上条「なんだこのカード」 > Season2 > 11


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禁書「……ワイヤー?」

攻撃に気が付いた時、目の前の舗装路が割れて溝が出来た。どう考えても狙いは自分しか居ない

禁書(こ、この攻撃方法っ。飛び出してたら今頃真っ二つだったんだよ)

こんな方法で攻撃する魔術を使う一派を禁書はもちろん知っている

しかもこの威力だ。該当する人物は一人しか知らない

夏頃までそんな人間に追われていたのだから

目の前でそんな物を見せられて、効果の無い歩く教会とそれなりの防御力しかないシスター用の黒いローブしか装備していない禁書が出来る行動は一つ

禁書(後ろへ逃げるしか無いんだよ!なんでこの人に狙われているのか分からないけど!!)

裏路地は、学園都市のそれとは違って高さは無いが、比較的低くて小さい建物ばかりなので禁書にとっては都合がいい

先程攻撃が有った舗装路に続く裏路地との境で角をなしていた建物の部分が破壊音と共に崩れ落ちる

禁書(ちょっとこれは、余裕がないかも……っ)

一瞬首を後ろに向けたとき、その視界の端に刀の柄が見えた

横の小路へ飛び込む。ギリギリだった

ローブの背面の先が少し裂け、それでも止まらず次の角を曲がる

禁書(このまま行くと大通り、身体能力はアッチの方が上、徐々にだけど追いつかれてる。ジリ貧なんだよ)

後ろの壁が破壊された音が聞こえた

禁書(ジリ貧……?あの人から逃げ続けて?おかしいんだよ)

禁書(確かに、記憶がある範疇でもあの人から逃げ続けてきた。でもそれは歩く教会もあって、更に異国の地だったから)

禁書(でもここ、ロンドンは、わたしには記憶が薄いけど、あの人にとっては)

勘に任せて飛び込んだ次の角

禁書(ホームグラウンドなんだよ!!そんな所で、聖人の身体能力を持った人間から今こうして逃げ続ける事が出来てるなんて)

自分の運が良過ぎるのか、その行動を狙われている。すなわち

禁書(誘導されてる……?!!!)

気が付けばそこは、袋小路だった

 

 

 

 

浜面は腹部で、その銃弾を止めた

対して男の銃は、まだ生きている

男を目の前にして、自らの傷を痛覚して、浜面は前のめりに倒れ込んだ

浜面(……まぁそりゃ、こうなるわな。覚悟はしてたさ)

恐らく来るであろう、男の次の攻撃に身構える

だが、聞こえたのは男の悲鳴だった

手の中の銃を狙った浜面の攻撃は、拳銃そのものは捉える事が出来なかったが、その腕に当っていた

浜面の銃は隠せるサイズで、本当に小さいもの。口径も同じだ。男の防護服が銃弾による出血は許さず、しかし、強い衝撃は確かに伝わった

拳銃を放してしまわなかったのは彼の執念か。それでも銃はしばらくの間、腕がしびれて満足に使えなくなる

そこへ、浜面が助けようとした4人目のスキルアウトが、警備員の男を転倒させることに成功したのだ

倒れてしまえば、腕の痛みもあって、男はじたばたする程度しかできず

スキルアウトの顎が、男の脹脛に噛みついた。浜面の耳が捉えたのは、その悲鳴だ

雑食性の人間の顎は、本気を出せば相当な力を発揮する。そして噛みついている彼の筋力のリミッターは解除されている

浜面(………酷ぇ)

素直な感想だった。倒れた浜面が顎を突きだすようにして目にしたその光景は、凄惨の一言に尽きる

男の体がスキルアウトによって噛み砕かれ、肉が引きちぎられていく

スキルアウトの方も、筋力の制限を突破した使用があごの骨へ影響を出したのか、口元は歪み、下あごの骨がほほを突き破っていた

「や゛めろ!!!!!やめてぐぇ!!!ぃあえろおおおおおおおおおおおおおおおお……」

とうとう顔面の、頬を、眼球を、複数の顎が捉え、悲鳴が途切れる。もがいた銃を持つ手が虚空を撃つ

銃声も止み、脱がされた簡易なフェイスガード付きのヘルメットが転がっている

浜面(やばいな。なんであいつ等がこんなことになってんのかわかんねぇってのに、イ、シキ、が)

浜面(俺、が狙われないって根拠、も……。にげ、な……、血も、出て……ぅ。ぁ)

 

 

 

定規「それで、貴方はこれからどうするつもりなの?」

拠点を出て、少女は言った

垣根「どうもこうも、やることは決まってんよ」

定規「へぇ、それってさっきオジサマに言ってた事と何か関係あるのかしら?」

垣根「ん、まぁそんなところだ。今更他人を助ける聖人サマにはならねぇ。だがな、」

垣根「自分に関わることぐらいは、俺は行動しないと気が済まないらしい」

定規「あら、そんなこと。今更ね」

垣根「うるせーよ」

定規「ふふ。私としては、その自分の関わること、の中に私の事も入ってるとうれしいのだけれど」

帝督、と呼びかけて、垣根の肌に触れる

定規「って、貴方やっぱり寒いんじゃない。鳥肌立ってるわよ」

垣根「日が出たってのにな」

定規「んじゃ、何か買いに行きましょ?」

垣根「あぁ?お前はお前で報告とかしないわけ?」

定規「それも兼ねて、よ。少なくとも、何の当てもなくご希望の所に近づくのは難しいでしょう?」

垣根「ほぅ。俺が何しようとしてるのか分かるのかよ?」

定規「私も馬鹿じゃないの。あなたの考えることぐらい、少しは分かるわ」

垣根「そーかい。じゃあお言葉に甘えさせてもらうぜ?」

定規「了解。でもまずは、貴方の服を買ってからね」

そう言って、笑顔で少女は垣根の手を引いた

 

 

 

 

深夜の病室で、御坂美琴は目を覚ます

その病室は、幼い自分と同型の自分が寝息を立てていた

御坂(寝ちゃってたか。まぁ、仕方ないよね)

寝ている少女達の横の装置に映し出されている脳波のグラフも落ち着いている。その様子に、少女は安心した

御坂(そういえばアイツと一方通行、何処に行ったのかな)

気が付いたら、彼らは居なくなっていた

上条は恐らくその右腕で、一方通行はベクトルを操作して、御坂は脳内電気の方向を逸らす事で、少女たちを襲う謎の負担を逃がしていた

そして大きな波が数回去って、時折発生する小波ばかりになって落ち着きだした所で、何時の間にか疲弊した一方通行と上条当麻は居なくなっていた

御坂(全く、あの後も結構大変だったっての)

