佐天「時を止める能力……」 > 11


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──虚数学区・五行機関が部分的な展開を開始。

──該当座標は学園都市第七学区のほぼ中央点。

──理論モデル『風斬氷華』をベースに追加モジュールを上書き。

──妹達を統御する上位固体『最終信号』は追加命令文を認証。

──これより学園都市に『ヒューズ=カザキリ』が出現します。

──関係各位は不意の衝撃に備えてください。

 

 

 


先ほどから気にしていなかったが、学園都市は今雨が降っている。
普段の学園都市とは違い九割の人間が昏倒しているので道路に車といった照明といったものは乏しい。
それは建物も同じで、まるで学園都市に誰も居ないような気にさえさせる。


──そんな街の一角で、莫大な閃光が溢れる。


光の中心点の僅か数十メートルに佐天涙子はいた。
轟ッ!!という先ほど高校生くらいの女の人が居た地点から無数の翼のようなものが吹き荒れる。
周囲にはビルといった建物があるが、そんなものは関係ないとばかりにその翼で次々と倒壊させていく。


佐天「きゃ、きゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


その翼は佐天涙子も邪魔と言わんばかりに此方へと凄まじい速度で向かってくる。


佐天「────!?」バッ


ほとんど無意識だった、無意識に右手を突き出していた。
翼は止まったが、いや止め切れなかったのだろう。
翼からの直接的な激突は止められたが、その衝撃までは止められなかったらしい。

──衝撃波によって佐天涙子は吹っ飛ばされてしまう。

 

────────

御坂「どう、なってんのよ……あれ」

御坂「私はただいつもの通りコンビニで立ち読みしてたのに……あれは一体?」

御坂「──ん?」


バシャバシャ、と水溜りを気にせずにかけていく少女が歩いていた自分を抜かしていった。
その顔に見覚えがあった。


御坂「ちょ、ちょっと!アンタこんな所で何やってんのよ!?危険だってわからないの?!」

インデックス「離して!!ひょうかがあそこに居るの!!」

インデックス「行かないと。あそこには私の友達がいるの!どうしてか分からないけど、止めにいかないと!」


よほど錯乱しているのだろう、ほとんど説明になっていない。
あまりの事態に混乱して狂ったんじゃないのかしら、と御坂が思った瞬間──


インデックス「とうま!!」


そう、今日この九月三十日に罰ゲームと称して午後一番に地下街を一緒に回って
携帯のストラップを貰ったりした、上条当麻が100メートル先に居た。


インデックス「だめだよとうま!!ひょうかを殺さないで!!」


上条「ッ!?──インデックス?それに御坂もッ!?」


上条当麻は追われていたため、大きな声に体が一瞬硬直する。
撃たれたのかと思ったが、後ろを振り返るとインデックスと御坂美琴が此方へ向けて走ってくる。


上条「今はダメだ!!俺は黒服の連中に追われてる!!だから来──!?」


ヒュ~、という音に上条当麻は黒服の男達が銃ではなく何か新しい兵器を使用したのかと思い身を強張らせた。
しかし、黒服達は居ない、では一体──


──ァァァァ、ダメェェェェ


上条「ん?何か今聞こえ──」



佐天「イヤァァァァァァァァ!!!ダメッ!!!!当麻さんどいてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」



