上条「なんだこのカード」 > Season2 > 10


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和平交渉の場が始まり、ドーバー海峡上の魔術陣に関しては協力調査という形式が取られた

この方法は、どちらの意向も満たすことのできる合理的なもので、お互いが潔白で有れば問題無くことが終わる

逆に、相手に押し付けたいならば工作をしたら良いというのは誰でも考えが付くものなので、両国の警備は従来のそれよりも固いものとなっている

そんなこと、直接関係ない禁止目録は全く気にもせずロンドンの街を歩く

協調ということで、秘蔵っ子の禁止目録は隠される。ローマへの情報をなるべく遮断せよという最大主教の命によるものだ

衣服の中に愛猫を入れ、更に身元を隠す為と寒さ対策の為に厚めの黒い修道服を着重ねた

見た目上はただの十字教の尼である。そんな身分を利用してか、彼女はロンドンの街を歩き回る

記憶が少ないので、ここの地形が完璧という訳ではない。それでも、行く前に地図を確認したことで、目的の場所まではすぐだ

なぜか理由は分からないが、最近少女は小説を良くたしなむようになった

今まで興味が無かった訳でもないし、読んだ経験も多々あるが、最近は良く読むようになった

そういう訳で、特に用事の無かった彼女は図書館へ

ロンドンには大英図書館という、マグナカルタの原書などが展示されている様な権威のある図書館もある。だが、彼女が読みたいのはそんな権威のあるような代物では無い

純粋に恋愛小説が、それも丁度禁書あたりを対象年齢にしたそれが、彼女は読みたかった

与えられた権限を有効に使い、交通機関を乗り継いで向かう少女

禁書(なんだか、違和感を感じるんだよ。図書館に行くこと自体はあってるのに……)

自分の思考があやふやだ。完全記憶能力があるのに、その記憶が不安定なのか

禁書(あってる?なんに対して正解なの?)

禁書(あれ、私、なにを考えているんだろう。学園都市の図書館?いや、そこで本なんて借りてない、はず、なんだよ)

記憶という名の表象が、彼女の脳内を駆け巡る。同時に、同居人の目を欺くためという理由を元に借りた力学や機械工学などの記憶が散見する

禁書(こんな本、読んだ覚えないかも。え、え、え、こんな感覚はじめてだよ)

連想で、同時に出てきた男。混濁したありえないハズの記憶の中にも、彼は登場した

彼本人を対象にした魔術や能力は、その効果を表さない。ということは、自分が記憶操作の術に巻き込まれているのか?

もちろん、単に少女の夢と記憶が混濁しているだけかもしれない

禁書(そういえばここずっと、とうまに会ってないな)

ギュッと、胸の猫を抱きしめる。温かい。でも彼女はより心地よい温もりを知っている様な気がした

禁書(スフィンクス暖かい。でも、なんでこんなに満たされないんだろう。なんで、なんだろうね、スフィンクス)

 

 

 

奪った警備員の車の後部座席には、気を失った警備員の男が、両手両足を縛られ身動きを取れない状態で寝ている

車は速い。サイレンを灯火しておけば止められることも、、カメラに引っ掛かることも無い

浜面(こいつ、なかなか便利だぞ。次の仕事からはこれを優先的に拝借しようか)

時間も時間だが、輸送用のトラックなどは完全下校時間など関係なく高速を走りまわる

それでも全体の総数については昼間のそれよりも遥かに少なく、さらにサイレンを喚かせて走る車の進路は優先的に空けられる

原動力の残りなど関係なくフルアクセルで進む

浜面(よし、今のうちにもう一度麦野たちに連絡を入れて……ってアレ?)

そこで浜面は気が付いた、前の車の中に携帯を投げつけたまま忘れている事を

焦る。もし、半蔵から追の連絡が来ていたらどうしようもない

完全なミスだった。さらなる焦りが彼に拡がり、すでに限界速度付近である車を更に加速させようとする

浜面(頼むから、移動とかするんじゃねぇぞ、半蔵!!)

願うばかりだった


麦野「あの馬鹿面、一体何なのよ」

シャワーを浴びて少し上機嫌だった麦野沈利の視界に、一定のリズムで光る携帯端末

浜面から二、三回電話が来ていたようだった。正直、風呂上りで用事など面倒臭さが通常より倍増するところだが、彼女は浜面にかけ直した

長いコール時間から、彼はでることが出来ないのだろうと判断する

ただでさえ若干の嫌気を押して電話に出たのだ、その上これでは少し、ほんの少し短気な彼女は頭に血が上る。風呂上りでもあることもそれを加味させる

麦野(次に会ったとき、どういう風にしばいてやろうかしら)

それでも一応、メールを確認する。どんな内容でも彼への制裁が消えることは無いだろうが

メールが、来ていた。それは、浜面が寄越したものではなかった

麦野「ふぅん、そういうわけ」

 

 

 

特段の問題も無く、神の右席の指導者・フィアンマはイギリスの地へ辿り着いた

交通が復活した海峡トンネルを使えば、大陸と島を渡るなどあっという間だ

彼の力をもってすれば、海を強引にわたり欲する物を強奪することは容易だろう

だが、今は身を伏せるときなのだ。警戒されてはやり難いという事もある。対策されては厄介な事になる。何事も、計画

特に急を要する今ならば、それは特段重要性を増す

目立つ格好もせず、そして魔翌力という名の身体反応を隠す為の地味な霊装を身につけた彼は、今やただの一般人と差支えが無い

フィアンマ(良くもやってくれたものだ、アメリカは。俺様の目的なぞ知らぬハズなのに、こうも邪魔をしてくれたのだからな)

