【これは、サーシャがイギリスに来てまだ間もない頃の話です】
シェリー「おい、そこのやたら前髪が長い金髪のちびっ子」
サーシャ「…?」
シェリー「そう、お前さんだ。」
サーシャ「第一の解答ですが、長い前髪と金髪はともかく、ちびっ子には同意しかねます。
補足説明すると、私はサーシャ・クロイツェフです。」
シェリー「じゃあサーシャ、ちょっと頼みごとがあるんだが」
サーシャ「第一の質問ですが、頼み事とは何でしょうか?ゴスロリの君」
シェリー「私が名前で呼んでるんだから、アンタも名前で呼べっつーの。」
サーシャ「……」
シェリー「もしかして、私の名前を覚えてないとか?」
サーシャ「第二の解答ですが、そんな事はありませんよ。オリバー・クロムウェル卿。」
シェリー「それは元ネタだ!!ナメてんのかテメェ!!」
サーシャ「第三の解答ですが、良いリアクションをありがとうございますシェリー」
シェリー「くッ…このガキっ…」
頼みごとなど無ければ、この場でゴーレムを召喚してどつきまわしていただろう
サーシャ「第一の質問に戻りますが、頼み事とは?」
シェリー「アンタにモデルをやってもらいたいんだが」
サーシャ「第二の質問ですが、モデルですか?しかし、私の未成熟な体系で勤まるのでしょうか?」
シェリー「はあ?」
サーシャ「第三の質問ですが、もしやロリコン向けの雑誌のモデルとかそういうのですか?」
シェリー「確かに、ロリコンには需要ありそうだな。ロリコンには。」
その頃、遠く離れた東の島国では
一方通行「ぶぁくしょい!」(パァン!)
土御門「にゃっ!!」
結標「一方通行!なんで土御門を狙撃してんのよ!」
一方通行「いや、くしゃみで照準が…誰か俺の悪口でも言ってンのかァ?」
土御門「メイドさん……最高……ぜよ(ガクッ)」
海原「土御門さん、足をかすっただけですよ」
命に別条は無かったので特に問題になりませんでした
サーシャ「彫刻?」
シェリー「ああ。つーか、私がロリコン向けの写真を嬉しそうに撮る様な変態カメラマンに見えんのか?」
サーシャ「……」
シェリー「否定しろよおおおおおっ!!!」
サーシャ「第一の解答ですが、確かに彫刻家には見えません」
シェリー「そっちじゃねえ!!!」
サーシャ「第二の解答ですが、再び良いリアクションをありがとうございます」
シェリー「殺すッ!このガキ絶対にぶっ殺すッ!!」
ブチ切れたシェリーはゴーレムを召喚しようとしたが、神裂が後ろから羽交い締め
して止めたため事なきを得た
シェリー「はぁ……まあつまりだ、アンタに彫刻のモデルをやってもらいたいっつー事よ」
神裂「珍しいですね、あなたが誰かに作品のモデルを頼むなんて。」
シェリー「こいつを見た時から創作意欲ってもんが湧いてたんだが、なんかもう失せた。」
神裂「まあまあ、で?どうですかシスターサーシャ?シェリーは王立芸術院で美術講師を務める程の著名な彫刻家ですよ?」
サーシャ「第一の解答ですが、その世界の権威とかいうやつですか。凄いですね。」
シェリー「い、いや、まあそんな大それたもんでもねぇけどよ…///」
サーシャ「補足すると、人は見かけによらぬものと言う事ですか。」
シェリー「なあ、お前何か私に恨みでもあるのか?あるんだな?あるんだろ!?」
神裂「お、落ち着いてください!」
サーシャ「第二の解答ですが、またまた良いリアクションを(ry」
シェリー「エリィィィイイイイス!!!こいつを踏み潰せええええ!!!」
エリス「( ゚皿゚)ゴルァ!!」
神裂「こんなとこでゴーレムを召喚しないでください!!!」
そんなこんなで平和的にサーシャはモデルを引き受ける事になりました
シェリー「とりあえずそこの椅子に座れ……」
サーシャ「空気椅子ですか?」
シェリー「したけりゃ勝手にしてろよ」
