佐天「きゅ、吸血殺しの紅十字ッ!」 > 第一部 > 2


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――第七学区、とある廃ビル



佐天弟『姉ちゃん超能力者になるの?カッケー!』

佐天『へっへーん!』

佐天母『涙子、お母さん今でも反対なんだからね』

佐天父『アッハッハ、母さんは心配性だからな』



佐天母『頭の中いじられるなんて、やっぱり怖いわ』

佐天『全然そんなことないって』

佐天母『はい。お守り』

佐天『うわぁー、非科学的……』

佐天母『何かあったら、すぐ戻ってきていいんだからね。
貴女の身が、なにより一番大事なんだから』

 

………

……

 

 

佐天(ごめん、お母さん。私結局超能力者になれなかった。
あんなに心配して、あんなに期待して、あんなに大切に私のこと思ってくれたのに……。
ごめんさい、お母さん……)

佐天「お母さん……」ツー

「あら、お目覚め?」

佐天「えッ?」

佐天(あれ、何ここ?私なんでこんなところにいるの?)

「おはよう、見知らぬ魔術師さん」

佐天「なッ!?」バッ

ローブの女「ウフフフ。悲しい夢でも見ていたの?目が真っ赤だわ。
ママに叱られる夢でも見ていたのかしら」

佐天「えッ?……あッ!?」ゴシゴシ

ローブの女「ウフッ。本当に貴女ってとっても可愛いのね」

佐天「あ、貴女誰なんですか!?それにここって一体どこ?」
ローブの女「質問は一つずつにしてもらいたいわ。
『急いては事を仕損じる』と日本では言うのではなかったかしら?
……まずここがどこかという質問だけど、私もよく知らないの。ごめんさい。
学園都市については最大限調査してきたつもりだけど
さずがに今は使われていないビルの名前までは知らないわ」

佐天(どういうこと?この人学園都市の人間じゃないってこと?)

ローブの女「それともう一つの質問。私は誰か、って質問ね。
私は『魔術師』よ。貴女と同じ、ね」

佐天「ま、魔術師!?」

ローブの女「正確に言うなら魔術結社『科学の子』の代表というべきかしら」

佐天(魔術結社?『科学の子』?何言ってるのこの人?)

ローブの女「それじゃあ質問には答えたから、今度は私から質問してもいいかしら。
貴女はどこに所属する魔術師なの?」

佐天「だから違います!私は魔術師なんかじゃありません!!」

ローブの女「意外と強情なのね。でもこの状況でまだ言い逃れしようなんて。
おおよその見当は付いているから問題はないのだけど」

佐天「だから違うって……!それよりも私をどうするつもりですか?
こんなことをしてもすぐに風紀委員が――」

ローブの女「でも少し変なのよね。確かに貴女からは魔力を感じるけれど
それは貴女が生み出したものとは違うような気がする。
そう、他人の魔力を持ってきてしまっているような。

でも全くの素人が魔術と関わっているとは思えない。
この子の格好がいくら学園都市の学生そのものであっても
それを額面通り受け取ることは難しい……。

フフ……ごめんさいね。ちょっと無粋だったかしら。
私の魔術の特性柄、人の発する“印象”に敏感なの」ズズズ

佐天「な、なんですか……。だから私は、魔術なんかじゃないって……。
こ、来ないで!!」ザザザ

ローブの女「心配しなくていいのよ。別に危害を加えようってつもりはないの。
ただ貴女の記憶を少しだけ覗かせてもらうだけ。ただそれだけよ」

佐天「や、やめて……!!助けて!!」

ローブの女「ウフフフ……」スッ

佐天(銀細工の……筒?)

カチャ、ポタポタ……

ヌラヌラ……キラッ、キラッ

佐天(水を垂らした手が光ってる!?)

ローブの女「さあ、貴女のこと、教えて頂戴」サッ

佐天「ッ!!」

ボオオォォン!!

佐天「えッ!?ほ、炎!?」

ローブの女「くッ……!ウフフ……そういうことね」グッ

佐天「えッ!?ちょ、ちょっと止めてください!!」ジタバタ

ローブの女  スッ

ローブの女「このカードだったのね。僅かに魔力を放っていたのは。
……この術式は、どうやらある程度の魔術を打ち消すためのものみたいね。
そしてこのルーン……。ウフフ、やっぱり『必要悪の教会』も動いていた……」
佐天「ステイル君のお守り……。返してください!!」

ローブの女「ステイル……ステイル=マグヌス。ルーンを使う例の天才魔術師ね。
いいわ、返してあげる。大切に持っていることね」ヒュッ

佐天「お、わッ!」パシッ

ローブの女「ウフ、それにしてもよりにもよって面倒な人が来てしまったものね。
貴女、それをくれた魔術師とはどういう関係なの?
仕事上のパートナー?それとも恋人?」

佐天「ち、違います!!ただ偶然スキルアウトに絡まれたのを助けてもらっただけで……。
あと、ちょっと、色々話したりもしたけど……」

ローブの女「あら?じゃあ貴女は本当に魔術とは関係ない、学園都市の学生だったのね。
疑ってごめんなさい」

佐天「いえ、別に……ってそうじゃなくて!!何で私をこんなところに連れてきたんですか!!
どうするつもりですか!!」

ローブの女「そう言えばまだその質問に答えていなかったわね。
私たち『科学の子』は、科学と魔術は本来、神が人に与えた知恵という意味で同一であり
最終的には一つの形、『完全なる力』となるって考えているの。
そのためにこの学園都市の学生に協力してもらおうと思ったのよ。

と言ってもその学生たちには少しだけ、強引な手を使ってしまったのだけれど。
今もこのビルには貴女と同じような学生が10人ほどいるわ」

佐天「学生を、強引に……。
もしかしてそれって最近流行ってるっていう、連続失踪事件のこと!?」

ローブの女「そんな風に言われているのね。
確かに魔術によって自らの足でここに来させたのだから、そうとしか見えないでしょうね」

佐天「ど、どういうことですか?」

ローブの女「不安や不満といった負の感情を通じて精神を操る魔術をかけた……
ただそれだけのことよ。
だから今ここにいる学生たちは
現状に何らかの否定的な気持ちをいだいている子が多いでしょうね。
本当は貴女にもその魔術をかけようとしたのだけど、驚いてしまったわ。
普通の学生にしか見えない貴女から、魔力を感じたんですもの」

佐天「不安や不満……そんなの、私には……」

ローブの女「心の中を覗いたわけではないから具体的には分からないのだけど
貴女にもあるんじゃないの?

この思い通りにならない世の中への不満が。
自分より優れた他人への妬みが。
自分の努力を認めてくれない大人への怒りが。
才能、素養、それらすべてに対する圧倒的な自分への不安が」

佐天「もう止めてください!!」
ローブの女「言ったでしょ?私はそういうのに敏感だって……。
そうだ、こんな強引な手を使わずに人生相談でもやったほうが
穏便に沢山の学生が集まったかも知れないわね」ズズズ

佐天  ビクッ

ローブの女「……だって、この街には、負の感情が渦巻いているんですもの」

佐天「ッ!!」バシッ

ローブの女「あら、怒らせてしまったかしら?
貴女って可愛いから、ついつい意地悪したくなっちゃうわ」

佐天「……一体何なんですか。何かが目的なんですか」

ローブの女「言ったでしょ?『完全なる力』を得ることだって。
私にはそれしか見えていないのよ。盲者のように、ね」

佐天「……」

ローブの女「それじゃあそろそろ貴女にも、他の学生たちと一緒にいてもらいましょうかね。
貴女だってそのほうがいいでしょ?」

佐天「いくら魔術なんてものを使っても、絶対に風紀委員や警備員にバレます。
私の友達が、絶対に私を見つけてくれるはずです!」

ローブの女「あら、お友達を信頼しているのね。素敵だわ、そういうの。
でもどのようなことが起こったとしても、私の計画を破綻させることはできない。
……この子を部屋までお連れして」