彼の目的地はもちろんロンドンなのだが、それは最終的な目的地でしかない。まずは、彼の計画に必要な人間が何処に居るのかを知るところから始めなくてはならない

4人の候補の内二人の場所は分かっている。米国に踊らされているところだ。遠い上に厄介なものを二振りも引っ提げている

そして一人は、舞台から降りると次の舞台に上がるために秘密裏に手を回す人間らしく、パパラッチという厄介なジャナーリスト達を持つこの国の中においても居場所の特定に難があるそうだ

最後の一人は、とても都合がいい事に魔術においてはほぼ無能で、今は前海戦の慰労という事でブリテン島南西のデヴォンポート軍港を訪れるという事になっている。際立った手腕を持たぬ彼女は、彼にとって非常に都合が良かった

フィアンマ(連れてくるだけ、それで十分だ。なら、下手にじゃじゃ馬をかっぱらう必要も無い)

適当に列車に乗り込んだ為、今持つチケットではロンドンまでだ。延伸の為にカウンターへ向かう

「毎度、どちらまで?」

フィ「そうだな。プリマスの方へ向かいたいんだが」

「プリマスね。ちょっと待って下さい」

パソコンに繋がった発券機を使う。その僅かな時間に会話を挟んだ

「お客さん、こんな時期に観光かい?」

フィ「ああ。ロンドンは最後に行ってみようと思っている」

「まずは周りからって、ね。そいつはいいですよ。とくに西の方には今、あの方が向かってらっしゃる」

フィ「あの方?」

「我が国の王女様はどいつもこいつもきっつい目をしてるんだ。そりゃ、写真うつりはみんないいさ。でも、やっぱりあの方、ヴィリアン様は違うね。控えめで、いかにも貞淑だ。一番好感が持てる」

フィ「はは、それには同意だ。こっちの王家はふしだらなのが伝統だしな。際立って見える」

「手厳しいが、言い返せないですなぁ。まぁ、それも王宮文化ってやつでさぁ。西に行くってのは、お客さんもヴィリアン様がお目当てで?」

発券された切符を受け取る。整った顔で、一瞬両目をつむった。何気ない、肯定の仕草だ

フィ「ああ、噂の王女様を一目見ようと、ね」

 

 

 

学園都市の裏の動きを、土御門元春は調べていた

彼の暗部としての情報網を使い、今までは良くある小競り合いとして見落としていた争いを洗い出す

どうやら、少数ではあるが一小隊規模(30人程度)の特殊兵装部隊が第一学区へ向かったらしい

土御門「特殊工作部隊、か」

珍しいことではない。対抗勢力の拠点をそれこそ丸ごと吹き飛ばしたりするなど、彼らの出番は多い。故に各勢力が各々で部隊を編成しているのだ

他にも、今晩だけでより下部の部隊を用いて争っている所もある。だがそれは、それこそありがちな小競り合いだろう

土御門(間違いないな。第一学区で何か起きてる)

半分直感で、半分は理性的な判断で、彼はそう考えた

夜の学生寮の一室で、モニターを覗く男。彼はたくさんの顔を持つ。その中の一つが土御門舞夏の義兄という一面だ

その少女は、彼の後ろのベッドで寝息を立てている。いつもの格好では無く、ちゃんとした寝間着を身につけてだ

暗部の人間であると同時に、甘えてくる義妹の兄という役割を果たさなければならない

つまり、今から出て行った場合その妹が起きるまでに帰って来なくては、その役割を満たすことが出来ないのだ

今に始まった事では無い。こうして彼女が寝てしまった後に端末から情報を引き出したり、実際に手を下しに行ったりなど、今までに何度かこなした

その度に上手く隠し通しているのか不安になっていたが、とうの義妹は気付いたような仕草を見せることは無い

”擦れ”とか”慣れ”と言っていいだろう。彼はその行動に最早抵抗は無かった

壁の方を向いて寝る義妹の髪を一撫で

土御門「それじゃ、行ってくるにゃー」

と殆ど口を動かしただけのような音量で呟き、彼はそっと部屋を出た

同時、義妹は寝がえりをうつ。それは偶然では無く、意識的なものだ

舞夏(やっぱり、居ないのかぁ)

ベットから起き上がり、暗い部屋の中を見渡す。さっきまでついていたパソコンは消え、光源は窓から差し込む光のみ

筋肉トレーニング用のダンベルに反射して、人工的な光が更に温かさを失った光として、彼女の目に入る

初めて気が付いた時から、彼は朝方に何食わぬ顔で帰ってきた。多分今日も問題なく帰ってくるだろう

舞夏(さみしいけど、無事に帰ってきたら、今日も気付かない振りしてあげよっと)

そして彼女は眠りについた。目が覚めたら、義兄がそばに立っているであろうと信じて

 

 

 

白井黒子は夜の街を殆ど飛ぶようにして移動していた

本来ならば、こんな時間に外出するつもりなどは無かったが、集団で調子を崩した御坂のクローン達の世話というイレギュラーなイベントに時間を割いてしまったのだ

そしてその素体である御坂はまだに彼女たちのそばで看病をしている。彼女は妹達と呼ばれるクローン達についてもちろん尋ねたが、教えてもらえたのはその呼び名ぐらいだった

LV5なりの、深い理由があるのだろう。目の前で急に苦しみ出す彼女たちの世話をする御坂に、それを深く追求するのは躊躇われた

本来ならば今日は病院に行った後にやることが有ったのだ。だが、この状況では仕方がない。御坂としてもあの場から離れるわけにもいかないし、白井としてはあまり手伝えることが無かった