それでも、御坂一人で十分なものだったが

御坂(でも、一体何が原因でこんなことになったんだろ)

御坂自信は、ミサカネットワークという物を完全には理解できていない。それは彼女がそのネットワークに入っていないからでもある

御坂(私が知ってるのは、この子が、その管理者であるってこと。一応、核がない横のネットワークだってことは知ってる。でも、特別な役割を持つこの子一点を頂点として、その下に他の妹達が連なる二層構造の側面があるってことは間違いないって、思ってたんだけどな)

御坂(けど、今日を見る限りそれは違う気がする。この子が言うには、ここに居る妹達以外に被害は出てないって言ってたし)

御坂(ってことは、外部からミサカネットワークに負担がかかってて、それがこの子たちだけに伸しかかってたってことになる)

御坂(二層構造なら、負担がかかるのはこの子だけ。でもそうじゃなく、この4人も)

御坂(ということは、打ち止め‐この4人‐その他の三層構造か、ここに居る5人‐その他の二層構造ってこと?)

御坂(管理者がこの子ってのは間違ってない。でも打ち止めの負担だけが無くなってた時も、他の4人は同時に苦しんでた。ってことは後者?でも管理者は……)

御坂(あーもう、どうなってんの!?私もネットワーク内に入れれば、分かるかもしれないってのに、無理だしなぁ)

頭を悩ませていると、入口の扉がスライドする音が鳴り、部屋に電気が付いた

蛙医師「随分と思い悩んでいるみたいだけど、まさか恋愛的な悩みかい?」

御坂「違います!!……はぁ、質問なんですけど、この子たちのネットワークに、私が入ることって無理、ですよね」

蛙医師「なんだ違うのか。ふむ、それは一番君が分かってる事だろう?って本来なら言うところなんだがね」

御坂「……がね?」

蛙医師「ちょっとしたことで、直接的とは言えないにせよ、接続出来る可能性をもたらす物があるんだけど、使うかい?」

そんなことを言われて、少女の答えは一つだった

 

 

 

頭がお花畑の少女が第一学区の駅を降りると、街は異様な風景だった

行政地区、つまり最も官僚的で警察的で治安の良い場所に、スキルアウトが大量にいる

それに近い情報を事前に入手していたが、ここまでのモノとは

初春(ちょっとこれは、風紀委員の腕章は危険かなぁ)

そう判断して、彼女は持ってきた小さな鞄の奥へそれを突っ込んだ

初春(まだ白井さんは来ていない様ですし、少し観察しよう)

駅でゆっくりとどこかへ向かう彼らの横をかなり自然に歩く

そして分かったのは、彼らの共通点として手首か首元に淡い光を発する何かがあるという事

初春(なんだろう、アレ。三角形の何かみたいだけど、わかんないなぁ)

初春(というか、雰囲気が怖すぎます。まるで生気がないような、幻覚でも見てるみたいで)

初春の短い風紀委員の間だけでも、こんな雰囲気の人間に会った経験は、ある。所謂、シンナーだったり、大麻だったり、学園都市の研究機関から流出した合成麻薬であったり

そういう、嫌な記憶がよみがえる

初春(うう、白井さんまだかな)

駅の柱に身を隠すようにもたれかかった


そんな少女の姿をこれまた影で見る男

土御門元春は少女の動きを見ていた。驚くべき点を見だしていた

土御門(あの子、とんでもないにゃー。監視カメラが全て止めてから行動してるぜよ)

土御門(相当な技術力をもっている、のか。動きは素人だが、あの薄気味悪い不良の横を顔色変えず通り去ることが出来るのも、度胸が据わっている)

すこし場所を動き、土御門は近くのスキルアウトの首筋を強打する

声も無く、緩慢な男は倒れる、ハズだった

土御門(っな、ちょっと加減し過ぎたか)

緩慢な動きのまま男が振り返り、その視界に入る前に、土御門は次の一撃を加える

それでようやく、男は意識を失った

土御門(無駄に煩わせてくれたが、どういうことだ?こいつら、集団でヤクでもやったのか)

そして土御門も、その光る何かに気が付く。そして初春の近くに、白井黒子が現れた

 

 

 

禁止目録の視界が一面、真っ赤に染まる

しかしそれは、血では無い

袋小路の彼女を守る様にして、炎を纏った黒い巨人が現れたのだ

ステイル「どうやら、間に、合った、みたいだね」

息を切らしていた。余程急いだのだろう

禁書「ステイル!」

ようやく、待っていた援軍が登場した。建物の上から傍らに飛び降りた彼の側に禁書が寄る

寄った直後、さっきまで禁書が立っていた場所にワイヤーの動きと共に切れ溝が奔った

ステイル「んな、これは」

禁書「七閃、なんだよ」

禁書の発言に、しかし現実を認めないわけにはいかない

ステイル「……ここじゃ不味い!」

禁書を腕で脇に抱き、飛び上がった

建物の上まで来たかという所で、追撃の七閃

彼が叫ぶと、炎の巨人も飛び上がって彼らの盾となる

最初から完全に止めることは出来ないと分かっていた。だが、その体から放出される大量の熱が空中へ飛び上がったことによる空気の爆発的な膨張が、ほんの僅かに飛来するワイヤーを遅らせる

ステイル(ぬるい、手を抜いているのか?)

巨人を貫通し、射線が逸れたワイヤーの余波がステイルの肩を軽く掠るが、彼の行動を止めるほどの物では無い

禁書「ステイル、上に逃げてどうするの?!」

ステイル「僕が、ただ飛び込んだだけだとでも思うかい?」

見回すと、禁書が見える範囲の建物一面にルーンの入ったカードが貼られている

ステイル「逃げ戦となると分かっているんだ、対策は取ってあるさ」

そうステイルが述べた後に、彼らの後方で炎の渦があがる

簡単に、しかし身に付けた衣類を若干焦がしつつ、それを回避した女が刀に手を掛けた居合の構えをして、立っていた

ステイル「やっぱり、君か」

 

 

 

 

