キョン「お前まさか……ハルヒの事が好きなのか?」5


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全員があらかたの治療を終え(全て長門がしたのだが)、まずは現状を把握する事にした。
これも長門の提案だ。

ツインテールの貧乳お嬢様少女は、白井黒子と名乗った。
本人が言うには、御坂とただならぬ関係のようだ。
御坂は顔を真っ赤にして否定してたが、そういうの、嫌いじゃないぜ?

そして。
唯一の被害者である、古泉のまわりに、全員が集まった。

朝比奈さんが、嗚咽を漏らす。
そりゃあ、死体の状態は酷いもんだ。

顔が潰れ、マイクロビキニを着ていて、背中には『 古 泉 一 樹 』の刺青。

あまりにも不憫すぎる。
俺は長門に、駄目もとで生き返らせないか聞いてみた。

答えはノー。
能力を制限されていなくとも、思念体の許可が下りる事はありえないそうだ。

だよな。

人の死は、無かった事にはできない。

……
なあ。せめて、滅茶苦茶になった顔だけでも、戻せないか?

「それは、可能」

長門の呟きによって、古泉の潰れたスイカのような顔面が、生前の頃の整ったものへと修復される。

「古泉……くんっ……」

「……古泉。……短い間しか一緒にいられなかったけど……俺は……」

「アタシが、もっと強ければっ……!」
何か音がした。

内臓がうねりを上げるような音。

見ると、インデックスさんがお腹を押さえていた。

「えへへ。いっきを見てたら、おなかがすいたんだよ……」

この場合、修復される前の古泉の顔面の事を言っているのだろう。
確かに、さっき食べた焼肉と見た目が似てたからな。

……
喰うか?

しかし、流石にそれはできなかった。
仲間を食うなんて、人間のすることじゃない。

悪いな、インデックスさん。

御坂と白井が喋る。

「この方……わたくしが来た時には既に……」

「そうだけど……アンタに責任があるわけじゃないわ」
「責任があるとすれば、アタシたちみんな、だから」

そう。
責任があるとすれば、古泉が殺されるのを止められなかった俺たち全てに当てはまる。

ま、俺は責任なんて持たないんだがな。

ともあれ。

古泉の死体の処分をどうするか、だ。

みんな。何かアイディアはあるか?
「アイディアと申されましても……ご本人の身内などに知らせるべきかと」

「……そうよね。それが一番だと思う」

「俺もだ」

「あっ、でも……」

朝比奈さんが言う。

「……わたしたちは、古泉君の家族がどこにいるのかさえ分かりません」
「そして『機関』と呼ばれる組織に属していた古泉君の事は、その『機関』に問い合わせるしかないと思います」
「でも……」

長門が続ける。

「新川が敵の『能力』にかかっている以上、『機関』に気軽に連絡を入れるのは得策とは言えない」

……
最悪、機関そのものが乗っ取られている可能性もあるからな。

「……そう」

「なんなんですの……『機関』とか、一体……?」

「まあ、学園都市も、他のこと言えねえけどな」

「まあ、ねぇ」

「や、焼肉!?」

……
みんな、俺に考えがあるんだ。

俺は、その考えを話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、古泉の顔を生前よくしていた、気持ち悪いにやけ顔に固定した。

そして……この死体を、学校の旗を揚げるポールのてっぺん、に括り付けてみようと思うんだ。
無論、古泉だと分かるように、こいつの名前を書いた大きな旗をひるがえしておく。

「……キョン。意味が分からない」

「死者への冒涜ですわよ!」

「ないわー。流石にないわー」

「イギリス清教の弔い方が一番だよ! それか焼肉だよ!」

「で、でも! キョンくんには、何か考えがあってのことですよね?」

朝比奈さん……。
モチロンデスヨ?
なあ、長門。

「……彼の言いたい事、それは」
「『敵』に対する意思表明だと思われる」
「このまま古泉一樹の死体を埋めるなりしても、我々の『敵』からの評価は変わらない」

「というと?」

「ある程度、ショッキングな安置方法を取る事で、幾らかの対抗策になるかもしれない」
「一つ。我々が正常な判断力ができないと『敵』が判断する」
「一つ。この行為をすることで、何かしらの罠を匂わせる事が可能」
「一つ。こちらの意図がばれていても、先の二つの可能性がある限り『敵』は少しは判断に時間をかける」

