上条「まきますか?まきませんか?」(1)


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体育館に足音が響いていた。

 板張りの、広い空間だ。周囲に多少の生活音があろうとも、音が反響することに違和感はない。

 なにより、そこは元より運動するための場所である。足音はもはや必然と言えよう。

 しかしそれは誰が見てもおかしな状況であった。

 足音は、広さに反して2つでしかない。

 時刻は、もうすでに暗い時刻。

 にも関わらず、照明はひとつも点いていない。

 そして何より、破裂音や刃が空を斬る音が幾度も響いている。

 通常の使用意図とは明らかに逸脱した、異質。

 それを為したのは、当然、響く足音の主たちである。

 


「っ!」

 少女は床を強く蹴った。

 一瞬遅れて、顔の左真横を敵の一撃が上下に通り過ぎていく。

 ひゅん、という空気を切り裂く音が、耳元でパチパチと鳴る―――己の能力の余剰エネルギーによるものだ―――電気の音と混じり、切られた髪の一房が空を舞った。

「このっ!」

 罵声ギリギリの声とともに、少女の体から青白い電光がほとばしり、彼女を中心に放射状に放たれた。

 敵は大上段からの一撃を仕掛けた直後だ。通常ならば避けられるはずがない。

 しかし。

「ふっ!」

 敵は小さく息を吐き、慌てることなく己の武器を床に突き立てた。

 敵の武器は、何の冗談なのか、鋭く大きな鋏。そんなものを自在に操り、少女を攻撃し続けているのだ。

 片方の刃が床に刺さる一方、90度の角度を保持したもう片方の刃―――その先端が、撒き散らされる電流に向いた。

「っ!」

 電気的特性に従って、電撃は鋏の先端に集中し、そのままアースのように床に流し散らされる。

 一瞬にして攻撃を無力化された少女。敵が鋏を床から抜くタイムラグを追撃に使うのではなく、間合いを外すための跳躍に消費する。

 床を蹴る音が再び響き、ショートカットというにはやや長く、セミロングにはまだ短い茶色がかった髪が、相対的な風に小さく揺れた。

 助走なしで数メートルを稼げたのは、能力で筋肉への電気刺激を補正強化しているためだ。いまの彼女の身体能力は、通常の人間よりもずっと高い。

 にも関わらず、前髪から覗く彼女の瞳には、強い焦りが満ちていた。

 視線の先で、敵が鋏を構えなおした。

 子供のような―――下手すれば幼児とも見えそうな小さな身体に、それよりも大きかろうという鋏。

 高い窓から入る見事な月影に浮かんだその姿は、まるで死神の様。

 そして、

「はっ!」

 死神の踵が、タン、と床を鳴らす。

 稼いだ数メートルを一気に食いつぶし、敵の鋏が少女の眼前に迫った。

「っっっ!」

 驚きの声をあげる暇なく、少女は身を捻る。

 動きについていけず、空に取り残された制服の襟元が、突き込まれた鋏の先端に引き裂かれた。

 常盤台中学校。

 この都市に住む者ならば知らない者はいない名門校の制服が、少女の身からどっと吹き出した汗に濡れる。

 いま回避できたのはただの偶然に過ぎない。本当なら、いまので終わっていたはずの一撃だった。

 そして、それを為した相手はいまだ目の前だ。

 

「わあああっ!」

 生存本能が叫びを生み、体を動かした。

 逃げの一手だったはずの脚が力強く踏み出され、振り上げた両手に電撃が集約する。

 力を周囲に放つのではなく一点に集中させたその掌を、少女はオッドアイの死神にたたき付けた。

「!」

 追撃の予備動作に入っていた敵は、予想外の反撃に目を見開いた。

 辛うじて持ち上げた鋏で少女の両手を受け止める。だが先ほど利用した電気的特性が、今度は牙を剥いて己に襲い掛かった。

 鋏を通し、苛烈な電撃が体を貫いていく!

「ああああああっ!」

 大きく空間が弾け、バン! とオッドアイの小さな体が吹き飛ばされた。

 体勢制御もままならないず、板張りの床にたたき付けられ、ゴロゴロと転がる。

 手から離れた鋏が僅かに遅れて床に落下し、ガチャリと金属的な音をたてた。

 

 

「はあっ、はあっ、はあっ」

 少女は己の攻撃の結果に半ば信じられない表情。衝動的な行動だったため、目の前のことに現実感がない。

 だが現実に相手は倒れ伏し、ぴくりとも動く様子を見せなかった。

「・・・・・・」

 大覇星祭が終了して数日。

 祭の規模が大きければ、それに応ずるように、後片付けもまた大騒ぎになるのが道理と言うもの。

 今日はその片付け最終日であり、明日からはその振替の連休だ。

 この体育館の片付けを担当していた少女はつい気が緩み、体育館の日だまりで眠ってしまっていたのだ。

 日が沈んだ気温の低下で目を覚まし、迫る門限とほっといて帰った同級生たちに恨み言を言いながら体育館を出ようとしたところに、いきなり襲い掛かってきたのが、このオッドアイだった。

