【第七話・死闘! さらば友よ!!】


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 基地の設備を破壊し、御坂さんとも仲直りできた。

 全ては終わった……はずだったのに。



 「我が基地を破壊するとは見事な腕前……」


美琴「……っ!!?」


 高速で接近する影。

 間一髪それを回避した御坂さん。
 だが――

美琴「……っ! 斬られた……!?」


 御坂さんのわき腹から鮮血が噴出した。


 「一手、御手合わせ願おう……!!」


アルカイザー「あんたは……!?」


 「我が名はメタルブラック……ブラッククロス四天王・メタルブラック」

 「人は私をこう呼ぶ……鋼の侍と!!!」


 【第七話・死闘! さらば友よ!!】




 メタルブラックと名乗ったのは、黒いロボット。
 侍を名乗るだけあって、全身甲冑風の装甲。額には三日月の前立てまで付いている。
 右手には、上下両側に刃の付いた、全長二メートル程の巨大な得物を持っている。

 細身で、人間の男性とほぼ同サイズ。

 これまでに出会った四天王は、皆大きく禍々しく、見ただけで人々が怯えすくむような外見だった。

 それが無いということは……つまり。
 わざわざ外見で怯えさせる必要が無いほどに、強い――ということなのか……?


黒子「お姉さま!!」

 御坂さんを心配して、白井さんが駆け寄った。

美琴「大丈夫。この程度の傷……!」

アルカイザー「御坂さん……無理はしないで下さい。さっき私が殴っちゃったダメージもあるんですから」

美琴「分かってる。けど、超電磁砲を真正面から受けたあなたに言われたくないわね」

 軽口を叩いて、御坂さんはクスクスと小さく笑った。

アルカイザー「御坂さん?」

美琴「まさか……あなたと組むことになるなんてね……」


 御坂さん……

 ええ、私もそうです。
 まさか、あなたの隣に並んで戦えるなんて思いもしませんでした……


アルカイザー「行きましょう……御坂さん!! 白井さん!!」

美琴「ええ!!」

黒子「え、ええっと……わ、分かりましたの!!」


メタルブラック「準備は出来たようだな……いざ尋常に……勝負!!!」

 掛け声と共に、メタルブラックの背中で爆発が起こる。

アルカイザー「速っ……!!?」

 それは加速装置――

 メタルブラックの背に装着された、常識はずれな量のロケットブースターが轟音を立て暴れ出した。

メタルブラック「さあ!! 私にどこまでついて来れる!!!」


 一箇所に固まっていたらまとめてやられてしまう。

 三対一の状況を生かすため、三人でバラバラに散った。


美琴「喰らえぇ!!!」

 御坂さんの右手から電撃が放たれる。

 が、当たらない……!!


美琴「くっそ……! これで……!!!」


 今度は、額から放射状に電撃をばら撒く――!

 点ではなく、線でもなく、面での攻撃。


 それを、

美琴「………………っ!!?」

 メタルブラックは正面から立ち向かい突破した……!!

メタルブラック「温い……! そんな出力で私が止まると思うか!!」

 ブースターによる高機動性と、あの強固な甲冑だからこそなせる業――!

 加速した侍は、まさに電光石火のスピードで御坂さんの電撃の壁をぶち破り――

メタルブラック「悠長に構えるからこういう目に遭う……!!」

美琴「ずぁっ……!!?」

 御坂さんのわき腹。先ほどの斬撃で出来た、まだ血の溢れている切り傷に蹴りを浴びせた……!!


美琴「………………ッ!!!」


 ロボットの蹴り――つまり、加速した鋼鉄を傷口に叩き込まれ、御坂さんは悶絶する……


 追撃を加えようとするメタルブラック。

 それを防いだのは――

黒子「やらせませんの!!」

 白井さんの飛ばした瓦礫の雨……!


 破壊された室内のいたるところに落ちている瓦礫の山。

 それを空中に転移させ、落下させたのだ。


 そして、それを回避した先には――

アルカイザー『ブライトナックルッ!!』

 私が居る……!!

