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バチバチバチズガーン!
上条「ひぃぃぃぃぃ!」
第七学区のとある公園で、一人の不幸な少年が命がけの鬼ごっこ…もとい、決闘が行われていた。
美琴「待ちなさい!」ビリビリ!
紫電をその身にまとった少女が雷撃を飛ばしながら吼える。
上条「待ったら黒コゲになっちまうでせう!?」バシュッ!
美琴「うるさい!アタシが『待て』って言ったら待つのが常識なのよ!」バチバチバチ
理不尽なことを言いつつ少女は両手に電気を溜める。
上条「そんな常識初耳なんですが!?」
上条(あの量はヤバイ!デカいのが来る!)
美琴「オラァァァァァァァァァ!!」バリバリバリバリバリ!!
少女は両掌を突き出し、まるで光り輝く龍のような巨大な雷の槍を放った。
上条「くそっ!ガッ●ュかお前は!」
避けきれないと判断した少年は振り返り、右手で龍をぶち殺す。
上条「ウオォォォォォォォォ!!!」バシュッ‼
雄叫びと共に、最先端の科学が生み出したバオウザ●ルガは消し飛んだ。
この後少年は自慢の逃げ足を使って少女から逃げる。
それがいつも通りの流れ。 ブロロロ‥‥!
そう、いつも通りの ブロロロロロロロ!‼
ドガシッシャァァァァァァァァァァァァァン!!!
美琴「えっ……?」
何が起こったか分からなかった。
学園都市第3位の頭脳でも。
ここは公園のど真ん中。
なのにどうしてだろう?
どうして
美琴「イヤァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
どうして
トラックが突っ込んでくるんだろう
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土御門「ハッハッ!フグッ…ゲエホッゲホッ!」
事故原因は飲酒による居眠り運転だった。
青髪「ヒィーッ…!ヒィーッ…!」
柵をぶち破って公園に侵入してきた4tトラックが時速80kmでたまたま少年に突っ込んだ、という不幸な少年ならではの…
土御門「ゲホッゲホッ!ゲエホッ!!」
青髪「アカン…!息が…!息が…でけへん!」
上条「そんなに笑うなよ…」
不幸な少年ならではの大ワザであった。
土御門「で?かみやんはどこで轢かれたんだったかにゃー?」
上条「…公園」
青髪「ぶひゃひゃひゃひゃ!ありえへん!どうやったら公園の真ん中でトラックに轢かれんねん!」
上条「そんなもん俺が知りてぇよ!」
あの事故の後、上条当麻はいつもの病院に搬送された。
全身打撲に左脚と左腕の骨折。
とても4tトラックに撥ねられたとは思えないほど軽い怪我だった。
コンコン.ガラッ
冥土帰し「気分はどうかね?」
上条「ハハッ。最高ですよ」
入って来たカエル顏の名医に力無く笑う。
何度目だろう。この人の世話になるのは。
冥土帰し「それは良かったね?ところで…」
上条「…また入院ですか?」
冥土帰し「察しがいいね?」
上条「慣れてますから」
冥土帰し「左脚のヒビはまだしも、左腕は複雑骨折だからね?」
冥土帰し「リハビリも含めて最低でも一ヶ月はかかるね?」
上条「ってことは…」
土御門「留年が濃厚になってきたにゃー」
青髪「とりあえず委員長にメールしとくわ~」
上条「不幸だ…」
口グセを吐き、ガクリと脱力する。
留年の二文字が重みと現実味を増して肩にのしかかってきた。
冥土帰し「そうだ。それより…」
名医はドアに向かって「入っておいで」と手招きする。
すると、
美琴「うぅ…」
目を真っ赤にした、今回の事故の元凶が扉に隠れてこちらを見ていた。
美琴「うぅぅ…うぅ…」
上条「入ってこいよ御坂」
美琴「…」コクン
少年の出来るだけにこやかに繕う態度に反し、少女は申し訳なさそうに、目を潤ませて部屋に入ってくる。
その様子はまるで子犬のようだった。
上条「座れよ」
美琴「うん…」
言われた通りにベッドのそばの、少年の左側のイスに座る。
美琴「う、うぅぅぅぅ~」ウルウル
座って安堵したのか、今までかろうじて感情を抑えていた少女の脆いダムは、音を立てて決壊した。
美琴「うわぁぁぁぁん!ごめんねぇ、ごめんねぇぇぇ!」ガバッ
上条「うおっ!御坂、ちょっと離れいだだだだだだ!」
粉砕骨折した左腕を、少女の未発達な胸がギリギリと押しつぶす。
本来ならば柔らかい感触が左腕を包み込むヘヴン状態な訳だが、さすがは不幸体質。
上条(ちくしょう!Fuckinギプスちくしょう!)