 強制的に始まった戦いは、終始こちらの劣勢。この結果は、本当に偶然と偶然が重なったものだと確信できるものだった。

 だが、一瞬だけ少女の顔に浮かんだ安堵の色は、

「へー、すごいのね。この子を倒しちゃうのは流石、かな」

「!」

 不意に響いたもう一つの声によって、再び緊張に彩られた。

 薄闇に浮かぶ敵の瞳。左右で異なるオッドアイ。それに見据えられ、少女の心に今こそ本物の恐怖が巻き起こった。

 少女と同年代の高い声。

 右に転じた視線の先には、閉じた体育館の出入口ドアに背をつけた、セーラー服姿の女。

 オッドアイとともに現れ―――しかし戦闘には介入しようとしなかった者だ。

 青い月光に照らされ、後ろ手に手を組んでこちらを見つめている彼女の口元には、嘲りとしか見えない笑みが浮かんでいた。

 ぎっ、と歯を噛み締め、セーラー服に向き直る少女。あわせて、己が能力を発動。

 汗で頬に張り付いた髪が、電流にバチバチと鳴りはじめた。

「なに余裕こいてんのよ・・・次はあんたの番だからね」

「へぇ?」

 その言葉に、セーラー服がドアから背を離す。

「!」

 ゆらり、としたその動きに、少女は自分の体が強張るのを感じた。

 セーラー服の笑みが深くなる。

「ふふっ、そんなに警戒しないでほしいわ。はっきり言ってワタシじゃ勝負にもならないから。ワタシ自身は無能力だからね」

「・・・・・・」

 そんな、この都市では圧倒的な不利を意味する言葉を告げながらも、セーラー服は笑みも余裕も崩さない。

警戒をまったく緩めない少女に肩を竦めるセーラー服。次いで、顔をいまだ倒れ伏したオッドアイの方に向け、

「蒼星石、大丈夫かしら?」

 と、言った。

「・・・く・・・は、い・・・マスター・・・」

「!」

 その声に応じて僅かに身じろぎするオッドアイ。

 少女は慌ててそちらに視線を向けるが、セーラー服への警戒を緩めるわけにはいかない。

 対するセーラー服はそんな少女の様子をまったく意に介していないように、言葉を続けた。

「いいわ。少し休んでなさい。この女はワタシがなんとかするから」

「はい・・・もうしわけ、ありません・・・」

 オッドアイは言葉を返し、そのまま力つきたように再び動かなくなった。

「・・・・・・」

 少女の両目がセーラー服に向く。

 オッドアイがしばらく動けないのは間違いなさそうだ。 

 だったら、いまのうちにこいつを倒してしまえば・・・

 少女の腰が僅かに沈み、拳が握り締められた。

一足で跳び込み、拳を叩き込む。

 電撃ならば光速で相手を射抜けるが、オッドアイが使ったような方法で回避される可能性がある。

 この状況で確実に勝負をつけるには、直接攻撃の方がいい。

「・・・・・・」

 脚に微細電流を流し、筋力を強化する。

 そして、ぐっ、と力を篭めて跳び掛かろうとした―――その直前。

「そうそう」

「!」

 くるり、とまるでそれを読んでいたかのように、セーラー服が少女に向き直った。

 出鼻をくじかれ、踏み出しかけた脚がとまる。

 セーラー服はクスクスと笑いながら、

「これ、なーんだ?」

 後ろ手にしていた両手のうち、右手だけをゆっくりと少女に差し出した。

「・・・・・・」

 少女は構えをとかないまま、そこに視線を向ける。

 突き出されたその手にあるのは、

「・・・なに考えてんのよ、あんた」

 忌ま忌ましそうに、少女が言った。

 20㎝にも満たない小さな人形。

 セーラー服の手にあったのは、そんな物だった。

 陶器のような材質なのか、艶やかな表面が月の光で濡れている。

 だが少女が不愉快そうに眉をしかめているのは、セーラー服の態度でも、場違いな物を差し出されたことに対してではない。

「なにって、お人形よ? 人形遊びとか、嫌いかしら?」

 楽しそうに小首を傾げる。ほらほら、と小さく人形を振る態度がさらに堪に障った。

「ふざけんじゃないわよ! あんた、そんなもん出してなんのつもり!?」

 バチバチッ、と電撃が弾ける。

 