サーシャ「ちなみに第一の解答ですが、背もたれ無しでも5時間くらいは余裕でいけます。空気椅子。」
シェリー「何気にすごいなお前。どうでも良いけどよ。」
サーシャ「ところで第一の質問ですが、彫刻なのになぜ絵を描くのですか?」
シェリー「絵って言ってもラフ画みたいなもんだ。こうするとイメージが固まるのよ。ああ、手は膝の上で重ねろ。」
サーシャ「……」
シェリー「………」
一時間後
サーシャ「……」
シェリー「もういいぞ」
サーシャ「第一の解答ですが、さすがは芸術家なだけあって上手ですね」
シェリー「ごくろうさん。帰れ。」
サーシャ「第一の質問ですが、ヤル事やったらいきなり帰れだなんて酷すぎませんか?所詮は私の体が目当てだったのですね…」
シェリー「誤解を招く様な言い方するなっての。ほら、アメやるから。」
サーシャ「第二の解答ですが、また子供扱いですかとサーシャは不満を隠せません。」
シェリー「じゃあ撫でてやるよ(ナデナデ)」
サーシャ「第三の解答ですが、あなたが私をからかっているのはよく分かりました。あとアメはいただきます。」
それから数日後
サーシャ「第一の解答ですが、お茶が入りました」
シェリー「ああ、その辺に置いとけ」
シェリーはサーシャの方を見向きもせず、鑿と玄能を手に夢中で真っ白な大理石を削っている
サーシャ「分かりました。第一の質問ですが、このクッキーはどこに置けば良いですか?」
シェリー「同じとこに置いときゃ良いだろ。わざわざ分離する意味が分からん。ジャパニーズオリヒメとヒコボシかよ。」
サーシャ「では第二の質問ですが、小腹が空いたので代わりに私がいただいても良いですか?」
シェリー「なんなんだお前はよォ!!どういう思考回路してのよォ!!」
サーシャ「第二の解答ですが、今日も良いリアクションをありがとうございます。」
シェリー「ああ、そうか。アンタは悪魔か。悪魔なら殺しても罪にならないわよね。」
サーシャ「第三の解答ですが、ストレスは体によくありません。悩みがあるなら私が聞きましょうか?」
シェリー「……はぁ…」
そのストレスの原因はオマエだ!と叫びたいところだが、もうどうでもいいかという気持ちの方が遥かに強くなった
シェリー「やれやれ、しょうがねえから一息つくとするか」
サーシャ「第一の解答ですが、あなたとティータイムを共にするのは初めてですね。」
シェリー「何だ、ちゃっかり自分の分も運んで来たのかよ。つーかお前、砂糖とミルク入れ過ぎ。」
サーシャ「第二の解答ですが、私はこれが好きなのです。」
シェリー「お子ちゃまの味覚だねぇ。上等なダージリンのすすり泣きが聞こえるわよ。」
サーシャ「第三の解答ですが、それは幻聴です。更年期障害の可能性も視野に入れるべきでしょう。」
シェリー「あたしゃまだ二十代だ。」
サーシャ「えっ!?」
シェリー「えっ!?じゃねえ!!」
そんなこんなで他愛も無い話をする二人
特に意味も無く、特に何かが起こるわけでもなく
ティーカップとソーサーの重なる音が、印象的に感じられるくらいの静かな時間が流れていく
まるで放課後の静かな美術室で、何をするでもなくただ寛いでいる様な感覚
そんな平和な二人の午後のティータイム
ふと一つの石像が目に留まる
大理石で作られた等身大の少年の像
台座には、「エリス」と英語で刻まれている
サーシャ「第一の質問ですが、あの石像は何でしょうか?」
シェリー「ん?ただの失敗作だ。」
サーシャ「第二の質問ですが、とても失敗作とは思えない出来です。理由を聞いても良いですか?」
シェリー「アンタは、あの石像が本物の少年に見えるか?」
サーシャ「第一の解答ですが、さすがにそこまで精巧には見えません。」
シェリー「だから失敗作さ。所詮はタダの石像でしかない。」
サーシャ「……?」
よくわからない。石像とは石を彫って作った作品の事ではないのだろうか?