堅牢なギプスによって、ヘヴンが痛覚だけが刺激される地獄にかわる。
が、そんな事本人以外に伝わるはずも無く、
土御門「邪魔したにゃー。もげろ」
青髪「お幸せに~。爆ぜろ」
心無い言葉を吐き捨てて出て行く友人達。
うるせぇ一回かわれ。
冥土帰し「じゃあ僕はこれで。安静にね?」スタスタ ガラッ
上条「はい。…毎度毎度すみません」
冥土帰し「いいんだよ。慣れてるからね?」パタン
さすがの彼でも居づらいのか、足早に、振り返らずに出て行った。
美琴「ううっ…グスッ…」
病室には必然的に、困惑した被害者と首に手を回しすすり泣く加害者(間接的だが)が残ることとなった。
白くて殺風景な個室に、少女の嗚咽が響いている。
上条「…」
少女の栗毛の甘い香りが暴力的に鼻腔をくすぐり、頬をサラサラと撫でる。
密着している上半身にはほど良い重みがかかり、とても暖かい。
左の肩口は涙で変色していた。
上条「…なぁ、御坂」
美琴「ふぇ…?」
名字を呼ばれ、首に手を回したまま少し離れる。
泣き腫らし赤みを増したブラウンの瞳が少年の漆黒の瞳を真っ直ぐに射抜くが、少年は目をそらさない。
上条「あのな…」
御坂「…?///」ドキン
上条「ちょっと、言いにくいんだけどさ…」
何かを言いあぐねているような雰囲気をまとわせ、少年はうつむいた。
しばしの沈黙。
それはまるでいつしかテレビで見た、想いを伝える前の静けさとそっくりだった。
美琴「……!///」ドキドキ
ドクンと跳ねあがった心臓が早鐘を打つ。
張り裂けそうな想いが溢れ出してくる。
美琴(えっ…?もしかしてこれって…)ドキドキドキ
上条「御坂!」
美琴「ひ、ひゃい!」
少年が顔を上げ、少女は見つめられる。
吸い込まれそうな漆黒に目を奪われてしまう。
おそらく頬は上気し、とても変な顔をしているだろう。
上条「その…」
美琴「ちちちちょっと待って!私にも心の準備ってもんがあるっていうか、まだ早いっていうか、いや、もちろん嬉しいんだけどねって何言ってんだアタシは。とにかくちょっとだけ待っtt」ドキドキドキドキ
上条「そっ、そろそろ…」ガシッ
少女の左肩がつかまれる。
美琴「ッ~~~!///」ドキドキドキドキドキ
上条「離れてくれ。ちょっと暑苦しい」グッ
美琴「」
上条さんマジ上条。
左肩を押し、剥がすように遠ざける。
美琴「ア、アンタねぇ~」
ゆらりと揺れ、首に回した手を解き、演算を開始する。
が…
美琴「あれ?」
何故だ?
対象を消し炭にする悪魔の方程式は出来上がったのだが、電気が出ない。
美琴「あっ」ガッチリ
左肩が右手につかまれていることに気がついた。
あゝ麗しの君の忌々しき右手よ。
お前はいったい何なんだい?
美琴「はぁ…」ガックリ
意気消沈。攻撃する気も消え失せてしまった。
上条「お前面白いな」ケラケラ
コロコロと表情が変わる少女を見て笑う少年。
笑うなしばくぞ。
上条「あ!!」
何かを思い出したのか、目がぱっちりと開いている。
尋常ではない汗。
何か緊急事態が発生したようだ。
美琴「な、何何?どうしたの?」
突然の大声にビクッと肩を震わせ、尋ねる。
上条「…いや、いいんだ。アレを一般人に任せるワケには…」
美琴「いやいや言いなさいよ。アンタがこうなったのも元々アタシの所為なんだしさ。」
上条「いや、でも、うーん…」
唸る少年にだんだん苛立ちがつのる。
だが、加害者がとやかく言うワケにはいかない。
ここは相手から言われるまでじっと待…
美琴「あーもう!早く言いなさいよ!」
待てなかった。
上条「うぅ…わかりましたよ。言えばいいんでせう?」
「後悔するなよ」と前置きしてから話し始める。
どんなに深刻な問題なのだろうか?
この少年の抱えている問題は。
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禁書「うぅ… お腹空いたんだよ…」
時刻は完全下校時刻を過ぎ、燃えるような陽光は消え、宵闇が忍び込んできている。
禁書「こんな美少女を放ったらかしにして、とーまは何してるのかな!?」
…言っていて虚しくなってしまった。
禁書「もしかして…」
一抹の不安。それを暗闇が煽り立てる。
禁書「また女だったりして~。」
疑念を拭い去ろうと、できるだけ明るく言う。
が、胸の奥のほうにズキリと鈍い痛みが走った。
禁書「暗いよ…とーま、早く帰ってきてよぉ」グスッ
一筋の涙が頬を流れた。
禁書「うぇぇ…」ポロポロ
闇が寂しさを加速させる。
愛猫を抱きしめれば、止めど無い寂しさを止められるだろうか?