黒衣の男「はッ!」ザザッ

佐天「ちょ、ちょっと離して!!痛ッ!待ってってば!!」

ズルズル……

ローブの女「ウフフフ……。面白い子……」

――第七学区、とある廃ビルの前



上条「ここか……」

ステイル「ああ、間違いない。このビルを中で、魔術が展開されている」

上条「確かにここなら監視カメラにも映らないな……。
でも奴らはそれも調べた上でここを使ってたのか?」

ステイル「おそらくそうだろうな。科学と魔術の融合を唱える狂信者どもだ。
学園都市についても念入りに調査をしたんだろうさ」

上条「そいつらがそんなに熱心に求める『力』って一体何なんだろうな?」

ステイル「それにそのことについて深く考察している暇はない。
この件に関しては学園都市と協力しているから
現在この誘拐事件の捜査には圧力が掛かっているはずだ。
でもそれも長くは持たないだろうな」

上条「そうかい。じゃあ早速そのふざけた計画をぶち壊しに行くとしますか

ステイル「ああ、そうだ――」

ピ―――――ン

ステイル(この感覚、彼女にあげたルーンが反応したのか。
ということは彼女もこの中に……。まったく、また面倒をかけるつもりか)ハァ

上条「ん?どうかしたのか?」

ステイル「いや、なんでもない。さっさと片付けてしまおう」

上条「ああ。俺も晩飯までには戻らなきゃならないんだ。
食料は十分あるとはいえ、メシを作ってやらなかったら
インデックスがまた食人族化しちまうからな」フン

ステイル「大袈裟、というよりも失礼だな、君は。
冗談も介せないほど頭がイカれてしまったのかい?」

上条「いやいや、それが最近冗談とも思えない状況になってきたんですよッ!!
うちの侘しい食生活のせいなのか
腹が減ったときはバーサーカーモードに突入すんだよ!
いやあ、空腹時なら『神の右席』の一人くらい倒せるんじゃねぇ?」

ステイル「そんなことで戦争が終わってたまるか。ん?」

ザザッ、ザザザ

ステイル「いい加減そんな馬鹿なことなことは言ってられないみたいだね」

上条「学生?あれってもしかして誘拐されてた学生たちじゃ……。
おーい!助けに来たぞ!!」

ステイル「馬鹿ッ!不用意に――」

ピキピキピキ……ヒュッ

ドォォーーーン!!

上条「こ、氷の槍……!ちょっと待って!俺たちは味方だ!!」

ゴゴゴゴ……   ボォォーーン!!

上条「廃材をッ!今度は念動力かよ!!」グッ

パンッ!

上条「危ねぇー。つうかどうなってるんだよ!!あいつら俺に恨みでもあるのか!?」

ステイル「操られているんだ。敵の魔術師に」

上条「操る、だって!?
あいつら魔術師に、能力者の脳をコントロールして能力を使用するなんてできんのかよ?」

ステイル「脳を操るとかそんな複雑なことはしていないはずだ。
奴らがやっているとしたら、魔術によって精神状態を狂わせているくらいのものさ。
差し詰め彼らの目には、僕たちが死ぬほど憎い仇敵にでも見えてるんじゃないか」

上条「くそッ!目の敵にされるのは、ビリビリだけで、十分だっての!!」バッ

ヒューーー……  ビュンッ!!

パンッ!

上条「ステイル!ここはお前だけでも先に行け!!
お前の能力じゃこいつらは止められないだろ」

ステイル「そうだね。僕の力では、彼らを消し炭にしてしまうのが関の山だな。
ではその忌まわしい右手に期待して、先に行かせてもらうよ」バッ

タッタッタッ……

上条「ああ、こいつらを元に戻したら俺も行く。ここは任せろ!!」
ゴゴゴゴ……ヒュン、ヒュン、ヒュン!!

上条「くッ!!」ダダダッ

ドンッ!ドンッ!パンッ!

上条(とは言ったものの、遠距離攻撃をしてくるあいつらをどうやって元に戻す?
とりあえず体にこの右手が触れさえすればいいはずだけど
近づけなきゃ元も子もない!)

学生「……省帆、省帆。ごめん、裏切った俺が、悪かったんだ……。
常盤台の、お嬢様なんて……馬鹿なことをしたって、反省してるんだ……。
だから、みほ、みほ、ミホーーー!かえってきてくれー!!」バッ

ピキピキピキピキ……ヒュヒュヒュヒュン!!

上条「んなこと、俺が、知るかぁーー!!」

パーンッ!

 

 

――第七学区、とある廃ビル、六階の一室前



佐天「痛いッ!!ちょっと離してよ!離せー!!」ジタバタ

黒衣の男A「ええいッ!おとなくしろ!!」ズルズル

黒衣の男B「なんだ、えらく生きのいいのが来たな。
そいつか、例の『必要悪の教会』の魔術師ってのは?」

黒衣の男A「いや、こいつはただのこの街の学生だ。
どうやらたまたま『必要悪の教会』の魔術師と出会ったことがあるらしい。
まったく面倒かけさせやがって……」

黒衣の男B「おいおい、お前、本当に『必要悪の教会』の魔術師にビビってたらしいな。
あの『ルーン使いの魔術師』についてえらく熱心に総裁に尋ねてたそうじゃないか?
命だけは助かるような対抗策は練れたのかよ?」ヘラヘラ

佐天(『ルーン使い』?それってステイル君のこと?)

黒衣の男A「う、五月蝿いッ!!お前こそ『結界』はちゃんと機能してるんだろう?
お前みたいな集中力のない男に、こんな根気のいる作業が勤まっているとは
俺は今でも信じられないね。この術式は繊細な魔力の調節が必要なんだろ?」

黒衣の男B「大丈夫だよ。現に何も問題なんて起こってないだろ?
このくらい、俺にかかれば寝ててもできるぜ」

黒衣の男A「けッ!そうかよ。おいお前!お前もさっさと中にはいれ!!」

ガチャ

佐天「痛ッ!!」ドスン

黒衣の男A「せいぜいそこでおとなしくしてるんだな」

バタン

佐天「痛たた……。何も放り投げることないでしょ」

佐天「ここって……」キョロキョロ

…………

イツニナッタラレベルガアガラナインダナンデ   ドウシテワタシノコトヲスキニナッテクレナイノ

ナゼボクバッカリナグラレナキャイケナインダ   マタケンカシチャッタ…ドウスレバナカナオリデキルノ

佐天「……何、これ……?」

佐天(この人たち、失踪してた学生たち?でもみんな様子が変だ)

佐天「あの、大丈夫ですか?貴方も無理矢理ここに連れてこられたんですよね」ガシッ

男子学生「……やらなきゃ、僕がやらなきゃ……
僕は優等生でなくちゃいけないんだ……みんなの手本にならなくちゃいけないんだ……
クラスのみんなのために……いつも僕を頼ってくれるせんせいのために……
じぶんのしたいことなんて、やりたいことなんて、わすれなきゃいけないんだ……
ぼくが、やらなきゃ……」ユラユラ

佐天「ひ、ひぃ!?」ザザッ!