当麻「う、うわあああああああああ」


上条当麻は追われていたので建物と建物の間に身を隠して居たのだが
どういうわけか飛んで来た佐天涙子は上条当麻に吸い込まれるようにして……。

──激突した。

佐天「うぅ……、危ないトコロだった……本日二回目の吹っ飛び……」

佐天「そのお陰っていったらアレかもしれないけど範囲指定の時止めで何とか激突の衝撃は免れたかぁ……」

上条「──る、涙子ちゃん……?な、なにを……」

佐天「あ、いやー何か天使みたいなのに、ふっ飛ばされて──」


インデックス「とうま!!その天使はひょうかなの!!お願い!!ひょうかの所には行かないで!!」

インデックス「どういう理屈かは分からないけど、止めなきゃ!でもとうまが触ったらひょうかが消えちゃうんだよ!」

インデックス「だから、行かないで!!」


上条「インデックス……、大丈夫だアイツは俺が止める。それに問題はアイツだけじゃないんだ。お前だけには任せられない」

インデックス「とうま!!」

上条「殺すんじゃねぇ、風斬を助けるために立ち上がるっつってんだ!!」

上条「俺には魔術的な詳しいことは分からない、だからお前の力が必要だ。でも今風斬に起きてる現象はAIM拡散力場も絡んでると思う!」

上条「だからお前にも分からない事もあるかもしれない。でも俺ならそっちのほうは手伝える俺達なら風斬を助けられる」

上条「行くぞインデックス、風斬氷華を助けるためにお前の力を貸してくれ!!」


インデックスと呼ばれる少女はコクリと頷く。

御坂「ハァー、何だか訳分からないけどまたアンタはでかい問題に巻き込まれてるワケね?」

上条「ま、まぁそうだけど」

インデックス「ていうかとうま、さっきから触れなかったけど当麻と密着してる女の子は誰なのかな?」

上条「あ、えと……と、友達です」

佐天「んー、さっきの天使は当麻さんの知り合いなんですか?」

上条「えぇ!?この状況についてスルー!?……、知り合いってか──」

インデックス「知り合いじゃないよ、友達」

御坂「ハァー、何にせよソイツは悪い奴じゃないのよね」

上条「絶対違う、インデックスも言っただろ?あそこに居るのは俺の友達だ」

佐天「当麻さん!!黒服の人たちが──」

御坂「じゃ、そこの黒服が悪い奴ってワケよね?」

上条「何を目的としてるのかは分からないが、少なくとも良い奴ではないハズだ」

御坂「しゃーない。何だか知らないけどあれは大切な友達なんでしょ、さっさと助けてきなさいよ。こっちは何とかするから」

上条「馬鹿、お前……ッ!!」

御坂「ごめんごめん。止める間もなく始めちゃうわよ」



超電磁砲。
学園都市二三〇万人の頂点、七人しか居ないレベル5の第三位。

──御坂美琴


彼女は既に路地の出口に向かってゲームセンターのコインを射出していた。
彼女の二つ名の一撃は路地の左右を削り轟音と閃光を撒き散らしながら黒服の元へ衝撃波を飛ばす。

超電磁砲が直撃すれば命は無いだろうが、御坂美琴はちゃんと軌道を考えているのであろう
しっかりと黒服たちには命中させないように衝撃波だけを当てていく。



御坂「罰ゲームよ!! アンタは『友達を助けて戻ってきなさい!!』何でも言うこと聞くんでしょ!!」

上条「わかった!!必ず助ける、だからテメェも死ぬんじゃねぇぞ!!」

上条「行こうインデックス、涙子ちゃん」


タッタッタ、と路地を抜ける3人を確認した後、御坂美琴は少しため息を漏らす。


御坂「はぁーあ、罰ゲーム、こんな事に使っちゃうなんてなぁ……」

御坂「ん?待てよ、あんた達黒服がいなきゃ問題を起こさなきゃ今よりマシな罰ゲームを言い渡せたのではないだろうか──」

………
……




ムシャクシャしてきた。

──アンタ達……覚悟しなさいよね。

────────────


インデックス「ねえとうま、さっきから街が静かなんだけど。これって何なの?ひょうか以外にも魔術の流れを感じるんだよ!」

佐天「(魔術……か、この子は当麻さんの何なんだろうか。AIM拡散力場について分からないと当麻さんが言ってたし)」

上条「あぁ、この街が静かなのは皆気を失ってるからだ、この街に侵入してきた魔術師の攻撃でな!!アイツの攻撃の方法と治す方法が何かわからないか?」

佐天「(わからないか?か、この子は多分魔術師?か何かなのかな……?ステイルさんや土御門さんのように)」

インデックス「多分、それは『天罰』だよ」

上条「なんだって?」

