上条「・・・・・・六軒島?」4


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麦野「……三位と上条が殺されたのはさ、…私の責任よね」

一方「……」

滝壺「……むぎの」


麦野「少人数なるなんて危ないに決まってるのにね」

垣根「…結論として、出て行ったのは超電磁砲の意思。ついて行くのを決めたのは上条の意思だ。……全部お前の責任ってワケじゃねぇよ」

土御門「…にしても犯人が全く検討がつかないな…超電磁砲達がこの部屋を出て行ってからおおよそ4時間。その間俺達はこの部屋を自由に出入り出来た…たぶん誰もが一回はこの部屋を出て行ってるだろう」

垣根「…となると、犯人の特定は不可能ってワケだな」

雲川「…犯人を特定する前に、どうやってあの密室を構築したか。それが先だと思うけど?」

垣根「…だな。同意だ。状況はどうなんだったっけ?」

一方「…完全なる密室だ。ドアには鍵、そしてチェーン。チェーンは鎖式で、扉を開いた時その隙間は10cm強。そして例の魔法陣に………手紙だ」

滝壺「手紙……?」

一方「……クソガキ。オマエ拾った手紙どォしやがった?」

打止「ああ、これの事?ってミサカはミサカはあなたに封筒を手渡してみたり」

 

―――場の空気が凍る。当たり前だ。事の始まりは全てこの封筒からなのだから。



麦野「……それ…」

土御門「またかにゃー…」

滝壺「中身は……?」

一方「まだ開けてねェよ」



―――封筒を開く。蝋印は確かに前の物と同じ。中には便箋が1枚。最初の物とは違い、短く簡潔に1文のみ。



【我が名を讃えよ】



ただ…それだけだった

 

麦野「…何それ。我が名って何?誰のことよ」

打止「…ベアトリーチェだよ」

雲川「……」

一方「…オマエは黙ってろ、クソガキ。…魔女なンて居るワケねェンだよ」


打止「いるよ…!魔女は"い"る……!さっきからあなたはそんな事言ってるけど、結局ニンゲンの仕業だと思いたくないんだよね?当たり前だよね。だから、そんなことをミサカは責めてるんじゃないの。それなのにどうして魔女を認めないのかなってミサカはミサカはあなたを尋問する!!」

一方「……!オマエ……」

麦野「…打ち止め。魔女なんていないわ。犯人はニンゲンよ、絶対に。………三位の事は大嫌いだったけど、まあこうなったからには犯人を暴いて、カタキぐらいは執ってやることにするわ」




打止「………………無理だよ。儀式は終わらないってミサカはミサカは小さく呟いてみたり」

 


絹旗「うーん。臭いの元、超何処かよく分からないですね…」

嘉音「はい…厨房ではないようでしたし…」

絹旗「というか、この臭いは結局超何なのでしょうか…」

嘉音「何かが焦げたような…でも普通の臭いではありませんね…」

絹旗「ふーむ…」




―――屋敷は広い。かつてはたくさんの人が住んでいたから。

招かれた客人、絹旗最愛と客間を出てから10分が過ぎようとしていた。

…最初、臭いの原因は厨房であると僕は思っていたが、そうではなかった。厨房は火の気も無く、勿論誰も居なかった。

厨房出た僕達は窓を開けてみる。すると臭いは薄らぎ、やはり室内のものなのだと確認できる。

…あと、火を使える場所はと考える。使用人待機室だ。

嘉音「…絹旗様。あと火を使える場所と言えば使用人待機室です。…可能性としてはとても低いように思いますが、一度行ってみてもよろしいでしょうか?」

絹旗「…使用人待機室?了解です。ここを超直進でオーケーですか?」

嘉音「はい。突き当たりの階段を上にです」



―――絹旗最愛は歩き出す。僕は窓を閉めてから少し遅れて後ろを追う。


……………ん?立ち止まる。左に曲がる通路。下はボイラー室だ。…焼けた臭い、火。
そうだ。ここも条件に当て嵌まる。少し臭いが強い。下からだ。……どうやら原因はここのようだ。



嘉音「絹は……」





バタン



―――扉が閉まる音だ。………僕は走り出す。…なぜなら今、僕と絹旗最愛以外の人間がここにいるはずがないのだ……要するに、今のは19人目!早くしなければ逃げられる…ボイラー室に入口は二つ。中庭に繋がる扉があるのだから!!


絹旗「さて、廊下を突き当たりましたが使用人待機室は超2階なんですか?」





――返事が無い。





絹旗「……?嘉音君?」




―――振り向く。……後ろには誰も居ない。置いてきてしまったのだろうか……少し戻ろう。




バタン



絹旗「………今の音は、超この下からのようですね…下は何なんでしょうか?」

―――悪臭悪臭悪臭。さっきよりもずっと酷い。…汚れ仕事にも関わっている自分はこういうものには比較的耐性がある方だと思うが、それでもこれだ。きっと一般人には堪えられやしないだろう。

臭いの元はここからなのだろうか……。階段を下ると扉がある。ボイラー室。そう書いてある。



絹旗「なるほど。超納得です。……どうやらここの故障みたいですね。…とすれば、超今の音は嘉音君でしょう」




―――ドアノブを捻る。鍵は開いている。当たり前だ。さっき人が入っていったのだから。



ガチャリ




中にあったのは………

 


滝壺「……ねぇ、むぎの」

麦野「…何?」

滝壺「………"奇跡"って、何だと思う?」

麦野「…何よそれ?謎掛け?」

滝壺「ううん、普通の疑問。むぎのは奇跡って何だと思う?」

麦野「"起こらない事"ね。奇跡ってのは"起こらない事"。…だと私は思うわ」

滝壺「……垣根さんはどう思う?」

垣根「ん?俺か?……そうだな。普通に答えるなら、"常識じゃ考えられない事"だな」

麦野「…で、何?それは結局何なの?」

滝壺「特にはなにもないの。…ただちょっと疑問に思ったから聞いてみただけ…ごめんね」


麦野「ふーん……まあ別に良いけどさ」

垣根「奇跡に魔法……ってか」

 

 

6月21日20:00~本館・客間~


滝壺「私はね、奇跡って言……」





「麦野ッ!!!!!!!!」





―――ものすごい勢いで客間の扉が開かれた。入ってきたのは絹旗最愛。一人だ。



絹旗「麦野ッ!!嘉音くんが……嘉音くんが…!!!」





6月21日20:06~本館・ボイラー室~

絹旗「……私が着いた時点で、もうこの状態でした………私が、一緒だったなら……ッ!」

土御門「犠牲者は嘉音くんと………"これ"かにゃー…」

一方「………」



―――絹旗最愛の話は要するに、こうだ。
気付かない内に自分は嘉音と逸れていた。そして、臭いの元であると思われる方から物音が。追って扉を開けると、そこには嘉音の死体。…………そして、ボイラーで焼かれた死体。