ならばそれは、無粋な言い方をすれば石以外の何物でもなく、石像が石像の枠を超える事などあり得ないはずである
サーシャ「第二の解答ですが、よく見ると、ここには他の作品はありませんね。」
シェリー「そりゃあるわけないわよ。全部ぶっ壊してんだから。」
サーシャ「第三の質問ですが、なぜその様な事を?」
シェリー「失敗作なんか残したってしょうがねえだろ。」
サーシャ「完成品は無いのですか?」
シェリー「周り見りゃ分かんだろ。」
サーシャ「うーん……第四の質問ですが、ならば完成品とは何なのですか?」
シェリー「完成品ってのは…そうだな……例えるなら、唯一絶対的な美を持つ作品だな。芸術家ってのは、
みんなその境地を目指してんのよ。ルネサンス、バロック、新古典、ロマン、写実、印象。時代と共に現れたそれらの
形式や学派も、全ては試行錯誤の過程に過ぎないのよ。」
シェリー「今に至るまで色んな芸術家が輩出されたけど、本当の意味で完成品ってのを創った奴は居るのかどうか疑問だわ。
全てが完璧で、あらゆる推考も比較も、それを超える美の存在すらも永遠に許さない程の絶対的な作品なんて見たこと無い。」
サーシャ「では、シェリーにとっての完成品とは一体何ですか?」
シェリー「さあね。それが分かりゃ苦労しねえよ。もしそれが理解できたとしたら、それは死と同じだ。芸術家としての死さ。
それ以上求める物なんかねぇんだからよ。」
サーシャ「死…ですか。」
シェリー「ま、芸術家だけの話じゃねぇ。人間はみな死ぬまで勉強は続くんだよ。終わりのない冒険と一緒ってことだ。」
サーシャ「……第三の解答ですが、やはりよくわかりません。」
シェリー「ま、この話はお子様にはまだ早かったってことだな。」
シェリーの言う事はよくわからないが、ただ一つ想う事がある。
サーシャ「第一の質問ですが、シェリーはその作品が完成したらどうなるのでしょうか?」
シェリー「そんなのは完成してみなきゃ分かんないわよ。」
サーシャ「第二の質問ですが、失敗作だったらまた壊すのですか?」
シェリー「失敗作なんか残したってしょうがないだろ。」
サーシャ「そうですか……第一の解答ですが、なんだか複雑な気分です。本当の意味での完成がシェリーの死を意味するのなら、
私はそれを望みません。ですが、失敗作になってしまう事ももちろん望みません。第三の質問ですが、私はどうすればいいのでしょうか?」
シェリー「何だ?さんざん生意気な口を聞いときながら、私の心配をしてるのか?ハハッ、お前も可愛いとこあるんだなぁ。」
真剣なサーシャとは対照的に、笑いながらサーシャの頭を乱暴に撫でてくるシェリー
サーシャ「むっ、第二の解答ですが、別にそういう事ではありません。自分がモデルになった作品だから、少し心配になっただけです。」
口調は丁寧だが、声色は不満を明確に主張している
強引に撫でられながらも、彼女の頬は微かに紅く染まっていた
シェリー「心配されんのは悪い気はしない。だが、これは私の問題だ。お前が気にする事じゃねえよ。」
サーシャ「ですが、一人で悩むのは良くありませんよ。」
それは、つい二、三日前にアニェーゼから指摘された事である
シェリー「そうかい。お前さんも少しは成長したんだな。だが、一人で抱える事と依存する事は違う。
信頼ってのは、する事も大事だが、される事も同じくらい大事なんだ。」
サーシャ「むぅ……」
シェリー「ま、要は私を信頼しろって事だ。」
シェリーはそう言うが、サーシャは首を傾げる事しかできない
結局のところ、サーシャにはあまりよく分からなかった
他愛も無い話をする二人
意味があったのか無かったのかは分からない。特に何かが起きたわけでも無かった。
ティーカップとソーサーの重なる音が、印象的に感じられるくらいの静かな時間が流れていく
まるで放課後の静かな美術室で、何をするでもなくただ寛いでいる様な感覚
そんな平和な午後の二人のティータイム
そう言えば、一つだけ聞きそびれた事がある
シェリーが失敗作の烙印を押したあの石像
彼女はなぜ、あれを壊さなかったのだろう…
数週間後
オルソラ「失礼します……やはり起きていたのでございますか」
シェリー「ん?なんだ、アンタか」
オルソラ「差し入れでございます。」
シェリー「ありがとよ。ちょうど終わったとこだから、すぐに食わせてもらう。」
オルソラ「まあ!完成したのでございますか!」
そこには真っ白な大理石で作られた、等身大の修道女の石像があった