メタルブラック「ぬうっ……!!」


 私が放ったブライトナックルを、メタルブラックは手に持った得物でガードした。

 一瞬、メタルブラックの動きが止まる――!


黒子「止まったが最後ですの!!」


 白井さんのテレポートは、転移地点に物体がある場合、それに割り込んで出現する。
 つまり、例えどんな強度だろうが、関係なく破壊する。

 問題は高速で動き続ける敵の座標を求めること。

 それを私が、こうやってカバーすれば……!


メタルブラック「何っ!?」


 連携――!



 『ブライトポート』



 真っ二つになれ!!!

メタルブラック「やる……!」


黒子「……冗談みたいな方ですの」

アルカイザー「……あれをかわしちゃうんだ」


 メタルブラックの胴を切断しようと転移した鉄板は、かろうじて――

メタルブラック「指……二本か……!」

 左手の指を二本、第二間接から落としただけだった。


美琴「げほっ……! っつー……どういう反射神経よ?」

アルカイザー「御坂さん! 大丈夫なんですか!?」

美琴「ちょっときつい……けど、寝てらんないでしょ……?」


 御坂さんは気丈に振る舞い、ポケットから一枚のコインを取り出した。

 超電磁砲……! 撃てるのか……!?

美琴「流石に走り回るのはキツイわ……だから、協力して……!」

アルカイザー「……! はい!!」


 作戦。
 御坂さんの全力の超電磁砲は音速の3倍のスピードで放たれる。
 それならメタルブラックのスピードでも、そうそうかわすことは出来ない。
 あとの問題はさっきと同じ。アイツの動きを止めること。

 ただし――

美琴「私は思うように動けないし、射出する前の超電磁砲は隙だらけなの……」

 だから、何処でも狙えたテレポートと違い、特定の場所におびき出さなければならない……!!

メタルブラック「作戦会議は済んだか?」

 侍は腰を落とし、右手の武器を振りかぶった。


美琴「余裕ね? 悠長に構えたら痛い目見るんじゃないの?」

メタルブラック「相手が格上ならな」

美琴「……上等」


アルカイザー「白井さん。私がアイツを引き付けます。そうしたらもう一度瓦礫で攻撃を……」

黒子「了解しましたの。あの大釜の前に誘導しますのね?」

 超電磁砲で狙うのは、麻薬を精製していた大釜に決まった。
 御坂さんの位置からも狙え、何より遮蔽物が少ない。
 超電磁砲の威力を減らすことなく、叩き込むことができる……!!


アルカイザー「行くぞ!! メタルブラック!!!」


 作戦開始――!!!


メタルブラック「仕切り直しだな……!!!」

 再び、メタルブラックの背中で爆発が起こる。

 空気を振動させ、真っ直ぐにこちらに吹き飛んできた……!!


アルカイザー「せーのっ!!!」


 私は右側に、白井さんは左側に飛び退く。

 そこですかさず――


 キンッ


 一人その場に残った御坂さんが超電磁砲を放った――!

メタルブラック「ふんっ……!!」


 一発目の超電磁砲は軽々と回避される。

 これで決まっていれば苦労無いのだが……


アルカイザー『アルブラスター!!』

 すかさず、連続で攻撃を叩き込む。

 私の右手から放たれた弾は十数発。
 それぞれが意思を持ったように曲線を描きながら侍に迫った。

 が、アラクーネの体を貫いた流星も、当たらなければ意味は無い。

メタルブラック「まずは貴様が相手をしてくれるのか?」

 アルブラスターの弾幕をを掻い潜った侍が目前に迫る。

 迎え撃つため、拳に力を込める。


 それは囮。


 先ほどの超電磁砲で巻き上がった土煙で姿を隠し、白井さんが瓦礫の山の前で待機。
 私の合図と同時に鉄の雨を降らせる。


 まずは、その為の合図を放つ……!


アルカイザー『ブライトナックル!!!』

 この閃光と同時に白井さんが――!!