少女が激高した理由。

 セーラー服の持つ人形は、まるで生き写しのように少女にそっくりだったのだ。

 いま着ている制服も、髪型も、髪留めすらもまったく同じ。

 このまま大きくすれば、間違い探しにだって使えそうなほどの精巧さがある。

 この様子ではおそらく、制服の下も完全に揃えているに違いない。ちらりと見えたスカートの中身から考えても、間違いなさそうだ。

 余程に入念に観察をしなければ、とても造れそうもない精度である。

 いつから自分を観察していたのか。ずっと見られていたのか。

 そう思うと、ぞっとするどころの騒ぎではない。

 だが、怒りと怖気の混じった少女の視線を真正面から受けても、セーラー服の笑みは陰りなかった。

「ねぇ、アナタは偶像の理論って知ってる?」

 それどころか、まったく悪びれない調子でそんなことを言ってくる。

「・・・・・・」

 少女は反応しない。

 それに構わず、セーラー服は続けた。

「簡単に言うと、似た物には本物と同じ力が宿るし、その逆もあるって理論なんだけど」

 一息。

「まぁちょっとしたおまじないよね。そんなの完璧にできちゃったら、神様だって堕ちてきちゃうもの。普通はできないし、できても0.00000何%くらいの力にしかならないのよ」

「・・・・・・」

「まぁそれはそれとして・・・いまの理論とこのそっくりな人形。これでワタシの言いたいことわかってくれると嬉しいんだけど」

「・・・その人形が私で、私はあんたの手の中だって言いたいの?」

「んー、半分正解かな。前半分はね、そういう意味。これは、このお人形は、アナタ」

 つん、と人形を持つ手の親指で、精巧なその顔をつつくセーラー服。

「でもさっき言ったわよね。そんなの普通じゃできないし、できても弱っちいの。・・・だったら、普通じゃない場所でなら、どうだと思う?」

「・・・・・・」

 少女は息を吸い込み、再び腰を沈めた。

 もうこんな無駄話に付き合うつもりはない。こうしている間にも、辛うじて無力化したオッドアイの回復が近づいてしまうのだから。

 電流が筋肉に干渉し、力を蓄える。

 一撃の準備に入った少女を見ても、セーラー服は慌てない。

 

「ではここで問題です」

 変わらぬ笑みを浮かべた彼女はいったん言葉を切り、

「さっきからアナタは蒼星石とドンパチしてきましたが、なんでこの体育館には傷がついていないでしょう」

 と、言った。

「!?」

 思ってもいなかったことを告げられ、瞬間的に少女の脳裏に疑問が浮かぶ。

 視界に映る範囲では、確かに、まったく壊れた部分がない。

 戦いの最中にはそんなことを気にする余裕がなかったが、これは明らかに異常だった。

 オッドアイの鋏でも床板は割れるだろう。壁も削れるだろう。

 だが自分の電撃の威力なら、もうこの体育館は全壊していてもおかしくないのだ。

「・・・・・・」

 普通の、体育館じゃなくなっていた。

 

 そして先ほどの言葉。

『似た物には本物と同じ力が宿る』

『このお人形は、アナタ』 

『普通じゃない場所でなら』



 ・・・そんな、馬鹿なことが



 その疑惑が意識の空白を生み、跳び掛かる動作を一瞬だけ遅らせる。

 それが明暗をわけた。

「大丈夫よ。それにしたって、ほんの数%だから」

 セーラー服の少女が軽く告げ、人形を床に落とした。

 間髪を入れず、右足で踏み砕く。



 暗い体育館。

 悲鳴が上がり、続いて、人の倒れる音が響いた。

 

 

 

 

 

 


それはいつも通りのある日のことであった。
上条当麻はベランダに布団を干そうとすると、ある一通の封筒が置かれている事に気付いた。
最初は風で吹き飛ばされてきたのだろうと思ったが、封筒には”上条当麻様”と書かれており、その他には住所も差出人の情報すらも書かれてなかった。
「何だこれ?…別に自分の名前宛てなんだから開けてもいいよな…」
そんなことを思いつつ封筒を開けてみるとそこには一枚の紙が入っていた。
中身を読んでみると
「おめでとうございます上条様!!!貴方は54128人の中から厳正な抽選にて選ばれ、『幻想御手(レベルアッパー)』を獲得することができる幸運な学園都市の人です!!!
チェックをしたら、そこから外へこれを紙飛行機の形にして飛ばしてください。人口精霊ホーリエが異次元より貴方の手紙を回収に参ります。」
その手紙の最後には”まきますか まきませんか”と大きな文字で書かれていた。
「新手の詐欺か?全く、上条さんはこんな面倒な事に付き合ってる暇なんかないってのに…」
そんな独り言を呟きながらも、手紙に書いてある”幸運な学園都市の人”という文字列に思わず目を奪われてしまい、ふとした思いで”まきます”の方にチェックをして、紙飛行機の形に折り外へと投げた。
「こんな事で能力者になれたら上条さんは今頃不幸じゃないですよ…」
そんな事を思いながらも上条は心の奥底で何かを感じていた。
新たな何かを---

