キョン「お前まさか……ハルヒの事が好きなのか?」7


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「もう時間。そろそろ出発すべき」
長門の声で現実に戻る。
ウニ条の顔がムカついたので五、六発ほどぶん殴った。
改めて見るに、こいつは修道服が良く似合う。
更に二、三発ほどぶん殴る。

「ちょっと! それくらいにしてよ!」

「そうですの! 戦いの前に怪我をしてしまっては元も子もありませんの!」

おいおい、長門の能力を忘れたのか?
なあ、長門!

「死んでなければ治せる」

「……いやあの長門さん? 死ぬ直前まで殴られて、完治させられてまた殴られるって、俺はどこの戦闘民族ですか!?」

知らんがな。

……とにかく、今から北校へ向かう。
『佐天涙子』と決着をつける為に。

覚悟はいいか?
死ぬ覚悟と、殺す覚悟だ。
俺たちは死人……死人は最早、死ぬ事は無い。
敵は殺す……肉の一片たりとも残さずに、この世から消し去るんだ。

殺せ! 殺せ! 殺せ!

御坂が叫ぶ。

「殺せ! 殺せ! 殺せ!」

白井が、長門が、妹が、よつばが、叫ぶ。

「「「「殺せ! 殺せ! 殺せ!」」」」

ウニ条が吼える。

「殺るしかない! 殺るしかない! うおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 

 

 

 

――そして、俺たちは長門の部屋を後にした。

 

「しかしキョン、お前の足……凄い事になってるな」

ウニ条が言う。
確かに俺の足は変わった。
この一週間、踊りに踊り狂い、肉が裂け、骨が砕けたその足を、長門が治し、更に踊る。
超回復、というやつか。
それを繰り返したお陰で、俺の両足は、それぞれが胴体より太くなり、メイド服のスカートからはみ出していた。

「……正直、気持ち悪いですの」

白井が冗談を言う。
自分が、細く痩せた足をしているものだから、この俺の取り返しのつかない見事な足に、嫉妬しているのだ。

「素晴らしい。私はそう思う」

長門は分かっている。
この、ムッキムキの筋肉と骨格の芸術を。
平凡な一般人の俺でも、こんな風になれたんだ。
こんなに嬉しい事は無い。

夜道を歩きながら、出くわした通行人が俺の足を見る。
メイド服に、ムッキムキの足。
みんなの目が、俺に釘付けだ

いつの間にか、ウニ条や御坂は、俺から距離をとっていた。
比較されるのを恥じているのだろう。
可哀想に。
しかし、俺でさえ手に入れることが出来たのだから、ウニや御坂にも可能なはずだ。

想像してみてほしい。
両足だけ、ムッキムキマッチョの御坂を、白井を、ウニ条を、妹を、よつばを!

嗚呼、素晴らしき哉、筋肉!

この筋肉さえあれば!
『佐天涙子』を打ち負かせる!
そう思うと、やはり全員に踊りの訓練をさせるべきだったか、と後悔した。
しかし時間は戻らない。 

 

 

 

二度目の、夜の北校。

俺たちは校門をくぐった。
そこは一度目の北校とは違っていた。
グラウンドはライトアップされ、ポールの上に括り付けられた古泉の死体も、光に照らされていた。

何だ、何なんだよ、これは!
古泉! お前は何で、額に『馬鹿の末路』なんて書かれてるんだ!
マイクロビキニが素敵に似合っている分だけ、尚更に酷い有様じゃないか!

「お姉さま……屋上に……」

「ええ……いるわね」

何? 何がいるの? 古泉をこんな目に合わせた奴がいるっていうのか?

「キョン。気配を感じるだろう? ……『佐天涙子』だ」

俺の視線が、屋上のフェンスへ移る。
そこにいたのは、黒髪ロングの、御坂や白井よりは大きく、朝比奈さんよりは小さな胸の持ち主の少女だった。

「……私と比べて、どう?」

長門……。お前は、残念だが、あの娘よりは小さいな。

「そう」

酷く落胆した声色と表情(俺にしか分からないだろうが)で、長門は呟く。
ゴメンな、正直に言っちまって。
でも、俺は貧乳もいける口だから安心していいぞ!

