 とある学生寮。

 その夜は蒸し暑く、少女は中々寝付けずに布団から這い出した。
 パジャマ代わりに着ていた白いシャツが、汗で肌に張り付いている。

 時計の針は午前一時を指していた。

 「こんな時間まで起きてるなんて珍しいな……」

 少女は冷蔵庫から冷たい麦茶を出して、コップに注いだ。
 ベタベタのシャツを着替えようか考えて、面倒だと思い、コップの中身を飲み干す。
 もう一度布団に戻ろうとしたが、窓から入る風の音を聞き――――

 「外は涼しそうだな……」

 そんな風に思った。

 コップを流し台に置き、玄関に向かう。
 チェーンを外して扉を開けた。


 「わっ!?」


 少女は驚きの声を上げた。
 部屋の前に、髪の真っ白な女の子がしゃがみ込んでいたのだ。

 「あの? 気分でも悪いんですか?」

 恐る恐る、少女が女の子の肩に触れる。
 すると――――


 コロン……


 と、女の子の頭が転がり落ちて、肉の無い、むき出しのドクロがこちらを向いて笑った。
 首の断面からは、青い血が噴出して、少女の白いシャツを汚した。


 「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!??」


 【第九話・悪夢! 雨の夜の再会!!】




美琴「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!??」

黒子「うひゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」


 とある病院の一室。
 すっかり日の落ちるのも早くなり、夕暮れの赤い日が、白いカーテンの隙間から差し込んでいる。
 その部屋に、二人の少女の悲鳴が木霊した。

 一人は友人の話のオチに驚き、もう一人は隣から飛んできた電撃に驚いた。


佐天「あははははは!! いい! いいリアクションですよ御坂さん!!」


 私、佐天涙子は腹を抱えてその様子を眺めていた。


美琴「ひ、ひどいわよ佐天さん!? 最近の外の様子はどうだって聞いたのに! それ怪談じゃない!?」

佐天「ええ。ですから、最近外で流行ってる話です。『青い血の女の子』の話」

黒子「もう夏も終わりだというのに、今更怪談話も無いものですの……」


 あれから、さらに一週間が過ぎた。

 御坂さんと白井さんの傷は随分回復して、御坂さんは今日退院する。
 白井さんは、流石に内臓へのダメージが大きいため、もうしばらく様子を見るらしい。


佐天「あはは。でもまぁ。御坂さんたちの怪我も大丈夫みたいですし、心配事が一つ減りました」

美琴「ええ。ごめんね? 毎日お見舞いに来てもらって」

佐天「いいですよ。好きで来てるんですから」

佐天「さて……それじゃあ、私はこの辺で」

 荷物を持って、丸イスから立ち上がる。


美琴「え? でも、私ももう出るけど……?」

佐天「いえ。ちょっと急いでるんで」


 私は慌しく立ち上がり、病室の扉に手をかける。

 そこで立ち止まり、振り返らずに、二人に声をかけた。


佐天「……御坂さん。白井さん」

美琴「何?」

佐天「私、二人に会えてよかったです」


 突然の言葉に、二人は呆気にとられているらしい。
 一瞬静まり返って、御坂さんが困ったように返事した。


美琴「あはは……何よ佐天さんったら! 突然そんなこと言って!」

黒子「本当ですの! それじゃあ私たちが死んでしまうみたいじゃありませんの!」

佐天「はは! なんでもないです! それじゃ!!」


 そして、そのまま部屋を後にした。

 閉じた扉の向こうから電話の着信音が聞こえた。

 私は、足早にその場を離れた。



美琴「どうしたのかしら……佐天さんったら」

黒子「きっと心配してくれていたのですわ。お姉さまの元気なお姿に感動したのでは?」

美琴「ふ~ん……佐天さんってそんなにロマンチストだっけ?」


 美琴は自分の荷物を鞄に詰め込みながら、佐天から感じた違和感について考えていた。

 黒子は、「私たちが死んでしまうみたいじゃありませんの」と言った。
 けど、あれはどちらかというと……


 そのとき、美琴の携帯電話から着信音が響いた。


黒子「お姉さま。病院では携帯の電源は……」

美琴「わ、分かってるわよ! さっき久しぶりに電源つけて忘れてたのよ!」


 黒子の突っ込みに反論しながら電話に出た。

 電話の相手は――

美琴「もしもし? 初春さん?」

 花飾りの少女。初春飾利。


美琴「ごめんね初春さん。今まだ病院だからさ。あとでかけ直すから――――」

初春『御坂さん……』

美琴「……? 初春さん?」

 初春の声が震えている。
 何かあったのだろうか?