 

滝壺「……きぬはた…」

垣根「…で、またこの杭ってわけか」

麦野「杭もそうだけどさ…………これは?」



―――嘉音は胸に杭を。その杭は案の定上条と超電磁砲を殺した物と同じ物だ……いや、正確には少しデザインが異なるが。

そして、問題はこっちだ。ボイラーに焼かれた死体。悪臭の根源だ。源次と打ち止めはそれを側から見下ろしている。……打ち止めは狂っている。ここに来てから。

死体は体の表面も髪の毛も顔も全て焼け爛れていた。顔や年齢はおろか、性別さえはっきりとは断定出来ないようなものだ。……………。


一方「誰だ…?」




源次「………たぶん、お館様にございます」


麦野「はぁ!?……これが右代宮金蔵だっていうの!?焼け焦げてちゃんとは分かりやしないけど、…………これ…女の死体じゃないッ!!!」

 

―――そうだ。麦野はそう言ったが、女の死体であるとは断定できない…ただ間違いなく老人の死体でない事は言えるのだ。



一方「……この細っせェ死体が老人のモノだと言えンのかァ…?」

源次「……現・右代宮金蔵こと右代宮家縁寿様にございます…」

垣根「右代宮……縁寿?」

源次「はい……"右代宮金蔵"とは代々右代宮家当主に受け継がれる名前にございます。…現在は縁寿様が」

麦野「…ふぅん。私はてっきり老いぼれた老人を想像してたワケだけど違うってのね」

土御門「だが……どうしてこの死体が右代宮縁寿だとわかるんだ……?」

源次「…確信は持てません。……ただ、この島にこの位の背丈で女性というのは現在、この方しかいらっしゃいません…。そして、縁寿様が手に握ってらっしゃる…これです」

絹旗「…それは何ですか?」

源次「…お亡くなりになられたお兄様から頂いたという髪ゴムです…。焦げてしまっていますが…」

滝壺「……大切だったんだね、それ」

源次「そのように思います。………後は、足の指です」

垣根「…指…………多指症か」

打止「指、6本あるんだねってミサカはミサカは言ってみる」

一方「……別に珍しいモンじゃねェよ。多指症自体はな。ただ普通は手術で取ってしまうって話だ」

源次「右代宮家では多指症の方に名君が多く、その為、縁寿様も手術をなさらずに育てられたのです」


―――源次は慈しむように縁寿を見下ろしている。女が当主というのは珍しい。指云々の前に…兄弟が死んだから、縁寿は当主に就いたのだろうか。…もしかすると、縁寿は中々に悲惨な人生を送ってきたのかもしれない。


打止「……あの碑文を書いたのはこの人なの?ってミサカはミサカは尋ねてみる」

源次「……いえ。あの碑文を書かれたのはもっと昔にございます。…縁寿様が生まれる前くらいでしょうか…」

打止「ふーん…」

麦野「もう…いいわ。当主のことは。そんな事を話してるような余裕、私達にはないんだし」

垣根「…これで被害者は、
海原光貴・結標淡希・熊沢チヨ・紗音・初春飾利・姫神秋沙・御坂美琴・上条当麻・嘉音・右代宮縁寿。…10人か」


滝壺「私たちの中の半分以上。……嘉音くんの様子は?」

一方「…もう死んでる。心臓に杭。手は杭を引き抜こうとしている様に見える。死ぬ前に打ち込まれたンだろうな…」


麦野「ハッ…にしても使用人だけじゃなく能力者まで殺せるとはねぇ。犯人はどいつだろうなぁ?」

一方「……今のままじゃ死因さえまともに分かりやしねェ。警察が来るまでな。要するに犯人も特定不可能。……するべきは、自分の身は自分で守れって事だな」

源次「……明日、雨が止めば迎えの船が来る手筈なっております」

垣根「…迎え?」

源次「はい。縁寿様はお仕事に忙しい身であらせられましたので、すぐにまた離島しなければならなかったのです」

麦野「……その忙しい縁寿様は私達が来るからわざわざここに来ていたってこと?…その割には姿も見せなかったけど。どこに居たのよ」

源次「…当主の部屋です。……いつ殺されて、ここに連れて来られたかはわかりかねますが…」

土御門「……当主の部屋ってのはオートロックじゃなかったか?鍵は誰が持っている?」

源次「お館様とわたくしにございます…」

雲川「……」

―――ここで一度、振り返ってみるべきだろう。全ての犯行について。"魔女"についても。

…今行われている殺人は、魔女の手紙にある"回収"にあたるものなのだろう。だから、碑文通りに。これは魔女が犯行を行っていると。シャッター、チェーン、ボイラー室。人間には不可能だとでも言うように。

確かにそれはそうだろう。普通の人間には、チェーンの掛かった部屋で外から殺人を行うなんて不可能。

……だが、俺達はどうだ?学園都市は能力開発の街。そんな密室、屁ともしない人間だってたくさんいる。例えば、空間移動の能力者にとってはその通り。もしかすると、マイナーな能力になれば一度壊した物を元通りに出来る能力だってあるかもしれない。それもまた然りだ。

…簡単な話だ。魔法や魔女やら、信じてもらいたいなら、俺達の前に姿を直接見せればいい。そしてまず俺を殺せば良い。レベル5の第一位である俺を殺す事が出来たなら、その他の人間はソレを魔法とでも呼ぶだろう。

土御門や海原は、いわゆる魔術師だそうだ。アイツが言うには魔法と魔術は違う。確信を持って言えるのは、これが魔術師の仕業ではないと言うことだそうだ。



…昔、木原のクソヤロウが言ってた事を思い出した。思考論法の一つにゲーム理論という物があるらしい。それを借りて言うならば"チェス盤をひっくり返す"とでも言うのだろうか。…こうして魔女の存在が明らかになるように仕向けられる程、魔女など存在しない事が確実なっていく。

 

今現在の生存者は
俺、打ち止め、垣根、麦野、滝壺、絹旗、雲川、土御門、源次。
そして、この島には船でしか来れない。

昨日から現在にかけて、天候的に外部から来ることはほぼ不可能。……まあ、学園都市の技術は例外だが。

すると犯人はこの中にいるとなる。
可能性として大きいのは、打ち止め、滝壺、雲川、土御門、源次以外の人間だろう。…あくまで、実行出来るか出来ないかの話だ。

いや、言い方が悪い。
それは単独犯の場合だ。

例えばアイテム勢による共犯説
ならば滝壺も犯人に加わる。

そう…誰かが共犯している可能性は極めて高い。

 