インデックス「ある感情を鍵にしてその感情を抱いたものに罰を与える。距離も場所も関係ない!って魔術だと思うんだよ!!」

インデックス「その魔術師は特定の感情を誘導させるような行動をしたりしなかった?」

佐天「感情──そうか、『敵意』じゃないかな?」

上条「それだ、そうすればわざと挑発するような言動とかに説明がつく!」

佐天「そっか、それであの──」

インデックス「待って!!それ以上その魔術師について言わないで!!私は今『歩く教会』の防御機能は失われてるの。だからその天罰は防げないんだよ!」

佐天「そっか、ごめんね──」

上条「それにしても風斬は大丈夫なんだろうな!?」

インデックス「わかんないの!!少なくともあそこに居る天使とそれを統率している核が別々の場所にあることはわかるんだけど」

上条「インデックスでも解けない、か……」

佐天「その、あれって学園都市で作られた魔術?みたいなモノなんですよね……?」

佐天「だったら、AIM拡散力場が関連してるんじゃないんでしょうか……?」

上条「それだ!!えーっとAIM拡散力場について詳しい人は………、子萌先生だ!!」プルルルル

上条「クソッ、繋がらない……」

佐天「えっと、あたしじゃダメだと思うんですけど、御坂さんなら分かるんじゃないでしょうか」

佐天「常盤台中学校って大学レベルの問題もやってるみたいですし」

上条「そうか、御坂ッ──」











上条「俺はあの天使の所にいって決着を付けに行く、インデックスAIM拡散力場について分からなければ御坂に聞いてくれ」

インデックス「わかったんだよとうま!」

上条「インデックス、一人で大丈夫か?」

インデックス「大丈夫なんだよ!!それよりひょうかをお願い!!」

上条「わかった、任せろ」

 

────────

上条「それじゃあ涙子ちゃんはこのまま家に──」

佐天「無理です、あたしだってヴェントを止めたい理由があります!」

上条「でも危険だ!!涙子ちゃんには傷ついて欲しくない!!」

佐天「うれしいセリフですが、あたしの能力があればかなり有利に事が進むと思いますけど?」

上条「~~~!!わかった。でも危険だと感じたら俺のことは気にせずに逃げてもいいからな!!」

 

第七学区の中心点。

そこは本来なら若者向けのデパートやレストランで賑わっている所だ
しかし今は散々な状況だった。
ビルは崩れ、デパートも崩壊し、レストランの看板が粉々に砕け散り──


──その中心点に天使はいた。


翼のサイズとは違い本体は人間サイズだ。
灰色の粉塵も、土砂降りの雨も、その全てを吹き飛ばすかのように天使の翼は光を放っていた。


長い髪の少女だった。
黒の中に茶色の混じった綺麗な髪、上条当麻が知っている少女のはずだった。
気弱で泣き虫で悪党を殴ることも躊躇うそんな少女のはずだった。


今、上条当麻と佐天涙子が見ているのはそんな少女とは全く違う。
口は半開きにし、舌をだしフラフラと不規則にゆれている。

上条「風斬ィィィィィいぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


思わず駆け出してしまった上条当麻だが
──近づいてどうする?この右手で彼女を触ってしまったらそれで彼女は死んでしまう。

くそ、どうする……と心の中で悪態をつく上条当麻だったが──


ヴェント「おやおや、そろいも揃って大罪人同士、傷でも舐めあってたってところカシラ?」

上条「……っ!!ヴェント!!風斬はやらせない!!」

ヴェント「へぇ、あんなものに情が沸くんだ。とんだ博愛主義者よね、そこらの変態でもアレは受け付けないと思うケド?」

上条「テメェ!!撤回しろ!!」

ヴェント「ナニについてぇ?もしかしてー、普段はああじゃないとか言うつもり?馬鹿馬鹿しい」

ヴェント「ソイツは全ての十字架を背負うもの全てを嘲笑う、冒涜の塊よ──消滅すべき存在だわ」

ヴェント「ね?アナタはそうは思わない?佐天涙子ちゃん?」

佐天「────、あれは……。当麻さんは『友達』だといった。」

ヴェント「だからー、馬鹿馬鹿しいって。アレはこの糞学園都市が生み出したお人形よ?」














佐天「『友達』というのなら……。──消滅して良い存在の筈が無い!!!」



上条「そうだ、ヴェント……もう一度言うぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上条&佐天「「撤回しろ、クソ野郎!!」」

