【プロローグ・衝撃! 佐天涙子死す!!】


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 佐天涙子(さてん るいこ)は学園都市で改造された無能力者である。

佐天「何この空しいナレーション」

初春『はい? どうかしました?』

佐天「ううん。なんでも無いよ」

 私は名前は佐天涙子。科学の街・学園都市に住む、ごく一般的な学生だ。

 親友の初春飾利(ういはる かざり)に誘われて、新しく出来たアイスクリーム屋に向かっているのだが…


佐天「この辺りの筈なんだけどなー……」

 そう呟き、携帯のナビで現在位置を確認する。
 あまり来ることの無い学区のため勝手が分からないが、かれこれバスを降りて三十分。
 流石に迷ったのは間違いないようだ。

佐天「あ! さっきの道、一本間違えてた……」

初春『やっぱり……遅いと思ったら。迎えに行きましょうか?』

佐天「ああ、いいよ。大丈夫。すぐ行くから先に食べてて」

初春『そうですか? じゃあ……早く来てくださいね?』

 そう言って、初春は電話を切った。

 それにしても今日は天気がいい。
 だから、今日は平穏無事ないつもの日曜日のはずだ。
 たまには、少しぐらいの回り道は構わないよね。

 そう思って振り返り、気付いた。

佐天「あれ? ここ通れば早く着きそう……」

 携帯の液晶に移された地図と、目の前にある光景を見比べる。
 どうやら、地図上には出ない裏道らしい。

 回り道は、どうやらしなくても済みそうだった。

 【プロローグ・衝撃! 佐天涙子死す!!】




 学園都市は最先端の科学技術に守られている。
 親元を離れ、未成年者が寮暮らしをする街なのだから、それ位のことはやってもらわないと困る。

 しかし、実情は違った。
 毎日、どこかしらで問題が起こっては、それを解決するために風紀委員やら警備員やらが出動する。
 中途半端に『力』を手に入れた輩。手に入れ損なってヘソを曲げた輩。
 そういった連中が群れを成して、自分達よりも弱い人間で憂さを晴らす。
 それが学園都市の日常茶飯事だった。
 そういった事件の多くは、私が今歩いているような、薄暗く小汚い路地裏で起こる。

 だから、それもそういう類のものだと思ったんだ。

佐天「……」

 「キー」
         「キー」
              「キー」
   「キー」

 赤、青、黄、それからピンク? の全身タイツの集団が、そこにいた。


 ナニコレ?

佐天「えっと……コスプレパーティ?」

 路地裏を進むと、少し開けた場所に出た。
 目論見どおり、そこを抜ければ目的地の近くに出るようだ。

 が、この光景は一体どうしたものか……

佐天「新手の新興宗教……って感じじゃないけど……」

 関わらないに越したことは無い。
 そう判断して、こっそりとその場を離れることにした。

 幸い、何やら連中は一箇所に集まって相談でもしているようだ。
 こちらには気付いていない。

佐天「じ、じゃあ。そろ~っと、見つからないように……」

 長居は無用。慎重に、且つ素早くここを通り抜けよう。

 抜き足、差し足、忍び足。

 そして千鳥足。

 ガシャーン! と大きな音を立て、足元にあったゴミ箱が倒れた。

?「キーーーーーーーー!!?」

 タイツの男達が一斉にこちらを向く。

佐天「う、うわああああああぁぁぁぁぁ!!?」

 「キーーー!」
                「キーーー!」
       「キーーー!」

 タイツの男達が奇声を上げながら迫ってくる。
 その異様さに恐怖を感じ、私は全力で路地裏を駆ける。

 目をつぶって駆ける。
 走る。走る。
 全力で走る。

 そして、背後で金属音がしたことに気付いたときには、もう――

佐天「――――あれ?」

 全身の力が抜け、私は地面に倒れ付していた。
 目の前を、ネズミが一匹、通り過ぎた。

 ――――背中が熱い。

 何が起こっているのかわからないが、とにかく非常事態だ。

佐天「何……これ?」

 力の入らない体を起こすことを早々に諦めた私は、
 自分の状態を確認しようと、さっきから妙に熱っぽい背中に触れた。

 ヌルリ――――とした感触。

 恐る恐る、その右手に目をやると、何やら赤い液体がベッタリと付いていた。


 「見られたか……」

 何者かの声が聞こえる。
 野太い男の声。忌々しげに、こちらを睨んでいるのを背中越しに感じた。

 「まぁ、構わん。目撃者の一人や二人、消してしまうだけだ」

 そう言って、男は私に近づいてきた。
 殺される――――それだけは、はっきり分かっていた。

佐天「やだ……嘘……」

 視界が霞んで、目蓋が重くなってきた。
 このままここに放置されるだけでも、きっと私は死ぬだろう。
 それなのに、男は確実に息の根を止めようと近づき、そして――――