 

6月21日20:39~当主の部屋~


麦野「で、ここが一番安全ってワケか」

一方「"まだマシ"程度だがなァ。焼死体の側には鍵が落ちていた。それに加え、この現品。これで合計二本。一応、完全密室が出来る事になる。所謂篭城ってヤツだな」

雲川「窓は確認してきた。施錠は内側からのみだけど。…さすがに窓ガラスが割られればこちらも気付けるだろうしな」

垣根「正面、窓は大丈夫…と。…で、この部屋は扉は一つのみ…なんだよな?」

源次「はい。隠し扉などは存在いたしません。この部屋には扉は一つのみです」


絹旗「じゃあ…これで一応は安心なんですね…」

 

垣根「なぁミサカちゃん……魔女が犯人ってなら、どうして魔女は殺人を行ってると思う?」

打止「…………蘇る為だよ。魔女が。その時、誰も生き残れないんだけどね」

垣根「ハッ……となると自分も殺されるって事になるんだぜ?分かってんのか?」

打止「その為の犠牲なら仕方ないよ。みんなもそう思ってる。ミサカ達は黄金郷へ行けるんだよ」

垣根「……行ってどうなる?それはつまり、一般人がいうところの"天国"ってヤツじゃねぇのか?死の恐怖の逃避」

打止「違うよ!ってミサカはミサカは否定する。……そこはね、しがらみも何もない、全ての人たちがずっと一緒に、いつまでも優しくしあっていける素敵な場所なんだよ」


一方「…おい、垣根。コイツとそういう話すンのは止めろ…意味がねェ」

打止「……あなたは信じてくれないんだね。ミサカ達の事」

一方「…ンな事信じる訳ねェだろォが」

打止「むー…ミサカのこと大事にしてくれるんじゃなかったの?ってミサカはミサカは聞いてみたり」

一方「……関係ねェよ」



―――クソガキはバラ庭園で"魔女"に会っている。それは本当に20人目なのか、それとも19人の中の誰かに、そうだと言えと吹き込まれたのか。

確かなのは、クソガキにアリバイがあり犯行は不可能だという事。

こいつはベアトリーチェの伝言者に選ばれたと、心酔しているだけだ。このくらいの年齢ならおかしい事ではないのだろう。

………その"魔女"本人ではない。

 

 

6月21日~当主書斎~

―――腹が減った。
もうこんな時間なのだから当たり前か。

打止「ねぇ、あなた。お腹が空いたかもってミサカはミサカは主張してみたり」

一方「飯ねェ……」

麦野「…キッチンの食材は駄目ね。毒が仕込まれてるかもしれないし」

垣根「……それに誰が調理するんだって話だ。源次さん、この屋敷に非常食の缶詰とかはねぇのか?」

源次「ございます。確かこの部屋にもありましたように思います」


―――そう言って源次は部屋の奥に向かい、しばらくすると結構な量の缶詰を持ってくる。……どうやら当主は本当にこの部屋で生活していたらしい。部屋を見回せばよく分かる。

……ふと、目についたのは肖像画だ。玄関ホールのものを縮小したのだろうか。それは魔女・ベアトリーチェと呼ばれる者が描かれている。

―――缶詰は決して旨くはないが、腹に詰めるものがあるだけマシといったところだろうか。

そして、誰ひとりとして口を開かず晩飯は終了する。

絹旗「ご馳走様でした。…それにしてもこの部屋、本当にあの当主は住んでいたのでしょうかね?」

滝壺「…どういう意味?」

土御門「…娯楽らしい物が全く見当たらないって事だにゃー?」

絹旗「はい。それに、化粧品や服もありませんし…」

麦野「そりゃ…もう住んでなかっただけじゃない?別に大した事じゃないわ」

絹旗「ま、そうですよね」

雲川「……」

―――飯を食い終えた打ち止めは、肖像画の下にある碑文の元でじっとしている。
俺は杖を手に取る。

一方「おい…オマエ何見てンだ…?」

打止「これだよ」

垣根「碑文…か?…ホールだけじゃなくて、ここにもあったんだな」

麦野「そういやそれ、私来た時まともに見てなかったわ。何が書いてあんの?」

打止「儀式の話だよ。魔女、ベアトリーチェの」

麦野「…第二の晩に、残されし者は寄り添う二人を引き裂け。
第三の晩に、残されし者は誉れ高き我が名を讃えよ。
第四の晩に、頭を抉りて殺せ。
第五の晩に、胸を抉りて殺せ。
第六の晩に、腹を抉りて殺せ。
第七の晩に、膝を抉りて殺せ。
第八の晩に、足を抉りて殺せ。
第九の晩に、魔女は蘇り、誰も生き残れやしない。
第十の晩に、旅は終わり、黄金の郷に至るだろう。
………本当にその通り進んでるってわけね。あの時は冗談半分で言ったんだけど」

垣根「……上条と超電磁砲が"第二の晩"、"第三の晩"はあの手紙……か?」

滝壺「………続く"第四の晩"があの当主さん?」

一方「で、第五の晩が使用人・嘉音……大体これに何の意味があるってンだ」

垣根「……俺は最初、てっきり"当主"が犯人だと思ってたが………当の本人が殺すされちまってるから、その線は消えちまったわけだが」

麦野「碑文を作ったのは当主なんだし、それは私もそうだと思ってたわ。よく分からないけど、碑文の最後の方……蘇るってので」

一方「…この碑文の内容じゃ、犠牲が最低でも13人程度。……俺達を集めたのはこの為だってのかァ?」

打止「鍵が選んだ生贄っていうのはランダム、任意。……自分が死ぬのは出来るだけ避けたいから、こうやって人を集めて、その確率を少しでも減らしたんじゃないかなってミサカはミサカは事実に基づいて意見を述べてみる」

麦野「はん!その為にわざわざ高い金出して、学園都市から暗部から何まで能力者呼びつけたっての?」

垣根「…どうして俺達なのかは分からねぇけど"それ"に沿って殺人が起こってるのは確定だな………となると……あと3人か」

一方「………あの忌ま忌ましいクソ理事長はそれを分かって、ここへ寄越したのかァ?俺達みてェなクズだけじゃなく三下や超電磁砲のような一般人までよォ」

麦野「……三位はともかく、上条当麻はもう今となっては一般人とは呼べないわよ。……で、これだけ能力者が集まってんのに心理操作系がいないのはその所為?常盤台の"心理掌握"はともかく、フツーなら"スクール"の"心理定規"は呼ばれるでしょうに」