 

 

 

 

布団を干し終えた上条は、一度大きく伸びをして、秋の空を見上げた。

「大覇星祭も終わったし、旅行先のゴタゴタもなんとかなったし、しばらくは静かだといいんだけどな・・・」

 呟きながら、ここ数ヶ月のことを思い出す上条。

 気がついたら記憶がなくて、同居人が増えてて、魔術師の知り合いが出来てて、数日ペースで命のかかる様々極まりない騒動が気軽に巻き起こる日々。

 そんな思い出というには新しい記憶が、吹く秋風とともに上条の脳裏を通り過ぎていく。

「よく生きてるよなー、俺・・・不幸だ」

 数ヶ月前に件の同居人がひっかかっていた手摺り。そこにに手をかけた彼の口から、割と本気の感想がついてでた。

 言葉だけなら、自分の境遇を歎く一言。

 だが、彼が浮かべているのは、やや苦笑が混じっているが微笑みに属するものである。

自分の境遇を嘆き恨む者には、決して出来ない表情だった。

 それに彼は気づいているのかいないのか。

「さて、じゃあさっさと洗濯物を干しちまうかな」

 ともあれ、上条はもう一度伸びをしてから、部屋に戻る。

 まだ一日は始まったばかりで、今日のうちにやりたいことは多いのだ。

 そうして一歩、ベランダから室内に脚を踏み入れた上条を待っていたのは、



 右足の小指がちょうど当たる位置に置かれていた、大きな鞄であった。



「へ?」

 そんなところに鞄が置いてあるなど、想像していない。

 だから彼の右足は、まるで吸い寄せられるようにその鞄に向かう。

 それも綺麗に小指が当たる角度で。

 コツン、とかわいらしい音とともに、

「っっっ!」

 上条は、右足を押さえてのたうちまわることとなった

「な、なんだこれ?」

 上条はひとしきりもがいた後、涙目で鞄を見下ろした。

 痛々しく腫れが上がった指も気になるが、いまは鞄である。

 ついさっきまでこんなものはなかったはずだ。ついでに、こんな鞄を持っていた覚えもない。

「・・・じゃあ、インデックスのか?」

 自分ではない以上、可能性があるのは同居人の私物ということ。

 しかし彼の同居人である腹ペコシスターは、こんなもの持っていなかったはずだ。

 いまでこそ多少の私物は増えたものの、基本的に生活用品くらいしかないはずである。

「高そうな鞄だし、それはないか。小萌先生からもらったのかもな」

 インデックスにも、当の上条にもこういったものを購入する機会も財力もない。

 ついでにこの町の半不正規滞在者であるインデックスには、バイトして稼ぐこともできないはずである。

 可能性があるとするなら、誰かからのもらいもの、というところだろう。

「でもおかしいな。さっきまでこんなの置いてなかったはずだけど・・・」

 不思議そうに首を傾げる上条。

件のインデックスは、朝早くから小萌の家に出掛けている。

 なんでも買い過ぎて賞味期限ギリギリの食材を一気に片付けるためにインデックスの力を借りたいとのことだった。

 そういう話に食欲最優先の彼女が動かないわけがなく、今日は泊まり込みで食べてくるらしい。

 いままで何度か泊まりに行っているが、そのたびに手ブラなのを気にして小萌が用意してくれた可能性は十分にあった。

 おそらくお泊まりグッズを詰めて、しかし普段の習慣どおりに手ブラで出掛けたのだ。

 ただでさえインデックスである。食事が用意されている状況下なら、その辺りが抜け落ちても不思議はない。

「せっかく用意してくれたのに忘れていってどうするんだよインデックス・・・」

 と、上条は呟いた。

 彼の中で納得のいく理由が思い付いたせいで、もう鞄が誰の物かということはほぼ決定状態になってしまっている。

 床の上に置いてあることも、何らかの勘違いで気がつかなかったのかもしれない。

 普通はこんなものが床においてあれば100%気がつくに違いないが、ここは学園都市だ。

 誰かが外でおかしな能力を使って、その余波が出たのかもしれない。

 場合によっては、高価な鞄をもらった鞄インデックスが後ろめたくて何かしらの魔術でも使って隠していたのかもしれない。

 彼女は魔術は使えないと聞いているが、いままでも何度か戦闘でそれらしいことをしていた記憶がある。

 純然たる魔術といえなくてもそれらしいことが出来ても不思議はなかった。 それが何かの拍子に、自分の右手に触れたのだろう。

「どうするか・・・っても、届けてやるべきだろうなこれは」

 気がついた以上、それをそのまま放っておくのは性にあわなかったし、何より上条家の経済破綻をギリギリで回避していられるのは、小萌の食事会によるところが大きい。

「義理と人情を欠いては浮世は渡れないと思うのですよ上条さんは」

 呟きながら、鞄の取っ手に左手をかけた。