佐天「どうなってるの?」

「無駄ですよ。その人たちに言葉は届きません」

佐天「えッ?」

女子学生「この部屋に連れてこられると、みんなそうなってしまうんです。
どうやら外にいる人たちが、何かしてるみたいなんです」

佐天「そう言えばさっき『結界』がどうとか……」

女子学生「『結界』?確かにこれは薬物などの効果ではなく
何らかの能力を私たちに継続的にかけているみたいですね」

佐天「(能力……じゃない。これがきっと魔術なんだ)
えっと、貴女も無理矢理ここに連れてこられたんですか?」

女子学生「そう、なんでしょうか?よく憶えてないんです。
外を歩いていたはずなんですけど、気がついたらここにいて……」

佐天「きっとあいつらの仕業ですよ!
魔術、じゃなかった、能力で学生を操ってここに連れてこさせるってさっき言ってましたから」

女子学生「やっぱりそうなんですね。じゃあ、ここにいる人たちも全員……」

佐天「きっと同じような方法でここに連れてこられたんだと思います。
あ、でもなんで貴女は大丈夫なんですか?」

女子学生「私、心理操作系の能力者なんです。
私たちにかけられてる能力はどうやら負の感情を増幅して
軽い心神喪失状態に陥らさせる能力みたいで、私の能力でその効果を打ち消してるんです。

でも今までに経験したことのないような
何か演算では理解しきれない部分がある能力だったので
打ち消すのに時間がかかりました。
私もはっきり意識を取り戻したのは昨日なんです」
佐天「そうだ!その能力を使えばここにいる人たちを元に戻せるんじゃないですか?」

女子学生「すいません……。私はまだレベル3で
他人の感情をコントロールするのはそれほど得意じゃないんです。
実際にやってみましたが
相手の能力がよく分からないこともあって上手くいきませんでした」

佐天「そう、だったんですか……」

女子学生「レベル4の能力者だったら、ここにいる人たちも助けられたのに……。
何で私、肝心なところで役に立たないんだろう……」

佐天「そんな……貴女のせいじゃないですよ!!」

女子学生「私、自分の能力がこの心理操作だって分かったとき、すごく嬉しかったんです。
将来悩んだり、落ち込んだりしてる人を助けるような仕事がしたくって
だからこの能力なら、そういう人たちを助けることができるって思ったんです……。

でも私にはなにもできない。ここにいる人たちは負の感情を増幅されて
普段抱えてる悩みや不安の中で今も苦しんでるんです!!
そういう人たちを助けるために、今まで能力開発を頑張ってきたはずなのに……!」

佐天(この人、私と同じだ。
助けたい人がいても、でも自分に力がないから諦めるしかないんだ)
女子学生「う、う……。私、どう、したら……」ボロボロ

佐天(そう言えばこの人、常盤台の制服だ。
じゃあこの人が御坂さんが言ってたクラスメイト……。
本当に自分の能力のことで悩んでたんだ。
その悩みにつけ込むなんて、許せないッ!!)

佐天「大丈夫ですよ。きっとここから出られます。
そうすればここにいる人たちも助けることができるじゃないですか!」

女子学生「……きっと、助かりませんよ。これは私に下った罰なんです」

佐天「罰?いや、そんなこと絶対に――」

女子学生「いいえ、そうなんですッ!!これは御坂さんに黙って
50名様限定『およげゲコ焼きくん』を手に入れた、私に対する罰なんです!!」

佐天「……。はぁ?」

女子学生「私がいけないんです!御坂さんには能力開発に関する悩みも聞いてもらって
それに数少ない『ゲコ太』を愛する大切なお友達だったのに!
知ってるゲコ太情報はいつも共有して、この前だって『ゲコ太マウスパッド』を
一緒に買いに行ったのに!

でも御坂さんに私が持ってない彦根城限定『ゲコにゃん』ストラップを自慢されて
さらに東南アジアに出張されているお父様に
タイ限定『ワイクルーゲコ太』を買ってきてもらうんだっていうから……。
私、能力だけじゃなくて、ゲコ太グッズでも御坂さんに勝てないのかと思うと悔しくて……」

佐天「え、えーと、つまり貴女が抱えてた悩みって……」

女子学生「あの日、御坂さんに自慢したくて一人で『およげゲコ焼きくん』を手に入れたんです。
でも御坂さんに黙っていた罪悪感が段々押し寄せてきて……。
それで気がついたらここに連れてこられていました」

佐天(すっっっごくどうでもいいし!!ていうか『ワイクルー』って何!?)

(※ワイクルー…「師(クルー)に合掌する(ワイ)」の意味。

タイでは学校の先生やスポーツのコーチ等に対して使われる

日本では主にムエタイ競技前に行われる選手による舞踊様のものを指す)

女子学生「私、どうやって、御坂さんに謝れば……」グスッ

佐天「だ、大丈夫ですよ。御坂さんならきっとそんなこと気にしません。
笑って許してくれますよ!」

女子学生「えッ、もしかして、御坂さんとお知り合いなんですか?」

佐天「そうです。御坂さんも貴女が行方不明になってすごく心配してましたよ。
後輩の風紀委員の子に捜査をお願いしたりしてたんですから」

女子学生「み、御坂さん……。う、う……ありがとう、ございます……!
私、戻ったら真っ先に、御坂さんに謝ることにします」グスッ

佐天「そうです!絶対にここから脱出しましょう!!」

女子学生「ありがとうございます……。
貴女が来なかったら私、かけられている能力に負けていたと思います。
あれ?そう言えばなぜ貴女は平気なんですか?」

佐天「そう言えば、なんで――」

ボゥ……

佐天「熱ッ!!」

女子学生「どうかしたんですか!?」

佐天「いや、なんだかポケットの中が熱くて」ゴソゴソ

ボゥ……

佐天「ステイル君がくれたお守りが、熱くなってる……」

佐天(さっきみたいに相手の魔術を打ち消してくれてるんだ)

女子学生「もしかしてそれが能力を?新型のAIMジャマーですか?
でもそんな小型で持ち運びが可能なタイプは見たことありません」

佐天「えッ!?えっと、これは、つまり……。そう!風紀委員の友達にもらったんですよ!!
風紀委員で正式採用される予定の新型で、その……サンプルを取るための
実験的な、テストケースとして、偶然くれて……」

女子学生「へぇー、風紀委員ではそんなものも開発してるんですね。
あれ?でもAIMジャマーなのに、私の能力は妨害していない?」

佐天「ッ!!えっと、それは……」

女子学生「つまり害になる能力を、AIM拡散力場から逆算して判別し
選択的に排除しているってことですよね。すごい技術力ですね」フンフン

佐天「え、まあ、それほどでも……」

佐天(良かった、頭の良い人で。勝手に理由考えてくれたよ。
ここでまた『魔術』なんて言ったら混乱させるだけだしね)

佐天「まあまあそれはさておき、ここから脱出する方法を考えましょう!」サッ

女子学生「そうですね。でもどうやって?相手の能力を打ち消したと言っても
この部屋のドアには鍵がかかったままですし、この部屋の前には見張りがいます」

佐天「うーん……。意識が戻ってから、何か起こったりしませんでしたか?」

女子学生「そうですね……。私が意識を取り戻してから、何人かここに連れてこられました。
後は……そうだ。ついさっき、ここにいる人たちが3人ほど連れていかれました」

佐天「連れていかれた?どういうことですか?」

女子学生「分かりません。意識を取り戻したのが分かると何かされるんじゃないかって思って
意識のないふりをしてましたから。でもあの人たちは『能力者を使って迎撃させる』と」

佐天「『迎撃』?どういうことでしょう?」

女子学生「さあ?私には、よく……」

佐天(何かは分からないけど、ここで異変が起こっているのは確か。
とするとあいつらは混乱してるんじゃない?
じゃあその隙を突けば、何とかなるかも知れない!)