垣根「心理定規は声も掛からなかったって言ってたぜ。"そういう能力"は厄介なだけと思われたんだろうよ」

一方「……何にしても、明日になったら犯人見付け出して拷問だなァ。学園都市の人間せよ、…そうでないにせよ」

打止「……第九の晩になると誰も生き残れない。明日までもつと良いけどねってミサカはミサカは言ってみる」

一方「……学園都市序列第一位が殺されるワケねェだろうが。殺せるモンなら殺しに来てみろってなァ!ぎゃはは!」

打止「…確かにレベル5・超能力者は強いけど"無敵"じゃない。結局、超電磁砲(オリジナル)は殺されてしまってるしねってミサカはミサカはあなたに言ってみる。でも、何にも心配は要らないよ」

一方「……」

―――"欠陥電気"の"最終信号"、自分が守ると決めた少女はこんな顔で人と話をしただろうか?…こんなに他人を馬鹿にしたような態度で会話をしただろうか?…自分の元(オリジナル)である超電磁砲のことをこんな風に詰っただろうか?………そして打ち止めは続ける。




打止「"一つは、全ての死者の魂を蘇らせ。一つは、失った愛すら蘇らせる"…………あの当主は自分の死を、恐れてなんていなかったんだよ。……だって、またすぐに会えるんだから」

麦野「………子供相手に真理を言うのはどうかとは思ってるけどあえて言わせてもらうわ。……ヒトは、生物は、死んだらね、生き返ったりしない。どんな重病重症患者でも治せる"冥土返し"すら、死人を蘇らせることだけは不可能。……もしそんな事が出来るなら、今までの倫理感は全て覆る。………つまり、それは比喩よ」

垣根「……比喩。…死んだ後の世界で仲良く暮らせっていう事か…………ならこれは碑文を作った人間による俺達を巻き込んでの壮大な心中か?」

一方「………心中ねェ…くだらない」

麦野「なーんか…無性に腹が立ってきたわ。とっとと実行犯取っ捕まえてブチ殺さなきゃ収まんねぇわ」

垣根「レベル5の第三位をも倒す人間なぁ……本当に魔女かもしれねぇな?」

麦野「……あの中坊は"こういうこと"に関しては一般人も同然だった。暗部に属していたワケでもないし。そういうのに特化した人間と戦ったら、負けるのはおかしくはねぇよ」

 

 

 

 

 

 



打止「………………。…………………ねぇ。それより、また手紙だよ?」






―――打ち止めはテーブルを指して言う。手紙………?横では麦野が驚いたように声を上げている。

 

 

 

 

 

 

麦野「ッ!?……絹旗!!………そこにある手紙…」

絹旗「…え?………あれ!?」

垣根「…………それ、さっきの手紙とは別物だぜ。ここにさっきのは持ってるからよ」

土御門「………!!今さっきまでこんなのなかったぜぃ!?」




―――テーブルには手紙。片翼の描かれた封筒。たしかに。今の今まで、こんなものはなかった。




麦野「オイ………とりあえずテメェら3人立って後ろに下がれ…!!」


絹旗「む、麦野!?」

雲川「…!」

土御門「……」



―――俺に打ち止め、垣根、麦野、滝壺、源次は碑文の側にいた。………だから、今この瞬間に手紙をテーブルに置けるのは座っていた残りの3人となる。絹旗、土御門、雲川。
そしてその三人は逆らう事をせず、言われた通りにテーブルから下がる。

麦野「…今、この部屋にはこれだけの人数しかいない。そして窓、扉は共にロックが掛かっている。この状況で、……そこに手紙が置かれたって…どういう事か分かるかしらねェ!?」

絹旗「わ、私達を疑ってるんですか!?超知りませんッ!!本当に!今見付けたんですッ!!信じてください!麦野!!」




―――確かに今までこんな手紙はなかった。それは全員が確認している。そして部屋に入ってきた人間も勿論いない。
…となると答えはやはり一つ。俺達が肖像画に気を取られている間に、この部屋にいる誰かが置いた。……それしかないのだ。

麦野「………垣根。その手紙、開けて中身読んで」

垣根「……ああ」



―――手紙はまた蝋封されている。あの指輪の紋章で。…垣根はそれを千切り、中身を取り出す。



垣根「中身は、手紙と……金属の蝶のブローチ?…………読むぞ。

“ 学園都市からのお客様方
金蔵さまの碑文の謎をお楽しみいただいているでしょうか。
すでにご存知と思いますが、皆様方には、時間が多くは残されてはおりません。どうか、雨が過ぎ去れば学園都市に帰る事が出来るなどという甘えをお捨て下さいませ。
このゲームには、私と皆様方のどちらが勝つかの結果しかない。時間切れは私の勝ちとなり、引き分けなどは存在しません。
…そこをどうか誤解なきようお願い申し上げます。
 黄金の魔女・ベアトリーチェ”

………だってよ。ちなみに、このブローチには何にも仕掛けもねぇ。たぶん…飾りか何かだろうな」

麦野「ふーん………。また随分と私達を馬鹿にしてくれた文章じゃない。……ま、中身なんてどうでもいいわ。………とりあえずさ、犯人はテメェら3人の中にいるって事が分かったんだしねぇ!!!!」


土御門「………まぁ、そう思われるだろうな」

絹旗「なッ!?土御門さん!?」
雲川「…………はぁ。」


麦野「……私は滝壺が肖像画の前に来る直前、そのテーブルに残った皿が無いか確認したのよ。…その時、こんな手紙は置かれていなかった。絶対に。……そしてその時、すでに一方通行と垣根、打ち止めは肖像画の前にいたッ!! そして滝壺と源次さんは奥の流し場に。私達はこの手紙が現れるまで肖像画の前、流し場を離れていないッ!…つまりテメェら3人の中に、その手紙を置いた人物がいる!!魔女を名乗る殺人犯がいるってわけだよなァアア!!!」

打止「ちがう!……その人達じゃない。……ベアトリーチェは"い"るもん!」

一方「…クソガキは黙ってろ。………まぁ、オマエ達の中の1人が怪しいのか、全員が怪しいのかは知らねェ。主犯なのか、脅されてる共犯者なのか……どちらにせよ、確実にオマエ達の中に犯人の一味が混じってる事は確定だなァ…」