ガチャガチャ…ガチャッ!
禁書「!」
ドアの音の開く音。
それが意味するのは待ち人、上条当麻の帰宅だ。
禁書「とーま…とーまっ!」ダッ
寂寞の想いが弾け、たまらず駆け出す。
とーまのくせに私を待たせて!
その罰として、思いっきり抱きしめてやるんだよ!
禁書「とーまっ!」ダキッ!
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美琴(えーっと…)
禁書「~~~!」ギュー
聞いてない。アタシ聞いてない。
「居候のメシ作ってやってくんねーか?」
うん。了解したよ。でもね…
禁書「…?」ギュー
年頃の女の子なんて聞いてない。
街灯に照らされた銀髪がきらめいている。
まるで月輪のようだ。
美琴(とにかく電気をつけよう。うん。落ち着こう)
玄関口にあったスイッチをパチリと鳴らすと、モノクロだった世界に色がついた。
禁書「今日のとーまは何かいい匂いがするんだよ…それに、ちょっと痩せたか…も?」
顔を上げる銀髪。ああ、こいつか。
たしかイン…イン…
禁書「な…なんで短髪がここにいるのかな!?それにとーまは?とーまはどこ!?」
そうだ、インデックスだ。思い出せて良かった。
やったね美琴ちゃん!
禁書「質問に答えて欲しいかも!」
美琴「はっ!」
どうやらどこかにトリップしてしまっていたらしい。
現実逃避は良くない。
とにかくコイツには聞かなければならないことが山ほどある。
今夜は寝かさないぜベイベー。
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禁書「話しをまとめると、事故したとーまの代わりにご飯作りにきたってことかな?」
美琴「まぁ、そうなるわね。」
話してみるとこの少女、なかなか物分かりが良い。
ものの15分で説明が終わった。
『公園にトラックが突っ込んできた』という非現実的な話しも、
「とーまだからね。」
と言ってなんの疑いも無く信じた。
アイツは普段どんな日常をおくっているんだろう?
禁書「はぁ~。安心したらお腹空いちゃったかも。」
美琴「はいはい。今から作るから、ちょっと待っててね。」
母親のようなことを言って、スーパーの袋をゴソゴソとあさる。
禁書「でもさ、かんぜんげこうじこく?だっけ。守らなくても良いの?」
美琴「あ、その事だけどね、」
禁書「うん。」
美琴「アタシ、今日からここ泊まるから。」
禁書「…ごめんちょっと腹の音で聞こえなかった」
美琴「だから、アタシ今日からここに泊まるから。」
禁書「え…えぇぇぇぇーっ!!?」
美琴「何?イヤなの?」ムス
禁書「いや、そうじゃなくてね!?ちゃんと順を追ってこうなった経緯を説明してくれないと、さすがのわたしでも納得できないかも!」
美琴「ああ、それもそうよね。寮監に言われたのよ」
禁書「…りょーかん?」
美琴「あー…学生寮のボスみたいなもんよ」
禁書「ますます意味がわからないんだよ!何で学生寮ボスが他人の家に泊まることを命じるのかな!?」
美琴「うん。それはね、」
~~回想~~
-常盤台学生寮-
美琴「…というワケで完全下校時刻外の帰寮を許可していただきたいのですが…」ビクビク
事故のことをありのままに話す。
眼前には額に青筋を浮かべたBOSSがメガネを光らせていた。
寮監「御坂ァ…」
あゝ、私の御霊ここで果てるのでせうか。
覚悟を決め、「サヨナラ」とつぶやく。
寮監「その話、本当か?」
美琴「は、はい!ホントです!」
ウソなんてついていないのに、背中をイヤな汗がつたう。
その様子を怪訝そうに見つめるBOSS。
オワカレも時間の問題かもしれない。
寮監「…わかった」
そうら予想通りダメだっ…え?
寮監「お前の目を見る限りでは、やましいことはなさそうだな。」
美琴「え…?じ、じゃあ、許可してくださるんですか!?」
その言葉にギラリと光るメガネ。
寮監「だぁれが許可すると言ったぁ?」
畏怖。思わず「ヒイッ」と言ってしまった。
寮監「まぁ、今日は許可しよう。」
美琴「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!寮監!」
寮監「ただし、一つ条件がある」
人差し指を垂直に立て、少女を睨みつける。
美琴「…条件、ですか?」
寮監「そうだ。もしもその居候が男だった場合、その少年が完治するまで毎日時間外帰寮の許可をとってもらう。」
寮監「そして、女だった場合は…」
美琴「…ゴクリ」
寮監「その少年が完治するまで、そこに泊まり込みだ」
美琴「………ちょっと何言ってるかわかんない」
寮監「だから、少年が完治するまでそこに住めと言ったんだ」
美琴「いやいやいやいやジョークはもっとほがらかに言ってこそのジョークですよ?だいたい、学校はどうするんですか?」
寮監「張り倒すぞ?その寮も第七学区にあるんだろう?だったら登下校も問題ないじゃないか。」
寮監「その少年が食事の世話を頼むということは、一人で料理ができないってことだ。この時点で居候はおさな子の可能性が高い。」
寮監「それに、いきなり女の子一人になるのは何かと不安だろうが、お前のような強いヤツがいれば、その子も安心だろう?」
たしかに、スジは通っている。
だが少し納得できない。
美琴「ですが…」
寮監「わかったらウダウダ言わずに、さっさと支度して行く!」
美琴「は、はい!」
一喝されてしまった…
でも、いくらアイツでも女の子と同居なんてしてないよね?