長門……。

「……確かに。理には適ってますわね」

「事件が片付いてから、埋葬すればいいんだしな」

「でも……深読みしすぎじゃない?」

御坂。
やらないで後悔するより、やって後悔するほうがいい。
俺にその言葉を教えた奴は、その信念は貫いたんだぜ?
俺たちは、古泉の死体を学校のポールの頂上に縛り付けた。

俺自身のの身体能力と、白井のテレポートで簡単にできた。

長門が、『 古 泉 一 樹 、 こ こ に 散 る 』と馬鹿でかい旗を出現させる。
風が無くとも、はためいて見えるように、所々に芯が入った、しっかりしたやつだ。
全長二十メートル程の、その旗を、古泉の死体の横に立てる。

ふと見ると、古泉の腹の部分に『 古 泉 一 樹 』の刺青が増えていた。
流石は長門、抜かりないぜ。

俺がポールの上で親指を立てると、長門が下で親指を立てた。

長門は凄い奴だ。
俺が、単に面白そうだから提案した、
この『古泉ポール案』に、それらしい理由を付け加えてくれたのだから。

ま、結果オーライだ。

死んだ古泉だって、俺たちが戦う為のサポートになると思えば、喜んで頷いてくれるだろう。

下に降りた俺は、懐中電灯で古泉と旗をライトアップしてみる。

「……くすっくすっ、し、失礼しますのっ」

「これは……ちょっと……不謹慎だが……ぶははっ」

「んっんっんっ……あは、あははっ」

「バカみたいなんだよ、あはははは!」

「古泉くん……今までで一番面白いですぅ……」

「……」

長門はデジカメで一心不乱に写真を撮っていた。

それ、あとでデータくれよ?

長門は、満足そうに頷いた。

 

 

 

 

 

さて、夜もふけた。
そろそろ、解散するか。

「いやいや! キョン、まだ事件は解決してないって!」

ウニ条め、余計な事を。

「……わたしの部屋に泊まると良い」
「事件が解決するまで、貴方も朝比奈みくるも、自宅には帰らず、固まっていたほうが安全」

……
確かにな。
世話になるぜ。

「それに、学園都市からきたみんなも、拠点となる場所は必要」

「長門さんがいいんなら、俺は頼みたいが。もう金が無いし」

「カレーをたくさん食べれるならいいんだよ!」

「アっ、アタシもその……合理的な面から全員、一箇所にいたほうがいいと思うわっ!」

「……お姉さま。声が上ずってますの」

ま、とりあえず長門の家にお邪魔しますか。
しかし、古泉が抜けたとはいえ、大所帯になっちまったな。

俺、長門、朝比奈さん。
ウニ条、インデックスさん、御坂、白井。

七人か……。

インデックスさんの修道服の価格交渉と、御坂と白井が着ている制服もチェック入れとかないとな。

こうして、俺たちは北校から続く長い坂道を下っていった

「いや、ちょっと待て」
何だウニ条。
俺のモノローグに割り込んでくるとは何事だ?
額に風穴開けたろか? あ?

「い、いや……何か、忘れてはいませんでせうかキョンさん?」

何か忘れて?

俺は頭の中を検索してみる。

なあ、長門。
俺、何か忘れてたっけ?