 かなり大きい鞄だが、力には多少自信がある。それに中に入っているのはおそらくタオル程度であろう。

「よっ、と」

 上条は一気に持ち上げようとして、

「!?」

 ズシリ、と予想外の重みが腕にかかった。

 完全に軽いものと信じていた上条だ。勢いがあまって、体勢が一気にまえのめりになる。

「お、わ、たっ」

 左手が無意識に鞄を離す。僅かに浮いていた鞄は床に落ち、代わりに重量感の消えうせた彼は、堪えるどころか一気にバランスが崩れた。

「っ」

 軽くなった彼の上半身が反射的にのけ反る。だがバランスに調整がついていかない。

「うわっ」

 それでもなんとか体勢を立て直そうとして脚を踏み出す上条。だがその足が、いましがた干そうとして床に投げていた薄手の掛け布団を踏み付けた。

 ずるり、と脚が滑り、視界が反転する。

「ふ、不幸だぁっ!」

 彼の嘆きの声が響き、その一瞬後、床に頭が激突する音がこだました。

「いてててて」

 湿布を貼って包帯でぐるぐる巻きにした右手で後頭部に保冷剤(上条家冷凍庫に入っている唯一のもの)を押し当ててながら、上条は鞄の前に腰を下ろした。

 鞄を持ち上げようとした、ただそれだけで、彼は後頭部強打と右手首捻挫という負傷をしてしまっている。

 負傷自体は悲しいことによくあることで、応急手当も慣れたものであった。

 それよりも、いまの彼はもっと重要なことがあるのだ。

「まったく、なにが入ってるんだこれ?」

 ポン、と左手で鞄を軽く叩く。

 持って行こうと思ったが、予想外に重いものだ。

 左手だけで持ち上げるのは、小萌の家までの距離を考えると、少々きつい。

 となると、残る方法は中身を見て、無用なものを出すしかまい。

 この段階に至って『持って行かない』という選択肢が出てこないところに、彼の人の良さが伺えた。

 ついでに、小萌の家に電話してインデックスに確認するという点に気がつかないあたりに、彼の単純さがわかる。

 さらに言えば、そもそも女の鞄を開けようとするな、と言う点に考えが至らないところに、彼のデリカシーの無さと鈍感ぶりが計り知れよう。

「えーと、留め金留め金っと・・・」

 などと言いながら、無事な左手で取っ手の脇にある留め金に指をかける。

 軽く動かすと、パチリ、と存外に軽い音をたてて留め金は外れた。

「鍵、かかってなくてよかった」

 かかっていたらお手上げだったに違いない。

 流石の幻想殺しも錠前を壊すことなんか出来ないし、何よりいまは包帯で皮膚が完全に隠れるほどぐるぐる巻きである。

 よかったよかった、等と呟きながら鞄を開ける。

 ギギギ、と小さな軋みとともに開き、徐々に見えてくる中身を見た上条は、

「え」

 カシッ、とその動きを止めた。

 彼が予想していた中身は、連れていったスフィンクスのためのネコ缶や、小萌の家でするためのゲームソフト(蔵上条家)が大量に、というものだった。

 だから、動きを止めるのも無理はない。

 中に入っていたのは、それこそ美術館に飾られていそうなほどの、綺麗な人形だったのだから。  驚きと、人形の持つ息を呑むほどの美しさに、数呼吸。

「な、なんだこれ。こんなの、先生んちに持って行くつもりだったのか?」

 再起動した上条は、左手を鞄の取っ手にかけたまま、眉を潜めた。

 鞄の中には、本当に人形しか入っていない。予想していたネコ缶もゲームソフトもなく、ましてやタオルも着替えもなかった。

 そもそも身を丸めるようにして入っている人形だけで、鞄はいっぱいいっぱいである。これ以上何を入れるスペースはない。

 とはいえ、鞄そのものの装飾や大きさ、そして人形の『収まり具合』から考えて、明らかにこの人形専用の鞄に思えた。

「西洋人形・・・ってやつだよなこれ」

 鞄を完全に開けてしまい、つんつんと左人差し指で人形の頬をつつく。

 陶器のような硬い、しかし人の肌に吸い付くような不思議な質感を指先に感じた。

「小萌先生がこんなのをインデックスに? いやでも、だったらこれ持って行く意味わからねぇし」

 顔を上げ、腕を組む上条。

「だったらやっぱりインデックスの私物か・・・あいつ、いつのまにこんなもの」

 正直、インデックスの趣味とは思えなかったが、こうなるとそれ以外の線が考えられない。

 『記憶のあった上条』の私物という線もあったが、それはとりあえず否定することにした。

 いやその趣味そのものをどうこう言うつもりはないし、偏見もない。

 ただ、以前に失った記憶を補完しようと、自分のアルバム等を探したときには、こんな鞄は見当たらなかったというだけである。

 それに、インデックス自身はあまり快く思っていないようだが、彼女にも一応故郷があり、その知り合いがいる。あの炎の魔術師や破れジーンズの魔術師が持って来ることだってないとは言えないのだ。