長い前髪から輪郭まで細かく再現されている。
石で出来ている事を忘れてしまいそうなくらいの透明間を感じる滑らかな肌は、
思わずその手で触れて、撫でたくなる誘惑に駆られそうになる
まるで、サーシャ・クロイツェフと言う名の少女が、本当にそこに静かに腰掛けている様な錯覚を覚えてしまう程だ
オルソラ「とても素晴らしい出来栄えでございますわ!この作品を一番最初に見る事ができた私は、とても幸運なのでございましょう。」
その言葉に嘘偽りは無い。オルソラは、その作品に対して素直に感動し、素直に敬意を表している。
だが
シェリー「どこがだよ。とんだ失敗作だ。アイツの1000分の1も表現出来ちゃいねえ。」
オルソラ「そうなのでございますか……難しいものでございますね。」
素直に落胆の表情を見せるオルソラ
これのどこがダメなのか?おおよそ一般人には理解できないものである
オルソラ「残念でございますわ。これだけ素晴らしい作品なのに、壊してしまわれるなんて…」
シェリー「さて、どうしたもんかね…」
そう呟きながら、彼女は自分の作った失敗作を見つめ、後頭部を掻く
シェリー「……なんかコイツを見てると、今にも生意気な事を言い出しそうだな……
やれやれ、これじゃあ壊すに壊せねぇじゃねえかよ。」
オルソラ「ふふ、また壊すことのできない作品が増えたみたいでございますね」
シェリー「まったく、いい迷惑だ。造るんじゃなかったよ」
自分で依頼しておきながら何とも身勝手な発言ではあるが、信頼しろといった手前、サーシャの納得の行く選択をしなければならない
完成品には程遠いが、壊すには惜しい失敗作。だから壊さないでおいてあげたのよ。
とりあえずサーシャにはそう言っておくか。と考え、シェリーは紅茶に口を付けた
サーシャ「やれやれ、お子様の相手は疲れるねぇ。せめて、この紅茶の良さくらいは理解してもらいたいもんだわ。」
第一の解答ですが、これが私なりの紅茶に対する理解なのです。ミルクティー最高です。
目の前の修道女の石像は、シェリーの独り言に対してそう言いたそうな顔をしていた
【お酒は18になってから(by the Law of Britain)】
サーシャ「第一の解答ですが、ロシアではジャムとブランデーを入れた紅茶が定番です……とか思ってませんか?
それは間違いです。ロシアでは紅茶はストレートで入れ、ジャムを舐めつつ紅茶を飲むのであります。
紅茶の中にジャムを入れてしまうのは一般的ではありません。」
サーシャ「補足説明ですが、私は特にブランデーを大量に入れるのが好きです。
さらに補足しますが、別に酒好きというわけではなく、あくまでも紅茶というベースにブランデーを多めに入れるのが好きです。
冷え性な私には欠かせない嗜み方です。ちなみに、少量のブランデーを混ぜたジャムというのも中々イケます。」
オルソラ「というわけで用意してみたのでございますよ♪」
サーシャ「第二の解答ですが、ジャムは入れずに、傍に置いておきましょう。」
オルソラ「はい♪」
サーシャ「ブランデーを垂らします」
オルソラ「量はお好みに合わせるのでございますね♪」
サーシャ「そして」
オルソラ「そして?」
サーシャ「飲みます」
オルソラ「いただきます♪」
サーシャ「……」
オルソラ「……」
サーシャ「……第三の解答ですが、妙に生温かいですね」
オルソラ「そうでございますか?」
サーシャ「それに、何か変った味がします。私の知ってる紅茶と違う。」
オルソラ「そうでございますか♪」
サーシャ「ま、いっか。」
オルソラ「そうでございますか♪」
30分後
オルソラ「おかわりはいかがでございますか♪」
サーシャ「第一の解答ですが、いただきます」
サーシャ「……やはり、何かがおかしいですね…」
オルソラ「良いではありませんか♪」
サーシャ「そうですね」
1時間後
オルソラ「おかわりはいかがでございますか♪」
サーシャ「もう何杯目になるのか覚えてませんが、いただきます♪」
サーシャ「……何かが違う…」
オルソラ「良いではありませんか♪」
サーシャ「そうですね♪」
アンジェレネ「あっ、ティータイムですか!?私も仲間に入れて下さい!」
オルソラ「どうぞでございます♪」
アンジェレネ「なんかいつもより若干テンション高くないですか?」
オルソラ「気のせいでございます♪」
アンジェレネ「へえ、ロシアの紅茶ですか、一度飲んでみたかったんですよねぇ」