 渾身のブライトナックルが命中し、光り轟いた。

 だが、それを受け止めたのは、奴の右手。


 馬鹿な――――


 その手には確か、あの巨大な武器が握られていたはずじゃ……


メタルブラック「どうした……?」

 奴の声にハッとする。


メタルブラック「ここで『援護射撃』が来るはずだったか?」


 白井さん――――


 部屋に渦巻いていた土煙が晴れる。

 部屋の反対側に、白井さんが立っていた。



 腹を刃物に貫かれ、壁に貼り付けにされて――――

アルカイザー「うわああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 ワケも分からず。
 ただ頭が真っ白になって。

 目の前の敵に向かって拳を乱打した。

 奴は、それを全て見切っている。



メタルブラック『タイガーランページ…………!!!』



 武器を手放し自由になった奴の両手が唸りを上げる。
 さっきまで受けるだけだったメタルブラックが、拳が打ち返してくる。

 マシンガンのように打ち出される鉄(くろがね)の拳。

 拳と拳がぶつかり合う。
 奴の拳は徐々に速度を増し、ついに私のスピードを超えた――

アルカイザー「ぐっ……つ……がぁッ!!?」

 こちらの攻撃は届かなくなり、メタルブラックの鋼の拳が何度も打ち込まれる。

 肩。腹。あばら。

 高速で鉄塊を叩きこまれ、私の体が壊れていく。

メタルブラック「ふんっ!!!」

 鋼の侍は、ただ打たれるだけになった私の顔面を左手で掴み、そのまま腕ごと加速させ――


 背後の壁に、思いきり叩きつけた…………!!


アルカイザー「………………っが!!?」

メタルブラック「……当てが外れたな」

 顔面を掴まれたまま、壁にめり込んだ頭を引きずり出され、片手で持ち上げられた。


メタルブラック「貴様なら。もう少し足掻くと思ったのだが……」

アルカイザー「……っ」

メタルブラック「やはり昨日言っていた通り。所詮は借り物の力なのか……」


 ――――――


 今、何て言った?


メタルブラック「もう終わらせよう……涙子」



 ――――――――――



アルカイザー「……………………ラビット?」



 バキィイ!!!!


 乾いた空気の中、何か硬いものをへし折る音が響いた――

メタルブラック「ぬう!?」


 へし折れたのはメタルブラックの左腕。

 さっきまで少女の腹に突き刺さっていたはずの凶器が、その持ち主の腕を切り裂いていた……!!


メタルブラック「己……! まだ息が……!!」


 メタルブラックが振り返る前に、風を切る音が頭上から聞こえた。


黒子「落し物ですの!!」

 空中に現れた白井さんが、メタルブラックの頭部に回し蹴りを浴びせた――!


メタルブラック「……ッ!?」

 バランスを崩し後退するメタルブラック。

 そこへ――


美琴「喰ぅらえぇえええええええええええええええええ!!!!!」


 二発目の超電磁砲――!!


メタルブラック「……!! そうそう上手く行くものかっ!!!」

 ギリギリ。無理やり体をひねって回避するメタルブラック。
 勢いよく飛び上がり、空中で体制を立て直して瓦礫の上に着地する。

 しかし、今度は超電磁砲によって右足を失っていた。


メタルブラック「………………見事!!」

黒子「はぁ……はぁ……これでも駄目……ですの?」

美琴「いや……もう一押し!! 黒子……あんた……!」

黒子「……ッ!? マズイですわね……今まで、痛覚が麻痺していてくれていましたのに……ッ!!」


 顔中に汗が滴っている。

 おそらく、二人とも立っているのがやっとの状態だろう。

 その状態での大技。


 それでトドメに至らなかったという痛恨のミス……


アルカイザー「………………っ!」


 私が……私がもう一度追撃していれば。


 あいつの言葉に動揺した。


アルカイザー「……ラビット」


 本当に?


 どうして……どうしてあんな姿をしてるの?


 どうして、ブラッククロスなんかに?