『なーに話してるんですか、全く』

拡声器を使っているのだろうか、『佐天涙子』の声が聞こえる。

「佐天、さん……どうしてっ!」

「何故……っ、初春をっ! 一番の親友だったのでしょう!?」

御坂と白井が『佐天涙子』に話しかける。 

 

『んー……どう言えばいいのかなぁ』

声は、続ける。

『能力が発現して……レベルが上がって……効果が強くなっていって……』

はっきりと聞こえる、『佐天涙子』の声。

『……気づいちゃったんですよね』

白井が、問う。

「何に、ですの?」

『私って、レベル0って……ゴミみたいに見えるんですよね、御坂さん?』

「そんなっ! そんな事、アタシは思ったりしていないっ!」

『……本当にそうですかぁ? スキルアウトの連中を、自慢の電撃でなぎ倒しておいて……』

「それは……それは……っ!」

『結局のところ、私もあいつ等の同類だって、思ってたんですよねぇ?』

御坂が、震え始める。

「違う、違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う」

「お、お姉さま……?」

「ア、アタシが嫌っていたのは、努力しない人間で、佐天さんは、違う……」

『佐天涙子』の声が、とても良く聞こえる。

『私、努力なんてしてなかったですよ?』
『レベル0っていう現実を前に腐ってて』
『初春と仲が良かったのは、あの子もたったのレベル1だったから』
『弱者の傷の舐めあい、だったんですよぉ』
『でも。こうして力を手に入れてようやく分かりましたよ』
『御坂さん、こんな感じに私たちを見下していたんだなぁ、……って』 


 「……違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う」

御坂が膝を折る。

「お姉さま、しっかりなさって!」

白井が、御坂の肩を揺さぶる。

修道服姿のウニ条が言った。

「認めるんだ、御坂」

「……え」

「お前は、確かにレベル0を見下していた時があったはずだ」

「それ……、はぁっ!」

「無能力者の扱いは心得てる。ああいう連中は見ていて腹が立つ」
「お前が言った言葉じゃないか? ちゃんと責任持てよ!」

「上条さん! お姉さまは……」

「白井は黙ってろ!」
「御坂、お前は、見下していた、蔑んでいた、笑っていた、軽蔑していた!」
「今は違う? そうかも知れない。けどお前がそう言っていた事を、俺は知っている!」
「学園都市で七人しかいない、レベル5の第三位?」
「その身分が、どれ程の努力で手に入ったのか、俺には想像する事しかできない!」
「耐えたんだろう、堪えたんだろう、歯を食いしばったんだろう、血が滲んだんだろう!」
「そんな努力をした自分に誇りを持つのは悪い事じゃない。でもな!」
「努力しても結果が出なかった奴の事を考えた事があるか!?」
「上を見上げるばかりで、システムスキャンの結果も駄目!」
「簡単に諦めるな? 自分が努力した結果に手に入れたモノを、他の人間が手に入れられると思っているのか!?」
「ふざけるんじゃねぇよ! お前の物差しで勝手に他人をはかるんじゃねえ!」
「例えそんな気は無かったとしても、いや、そんな気が無いからこそ、お前の本音が出てたんだよ!」
「対等に振舞っていたつもりでも、相手はそんな風には感じてなかった!」
「それでもお前が、自分は他人を見下した事が無かった、清廉潔白で道徳的だったと言うのなら!」
「……まずは、その幻想をぶち殺す!」

ウニ条と出会ってから、今まで見た中で、奴は一番、輝いて見えた。

 

「あっあっ、あああああああああああああああああああああああっ!」

 

ウニ条が左手で、虚ろな叫び声を上げる御坂の胸倉を掴み、右手を固く握り締める。

「お、お姉、さま……」

白井は茫然自失としていて、それを止める事も出来ない。

『あはははははははははははははははははははっ!』
『やっと分かったんですね御坂さん!』
『あなたは今の私と同じなんですよ!』
『いつも上からじゃないと人を見る事ができない!』
『レベル5って、そういうモノなんですよねぇ!』

好き放題、言いやがる……。

「おかしい」

ん? 長門、何がおかしいんだ?

「何故、『佐天涙子』の声は、こんなにもはっきり聞こえるの?」

何故って、そりゃあ拡声器でも使ってないと無理だろ。

「あの声には、そういう機械特有のノイズ音が全く無い」

じゃあ、どうやって……。
……!

「そう。『佐天涙子』の攻撃は、もう始まっていた」

そうか、そういうことか!
『佐天涙子』は『風』を操り、その『風』に触れた人物の理性を低下させる!
あのフェンスから、俺たちの場所まで、穏やかな『風』を吹かせている!
自分の声を俺たちに届け、俺たちの声を自分の場所まで『風』に運ばせると同時に、
その『特殊能力』の影響を俺たちに与えている!

「そう。あなたは元から影響下にあるし、わたしはそもそもインターフェイス。『能力』の影響は出にくい」
「貴方の妹や小岩井よつばは、幼すぎて『能力』の影響は目立たない」
「『アラカワサン』に至っては、理性そのものが無い」

 

こん畜生! 先手を取られた!

ウニ条っ! 待てえっ!

「な、何だキョン! 俺はこれから御坂の幻想を……!」

その前にてめえの幻想をぶち殺せ! 自分の頭を右手で殴りつけろぉっ!