 「死体は有効利用してやろう。怪人としてな」


 重い、金属がぶつかる様な音を響かせた。

 「ぬう……!?」

 動くことすらままならない、死に損ないの小娘にトドメを刺す為の一撃。
 しくじりようの無いその凶刃は、黒い閃光と共に阻止された。


 「貴様……何者だ!?」


 地面に伏した少女と、彼女を狙う巨漢の間に、いつの間にか黒い男が立っていた。
 全身を闇色の鎧で包み、同じ色のマントが風になびいている
 顔は見えない。シャープな輪郭の仮面が、陽光に照らされ鈍く輝いている。


 「そこまでだ……ブラッククロス」


 黒い男の一言に、巨漢は目を見開いた。

 「我々のことを知っているだと……?」

 「知っているとも。お前はシュウザー。ブラッククロス四天王の一人だ」

 次々に、極秘であるはずの情報を口にする黒い男。
 シュウザーと呼ばれた巨漢の顔が、見る見る歪んでいく。
 それに伴い、彼から発せられる怒りも、明確な殺意へと変貌していった。

 「そこまで知られているとはな……最早生かしては帰さん……!」

 シュウザーは地を蹴り、黒い男へと突進した。

 それは、身の丈2メートルを優に越す大男とは思えないスピードだった。
 一瞬で距離を詰めると、同時にその豪腕を打ち下ろす。


 『ブライトナックル!!!』


 しかし、黒い男はその攻撃に対し真正面から打ち合った。
 再び黒い閃光が走り、男の右腕が真っ直ぐに突き出される。
 力は互角。お互いの拳がぶつかり合い、動きを止めた。

 シュウザーの拳は凶器だった。
 比喩ではない。本来拳があるべき部分が、巨大な鋼鉄の爪になっているのだ。
 そこに付着した血液は、先ほど切り裂いた少女の背中から溢れたものだった。

シュウザー「ぬうう……! 俺がパワーで互角だと!?」

 「そう。そしてスピードは私の方が上だ」

 そう告げて、黒い男は体を半回転させる。
 そしてその勢いを殺さず、そのままシュウザーの横っ腹へ叩きつけた。

 『スパークリングロール!!!』

 二度、三度。半回転しながら叩きつけられる裏拳。
 一度打つたびに今度は逆方向への半回転。
 その不合理な動きで、何故それ程のスピードが出せるのかは分からないが、ともかく――
 シュウザーはそのトリッキーな攻撃に反応しきれず、黒い閃光が上がる度、苦悶の声を上げた。

 その乱打から逃れようと、シュウザーは再びその豪腕を奮う。
 爪だけではない。彼の腕は肩から先が全て鉛色の分厚い鋼鉄で覆われている。
 当たれば骨が折れる程度の話ではない。

 必然、黒い男は回避のため後方へ跳ぶ。
 しかし、地に足を着けたのは一瞬だった。
 あんな大振りの攻撃。素人同然の隙を見逃すほど、この男は甘くない。
 人間離れした脚力で衝撃を吸収し、そのまま全身をバネの様に跳ね返す。
 少女への凶行を阻止したときと同じ。男の体は黒い弾丸となって撃ち出された――――


 『シャイニング……キック……!!!!!』


 慌てて防御の構えを取るシュウザー。だが、間に合わない。

 衝撃が、その心臓を貫いた…………!