メタルブラック「最早、遠慮はいらぬ……」


 メタルブラックの背中で、三度目の爆発が起こる。

 見れば、その衝撃に耐え切れず手足のパーツがボロボロと崩れている。
 人間ならとっくに死んでいるだろう損傷でも、痛みを感じない機械の体であれば戦える。

 そう、彼には心が――


 ココロがないのだから――――


 メタルブラックの右手に、いつの間に拾ったのか、再びあの「武器」が握られている。

 そして、いままでに見せたことのない「構え」――



メタルブラック「全身全霊を持って挑もう……括目せよ! これぞ我が奥義!!」




  『ムーンスクレイパー』…………!!!!!


 爆発的に加速した鋼の侍は、まず御坂さんに向かった。


 壱撃。


 そのまま減速することなく、ブースターから噴出する白い炎で弧を描き、白井さんへ。


 弐撃。


 そして、気が散り、何が起こっているのか理解できていない私の下へ。


 惨劇。


 慣性の法則に従い、彼の体はしばらくそのままの軌道で走り――



 その三日月の軌跡が消える頃には、私たち三人の体から、紅い紅い血の花が咲き乱れていた。



メタルブラック「斬り捨て御免……!!」


 静かになった室内に、少女達の倒れる音が響いた……



 ………………霞んだ視界に、紅く染まった御坂さんの背中が見える。


 ………………過敏になった耳に、白井さんの呻く声が聞こえる。


 ………………脳裏に、初春の笑顔が蘇る。



メタルブラック「……何故立ち上がる?」

アルカイザー「……」


 私は意識を失わなかった。

 失うわけにいかなかった。


アルカイザー「ラビット……」

メタルブラック「それは、あの探索用ボディの名だ」

アルカイザー「なら、それが貴方の本当の姿なの?」

メタルブラック「力を求めるのが私の使命だ。そういう風に作られた」

アルカイザー「貴方の求める力って何? 『万能の力』って、つまり人を傷つけることなの?」

メタルブラック「力の使い方には興味が無い。主が求めている。だから私も求める」

アルカイザー「貴方の主って……」

メタルブラック「……Drクライン。ブラッククロスの幹部だ」

アルカイザー「………………ねぇ?」

メタルブラック「何だ?」

アルカイザー「私が敵だって知ってたから。だから私に着いて来て。色々話したの?」



メタルブラック「それ以外に理由があるのか?」


 彼には、心が――

アルカイザー『レイブレード……!!』


 掌に意識を集中する。
 拳に宿った光が形を変え、蒼く輝く光の剣となった。

 その柄を両手で握り締め、いつだったかテレビで見た剣道の構えを取る。


メタルブラック「剣……か?」

アルカイザー「侍なんでしょう?」


 私に呼応するように、メタルブラックも武器を構えた。

 左手と右足がない彼は、片足で器用にバランスを取り衝撃に備えている。


メタルブラック「一体何度、仕切り直させる気なのか……?」

アルカイザー「何度でも。何度でも」

 お前を倒すまで――


 部屋に静寂が訪れる。


 ……


 これまでの戦いでひび割れた天井が……

 崩れて、地面に落ちた――


 「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」


 両者同時に、踏み出す……!!!

 例え初めて使う武器だろうと、このヒーローの体は戦い方を知っている!


 面!

 お互い、上段に振りかぶった剣を振り下ろし、ぶつかり合う。
 鍔迫り合い。火花が弾ける。

 腕力は互角。


 胴!!

 剣を引いて腹をなぎ払う。
 メタルブラックの武器は長い。攻撃しながらも腹はカバーしている。


 小手!!!

 手首を返し、相手の手元を狙う。
 アッサリとかわされ、その隙をつこうと敵の刃が降ってくる。


 それを受け流し、お互いの位置が入れ替わる。


 ……!

 こんなギリギリの戦い方……私の集中力じゃあそうは持たない……!

 次で決める――!!