「明日、帰ってきたら聞いてみるかな」

 いま、それを確認する方法はなさそうである。

 上条はため息をつき、ふと、鞄の中で眠るような人形に目をやった。

「・・・でも、インデックスはこういう色が好きなのか。あいつシスター服だから、白以外のイメージなかったけど」

 そしてもう一度、つん、と人形の頬をつつく。

「こんな赤色の人形を持ってるとはねぇ」

 彼の言葉どおり、人形は全身で赤を纏っていた。

 洋服は言うに及ばず、ヘッドドレス、襟元の薔薇、履いている黒色の靴すらも光の加減によっては赤みを帯びて見える。

 異なる色と言えば、髪の金と肌の白くらいだろう。

「赤と白と金色でめでたしめでたしってところですか」

 極めて日本人的発想を口にする上条。

 いまだ日本の文化に馴染みの薄いインデックスにそれはないにしても、上条的には白い少女が赤い人形を抱いている情景は妙に縁起がよいように思えたのだった。

 

「あ、そういや大丈夫かな」

 覗き込むようにして人形を見ていた彼の顔に、若干の緊張が浮かぶ。

 彼が危惧しているのは、さきほどの開けようとして転ぶ事件を思い出したからだ。

 この鞄、転ぶ直前に手を離した拍子に、けっこうな勢いで床に落ちたような気がする。

「まずい、どっか壊れてたら・・・」

 これがそう安いものではないことはアンティークや芸術に疎い上条にも容易に想像できた。

 たとえ安価なものであったとはいえ、インデックスのお気に入りには違いない。

 ほとんど食べ物以外をねだらない彼女にして、その何倍もしそうな装飾の一品である。 それに傷をつけてしまえば、彼女はどう思うだろう。

 頭を噛まれるくらいならいいが、もし泣かれたりしたら切腹→火葬ものだ。

 いや、上条が自主的にしなくても、たぶん二人の魔術師が強制して来るに違いない。

 それに上条としても、そんな心が痛い事象は避けたかった。

「ちょ、ちょっとだけ確認を」

 頬に汗でも伝っているような感覚で、上条は人形に手を伸ばした。

 もし傷がついていても修理できるものではない。それでもこういうことは、気になりだしたら確認するまで止まれないのだ。

 傷がついていなければよし。

 もし傷がついてたら・・・土下座と高級料理フルコースで手を打ってもらいたい。

 そんなことを考え、左手を人形の脇の下に入れる。

「わっ、と」

 そのまま持ち上げようとするが、これが大きい。一抱え、というか、下手すれば幼児ほどもありそうだ。

 反射的に右手も添えようとして―――

「って、大丈夫かこれ触って俺」

 その右手をとめた。

 いまのところどこからどうみてもただの人形だが、これはインデックス関係のもの。

 魔術的な要素があれば、右手で触れるのは危ないかもしれなかった。

 

 

 

「・・・・・・」

 じっと包帯の巻かれた右手を見る。

 とはいえ、人形を調べるには片手じゃ厳しそうである。

 無理に持ち上げて床に直接落としたら、傷物まちがいなし。鞄ごとならばまだ言い訳もたつが、予測した上でそんなことになろうものなら目も当てられない。

「・・・ま、包帯でびっしりだし、大丈夫だよな」

 幻想殺しの効果は右手首から先で、直接触れたもの、という限定的なものだ。

 完全に包帯で覆われた今の状態なら問題あるまい。

「よっと・・・って、でかいし、重いなこれ」

 両手で『たかいたかい』でもするようにして持ち上げる。

 ずしりと両腕にかかる重量感。身長に対応するように、その重みも人間の幼児並だ。

「しっかし、すごいなこれ。芸術は爆発というわけですかそうですか」

 その顔を覗き込み、精巧さに思わずため息が漏れた。

 人のような大きさ、人のような重み、人と見間違いそうな精巧な顔形。

 そしてなにより、

「なんか色々な柔らかくて上条さんは大変ですよまったく」

 指は、意外な柔らかさを上条に伝えてきていた。

 なるほど、さきほど頬を突いたときの硬さや質感は、こうしてみると意外なほど人に近いものを思える。

 人そのものよりもやや硬いが、その差が逆に『人を模そうとした』ことを感じさせることとなっていた。

「ま、まぁ傷もなさそうだし、そろそろ戻すかな」

 と、妙に早口で人形を下ろそうとする。

 そんな彼の鼻先を、金色の髪が掠める。

 ふわり、と甘い香りが鼻腔をくすぐった。

「・・・・・・」

(って、いまなに考えてた俺そんな俺はその趣味はないないいやだってそんな土御門じゃあるまいし人形様にだってうわらばあばばばばば)