「分からない」

だよなぁ。
おい、ウニ条、手足を何発か撃たせろ。

「いやいやいや! お前の妹! ほら、ロッカーに入れた!」

「あ、そうだ! ハサミ投げてきた子!」

「何ですの?」

「カレー♪ カレー♪」

「い、妹ちゃんの事、忘れてました!」

……
ああ。
ま、大丈夫だろ。

「って帰るのかよ!」

うるせえ。殺すぞ。

「あの、わたし、連れてきますね」

「いや、俺が行くよ。みんなは先に長門さんの部屋に向かってくれ」

お前、妹にいやらしい事する気か?
「しねえっての! この蒸し暑い中、ロッカーの中に手足縛られて一晩いたら死んじまうぞ!」

翌日の新聞が楽しみだな。

「お前っ……くそっ」

「お姉さま、この方、おかしいんじゃありません事?」

「いや、その……『能力』の影響を受けてるから」

「何故、上条さんの右手で打ち消さないのですか!?」

「だから色々と事情があってね……」

御坂と白井がわいわい言ってるうちに、ウニ条は学校へと走っていった。
ま、頑張れ。
俺はもう、疲れた。
ハイヒールはふくらはぎにくるんだよ。

長門が言う。

「貴方、分かってた?」

ああ。

「何故、妹をスルーしようとしたの?」

疲れてるってのもあるんだがな。
ウニ条の性格を見極めたかった。

「上条当麻の?」

ああ。
いざって時に使えるか、今だ分からねえからな。
新川さんとの戦いだって、ほとんど役に立ってなかったし。

「で、評価は?」

六十九点、ってとこか。
俺の妹……他人なのに気を使う所は、役に立ちそうだ。
「……そう」

なんだ?
長門、笑ってないか?

「そう、見える?」

いや、表情では分からんがな。
なんとなく、な。

「上条当麻は、貴方に似ている」

はあ?
あのウニと俺が?

何? 主人公だってとこがか?

「そういうメタのところもあるのだけれど……」
「貴方にも、他人を思いやるところがある、と言いたかった」

どうだかね。
俺は俺のしたいようにする。
そうできるように『能力』の影響を受けてるんだろ?

「そう……」
「しかし、貴方は……」

その時、ウニ条が、妹を背負って駆け込んできた。

「はっはっはっ……連れてきたぞ……」

「ありがとうございますぅ、あの、背負うの代わりましょうか?」

「いや、もうこのまま長門さん家までいきますよ」

「とうまは女の子には甘いんだよ!」

「ま、小学生の女の子には手は出さないでしょ」

「どこぞの第一位とは違いますものね」

 

 

よし! 長門のマンションまで競争だ!

俺が空に撃った一発の銃声を合図に、全員が走り出す。

「わたくし、長門さんのお宅を知りませんの!」

「テレポーターのアンタには、ちょうど良いハンデよ……ってアタシも知らないわよ!」

「……私が先頭を走る。貴方たちは着いてくるだけで良い」

「って、ゆき、ものすごくはやいんだよ! まつんだよ、カレー!」

「……ちょっ、待っ……俺、さっきまで走ってたし、女の子背負ってんのにぃ!?」

ははは! ビリのやつは夕食抜きだぁ!

「ふ、不幸だーっ!」



古泉よ。
お前がいなくなって、俺の心に、ほんの少し隙間ができた。
でも。
それはすぐに埋められそうだ。

俺は振り返り、学校の上を見る。
視力も向上しているのか、古泉の顔がはっきり見えた。

舌が、だらしなく出ている。

この事件を終わらせたら。
ちゃんと面白く埋葬してやるからな。

俺は、走りながら長門からデジカメのデータのコピーを受け取った。
―――

長門のマンションに着き、人心地ついた俺たちは大きな疲労感に包まれていた。

特に、朝比奈さんの顔色は悪く、少し気になって尋ねたところ、
単に生理がきついとの事だった。
しかし、油断は禁物だ。

俺は長門に生理用品を準備してもらい、朝比奈さんにそれを使用する事を薦める。

「あの……もう使ってますけど」

いえ、今日のゴタゴタで既に汚れも酷いはずです。
さ、替えましょうよ、さあ。

「……アンタ、それセクハラよ?」

御坂が口を挟む。

分かってないな。
俺は純粋に、朝比奈さんの身体を心配してるんだ!
使用済みの生理用品が欲しいなんて、そんなのは二の次でしかない!
だから、さあ! 早く使用済みの生理用品を俺に!