滝壺「………きぬはた…」

麦野「悪いわねぇ、絹旗。………私は特にアンタが怪しいと思ってるわ。……第五の晩・ボイラー室での嘉音殺し。あれ……どう考えたってアンタが一番怪しいもの」

絹旗「ち、違いますッ!!どうして私がそんな事しなきゃならないんですか!?大体、私が犯人ならそんな状況で殺すハズがありません!!」

麦野「……何とでも言うといいわ。そんな妄言、誰ももう信じないわよ?」

滝壺「……きぬはた。私はきぬはたを信じてる。でも、今この人数からは庇い切れない…ごめん……」

絹旗「…………ッ!……そう、ですね……麦野の、…滝壺さんの言う通りです。今この場で、私は自分が犯人でない事を証明できませんから…」

垣根「土御門もだな。……お前と俺の仲だが…さすがにこれは無理だ」

土御門「分かっている。まっ、しょうがないにゃー…」

雲川「私は犯人ではないけど。……もうこの状況じゃ抗う方が無駄だな。とりあえず私達3人は部屋から出ていくべきだな」

土御門「それで気が済むか?麦野」

麦野「十分よ。明日迎えの船が来るまで、私達に近づかない。……アンタ達が犯人じゃないなら、何の問題もないわよね?」

絹旗「…分かりました。……私達はさっきいた客間に居ます。内線はきっと繋がるでしょうから、また連絡をください」

麦野「えぇ。……こう言っておいても、やっぱり同じ組織で仕事をしてきた人間を疑うのは良心が痛むわ……悪かった。許してね、絹旗。………また学園都市に帰ったら、フレンダと、……あの下っ端も合わせて一緒にファミレスでも行きましょ」

絹旗「……はい。超そうしましょう。今は事情が事情ですし、ね。では、麦野に滝壺さん、おチビちゃんも。また明日」

麦野「……雲川さんも。悪いわね」

雲川「…構わないけど。明日になれば全て終わっているだろうしな。それより銃はどうすれば良い?」

麦野「持って行って構わないわ。護身用にでも」

―――…えらく穏便に物事が進むものだ。普通なら、ここで自分は犯人じゃないだのと、押し問答が続くだろうが……流石暗部の人間だと、褒めるべきなのだろうか。雲川芹亜も土御門もそれなりに頭が良いだけある。



一方「……短い付き合いだったなァ?土御門」

土御門「おいおい……そういうのを死亡フラグって言うんだぜぃ。…俺はまだ死なねぇよ」

一方「クカカ!可愛い義妹が待ってるンだったかァ?まァ精々、努力しろよ。死なねェ努力ってのをよォ」

土御門「言われなくても勿論そのつもりだにゃー。……じゃあな」


―――そうして三人は部屋を出ていく。直接見えるワケではないが、とても疲れたような表情で。

…………扉が閉まる。オートロックが作動し、鍵を持たない者はもう入ることが出来ないと、確認する。

打止「………せっかく、この部屋には魔避けが施されていたのにねってミサカはミサカは呆れ顔。」

一方「……はァ?」

打止「…ほら、そのドアノブ。ミサカがあなたの部屋に置いてあったコインと同じ、蠍の絵が描かれているでしょう?ってミサカはミサカは指差しながら確認を取ってみる」



―――たしかにドアノブにはあのコインと同じデザインの蠍の紋章のような意匠が刻まれている。

打止「………これは火星の5の魔法陣。強力な魔除け。しかもこの魔法陣は相当、丹念に作られていて、力がよく満ちているように感じられる。…………魔の者であるベアトリーチェにとって、この魔法陣はとても厄介になるはずってミサカはミサカは考察する」

一方「ハッ!それは心強いこった。この部屋なら密室の上に、魔女であるベアトリーチェ様の魔手からも逃れられるってことだろ。……だがよォ、それなら何であの縁寿とかいう当主はベアトリーチェ様とやらに殺されたンだろォなァ?打ち止めちゃんよォ」

打止「むっ!ミサカのこと、馬鹿にしてるでしょってミサカはミサカは怒りを露にしてみたりー!…………確かにベアトリーチェは中に入れない。でも、彼女には魔法があるし、使い魔だっている。それを使って、当主が自分から書斎を出てくるように仕向けることはできるかもってミサカはミサカはあなたに反論してみたり!」



―――溜息を付き、こいつの話になんか付き合ってられるかと俺は話を切る。部屋に残っているのは、俺に打ち止め、垣根、麦野、源次、滝壺。

沈黙がまた部屋を支配する。煩い打ち止めを黙らせた俺は椅子に座る。

カチャカチャと源次が奥の流し場で皿を洗う音だけが小さく響く。

…麦野に垣根は、何やら考え込むような表情で。滝壺は何を考えているかわからない表情で、机に突っ伏している。……最初は体調が悪いのかとでも思っていたが、どうやらこれは癖のようなモノらしい。

打ち止めは本棚から持って来たのか、古臭いハードカバーの本を読んでいる。……いや、読んでいるというよりは、眺めているというのが正解なのだろう。
ミサカネットワークや学習装置で、ある程度の知識を得ているコイツでも、流石にこんな今使われているかも定かでない様な言語を理解しているとは思えない。
その本の内容はまた、"魔法"とやらだろう。挿絵は全て、魔法陣やその類いの物ばかりであるから。

麦野「冷静になればさ、……やっぱり、あいつらに対して言い過ぎたかしらね?」

垣根「………まあ、これも悪くない状況だと思うぜ。向こうの3人っていう人数は都合が良い。もし絹旗、土御門、雲川の全員が犯人であるならば、3人はそのまま無傷で、明日会う事になる」

滝壺「……あの中の1人が犯人なら、残り二人の死体ともう一人は行方不明?」

垣根「ああ、あの中の2人が犯人の場合、一人は行方不明。残りは明日会うことになるって寸法だな。………前提として、あの中の人間の1人以上3人以下が犯人であるってのと、殺人は無差別に行われているってのが必要になるワケだが」

一方「じゃあよォ、敢えて聞くが………オマエ達は、あの中なら誰が一番犯人である可能性が高いと思う?」

麦野「………絹旗は、超電磁砲を殺せる程の力は持っていない。それは間違いないわ」

滝壺「うん。……それはその通り」

一方「………なら土御門か?…わざわざ三下を殺す理由は知らねェが」

垣根「土御門?…アイツこそレベル0か1ってトコロだろ?」

一方「だから言っただろォがよ。能力は0か1かは知らねェが、アイツには"魔術"ってヤツがある。………それがどんな効力を持つかは分からねェが、閉ざされたドアを通り抜けて、人間を殺すくらいは容易いモンなのかもなァ?」

麦野「まぁ……アイツにはアリバイが無い事も多かったわね。…第一の晩・バラ庭園倉庫での6人殺し。アイツは結局、一晩中ずっと一人だったワケだし、鍵もあった。6人を殺し、倉庫に運んで、何食わぬ顔で部屋に戻っていましたってのは十分可能だと思うわ」