絹旗「しかし、超空いてますね。大分前を飛ばしてる車以外、他に何も走ってません」

フレ「学園都市の高速なんて、どこも常に車があるってイメージが有ったのに、こうなると意外な訳よ」

麦野「逆路線はいつも通りで、第一学区へ向かうルートだけガラガラ。不自然ね」

絹旗「だとすると、前に走ってんのも同業者かもですね」

麦野「可能性を否定できないわよ、それ」

フレ「うっひゃー。敵じゃないと良いんだけど、それは高望なんでしょうなぁ」

絹旗「こちらがそう思ってるってことは、向こうも超同じ事を考えてるかも知れません」

麦野「ちょうおなじこと……。運転手さんよ、もし前の車が同じ第一学区に入って、止まったら距離を置くか、隠れるように止めなさい。いいわね」

「りょ、了解だ」

麦野「よし。そんで、そこで待っとけなんて言わないから、私達を下ろしたらすぐに一度第一学区を離れなさい。でも呼んだら来るように。来なかったらお前、殺すから」

運転手は、つまり彼女らの下部の暗部の男は、前を見ながら強く頷いた。若干の震えが見て取れたが

それを見て、麦野は満足する。いざというときに確実な足が必要なのだ

滝壺を奪還しても、連れ出す時に強敵から逃げながら、なんてことになるかもしれない

一方的に勝ち続けることは出来はしない。ならば、負けない方法をとる。それが自分の自尊心を著しく傷つけることになっても

ここ数日の自分を圧倒的に上回る存在との体験から、そういう事を麦野は学んだ

フレ「しっかし、浜面まだ応答しないんだけど、結局どうなってるわけ?」

絹旗「それはホントに、やられちゃったのかもしれないですね。武器も満足にないでしょうし」

麦野「死んでたらそれで終いよ。悪運しか能が無いヤツだしね。滝壺最優先でいくわよ」

絹旗「その超悪運で、生きてるでしょーね」

フレ「死んでたら滝壺ショックだろうなーと思う訳よ」

麦野「むしろ滝壺の経歴に傷が付かなかったと神サマに感謝だわ。ま、結局のオチとしては、携帯壊しましたとか無くしましたとか忘れましたなんてのが、浜面クオリティでしょ」

絹旗「ホントに何の面白味も無いですね。四流脚本家の書きそうなオチですよ」

フレ「結局、それが浜面って奴でしょ」

こんな風に言われるその浜面と言う男を、運転手は憐れむのだった

 

 

 

一方「お前、後ろの連中どう思う?」

麦野たちの前を走る上条達の車の中で、一方通行は尋ねた

上条「この状況で、来るやつなんだろ。お前の同業者とかじゃないのか?」

一方「グループとしては連絡が来てねェが、俺もお前と同意見だァ。どっかの暗部組織の部隊、ってところだろうな」

上条「あーあ、敵対なんてしたくないですね。こちらの目的はただの調査ですから」

話し方に若干の違和感を覚えたが、一方通行は無視する

一方「ンじゃァ、もうひとつ質問するぜェ。なンでお前をつれてきたと思う?」

上条「さぁ、気まぐれか?」

一方「残念ながら不正解だ。答えは簡単、俺が純粋に疲弊してるから、だ」

上条「ほほぅ。そーですか。……ってことはアレか?戦いになったら俺が何とかするのかよ?!」

一方「いやァ、コイツの充電ももうそろそろ切れそうなンですわァ。お強い幻想殺しさンにお願いしたいなァ。ってことで頼むぞ」

上条「嘘だ!俺はお前が充電しながらやってたの知ってんだぞ!!なにかあったら俺を囮にするとか、そんなんだろ!?」

一方「そこまで分かってンなら、もう言う事はねェな」

上条「この鬼畜!!」

一方「なンでも手伝うって言ったのはそっちだろ?ンで、妹達ので疲れちまったのは事実だ」

上条「お前って奴は……。いや待てよ?ってことはお前は俺をそれだけ信頼してるってことだよな?」

一方「は、はァ?どォ考えたらそうなるンだ」

上条「だってお前、こういうとき絶対他人に疲れてるなんて言わないだろ。弱ってる一方通行を狙いたい人間は、たくさん居るだろうからな」

一方「……ッ」

上条「いやー照れるなよ、一方通行。お前にそんなに頼られちゃー仕方ないですなー。あ、俺の事は気軽に当麻君って呼んでいいからなー?」

一方「うるせェ、黙りやがれ。お前なンて、さ、三下で十分だ」

上条「ほらほら呼んでみー。と・う・ま・君って」

そんな雰囲気で、上条達と麦野達は走って行った。第一学区は、もう目と鼻の先だ

 

 

 

 

彼はマタイ・リース個人として、そしてローマ教皇として、イスラエルへ向かっていた

護衛も無く、側近に何も告げず。バチカンに残したのは信頼できる影武者のみ

いつかは気付かれるかもしれないが、しばらくは持つだろう。起きたとしてもバチカンでの混乱は完全に無視している

目的は、ユダヤ教徒との会合

教皇(これは、新教旧教東方その他の各十字教だけの問題ではない。各指導者と手を結ばなければ……)

公式的な行動でも無く、信頼できる僅かな人間だけで向かった

指定された場所は、やはり非公式である事を考慮したのかエルサレムからはずれた場所

パレスチナ自治区との境に近い場所だった

「なぜ聖下との会談を、このような場所で」

教皇「非公式故というものだろう。このように急な訪問に答えてくれる事をありがたいと思うべきだ」

「しかし!これでh」

従者が何かを言いかけた時、街中を一般市民に紛れて歩く彼らの前の店の扉が勢い良く開いた

中から、白人系であろう男とアラブ系の男が飛び出す

白人系の男がアラブの男の上に馬乗りとなり、殴りつける。下敷きの男は反撃の素振りを見せず、体を守っている。一方的に白人系の男が興奮しているようだ

騒然とした雰囲気を嗅ぎつけたのか、重装備の警察であろう人間が現れ、その殴り合いを止める

周りの人間の話では一方的に白人系の男が殴りかかったと言うが、警官はまるでアラブ系の男が悪いかのような扱いをし、結局白人の男には何の御咎めも無しだった

「酷い光景ですが、ここでは日常茶飯事ですよ」

その現場を呆然と見ていた教皇一派にスーツの男が声をかけた

「イスラエルの中に住むパレスチナ人の大半は大人しく、自治区や難民キャンプの同族と違って明確な反抗をとることなんてほとんどないんですがね」

「国籍的にも彼らはイスラエル国民で、扱いは二等市民のそれと言えますが、立派にイスラエルと言う国の社会の歯車なのです。しかし、支配者階層と言えるユダヤ人はいつまでも彼らを二等国民としてしか扱わない」

