上条「なんだこのカード」 > Season1 > 13


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土御門「ずいぶんと手酷くやられてるようだにゃー」

ステイル「見ているだけじゃなくて手伝ってほしいんだがね」

第12学区内にある、イギリス正教系の教会施設の地下にあったハズのシェルターが露骨に姿を現していた

地上の施設が完全に倒壊し、その瓦礫が他へ飛ばされた上、さらにシェルターそのものが地上へ引っ張られたためである

何重にも貼られた魔術的な結界や防御陣は大本の座標が動いてしまったため、さらには対ブラックホールなど全く眼中になかった為、その機能の大半は吹き飛んでしまっていた

小型のBHが直撃したのか、人が通れる程度の穴が空き、中を外から覗くことが出来た

シェルター内の物は棚をはじめとして滅茶苦茶だが、根本的な潰れていたりするなどの問題は見受けられなかった

問題と言うならば、空腹に耐えかねたのか、作業をしているステイルが構ってくれないからか、子猫と一緒にお腹がすいたと言い続ける何かはそこに居るぐらいか

とにかく、防衛設備としてのここはあまり良いと言える状態ではない

土御門「いいのか、禁書が狙われているんだろ?」

ステイル「だからこうして全力でこんなことを…」

土御門「いや、もうここから退避すべきだと思うんだがな」

ステイル「今やあの栄華を誇った学園都市の姿は無いから、それも考えたんだけどね。上条当麻はどうなったんだい?」

土御門「生きているか死んでいるかすら分からねぇよ」

当麻という声が聞こえたためか、禁書が室内から顔を出す

禁書「とうまが、どうだって?」

土御門「分からんぜよ。無事だと思いたいが、この都市の情報システム自体がダウンしきっちまってるからにゃー」

禁書「この状況じゃ、仕方ないんだよ。それでこの後どうするの?」

土御門「そのことなんだが、禁書も含めて聞いてほしい」

ステイル「なんだというんだい?」

土御門「この状況を見たら分かるように、都市は壊滅だ。情報伝達すら難しい状況だから、被害も指示も行き渡らない」

土御門「こうなってくると、あのアレイスターの動きが分からない。なんらかの動きを見せてもいいだろうが、今までにあったのは対症療法的な暗部への指示だけだ。今はそれすらないがな。そして効果も上がっていない」