横からの衝撃で俺はぶっ倒れた。

白井が蹴りをかましてくれたようだ。

「そろそろお止めになりませんと、針を体内にテレポートさせますわよ?」

ふっ……。
場を和ませる為のジョークだとも分からない小娘どもが。

俺は次の機会を待つことにした。

悔しいが、こいつらを撃ち殺すのは、まだ早い。

 

そういえば、妹をどうしようか。

長門が言う。

「……貴方が連れてきた、幼女と同じく固める方法もある」

俺が連れてきた?
ああ、親子連れの母親の方を撃っちまって、気絶させて持ってきたアレか。

「固めるって、あの三年前の七夕の時みたいな時間凍結、ですか?」

朝比奈さんが問う。

「今の私にはそれはできない」
「よって、コンクリートで固めてある」

……
長門よ。
流石にそれはまずいのではないかと俺でも思うぞ。

「何故?」

ほら、色々と世間的にな?
分かるだろ?

「理解したとは言えないが、コンクリートは止める。それで良い?」

まあ、いいか。
で、その子はこの部屋か?

「そう」

俺は、ふすまを開けた。

「くそー! 敵か? ここから出せー!」

5
6才の女の子が、両手両足をドラム缶にコンクリ詰めにされていた。

えーっと。とりあえず敵ではないぞ? ちゃんとメイド服を着ているだろう?

「わけわかんないことゆーな! うー……。よつば、おなかすいた! とーちゃんがいえでまってる!」

さて、どうしようか。
ウニ条が幼女に語りかける。

「ええと、お嬢ちゃんはどこの子かな? お名前は?」

そういえば俺、この子の母親らしき女性を撃ち殺したんだっけ。

「こいわいよつば! ろくさいです!」

出した指の数は五本。
うん、フェイントだな、一本取られた。

「……あー、よつばちゃんのお母さんは、その、な」

ウニ条が言いよどむ。
このミスターキョン様が撃ち殺したとは言えまいて。

「よつばは、かーちゃんいないぞ?」

へ?
でも確か、ママーとか言ってた気がするが?

「あのなー! しらないおばちゃんと、おやこごっこしてたんだー!」
「そしておきたら、ここでうごけなくなってた! あはははは!」

ウニ条、好都合だ。
俺の殺した女性はこの子の母親ではないらしい。
事件が終結するまで、ここにいて貰おう。

「……それしかないのか?」

大事の前の小事だ。
……
まあ、長門よ。
コンクリからは出してやれ。

「了解」

長門はバールのようなものでコンクリを壊し始めた。
何だか手馴れてるのが少し怖い。
「よつば、じゆうになった! 手が動く! おまえいいやつかー?」

「そう」

「なまえはなんだ?」

「長門有希」

「ゆきかー。よつばはよつばだ! よろしくな!」

「……ユニーク」

何だかよく見ると、よつばは外国人のようだ。不正入国者か?
というか、どこかで見た気がしないでもないのだが。

「アンタも? アタシも、この子の事、知ってるような気がするのよね……」

「おっ、お姉さまのこどもですのぉぉぉぉぉっ!?」

「んなわけないでしょうがっ!」

御坂の電撃が白井に襲いかかる。ほどほどにしておけよ。

「おー! はなびだな! すげー!」

「……んー。キョンくん? ここどこー?」

妹まで目を覚ましてしまった。長門、眠らせておいたんじゃなかったのか?

「……弘法も筆のあやまり」

猿も木から落ちる、つまり失敗か。よっぽどお前の能力の制限はキツイみたいだな。

「面目ない」

仕方ないさ。とりあえずは……飯でも食おうぜ。

「了解。カレーなら大量にある」

よし、みんな! カレーパーティだ!

 

 

 

 

 

総勢九名でのカレーパーティは壮絶だった。
古泉が生きてれば十人だったが、死んだものは仕方がない。

インデックスさんと長門の健啖ぶりは異常なほどで、
まるでスーパーのバックヤードかと思われた山ほどのインスタントカレーは、そのほぼ全てが二人の胃の中に吸い込まれた。

まあ、俺たちも普通に食う分は食ったので文句はないが、俺としてはインデックスさんの修道服がカレーで汚れないか、その一点だけ気がかりだった。
しかし彼女は、暴食には慣れているのか、衣服に染み一つつけずに食事を終えた。
本当に、良かった。

そして妹とよつばが眠くなったと言い出したので、全員交代で風呂に入る事になった。

長門に、俺の着ている森さんのメイド服や、インデックスさんの修道服、更には御坂や白井の学生服を、くれぐれも洗濯などしないように言い含めた。
長門は親指を立て頷いてくれた。

俺はウニ条と風呂に入った。だって男は俺たち二人だけだしな。

風呂の中でウニ条は言った。

「……古泉の事は、残念だったな」

古泉? 何が?