美琴「どうしたの? 何かあった?」

初春『……さんが……』

美琴「え?」

初春『佐天さんが……行方不明で……』

 その言葉の意味がわからなかった。
 だから、きっと続きがあるのだろうと、初春の言葉を待った。

 だが――――


初春『佐天さんが……夕べから連絡取れなくて……』

美琴「佐天さん……が?」

初春『学校にも、来なかったし……今も、携帯も通じなくて……』


 それは、きっと病院に居たから電源を……


美琴「ちょ、ちょっとまって初春さん! それって、勘違いってことない?」

初春『そんなはずありません!! だって、実際連絡が――――!!!』

美琴「だ、だって! 佐天さんなら今、ここに居たもの!!」

初春『――――え?』


 きっと、初春にとってその言葉は予想外だったのだろう。
 先ほどの美琴のように、初春は黙り込んでしまった。


美琴「だから、ね? たまたま連絡が取れなかっただけじゃ……」

初春『そんなはず……ないです……』

美琴「どうして?」

初春『だって……佐天さん、部屋の鍵も開けっ放しで、他の誰にも連絡が無くて……』

美琴「たまたまよ……大丈夫。佐天さん急いでるって言ってたから、きっとそれでじゃない?」

初春『……』

 初春は納得がいかなそうではあったが、とりあえずは落ち着きを取り戻し、電話を切った。


美琴「ふぅ……どういうことかしら?」

黒子「なんだか嫌な感じがしますの……」

美琴「また、ろくでもないことが起こってるんじゃないでしょうね……!」


 美琴は、手に持った携帯電話をギュッと握り締めた。

 体調は万全とはいかないまでも、絶対安静というワケではない。


黒子「無茶は――――止めても無駄ですわね」

美琴「よく分かってるじゃない」


 呆れて溜息をつく黒子を尻目に、美琴は荷物の詰まった鞄を提げて、病室の扉に向かった。


美琴「佐天さんは、私の親友は私が守るわ……」


 美琴の脳裏に過ぎるのは、今まで戦ってきた敵。
 ブラッククロスの怪人。四天王。そして、学園都市の裏側で暗躍する科学者や能力者の影……


佐天『私、二人に会えてよかったです』


美琴「そう思ってるのは、私たちだって同じなんだから……!」



 風紀委員第一七七支部。

 初春飾利は、美琴への電話を切ってからも落ち着かない気分で居た。


初春「佐天さんが病院に……?」


 なら。今からでも向かえば会えるかも……

 いや、もし何事もないのなら、ワザワザそんなことをしても意味は無い。

 そして、何かあったのだとしたら、きっと彼女は自分と鉢合わせしない方法を考えているだろう。
 だから、やはり意味は無い。


初春「……心配かけて……もう!!」


 嫌な想像を断ち切ろうと、大きな声を出してみた。
 しかし、胸のモヤモヤが晴れることはなかった。

 不安に駆られたまま、初春はその日の業務を片付けるためPCに向かった。



 御坂美琴は常盤台中学の学生寮に帰ってきた。

 途中、どこかに佐天の姿がないか注意を払っていたが、どこにもその影はなかった。


美琴「とにかく。一旦荷物を部屋に置いて、それから寮監に挨拶して……」

 これからやることを頭の中で整理する。

 一つ。退院の報告を各所に済ませる。

 二つ。寄って来るであろう後輩たちにも挨拶。それからついでに情報収集。

 三つ。結局それでは何も得られないだろうから、自分の足で学園都市中を探して回る。

美琴「よし。まずは二週間ぶりの我が家に――――って、きゃっ!?」


 玄関を開けて中に入ろうとした途端、前から同じようにやってきた少女とぶつかってしまった。
 少女は後ろに倒れて、尻餅をついている。


美琴「ご、ごめん! 大丈――――」


 少女を引っ張りあげようと右手を出しかけて、美琴は固まってしまった。
 思わず悲鳴を上げそうになって、差し出そうとした右手を口にあて、無理やり何とかそれを押さえ込んだ。


 ぶつかった相手は常盤台の制服を着ている。
 どうやらこの寮に住んでいる生徒のようだ。

 ただ――――

 「すみません…………あの? どうかしましたか?」

 少女の髪も肌も、色が抜け落ちたように真っ白だった。


 おいおい……今はまだ日が落ちたばかりだし、別に寝苦しくもないわよ?