垣根「それを言うなら、雲川芹亜もだな。……姫神秋沙があのまま戻らずにいたなら、土御門と状況は同じってワケだ」

一方「……あの女は無能力者じゃねェのか?」

垣根「まぁ大方そうだろうな。もしくはレベル1か…良くて2か。……だが、雲川芹亜の価値はそこにねぇ。雲川は統括理事の貝積継敏のブレインだ。所謂、俺達とは違った意味での"天才"ってヤツだな」

麦野「…へぇ。噂でだけど、聞いたことあるわ。貝積にはとっても優秀な高校生のブレインがいるってのは。………まさか、あの人だとは思ってなかったけど」

滝壺「うん、前に電話の女が言ってたね。"天才過ぎて手がつけられない"って」

一方「………だが、三下はあの女の事を"先輩"って呼んでやがったぞ」

垣根「わざわざ一般人と同じ学校に通ってるんだろうな。そんな人間なら、普通は間違いなく長点上機行きだろうし。もしくは自分で選んでそこに行ってんのか」

麦野「ふぅーん…。まあ頭の良い人間の考え事は分からないって話かねぇ?」

滝壺「……そうかも」

そう言って、会話が一段落したところで、ふと顔を背ける。
…ある物が目に入る。



一方「………垣根。さっきのその手紙、2枚目があるンじゃねェのか?」



―――魔女からの手紙。俺達の現状の原因。それを裏から見ると、手紙の便箋が赤く滲んでいるように見える。なにか赤いインクで、絵のようなものが書かれているのか…?



垣根「は?…………お、マジだわ。1枚目にピッタリくっついてて、気が付かなかった」

麦野「……二枚目?」

垣根「ああ…………何だこれ?…おいおい。また魔法陣ってヤツか?血みたいなインクで描かれてて………今度は円の中に、大小2つの三角形が組み合わさってるな。で、また例のヘブライ語だ」

一方「………」

―――また、か。正直、赤いインクという時点で想像はついたが。……一体これで何個目だ。意味の分からないヘブライ語がどうだとか。記号がどうだとか。




打止「それ。……その魔法陣の名は、火星の3の魔法陣だね。ヘブライ語で書かれているのは、旧約聖書の詩篇、第77篇13節の一部。【あなたのように偉大なる神が、他におりましょうか】………魔法陣の意味するところは"不和"。内部分裂を煽り、敵を自ずから瓦解させるってところだねってミサカはミサカは解説終了!」

一方「………"不和"…だと?」

打止「そう。すっかりベアトリーチェにやられちゃったね」

垣根「まさに今のこの状況ってワケだな。くはは!本当に笑えてくるな。こうも的確に俺らの行動を制されると」

麦野「何よ。………あいつら3人が出て行ったのは、その魔法陣のせいだっての?………魔法なんて存在するかよ。偶然だ、偶然」


一方「…………そういや"魔法"ってのは知らねェけど、"魔術"ってのは存在するらしいぜ。どうもここンとこ頻繁に発令される、第一級警報(コードレッド)や第二級警報(コードオレンジ)ってのはよォ…そっちの関係らしい」

垣根「"魔術"………?んなもん科学がまともに発達してねぇような地域でされてる、宗教の一環じゃねぇのか?」

一方「俺も詳しい事は知らねェ。………ただ、海原に土御門は関係ある。でもまァ、この一連の事件に対してはソレについて言及してなかったし、突っ込んでも来ねェから、関係はなさそうだがな」

滝壺「……ともかく一度きぬはた達に連絡をとってみた方が良いと思う。…内線は繋がるって言ってたんし」

麦野「……」

源次「…電話でしたら、ここにございます」


―――電話は書斎机の上にあった。アンティークで見るからに古めかしい、学園都市では飾り物以外ではまず見ることのないような形状をしている。本当に繋がるのかと心配にさえなった。



垣根「俺が掛ける」



―――そう言って垣根は受話器を取った。源次が客間に繋がるであろう番号を回す。




……

垣根「…………………。駄目だ。コール音は鳴るが繋がらない。どっかに行ってんのか…?」

滝壺「……わからない。あの部屋は、ここみたいにトイレとか付いているわけじゃないから、3人が部屋から出てる可能性はあるかもしれない」

麦野「………鍵もないんじゃ、一人残すということも出来ないしね」

垣根「……とりあえず5分後にもう一回掛けてみっか」

 

―――大した事は無いと考えていた。こうなった今でも"魔法"なんてものは信じていなかったし、向こうは3人で居るから。……垣根が言う理論も間違っちゃいないのだろうが、俺は誰一人として、殺されるような事はないと思っていた。


垣根「…………出ねぇな。………あいつらは何やってんだ?仲良くお喋りでもしてて、電話の音に気付いてないなんて事じゃねぇだろうな」

一方「………」

源次「出ません…か…」

垣根「…ああ。さっきと同じ様にコール音は鳴ってるから、内線が切られたってワケじゃなさそうだしな」

滝壺「……少し心配。…むぎの、きぬはた達の様子を見に行こう」

打止「…………それはあんまり推奨しないかなってミサカはミサカは打診してみる」

一方「…ハァ?」

打止「ここからあの人達を追い出した理由、覚えてないのってミサカはミサカはあなた達に確認してみる」

麦野「………」

垣根「…なら、俺も一緒に行きゃ問題ねぇだろ。……罠でも何でも仕掛けてくるにしたって、レベル5を2人同時に相手に出来るような人間なんざいねぇだろうしな」

麦野「……アンタ。滝壺だけにはえらく親切じゃないの」

垣根「"だけ"じゃねぇよ。俺は女子供なら、誰にでも優しいぜ?」

麦野「死ね。………で、一方通行。仕方ないから私達は一回、客間の様子見てくるわ。……アンタ達二人はどうする?」

一方「……」

―――結局、思考した結果。
俺もコイツらと一緒に客間に行く事にした。…今、この人数をまた二手に分けるのは得策でないと考えたからだ。

滝壺はライフルを持ち、麦野の横に、その前には垣根と源次が立ち書斎を出る。…俺と打ち止めはその後ろに。

こうして俺達は最終的に、安全であった密室から出ることとなり、安全でない客間に導かれていく事になった。

……あの当主もこんな風に部屋からおびき出されたのかもしれないと、ふと思い付いた。……違うのは人数が複数であったか、単一であったか。
……小さな事だが、これは大きな差だ。


コツコツと靴が鳴る音と俺の杖を突く音だけが鼓膜を響かせる。
遅くもなく、早くもない速度で俺達は屋敷を歩く。周りを見渡し、辺りを警戒しながら。


…そっと、首元のチョーカーに手を触れる。…今の俺には、もう"自動防御"の機能は無い。このスイッチを入れない限り。…もし不意打ちで拳銃にでも頭を撃ち抜かれたなら、大した医療技術もない"外"では、間違いなく即死だろう。