「ご存知の事だとは思いますが、宗教問題とは簡単には解決できない問題なのです、聖下」

急に現れた男の方を向き話しに耳を傾けていたが、聖下という言葉に、従者共に明確に反応する

教皇「君は、何者なのだ?」

「このような場所を指定致しまして、申し訳ありません。会合の場所へ案内いたします」

気が付くと、男の後ろにスーツ姿の部下らしきものが立っていた

 

 

 

 

?『それで、結局どうだったん?』

刀夜「結果は失敗だよ。彼は、なかなかに頭が回るようだ」

?『あらら。あんなに張り切ってたのに、肩透かしかー』

刀夜「それは言わないで欲しいね。わりといけると思ってたんだが、残念だよ」

?『ええの?影響が出るのは勘弁してほしいところなんやけど』

刀夜「元より彼の登場はイレギュラーだったからね。支障は無い、といいたいところだ」

?『まぁ、伊達に学園都市の第二位張って無いってことやなー。イレギュラーやから、逆に何をしてくれるか分からんってのもあるし』

刀夜「彼自身、学園都市を裏切ってここまで来ている訳だ。理由もあるだろうが、彼は利己的な面もあるだろう。その可能性は捨てきれないな」

?『裏切とか洒落にならへんわ。あぁそういえば、こっちは無事にあの娘との接触は予定通り。好感触やったよ』

刀夜「それは良い報告だ。他にも何かあるかい?」

?『残念ながら悪い報告があるんやわー』

刀夜「……聞こうじゃないか」

?『正確にはわからへんけど、どうやらあっち側が統括理事長と接触したみたいやわ』

刀夜「内容は分かるかい?」

?『そいつは分からん。けど、どうやらうまく折り合い取れなかった、って結果だったみたいやな』

刀夜「……ふむぅ、了解だ。君の情報は毎度、お世話になるよ」

?『それじゃ、そろそろ盗聴怖いんで。以上、通信終わり』

沈黙が部屋に戻る

刀夜(折り合い……。交渉していた?あの二者間で?駄目だな、 内容が断片でも分からない限り、どうしようもない)

刀夜(垣根君の言っていたことも気になる。これは少々深く探りを入れる必要があるか)

刀夜(リスキーだが、私もネットワークに入るべき、か)

男のそばには、支給された注射器が光を反射していた

 

 

 

白井「来ましたわよ、初春」

初春「お疲れ様です。……うーん。今すぐにでもここから離れたいですが、少々休みますか?顔色良くないですよ」

白井「ここまでずっと空間移動の繰り返しでしたの、休みたいのは山々。でも」

初春「こんなに汗かいてますからね。全力で来てくれただけで十分です。影で少し休みましょう」

初春がポケットから出したハンカチで白井の汗を拭ってやる

その行動を受け入れている白井としては、いろんな意味で、少しくすぐったく感じる

初春(この状況で切り札的な戦力が弱ったままなんて、正気の沙汰ではないですからね。しっかり復活してもらって守ってもらわないと)

本来人間が理解するのは非常に困難な11次元での演算が必要な空間転移は、強力な分脳内疲労が他の能力に比べ大きい

疲労がたまって演算ミスなど起きようものなら、被害はどうなるか

白井「もういいですわ。ありがとうですの」

初春「あ、風紀委員の腕章はハズした方がいいと思います」

白井「なぜですの?初春の事ですからこの辺のカメラは押さえているのでしょう?これを元に深夜外出を問われることは無いと思っていたのですが」

初春「もちろんです」

白井「ならばなぜですの?スキルアウトなんかも、これを見たら絡んでくることも無いでしょうし」

初春「逆ですよ。白井さんが来るまでちょっと調べたんですけど、この辺に居る不良のみなさん、様子がおかしいんです」

白井「というと?」

初春「薬の現場、って言えば分かりますかね。あんな感じです。皆、いわゆるラリってるってやつですよ」

白井「ここに居る全てがですの?これはこれで別件の事件ですわね。でもならなおさら腕章をつけて……」

初春「日頃私達を怨んでる人間がラリってたらどんな判断するか分かりませんよ。それに、今日の目的は佐天さんですから」

白井「……確かに、余計な茶々を入れられると厄介。初春、その鞄に入れて下さる?」

頷いて、初春が白井の腕章を受け取った

丁度そのタイミングで、地面が揺れた。すこし遅れて、轟音

 

 

 

 

ステイル「なんで君が、こんなことを?」

呼びかけるが、当の女、神裂火織は反応しない

刀を握り、構えたままでじっと動かない

ステイル(答えないか。クソ、操られているとでもいうのか?)

せめて禁書を守りの堅い場所へ

そんなことを思って、ほんの一瞬だけ禁書の方を見た。それこそ、目を微妙に動かした程度

視界から、構えていた女が消えた

気が付くと、右肩の上に見慣れた七天七刀の切っ先が覗いていた

ステイル(馬鹿な!!いくら早いと言っても、こんな)

神裂「禁書目録ヲこちらへ」

ステイル(神裂と僕の間の距離には、上を通過すれば火柱をあげる自動術式が複数あったハズだ。それが一つも反応しないだと?仮に光速を使っても理論上は反応するんだぞ……?!)

神裂「そノ子は、危険。渡スのを拒むナラば、貴方諸共、排除しなくてはナリマせん」

ステイル「では、君の目的は禁書の暗殺なのか?」

すぐにでも首がはねないという所に刀を置かれ、且つ禁書を脇に持ちながらもそれに押されない

神裂「否定しまショう。しカシ、貴方が邪魔をシ、確保不達成の確立が高まルようならバ、答は変ワりますね」

ステイル「……そんな脅し程度で僕が引き下がらない事ぐらい、君は理解してると思っていたけどね」

そしてステイルは、禁書を神裂へ向けて投げた

体の軸を回すようにして投げた先の神裂は片手で刀を持って構えている状態。そこへ意を反して投げ出される禁書

一方で軸を回すようにして旋回したステイルの片腕には、炎剣が握られて神裂の元へ

更に逃げ場を奪うように、神裂をステイルと挟むようにして現れる炎の巨人がその腕を神裂へ伸ばす

つまりの所、判断遅れに期待した急襲の意を込めた挟み打ち。一か八か

ステイル(本当にこの女が彼女ならば、こんなひっかけに引っ掛からずに禁書だけを掴んで離脱するだろうさ!)