 

 

 

 

 

 

ヴェント「へぇ、意外と可愛いところあるじゃない。イイでしょう、どのみちアンタ達は順番に殺す予定だし、仲良く一緒に殺してアゲル」

ヴェント「もしかして、その後ろの冒涜の塊に救援を求めちゃったりしてる?だとしたら無駄よ、ソイツには意思なんか無いんだから」

ヴェント「天使ってのは神様の『道具』なんだよ利用されるだけ利用されて使い物にならなくなったらゴミ箱へポイさ」

ヴェント「ハッ、そこの冒涜の塊を見るに不完全ってところよね。」

ヴェント「今の不完全な状態なら内側制御系に介入する術式を組んで自爆を誘発させてやるわ!!」

上条「……、黙って聞いてればふざけるなよテメェ」

上条「どうやって風斬に学園都市が利用して天使に仕立て上げたのかは知らねぇ」

上条「けどな自分を利用されて、それで外からやってきたテメェに殺される?」

上条「ふざけるなよ、人の友達を何だと思ってやがる!!」

 

 

──────────────────────────



上条「涙子ちゃん、ヴェントと戦闘になったら間違いなく俺はアイツに殴りかかりに行くと思うんだ」

上条「まぁ、なんというかそこで涙子ちゃんは俺と同じようにヴェントに向かうのではなく、こっそり時間を遅くして欲しい」

佐天「はぁ、こっそり……ですか?モロバレだと思うんですけど」

上条「バレていても問題ない、俺が殴り込めばヴェントも対応せざるを得ないだろうからな」

上条「だから俺がヴェントに向かって駆け出したら時間を遅くして欲しい」

佐天「分かりました」

上条「あぁ、頼むぜ」



──────────────────────────

上条当麻がヴェントを目掛けて掛け出す。
佐天涙子はそれを見て少しヴェントから距離を離す。


上条「行くぞヴェント!!」

佐天「(!!……今だ)」スゥ…

上条「!!(来た、待ってろヴェント……俺たちがお前の幻想をぶち殺してやる!!)」


佐天涙子が時間を遅くし、上条当麻が矢のように加速しヴェントへ疾走する。
時の遅くなった世界で上条当麻は右手の拳を振り上げ──


ヴェント「ハッ、見え見えなんだよ!!クソガキの考える事なんてよ!!」


拳の先にヴェントは居なく──
すこし離れた佐天涙子の目の前に居て
ハンマーを佐天涙子に突いた。

佐天「──がっ……、う、うそ……」

ヴェント「チッ、やっぱ出力落ちてるわね」


げほ、と小さく咳をして血痰を道路に吐き出すヴェント
ハンマーを腹に突かれたことによって、くの字に体が折れ、道路に倒れる佐天涙子。


上条「る、涙子ちゃん!?ヴェントお前一体──」

ヴェント「あったま悪いわねー、この佐天涙子の能力が割れてる以上作戦なんて有って無いようなもんデショ?」

ヴェント「まぁこの佐天涙子の能力の全てを把握してるワケじゃないけどサ」

ヴェント「射程距離がある程度あるなら身を隠しておくべきだったわね」

ヴェント「げほっげほ、チッ……だが邪魔な佐天涙子はクリア──」


ヴェントが佐天涙子を目掛けて有刺鉄線が巻かれたハンマーを勢い良く振り下ろす。
反射的に上条当麻は佐天涙子の方へ駆け出すが


上条「待ッ────」

上条当麻は佐天涙子に振り下ろされたハンマーを止めることが出来なかった。
土砂降りの雨の中ヴェントの放った一撃が周辺のコンクリートを巻き込んだのか、辺りは灰色の粉塵が舞っている。
周囲の状況を考慮しても、あの一撃の中心点にいた佐天涙子が生きている訳が無かった。