ここは寮監の言う通り、一応泊まり支度をして、さっさと帰ってこよう。
~~回想終了~~
美琴「…というワケなのよ」
禁書「なんか…女でゴメンね?」
美琴「いいのよ。泊り支度がムダにならずに済んだわ。ハハハッ。…ハァ」
まさか本当に女の子とは。
さっと作ってさっと帰る計画がパーになってしまった。
禁書「えーっと…そ、それよりおなかへったなぁ!短髪の料理、食べたいなぁ!」アセアセ
雰囲気を変えようとしてくれているのか、はたまた本当に空腹か。
おそらく両方だろうが。
美琴「よし、わかった!パパッと作っちゃうからアンタ、手伝ってよ?」
禁書「お安い御用なんだよ!」
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◆キッチン
美琴「はい、これチンしといて。」
禁書「…それはわたしに対する嫌がらせなのかな?」
美琴「いや、何がよ!?電子レンジでチンするだけでしょ!?」
禁書「…」
美琴「もしかして…電子レンジ使えない?」
禁書「…」
禁書「…」ウルッ
美琴「あわわわわ、わかった!わかったからそれくらいで泣かないで!」
禁書「うん…ゴメンね…」グシッ
美琴「誰でも一つや二つはできないことがあるもんよ。ここはいいから、後で洗い物手伝ってね?」ナデナデ
禁書「うん!」
タタッと居間に駆けて行く銀髪。
一緒に布巾も持っていったので、机でも拭いてくれているのだろう。
美琴「さ、仕上げないと!」
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御坂美琴は今、人間の大いなる神秘を見ている。
お嬢様学校ではまず見られないであろう光景。
これはいったい…
美琴「どういうことだってばよ?」
禁書「ガツガツガツガツムシャムシャムシャムシャゴクゴクゴクゴク…ぷはぁ」
明日の朝ごはんにしようと取っておいた分まで平らげた銀髪。
おいおい、冗談じゃないぜ子猫ちゃn
禁書「おかわりないのかな?」
冗談じゃないぜ…。
あの時、上条当麻は言った。「後悔するなよ」と。
美琴(…こういうことか)
禁書「わたしを満足させるにはまだまだ足りないんだよ!」
なまいきだなこのやろう。
聞いてねぇよこんちくしょうめ。
美琴「予想外だったわ…。明日は多めに作るから、今日は許して?」
禁書「うーん…まぁ短髪がそう言うなら考えてあげなくもないんだよ」
回りくどいなコイツ。
美琴「それよりアンタさ、その短髪ってのやめてくれない?アタシには御坂美琴っていう名前があるんだから。」
禁書「むぅ…じゃあわたしのことも名前で呼んで欲しいかも!」
なぜかジト目で見られた。
美琴「わ、わかったわよ!……イ、インデックス?」
禁書「なぁに?美琴」ニコッ
美琴「-ッ!」ドキッ
小首をかしげ、上目遣いで笑いかける銀髪。
その無邪気なはにかみに、不覚にもときめいてしまった自分がいた。
欧ロリの上目遣いの破壊力をなめ過ぎていたかもしれない。
美琴(落ち着けアタシ!相手は女の子!黒子じゃあるまいし…)
禁書「どうしたの美琴?顔、恐いよ?」
美琴「だっ、誰の顔が恐いのよ!なんでもないわよ!」
禁書(美琴って、ちょっと面白いかも)
美琴の表情がコロコロと変わるので、いつまで見ていても飽きないインデックスであった。
美琴「で、」
禁書「ん?」
美琴「お風呂、どうすんの?」
禁書「…考えてなかったんだよ」テヘ☆
美琴「テヘ☆じゃないわよ。今から沸かす?シャワーで済ます?」
禁書「うーん…とうまはいつもシャワーだけかも。」
『とうま』と聞いてハッとする。
よくよく考えれば、私は今から上条当麻が使っている浴室を使うのか。
と、いうことは…
美琴(か、間接混浴!?ダメダメダメ、まだ早いよぅ…///)カァァ
禁書「みこと?おーいみことー?」ブンブン
顔の前で手を振るが、まったく反応しない。
それどころか顔を真っ赤にしてクネクネしているので、なんだか気色悪い。
美琴「エヘヘヘヘヘヘヘ///」クネクネ
禁書「…はぁ。じゃ、先に入ってくるんだよ。」
美琴「ちょっと待って」
禁書「ん?」
トリップから戻ってきた美琴に静止させられる。
美琴「一緒に入らないの?」
禁書「」
禁書「ななななな何をおっしゃるのかな!?もしかしてみことって…」
美琴「え!?違うわよ!アタシにそんな趣味は無いわよ!」
美琴「アイツさ、電気代とか水道代とか結構気にしてるんじゃない?あんた大食いだし。」
禁書「いや、そんなこと…」
インデックスは思い出す。
クーラーのコンセントを抜く上条当麻。
すぐにシャワーの音が止まる上条当麻。
極力ガスコンロで調理する上条当麻。
セールに命を懸ける上条当麻。etc‥
禁書「みこと…」
美琴「ん?」
禁書「何もしないって……約束してくれる…かな?」モジモジ
美琴「だぁーかーらアタシはレズじゃないって!」
------
★嫁力アピール計画
風呂に一緒に入る
↓
電気&水道代が浮く
↓
上条さん歓喜
↓
めでたくゴールイン
……我ながら完璧だと思った。思ってた。なのに…
美琴(狭っ!)