 少女は、鈴科百合子と名乗った。
 何かの縁だからと、荷物の片づけを手伝ってくれるという。

 しかし……こんな子がこの寮にいただろうか?

 こんなに目立つ外見なのだから、学校にいたって気付きそうなものなのに……


鈴科「この髪、目立つでしょう? 生まれつきなんです……」

美琴「へぇ……アルビノ……っていうんだっけ?」

鈴科「ええ。肌が白いのはいいんですけど、髪はちょっと変ですよね……」


 「第一位みたいに、能力の弊害とかならカッコいいんですけどね」と、彼女は漏らした。

 学園都市の第一位・一方通行『アクセラレータ』。

 今まであまり興味も無く、詳しく調べたりもしなかったのだが、彼女によると第一位の能力者もまた、
 白い髪と白い肌、そして赤い目を持つらしい。「能力の弊害」と、彼女は言った。


美琴「ねぇ? 鈴科さんってさ。前から常盤台に居たっけ?」

鈴科「いいえ。先週転入して来たんです。レベルが上がって……」

 ああ、なるほど。
 自分が入院している間のことだったのか。

 まったく心臓に悪いなぁ……とは思ったが絶対に口には出さない。
 流石に失礼すぎる。


美琴「そっか。じゃあ、これからよろしくね鈴科さん」

鈴科「ええ! よろしくおねがいしますね、御坂さん!」


 美琴は差し出された鈴科の手を握ろうとした。

 そして気付く――――

美琴「……あれ?」


 たしか、アルビノっていうのは、髪や肌なんかのメラニン色素が欠乏してる人のことで……

 ということは、別に血の色に変化は無いはずよね?


美琴「ねぇ、鈴科さん……指、さっき倒れたときに切ったんじゃない?」


 差し出された掌。
 その人差し指の小さな傷から、「青い」血が滲んでいた。


 鈴科の顔を見る。
 青い目がギョロリとこちらを見つめていた。

 幽霊なんかではない。怪談なんてものは何かの見間違いか思い込みか、でなければ作り話。

 もしくは、実際に存在する『何か』が、人の口を渡り渡って変化したもの。


美琴「貴女まさか――――!?」



鈴科『ナイトメア』



 室内が冷たい空気に包まれる。
 この世ならざるモノの気配。

美琴「………………馬?」

 鈴科の背後から、突然馬が現れて、嘶いた。


 そしてその光景を最後に、美琴の意識は途切れた―――― 



 同時刻。

 まだ、佐天との連絡は付かない。

 今、初春飾利は、佐天涙子の部屋にいる。

 いつ帰ってきても良いように。


初春「まったくもう! 部屋の鍵を開けっ放しにするなんて無用心なんですから!」


 携帯電話が放置されていた。
 近所に出かけるのなら、そういうこともあるだろう。

 だけど帰ってこない。

 何となく、このまま待っていても一生帰ってこないのだろうと思った。

 時計の針が、カチカチとうるさい。


初春「……どうしたっていうんですか?」


 携帯電話に着信は無い。

 時計がうるさい。


初春「何で……何も言ってくれなかったんですか?」


 その音に急かされて、初春は部屋を飛び出した。

 待っていても会えない。
 嫌な、確信めいたものがあった。

初春「……っ! 佐天さん……お願い! 無事でいて!!」

 心の叫びが口に出る。


 気付けば、初春は一七七支部に進入していた。
 ここのPCからなら、学園都市のセキュリティーにだってハッキングできる。

 PCが立ち上がるまでの僅かな時間さえもどかしく、初春は落ち着き無く指を動かした。


初春「佐天さんの行きそうなところはどこ……?」

 頭脳をフル回転させる。
 初春は、決して感の良い人間ではない。

 ただ、世界で一番の親友だと信じている彼女のことなら、誰よりも分かるつもりだった。

初春「夕べから連絡が取れない……なのに今日御坂さんと会っていた?」

 ということは、誘拐ではない。自分の意思で姿を隠したのだ。
 なら、人気のないところを通って移動しているはず。
 まずは人通りの多いエリアを無視して、監視カメラの映像をハッキングする。