佐天「……私に、考えがあります」

 

――第七学区、とある裏路地



タッタッタッ……

白井「初春!次の目的地はどこですの?」

初春『その路地を右に曲がって、そのまま200mほど進んだ先にあるビルです』

白井「了解ですの!」カチャ

御坂「ある程度場所が絞りこまれたって言っても、結構該当する場所があるもんね」

白井「そうですわね。特にこのあたりは第七学区でも区画整備が立ち遅れていた地域。
廃棄物件や持ち主のよく分からない建物の見本市ですわ」

御坂「いくら学園都市とは言えど、こういう場所は外と全く変わらないわね。
見通しが悪い上に入り組んでて、悪巧みしてる奴らが隠れるにはうってつけだわ」

白井「しかしお姉様がいらっしゃって助かりましたわ。
お姉様の能力を応用した、電磁波のレーダーがなければ
怪しい建物一つ一つを隅から隅まで調べなくてはいけないところでしたの」

御坂「と言ってもその建物に人がいるかいないか大体分かるだけで
そんなに正確なもんじゃないけどね。
あ゛ー!広範囲で生体電気や脳波を感知して判別できたら
一発で誘拐された人たちがどこにいるか分かるのに!!」

白井「それができた時点で、お姉様のレベル6昇格は確実ですの……」

御坂「とにかく次の目的地は、ここを抜けた先ね」タッタッタッ

パァ……

白井「!!」

御坂「何なの、これ!?」

バラバラ……

白井「……この鋭利な氷柱の数々、あちこちに散らばる建材
そして巨大な刃物でえぐり取られたような地面……。
ここで大規模な能力者による戦いが行われたに違いありませんわ」

 

 

白井  カチャ

白井「初春!目的のビルに到着しましたの!このビルの詳細は分かりまして?」

初春『ちょっと待ってください……。
分かりました。名称は『滝浜ユニゾンビル』。
数年前にビルのオーナーがロシアへ事業を移すために売却
そのすぐ後売却先が経営破綻したため、現在まで手付かずの状態でずっと無人のはずです』

御坂「でもこのビル、明らかに生体反応があるわ」

白井「では間違いなく、ここですわね」

御坂「そうね……。黒子!?ちょっとあれ!!」

白井「あれは!?」タッタッタッ

学生「う、うッ……」

白井「ここにいる三人とも行方不明になっていた学生ですわ!!
もしもし、大丈夫ですの?」ガシッ

学生  グッタリ

御坂「意識がない。それに服装に明らかに戦闘の跡がある。
この人たちがここで戦ってたってわけ?」

白井「そう、なのでしょうか……。とすると、脱出するために誘拐犯と?
ではなぜ意識のない彼らがここに倒れているのですか?
連れ戻されていないのはなぜなのでしょう?」

御坂「分からない。それにこの人たち、戦いに負けて打ち捨てられてるっていうよりは
その後介抱されてここに寝かされてるって感じじゃない?」

白井「うーん、訳が分かりませんの」

学生「う、うーん……。省帆、おれ、もういちど……おまえに、好き、だって……」

白井「ん?なぜこの方だけ頬に殴られたような跡が?
まあとりあえず……初春、行方不明になっていた学生を三名発見しましたの。
ほとんど外傷はないものの意識不明、すぐに救急車を手配してください」

初春『さ、佐天さんはッ?』

白井「残念ながら……。しかし間違いなくこのビルのどこかにいるはずですの」
初春『分かりました。すぐに救急車を手配します。
あ、固法先輩に代わります』

固法『白井さん、さっき警備員にそのビルの付近で能力者同士の抗争があったって通報したから
もう少ししたら、警備員がそこに到着するはずよ。
だからくれぐれも二人だけで無茶はしないで!』

白井「ありがとうございます、固法先輩」

初春『白井さん、今白井さんのPDAにそのビルの見取り図を転送しました。
……気をつけてください。そのビルは間取りの広い八階建てで
使われていた時の物がそのまま残されているはずです。だから死角もかなり多いんです』

白井「了解しましたの。十分注意しますわ。後は私たちにお任せを!」カチャ

白井「お姉様ッ!!」

御坂「ええ、行くわよ黒子ッ!!」ダッ

御坂(待ってて、佐天さん!)

タッタッタッ……

 

 

―――第七学区、とある廃ビル、六階の一室前



……ド―――ン……

黒衣の男B(戦闘の音が中まで……。侵入者を撃退できなかったのか?
チッ!能力者たちめ、しくじりやがって)

黒衣の男B(しかし何の準備もなしにあんな氷の槍やカマイタチを起こせる奴らが
本当にやられちまったっていうのか?
まさかあいつの言って通り、あの『必要悪の教会』のルーン使いが来たんじゃ……。
クソッ!!何であいつみたいにビビってんだよ!!)

黒衣の男B(勝ち馬に乗ったつもりだったのに……。
総裁の言葉通り、この科学と魔術の戦争の中
その二つを兼ね備えた『完全なる力』を手に入れれば
俺たち『科学の子』が『イギリス清教』のトップに立てるかも知れないのに……!)

黒衣の男B「何で、こんなことになっちまったんだよ……!」

う、う、あぁーーーッ!!

黒衣の男B「な、なんだ!?」

『ウ、ウ、ウ、ウ……、く、苦しい!!』

黒衣の男B「ドアの向こうから?
お、おい!何騒いでるんだ!!」

黒衣の男B(いや、待て!この部屋の中にいる能力者たちは、『結界』によって意識がないはず。
なんで叫び声なんて上げてる!?)

黒衣の男B「まさか、俺が、『結界』を維持する魔力の配分を間違えたのか?
不味い……そうだとしたら、奴らは負の感情が増幅され過ぎて、廃人になっちまう!!」

黒衣の男B(どうする!?総裁を呼ぶか?いや、このミスが知られたら、俺は……)

黒衣の男B「一旦『結界』を停止させるしかない。
停止させてもすぐには意識を取り戻さないだろう。
しばらく様子を見て、また発動させればいい」サッ

ブゥーン……

黒衣の男B「ふぅ……。これで――」

『あ゛ぁーーーッ!!う、うーーーッ!!』

黒衣の男B「なな、なぜだッ!?確かに『結界』は停止させたはず……。
まさか、もう手遅れ、なのか……。
クソッ!!」バッ

ガチャガチャ

黒衣の男B「さっさと、さっさと開けよ!!」

ドンッ

黒衣の男B「ッ!!」

女子学生「ハァ、ハァ、く、苦しい……ッ!!」

黒衣の男B「クソッ!!おい、お前大丈夫か?おい!!」ガシッ

女子学生「助けて……!!頭がッ!!」

黒衣の男B「ッ!!とりあえず、外に――」

ザザッ

佐天「おりゃーッ!!」

黒衣の男B「なッ!?」

ヒュン、ドンッ!!

黒衣の男B「あぐッ!?」

ドサッ

黒衣の男B「あ、あ、あぁー……」

佐天「さあ、早く逃げましょう!!」

女子学生「は、はいッ!!」ダッ

黒衣の男B「あ゛ぁー、まて、おまえ、ら……!」

ダダダッ……




女子学生「わ、私!!あんなに大きな声出したの、生まれて、初めて!!」

佐天「ナイス演技でした!!主演女優ものですよッ!!」

女子学生「女優……。ハッ!!もしかして私、心理カウンセラーじゃなくて
女優が向いてるかも!!いや声優?
そしたら行々はゲコ太と共演することになったりして……
キャーーーーッ!!///」ブンブン

『の、能力者が逃げたッ!!捕まえろ!!』

佐天「と、とりあえず今は逃げましょう!!」

佐天(でも一体どこに逃げればいいの?とりあえず下に逃げればいいと思うけど―――)

ダダダッ!