「いや、その……まあ、今のお前には分からないか」

いや、言いたい事は分かる。
古泉の死に、俺が苦しんでるんじゃないかって事だろ。

「まあ、そうなんだが」

ウニ条、今、ここで古泉の事を考えても意味は無い。
まだ、この事件は終わっちゃいないんだからな。
俺たちは、まだやるべき事がある。
後ろを向いてちゃ、前には進めないぜ。

「……強いな、キョンは」

何だか勝手に好感度が上がったようだ。
古泉の死は、俺にとってなんの痛痒も感じる事のない出来事だというのが、分かっていないらしい。
俺は、あいつをどう面白く弔ってやるかに夢中なだけだ。
カレーパーティ中に俺たちは、あらかたの情報交換はしておいた。
白井というレズっ娘は、長門の事を理解するのに難儀していたようだったが、
まあ、大まかにでも分かれば良い。

今日はとりあえず休むか、という所で、インデックスさんがウニ条は風呂場で眠るのが好きだとの意見を出した。

俺はそれに対し、女性陣が入浴した風呂の床や洗面器を舐めるつもりだろう、と問いただしたところ、ウニ条はそれを否定。
今日はちゃんと別室で俺と寝ると言い出した。
全く、男らしくない奴だ。

俺はきちんと、風呂場で寝たいと意見したが、御坂たちには却下され、朝比奈さんは泣く始末。
一体、俺が何をした?

そんなこんなで男部屋、女部屋と分けて就寝しようとした時。
白井の携帯電話に着信が入った。

『くろこぉ~あいしてる~』

御坂の声の着信ボイス。いかしてるぜ。
怒鳴りつける御坂に、白井はシスターズに協力がどうのこうのと言っていたが、
着信名を見ると、急にシリアスになりやがった。

「もしもし、初春ですの?」

「貴女、もう身体のほうは……そうですか」

「……それは、本当ですの? いえ、疑うわけではありませんが」

「分かりました。こちらでお姉さまと協力者とで何とか致しますわ」

「初春は身体を休めてくださいな。……わたくしたちが帰って来た時、元気に出迎えてくださいませ」

白井は携帯を切ると(こいつの携帯ってカッコいいよな)、御坂に言った。

「初春が『敵』の情報を教えてくれました」

「初春さん……大丈夫なの?」

「病院を抜け出して情報収集をしてくれたそうですわ……それより」
「皆さんに、『敵』の情報を、お話しなくてはなりません」
おいおい、何だか急にシリアスになられても困るぜ?
踊るか? おい? ホットペッパ……

俺のお茶目も通じず、全員が白井の言葉を待つ。

何となく居心地が悪くなり、俺も座って聞きの体勢に入る。

「『敵』の『能力者』。今までは詳しい事が分かっていませんでした」
「……実を言えば、わたくしやお姉さまには、心当たりがあったのですが」
「それが、的中しない事を祈ってましたの」

「……黒子。それじゃあ、やっぱり」

「はいですの。『敵』は……彼女」
「佐天さ……佐天 涙子に間違いありません」

「御坂と白井の友達だっていう、その子なのか?」

とウニ条。

「残念ですが……。そうなりますわね」

うな垂れる学園都市勢。

おい、俺たちにも分かるように話せ。

「情報は、貴重。話して」

「喋りにくい事かもしれませんけど……わたしたちにもお願いします」

長門、朝比奈さんも口々に言う。

妹と、よつばの寝息が、やけに大きく聞こえる。

御坂が喋り出す。

「『敵』の正体は……アタシたちの友達だったってわけよ」

「……お姉さま。詳しくは、わたくしが」

「う……ん」
白井の言った事をまとめるとこういう事だった。

『犯罪能力者』の名は、佐天 涙子。
御坂や白井の友人で、元々は超能力とやらを持たない、いわゆる無能力者と呼ばれた人間だったらしい。
それが、ある事件に巻き込まれ、一時的に超能力を得て、それをきっかけに能力開発とやらに励んだらしい。