 ブラッククロスの出現以降その数は減っているものの、それでも夜遊びを控えない者も多い。
 スキルアウト達の溜まり場にも佐天は寄り付かないはず。
 治安の悪いエリアもカット。

 あとは――――


初春「お願い……ここに居て……!!」


 願いを込めて、エンターキーを叩いた。



 雨が降っていた。

 ここは、地盤沈下や建物の老朽化で危険区域とされている廃墟群の真ん中。
 私は雨宿りしようと、古くなった、今にも崩れ落ちそうなビルの軒先にしゃがみ込んだ。

 こう天気が悪いと、ただでさえ憂鬱な気分が余計に滅入る。


 御坂さんは思ったよりも元気そうだった。
 流石は、私の憧れの人。

 白井さんも同じく。
 でも、無茶をさせてしまったのは事実だ。
 二人には感謝してもしきれないな……


 そして、初春……


 「結局、お別れは言えなかったな……」


 アルカールさんからのアドバイスだった。

 会えば別れが辛くなる。
 だから、初春にだけは絶対に会えなかった。

 連絡も、誰よりも早く切った。
 携帯を持つ手が震えた。

 そして着信拒否にしたあとで気付いた。


 「もう、携帯なんか持たないんだから関係ないじゃん」


 最後の最後まで、なんか抜けちゃってるんだよなぁ……

 考え事をしていると、バチャバチャという誰かの足音が聞こえてきた。

 こんな時間に、雨の中こんな所を……?

 すぐに動けるように身構えた。
 腰に隠した拳銃に手を添える……


 足音が近づいてきた……


 「…………」


 すぐそこの角まで近づいている。

 ……来る――――!!


 「止まれぇ!!」


 飛び出して銃を突きつけた。
 初めて持つ殺人の道具の重みに、手が震えている。

 このまま撃っても当たらないだろう。

 いや――――

 「……え?」

 撃つ必要は無かったのだから、どうでもいい。


初春「……佐天さん」

佐天「……初……春……?」


 どうして――――?

佐天「うわっ!?」


 初春が飛びついてきた。

 暴発しないよう、慌てて銃から手を離す。
 銃は、カラカラと乾いた音を立てて地面を滑った。


初春「佐天さん……良かった……また、会えた……!」

 私の腕の中で、初春が泣いている。
 いや、雨の所為で、どれが涙なのかは分からないのだが。
 全身ずぶ濡れなのは、きっと傘もささずにここまで走ってきたから。


佐天「初春……どうして?」

初春「それはこっちのセリフです!! 何なんですかその拳銃は!? どうしてそんな物を……!?」

佐天「……」

初春「何を……隠してるんですか……?」

佐天「それは――――」


 それは、言えない。


 いや。別に言ってしまっても構わないのだ。
 本来なら、説明してしまったほうが手間が省けるというものだ。

 何故なら、そうすれば記憶を消去されて、この関係も忘れることができるのだから。


 この胸の痛みさえ、消し去ってくれるというのだから……


 そのとき――――


 「感動の再会だな」


 闇の中から声が聞こえた。

 二度と聞きたくないと思っていた、地の底から響いてくるような、悪魔のようなその声。


 私を殺した男の声だ。


佐天「……シュウザー!!」


 深い闇の中から、鉛色の両腕をぎらつかせ、二メートルを超える巨体が現れた。
 銀の髪を逆立たせた厳つい大男は、歪で醜悪な笑みを浮かべている。

 ブラッククロス四天王。最後の一人。
 不死身の男。

 シュウザー。


シュウザー「くくく……!! まさか本当に、あのときの小娘がなぁ……!!」


 よくもまぁ……ここまで対照的な再会があるものだ……!

初春「ブ、ブラッククロス……!?」

佐天「下がってて初春!!」


 私は初春を庇うように一歩前に出た。

 前とは違う。
 もう、むざむざ殺されたりはしない!!


シュウザー「麗しき友情というわけだな。だが……いかんせんその気持ちは友人には伝わらなかったらしい」

 シュウザーの目が初春に向けられる。

 止めろ……そんな邪な目で初春を見るな……!