 体中ののエネルギーをかき集め、剣に流し込む。

 最大出力のレイブレードで、最後の賭けに出る……!!


アルカイザー『カイザースマッシュ!!!』


 大上段に構えた私は、踏み込むと同時にレイブレードを振り下ろす――

メタルブラック「見え見えの攻撃だ!!!」

 メタルブラックの武器は上下に刃のついた特殊な刃物。

 片方の刃でレイブレードの打ち下ろしを受けると、その反動を生かして反対側の刃で攻撃を仕掛けてくる。


アルカイザー「……そっちこそ! この位反応されるのは分かってた!!」


 だが、カイザースマッシュは神速の三段斬撃……!!!

 その反撃にはすでに斬り返した!!


メタルブラック「……!?」

アルカイザー「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 三撃目が、メタルブラックの肩口から叩き込まる。

 レイブレードは唸りを上げ、火花を散らし装甲を破り、鋼の肉体に深々と食い込んだ……!


メタルブラック「………………一本だな」

 レイブレードで彼の体を刺したまま、お互い前のめりになり動けずにいた。

 勝利した私も、もう体力の限界だ。
 体が自由に動かない。

 目の前には、彼の無機質な胸板がある。


メタルブラック「見誤った……お前は、やはり強かったのだな」

アルカイザー「……」

メタルブラック「早くトドメを刺せ。勝った者の勤めだ……」

アルカイザー「ラビット……ううん。メタルブラック」


 彼の体から火花が上がり、背中のブースターが炎を上げた。


アルカイザー「私は強くないよ……やっぱり、私はまだ、まだまだ無力な、無能力者みたいだ」

メタルブラック「……」

アルカイザー「御坂さんたちが居たから勝てたんだよ。白井さんが助けに来てくれたから生きてるんだよ」

メタルブラック「三対一では納得いかないか? 数も力の一つだ。お前の力だ」

アルカイザー「うん、それは分かる。でも多分、私の言ってる意味と、貴方の言ってる意味は違う」

メタルブラック「分からないな……やはり、人間のココロは……」

アルカイザー「いつか分かるよ……だって」


 あなたも私の、友達なんだから。

 その時だった――

 部屋のあちこちが爆発で起こり、基地全体が揺れ始めた。


メタルブラック「限界か……基地が自爆する」

アルカイザー「……!?」

メタルブラック「私の体に異変があった場合、五分後に全壊する仕組みになっている」

アルカイザー「そんな……!!」


 御坂さん――! 白井さん――!!