アンジェレネ「えっと、まずはジャムを沢山入れて、ブランデーは少なめにしましょう……では、いただきまーす……ブフッ!!!」
オルソラ「あらあら♪」
アンジェレネ「あらあら♪じゃないですよ!何ですかこれ!まんまお酒じゃないですか!!」
オルソラ「テヘッ☆紅茶とブランデーを間違えてしまったのでございますよ♪」
サーシャ「なるほど、第一の解答ですが、通りで味が変なわけですか」
アンジェレネ「いや、一口目で気付きましょうよ!ていうか本場ロシア人のあなたが間違えてどうするんですか!!」
サーシャ「テヘッ☆」
アンジェレネ「テヘッ☆じゃないですよッ!!あなた達絶対酔ってるでしょ!酔っぱらってますよね!?」
つまるところ、彼女達は人肌程度に温められたブランデーにブランデーを注いだ100%純ブランデーを飲んでいたわけで、
アンジェレネに至ってはそのブランデーにジャムをぶち込んでいたのである
ブランデーと言っても色々と種類があるので一律には言えないが、アルコール度数はおおよそ40から50度。
ちなみにビールは5度付近、日本酒は10から20程度である。
ところで、そもそもなぜオルソラは紅茶とブランデーを間違えたのだろうか?
実は、彼女は酒にあまり強くない(あくまでもここでの設定)
アルコール度数の高い酒は、匂いを嗅ぐだけで酔ってしまうほどだ
しかも、酔っても素面の時と性格が変らず、少し天然度とドジっ子度が上昇してしまう程度という微々たる変化しか見られない
サーシャもサーシャでなぜ気付かなかったのか?疑問ではあるが、
以前、着るまで小悪魔ロリエロメイドというゲテモノ服だと気付けなかったくらいだから、そういう事もあるのかもしれない
アンジェレネ「なんでこんな悪魔みたいな飲み物を平気で飲んでいられるんですか!?信じられません!!」
その言葉にサーシャの眉(前髪に隠れて良く見えないが)がピクッと僅かに動いた
サーシャ「第一の解答ですが、聞き捨てなりません。あなたはロシアを愚弄しているのですか?」
アンジェレネ「むしろこの飲み物をロシアンティーだと主張する方がロシアに対して失礼なんじゃ…?」
サーシャ「第一の質問ですが、私の紅茶が飲めないというのですか?」
オルソラ「淹れたのは私でございます♪」
アンジェレネ「紅茶違うし!!茶葉とか一ミリも入ってませんし!!」
サーシャ「いいですよ…私の紅茶が飲めないというのなら……」
アンジェレネ「飲めないというのなら……?」
サーシャ「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!」
アンジェレネ「その前にサーシャがそのふざけた幻想から目を覚ましてくd!!うわああああん!!絡み酒ぇッ!!!」
サーシャは驚異的な身体能力を駆使して、逃げようとするアンジェレネを取り押さえた
アンジェレネ「誰かーッ!!シスタールチアー!!助けて下さいーッ!!」
サーシャ「クスクス」
アンジェレネ「ひいいっ!!!」
これほど戦慄という言葉が似合う笑顔は、この世には存在しないだろう
サーシャは例の悪魔の飲み物を少量口に含めた
アンジェレネ「な、なにを…ムぐッ!」
喋る間もなくサーシャはアンジェレネの唇を塞ぐ
サーシャ「んっ……くちゅ…」
アンジェレネ「…あっ…んぐっ…んっ…ふあっ……」
液体が流し込まれ、ブランデーの匂いが口内に広がる
トク、トクと液体が喉を通る音が鳴る
アンジェレネ「ぷはっ!(え…これキス……え……?)」
アンジェレネは真っ赤な顔をして、トロンとした目でサーシャの顔を見つめる
それがアルコールによるものなのかどうかは分からない
サーシャ「第一の解答ですが、続けましょう」
アンジェレネ「はい/////……え!違う!ダメですよ…こんな事……」
とか言いつつも静かに目を閉じるアンジェレネ
するとそこへ
ルチア「アンジェレネ!何があったのですか!先程の叫び声は一体何ですか!」
近くの廊下からルチアの声が聞こえてきた
だが、その声に反応したのは、ルチアに助けを求めていたアンジェレネではなくサーシャの方だった
サーシャは馬乗りで押さえつけてる状態からアンジェレネを解放すると、一目散に廊下の方へ走っていった
アンジェレネ「らめれすよサーシャ…私たち、女の子同士で……はれ?」
ルチア「どうやら、先程の声は食堂の方から聞こえてきたみたいですが…あら、サーシャ?」
前方からサーシャが走ってくる
ところどころ衣服が乱れているのは、一体どういう事なのだろうか?