神裂はその挟み打ちに対して、身を回避させることを優先した。ステイルを悩ませた、あの空間転移のような移動方法で

だが、その移動先で、もちろんその移動区間の自動術式には反応しなかったが、炎が渦を巻いてあがる

その超人的な身体能力を使って、すんでの所で避けきる。その衣服は、焦げが進んでいた

 

 

 

一方「こいつは一体、どういう事なンだろうなァ。当麻君ゥゥウウウゥン?!」

上条「無駄に語尾を伸ばすな。こいつらが来てるってのは知ってたけど、これ程ってのはなぁ」

第一学区の中央、駅から少し離れた場所にあるメインタワーのある区画の側で、彼らはそんなやりとりをしていた

目の前には千を越す人数が列をなすようにして前に、一方通行達が進むべき先へ、ゆっくりと集まっていた

一方「車で乗り入れ様にもこれじゃァな。いくら当麻キュンの超絶ドラテクでも無理だよねェー」

上条「一番無理なのはお前の口調だ。もう三下で良いから話し方を戻してください。んで、どうすんだ?こいつらをかき分けてでも進むか?」

一方「ンな所で無駄に消耗したくねェよ。っても、能力使わねェで進もうにも体力消耗が酷いだろゥしなァ」

上条「じゃあどうするんだよ。なぜか第一学区のカメラが全部ダウンしてるから他の通りの状況は掴めないけど、多分一緒だぞ、これ」

一方「バカヤロウ。かき分けて進むこと自体は否定してねェだろ?お前が居るじゃねェか」

上条「はぃい?」

一方「だァから、お前が先に進めば俺が消耗しねェだろって言ってンだよ」

上条「まぁたお前はそんなことを。上条さんはこれでも病み上がりなんですよ?こんなバーゲンに群がる主婦さんたち(イメージ)を凌駕するような群の中を一人で進めと?!」

一方「いやァ、当麻クンは良い体してるなァ。惚れちゃいそうだn、っとォ?!!!!」

突如、地面が、大きく揺れた

上条「一方通行!!」

上条が呼びかけるより早く、一方通行は首の電極のスイッチを入れる

となりのビルが陥没を始める

一方通行は杖を放り投げ、地面に体をかがませる。上条もそうだ。立っていられないレベルの揺れ

擬音にし難い低く崩れる爆音が空間を占める

上条「アッ……ク…タァ!!し…原は……だ?!!!」

一方「何い……か、わか……ェよ!!!」

しばらく、全く会話にならなかった。それでも怒鳴り合ってはいたが。そしてようやく、揺れが沈静を始め、彼らは立ち上がることができた

上条「震源は?!」

一方「二点間の振動波紋から抽出したベクトルから逆算してみたが、かなり近いぞ、こいつは」

横の建物は丸々一階分が地下へ陥没していた。半ば呆れた様な顔をして上条と一方は視線を交わす

上条「おいおいおいおい、何が起きてんだよ、一体!!!」

 

 

 

絹旗「あれって、第一位じゃないですか?」

フレ「そんで横のは世話になったばっかの幻想殺しじゃない?何あの体、もう治ったっての?ありえない訳よ」

麦野「でも、あの様子じゃ、第一位はグループとして来てるわけじゃなさそうね。それだけで十分よ。なんであの二人組なのかは予想もつかないけどね」

いわれた通りに上条達の車の後方で止まった車は、麦野達を下ろして去って行った

麦野(一番最悪だったのは混乱に巻き込まれる形での暗部組織同士での戦いだった。その可能性が無くなっただけで、十分)

麦野「アイツ等は無視できると見なす。二人とも、滝壺捜索、行くわよ。まぁ、行先はあいつ等と同じだけど」

絹旗「ってことは、こっからでも見えるあの超群衆の中を突っ切るわけですよね」

フレ「勘弁してほしいわ」

麦野「いいのよ。とにかく突っ込んで、滝壺の事を知ってる連中を見つけないと話にならないんだから。フレンダ、薬の準備は大丈夫よね」

フレ「もち。任せといて」

絹旗「当てはあるんですか?あの人数をいちいち聞いてたら手間が超かかって朝になりますよ」

走る為の筋力増強用のテーピングをフレンダから受け取りつつ、少女は女に尋ねる

麦野「考えなさい。まずは集団を率いてるヤツに聞くの。黒ならそれで終わり。白なら、今度は集団を外れている連中へ。それでも白なら今度は集団内でおかしな動きをしてる連中を見つければいい」

フレ「さっすが、ウチのリーダーよ。LV5の頭脳は伊達じゃないってわけね」

絹旗「言うは簡単ですが、手間は超ありますね。結局探さないといけないわけですし」

麦野「もちろん、三人手分けよ。フレンダ、薬をとりあえず二人分くらい私と絹旗に」

フレ「はいはい」

麦野「どっかの馬鹿の二の舞にならない様に携帯に留意しなさい。それじゃ、行くわよ」

了解、との声。それぞれが違う方向を向く

そして彼女らは三人に分かれ、駆けて行った。揺れが彼女らを襲うのは、この後である

 

 

 

 

土御門(この光、蛍光塗料か。だが、この印は……まさか、こいつらがこうなってる原因は―)

土御門が何かに気が付いた、その瞬間

強い揺れが、彼らの場所にも伝わった

土御門「何事ぜよ!!」

思わず叫んだが、地鳴りがそれをかき消す

揺れの原因を探そうと、周囲を見回す。ゾンビのようなスキルアウト達は当然、立っていられない

建物は皆均等に揺れる。東京付近に断層が多くあるのは常識だ。故に学園都市の建物は高度なレベルでの耐震構造を備えている。だが

土御門(こんな時に爆発するような断層は無かったはずぜよ!!なにか起きやがったか!?)

その視界に、彼女ら、白井と初春が定まる

如何に耐震構造がすごかろうと、それが防ぐのは根本的な破壊だ。つまり末端の小崩壊を防げる代物ではない

揺れによって浮足立った白井と初春。その距離は2m程開いている

そして

土御門(不味い、あの天井、長くない!!)

ベンチそばで動けない白井と初春の上、コンクリートの塊に拡がっていく溝。まるでガラスが壊れるかのように

彼女らが気が付いた時は、遅かった

空間移動能力者の白井は未だ経験したことの無い規模の揺れに、思考がまとまらない。先の初春を拾って更に空間移動するだけの余裕など無く、自分を移動させるのが関の山。それでも成功するかどうか

白井「初春ッ!!!!」

土御門「っつぉぉおおぉぉおおおおおおおぉ!!!!!」

白井の視界内に、入ってくる、金髪の男

 

フレンダ「ちょ、ちょっとこいつは不味いってば!!」

地面に両手両足を着けて、つまり四つん這いで、少女は揺れに抵抗する

3人とも揺れの中心により近づいていた為、外周部の初春達の揺れとは比較にならない

彼女は独自の判断で、ビルとビルの間で構成される裏路地を進むことにしていた。ここならばスキルアウトも少ないだろうとの判断だ

確かに、それでも予想よりは少し多かったが、筋強化された彼女の進行を止めるような存在は少なかった

だが、その判断はこの状況では最悪だった

フレンダ(ビルが、倒れる!?動けないってのに、死ぬっての!!)