こんなにも風呂が狭いとは。
美琴(アタシの部屋の風呂より小さいってどういうこと?なにこれ?おかしくない?)
常盤台中学学生寮の各部屋に備え付けられているユニットバスは、小柄な中学生二人なら少し余裕があるくらいの広さだった。
だからこそミスを招いた。
禁書「み、みこと…これはやっぱり…///」
美琴「ち、ちょっと無理があるわね///」
一糸まとわぬ姿で浴槽に立つ二人の少女。
その距離は二人の間に赤子を置けるか置けないかくらいのほぼ密着状態だった。
美琴(ヤバイヤバイヤバイヤバイ!心臓がヤバイ!)ドキドキドキドキ
透き通る白い肌に流星のような銀髪。
少し上気した頬の赤色と瞳の碧色がとても官能的だった。
禁書「そ、そんなに見ないでほしいかも」
美琴「あ、ああゴメン!」アタフタ
サッとそっぽを向くが、鼓動はどんどん大きくなる。
美琴(だぁ~~~もう!何やってんのよアタシ!これじゃまるでホントにレズみたいじゃない!)
禁書「みこと」
美琴「はひぃ!」ビクゥッ
禁書「早くお湯出してほしいかも」
浴槽に入って早2分が経過していた。
自称ノンケの御坂美琴は、2分間もインデックスの裸に魅入っていたのだ。
美琴「わわわわかった!」キュッ
一応言っておくが、ここはハンドルを捻ると必ずお湯が出る常盤台ではない。
お湯が出るまでタイムラグがあるのだ。
だがお嬢様がそんなこと知るよしもなく…
美琴「冷たっ!」バッ!
禁書「きゃあっ!」ガッ!
ザーーーーーーーーーー
まだぬるいシャワーが浴槽に叩きつけられてBGMのようになっている。
ザーーーーーーーーーー
禁書「みこと…」
美琴「あっ…」
背中にぬるま湯を浴びながら、御坂美琴はおのれの脊髄反射を人生で初めて恨んだ。
ザーーーーーーーーーー
美琴「あ、あの、その……頭打ってない?」
禁書「あ、う、うん。だいじょうぶなんだよ。」
気の利いたことが言えない自分がイヤになる。
美琴(どうしよう……)
ザーーーーーーーーーー
今、美琴の目の前にはトロンとした目のインデックスがいる。
美琴(事故とはいえ…)
禁書「あ…う….///」カァァァァ
ザーーーーーーーーーー
美琴(押し倒しちゃった……)
今にも泣き出しそうな銀髪の美少女。
林檎のように真っ赤な童顔が、背徳の念を煽り立てる。
美琴(ッ!)ドクン
背中に当たるぬるま湯がだんだんと熱くなっていくのを感じながら、鼻先数センチのところにある顔を出し見つめる。
美琴(ああ、もしかしたらアタシ…)
少し潤んだ碧眼が、心の奥底からドス黒い感情をズルリと引きずり出してきた。
美琴(堕ちちゃったかもしれない…)
コイツを自分のモノにしたい。
余すとこなく手に入れたい。
目も耳も鼻も口も乳房も秘所も。全部。
全部全部全部全部全部全部全部全部。
全部。
そして…
美琴「インデックス…」
そして御坂美琴は…
ザーーーーーーー
禁書「みこと…」
美琴「あっ…」
ザーーーーーーー
つい先ほど知り合い、友人となった少女に押し倒されてしまった。
表情から察するに、故意ではないのだろう。
さしずめ冷たい水をかぶって驚いた勢いで押し倒してしまった、というところか。
美琴「あ、あの、その……頭打ってない?」
ほら。ワザとじゃなかった。
だって気遣ってくれたもん。
ワザとじゃないって分かってる。
分かってるけど、どうして…
禁書「あ、う、うん。だいじょうぶなんだよ。」
どうして、声が震えるんだろう。
ザーーーーーーー
浴槽の底に溜まったぬるま湯を背中に感じる。
最初の冷水がまだ残っているのか、まだ少し冷たい。
禁書(ん…?)