──だが


上条「え……?」

ヴェント「なっ……!?」


上条当麻とヴェントは倒れている佐天涙子を見る……確かに彼女に攻撃が直撃した──はずなのに。
はずなのに、佐天涙子は先のハンマーの一撃を食らった様子は無かった。


ヴェント「(どういうコト……?私の攻撃は直撃した筈なんだけど。クソッ上条当麻の前でコイツを潰せばちょっとは揺さぶれたのに)」


そうヴェントは思考していたが、視界の端に何かが映る。

──ふわり、ふわり。

淡い光を放つ綿のような、優しい光がゆっくり夜空から舞っていた。

ヴェント「一体コレは……?」

上条「は、はは………」

ヴェント「ま、まさかこの堕天使──」

上条「はははは!!たまんねーな!!あぁ、そうさ!!不幸不幸って言ってるけど、これだけあれば十分に幸せじゃねぇか!!」

ヴェント「ナニを、何のコトを言ってんのよアンタは!」

上条「ははは、ヴェント……お前の相手は俺と涙子ちゃんの二人だけじゃないって事だよ!!」

ヴェント「ッ!!……、ハッ!!まるで後ろの化け物と協力してるみたいな言い方ね!」

上条「協力してるみたい、じゃねぇ。本当に協力してるんだ!」

ヴェント「ハッ、言ってろ!!」


そういうとヴェントは上条当麻へハンマーを振り上げる。
縦横にハンマーを振り回すと、3つの鈍器が生み出される。


上条「ッ!!(まずっ、避けきれな──)」


とっさに右手を構えた上条だが──


ヴェント「うぐっ……、げほっ──!!」


ヴェントが不意に体を折り曲げたと思ったら、その口元から血が爆発した。
制御を失った三つの鈍器がその場で爆発し、轟音と共にヴェントの体を後ろに吹き飛ばす。

上条「ヴェント!!」

ヴェント「……、ナニ馬鹿みたいな声を上げてるのよ」

ヴェント「コレはあんたら科学サイドが仕掛けたことでしょう?」

ヴェント「この学園都市で魔術を使うとその術師に魔術の循環不全をさせるってトコロかしら」

上条「馬鹿野郎、そこまでして戦う理由があるのかよ!!」

ヴェント「ハッ、人を殴り殺そうとしようとしてるクソ野郎が白々しいセリフを吐いてんじゃないわよ!!」

ヴェント「ゲホッ、ゲホゲホッ──」ボタボタ

上条「……、レスキューが必要なんじゃねぇのか!?」

ヴェント「ふざけんじゃ、ないわよ……」

ヴェント「私はもう二度と!!科学なんぞに身を預けない!!」

上条「──もう、二度とだって?」

ヴェント「……、私の【弟】は科学によって殺された」

佐天「────!」ピクッ

上条「なに?」

ヴェント「遊園地のアトラクションが誤作動を起こしてね、私は弟と一緒にぐしゃぐしゃの塊になった」

ヴェント「アトラクションは科学的に安全が保障されていた、全自動速度管理プログラム!そんな頼もしい単語ばかり並べて!!」

ヴェント「けど、実際には何の役にも立たなかった!!──弟は……、弟は……」キッ

ヴェント「だから科学が人を救うなんて信じられない!!」

ヴェント「そこの【人形】も同じよ!!ナニが人を守ってるよ、その裏でしっかり破壊してるじゃない」


【弟】【人形】……。


ヴェント「驚いたァ?この私が戦ってる理由をきいてサ!!神の右席を利用しても、科学を潰したい──科学を憎んでるの!!」

──イデ、スヨ


ヴェント「あぁ?」







佐天「その……憎しみは……ただの勘違いですよ……と言ったんです……」

佐天涙子はヨロヨロ立ち上がり、咳をしながら弱々しく──


佐天「科学が弟を殺した……?あたしも弟がいますけど……、もし……あなたのような状況になって弟が死んだとしても──」