直上から彼女を挟むように、片側のビルがもう片側に寄りかかるようにして崩れ始める

頭上から小さなコンクリートの塊がボロボロ崩れ、彼女に当る。痛いがこの程度は問題にならない

地べたを這いながら、足掻く。だがこのままでは

フレンダ(……このペースじゃ絶対に間に合わないわけ、よ)

揺れはまだ続く。少女の絶望を大きくするように。そして寄りかかられた方のビルに、大きく亀裂が入った

フレンダ「あ」

彼女を包み込むように、耐えきれなくなった両方のビルが瓦解する

絹旗「な、何がっ」

同じように、彼女もまともに立てないでいた

彼女はフレンダが裏路地を選んで進んだのを確認して、あえて大通りを選んだ

進行に邪魔なスキルアウトを手加減しながらも左右に弾き飛ばして進む彼女は、その見た目に反して、まるで戦車のようだった

そこへ、強い揺れが彼女を襲ったのだ。当然、周りの様子のおかしいスキルアウトは倒れこむ。ドミノ倒しのように

大通りの真ん中を、筋肉強化も相まって、すごいスピードで突き進んでいた彼女は、フレンダのように建物に押しつぶされる心配は無かった

だが、地下駐車場のそばまで来ていた彼女を本格的に襲ったのは、その地面

絹旗「学園都市自慢の超耐震構造は、どうなっているんですかっ!?」

地面が、裂けた。そして一度発生した裂け目は、揺れと共に拡がっていく

少女の目の前で、スキルアウト達が何の抵抗もできずに飲み込まれていく。そして裂け目は殆ど動けない彼女の元へも拡がっていく

絹旗(あちゃー……こいつは覚悟を決めるしか、無いようですね)

おかしくなりそうな心を押さえて、彼女は冷静に奈落へのみ込まれた

 

 

 

 

表の顔の行動を忘れることが出来ないのは、彼も同じ

御坂旅掛はドバイへ来ていた。要件はバブルが弾けた不動産の管理運営について

つまり個人企業としてのコンサルタント業務である

彼自身の資産はかなり裕福なレベルであるが、その地位を築いた元の資本は彼個人にもともとあったものではない

とある組織における活動で、任務において今の地位が必要であった為の、偽装による副産物である。それでも、そこからここまで資産を膨らませたのは一重に彼の才能であるが

そして彼は今、モスクの前でこの度の相手を待っている

「待たせてすまないね、Mr.御坂」

旅掛「お気になさらず。お会いできて光栄です、Mr.ワリード」

「こちらもだ」

もちろん現地の言語だ。握手を交す。簡単な挨拶を交わしつつ、男は車へ

「よし、君と話し合う場所を用意させてもらった。深い話はそこでしよう。君も乗りたまえ」

促されて乗った車の中は広く、簡単にミネラルウォーターを口に含んで、資産家の男は口を開いた

「普段なら街中で待たせるような無礼なことを私はしたりしないのだがね、ちょっと特別な用が出来てしまって。もう一度君には謝らせてもらうよ」

旅掛「いえ、出来た時間で家内と連絡もできましたし、要件が出来てしまったことは伝えられておりましたので」

「それは良かった。家族円満、うらやましいことだ。昨日、正妻と口論になってしまったから、なおさらだ。もっと家に帰って来いとさ」

旅掛「それはそれは。しかし、あなた程の人物が、随分とご多忙な様ですな」

「それなんだが、窓の外を見たまえ、対岸が見えるだろう。私にとって問題の発端はあそこなんだ」

旅掛「……イラン、ですか?」

「そうだ。もちろん知ってるだろうが、あの国の同胞は少し過激で、且つ今のイスラムの中心だ」

同胞、と言うのは同じ宗教であるイスラム教徒の事を指しているのであろう。相槌を打った

「現地の指導者と私は顔なじみなんだが、少々気になる動きをしていたから、先日会って話をしてきてね。流石の私も驚いた」

「うん、君は有能な人間で、更にまだ若いから教えるが、正直言って、これからの商談なんて霞む話と言えるだろう」

もう一度、彼は水を口に含んだ

「遂に来るんだ―――が。そのために私も、こんな歳で家へまともに帰れないほど忙しくなってしまったよ」

目の前の男が喋った言葉を理解するのに、旅掛は数秒の時間が必要だった

 

 

 

 

 

初春飾利は頭上から降ってくるコンクリートの塊を前に、揺れも相まって、まったく身動きが取れなかった

その固定された視界が、強引に動かされる

この強い揺れの中で誰かに抱えられ、横へ飛んだ

少女が目が放心した意識を再びはっきりさせた時には、彼女の上で金髪サングラスの男が倒れていた

血を吐き、そして、体中から血を滴らせながら

白井「初春!!」

揺れが続く中で、白井が寄ってくる

初春「白井さん、えっと、私」

白井「怪我は?!大丈夫ですの?!」

初春「あ、は、はい、私は無事です。どこも痛くな、って、アレ?」

その手には血が付いていた。だが、自分のそれでは無い。土御門の血である

土御門「はは……、間に合った様だ、にゃー」

覆いかぶさった初春から離れようとしたのだろうが、弱弱しい動作で、見ていられなかった

白井が自身の能力を使い、地面に仰向けで寝かせてやる

土御門「すまんぜよ」

袖口から首元から、血が沸いていたのがハッキリと分かった。そして口内からも

初春「酷い。な、何か止血できる物は」

慌てて鞄の中を覗くが、それらしいものは無かった。腕章が滑り落ちるが、役に立たないだろう。白井の方を向くが、首を横に振った

着ている衣類を引き裂こうとした所で、土御門の手がそれを止める

土御門「俺は、肉体再生の能力が、あ、るから、大丈夫、だぜぃ。こんな、こと、も、日常茶飯事、だし、にゃー」

笑みを浮かべたが、その動作が逆に痛々しさを感じさせる

しかし、と食い下がらない初春の前で、白井は少し冷静に考えた

白井(ただの肉体再生の能力者が、それもこの様子では高レベルのものでは無く、どうしてあの揺れの中であのように機敏に動けたのでしょう)