そこで白井は一人で本来の、佐天の捜索に行くと言って病院を出た。御坂もそれを止めはしなった、むしろ行って頂戴、と後押しされる

白井「おそくなりましたわ、初春。佐天さんは?」

初春『……まだ、帰ってきていないです。でも、こんな時間、遅すぎますよ。何してたんですか?』

まさか御坂のクローンが倒れたなどと言える訳も無く、彼女は

白井「お姉さまのご友人が救急搬送なされたんですの。今でも、付きっきりですわよ」

初春『そうですか……なら、仕方ないです。私、今、第一学区へ向かってる最中なんですけど、合流しませんか?』

白井「わかりました。あなた、今どこにいるんですの?」

初春『んーっと、第一学区の駅までもう後5分ってところですね』

白井「わかりましたの。それでは第一学区で落ちあいましょう」

初春『了解です。あ、白井さんにはあんまり関係ないでしょうけど、今は電車が動いていないので、空間移動するかタクシー使うかぐらいしか手段がないですよ』

白井『え?まだ終電には早くはないですの?』

初春『そうなんですけどね。原因は隠されてる様ですが、第一学区へ向かう列車が全部運休になってまして』

白井「では初春はどうやって第一学区に?」

初春『簡単ですよ、特別便を作ったんです。すっぱり切られたラインなので、一本ぐらい追加しても追突なんかの危険性も無いですし』

完全電子制御である学園都市製の列車だからこそ、そして初春という類稀なる素質を持った人間だからこそ、できる芸当であろう

白井「し、仕方がありませんわ。目を瞑りますが、隠蔽まで忘れずに。流石に発覚したら庇いきれないですわよ」

初春『大丈夫ですって。それでは、駅で待っておきますね』

 

 

 

一方通行は、経験則から今回もウイルスだと判断した

無論それは、それしか思い当たる解がないからである

その解がもたらす解決方法は、二つ。ウイルスそのものを消し去ってしまう事。もうひとつはウイルスを媒介として打ち止めに遠隔的に負担をかけているその根源を叩きつぶすこと

マネージャーウェアの吐いた答えが確かならば、負担が断続的にかかっているとのことだ

ウイルスの性質が分からない以上、そしてウイルスでない可能性がある以上、一つ目の解は不適切だ

デフォルトの状態に戻す、という解法は仮にそれがウイルスによる影響でなかった場合、これまでに彼女が組み上げた効率化・防壁をすべて消し去ってしまう事になり、負担が続いている環境ではさらなる悪化を招きかねない

ならば彼に取れる行動は一つ。当ても無い中で根源を探すという事だ

一方「なんですかねェ、これは」

思わず声に出た。考え過ぎた頭を冷やす為に、打ち止め達の眠る部屋から出た直後だった

限りなく意識が疲弊した中で、今までは意識しなかった情報が入って来ていた。それは限りなくベクトルという概念であらわせるようで、しかし現にあるベクトルを操る彼には判断できないものだった

一体、脳のどこの部分が反応してこんな良く分からない何かを取り入れて式に代入しているのだろうか

何よりも不思議だったのは、首の電極のスイッチを入れないで、どうして彼はそんなベクトルの成りそこないのような何かを知覚し、式に代入しようとしていたのか

通常の演算では当てはめることのできないそれ、高度なそれを、どうして彼が捉える事が出来たのか

それを深く考えていると、前に打ち止めの前で不自然に涙が出た時の、街中で青髪の女を見て体が力んでしまった時の、何かに押さえられていたものが噴き出すような感覚に辿り着く

当然それは、披露した脳にさらなる負担をかける。そして運悪く、彼の杖が床を滑った。何かを杖先で踏んでしまったらしい

こけた

上条「おいおい、大丈夫ですかー?」

バランスを崩した彼を、上条の左腕が彼を支えていた

一方「あァ、すまねェ」

上条「千鳥足でフラフラしてんなーと思ったらコレだ。何か考えてたのか知らないが、お前も疲れてんだから休めよ?」

一方「うっせェな。無茶すンな的な言葉をお前からは受けたくねェっての。…………おい、お前地図持ってないか?」

上条「ハァ?急だな。何のだよ?」

一方「ここの、えェと、学園都市の奴だ」

上条「おいおい、学園都市で生活してるやつが、そんな物持ち歩いてる訳無いだろ?」

一方「なンでもいいンだ。生徒手帳とかもってないのか?アレの後ろの方のページに描いてあったりするだろ?」

上条「あのなぁ、今日日真面目に生徒手帳なんて持ってる高校生なんてかなり稀有だぞ。特にここのは学生証で何でも解決しちまうからな」

上条が良く分からないと言った表情を挙げている一方で、一方通行は自分の意識をその謎の何かに集中させていた

ベッドで寝ている打ち止めから、そこで寝ている妹達に分散しているそのベクトルで表せるような何か。その逆の端、つまり打ち止めへそれを向けている発信源へ

一方「畜生、消えやがった」

上条「んんん?とりあえず学園都市の地図をお前に見せればいいんだよな」

一方「なンだよ用意できンのかよ。早くしろよ。まァいい、見せれるなら見せてくれ。多少ぼやけちまったが、意味はある」

相変わらず意味不明という言葉を代弁するかのような表情の上条が、その左手が一方通行の首筋、チョーカーを触れた

その行動に怪訝な顔をした一方通行だが、触れてしばらくした後に、理解した。学園都市の地図の情報が、彼の頭の中に直接流れ込んできたのである

一方「魔法使いみてェなマネしやがって。けェど、いい調子ィ」

一方通行は目を瞑って考えているようだ。しばらく、待つ

上条「何してんのかわかんねーけど、もういいですかー?」

一方「せかすな。もうちょィだ。……第一学区のこの辺、だな」

もういい、と一方通行が目を開いて手をひらひらさせた

上条「……なにがしたかったんだ?」

一方「オイ、三下ァ」

上条「はい?」

一方「第一学区だ」

え?という顔の上条を手で掴み、電極のスイッチを入れる。そして窓を開いた

上条「えっと、上条さんにもわかるように説明してほしいんですけどおおおぉぉぉぉぉ??!!」

上条の体が、4階という高さから投げ出された。一方通行と共に

 