「見つけたッ!!こっちだ!!」バッ

女子学生「キャア!!」

佐天「立ち止まっちゃダメ!!早く」パシッ

佐天  ギュッ

女子学生「は、はいッ!!」ギュッ

ダダダッ

佐天(この建物の構造が分からないから、どこに行けばいいか分かんない!!)

女子学生「ま、まだ追ってきます!!どうしましょう!?」ダダダッ

佐天「闇雲に逃げまわっても埒があかないッ!!一旦どこかに隠れましょう」ダダダッ

女子学生「『どこか』ってどこ!?」

佐天「私にだって分かりませんよ!!」

 

ダダダッ

ドンッ!

佐天「痛ッ!!」グラッ

女子学生「大丈夫ですか!?」

佐天「は、はい。平気です。つまずいただけですから……」

佐天「ッ!!」

佐天(これは……!)

女子学生「どど、どうしたんですか!?早く逃げないと!」

佐天「見てください!ここ、ダンボール箱の山の向こうにドアがあります!」

女子学生「本当ですね……。じゃあ……」

佐天「はい、一旦ここで追手をやり過ごしましょう!」

佐天「先に行ってください!」

女子学生「は、はい……」

女子学生  ザザッ、ズズズッ

女子学生「う、う……。何とか通れた……。貴女も早く!」

佐天  ザザッ、ズズ、ズ

佐天「あれッ!?くッ……胸が、つっかえて、通れないッ!
この荷物、重くて動かない……!」グッ、グッ

女子学生「……」

女子学生  グイッ、ドン!

女子学生「……どうぞ」

佐天「ありがとうございます!」

女子学生「いえ、別に……」

佐天「?」

ギィィー、バタンッ

…………ダダダッ

『あいつら、どこにいった?』

『まだこの階にいるはずだ!隈なく探せ!!』

『クソッ!!これが総裁に知られたら、エライ目に……!』

『そうなる前に、さっさと見つけるぞ』

『ああ』

ダダダッ……



女子学生「行き、ましたよね」ヒソヒソ

佐天「そう、みたいですね」ヒソヒソ

佐天女子学生「……」

佐天  「はぁぁぁーーー……」
女子学生「はぁぁぁーーー……」
女子学生  クラッ

佐天「だ、大丈夫ですか!?」

女子学生「は、はい。大丈夫です……。
やはりあの能力は閉じ込められていた部屋にだけ使われていたみたいですね。
もう精神に負担を掛ける効果はありません。
でもあの部屋にいる間、定期的に自分の能力を使っていたので
少し、疲れてしまって……」フラフラ

佐天「とりあえず横になりましょう。って言ってもそんなスペースありませんね」

女子学生「大丈夫です。座われるだけで十分ですから。
それにしてもすごく沢山の荷物。あの人たちが物置として使ってるんでしょうか?」

佐天「うーん、廃ビルだとか言ってたから、前の持ち主の物じゃないですかね」

…………

女子学生「とりあえずあの部屋からは脱出できましたけど、これからどうしましょう?」

佐天「あいつらは『能力者を迎撃に使う』って言ってたんですよね。
ということはこの建物に誰か、敵がやって来たってことで
だとしたらあいつらも混乱してるから、その隙を突けば逃げられると思ったんですけど――」
……ド―――ン……

女子学生「下の階から!?」

佐天「やっぱりこの建物の中で、誰かが戦ってるんですよ」

女子学生「警備員、でしょうか?」

佐天「そうだといいんですけど……」

……ズド―――ン……   ……ダダダッ……

佐天(何かが爆発する音……? でも銃声とかは、しない。本当に警備員なのかな?)

佐天「どっちにせよ、ここにずっといることはできませんね。
体力が回復したら、外に出ましょう。この場所もも安全じゃないかも知れないし」

女子学生「ごめんなさい、私が動けないせいで……」

佐天「いえ、私も鉄パイプ振り回したり、全力疾走したりで疲れてたんで、助かりました」ニコッ

女子学生「はい……」
女子学生「でも本当に良かったんでしょうか?他の学生をあの部屋に残したままで」

佐天「しょうがないですよ。あの人数を私たち二人で連れて行くのは無理があります。
それにあいつらの目的は学生を誘拐することですから
無抵抗の学生に危害を加えたりしませんって」

女子学生「そう、ですよね」

女子学生「……」

女子学生  ブルッ

女子学生「私、駄目です。今でも震えるくらい怖くて、不安です……。
このまま、またあの人たちに捕まったまま、ずっとここから出られないんじゃないか
もう大切なお友達や、お父様やお母様に会えないんじゃないかと
そればかり考えてしまって……。

ここから逃げられるなんて、考えることができない……!
私は、貴女みたいに強くなれません……」

佐天「……」

佐天  ギュッ

女子学生「えッ!?な、何を!?」

佐天「私の手、震えてますよね? それにすっごく冷たいのに、汗も一杯かいてる。
私だって不安で怖いし、友達や家族にもう会えないんじゃないかって思っちゃいますよ。
そんなのきっと、当たり前なんです。

私なんてレベル0だし、最近知らない人に『馬鹿』とか『落ちこぼれ』って
言われるくらいなんですよ。
でもここで怖いからって、不安だからって立ち止まってたら、なにも変わらないじゃないですか?」

女子学生「はい……」

佐天「まあ人より少しだけ危ない目にあったことがあるんで、その分冷静かも知れないですね。
それに……一人じゃない」

女子学生「え?」

佐天「私も一人だったら、あいつらを騙して逃げ出そうなんて思いつかなかったかも知れません。
でも一人じゃない、二人だから……。
貴女も一緒だったから、大丈夫だって思えるんですよ。
だから、もう少し頑張ってみましょう。ね?」ニコッ

女子学生「……」

佐天  ギュッ

女子学生「えッ!?な、何を!?」

佐天「私の手、震えてますよね? それにすっごく冷たいのに、汗も一杯かいてる。
私だって不安で怖いし、友達や家族にもう会えないんじゃないかって思っちゃいますよ。
そんなのきっと、当たり前なんです。

私なんてレベル0だし、最近知らない人に『馬鹿』とか『落ちこぼれ』って
言われるくらいなんですよ。
でもここで怖いからって、不安だからって立ち止まってたら、なにも変わらないじゃないですか?」

女子学生「はい……」

佐天「まあ人より少しだけ危ない目にあったことがあるんで、その分冷静かも知れないですね。
それに……一人じゃない」

女子学生「え?」

佐天「私も一人だったら、あいつらを騙して逃げ出そうなんて思いつかなかったかも知れません。
でも一人じゃない、二人だから……。
貴女も一緒だったから、大丈夫だって思えるんですよ。
だから、もう少し頑張ってみましょう。ね?」ニコッ

女子学生「……」

ズズ、ドンッ!

『クソッ!重過ぎんだろこれ!!何が入ってるんだ?』

『グダグダ言ってないで手を動かせよ!』

女子学生「見つかった……!」

佐天「……」ギュッ

ズズ、ドンッ!

佐天「……私が合図したら、一気にここを出ましょう。私があいつらを引き付けます」

女子学生「そんなことしたら貴女がッ!」

佐天「大丈夫ですよ。私にはこれがありますから」サッ

女子学生「そんな鉄パイプ一本で!」

『ていうかこの荷物どうすんだ?』

『その辺に適当に積んどけ。どうせ使わないんだ』

佐天「行きますよ。3、2……」

女子学生「そんなッ!!」

佐天(大丈夫。私にだってできる。
御坂さんや白井さんみたいに誰かを守ることができる!!)ギュッ

佐天「1!今です!!」バッ

ダンッ

黒衣の男B「なッ!?」

佐天「やぁーッ!!」

黒衣の男B「ひぃ!!」

ヒュッ、パシッ!