白井(加えて、この怪我。見えている範囲では瓦礫に被弾するようなことは無かったにも拘らず、恐らく内臓まで至っている様ですし)

もちろん、白井には分からないだろうが、土御門は陰陽術にたけている。つまり魔術師でもある。彼は駆ける自分の足が付く所だけに式神と化した物を浮かせ、その上だけをピンポイントに走ったのである。がむしゃらに行使したその術は、いろいろ未完成で効果以上の負担を彼に強いた

土御門「残念、ながらしばらくは、動けない、が。そういえば、なんで、君達はここに、居るんだぜよ?」

 

 

 

アイテム・リーダー麦野沈利も例外では無い

言うなればビルの上、とでもいえばいいだろうか。彼女はそんな所を跳ねまわって進んだ

フレンダが裏路地を、絹旗が大通りの強行突破を選択したことに、彼女は二人がが自分を良く理解していると感心した。そして自分に一番適しているのはこの方法だと判断した。彼女は一時的に飛ぶことが出来るのだから

麦野(学園都市の耐震性を考えれば、どう考えてもこれはただの地震なんかじゃないわねっ!!)

砕ける地面の上を的確に踏み、跳ぶ。届かなければ能力の噴射によって飛び上がり、目視範囲内で一番安全そうな場所への移動を繰り返し、彼女はビルと言う地割れに耐えた

そして大波を乗り切った彼女が立っているのは、崩れ残ったビルの一部分

それは半ば、塔のようだ。その上にスラリと立ち、使い残った電子の塵が作り出す光の中に居る彼女は、まるで幻影

彼女は崩れ落ちた第一学区を、電送が途絶えて隣接する他の学区と比べ圧倒的に暗黒に満ちているこの場所を、見下ろしていた

麦野「二人とも大丈夫か、気になる所、だけど……!」

彼女が選んだ塔も、そろそろ寿命か

グラつき始めたこの場所から逃げなくては。彼女は移動可能範囲に高台が残っていないことから、安全そうな地面を選んだ

自由落下速度を半固定電子の噴射によって緩和して、彼女は地面に負担無しで着地する。少し進めば地砕きが迫っているが、数回の余震でも崩れることは無かったことを既に確認している

麦野(まだちょいちょい揺れてるけど、ここなら。でも、やっぱりね)

麦野(見下ろした第一学区の中央は、タワーを除いて穴でもあいたみたいだった。アレは恐らく地下階層に何か、たとえば爆発とか、起きたってこと)

麦野(アホみたいに群がってた雑魚共を巻き込んでくれたのはありがたいけど、同時に滝壺の事を聞きだすことが出来なくなったのは痛い)

麦野(もし滝壺が動けない状態で、この学区のどこかに居たなら……絶望的か)

もう一度周りを見渡して、溜息。そして携帯を取り出した

麦野「もしもーし」

電話の女『早いわね。もう奪還したの?』

麦野「ハァ?それは何、皮肉のつもり?」

電話『そんなつもりは無いけど、何か有った?』

麦野「何か有った、ですって?冗談?この状況を掴んでないの?」

電話『状況……?こっちのモニターだと、第一学区じゃ何も起きてないんですけどー?』

呑気な声だった

 

 

 

 

 

残ったメインタワーの窓際から、見下ろす人間がいた

青髪「予想外、か。私も存外まだ未熟のようだ」

暗い部屋で独り言を話す男。窓の外は大惨事だ。塵サイズに見える人間が奈落に飲み込まれていく

青髪「試運転のつもりが、この損害。これ以上は明日の事に障ってしまう。まぁ、これはこれでここの連中にとっても良い目暗ましになるか」

青髪「アレイスター、君にとっても予想外なのだろう?予想通りなのは、このタワーが無事と言う事ぐらいだろうか。だがそれは、当然の事」

ふと、彼の背後で気配を感じた。それこそ、羽虫が舞っている程度の物だが

青髪「この国の歴史的な諜報員か。我が国の博物館に導入すれば山のように見物客が出るだろう。誤解の進みが酷いが、人気なんだよ、忍者は」

陰に潜む男の見た目は、印象通りの忍者の格好では無い。銃を忍ばせ、そこいらのスキルアウトと変わらない格好をしている

半蔵「俺を剥製にした所で、人気なんて出ないさ」

カチャ、と銃を向けた

青髪「そうだね。服は着せ変えさせてもらおうか」

半蔵「こちとら、ご託を聞いてるほど暇じゃないんでな。仲間の敵だ、死んでもらう」

躊躇い無く、撃鉄が動作する。パァンと乾いた音が静かな部屋に響いた

青髪「やれやれ。簡単に殺そうとしないで欲しいね、特別なカラダなのだから」

半蔵の後ろに青髪がいつの間にか移動していた。どうやら放たれた銃弾は正面の強化ガラスに弾かれたようだ

間髪いれずに、裏拳の要領で打ち根と呼ばれる近接攻撃用の矢を向ける

だが半蔵の攻撃に対して、手首を掴まれ足払いを受けた。そのまま腕を掴まれ、倒れ込む。馬乗りの青髪によって、身動きが取れない

半蔵「クソ野郎が、見殺しにしやがって!!どうせこの破壊もお前たちが仕組んだんだろ!?」

悔しそうに半蔵は叫んだ。至近距離からの銃弾を高速回避し、背後をとるような相手に打つ手など無い

青髪「私も彼らをこんな目に合わせようとなんて考えていなかったさ。そして恐らく、学園都市の側もだ。言えば、広大な可能性の一つが偶然発生したってことか。飼い犬に手をかまれた状況の私が言えば一種の負け惜しみなのだろうがね」

瞬時、青髪の拘束が解けた。半蔵の直上、さっきまで青髪がいた場所を、クナイが通過する

青髪「今度はくの一か、次は何が出てくるか楽しみなところだが、残念。ここでさよならだ」

そう言って、青髪は消えた。気配などと言うレベルでは無い

郭「半蔵様、ご無事で?!」

半蔵「大丈夫だ、問題無い。お前、ここまでよく来れたな」

郭「理由は分からないですが、こんな時に限って警備がなっていなかったので、思いの外楽に来れましたよ」

 

 

 