黒子「っ…………どうやら、まだ寝かせては貰えないようですわね?」

アルカイザー「白井さん!!」

 いつ目を覚ましたのか。
 白井さんが起き上がり、穴の開いた腹を抑えて立ち上がった。

美琴「う……ん……」

アルカイザー「!! 御坂さんも……!!」

 振動と爆音で、気を失っていた御坂さんも目を覚ました。

 白井さんがふらつきながらも傍により、肩を担いだ。


黒子「……っ! テレポートで脱出しますの……さぁ、貴方も早く……!」

アルカイザー「……はい!!」


 レイブレードを消し、震える足で一歩踏み出そうとした。


 が――――


アルカイザー「――――!?」


 すぐ傍の柱が倒れ、天井が降ってきた――

 あーあ。しょうがないな。

 もう、私にこの障害を突破する力は残されていない。


アルカイザー「……これは……無理かな」


 気付くと、私は瓦礫の下敷きになっていた。


黒子「そん……な!?」

美琴「黒子……!」

黒子「お姉さま!?」

美琴「テレポートで……あいつを……!!」

黒子「…………あ……」

美琴「黒子?」

黒子「……どうやら……もうテレポートが使えないようですの…………」

美琴「そんな……!!?」


 空間移動の使用には複雑な演算が必要だ。
 朦朧とした意識で無理をしても発動しない……


黒子「……アルカイザーさんを助けるどころか……私たちの脱出も……!」

美琴「……嘘…………?」


 御坂さんの顔から血の気が引いていく。


 天井が崩れ、御坂さんたちの頭上にその破片が降り注いだ。

美琴「――――!?」

 御坂さんたちに降り注いだ、「粉々になった」天井の破片が土煙を巻き起こした。

 風が吹き、土煙が晴れるとそこに――


アルカール「間に合ったようだな……」


 アルカールさんが立っていた。


美琴「あんたは……?」

黒子「……黒い、アルカイザー……さん?」


 アルカールさんは、御坂さんと白井さんを抱え上げた。

アルカール「アルカイザー。動けそうか?」


 ……さっきまで激痛を訴えていた神経が、その働きを放棄し始めている。

 ……指先しか動かない。


アルカイザー「……無理そうです」


 答えたとたん、私と御坂さんたちの間で爆発が起こり、火柱が立った。

 まるで、ここから先に進むなと言う様に……


 それを受けて、アルカールさんが答えた。


アルカール「そうか。残念だ。私はもう脱出する」


 ……やっぱりなー。

 四天王のところに私一人送り込むような人だもん……

美琴「ふざけないでよ! 私たちだけ逃がすっていうの!!?」

 御坂さんが怒ってる。

黒子「あなた……! ヒーローなのではありませんの……ッ!!」

 白井さんも怒ってる。


アルカール「この炎では無理だな。私にはこの炎に耐える性能はない」

黒子「……っ」

アルカール「それに、いますぐ脱出しなければ君たちが死ぬことになる……」

美琴「……彼女は?」

アルカール「命を犠牲にしてでも一般人を守るのがヒーローだ。アルカイザーにはその責任がある」


 彼の言うことは事実だろう。

 崩壊が進む。


 それにしても、問答無用で脱出すればいいのに……アルカールさんは律儀に応答している。

 ……ああ。そっか。
 彼は仰々しくて、厳しくて、そして優しいんだった。

 待ってくれてるんだ。


アルカイザー「御坂さーん……」

美琴「……アルカイザー?」


 別れの言葉を。


アルカイザー「私ね。本当はヒーローになりたかったんじゃないんです」



アルカイザー「本当は私、御坂さんになりたかっ――





 それから、一週間が過ぎた――。


 「どうやら、もう問題はなさそうだね?」

 重症の美琴たちはとある病院に運ばれて、そこの主治医であるカエル顔の医者の手術を受けた。

 彼は名医で、内臓に致命的なダメージを受けていたにも拘らず、二人の傷を癒してしまった。


 「まあ、しばらくは入院生活だね? 無理は禁物だね」

初春「ありがとうございます。先生」


 医者が部屋を出て、残されたのはベッドに横たわる美琴と黒子。
 そして、面会謝絶がとけ、いち早くかけつけた見舞い客の初春。


初春「でも、命に別状が無くてよかったです……病院に運び込まれたって聞いたときは……」

黒子「心配をかけましたわね……」

初春「本当です! それに、かけたのは心配だけじゃありません!!」

黒子「はて?」

初春「もしものときのために生命保険を賭けておきました!! これで安心!」


 初春の頭に黒子のチョップが振り下ろされた。


黒子「お姉さまと添い遂げるまでは死にませんの!!」

初春「え~ん。冗談なのに白井さんがぶった~」

黒子「なんですのその白々しい泣きマネは……」


 穏やかな空気が流れる。

 しかし……