 

 

混濁した意識の中で、彼女は虐殺を見ていた

銃を乱射する人々へ強引に襲いかかり、ナイフで、銃で、足で、拳で、人間を肉塊にしていく

佐天(あぁ、これ、走馬灯ってやつなんだろうな。他の子たちがやってきた事と、混じってるのかな)

佐天(いいよ、全部アタシがもっていってあげるから。受け止めてあげるから)

後ろに続く人間に、間髪おかずに襲いかかる

銃弾が掠った。痛い

佐天(あなた達も、痛かったんだよね)

追撃の弾丸が体を突き抜けた。血が抜けて行く感覚がする。二度目の死を経験した

だが、走馬灯は止まらない。次なる自分が、目の前の先程死んだ自らの死体を視界の隅に置きながら、自分を殺した人間へ銃弾を叩き込む

こんどは、後ろから撃ち抜かれた。そのまま銃弾の雨が彼女を襲う。3度目の死を経験した

佐天(痛いよう)

爆死、痛い。焼死、痛い。窒息死、苦しい。圧死、痛い。苦しい。痛い。苦しい。痛い。苦しい。痛い

ようやく、視界から敵は消え去った

代わりに視界の中心にあるは、少し大人の自分。足元の赤色照明だけの暗い中でもはっきり分かるのは、片腕は無く、目は開いたままで、獣のような表情だということ

しゃがみこんで、その顔を、体を確かめる

佐天(アタシって成長したらこんな体になるんだったんだ。胸なんかも大きくなって)

佐天(こんなことに巻き込まれなきゃ、普通に大人になって、恋愛して、子供が出来て、ってなれたのかな)

やっぱり、悔しい。このまま逝くなんて、認めたくない

弾丸で無茶苦茶になった自らを抱きあげる。死体らしいぶよぶよとした感触と重み

混濁した意識が、徐々にはっきりしてくる。ぼやけていた視界も、周りの暗さに適応していく

本当にボロボロになった体。ある部分は内臓が見え、耐久度を超えてしまったのか、フェイスガードは壊れて頭は半分ほど吹き飛んでいた。持ち上げたことで、死後硬直が始まっていない脳漿が流れ出る

それを見て、高まっていく悔しさ。呪うのは、巻き込まれた不幸と未来が断たれた現実

この現実のせいか、目の前に死んだ自分が居るからか、彼女は彼女の意思でまた新しい体を動かしていることに、今になってようやく気が付いた

重みで生首が千切れる。その千切れた頭に手で力を加えた。変形してい骨格は僅かな力を加えるとゴリッとした感触があって、顔であったものが更に変形した

どうやら、また私は生きているらしい。幽霊なのかもしれない。変形した生首から、ポトン、と眼球が転がり落ちた。足先に当る。どうやら足も実体らしい

足と手があるならば、出来ることはある。彼女は走り出した

 

 

 

 

垣根帝督は心理定規の能力を持つ少女と、東洋人の操る車に乗っていた。あの清掃用の車両である

トウヤと名乗る東洋人。日本語を話すことから、日系なのだろう。日本人かどうかは分からなかったが

垣根「それで、あんたは何モンなんだ?まさか学園都市からわざわざ来ましたなんてヤツじゃないだろうな」

トウヤ「いやいや。君たちを見つけたのはほんの偶然さ。あんまりにも高速で動くから、君らの熱が赤外線レーダーに引っ掛かったんだ」

まさか生きているとは、流石学園都市の人間だ。まさかその体はセラミックなのかい、ははは。と軽い口調だ

垣根(赤外線レーダーなんざ、PMC以外で民間の人間が目にできる訳がねーっての。この男……)

垣根(それに、この車だってそうだ。ガラスは厚めで防弾性能有り。見た目ほど中が広くないのも、大方防御力の向上目的の内装の為だ)

床に手を伸ばした。カーペットの下の更に下に見える簡単な取っ手を引くと、中には何かを入れるための空間が用意されている

そしてそこに有ったのは黒く鈍く光る筒状の物

垣根(やっぱな。こんな清掃車が平気で走るんだから、物騒な国だぜ)