ステイル「それは僕も思っていた。らしくないとね」

土御門「今までの奴の振るまいからして、ただ打つ手が無いからだってことは考えにくい。となると、この状況を打破できる方法があってもおかしくは無いハズだ」

禁書「過去にも、どうしようもない状況を打破する為に魔術が使われた例はいっぱいあるんだよ。大体は大破壊を伴うものなんだけど」

土御門「今回もそう言った方法をとるかもしれない。現状のアメリカ占領なんてのは間違いなく奴の計画には乗ってすらいな い、邪魔なものであるはずだ」

ステイル「それはどうだろうね。ここでアメリカに攻撃を仕掛けても一時的に撤退をさせるだけで長期的にはデメリットなんじゃ ないかな」

土御門「その通りだ。つまり、動きが見えない。ゆえに、その危険度は通常よりも高く感じられる訳だが」

ステイル「結局何が言いたいんだい?話が見えないんだが」

当然だ、といった表情を浮かべて一呼吸置いた

土御門「だから、こっちから奴に会って話をしに行こうと思っている」

大柄の男が眉を潜めた

ステイル「なら、今度はわざわざ君がここへ来た理由が見えないんだがね」

土御門「結標が居なくなっちまったから、奴へ会う方法が今現在無いんだ。禁書に空間転移についての話を聞くためにもここへ来た」

ステイル「あの子がかい?ちょっと待ってくれ、一体いつからだ?」

土御門「一昨日からだが」

ステイル「それって、タイミング的にかなり怪しくないかい?」

土御門「今だから言えるが、間違いなく米の何かにどうにかされたと考える方がベターだな」

ステイル「それじゃ、あの子をピンポイントに狙ったってことは、彼が居る場所も会う方法も手に入れたってことじゃないのか」

ステイルに指摘され、見落としていた事実が浮かび上がった

土御門「そうだな…。そう考えると結標は今は奴らの手にあって、更にアレイスターが狙われているということ、か」

ステイル「となると、その連中は彼に会おうとするはずだ。君が話をしたいならその時を狙うんだね」

禁書「もしかしたらとうまもそこに居るかも」

小さいからだをフルに使って自己主張している

土御門「生きていたら、あるいはそうかもしれない。よし、俺はこれから都市の米軍拠点へ行ってみる」

ステイル「そうかい。じゃあ僕らは他の隠れ家に避難しておくことにしよう」

禁書「ほんとはついて行きたいけど、待ってるんだよ。とうまに会えたら待ってるって伝えてほしいな」

少女のお願いするような視線を下から突き付けられ、頷いた

通りに人が居ないのを確認して、銃の残弾を確認。十分にある

土御門「了解だにゃー。じゃ、行ってくる。そっちも気をつけてな~」

ステイル「言われなくてもね。朗報を期待しているよ」

言葉尻が口から出たときには土御門の姿は無かった

青髪「で、何か必要な物はあるかいな?」

上条「どんな所へ連れてかれるのかもわからないのに、必要物なんか分かるかよ」

おっとすまないと言わんばかりに装備・資材庫の壁に画像を投影する

青髪「君が行くのはここだ。中に標的が居る」

どこかで見たことのあるビルが映し出された

上条「へぇ、ここ壊れてなかったんだな」

青髪「艦砲射撃だろうがハープーン、トマホークだろうが破壊できないやろうな。あのソニックブームとBHでも傷一つつかんかったし

青髪「本格的にじっくりと解析でもせん限り、具体的な壊し方なんて分からんよ。多分な」

両手をあげた。お手上げだ、とでも言いたいのだろう

上条「んなところにどうやって入るんだ?まさか人間大砲でもするわけじゃないんだろ」

青髪「はっはー。それもおもしろそうやん。残念ながら違うけどな」

そう言うと、部屋の扉から少し派手な服装の女が入ってきた

顔には表情が無く目も焦点が合ってない

首には細めの首輪がはめられており、そこから出た配線が頭部に突き刺さっている

(薬か何かでしょう。彼女の脳波が異常に落ち着いてます。というより、ほとんど反応が有りません)

上条(で、あの首輪で思いのままに操られてるわけね)

(恐らくは。殺したりするよりは効率の良い方法でしょうけど、あまり良い物とは思いたくないですね)

上条「…この人は? 」

青髪「彼女が移動手段や。とあるルートで入手してな。危うく昨日のに巻き込まれるところやったよ」

上条が表情に疑問を浮かべた。移動手段と言われてもピンと来ないのだ

瞬間、上条の青髪を見ていた角度が変わる。正面に居たはずなのに、目の前にあるのは青髪の後ろ頭だ

青髪「な?」

上条「空間移動、か」

青髪「この子の能力は便利やから、他にもいろいろ重宝させてもろてるよ」

上条(あの時、急に現れたのはこれだな)

上条「おいおい。この幻想殺しが有る限り、俺を移動させるなんて出来ないぞ」

青髪「冗談をいうなよ、上条当麻。やろうと思えば幻想殺しを完全に無効化させることができるハズだが」

(やはり、私の存在もバレているようですね。言ってはいませんでしたが、右手の幻想殺しを幻想殺しさせることで、不可能ではありません。非常に高度な演算と速度が必要な上、長くは持ちませんし、通常なら無駄な機能ですが)

上条「…でも、あの中がどうなっているのかは分からないんだろ?」

青髪「だからかみやんの出番なんやでー」

上条「…そうかい」

恐らく、様子見も兼ねての第一陣という役割なのだろう

武器庫の中から拳銃を一丁、手に取った。例のG18である

上条「これだけでいい」

青髪「ええの?簡易電磁砲付きライフルとかあるんよ?」

銃を青髪に向けて構え、下ろした

上条「十分だ。何が有るかわからない状況で長手の得物なんて邪魔になるからな」

そうかい、と言わんばかりに両肩を軽く上下させ、青髪はドア方向へ身を向けた

 

 

 

一方(ビンゴだ、アレ?)

復興がほとんど終わっている米軍拠点へ着き、堂々と検問を通って上級士官室へ赴いた

鍵が閉まっていたので、好都合とばかりに開けると、やはり誰もいない

机に設置された半固定端末を使って上条当麻で検索をかけたところ、わりとすぐに結果は出てきた

嬉々として見ると、詳しいことは書いてはおらず、ただ管轄がCIAであることと、上条がある程度これまでの事に関与していることだけが分かった

一方(三下が第2位をねェ。で、第二位からあの、人工能力者とやらができましたと)

一方(しかし、派閥争いに負けて電撃使いの技術しかもらえなかったとは軍も情けねえなァ)

一方(で、肝心のCIAの拠点はどこなんだ?)