美琴「………………」

黒子「お姉さま……お姉さまに責のあることではありませんの……あれは仕方が……」

美琴「………………」


 あの日、美琴から笑顔が消えた。

 自分達だけが生き残ってしまったということ。

 そして、せっかく友達になれると思った矢先の別れ……


美琴「これからさ。一緒に戦えるんじゃないかなって……思ったのに……」

黒子「……彼女は、きっとお姉さまに後悔して欲しいとは思っていませんの」

美琴「だって……」


初春「……御坂さん、どうしたんですか?」

黒子「ご友人を亡くされたんですの……」

初春「そんな!?」

黒子「あの基地に、私達以外にもう一人居ましたのよ……」

初春「初耳です……」


 誰も何も言えず、重苦しい空気だけが、病室に漂った。

初春「……ちょっと、換気しますね」

 初春がイスから立ち上がり、窓へ向かった。
 優しい彼女らしい気配り。

 窓を開けると、外の風が部屋に流れ込み、白いカーテンを揺らした。


 美琴は、風になびくカーテンを見て、彼女のマントを思い出した。


 瞳に浮かんだ涙を見せないように、布団を頭まで被る。


 なんとか元気付けてあげたい……

 初春はそう思い、とりとめもない話を切り出した。



初春「あの……実はさっき、病院の前でアルカイザーさんに会ったんですけど……」



美琴「…………」

黒子「…………」



美琴・黒子「「はぁ!!!!!?」」

初春「いえ、あのですね? どうも御坂さん達に会いに来たらしいんですけど」

 ………………

初春『こんな所でどうしたんですか?』

アルカイザー『おやお嬢さん。奇遇ですね』

初春『ひょっとしてこの病院に怪人が!?』

アルカイザー『いえいえ。カエルによく似たお医者さんは居ますが、彼は怪人じゃありませんよ』

初春『そうですかー……よかったー……』

アルカイザー『実は先日お世話になった御坂さんと白井さんに会いに来たのですが』

初春『え! 御坂さんたちに!?』

アルカイザー『私はヒーローなので病院に入るわけにはいかないのだ』

佐天『そうだったんですかー』

アルカイザー『そうだったのだー』

 ハッハッハー!!

 ………………

初春「と、いうわけで。御坂さんと白井さんにお見舞いを伝えておいてくれって……」


美琴「……」

黒子「……」

初春「あ! そうだ……それから――――」


アルカイザー『いやー。私も流石に死ぬかと思ったんですけどね』

アルカイザー『体の方は治癒が始まってたから良いとして、炎と爆発がね』

アルカイザー『でも何か平気でした。アルカールさんいわく、「特性」だそうです』

アルカイザー『なので心配要りません。ではごきげんよう』


初春「ですって。何のことでしょう?」

美琴「……」

初春「……御坂さん?」

美琴「……ふ……ふふふ……特性とか……対策とか……!」

黒子「お姉さま?」

初春「じ、じゃあ私帰りますね!? 失礼しまーす!!!」



 フザケンナアノヤロー!!! ビリビリー!!!

 シビレアバババババ!!? オネエサアビブッベベベ!!!?



初春「うわ~避難してよかった~。白井さん入院長引きそうだな……」


 騒がしい病室。

 そこへ向かう廊下に、静かな足音が響く。

 初春が振り返った。


初春「あ……もう! 遅かったじゃないですかー!!」





佐天「ごめん! ちょっとやることがあったから!」





 落ちこぼれのヒーローは、一つの戦いを超えた。




 【次回予告】

 佐天たちがメタルブラックに挑んでいた頃、もう一つの物語があった!!

 奇妙な生き物と、学園都市の動物たちが出会うとき!!

 物語は始まる!!

 次回! 第八話!! 【迷走! コットンの冒険!!】!!

 ご期待ください!!


 【補足という名の言い訳のコーナー】

  ・メタルブラックについて。
   「なんでラビットやねん」というツッコミにお答えします。
   まず、佐天を焚きつけて美琴と戦わせる一因が必要でした。
   それから、メタルブラックとの因縁を深くしたいというのもありました。
   というわけで、原作のゲームではラビットとメタルブラックはまったく無関係のキャラクターです。
   では何故ラビットなのかというと、一番マスコットキャラっぽいから佐天と絡ませたかったのです。

  ・レイブレードについて。
   ニッチなマニアとか言ってごめんなさい。
   レイブレードめちゃくちゃ好きです。ニッチなマニアは俺です。
   だからメタルブラック戦で特別扱いしたかったんだよぉ!!
   武人キャラ相手に剣で一騎討ち挑むアルカイザー書きたかったんだよぉ!!
ツールボックス

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