なぜか美琴がどかない。
それどころか私の目をジッと見ている。
禁書(なんか…恥ずかしいかも…)
少し顔が熱くなった。
ザーーーーーーー
とにかく、どいてもらわないと動けない。
ちゃんと『どいて?』って言おう。
よし、3・2・1
禁書「あ…う…///」カァァァァ
言えなかった。
なんでだろう?
そういえば、さっきも声が震えた。
どうしたんだ私は?
ザーーーーーーー
顔にはりついた栗色の髪。
シャープな顎から滴り落ちる水滴。
健康的でしなやかな肢体。
少女を取り巻く大気さえもエロチシズムを奏でている。
禁書(あれ?目が…)ウルッ
押し倒されて以来、不可思議なことがよく起こる。
今度は目が潤んできた。
ザーーーーーーー
浴槽のぬるま湯は流れ、今は体温に近い温度の湯が滞留している。
禁書(もしかしたらわたし…)
一連の不可思議な現象に対する仮定。
シスターとして、女として、認めてはいけない仮定。
美琴「インデックス…」
ギラギラとしたブラウンの瞳が、潤んだ碧眼の瞳を射抜く。
そこに優しい言葉を投げかけてくれた美琴はおらず、欲望の片鱗を見せたニンゲンがいた。
禁書(やっぱり…)
仮定は、限りなく確信に近づいた。
禁書(ちょっと期待……しちゃってるかも)
美琴がゆらりと動く。
言いようの無い緊張に押し潰されないように、ギュッと目をつぶった。
禁書「~~~~~ッ」
美琴「ほら、立って」ニコッ
視界が明るくなった。
御坂美琴が手を差し伸べている。
禁書「う、うん」
強く、強くその手を握った。
心の内を悟られないように。
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インデックスはベッドに、美琴はそのそばに布団を敷いて眠った。
風呂上がりから今まで、お互いぼーっとしていた。
本来ならば『アイツの布団だ!』って悶えたり、『アンタ、アイツと一緒に寝てるの?』とか言及すべきことが山ほどあるのに、そんな気にはなれなかった。
美琴(はぁ~~~~っ!アタシのバカ!バカバカ!)グシャグシャ
先ほどの感情が、自己嫌悪に変わった。
なんであんなことを思ったのか。
美琴(アタシ、女の子相手に……最低だ。)
初めて滲み出してきた欲望。
なんとか理性で押さえ込んだが、笑顔は歪だっただろう。
笑顔の裏には、醜悪な願望が渦巻いていたのだから。
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美琴「ん…」ゴロッ
美琴「ん…?」パチッ
薄いカーテンを突き抜けた光にまぶたを焦がされ、御坂美琴は目を覚ました。
いつもと違う風景。
いつもと違う匂い。
いつもと違う寝心地。
眠気でぐらぐらする頭をぐるぐると回転させる。
そうか、ここはアイツの家なんだ。
美琴(ねむ…)ファ~
お嬢様らしからぬ大あくびを一発。
『淑女としての自覚をうんぬん』と黒子にどやされそうだ。
美琴(黒子?)
美琴(…………あっ、学校!)
腹筋を使いガバッと起き、枕元にある携帯電話を開く。
ただいま午前7:50。
泊まり込み1日目から遅刻しそうだ。
美琴(あ~~もうっ!どうしよう!)ドタバタ
いつもならもうすでに起きている時間という事実が、焦燥感をいっそう駆り立てる。
パジャマのポケットに携帯電話をねじ込み、洗面所へ急ぐ。
美琴(えーと、まず顔を洗って歯を磨いてそれから…)
要領良く動けるように先々を考えプランを作り出す。
このプラン通りに動けばギリギリ間に合うはずだ。
が、どんなに完璧なプランを立てても不確定要素の干渉は必ず生じる。
たとえそれが天下のレベル5でも、どこぞの理事長でもだ。
ガチャッ!と乱暴にドアを開けると同時に視界に飛び込んできた浴槽が、昨日をフラッシュバックさせる。
電灯に照り映えた乳白色の肌が脳内を占拠し、プランをどこかに追いやってしまった。
美琴(落ち着け美琴!今やるべきことは何!?)
計画通りに進めなかった自分を叱咤する。
タイムロスはあったが、とりあえず顔を洗い、歯を磨いた。
美琴(今何時っ!?)
ねじ込んだ携帯電話を引きずりだし、ディスプレイに目をやる。
現在7:58(sat.)