端末を操作するが情報は無い

よほど仲が悪いのだろう。得てして、公機関というのは仲たがいを起こしやすい物である

一方(一枚岩じゃないにも程が有るぞコイツ等)

ため息をつきつつ、情報端末では不満だったので、ついでに机も何かないか探す

一番手前の鍵がかかった引き出しに部屋の主の日記と思わしきものが有った

『あの糞の掃溜め共が我々に必要な物を全部持って行きやがった。これでは何が目的でここまで進軍したのか分からん。多くの兵が死んだ。損失が大きすぎる』

『何れ帰還命令が出て、私は降格されるだろう。畜生!こうなれば奴らの重要人拉致作戦を邪魔してやろうか。奴らに放った諜報員が言うには、それが当初の目的だったらしいじゃないか』

『どんな人間か知らないが、この都市がもともと持っていた技術や先端物品生産力を勝るほどの価値は無いハズだ』

一通り読んで、軽く息を突く。本文があまりにもアレな言葉で書き綴っていたため意訳をしたのだが、読む価値はあった

一方(コイツも相当おかンむりってな。とにかくだ、この拉致作戦がCIAの目的ならそこへ上条が居る可能性も高い。この状況の都市で最重要な人間って言やァ奴しか居ねェよな)

ちょうど部屋の主が帰ってきた。流石にぶつかってしまっては気づかれてしまうので道を開け、開いたままの扉が閉まる前に脱出を図る

「あら、私電源入れっぱなしだったかしら?引き出しにも鍵を掛けていなかったし、不用心ね」

女ってのはどうしてこうずぼらな奴が多いんだと思うことで、少し前まであった日常を思い起こさせられる

逃げるようにして、部屋を出た

拠点の検問で、トラックが一台止まっていた。どうやら少しもめているらしい

一方(なんだかあの運転手、非常に知り合いの予感がするんだがなァ)

トラックの運転手?「だからこの積荷を運んでくれって頼まれただけなんだって」

検問員「だからせめて中身を見せろと言っているだろう」

トラ?「機密物資なんだ!こっちも上級のパスが無い限り見せれない」

検問員「じゃあなんでお前が通行証を持ってないんだ!」

トラ?「この状況なんだ、仕方ないだろ!」

検問員「仕方ないって、だからせめて中身を軽くでいいから見せろって!」

トラ?「あーもう分かったよ。見せてやるからちょっと待ってろ」

運転手が諦めたらしく、車を降りて後ろの扉を開く

トラ?「はいよ」

といって開けた扉から中に検問員の兵が入るように促す

必然的に後ろに居る運転手が腰に手をまわした。拳銃に手をかけているのが一方通行に見える

兵がコンテナに1m程度入ったタイミングを見計らって、運転手が銃を手にトラックのコンテナへ駆けあがろうとする。カメラに写らない死角で、いざとなったら排除するためだ

一方「なァにをしてるんだ?」

突然一方通行に話しかけられ、更に銃が動かない様に抑えられた

トラ?「ァ、一方通行?!」

当然、驚いてしまう

検問員「おい、どうかしたか?」

トラ?「いやなんでもない。気にしないでくれ」

振り向いた兵から見えない様に慌てて銃を隠した

トラ?「なんでお前がこんなところにいるんだよ」

日本語で、小声で話しかける

一方「サングラスに金髪、そンでもって場に馴染まねえ英国英語を話すトラック運転手なンざ、お前しかいないだろうからなァ」

土御門「いや、答えになって無いぞ。まぁいい。とにかくこの場をやりすg 」

言っている間に一方通行の気配が消え、代わりに兵がこちらを見ている

検問員「なにやら妖精とでも御話ししているようだが、終わったぞ。通っていい」

フェイク用にある程度は機密文書や精密機械を入れておいたが、詳しく調べなかったらしい

かなりの確率でバレると思っていた土御門は、若干気が抜けた

土御門「あ、ありがとさん」

コンテナの扉を閉め、施設内に入る

気が付いたら、助手席に一方通行が居た

土御門「幽霊かお前は。で、なんでここにお前が居るんだ?」

一方「三下を、上条当麻を探してたンだ」

土御門「お前がねぇ。こっちは結標の行方を探っててな。推理が正しければ、奴ら結標を使ってアレイスターをどうにかするつもりだ」

一方「それなら、半分正解だ。さっき調べて見たンだが、それをしそうなのは軍じゃねェ。軍とは若干対立してるCIAらしい ぞ。ついでに言うと結標をさらって引き渡したのは俺だ」