今や超電磁砲もいない…俺が死んだなら、誰がこのクソガキを守るというのか。……こんな所であっさりと俺だけが死ぬワケにはいかない。

―――外は相変わらずの天気だ。雨音は更に勢いを増す。



垣根「……そういや、御坂美琴と上条の頭に刺さってたアイスピック。……あれ多分、キッチリ頭蓋骨にまで届いてやがったんだよな」



―――垣根は後ろを振り向きながら、唐突に話を切り出す。このクソメルヘンには危機感とか緊張感というモノは無いのだろうか…。



麦野「……何よいきなり。それが何かあんの?」

滝壺「……」

垣根「…分からねぇか?頭蓋骨をぶち抜いて眉間にアイスピック立てるなんてよ、普通の人間の力じゃまず無理だって事。…頭蓋骨ってのは役割は主に頭部の保護。想像してるよりもずっと強度があるんだよ」

麦野「……で?」

垣根「…要するに。犯人はよっぽどの馬鹿力か、ボーガンみてぇな道具持ってやがるって事だ。…前者ならまだ良いけどよ。……後者なら中々厄介なんじゃねぇかって話」

滝壺「……つまりトラップが仕掛けられるかもしれないってこと?」

垣根「そういうことだ。気をつけた方がいいぜ?…いきなりアイスピックが飛んでくる可能性だってあるってワケだ。……そうじゃなくても犯人には容易に近付かねぇ方が良いだろうな。………能力を使ってそうなってんのかどうかは知らねぇが」

一方「…そりゃそォだな」



―――……とは言ってみたものの、実際"気をつける事"なんざ気休め程の安心すら呼べないのだろう。……思い起こせば、犯人は第一の晩、6人をもほぼ同時に殺しているのだから。

―――客間まではこんなに距離があっただろうかと思った頃に、源次、そしてほんの少し遅れて垣根が同じ一つの部屋の前で立ち止まる。…どうやら垣根も道順を覚えていた訳ではないらしい。


一階。客間は、廊下の突き当たりだ。



源次「………では、開きます。皆様、ご注意を」




―――緊張が最大になる。この部屋にいるのは誰だ?……三人だ。土御門に絹旗最愛、雲川芹亜。……そうだ。そうでなければいけない。



ガチャ、と。
ドアを押すと音がする。

 

…だが、これは扉が開いた音ではなく、施錠により開かない扉の音だった。

その手応えを感じたのか、源次はすぐにポケットから鍵束を取り出し全てを見た後、すぐに一つの鍵を選び出し、鍵穴に差し込んだ。


源次「…鍵が開きました。行きます」



扉の真正面にいるのは垣根帝督だ。…開いた瞬間、眉間にアイスピックが飛んで来るかもしれないというのに、手はポケットに突っ込んだまま、身構える気配すら無いのは、体の表面に未元物質でも展開させているからだろうか。




源次は勢いよく扉を開いた。

 

驚愕した。
それはアイスピックが、垣根に刺さったからではない。

部屋にはちゃんと三人在った。










血の海に溺れ、死体と化して。






客間は真っ赤に染まっていた。
それは塗料ではなく、死体から噴き出したであろうヒトの血液によって。




床には3つの肢体が横たわっていた。
…土御門、雲川、絹旗。断定は出来ない。何故なら、……またいつかと同じように




今度は全員、顔を潰されているから。

だから、判別基準は服装と体型。
どこが目で、口で、鼻かすら分からない。顔面が無いのだから。





…垣根は側にしゃがみ込み死体をじっと見ている。

 

 

ただ、それだけでは終わらない。3人の体には他にも損傷が見られた。……例の、"アイスピック"だ。それは、……土御門元春には腹、絹旗最愛は腿。いや、違うな。これは膝だろうな、と俺はカットに納得する。



碑文だ。



"第六の晩には腹を抉れ。
第七の晩には膝を抉れ。"


……おおよそ、雲川芹亜のふくらはぎの辺りにも、同じ様に突き立てられているのだろう。

 

 


第六の晩に、腹を抉りて殺せ。

第七の晩に、膝を抉りて殺せ。

第八の晩に、足を抉りて殺せ。



……これで第八の晩までが、すんなりと終わってしまった。

全員が、きっとこの結論に辿り着いている。
碑文がどうだとか、死体を見た瞬間頭に思い浮かんでしまったのは……認めたくはないが。



…そして、こんな状況を打ち止めに見せるわけにはいかないと気付いたのは、それからだった。

その間というのは、長い時間ではなかった筈だが、もうきっと遅い。

そう思いながら、斜め右に、打ち止めの方に、顔を向ける。

 

 

そして俺は、ぞっと身の毛がよだつ様な感覚に陥り、戦慄した。




打ち止めは笑っていたのだ。



……鮮血の海を見ながら。
いつもの様な笑顔ではなく、顔を歪ませて。死人を嘲笑うかのように。




一方「……オイ。何が面白ェンだクソガキ」

打止「………あなたは愉しくない?」

一方「……クソッタレとはいえ、知り合いが殺されてンだぞ」

打止「それは答えになってないよってミサカはミサカはあなたに指摘する。……………やっと、終わったんだよ」

一方「…アァ?」

打止「…………第八の晩は終わり、………魔女は蘇る」

 

 

垣根「……ひでぇな。…状況としちゃ、最初のバラ庭園の倉庫に似てるか。顔面はねぇし…大体これ本当に本人なのか?」

一方「…………さァな。ただ、体格は土御門に関しては一致してるな」

垣根「…残り二人、俺はこいつらとはここに来る前は会った事もなかったから、そこら辺はよく分からねぇんだよな…………おい、麦野………………って、あれ?」

一方「…?」



―――振り向くと、麦野沈利がいない。滝壺理后も。…確かに部屋には一緒に入った筈なのに。

打止「………原子崩しなら、ここに来て"手紙"を見付けた途端、すぐに滝壺さんと一緒に部屋を出ていったよってミサカはミサカは見た事を報告する」

一方「……手紙だァ?」



―――"手紙"とは、何度か見た、金色の片翼が描かれた封筒に入った"魔女の手紙"の事だろうか。……そんなもの、ここに在るか無いかなんて、俺は気にも留めなかったが。



垣根「手紙は、もうねぇな……そのまま持っていったのか?…つか何処に行きやがったんだ?」

源次「……追い掛けましょうか?」

一方「………それが得策だろォなァ………あのクソ女…手間掛けさせやがって」



―――思考する。…いくらレベル5序列第四位とはいえ、こんな状況の中部屋を出て行くなんて、どうかしている。手紙には優先させなければいけない何かが記されていたのだろう…か。