美琴(………)
(sat.)
美琴(今日土曜日じゃん…)
おそらく脳ミソが覚醒していなかったのだろう。
曜日をど忘れしていた。
不覚だ。
美琴「はぁ~。アホらし。もっかい寝よ」
脱力し、ふらふらと布団が敷いてある部屋に戻る。
インデックスは幸せそうな顔をして眠っていた。
美琴「…」
すやすやと眠るインデックスをジッと見つめる。
が、昨日のような感情は湧いてこない。
美琴(いや、そりゃそうでしょ。女の子だもん。)
昨日はただ気分が高翌揚していただけで、深い意味は無かったんだ。
そうだ。そういうことなんだ。
美琴「ふぅ。安心したらお腹減っちゃった」
二度寝をやめ、キッチンへと駆けていく。
昨日買った食材を冷蔵庫から出し、5人前くらいの朝食を作った。
目をキラキラとさせたインデックスの嬉しそうな顔が頭に浮かぶ。
そんな自分が少しにやけているのに気がつき、
美琴(お、お腹が空いただけで、インデックスのためなんかじゃないもん)
苦しい言い訳を自分自身にした。
------
シャッシャッ
遠くで聞き覚えのある音が聞こえた。
カーテンがカーテンレールを滑る音だろう、と彼女の記憶は告げる。
ガララッ
今度はベランダの窓が開いたようだ。
その証拠に冷たいがふわりとした11月の風が頬を撫で、過ぎ去ってゆく。
禁書「ぅぅん…」ゴロッ
溢れんばかりの朝日が部屋にずかずかと侵入する。
まぶたを貫く陽光が忌々しく、逃れるように寝返りをうった。
禁書「ふふっ…」
風の冷たさと毛布の暖かさのギャップが、とても心地良い。
その心地良さに無意識下でほほえんでいる私の毛布を
美琴「なーにニヤケてんのよっ!」バサァッ!
取り払う悪魔がいた。
禁書「むぅぅ~」モゾモゾ
美琴「こらっ!丸まらないで起きなさい!」
突然の肌寒さに対処するための手段さえ奪われてしまった。
ひどいんだよ。
美琴「ほら。顔洗ってらっしゃい。」
禁書「むぅ…」
よたよたと、おぼつかない足取りで洗面所に向かい顔を洗った。
冷たい水で脳が覚醒する。
それと同時に昨日の浴槽でのことを思い出して、少し赤面した。
禁書(昨日のわたし、ちょっとヘンだったかも)
そんなことを考えていると、キッチンの方から漂ってきた味噌の良い香りが胃袋を刺激し、食欲を煽る。
その欲に従い、居間へ急いだ。
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美琴「フフン」ドヤ
目の前の席で得意気な顔をする御坂美琴。
今日の朝食の献立は白米に焼き鮭、煮豆にひじき、大量の味噌汁という上条家には不釣り合いなほど豪勢な食卓だ。
その光景にたじろぎながらも目を輝かせるインデックス。
だが、箸をつけない。遠慮しているのだろうか?
待てをくらった犬のような表情で、じっと美琴を見ている。
美琴「食べていいわよ」
表情がぱあっと明るくなる白い少女。
女目で見ても、とても愛らしい。
美琴「当たり前でしょ。アンタのために作ったんだから」
そう言い切った後、ハッとする。
インデックスのためだと認めてしまった。
美琴「ええと、違うのよ、アンタのたまっていうのはその…」
本音が出てしまったことに気恥ずかしさを感じ、顔が熱くなる。
その様子をインデックスは嬉しそうに眺めていた。
禁書「みこと、一緒に食べよ?」
つらつらと並びたてる言い訳の数々を遮って提案する。
美琴「う、うん」
まだほんのり赤い顔をうつむけながら、了承してくれた。
禁書「じゃあ、」
美琴「うん」
禁書美琴「「いただきます」」
上条家に、穏やかな時間が流れた。
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美琴「そういやアンタさ、」
鮭の骨と格闘しながら、上目で美琴を見る。
禁書「ん?なに?」
美琴「今日なんか予定あるの?無かったらお見舞いに行こうと思うんだけど…」
「お見舞い」という言葉にぴくっと反応する。
禁書「わたしも行きたいかも!」
ガバッと顔を上げ、強い眼差しをおくる。
ご飯粒まみれでとても面白い。
美琴「行きたいのは分かったけど、アンタすごい顔してるわよ」プッ
禁書「ふぇ?なにが?」
美琴「もっと落ち着いて食べなさいってことよ」ヒョイッ パクッ
そう言ってインデックスの頬に付いているご飯粒をつまみ、パクッと食べた。
禁書「ふ、ふぇぇぇっ!?///ななな何してるのかな、みことっ!?///」ガタタッ
美琴「え?何って…」
頬に付いたご飯粒を食べただけ。
そう、食べただけ。
……食べた?