佐天「──あたしは科学を憎んだりなんかしない」


フラフラと揺れながら、ヴェントに向かって言う。
その表情は陰になっていて見えないけれど
ヴェントは彼女が真っ直ぐ力強く自分に視線が向いている事が分かった。


ヴェント「──ッ!!テメェに何が分かる!!実際に目の前で肉親が死んだ経験も無いくせに!!」

佐天「それでも、です……、言い切れます──あなたは……科学を憎むんじゃなくて……弟に感謝するべきです」

ヴェント「ナニを言って──」

ヴェント「弟は──弟は!!病院で私達二人の分の輸血が一人分しかなくてッ!!それで弟は何て言ったと思う?」

ヴェント「お姉ちゃんを、助けてくださいって!!そういったあの子は見殺しにされたんだ!!」

佐天「──、そのお医者さんも初めから死なせたくなかったに決まっているでしょう……」

佐天「死にかけてた弟さんは、お姉ちゃんを助けてくださいって……、命がけで頼んだんでしょう……?」

佐天「それなのにあなたは……そのことを分かってる癖に……、その事実を無視して──無視して無視して無視して」

佐天「無視して──科学を憎んでるフリをしてるんです。」

佐天「本当は……、弟さんに感謝して、私の命を救ってくれてありがとうって言わなきゃいけないのに」

ヴェント「──黙れ」

佐天「弟さんの願いを聞いてくれてありがとうって、お医者さんにも──その【科学】にもありがとうって」

ヴェント「黙れっつってんだよおぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

激昂のあまり持っていたハンマーをがむしゃらに振り回す。
今までのように計算して振り回しているわけではなく
ただ乱雑にハンマーを振り回している。


佐天「今、この時この瞬間にあなたの科学への憎しみを止めてあげます」


乱雑に振り回されているハンマーを掻い潜り、佐天涙子はヴェントへと掛け出す
それをサポートするように──
上条当麻はヴェントへの牽制として右手でヴェントの魔術である空気の鈍器を消し去る。


ヴェント「たった10歳にも満たない子供がッ!!死に掛けて朦朧としている状態で目の前に傷ついた肉親がいたら!!」

ヴェント「ソンナ状態で決断しろと迫られたら!!誰だって首を縦に振るに決まってンだろぉぉぉ!!」

ヴェント「小さな子供の意見なんて、そこに価値なんてあるわけないじゃない!!」

佐天「価値ならあるじゃないですか」


乱雑に振るわれているハンマーを時を遅くして避けたのか、いつの間にか至近距離に彼女が居た。


ヴェント「ッ!!」








佐天「──だってあなたは生きてるんだから」

 

 

 


サー、と雨の振る音だけが聞こえてくる。
先ほどまでの何かを破壊するような音は聞こえない。


佐天涙子の右手はヴェントのハンマーを掻い潜り、彼女に届いた。
右手に触れたヴェントは近づかれた佐天涙子に吃驚した表情で固まっている。

──終わったのだ、この学園都市を襲った未曾有の大混乱が、佐天涙子という中学生の女の子一人の右手によって。



上条「(終わった、か……そうだインデックスのほうは──)」

上条「(ホントにヤバかったら御坂から電話がくるか……。一先ず──)」

上条「涙子ちゃんの応急手当、だな」


佐天涙子は一見外傷が無いように思えたが、先ほどハンマーで殴られた腹部のほうが気になる。
ヴェントを掴んだまま肩で息をしてて一言も喋らないし……。
もしかしたら結構ヤバいんじゃ──