佐天「え!?」

黒衣の男C「お前だな、逃げた能力者は。手間をかけさせるなよ」

佐天「うッ……」グググッ

女子学生「あ、あ、あ……!」

佐天「早く!早く逃げて!!」

女子学生「は、はいッ!!」ダッ

黒衣の男C「そっちにもう一人逃げたぞ!」

ダダダッ  ガシッ

黒衣の男A「へへ、もう逃げられんぞ」

女子学生「は、離してください!!離して!!」ジタバタ

佐天「そんな……!」

黒衣の男C「……ふん」グイッ

佐天「アッ!?」パッ

カラン

黒衣の男C「こんな子供相手に手こずるとは。情けない」

黒衣の男B「こいつだッ!!このクソガキが、俺を殴りやがったんだ!!」ガスッ

佐天「う゛ッ!?」ドタッ

女子学生「ッ!?」バッ

黒衣の男A「お、おいッ!!」

ダダダッ

女子学生「大丈夫ですか!?」

佐天「は、はい。なんとか……」

黒衣の男C「余り手荒な真似をするな。我々の目的を達成するために彼らが必要なんだ」

黒衣の男B「しかしこいつが……!」

黒衣の男C「それでも『完全なる力』を求める『科学の子』の一員か。
来るべき未来の担い手となる自覚を持て」

黒衣の男B「ちッ……。でもなんでこいつら『結界』の中でも平気だったんだ?」

黒衣の男C「お前のミスではないのか?」

黒衣の男B「ち、違う!俺はヘマなんかしてねぇ!おい、お前何か知らないのか?」

黒衣の男A「そう言えばこっちのガキは、精神を操る超能力を持っているんじゃなかったか?
総裁が意識を乗っ取っているときに聞き出していたんだ」

黒衣の男C「なるほど。ならば精神に一定の負荷を与える
あの『結界』に耐えられたことにも得心がいく。
ではこっちの子供は?」

佐天「……」

黒衣の男A「そう言えばそいつ、魔術師じゃないかって疑われてたガキじゃないか!」

黒衣の男B「そうか!最後に入って来たこのガキか!
このガキも、『結界』に対抗できるような能力を持ってるってのか?」

黒衣の男A「いや、そんな話は聞いていないが……」

黒衣の男C「ということはこの子供、無能力者か」

黒衣の男C「落ち着け」

黒衣の男B「これが落ち着いていられるかッ!!なんつう屈辱だ!!
魔術師である俺が、高みに立っているはずの俺が……
力を持つ能力者ならまだしも、力もねぇこんなゴミみたいなメスガキに一発喰らったってのかッ!!」

黒衣の男A「ま、まあ油断していたことだし―――」

黒衣の男B「油断?笑わせるんじゃねぇ!!
こんな『役立たず』如きに、俺がやられるなんて、あっちゃならねぇんだよッ!!!」

佐天  ギュッ

佐天「……取り消せ」

黒衣の男B「んぁ!?」

佐天「私を『役立たず』だって言ったこと、取り消してッ!!!」

黒衣の男B「はぁ?『役立たず』に『役立たず』って言って何が悪い?」

佐天「私は、私は……『役立たず』なんかじゃないッ!!」

黒衣の男B「『役立たず』だろうがッ!!
知ってるぜ? この街、学園都市は『超能力』を開発するために存在してるんだろ?
じゃあこの街にいて、なんの力も持っていないお前が、『役立たず』以外の何だって言うんだ!!」

佐天「違う……!」

黒衣の男B「俺たちの世界にもいるぜ? 『役立たず』ってのは。
いくら教えても、満足に初歩的な魔術すら使いこなせないようなクズが。
そんなやつが、虫けらみたいに殺されようが、ゴミクズみたいに捨てられようが
お前たち『役立たず』が抗議する権利はどこにもねぇんだよ!!」

佐天「『虫けら』でも『ゴミクズ』でも『役立たず』でもない!!
私は、そんなのじゃないッ!!!」

女子学生「……!」

黒衣の男B「『無能力者』?なんだそれは?」

黒衣の男C「知らなかったのか?この学園都市に住まう学生の半分以上が
超能力を有していない『無能力者』と呼ばれる者たちだ」

黒衣の男A「つまりは『ハズレ』ってことか」

佐天「くッ……」

黒衣の男B  ギリッ

黒衣の男B「ふざけんなッ!!!じゃあ俺は、何の力も持ってない
こんなクズみたいな役立たずにやられたって言うのかよッ!!」

佐天「役、立たず……!」

黒衣の男B「……おい、総裁は何のためにこの街の学生を攫ったんだ?」

黒衣の男C「何を今さら。能力者を集めるためだろう」

黒衣の男B「じゃあこの『能力者』でもない
『無能力者』の『役立たず』はどうなってもいいんだよな?」

黒衣の男C「確かにな。しかしもう片方の学生には手を出すなよ。
我々の『結界』を無効化できたというその能力は貴重だ」

黒衣の男B「分かっているよ。そっちのガキには手を出さねぇ。殺るのは―――」

佐天「ぐッ……」

黒衣の男B「お前だけだ!『無能力者』!!」

佐天「私は……あんたなんかにやられたりしない。
絶対にあんたみたいな人間に、負けたりしないッ!!」

女子学生「駄目です!!相手を煽るようなことを言っては!!」

黒衣の男B「……ムカつく。イラつく。怒りで吐き気がするぜ。
生意気な口が聞けるのはここまでだ。『役立たず』のお前は、ここで大人しく」スッ

黒衣の男B  カチャ

佐天(あの女が持ってた、銀の筒!?)

黒衣の男B「『溺死』しろ」
黒衣の男B  バシャ

ベチャベチャ ゾワゾワゾワッ 

佐天「水の、手……!?」

黒衣の男B「川辺に現れる醜い老婆の伝承。こいつはそれを魔術によって再現している」

佐天(何、こいつ! 意志があるみたいに動いてる!)

黒衣の男B「その老婆は川に不用意に近づく人間を
その長い腕で水中に引きずり込んで食べちまうそうだ……。
俺に楯突いた罪は重いぜ!!」

ゾワワワッ

黒衣の男B「お前も醜い溺死体になりやがれッ!」

ビュンッ!!

佐天「くッ!!」ダダッ

黒衣の男B「ハハハッ! 逃げても無駄だ!!
この老婆の手は馬鹿な人間を簡単に逃しゃしねぇんだよッ!!」

ウネウネ  ビュ―――ンッ!!

佐天(駄目だ!逃げ切れない!!)

黒衣の男B(捉えたッ!!)

ブニョ  バシッ!

佐天「腕がッ!!」

黒衣の男B「そのまま、そのガキを殺せッ!!」

佐天(させないッ!!)スッ

佐天「守ってッ!!」

ボオオォォ―――ン!!

黒衣の男B「なんだと!? 炎で、防がれた!!」

黒衣の男A「あれは、総裁の魔術を打ち消したルーンだ!!
まだ術式が機能するだけの魔力が残っていたのか?」

黒衣の男C「成程。『結界』の中にあって正気を保っていたのも、あれのおかげということか」

女子学生「すごい……」

黒衣の男C(しかし『結界』のような低負荷の精神圧をかける魔術ならまだしも
直接攻撃の魔術まで防ぎきるとは……)

佐天「……どう?これであんたの攻撃は当たらない!!」

黒衣の男B「それがどうしたッ!!」

ゾワゾワゾワッ  ビュンッ!!

佐天「ッ!!」サッ

ボオオォォ―――ン!!

佐天  ダダダッ

パシッ!