美琴「あっ///」
無意識の内に、口に運んでしまっていた。
何やってんだアタシ。
これじゃあまるで…
美琴(恋人じゃない///)カァァッ
『ダーリンお弁当ついてるぅ♪』
『ハハッ、ありがとう愛してるよハニー』
といった米国風の陳腐なドラマのワンシーンが思い浮かんだ。
それが恥ずかしさをかさ増しする。
美琴「あああアンタがっ!アンタがご飯粒なんか付けてるからでしょうがっ!///」
禁書「だからって食べるのはおかしいんじゃないかなっ!?/// それにみことだってほっぺに一つ付いてるんだよ!」ヒョイッ
美琴「あっ!///」
禁書「ほらねっ!」フフーン
美琴の頬に付いていたご飯粒をつまんで見せる。
とても得意気な顔をしているインデックス。
が…
禁書(これ…) 美琴(それ…)
親指と人差し指につままれた米粒に、二人の視線が集中する。
禁書(どうしよう…) 美琴(どうすんの…)
後先なんて考えない。
二人の良いところであり、悪いところである。
二人とも必死で「この米粒をどう扱うか」を思考する。
捨てるのも忍びないが…
美琴(やっぱりこうなっちゃったか。もったいないけど捨て)
禁書「えい!」パクッ!
美琴「いやいやアンタ何で食べちゃうのよ!///」
禁書「やられっぱなしはイヤだもん!///それに女は度胸ってとうまの先生が言ってたもん!」
美琴「変なところで変な度胸使ってんじゃ無いわよ!は、恥ずかしいじゃない///」
美琴「大体ね、人間の皮膚には皮膚常在菌っていうバイキンがいっぱいいるのよ!?」
「バイキン」。
本来なら忌避するものだが…
禁書(不思議と…)
美琴「アンタはイヤじゃないの!?バイキンだよバイキン!」
禁書「イヤじゃない…かも。」
美琴「えっ…?」ヒキッ
禁書「そんなにひかないで欲しいかも!」
禁書「そりゃ床に落ちたやつとかはイヤだけど…」
禁書「ミコトノ…」
美琴「ん?」キコエナイ…
気持ちを落ち着けるため、大きく息を吸い、空気の全てを吐き出すように言い放つ。
禁書「み、みことのだったら大丈夫なんだよっ!///」
衝撃の告白をされてしまった。
一瞬頭のなかが真っ白になった。
禁書「だってわたしはみことのこと…」
美琴「いいいインデックス!///それ以上は言っちゃダ」
禁書「友達だと思ってるからっ!///」
美琴「…はい?」
トモダチ?そうか、友達か。そりゃそうか。
何舞い上がってたんだアタシ。気持ち悪い。
そうよ。友達よ。
だって…
禁書「…あれ?みこと、どうしたの?」
だって私たち…
美琴「ううん。なんでもないわ。ありがとね。インデックス。」ニコッ
禁書「えへへ…」
…女同士だもん。
美琴「ほら、くだらないことやってないで早く食べる! 冷めちゃうわよ」
禁書「そもそもの原因はみことなんだよ!」
美琴「何? もうご飯いらないの?」
禁書「だ、だれもそんなこと言ってないんだよ! 食べるもん!」ガツガツ
美琴「ふふふ。よろしい」ニコッ
再び訪れる穏やかな時間。
今のうちに気持ちの整理をしよう。
おそらく今の私は、ひどく不安定なだけだから。
私は、御坂美琴は、上条当麻のことが好きだ。
認めてしまうのは悔しいが、誰よりも好きだ。
禁書「うぐっ!? ~~~~!」ドンドン
美琴「ああもう、急いで食べるからそうなるのよ。 はい、水」
おそらくインデックスも、上条当麻のことが好きなんだろう。
ということは、私たちは恋敵、いわゆるライバルの関係だ。
禁書「ゴクゴクゴク…ぷはぁ。死ぬかと思ったんだよ」
美琴「ちょっと落ち着きなさい。なんでそんなに急いで食べるのよ」
ライバル同士が同居しているというこの奇妙な状況は、「礼儀」「詫び」という古来より日本人の生活に息づく儒教的ファクターが作り上げたものだ。
よってそれは極めて不安定で、そこに友情の介入はあれど愛の発生はない。
禁書「だって、おいしいんだもん」
美琴「え?」
禁書「みことの作ったご飯、とってもとってもおいしいんだもん」
美琴「う…」ドキッ
手料理を褒められてドキッとした。
やはりインデックスは、可愛い 。
が、先ほどの考察から導くと、性の対象として可愛いと思ったのではないのだろう。
言うなれば母性。
私はインデックスに母性を感じたのだ。
そうに違いない。
そうして私は昨日より抱き始めた気持ちに、
美琴「そう言ってもらえると嬉しいわ」ニコッ
そっと、ピリオドを打った。