だがそんな事は一切気にせず、サーシャはルチアに飛びつく様な感じで抱きつき、その胸に顔を埋めた
ルチア「シスターサーシャ!いきなりどうしたというのです!っていうか酒臭ッ!!」
サーシャ「お姉様…」
ルチア「……は?」
サーシャ「お姉様!ルチアお姉様!」
サーシャはさらに強く力を込めてルチアに抱きつく
ルチア「お姉…様…!?」
あの時の記憶が蘇る
理性を砕かれそうになったあの時の…
ルチア「こほん…シスターサーシャ、何があったのかは分かりませんが、その呼び方はやめてくださいと以前言ったはずですよ?」
そう言うと、サーシャは顔を上げ、抱きついたままルチアを見上げた
サーシャ「ダメですか…?ルチアお姉様は、サーシャの事が嫌いですか?」
長い前髪から覗き込む様に、サーシャの大きな瞳が、うるうると少し涙目になっている瞳がルチアに訴えかける
まるで、主人に甘える子猫の様に……
酒の勢いか、どうやら幼稚退行している様にも思えるが、そんなところが余計にルチアの母性本能を刺激する
ルチア「うっ……負けませんよ!これしきの事!!シスターサーシャ!!いいかげん離れなさい!!」
サーシャ「ルチアお姉様…」
誘惑と戦うルチアの怒声
しかし、それはサーシャには1ヘルツも耳に届かない
サーシャは軽くジャンプし、ルチアの首の後ろに両腕を回してぶら下がる様な感じで
引っ付いてきた
そして、その勢いのまま、サーシャはルチアの唇に自分の唇を重ねた
ルチア「……!」
サーシャ「んっ……」
そのままの状態で静止する二人
まるで、そこだけ時間が止まってしまったかの様である
サーシャ「ふぅ…クスクス、お姉様…」
ようやくキスから解放したサーシャ
相変わらず何がおかしいのか、クスクスと邪悪な笑みを浮かべている。、
唇を奪われたルチアはというと
ルチア「マ、マルコによるふくいんしょだいいっこう……ばぷてすまのよはねががこうやにあらわれて、くいあらため」
顔を真っ赤にしながら脱力し、ぐったりとその場にへたり込んで、なぜか聖書の暗唱をしていた
その後、神裂が、床で悶えているアンジェレネと、その光景を眺めながら「あらあら」と片手を頬に当てて微笑んでいるオルソラ、
そして真っ赤な顔でへたり込んで、御経の様に聖書を暗唱しているルチアと、そのルチアの膝を枕にして寝ているサーシャを発見した
それらの惨状を目の当たりにした神裂が何を思ったのかは想像に任せる
ちなみにその日以来、ルチアとアンジェレネはサーシャと顔を合わせる度に赤面し、、
しどろもどろになってしまっていたのだが、サーシャはそれを、自分が二人から避けられているのでは?と誤解し、
神裂やアニェーゼ、シェリー、オルソラに相談したという
神裂「え?あー、まあそのですね…えーっと……」
アニェーゼ「そのうち何とかなるでしょ。それよりもキスの感想を(ry」
シェリー「あのブランデー…空けたのテメェだったのか!!」
オルソラ「あらあら」
と言う事らしい