佐天「ハァ、ハァ……」グッ

黒衣の男B「そんな鉄パイプ一本でどうしようってんだ?ナメてんのかッ!!」

佐天  ダダダッ

黒衣の男B「さっさとそいつを殺せッ!!」

ゾワワワ  ビュンッ!
佐天「うッ!!」

黒衣の男B「ちッ!!ちょこまか逃げてんじゃねぇぞ!!」

黒衣の男B(あの厄介なルーンのカードさえなければ、あんなガキすぐに殺せる。
見たところあの術式は高度なもんじゃない。
単に炎で魔術の媒介となる『水』を吹き飛ばしてるだけだ。
ならば小回りが利かない。一度に水の腕一本を吹き飛ばすのが限界だろう。

幸いここは、ガラクタがその辺に積み上がって死角も多い。
もう一対水の腕を作り、背後から攻撃すればチェックメイトだ!)ポタポタ

ゾワ、ゾワ……

佐天  ダダダッ

黒衣の男B(あと少しで、もう一つの水の腕が―――)

ウネウネ  ビュンッ!!

佐天「ッ!!」サッ

ボオオォォ―――ン!!

バラバラ……

黒衣の男B「クソッ!辺りの物を吹き飛ばして爆発させやがったッ!!
視界が―――」
佐天「やぁーッ!!!」

黒衣の男B(チッ!接近を許したか!!)

黒衣の男B「そいつの得物を奪え!!」

ウネウネッ  ビュンッ!

パシッ

黒衣の男B「馬鹿めッ!!」

佐天  パッ

黒衣の男B(鉄パイプを、捨てた!?)

佐天(負けないッ!! 私の意味を、価値を、否定なんてさせないッ!!)

佐天「私は……!」ダダッ

佐天「『役立たず』なんかじゃ、ないッ!!!」

 

ドンッ!!

黒衣の男B(積み上がった荷物に、体当たりだと!?)

グラッ

黒衣の男B「ッ!? しまっ―――」

ドスドンドンドンドン  ド―――ン!!!

パラパラッ………………

………………

……

佐天「ハァ、ハァ、これ、自動車部品? 道理で、重いわけだ」

黒衣の男B「あ゛、あぐっ……」

黒衣の男A「本当に、倒しやがった……」

黒衣の男C「……」

佐天「どう?ハァ、ハァ……次はあんたたちの番だよ」

佐天(息が上がってる。それに体がもの凄くだるい……。
後二人倒すなんてできっこない。隙を見て逃げなきゃ!!)

黒衣の男C「図に乗るなよ。『無能力者』!」サッ

黒衣の男C  カチャ

ボワッ―――!!

佐天「何これ!?霧?」

―――借り物で魔術を使いこなした気になるな、『無能力者』

佐天(どこ?どこにいるの?)キョロキョロ

―――己より尊き存在を知ろうとしない科学側の人間に、魔術の深淵は理解出来ない

佐天「どこに―――」

ガシッ

佐天「キャア!?」

黒衣の男C「終わりだ、『無能力者』」
佐天「は、離して……!!」

黒衣の男C「そのルーンの術式、『持ち主を害する』『魔術』を打ち消すものと見た。
それは裏を返せば『持ち主に危害を加えない』魔術、
もしくは持ち主を害する『非魔術』にはなんの効力も発さないということだ。
現に今お前が昏倒させた、我らが同士がお前を足蹴にしたとき
そのルーンは沈黙していた。つまり……」

佐天「ぐ、ぐ……」

黒衣の男C「お前の首を締め上げる、私の腕を外す術はないということだ」

女子学生「やめてッ!!!」

佐天(い、息が……!!)

黒衣の男C「安心しろ。お前の死は無駄ではない。
己が力を絶対のものと信じて疑わぬ『科学』
信仰の名のもとに民草をむしり取る『魔術』。
この二つの愚かなる争いを、
我らが総裁と『科学の子』が平定した新佐天(苦しい……!このままじゃ、ホントに……!!)

黒衣の男C「眠れ、『無能力者』」ギュッ

佐天(そんな、こんな所で……!)



―――『風紀委員でもない一般の学生がそんな危険な真似をするなんてよろしくありませんわ』

―――『御坂さんみたいに、あっという間に悪い奴らを蹴散らしたりなんてできなんですから』

―――『何もできない君が来たところで、状況は変わらなかった』

―――『君のやったことなんて無駄だったんだよ』



佐天(嫌だ……やだやだやだやだやだッ!!
『役立たず』だって、何の価値もないって言われたまま死ぬなんて、そんなの、嫌だッ!!!)
たな世の礎となるのだ」

佐天「だれ、か……たす、けて……!」

ボッ……

黒衣の男C「ッ!?」

ドゴォォォ――――――ン!!

黒衣の男C「ぐッ!?」

女子学生「キャア!?」

黒衣の男A「なな、何だッ!?」

ツカッ、ツカッ、ツカッ

「何と言うか、僕は自分の言葉を撤回しなくてはいけないらしい」

佐天「げほ、げほッ……」

「『この街の連中はどうかしてる』なんて言ってしまったけど
まさか同じ国の人間が、こんな無粋な真似をするなんてね」

黒衣の男C「き、貴様ッ!!」

ステイル「君。その愚かさ、死で贖っても足りないんじゃないか?」

佐天「げほッ……す、ステイル君!? 何でここに!?」

ステイル「それはこっちの台詞だ。何でこんな所で危機的状況に陥っている?
君はあれか、どこかの馬鹿みたいに、危ないものを見つけたら
ところ構わず手を出してしまう性分なのかい? というか本当に馬鹿なのか?」

佐天「ば、馬鹿って言うな!! 私は巻き込まれたの!!
なんだか知らないうちにここに連れてこられたの!!」

ステイル「はぁ……大した悪運だよ。
少しは面倒事を増やされる僕の気持ちも考えてほしいね」

佐天「べ、別に助けてなんて、頼んでないで―――」グラッ

女子学生「あッ!!」ダダダッ

女子学生「大丈夫ですか? お怪我は?」

佐天「とりあえずは、なんとか……」

黒衣の男C  ギリッ

黒衣の男C「貴様、『必要悪の教会』の魔術師か?」

ステイル「そうだ。ここにいる理由は……説明しなくても分かるだろ?」

黒衣の男C「頑迷な奴らめ。総裁の仰る真理を理解しようしないばかりか
己の権力に固執する、あまり我々に牙をむこうとは」

ステイル「君たちに言われる筋合いはないね。Fanatics(狂信者どもめ).」

黒衣の男A「お、おいッ! こいつが例の炎のルーン使いだぞ!!
早くずらかったほうが―――」

黒衣の男C「黙れ!! ここでこの者に背を向けることは
総裁の教え、並びに結社の理念に反することになる。
お前が私の目の前で逃亡するというのなら、その背を撃ち抜くのは
炎ではなく、我が冷たき水の刃となるぞ!!」

黒衣の男A「で、でもどうやって!!
こいつはいくつもの魔術結社を壊滅させてる凄腕の魔術師なんだぞ!!」

黒衣の男C「臆するな。如何にこいつが強力な魔術師だとしても
ここまで多くの同士と戦ってきたのだ。疲弊していないはずはない」

黒衣の男A「つまり、疲れている今なら俺たちにも勝機はあるってことか!」

ステイル「悪巧みは終わったか?まあ、無駄だと思うけど。
君たちにくれてやるほど安い命じゃないんでね」

黒衣の男C「減らず口を……! 貴様こそその愚かしさ、死に値する!!」
黒衣の男C  カチャ

ボワッ―――!!