同じような行動をしていた心理定規も驚いた様子も見せなかった。彼女の立場を考えれば当然か

そんな垣根の様子をバックミラーで見る男

トウヤ「驚いたかい?」

垣根「いーや。残念だが、予想通りだぜ」

トウヤ「はっは。これを見て驚かないなんて、学園都市の教育は随分と進んでるんだなぁ」

垣根「茶化すなよ。それで、何モンだ?」

トウヤ「そう急かなくてもいいじゃないか。お楽しみは後で、と言いたいところなんだが、生憎時間が無くてね」

如何にも残念だとジェスチャーするために、男は運転していた両腕を離す

定規「ちょ、ちょっと前も見ないで手放しなんて、なにやってるのよ!?」

だが、車は信号前で待つ車の後ろで適正な車間距離を保ってきちんと停止し、青になれば自然に動き出した

トウヤ「最新鋭だからね。それこそ二日前に供与されたものだ」

道路には学園都市の物と違い、特殊な設備は見えない。つまりこの動きは、車側の制御によるものだ

トウヤ「AIが段違いに向上したもので、ってそんなことはどうでもいいか。私はこういう者だよ」

日本人の代名詞とも言える名刺が出てきた。とある外資系企業の営業部門とある

垣根「ほー。最近の金融マンは作業員に扮して大量の武器を積んだ車で行動しないといけないってか。ふざけるなよ」

トウヤ「あれ、その道の人には結構有名なんだけどな。ま、対外排除しかしない学園都市では仕方のないことかもしれない」

あぁ?と思わず声が出たが、横に座っていた少女がそれを見て、あることに気が付く

定規「上条って、幻想殺しと同じ名字じゃない?」

刀夜「ほぅ。息子を知っているのかい?どうだい、あいつは元気にしてるかな?」

垣根「元気も元気。元気過ぎるぐらいに動きまわってやがったよ、俺の知る限りではな」

刀夜「そうか。ならいいんだ。あいつはあいつでやることをやってるんだろう」

最早、完全に前を見ていない

刀夜「私は、上条当麻の父で、とある諜報組織直結の隠れ蓑みたいな企業に勤めている。表向きは金融バブルに上手く乗っかった私企業だけれども」

あとは言わなくても分かるよね、と言いたげな顔をした

防空網のレーダー情報を覗くことが出来、武器を積んだ最新鋭のAI制御防弾車両をこの国の中で乗り回すことが出来る諜報組織など、一つしかないだろう

垣根「……それで、そんな諜報員が敵である俺たちにお願いってのは?」

刀夜「それなんだが我々の組織の最上位が主導して行おうとしている計画が、私は反対なんだよ」

垣根「あぁ?テメェの反逆を手伝えってことか?」

刀夜「簡単に言えばそうだ。止めようと最大限工作したのだけどね、管轄の違う私では止められなかった」

組織論でいえば、当然の事だろう。まず日本系である事、そして学園都市に子供がいる時点で、そこを仮想敵としている管轄に配属されるはずがない

定規「それで、オジサマが止めたかった計画ってのは何なの?」

刀夜「学園都市の接収計画さ」

垣根「何だと?ちょっと待て、形式的には独立しているとはいえ、実のところ日本領だぞ?不可能だろ」

刀夜「そうだ。だが、仮に、あの学園都市がその異常な軍事力を持ったまま内乱状態になれば、それを日本が独力で抑えることが出来ると思うかい?」

垣根「……できねぇだろうな。でもよ、そんな方法を採るのかよ?米軍まで巻き込んでか?」

刀夜「すでに上下院共に大統領まで秘密裏に許可を得ている。軍も首脳部は既に乗り気だ。その決定の速さは、異様なものだった。それこそ付け入る隙も無い程の、ね」

刀夜「なによりも怖いのは、この作戦が一度大成功とはいえないにしても 成 功 し て い る ことだ。今回は目的がその時とは違うようだが」

垣根「成功している、だと?」

刀夜「その時は我々と軍に隔たりが有った上、裏切も合って旨みがなくなった、という結果だったそうだ。その時の目的は純粋に技術と生産設備となっている」

難しい顔に表情が変化した

刀夜「君たちも知っての通り、今現在こちら側に移った学園都市の研究者は多く、どの人物も一線級と聞いている。そして純粋な技術水準でいえば、この国レベルは都市と変わらないものだ。まだ一般レベルまで普及していないのが学園都市と違うところだけどね。となると、分からない。どうして軍事占領をしてまで学園都市を接収する必要があるのか、が」

 

 

 

禁書目録は、ステイルからの連絡を受けて惜しみながらも図書館を後にした

魔術による遠隔通信は当然傍受される可能性があり、ステイルは深い理由を言わなかった。だが、聞こえる声には余裕がなく、素直にその指示に従った

最初に気が付いたのは、胸元の愛猫だった

不穏な雰囲気を察したのか、胸元でもがいた。そして禁書自身も気が付く

人払いの魔術。彼女はその魔術に捉えられたらしい。周囲の人間が不自然にいなくなる

禁書(私を、狙っている……?)

ステイルが焦っていたのはこう言う意味だったのか

禁書(でも、狙うならわざわざ人払いを張る必要があるかな?確かに暗殺には向くかもしれないけど、ロンドンのど真ん中でこんなことをしたら、すぐにいろんな部署に気付かれる)

彼女は身を隠すように小路へ駆け込んだ

禁書(それを無視して、狙うなんて正気なの?)

どこにいるのか分からない敵を想定して、彼女は逃げる

視界の陰に、長い黒髪が見えた


ステイルは伝えられた人払い展開の情報を元に、現場へと全力で移動中だった

ステイル(クソ!動きが思ってたよりも早いじゃないか!!)

軽く道路交通法を無視し、通り過ぎた後で車と車が接触する音が響いたが無視

ステイル(しかも人払い、だと?どこの馬鹿だ、ここロンドンでそんな愚かな事をするのは)

ステイル(全く持って無意味すぎる。何の目的で見つかる可能性を犯す必要があるんだ)

ステイル(まさか、内部の組織の手なのか?いや、だったらなおさら他組織に見つかるような広範囲魔術を使う必要がない)

ステイル(駄目だ、見当が付かない。わかるのは、仮に見つかっても、ロンドンの魔術師全員を押し返せるような技術と自信を持ったキチガイ野郎だよ)

ステイル(いや、寧ろ今は好機か?!王家の人間はロンドンに居ない。騎士団は療養中。動ける聖人も居ない。アックアとして奴が来たせいでそっちへ人員も裂かなければいけないし)

ステイル(仮にそうなら、僕らも舐められたものだ!特異な存在以外に脅威が無いと言っている様なものだからね)

そして、人払いの結界の中へ飛び込んだ

 

 

 

少女は目が覚めた。だが、動けなかった

口にはガムテープが張られ、手足は縛られている

滝壺(ここは、どこ?)