「こうかっ!?」

馬鹿なウニ条は、固めた拳を思いっきり自分のこめかみに叩きつけた。
御坂が開放され、地面に崩れ落ちる。

自身を殴ったせいで、海老みたいに反り返った面白い格好で固まっていたウニ条が俺を見る。

「お、俺は……御坂に、何て酷い事を言っちまったんだ……!」

そんな些細な事はどうでも良い! 御坂と白井の頭もぶん殴れ!
俺たちは、今、『佐天涙子』の能力の中にいるんだ!

「……そうだったのか! 畜生!」

ウニ条は、手加減する事無く、御坂と白井の顔面をぶん殴った。

「ぐぼぇ! ……は!? わ、わたくしは何をぼんやりとお姉さまの窮地を見過ごしていたのでしょう!?」

それはお前が実はマゾでありながら、サド的要素を持っていたからだと思うよ。

「んがふっ! ぐぁ……、ア、アタシは、アタシは……!」

「しっかりしろ、御坂! 俺も本音を言って悪かった! けど今はそんな状況じゃないだろう!」

「……でも、本当だった。アタシは、佐天さんを、レベルの低い奴らを、見下していた!」
「そんなアタシに、佐天さんを止める権利なんて……!」

『佐天涙子』の声。

『ですよねー。本当の事ですもん』
『私が御坂さんに、どうこう言われる筋合いはないですよねぇ?』
『何なら私と組みませんか? レベル5が二人、組んだら凄いと思いますよー? くふふっ』

 

俺は叫んだ。

いい加減にしろ! 他人の心を弄びやがって!
遠目で見ても、結構可愛いから素直に勃起していたらこれだ!
調子に乗るな、この淫乱中学生が!

「キョンくん、ぼっきってなーに?」

「ぼっきってなんだー? あははははは!」

「……『アラカワサン』がいつもなっている状態の事」

長門が妹とよつばに説明をしている間に、俺はウニ条たちを庇う様に前に出た。
本当は危険な事はしたくはないのだが、手駒であるこいつらが操られると厄介だからだ。

『……「幻想殺し」かぁ。噂には聞いてたけど、本当に能力を消しちゃうんだぁ』
『それに「キョン」さん、でしたっけ。新川さんから聞いてましたよぉ』
『何でも、この世界の鍵とか何とか。ごく普通の一般人って話でしたけど……』

ああ、その通りだよ!

『……いや、あの、一般人には見えません』

どういう意味だ、この援交中学生!

『え、援交とかした事、無いですし!』
『それに、男の人がメイド服を着てるのって普通じゃないですよね?』
『何より何なんですか、そのキモい下半身は! ムッキムキじゃないですか!』
『うわっ、吐き気してきた! マジでキモい……!』

「……反論できませんわね」

「キョンくん、キモーい!」

「ジャンボ、いみねーな! あははは!」

「……その。何だ、気にするなよ、キョン」

みんな何を言ってるんだ? 俺はこんなに素敵な姿だというのに。
萎えかけた陰茎を奮い立たせて、俺は更に叫ぶ。

……『佐天涙子』ぉっ!
俺の事が万が一、キモいと思うのなら、それはお前のせいだ! お前の『能力』で、こんな感じになれたんだっ!
それが例え、俺の中に眠っていたものでも、引き出すきっかけはお前が作った!
……それをキモがり、笑うなんて許せない!

『……あー、そうですね』
『確かに、私は新川さんに教えられて、「キョン」さんに「能力」を使いました』
『でも、全部、私が悪いんですか? 私に責任があるんですか?』
『あなたが殺した、女性も? 警察の人たちも? 管理人さんも?』
『違いますよね。実際に行動したのは、あなたなんですから』

お前が悪いに決まってるっっっっ!

「キョン……」

人間は誰しも隠したい部分があるもんだ!
それを勝手に引きずり出すように、理性という根源的な法則を無くしちまうなんて、人間として最低の行為だ!
お前の『能力』は、そう、俺のメイド服や素敵にムッキムキな足のキモさより、よっぽどキモい産物だ!
やーいやーい! お前の『能力』、キーモーいー!

「……こ、子供かって……ぇの」

御坂が、立ち上がりながら何やら呟く。

「やれるか? 御坂」

ウニ条が問う。

「アタシも、キョンを見習って……心に、棚を、作るわよ。……それはそれ、これはこれ、……ってね……!」

「お姉さま……黒子も、内なるサディズムを、佐天さんにぶつけますわ!」

……どうやら、士気は上々のようだな。
キャパシティダウンとやらも、『佐天涙子』が能力を使う以上、自分を巻き込むはずだから使わないだろう。
俺たちの、圧倒的有利……!

『……それはどうかなぁ? 私、こんな事もあろうかと、これを持ってたんですよぉ』

『佐天涙子』が、胸の谷間から取り出したそれは――。

                                                             つづく

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