──と、思ったその時。

ガン!!
という音と共にヴェントがいた辺りのコンクリートが砕け、灰色の粉塵が舞う。


上条「なに!?」


灰色の粉塵が邪魔でヴェントと佐天涙子の姿が確認できないが──

次第に晴れていく灰色の粉塵に一つ、シルエットが多かった。


上条「誰だ!!」



??「失礼」

??「この子に用があったものでな。手荒な真似を避けるため目を眩ませてもらったが気に障ったかね」

上条「誰だって言ってんだよ」

アックア「後方のアックア。ヴェントと同じく神の右席の一人である」

アックア「心配しなくともいい、兵の無駄死には避けるべきだ。だから佐天涙子とかいうこの小娘に手を出す気はない」

上条「涙子ちゃん!!」

佐天「と、当麻さん……?」

アックア「そこの【人形】と戦うのは避けたほうが良いだろう。少なくとも準備を整えるまではな」

佐天「人形人形って!!あそこに居るのは当麻さんの友達です!!」キッ

アックア「ふむ、それは失礼した。だが佐天涙子、あれは学園都市が……、否──アレイスターがアレイスター自身の為に作られたモノであるぞ?」

アックア「形こそ人に酷似しているが中身は全くの別物である、それは【人形】なのではないのか?」

佐天「……、例え人形と世界中の人が言ったとしても!!あたしだけは!!人形と認めるわけにはいかないんだ!!」


佐天涙子が風斬氷華のコトを人形ではなく人間として扱うには訳があった。
それはかつて彼女が救うことができなかった2万人のうち約半分ほど殺された妹達の存在がある。

学園都市の絶対能力進化という実験の為に製造され
殺されるためだけに作られた──人形。

その妹達の友達である彼女自身が風斬氷華を人形として扱うことは、妹達の否定に他ならないのだから。


佐天「とりあえず、アックアさん……ヴェントを離してください」

佐天「まだヴェントには言い足りないことがあります。彼女の憎む科学なんて幻想と──」




アックア「──幻想か、それは佐天涙子、貴様の右手の事であろう?」

佐天「──な……?」

上条「ゴチャゴチャ言ってねぇでヴェントを離せ!!」

アックア「学園都市で昏睡している人々を助ける方法でも聞くつもりかね?」

アックア「それともここで我輩がヴェントを離したとして何になる、学園都市に身柄を引き渡したら間違いなく処刑だな」

上条&佐天「ッ!!」

アックア「どの道ヴェントはもう天罰術式を使えん。昏睡した人々もそのうち目を覚ますであろう」

佐天「待って!!そんな納得できな──」


アックア「一つだけ教えてやる、私は聖人だ。無闇に喧嘩を売ると寿命を縮めるぞ」

 

 ダァン!!という地面を蹴る轟音と共にアックアの姿は一瞬で見えなくなった。
前後左右上下どこへ行ったのかも目で追う事は出来なかった。
分かるのは桁違いの速さという事だけだった。


上条「(クソッ……、行っちまった……)」

佐天「(あたしの右手が幻想──?どういう事……?)」

 

────────────────────────────

アックアはヴェントを抱えて学園都市を出た。
ヴェントの霊装が破壊されたことによって学園都市の人々は次第に目を覚ましていくだろう。


アックア「嫌な世の中だ」


ピピピと鳴る音源を探ると、アックアのポケットに入っていた携帯電話には見慣れた番号が羅列してあった。
憂鬱そうな表情を見せ、アックアは携帯電話の着信に応答する。


アックア「テッラか」

テッラ『えぇそうですよ、左方のテッラです。そちらのほうは終わりましたか?』

アックア「ヴェントがやられた。今回収して学園都市外周部の機動隊を下げさせた所である」

アックア「我々の被害が七割を超えたため上条当麻への追撃及び学園都市の攻略は一時中止させた」

テッラ『ご苦労様です』

アックア「叱責はなしか」

テッラ『あなたや、ましてあのヴェントに対して悪意を向けてどうするのです」

テッラ『まぁもっともやられたのなら霊装のほうも潰された可能性が高いですけど』

テッラ『して、今回上条当麻【のみ】の殺害を依頼してあったと思うのですが』

アックア「あぁ、そうだな分かっている。標的は二人に変更だ上条当麻と佐天涙子のな」

テッラ『にしても佐天、ですかー学園都市もかなり厄介なモノを用意したものですねー』

アックア「そっちの方は放っておいても良さそうであるがな」

テッラ『と、いうと?』











アックア「──佐天涙子の右手の能力は間も無く消滅するであろう、ということだ」

 


学園都市の未曾有の大混乱は幕を閉じた。
しかしそれは【神の右席】の始まりに過ぎなかった。

──突然世界中でローマ正教徒達による反科学デモが起き始める。
そこであたしは久々に力の無さに悔しさを覚えることになる。



ヴェントが攻めてきた次の日から、あたしは右手の能力を失っていた。

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