首と目を動かし、場所を確認する。だが、周囲は暗く、その上どこかの建物の中の様で全然分からない

この状況を脱するには、まずは手足を自由にさせないと

滝壺は体を芋虫の如く動かして、明りが差し込むところまで移動する

半蔵「必死な所をすまない。でもお前さんを逃がすことは出来ないんだ」

急に現れた男の姿に、びくりとする

口を塞がれているため、ん~としか音にならない

半蔵「騒がれても困るから、一方的に話させてもらうぜ」

若干無理な体勢の滝壺を起こしてやり、壁にもたれかかるようにしてやる

半蔵「手短に言う。君をさらったのは俺だ。つまり、浜面の敵だ」

半蔵「でもな、同時に俺はあいつのダチでもある。だから、ここへ来るように浜面に呼んでおいた」

半蔵「君はどうやら連中にとって必要らしい。その分、俺が助けるのを手伝ったのがバレると困るんだ。だから」

暗くて表情は良く見えないが、言葉は強かった

半蔵「だから、次に会ったら俺たちは敵同士として立ちまわってくれ、と伝えてほしい。頼んだ」

そう言って、男は闇に消えた。その跡には、赤い血の染みが残っていた

 

 

 

 

浜面は奪った警備員の車で高速のランプ(斜陽路)から降りて第一学区の区画に入っていく

そして、記憶に残る画像から、特徴的な高速道路のカーブがあの見え方をする場所を考える

浜面(ああもう、記憶がどんどん曖昧になりやがる。落ちつけ、俺。角度は結構ついてた。そんでもってあの見え方だからそれなりのビルの階からだ)

車のスピードを緩めて可能性に含まれる施設を見回す

浜面(って、どいつもこいつも条件を満たす高さ持ってんじゃねーか!!)

前を良く確認していなかった浜面は、目の前の何かを轢いた。その衝撃が浜面をハッとさせる

浜面(うおっ、やっちまった?!)

車を急停止させ、浜面は飛びだした。同時に後ろで縛られていた警備員が衝撃で座席を転がり落ちたのだが、浜面は気が付かない

轢いてしまったのは、人間だった。しかし、速度が緩かった為に、死傷させる程ではないハズだ

浜面(全然動かねーけど、死んでは無いよな。骨折も無いみたいだし)

駆け寄った男は脈も呼吸も有り、変形した様子も無い。目も開いていて、定期的に瞬きをしている。だが

浜面(オイオイオイオイ。キまってんなこいつ)

先日見たドレスの少女のような目をしていた。生気のない、幻覚でも見ているか、絶望をみているか

そこで浜面は気が付く。同じような人間がそこらかしこに立っていることを。上ばかり見ていて気が付かなかった

浜面(気配がないってレベルじゃねぇ。なんなんだこの状況は)

見た目は、今日一日浜面が目にかけなかった、いかにも不良ですと言わんばかりの格好をした連中だった。そう、スキルアウト達だ

そんな人たちはかなりゆっくりではあるが、なにか目標を持って進んでいるようだった

浜面の後ろで車の扉が開く音がする

「おい餓鬼ィ!やってくれたなぁ!!」

声の方を振り返ると、浜面が気絶させた警備員が立っていた

手足を動けないようにしていたのだが、どうにかして脱出したようだ

「警備員に手を出すとはいい度胸だ。だがな、喧嘩売る相手は考えろ糞餓鬼ヨォ!!」

拳銃を引き出して浜面の方へ向けた

「跡が残ってまだ痛いんでなぁ、少々スッキリさせてもらうぞ」

言った瞬間、銃弾が飛び出した。不味いと感じて咄嗟に動かなければ、足が撃ち抜かれていただろう

「オイオイ、避けんなよー。これじゃ、 手 が 滑 っ て急所に当っちまうかもしれないだろ」

やばい。こいつも違う意味でイっちまってる

同時に、今度は殺しの一撃を狙ってくるであろう銃撃をよける為、動きを止めずに物陰へ走る

唇の先に銃弾が掠った。だが動きを止める訳にはいかない

こっちも銃はあるが、この状況で下手に反撃しようとすれば、その動作で撃ち抜かれるかも知れない

何より、相手は防弾装備とまではいかなくても、それなりの警護服を着こんでいる。刺し違えるようなことを狙うのは愚かだ

浜面(畜生、めんどくさいのに捕まっちまった。このまま隠れてそのまま進むか。でもあいつ俺の偽造免許持ってるし、いずれは手が回る)

ビルの陰に入り、傷を確認する。口先と太腿に銃弾が掠っていたが、気にならない程度だ

「な、なにしやがる?!」

男の声が響いた。更に複数の銃声

何事かと顔をビル陰から覗かせると、警備員の男が生気を失った男たちに襲われていた。まるでゲームのゾンビのようだった

と言っても、それは一方的に銃で迎撃しているので、血だまりが増えていくだけだが

銃声が止んだ。銃弾が尽きたので、男は弾倉を交換しようとしていた

流石に躊躇われたのか、頭や腹部を、つまり急所を狙わないで、移動力を削ぐために足を狙ったのだ

だが、それでも張って襲いかかろうとする人々

男は遂に、銃を急所に向けて撃った。至近距離で撃ち込まれた銃弾によって貫通した頭脳の後ろから、その衝撃と共に脳漿が飛び出た

浜面(野郎、マジでやりやがった!?ふざけんなよ)