垣根「……ってオイ!扉開かねぇぞ!?」

 

 

―――…その頃。
麦野沈利、滝壺理后の両名の姿は玄関ホールにあった。それは"ベアトリーチェの肖像画"の飾られた場所。碑文が刻まれている場所。

客間で拾った手紙をぐちゃぐちゃと手で丸め、投げ捨てる。そして、滝壺がライフルを構えたのを横目でちらりと見ると、声を上げる。



麦野「………姿を見せろ。クソ女…………いや、黄金の魔女・ベアトリーチェ様とやらよォ………部下が殺られたなら、上司が敵討ちってなァアアア!!!!」



玄関ホールは薄暗い。当然だ。明かりもほとんどなく、そして今は真夜中であるのだから。
僅かな灯りで、中央が照らし出される以外は、漆黒の闇で塗りつぶされている。

………そんな中、黄金に輝く蝶が一匹、二匹と。そしてついには何百匹と暗闇から現れ、ひらひら舞い踊る。

ごくりと唾を飲み込み直し、黄金の蝶たちに、麦野は少し汗の滲んだ手の平を。滝壺はライフルの銃口を、向ける。




麦野「…………ようやくお出ましってかァ……?重役出勤御苦労なこった。……………決着をつけようか。貴重な人材ぶっ壊してくれた借りは、3倍にしてで返してやるからよォ!!」

滝壺「……きぬはたの敵は必ず私達がとる…!」

麦野「……テメェがいう決闘を受けてやるよ………始めよォぜ!!!」

―――黄金の蝶が、ゆっくりと人型を成してゆく。そしてそれは薄明かりの中からゆっくりとこちらに歩み出てくる。


麦野は"原子崩し"の照準を"ソレ"に合わせ……睨む。



"魔女"は、黄金の杖を振り上げ…笑う。




……演算が終わる。

 

垣根が開かないと言った扉はどうやら鍵では無い何かで故意に閉じられているらしい。予想は"原子崩し"だ。

俺はチョーカーのスイッチを入れ指をスッと扉に向ける。…風が空を切る。

ドアが開いた瞬間、遠くならパンッと乾いた銃声が…聞こえた。


源次「…!?」

垣根「……今の音は滝壺のライフルか。…面倒な事になりそうだな」

一方「全くだな、オイ。………玄関ホールの方か」

打止「……」

 

―――音がしたのは予想通り、玄関ホールだった。
………薄明かりの中見えたのは、静寂の中に倒れ込む麦野沈利と滝壺理后の姿だった…。



垣根「なッ………おい!麦野!滝壺!?」


二人の額には、お互いに、銃で撃たれた跡があった。そして、……そこから一筋の血が流れ出ている。

辺りを見回し、微かに香る硝煙の臭いの元を捜す。それはやはり、滝壺理后の側に落ちているライフルの銃口からだ。





…………まさか…自殺?



垣根「…これは流石に…訳が分かんねぇな………どういう状況だ?仲間割れ?……相打ちか?」

一方「………滝壺理后は、まだ理解が出来る。………なンで麦野沈利まで銃なンかで撃たれて死ンでやがる…」

打止「………」

垣根「それに、手紙ってのも見当たらないな…………何が書いてやがったんだろうな」



―――…理解出来ない。それはきっと、垣根も同じだろう。………ただ、打ち止めだけが全てを悟っているかのように、問い掛けは愚問だとでも言うように、何も言葉を発しない。

 

打止「………第九の晩に、魔女は蘇り、誰も生き残れはしない。……そして、第十の晩に旅は終わり、黄金の郷へ至るだろう。
……これで終わり。ベアトリーチェ……おめでとう。ミサカは、この奇跡の瞬間に立ち会うことが出来て嬉しいよ」



―――黄金郷。
全ての死者は蘇り、失われた愛すらも蘇る。



一方「いい加減にしろ!!………何がめでてェンだ!オマエも殺されるかもしれねェンだぞ!!」

打止「…………きゃははは。もう遅いよ?一方通行。……ベアトリーチェには能力は効かない。隠し持っている銃だって同じ。………それに、殺されるも何も、もうオシマイなんだよ。旅は終わりを告げた。……時計を見てみてよってミサカはミサカは指をさしてみたり」



―――オシマイ?終わりを告げる?そして………時計?

俺はクソガキが指した方に目を向ける。肖像画の隣にある大きな時計。

2本の針は頂点で交わろうとしている。……針が指し示すのは12の数字。…24時、0時だ。

一日の終わりにして、始まりの時間。



打止「…………ベアトリーチェ!」



―――何もないはずの所に打ち止めは駆けて行く。
それはまるで、愛しい人を追うかの様に。

 


闇の向こう。






黄金の蝶が羽ばたき、

ゆらりと、人影が揺れる。







一方「なッ………!?」

 

―――有り得ない。有り得て堪るか………こんな滅茶苦茶、あって堪るかよ。

……魔女なんて"い"ない。
そんなオカルト認められない。

オマエは存在してはいけない。

ここは人間の世界だ

人でない存在なんて、認められない、認めない。


チョーカーに手を掛ける。

……すると、魔女にしがみ付いたまま、打ち止めは振り返る。

打止「……だから、無駄だよって…………ベアトリーチェにそんな能力なんて意味ないの。………どうして分からないのかなってミサカはミサカは物分かりの悪いあなたに溜息をついてみたり…」

一方「…"そいつ"から離れろ、クソガキ……。俺は魔女なんて認めねェ!!一歩でも動いてみろ、指一本でも動かしてみろ。その瞬間オマエを殺す………」

垣根「………黄金の魔女、ベアトリーチェ…………」







「くくくっ!、あははははははははははははははははははははは!!!」」





―――魔女の笑い声は高らかに響き渡り、それに加え、ホールの大時計までが鳴り響く。

それは、24時を知らせるものだ。

今日という日の終焉を告げる。

過ぎた時間はもう二度と戻って来ない。
………それは発展した科学技術でさえも覆せない、全世界共通の"暗黙の了解"。






時間切れは、魔女の勝利と、ルールには明記されていた。




打止「………ねぇ、一方通行。…垣根さんに源次さん。……旅は終わって、"魔女"は蘇った…!」

―――そして、誰も生き残れはしない。



魔女は賢者を讃え、四つの宝物を与えるだろう。




一つは、黄金郷の全ての黄金。
一つは、全ての死者の魂を蘇らせ。
一つは、失った愛すらも蘇らせる。
一つは、魔女を永遠に眠りにつかせよう。






………安らかに眠れ、黄金の魔女ベアトリーチェ。

 

――終。

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