 ブンブンと頭を振る。

 いま顔が熱いのは気のせいだ、気のせい。そうじゃないと困る。

 思わず視線を逸らした上条。

 そんな彼の目が、ひとつの金属片が捉えた。

 ぱっと見て、ハート型のようにも見えるそれは、

「ゼンマイか、これ?」

 内心の動揺を自らごまかすように呟きつつ、ゼンマイを右手で取り上げる。

 包帯越しに金属の感触をかえしてくるソレは、正しくなんの変哲もないゼンマイだった。

「・・・・・・」

 視線を落とせば、自分にもたれかからせるようにして、膝の上で抱えた人形の、その背中が見えた。

 そこに、差し込み口のようなものがある。

「駆動式? カラクリ人形?」

 差し込み口とゼンマイの先端は同じ形だ。間違いなくそこに挿すものだろう。

「・・・・・・」

 いくら不幸に塗れても、いくらこの学園都市の学生として見ても異常な事態に遭遇していると言っても、上条は男の子である。

 こう言ったカラクリと言うたわいもない『おもちゃ』には心躍らされるものがある。

(ちょっとくらいなら、大丈夫、だよな)

 好奇心が動き出す。

 これだけ精巧な人形だ。駆動するとなれば、どこまで綺麗に動くのか見てみたい。

 それにもし動かしてみて、異常がなければ内部機構にも問題がないという証明にもなるのだ。

(そう、これは確認、確認なんですよインデックスさん)

 持ち主に無断で動かすという罪悪感を義務感という名目でごまかしながら、上条は手にしたゼンマイを、背中の穴に挿しこんだ。

 

 

 

 

 

その瞬間だった。

 

 

キリキリキリ・・・と軋むような音をたてて、ゼンマイがひとりでに動きはじめた。

「え・・・」

 上条の口から驚きの声が漏れる。

 反射的に右手を放すが、ひとりでにまかれていくゼンマイは止まらない。

 そして、呆然とする彼の目の前で、

「・・・・・・」

 ふわりっ、とさきほど鼻先を掠めた人形の髪のような軽やかさを持って、当の人形が空中に浮かび上がる。

「ちょっ、えっ、や、やっぱり魔術的なあれですか!?」

 無意識のうちに右手を胸元に引き寄せながら、左手で床を掻いて後ろにさがる上条。

 普通の人間なら、いや、この学園都市にひしめく能力者たちでも驚くような光景に、それでも素早く反応できるのは、いままでの経験ゆえか。

 驚きと、若干の警戒を宿した彼の視線の先で、人形が鞄の上、その空中に直立する。

 そのまま、まるで風になびくように、人形は鞄の上から床に水平移動。

 上条はそれを見守ることしかできない。

 そして、その彼の眼前で、

「・・・・・・」

 伏せられていた人形の目がゆっくりと開き、その切れ長の目が、すい、と上条に向いた。

「な・・・」

 上条が声を漏らしたのは、人形がこちらを向いたことにではなかった。

 人形の瞳。

 そこに篭められた、明確な敵意に対してである。

「・・・・・・」

 トン、と人形の靴が床に着地する。しかし上条に向いた視線の色は、種類を変えないままだ。

 赤い人形の左手が、ゆっくりと持ち上がる。

「くっ」

 右コブシを握る上条。手首が痛むが、この際そんなこと言っていられない。

 人形の視線―――その敵意は強くなる一方。

 そして、人形が一歩、脚を踏み出した。

 上条の、方に。

「お、お前っ・・・!」

 上条が言葉を投げかける。

「・・・・・・」

 だが人形は反応を見せないまま、ツカツカと歩をすすめてくる。

 人の脚で数歩の距離。やや小さい人形では、もう少しかかる。

 人形の手は持ち上げられているだけでいまのところなにも異常な様子はない。

 だが油断はできない。

 相手は魔術の結晶に違いないのだ。上条の右手同様、触れた瞬間にだけ効果を発するのかもしれなかった。

 

「!?」

(まずいっ、右手・・・!)

 上条が息を呑んだ。

 頼みの幻想殺しは、いまは包帯で完全に拘束されている。これではなんの意味もない。

 慌てて左手で包帯を毟ろうとするが、

「・・・・・・」

「!」

 もうその時には、人形は上条の目の前に立っていた。

(やべっ!)