陰から飛び出して、しかし、おかしくなった人間に囲まれた警備員の男はそれにはすぐに気付けなかったが、危険を顧みずに近づいた

既に急所へ銃弾が叩き込まれた人間は3人。4人目を出させないために、彼は持っていた拳銃を構えつつ進む。出来る事ならば、男が気づいていない内に近づいて、その手の物を叩き落としたい

しかし、男と目が有ってしまう

浜面「ッ」

狙いが正確でないまま、片腕で、浜面は引き金を引いた

浜面が銃をこちらに向けているのを見て、男も拳銃を向ける

両者の決定的な違い。理性的な制御を失っている男は浜面の何処へ銃弾を撃ち込んでもよい

反面、浜面は男の命を刈り取るつもりはなく、銃を失わせたいだけだ

二つの銃声が同時に響いた

 

 

 

土御門元春は、幸運だった

使おうと思っていた列車がなぜか運休になっていたところに、丁度特別便が現れたからだ

乗っているのは、前の車両に一人。良く見えないが、なぜか女子中学生

向こうはこっちが乗り込んでいることには気が付いていないだろう。特別な入口から乗ったので、見えているはずがない

土御門(完全下校時間も過ぎたのに、こんな娘がなんでいるのかにゃー)

その腕には風紀委員と書かれた腕章が見える

土御門(なぜか用意された謎の第一学区への特別便。でもって風紀委員の女子中学生。何者ぜよ)

彼は今、疑心暗鬼である

自分の知らずの内に、大事が進んでいた。それを知ることが出来なかった

目に写る全ての理解に苦しむことが、それに繋がって見える

土御門(……ひとまずは、あの娘について行ってみるべきか)


白井との電話を終えて、少女は列車内で端末を取り出した

本来ならば、ノートパソコンを持ってきたい所であったが、大き過ぎで移動が阻害される可能性があるからと、小型の物を持ってきた

本来ならばタッチパネル式のそれに小型の折りたたみ式ソフトキーボードを取り出し、接続する

初春(第一学区管内で緊急通報。なんだってこんな時に?)

佐天の情報を探そうと、都市内の警備システムに忍び込んだ初春は一番最初に飛び込んできた情報に驚く

先程まで部屋で調べていた時には無かったものだ

初春(スキルアウトとの抗争、ですか)

初春(でも何だって第一学区でそんなことを?すぐに逮捕されるのは目に見えてるのに)

駅が近づいてくる

初春(とにかく、安全を確保しながら進まないと)

電車が止まった

 

 

 

上条「頼むからさ、次は口で言ってくれよ?」
一方通行に投げられ続け、地面に接地する前にキャッチ、更に投げつけられるという鬼畜なことが数回繰り返された末の発言だ

なぜそんなことをしたのかと言うと、純粋に移動の為だ、と一方通行は言う。確かに、彼のベクトル操作で投げて進めば速いだろうが、物体としての上条のベクトルが動かせない以上、単なる嫌がらせにすぎなかった

今の彼らは車に乗っている。運転をしてるのは上条だ

一方「てめェの体が難儀すぎるんだよ。右手が不調だからいけるかと思ったんだがなァ」

上条「勘弁してくれ。お前の実験みたいなことに付き合わされてたら、いつか死ぬ」

高速をかっ飛ばしながら、上条は体の節々に痛みを感じる。一方通行は昼に感じた上条へのイラつきを込めたという事はあえて言わなかった

一方「ンで、あとどれくらいだ?」

上条「この時間のせいか第一学区へ進む方は随分と空いてるから、後30分もかからないと思うぞ。つーかなんで第一学区なんだ?」

一方「一言でいえば勘ってヤツだ」

上条「学園都市第一位の頭脳を持っていながら勘って。ま、確かに何か起きているようだけどな」

ハンドルを右腕で添えるようにして抑え、左手を助手席の一方通行の首物へ伸ばす

上条「お前にも、見せてやるよ」

少し笑みを浮かべて、上条が一方通行をちらりと見る。そして首元へ伸びる手

まるで女性をキスに誘う時に口元を動かすように思えて、一方通行は奇妙な感覚を覚えた

上条「とっと、そうじゃなかったな」

顎に伸ばした手の方向を変えて、首のチョーカーへ

一方「……てめェ」

そして頭脳に情報が示しだされる。その中の一つに噂程度の物だと思っていたものが有った

上条「まさか、こんな施設が本当にあったなんてな。都市伝説だと思ってたけど」

第一学区地下研究開発生産施設。対核戦争になっても、その技術を残す為だとか、そこだけで反撃する為だとか、統括理事会員を退避させるためだとか、実しやかに学生の間でうわさになっていた場所だ

一方「純粋に臭いな。しかもそこが攻撃中だとォ?」

上条「どういう経緯でこうなったのか全くわかりませんが、確かにそんな場所ならあの子達に遠隔的に何かする設備があってもおかしくは無いと上条さんも思う訳ですよ」

 

 