 「逃がしたか……」

 そう呟いたのは黒い男だった。

 確かに、放たれた黒い弾丸はシュウザーの胸を貫いた。
 が、そこに心臓は無かった。

 「すでに、全身を改造済みか……」

 最早人間ではないあの男を倒すには、その全身を焼き尽くすしかないのかも知れない。

佐天「う、うぅ……っ……」

 「! まずいな……これは……」

 思いのほか手間取った。
 戦いの間にも、少女は衰弱している。

 「しっかりしろ! いかん、このままでは助からない……!」


 体が光っている……

 もう、熱いのは背中だけではない。
 心臓から、熱い何かが全身を駆け巡る感覚。

 力が湧いてくるような……

 おかしいな? 私は死ぬはずなのに……
 体に力が入らなくなって、視界が霞んで、目蓋が重くなったはずなのに……

 「…………おい! しっかりしろ!」

 誰かの呼ぶ声が聞こえて、私は軽くなった目蓋を開く。


 目の前に、黒い男が居た。


佐天「きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!?」


 「うわっ!? ビックリした!」

佐天「いやぁ! 変態! 変態! コスプレ!!!」

 「この格好が変態だと? 自分の姿をよく見てみろ」

佐天「うわぁ!? 私も着てる!? 何で!!?」

 廃ビルの割れた窓ガラスに自分の姿を映す。

 私の体は、全身を赤い鎧で覆われていた。青いマントが、そよそよと情けなく揺れている。
 顔は見えない。仮面の額に、一本の角が生えていて何ともマヌケだ。

佐天「な、何よこれ!? あなたたち何なの!?」

佐天「私にまでこんなもの着せて……ふざけてるの!?」

 「落ち着きたまえ。自己紹介しよう。私はアルカール。サントアリオのヒーロー協会から来た。」

 そう名乗って、黒い男・アルカールはヤレヤレといった様子で溜息をついた。


アルカール「いいか、君の命を救うにはこれしか方法が無かった」

アルカール「君をヒーローにするしかなかったのだ」


 ヒーロー? 何を言ってるのこの人……


アルカール「君にその資格があるかどうかを細かく調べている余裕がなかった」


 でも……そうだ。朦朧とした意識の中で確かに見た。
 あの凶悪な大男相手に、この自称ヒーローが大立ち回りして見せたのを。


アルカール「だが、今日から君はヒーロー『アルカイザー』だ」


佐天「私が……ヒーロー……?」


 アルカイザー、と。初めてそう呼ばれた。


アルカール「ヒーローになってしまったからにはヒーローの掟に従わなければならない」

佐天「掟?」

アルカール「ヒーローにふさわしくないと判断されれば、消去される」

佐天「消……去?」

 それはつまり……殺されるということ?

 折角助かったのに。今度はその助けてくれたはずのヒーローに殺されるの?

アルカール「一般人に正体を知られた場合は、全ての記憶を消去される」

 記憶の消去……
 そんなの、死ぬのと変わらないじゃない!

佐天「何それ!? い、いらないよこんな力!」

 怖い怖い怖い!


アルカール「ならば、使わないことだ」


佐天「へ?」

アルカール「力を使わなければ、君はただの一般人として生きられる」

アルカール「悪用さえしなければいい。今日のことを忘れて、元の生活に戻りなさい」


 それだけ言い残して、アルカールは姿を消した。



 約束の場所に、親友は所在なさげに立っていた。そして――

初春「あ、佐天さーん! 遅いじゃないですかー」

佐天「ごめん初春ー。また道間違えちゃったー」

初春「もー。だから迎えに行きましょうかって言ったのにー」

佐天「あはは……あれ? アイスもう食べ終わっちゃった?」

初春「まだですよ……だって一緒に食べたかったんですもん!」

 そんな、言われたこっちが恥ずかしくなるようなこと言う。


 屈託無く笑う親友。

 おいしいのかおいしくないのか微妙な新作アイスクリーム。

 平穏無事ないつもの日曜日。

 それなのに、私一人が変わってしまった。


初春「どうかしました?」

佐天「ううん。なんでも」


 出来の悪い、幼稚なお話。


 落ちこぼれのヒーローは、まだ自覚すら持っていない。




 【次回予告】

 ヒーローの力を得た佐天涙子!
 しかし! 彼女はまだ己の運命に気付いていない!

 乙女の悲鳴が木霊し、友に危機が迫るとき!
 学園都市に、新たなヒーローが現れる!!

 次回! 第一話!! 【変身! アルカイザー!!】!!

 ご期待ください!!
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