そして、そいつ ―佐天涙子― は能力の発動に成功。

そのレベルとやらは驚くべき速度で上昇し、御坂と白井が最後に会った時はトップから一つ下の、レベル4だったそうだ。

しかし。

佐天涙子は行方不明となった。
その時、一番親しかったという初春飾利という、さっきの電話の相手が、大怪我を負ったそうだ。
何でも頭の花を全て毟られたらしい。
……
よく意味が分からんが。

しかし、まあ、その佐天涙子とやらの『能力』の詳細はこういう事らしい。

能力は風力使い(エアロシューター)の一種であるが、ある特別な特徴があった。
その『風』にあてられた人物は、『理性を極端に押さえ込まれ、欲望のままに行動する』ようになる。

そして学園都市内で、その『能力』使用したとされる大きな事件を起き、
その後、佐天涙子は学園都市から完全に行方をくらませた。

学園都市での緊急手配で、その能力レベルは暫定5と認定された。

レベル5、というのは軍隊を相手にできるほどの力だそうだ。
ってか御坂もそうなんだよな。物騒な奴らだ。

現在、学園都市からも捕縛グループが進出しているそうだが、
御坂と白井、そしてウニ条とインデックスさんは、友達として止めようとここまで来ていたらしい。

「……できれば、間違いであってほしかったわね」

「けれど、判明した以上は、わたくしたちの手で止めるべきですの」
「能力名『精神破壊(マインドクラッシャー)』」
「……佐天、さんが何を考えているのか分かりませんが、暫定とはいえレベル5
「このまま外の世界で暴れると、彼女の立場は……!」
うん、何だか大変そうな印象を受けた。
しかしな、とりあえず眠ろうぜ?

「……アンタ、気軽に言ってくれるじゃない」

放電しながら睨むな。怖い。

「いや。俺もキョンに賛成だ」

おお、ウニ条。お前も俺の感性に近づいてきたか!

何だか生暖かい空気を振り払うようにして、ウニ条は続ける。

「学園都市を出るときから、この状況は予想していたんだろ」
「なら、やるべき事はかわらねぇよ」
「しっかり、休息をとり、佐天って子に伝えるんだ」
「御坂と白井の友達なんだろ? なら、救えるのはお前らじゃねぇか」
「……俺たちも力になる。だから、今は考え込むんじゃない。行動するんだ」
「その為にも、眠って、力を蓄えとけ」

「……分かったわよ」

「その通りですわね……」

俺は、見逃さなかった。
ウニ条が、何だか格好良い事を言えて、鼻の穴がピクピクしている事を。

俺は、その夜。
ずっとその事をウニ条の耳元でからかい続けた。

何度も、何度も、何度も。

気がつけば、朝になっていた。

ウニ条の目の下には、大きくクマが出来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――

朝。

十分ほどぐっすり眠り、すっきりと目が覚めた俺は、メイド服のしわを伸ばしつつリビングへ向かった。

長門が、TVを見ながら新聞を読んでいた。

TV
のニュースでは、我が北高で、変死体が発見されたと報道されていた。

普通ならモザイクがかかる所だろうに、何故かモロで放送されていた。

そう、古泉だった。

ニヤケ顔で舌が飛び出ていて、マイクロビキニで腹と背中に『 古 泉 一 樹 』の刺青。
長門の作った旗も、朝日を浴びて良く見える。ポールの上で、奴は輝いて見えた。

おい、録画してあるのか?

「もちろん」

そうか、抜かりないな。
ところで、新聞には出てるのか?

「そう。大きく出ている。スクラップしておく」

そういうと長門は丁寧に該当記事をカッターナイフで切り、スクラップブックに貼っていった。

「……よく、できた。満足」

その長門の顔は、今までにも増して人間味が加わった気がした。
俺はこいつの頭を撫でてやった。

「どうしたの?」

……
何でもないさ。嫌だったか?

「寧ろ、心地よい」

それは良かった。

 

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