絹旗「こんな時間に呼び出しとか、一体何の嫌がらせですか?」

フレ「お肌に悪いってレベルじゃないわけy、って滝壺は?」

麦野「私だってこんな夜中は勘弁してほしいところだったわよ。でもその滝壺が拉致られたんじゃ話は変わるわ」

その言葉に、少女たちはもちろん驚く

フレ「ちょ、滝壺が拉致って、どういうことよ?」

麦野「さぁね。でもあの子の能力は能力者を攻撃する側からしたら、喉から手が出るほど欲しいでしょ?」

絹旗「じゃぁ、学園都市に喧嘩を売ろうなんて馬鹿共が滝壺さんを?」

麦野「案外、その辺の雑魚かもしれないわ。あの子は純粋な暴力に抵抗出来るような能力じゃないし、売ったら高く売れるでしょうからね」

フレ「うっひゃぁ、それなら結局人質とかのほうがよっぽどマシ」

絹旗「あの馬鹿面なら散々騒いでそうでしょうけど、なんで居ないんですか?」

麦野「多分、もう現場に居るんでしょう」

絹旗「多分、ですか」

麦野「そうよ。あの馬鹿はどうやって気が付いたのか知らないけど、私に連絡する前に再三電話があったし」

フレ「そういえば、私のとこにも来てた」

絹旗「私もです。映画鑑賞中に来たから無視してましたが」

フレ「結局、可哀相な浜面」

麦野「ま、私も他人のこと言えないんだけど、無視は良くないわ。今はあっちが出れないみたいだけど」

絹旗「一人で突っ込んでやられちゃったのかもしれませんね。それよりこの車は何処へ?」

麦野「第一学区よ。滝壺がさらわれた時についてた監視が、あの子がスキルアウトに絡まれているのを目にしたらしいわ」

フレ「ちょい待って。スキルアウトと第一学区の接点が見えない訳よ」

麦野「簡単よ。雑魚の群が、第一学区に大挙して押し寄せてるの、今」

 

 

 

未だに夢の中に居るような感覚だったが、彼女は地下施設の中を駆けていた

なぜか全裸だったので、身につける物が欲しかった。銃は大人な自分が使っていた物を使おうとしたが、筋力が不十分

敵の大男が使っていた拳銃も、この体では不向きらしかった。使えるのはナイフか。振ってみるが、前の体の時のようにしっくりこない。この固体はどういう物なのだろう

佐天(まぁ、今はどうでもいいよね。待ってて、みんな救ってあげるから)

今でこそ敵は全滅しているが、このまま終わるとは思えない。目的を達する為にも早く戻る必要が有った

便利なフェイスガードも無い。そして隠し通路は自ら閉じてしまった

今彼女に出来る侵入方法は一つ。侵入者が残して逝った爆薬で隔壁を吹き飛ばして進むことだ

幸いにも、残る隔壁は一つ。可能性で言えば、施設内に入っても隔壁が有る可能性があるが

第五隔壁側で死んでいる男の側に行くと、やはり爆薬がそのままで残っていた

佐天(ここを開けたら、後続の部隊が来ると、多分止めるのは辛くなる)

佐天(でも、やるしかないよね)

血生臭い男の装備から起爆スイッチを見つけた。そのまま、距離をとってスイッチに力を加える

直線一本の長い通路なので、その衝撃が離れていた少女をも通過して入口の方へ逃げて行った

綺麗に通路の形を残して壊れた隔壁の先に見えるのは、昨日にも操作したパネルを備えた入口

少女はもう一度、その扉をくぐった。昨日とは違う目的を持って

 

 

 

刀夜に連れられて、彼らの拠点にやってきた

拠点と言っても名ばかりで、簡単な通信設備などが有る程度のビルの一室でしかない。セーフハウスの一つなのだろう

刀夜「例の計画が前に成功していた、と言ったよね。その直接的な証拠という訳じゃないが、ここにそんな事が有ったような可能性を示すものがある」

そう言って、彼はデスクの引き出しから封筒を出す

刀夜「君がこの国に来る前から有ったもの、ということを念頭に置いてほしい」

渡された封筒には、結構な量の書類が入っていた

垣根帝督という人間の構成・脳波パターン・脳内構造・能力についてなど、流し読みしただけで苛立つほど、彼の詳細な情報が掲載されていた

垣根「あー、俺にはプライバシーの権利ってもんがないのかよ。って言いたくなるな、こりゃあよ」

定規「だけど、この程度の情報なら流出の範囲じゃない?」

刀夜「その通り。だが、問題は君の能力分析の所だ。読んでみてくれ」

そこには、垣根の能力の特性が書いてある。今まで目にした自分の情報の中で一番詳細なものだった

垣根「未元物質の構成仮説と実測結果、だと。なんだこの精度は」

刀夜「そうだ。加えて、実験の日付を見てほしい」

定規「二日前……?!ちょっとまって、有り得ないわよ、こんなの」

あの日は、仕事が始まるまで垣根は自分の監視下にあったのだから。仕事以降はずっと垣根も活動していたと聞いている

垣根「そうだ。有り得るハズがねぇよ、こんなもの」

刀夜「私だってそう思う。日付の日程なんて書き換えるのも容易だしね。だが」

垣根「その計画とやらの詳細を知った上でのコレは、ってか。言いたいことはわかるぜ。だが、こんな情報を俺に知らせたところで、俺はあそこへ戻るつもりはねぇぞ」

垣根「戻れば何をされるか分からない上に、伝手も消されているだろうしな。それに学園都市なんざよりも、もっと厄介な問題があるだろうが」

暗部組織、という便利な枠から完全に外れてしまった以上、心理定規の能力を持つ少女にとっても戻る利点は少なかった

刀夜「君が何の事を言っているのか分からないが、それは200万の子供達よりも優先されるようなものなのかい?」

垣根(……こいつ、知らないのか。どうなってる?情報共有がなってない、いや、封鎖されているのか?だとすると、こいつらの反逆は上にバレてんのか?)

垣根「さぁてね。だけど、有益な情報をもらったのは確かだ、助言はさせてもらう」

垣根「おタクの反逆、多分看破されてるぜ?」

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