上条「こいつは駄目ですな。進めやしないぞ」

一方「だな。こう真っ暗じゃァ、悪戯に飛び込む訳にも行かねェし」

上条「目的の場所はもっと前なんだろ?邪魔だったスキルアウトはみんなのみ込まれちまった。……残念だが、生存は絶望的だろうな。畜生」

一方「生き残った連中は目が覚めたみてェに学区外へ逃げていってるしなァ。何しに集まってたンだ、あいつ等」

上条「つーか、それまでに治安組織が機能してなかったのも気になるし、こりゃ、本格的に何かありますね」

上条「ええ、間違いないかと」

一方「あァ?一人相撲してんじゃねェよ。どォした、お前までおかしくなっちまったのか」

上条「あ、いや、気にするな。それで、どうすんだ?」

一方「……むしろ都合がいいかもしれねェ。三下ァ、あのときみたいに光れ」

上条「この谷を照らせってか?いいけど、あれ、一瞬だし電磁波出るぞ?お前の補助演算が一時的に止まるかもしれないが、いいのか?」

一方「構わねェ。やれ」

人使い荒いなぁとボヤキながら、上条は左手を崖の淵にかける。一方通行も直接的に閃光が目に入らない様に、崖の淵から頭が飛び出すようにして伏せた。もちろんこれは仮に演算が停止しても問題無いようにとういうものでもある

瞬間的に高レベルの電磁放射と閃光が放射された

一方(ははン、やっぱり、そういう能力か)

数秒、間があいた。補助演算の再起動が終了する

上条「見えたか?」

一方「十分だ。行くぞ、三下ァ」

上条「行くって、何処にだよ?まさか」

一方「照らしたんだ、決まってんだろォ?それにもともと、地下の可能性が高かったしなァ」

そう言って、一方通行が奈落へ。上条も適当なパイプを使ったロケット推進で、それを追う

一方通行が何かの通路に飛び込んだ。その急な転進に、上条はついていけない

一方「ちょいとォ、三下さァン?!」

上条「後で追い付くから、先行っといてくれぇええぇえぇえええええ!!?」

一方通行の遥か下部へ、突き刺さるように上条当麻は吸い込まれていった

 

 

 

ステイル「どうしたんだい?本来の君なら、この子を抱えた僕程度、相手にはならないだろう?」
今のところ、彼女の攻撃は七天七刀による斬撃と七閃によるものだけ。彼女最大の特徴である聖人故の行動能力もステイルで対応できる程度だ

その上、ワイヤーによる魔術陣からの術式攻撃も無い

一方でステイルは張り巡らされたルーンによる奇襲とブラフが有効に機能した

今も生み出したインノケンティウスの幻影に囚われて、本当の炎の巨人の攻撃を辛くも回避、更にその逃げた先自体が範囲型魔術の攻撃対象だ

それを謎の移動方法で回避する

ステイル(判断も攻撃も甘い。その上身体能力もらしくない。話にならないな、これは)

そして禁書を抱いたまま、自らの操る炎の中に飛び込んだ

先程までいた場所にまるで空間を裂くようにして現れた神裂が斬撃を振るう

そこまで読み切っていたステイルは、自らがいた場所に術式を構成していて、その炎が彼女を襲う

このように自由自在に動けるのは、彼だけの物では無い。秘密は、禁書である

いつの間にか彼女の抱く方向を変え、ステイルが正面を、禁止目録が背後に目を光らせている

少女がステイルの発動前の魔術の指定先を変えて、的確に神裂を捉えているのだ

禁書(次は11時方向、距離13m!)

体が接している禁書は、ステイルの魔力を借りた魔術で神裂が何処に現れるのかを瞬時に察知し、それをステイルの脳内に情報として叩き込む

一見隙が無いように見えるが、付け焼刃の物であるし、何よりも

禁書(本来のかおりなら、伝達ラグの隙を突かれちゃうし、あんな風に霊装を燃やすことは無いんだよ)

ステイル(ああ、本人でないか、操られているのは間違いなさそうだ)

禁書(でも、本人じゃないならステイルの攻撃を何度も耐える事なんて考えられないし)

ステイル(下支えがあるからと言っても僕の力には限界がある。禁書目録、まだ分からないのかい?)

禁書(無茶言わないで欲しいかも。これでも手いっぱいなんだよ。次、方向0距離0、この場所!)

ステイル(丁度良い。直接尋ねるか。この状況では、逃げることもままならないからね)

 

 

 

定規「さて、まだ時間があるみたいだけど、この後どうするの?」

ランチを召した後、コーヒーを楽しみながら少女が尋ねた

垣根「まだ時間がかかりそうなのかー?」

椅子に腰掛け、両手を頭の後ろへ持って行き、空を見上げながら彼は少し眠そうに尋ねた

定規「もともと、貴方の要求が特異過ぎるの。我慢して頂戴」

垣根「あーあー、今日は、ってか暇ばっかりだからいくらでも待つさ」

定規「眠そうね。貴方もコーヒー、飲む?悪くないわよ?」

垣根「いらねぇ。満たされた心地いい睡魔でまどろみたいからな」

定規「ふぅん、そう。学園都市内ではそんな素振り見たこと無かったけど。こっちに来てから面倒臭いってほとんど聞かないし」

垣根「あんな場所じゃ、気を抜く暇なんてありゃしねぇっての」

定規「出られて良かったじゃない。それじゃ、公園でも行きましょうか?」

垣根「あいよ。この陽気なら良い昼寝ができそうだ」

余程これまでの事で疲れたのだろう。ゆっくりと立ち上がる垣根を見つつ、ふと、少女は携帯端末に目を向けた

定規「ねぇ、帝督」

垣根「あ?」

定規「学園都市に動きが有ったみたいよ。それも、リアルタイムで進行してるみたい」

垣根「ほぉー、左様で。なんだ、テロでもあったか」

定規「テロ。そうね、可能性的にも有り得るかしら。手短に言えば、第一学区が陥没したってさ」

垣根「はぁぁあ?えらくぶっ飛んだな話だな。噂の地下研究所で実験の失敗でもあったのか?つーか、お前以外にも学園都市の中にそーゆーの、居たんだな」

定規「あんまりウチを舐めてもらっちゃ困るわ。スクールでの仕事でも、そこからの情報で越えてきたことだってあったのに」

垣根「でもお前はそのスクールから、情報を抜いてたんだろ?身内にスパイだなんて、もともと俺の味方なんていなかったんだよな。不幸だ不幸だ」

定規「あら、私としては貴方の味方のつもりだったのよ?」

垣根「ヘッ、散々人の行動管理してた奴が良く言うz」

わざと視線をそらした垣根の頭を自分の方へ向け、その口を塞いだ

定規「……ん。もちろん、これからもね。それじゃ、行きましょ」

そう言って離れた少女に対して、男は最早何か言い返す気には、なれなかった

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