佐天「さっきの霧ッ!?」

ステイル「ワンパターンだな。それしか能がないのか。
それともこの霧に紛れて逃走を図るつもりかな。
遊び半分の魔術結社は気楽でいいね」スッ

―――貴様ら『イギリス清教』の事実上トップである『必要悪の教会』の人間には分かるまい。
何の後ろ盾もなく、貴様ら『強者』の影に怯えて生きる我らの気持ちは。

ステイル「残念ながら。
君たちが『完全な力』などというものを盲信するのは、その劣等感のためか。哀れだな」

―――何とでも言えばいい。総裁と共に我らは、この世界の歪みを正すのだ!

ステイル「大した志だよ。それほどの志ならば、ここで果てても悔いはないだろう」

―――果てるのは貴様だ! 『ルーンの魔術師』!!

ゾワワッ  ギュ―――ン!!

グサッ!!

ステイル「ぐッ!?」

ステイル  バタッ!

佐天「ステイル君!?」

黒衣の男C「ハハハッ!! 我らが理想の前には敵などない!!
貴様の御霊も『科学の子』が創る新しい未来の礎となったぞ!!」

黒衣の男A「やった!! 俺たち本当に、『必要悪の教会』に勝ったんだ!!」

佐天「そんな……」

―――誰が誰に勝ったって?

黒衣の男C「何ッ!?」

ステイル  シュン……

黒衣の男C「き、消えたッ!? これは一体……!」

―――『理想』だとか『新しい未来を創る』とか嘯いたところで
君たちは所詮アマチュアなんだよ。
プロっていうのはいくつも手段を持ち、必要に応じて最適なものを選択している。
君たちのような馬鹿の一つとは違うんだ。
黒衣の男C「馬鹿なッ!? 確かに私の水の槍は、貴様の体を貫いたはず……!」

―――確かに。僕が作り出した、炎による温度変化を利用した『蜃気楼』の幻影をね。

黒衣の男C「なッ!?」

―――本当に哀れだな、君たちは。
君たちの言う『歪み』なんて、君たちの心の中にしか存在しない幻影さ。
君がさっき突き殺した『蜃気楼』のようなね。

黒衣の男C「う、五月蝿いッ!! この世は歪んでいる!!
それを正すことこそ、我らが使命だ!!」

―――それに舐めないでほしいものだ。
『必要悪の教会』が『イギリス清教』のトップだろうがなんだろうが
僕が戦う理由は、君たちに踏みにじられるほど脆弱じゃないだよ。

黒衣の男C「五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿いッ!!
我らの理想を邪魔するものは、すべて敵だッ!!!」カチャ

ベチャッ  ゾワゾワッ

―――原初の炎、その意味は光、

黒衣の男C「殺せッ!! その男を殺せッ!!!」

―――優しき温もりを守り厳しき裁きを与える剣を!

ゴオオオォォ―――!!!

佐天「霧が、吹き飛ばされた!」

黒衣の男C「なッ!?」

ステイル「その歪んだ理想と心中しろ」

ドォォォ―――ン!!

黒衣の男C「あ゛――ッ!!」

ボォォォ―――!!  メラメラ……

黒衣の男A「そんな……」

ステイル「さて」クルッ

黒衣の男A「ひぃ!?」

ステイル「残すは君だけだ」

ステイル  ツカッ、ツカッ、ツカッ

黒衣の男A「く、来るな!!」

ステイル「悪いけど見逃すつもりはないよ。君たちはそれ相応のことをしたんだ」
ツカッ、ツカッ

黒衣の男A「くそッ!! なんなんだお前ら!!
学園都市も『必要悪の教会』も俺たちの邪魔ばかりしやがって!!」

黒衣の男A「俺たちは『弱者』なんだ!!
お前たち『強者』に牙を突き立てることの何がいけない!!」

佐天「はぁ!?あんたたちが――」

ステイル  スッ

ステイル「自分たちの都合で他人を巻き込んでおいてその言い草か?
それに君たちは守られるべき『弱者』なんかじゃない。
『弱者』に手を上げた時点で、君たちは排除されるべき『悪』だ」

佐天「ステイル君……」

黒衣の男A「だ、黙れッ!! お前に何が―――」

ステイル「灰は灰、塵は塵に……」ボッ……

黒衣の男A「ッ!? ま、待ってくれ!! 命だけは―――」

ステイル「吸血殺しの、紅十字ッ!!」バッ
ボオオォォ―――  ドオオオォォォ――――――ン!!!

黒衣の男A「がぁ゛ッ!?」

黒衣の男A「あ゛、あ、あぁー……」ガクッ

佐天(すごい……! あっという間に二人とも倒しちゃった。
これが『才能のない人間が才能のある人間に対抗するために生み出した技術』なの?
だったら、私にだって……)

ステイル「さて、とりあえず厄介事は片付いたな」

佐天「ッ!?」

佐天「もしかして、『厄介事』って私のこと!?」

ステイル「それ以外に何があるっていうんだ?」

佐天「だ、か、ら!!私はただ巻き込まれてだけって言ってんじゃん!!
それに、私がこんなことに巻き込まれたのは、半分はステイル君のせいなんだからね!」

ステイル「はぁ?」

佐天「これこれ! このお守り!!このお守りのせいで、何か、魔力がどうとか
魔術師だー!! とか言われて大変だったんだよ!!」

ステイル「へー、それは災難だったね」

佐天「なんで他人事!? ちょっとは謝るとかしてくれてもいいじゃん!!」

ステイル「まあ、僕も多少軽率だったよ。
こいつらが魔術で能力者を連れ去ってるんじゃないかと考えて
効果の弱い魔術なら打ち消せる術式のルーンを、本当にお守り程度の気持ちで渡したんだけどね。
どうやら僕は、君の不運さを侮っていたようだ。その点については謝罪しよう」

佐天「……なんか納得できない」むぅー

佐天「……でもこのお守りのおかげで、助かりもしたんだけどね。
何度もあいつらの、魔術、なのかな? そんなのから守ってくれたんだ」

ステイル「何度も?おかしいな。
その術式には一度発動する程度の魔力しか込めていないはずだが……」

女子学生  ぽかーん

女子学生「あの……さっきからずっと『まじゅつ』って仰ってますけど
それって例の……」
佐天「えッ!? いや、それは……」

トゥルルル、トゥルルル

ステイル  カチャ

ステイル「どうした?」

『六階で捕まってた学生を見つけた!
魔術で意識を奪われてたみたいだが、その術式も破壊した。
ステイル、お前はどこにいるんだ?』

ステイル「同じく六階だよ。僕はこのまま上の階に向かう。
君はそこで待機していろ。今からそこに別の場所にいた学生を向かわせる」

『分かった。じゃあ俺はここで待機してるぜ。応援が必要なようなら、すぐに連絡してくれ』

ステイル「そんな時は永久に来ない。じゃあ切るぞ」カチャ

ステイル「というわけだ。この階は制圧した。他の学生が閉じ込められていた部屋は分かるな?
君たちはそこに戻れ」

佐天「今電話で話してたのって、ステイル君の仲間?」

ステイル「違う。ただ……」

佐天「ただ?」

ステイル「戦う理由が同じなだけだ」クルッ

佐天「あッ!? ちょっと待って!」

ステイル「ん?」

佐天「あの……」

ステイル「なんだ? まだ恨み言が言い足りなかったのか?」

佐天「そうじゃなくて……ううん、やっぱりなんでもない。
助けてくれて、ありがとね」

ステイル「別に。ただ仕事のついでさ」

佐天「そっか。それでも、ありがとう」ニコッ

ステイル「フンッ」

タッタッタッ……
佐天「……」

佐天「うッ……」クラッ

女子学生「だ、大丈夫ですか!?」

佐天「へ、へーきへーき! ちょっと安心して、気が抜けただけ。
それより早くさっきの部屋に戻らなくちゃねいけませんね」

女子学生「そうですね。何とか助かったみたいで、良かったです」

佐天「うん。本当に……」

佐天(私は、また……)

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