初春「さ、佐天さん……? こ、これって……!?」

佐天「――――逃げて初春……! 早く!!」


シュウザー「逃がすものかよ……!!」

 シュウザーが右腕を振りかぶり駆け出した。
 こっちに突っ込んでくる。

 このままでは、初春もろともあの爪で刻み殺される……!?


 背中の熱を思い出す。

 鼻血を噴出して倒れる友の姿を思い出す。


 させるわけにはいかない――――


 どうやら、先延ばしもここまでのようだ。

 あの時と同じだ。


 戦う手段ならある。

 けど怖かった。

 怖いけど……けど――――


 『一般人に正体を知られた場合は、全ての記憶を消去される』


 でも、『記憶』と、『親友』ならどちらが大切か。


 考えるまでもない。


 世界がスローモーションに見える。

 心臓が燃えているようだ。

 体中を、何か熱いものが駆け巡る。

 握る拳は炎になる。

 踏み出す足は光になる。

 吹き荒ぶ風を額で切り裂き、蒼いマントをなびかせる。

 身を包む紅い鎧は、手探りの闇の中でも鮮烈に輝いていた――!


佐天「変身! アルカイザー!!」


佐天『ブライトナックルッ!!』


 光の拳が、シュウザーの斬撃を迎え撃つ。
 以前アルカールによって放たれたブライトナックルは、この男の豪腕に対して互角に渡り合った。

 そして――――


佐天「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 アルカイザー、佐天涙子のブライトナックルは、その一撃を遥かに凌駕する……!


シュウザー「ぬぅおおッ!!?」

 振り下ろされた鋼の爪は木っ端微塵に吹き飛び、鉛色の豪腕をも巻き込んで炸裂した。

シュウザー「ふ……ふはは!! たしかに……! 報告の通りの強さだ!!」

 自身の腕が破壊されたというのに、シュウザーはその事実に驚喜している。


シュウザー「くくく……これだ……これこそが……!」

佐天「……っ!?」


 不気味さを感じ、それ以上の追撃を躊躇ってしまう。


初春「――――」


 初春飾利は信じられない光景に言葉を失っていた。


 ようやく、居なくなった親友に会えたと思ったら、突然銃を突きつけられた。


 そのことを問い詰めようと思ったら、今度はブラッククロスの怪人が現れた。


 だから、逃げないといけないと思った。


 けど足が動かず、逃げそこなった。


 怪人が迫ってくる。死ぬと思った。


 そうしたら、目の前の親友が、紅いヒーローに変身していた。



 これは『夢』?



 それとも、『悪い夢』?



佐天「シュウザー……! 私の友達には、指一本触れさせない!!」

シュウザー「……くっ、くくくかかかかかか!!! そうだ! それでいいのだアルカイザーよ!!」

 嫌らしい笑みを浮かべ、シュウザーはビルの上へ飛び上がった。

シュウザー「追って来い!! 決着をつけよう!!」


 逃がさない……!

 アイツだけは放ってはおけない! 絶対に!!


初春「佐天さん!!」


 ふいに、背後から声をかけられた。

 この姿のときに本名を呼ばれて、頭が冷えていく感覚を覚える。


佐天「ごめんね……初春。今まで黙ってて……」

初春「行かないで……」

佐天「もう、行かないと」

初春「何で、佐天さんが……?」

佐天「……」


初春「行かないで……佐天さん……」


 残念だけど。
 その願いは聞けない。

 もう終わったから。


 佐天涙子は。


佐天「初春」

初春「……」


 今日。


 死んだ。



佐天「バイバイ、初春。貴女に会えて、本当に、本当に良かった……」



 落ちこぼれのヒーローは、日常を捨てた。




 【次回予告】

 雨の夜! 再びまみえる佐天とシュウザー!!

 青い血の少女・鈴科百合子は一体何者なのか?

 暗躍するブラッククロスの黒い影!

 そして、佐天を襲う新たな絶望とは!?


 次回! 第十話!! 【再来! ブラッククロス四天王!!】

 ご期待ください!!


 【補足】

 ・鈴科百合子について。
  一方通行では無いです。名前だけ貰いました。
  ちなみに、実際には人間はアルビノでもウサギのように目が赤くはならないそうです。
  なので血が青かろうが目が青くなることはないのですが、演出でそうしています。
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