 さらに後ろに飛びすさろうとする。 が、それよりも一瞬だけ早く。

「なんて起こし方をするの」

 ぶん、と上条の右頬に、彼から見て右斜め上から小さな手が振り下ろされた。

「うべっ!?」

 室内に、本日二回目のよい音が響く。

 こうして、上条の一日は、いつものように悲鳴と不幸から始まって行ったのだった。

 

 

 


「まったく、いきなりレディを床に落とすなんて、いつになっても男というのは野蛮なものなのだわ」

「まことに申し訳ありませんでした・・・」

「その上、無遠慮に頬と言わず鼻と言わず突付いてくるし・・・いまの世界の挨拶は、顔をつつくことから始めるのかしら?」

「滅相もございません、すべてわたくしの不徳の致すところであります」

 腰に手を当て、いかにも立腹してますという風情で見下ろしてくる人形に対し、上条がとった対応は男らしい土下座であった。

 もっとも、小さな女の子に少年とは言え大人に近い男がそうしている情景には、男らしさの欠片もないのだが。

 あの平手一閃から5分後の、上条家の情景である。

「・・・あなた、名前は?」

「不肖、わたくし上条当麻と申します」

「じゃあ当麻」

「なんでございましょうか」

「あなたの土下座はとても綺麗で見事なのだけれど、もう許してあげるから頭を上げて頂戴。そのままじゃ話しにくいわ」

「わ、わかりました」

「それと、敬語もいらないのだわ。あなたの普通がその敬語なら、別だけど」

「・・・わかった」

 なんとかお許しをもらって、顔をあげる。

つい先ほど彼の左頬を張り飛ばした西洋人形は、まるでそこが定位置であるかのように、上条家のソファーに腰掛けていた。

 ソファーに座っているのに腰に手を当てるという行動は妙に見えるが、本人(?)は気にした風はない。

 インデックスが怒ると噛み付いてくるのと同様、この人形はそういう癖でもあるのかもしれなかった。

 やっぱりペットと同じで魔術人形も持ち主の影響を受けるのか、などと考える上条であったが、それはともかく。

 人形がしゃべるという状況に、彼はそれほど違和感を感じていなかった。

 そのくらいの大騒ぎは何度も経験済みだ。

 ついでに言えば、これくらい小さい相手にお小言を言われるのも小萌相手で慣れている。

 それよりも、上条の心配事は別にあった。

「でも、本当に大丈夫なのか、背中とか、腕とか・・・」

 言いながら、心配そうな目を向ける上条。

 あの見事な張り手は、彼の頬に若干のダメージを与えたが、それ以上のことはなかった。

 むしろ彼にして土下座という方法をとる原因になったのは、床に落とした拍子に背中を痛めただの、散々体を弄繰り回されただの、レディに対して重いと言うのはデリカシーなさすぎとか、そっちの方の文言である。

 チクチクと心をえぐるようなその言葉の嵐に思わず土下座するしかなかったが、しかし上条には、それらがすべて悪意から来る言葉のようには感じなかった。

 怒っていたのも本当だっただろうが、それよりもむしろ、インデックスや、超電磁砲との掛け合いのような感覚だったのである。

 だからどうしても、その負傷が気になってしまう。

「・・・・・・」

 人形は彼の言葉に軽く驚きの表情を浮かべ、ついで、ゆっくりと微笑んだ。まるで、何かを思い出したかのように。

「問題ないのだわ。あの程度で壊れてしまうほど、私は脆弱ではないもの」

「そうか、ならよかったよ」

 上条は、ほっと胸を撫で下ろした。

 自分のせいで修復不可能な傷を与えたとあっては、持ち主だろうインデックスにも、人形である彼女(?)自身にも申し訳がたたない。

「・・・変わった人間なのだわ」

「? なにがだよ」

「私と初対面で、こんな風に普通に話をした人はいなかったのよ。みんな驚いて、何かの仕掛けか、と疑ってきていたのに」

「・・・あー、それは、まぁ、慣れっつーか環境っつーか」

「慣れ? 環境?」

「ああ、それも説明しなくちゃな。インデックスより、あんたの方がしっかりしてそうだし」

「?」

「でもその前に、ひとつだけいいか?」

「なにかしら」

「その、あんたのことはなんて呼べばいいんだ? 人形とか、お前ってわけにもいかないだろうし」

「・・・・・・」

 人形は再度、驚きの表情を浮かべる。

「?」

「ふふっ」

 こちらの表情の意味がわからなかったのだろう。

 不思議そうな顔をしている上条に、思わず笑みが漏れた。

(人形に名前があるのが当然と思っていて、それが普通な人間なのね。・・・ジュンですら、最初はそんなこと思ってもいなかったはずなのに)

「どうしたんだよ? 俺、何か変なこと、言ったか?」

「いいえ、ごめんなさい。そういえば自己紹介もまだだったのだわね」

 そう言って、赤い人形は両の足で立ち、上条を正面から見つめた。

「私の名前は真紅」

「ローゼンが創りし薔薇乙女の、第5ドール」

 そして人形―――真紅は、口元にやわらかい笑みを浮かべた。

「当麻。貴方の、お人形よ」

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