土御門「お前かよ!…理由があっての事だろうから、それ以上は聞かない。問題はそれがどう響くかだったが、調べる手間が省けた。助かるぜよ。で、CIAの場所はどこなんだ」

一方「残念だが、拠点は分からねェ。軍も察知してないみたいでなァ。だが、目的が分かってる以上、そこで張ればいいだけの話だ」

格納庫らしい所で車を止め、コンテナを切り離す。小型なので運転席のボタン操作で事足りる

土御門「了解だ。とっとと向かうとしよう」

そう言って、検問から一気にアクセルを踏み込んだ

 

 

 

青髪「さぁて、まずは邪魔者の除去から始めんとなぁ」

ビルへ着いたものの、周囲は軍によって囲まれていた

このビルへの入りかたを特に軍には知られたくないというのは、上条も雰囲気的に理解していた

青髪「あのビルが次世代型装甲の有力候補なんやってさ」

確かに、いろいろな計器が外壁に取り付けられていた

そこへ火器の集中砲火。傷一つ付かない

テント下で白衣を着ている研究者が興奮して小躍りしているのがここからでも見て取れる

人数だけならこちらがひきつれた実力行使部隊と軍の部隊は同数だ

軍にとっては部外者の、しかも裏では対立している組織の連中が来たことで、あからさまに敵意を向けてきている

雰囲気的には最悪だ

上条「除去って、まさかここで交戦でもするつもりか」

青髪「一応、味方いうことになっとるからなぁ。話を付けてくるよ」

上条に背を向けて、片手を頭まであげてふらふらさせている

現場の指揮官の元へ歩む青髪を見守る

指揮官は構えさせた銃を下ろさせた。会話を認めたようだ

ある程度和やかに会話が進んでいたが突如として指揮官が青髪の首を掴みあげた

罵声が離れたこちらまで聞こえてくる

両手をあげて青髪が帰ってきた。後ろでは銃を構えられている

「武力排除か?」という声が身内から上がった

青髪「怒らせちゃったのはこっちやし、あちらさんの研究が終わるまで待機及び警護や。…何が起こるかわからんし」

警護任務が発令され、部隊が展開する

上条「ポイント稼ぎとは、姑息だな」

青髪「こういう処で貸しを作っておくのも、組織行動には必要な事なんやで」

上条「貸し、ってことはなにか起きる確信でもあるのかよ」

青髪「さぁ、僕にはわかりません。ただ、彼らには跡でプレゼントをしてあげる予定やけどね」

(なにか当てでもあるんでしょうか?)

上条(何事が無くてもこいつらなら、何か起こさせかねないけどな)

無線連絡が入った

『不審な車両がこちらへ接近していますが、どうします』

青髪「場所は? 」

『まだここへ来ると確信できる位置ではないです。ですが、周りに他に目標となりそうなものもありません』

青髪はニヤニヤと笑い顔を浮かべて無線の声を聞いていた

青髪「見張る程度でいい。中から誰か出てきても様子見だ。報告は怠るな」

『了解』

上条「へぇ、放置とはね。どこが貸しだ」

そのままへらへらと笑いながら、青髪は上条にこたえる

青髪「心配せんでも、ちゃんと策は練ってあるよ」

 

 

 

一方「この辺で俺は降ろさせてもらう」

ベクトルによる加速補助が無くなったので、そろそろだろうと土御門も思っていたところに一方通行が口を開いた

土御門「二手に分かれる、というより目標がもともと違うからな。了解だ」

一方「下手こいて捕まっても知らねェからなァ?」

そう言って、一方通行が下車する。既に土御門の意識するところに彼の姿は無くなっていた

土御門(さて、こちらも動こう。まずは結標がどこにいるのかだがなぁ)

車を廃墟の陰に止め、土御門も下車

当のビルまでは直線距離で1、2kmといったところか

土御門(あそこまで近づかない限り始まらないからな)

背後に気配があったように感じた

陰に隠れて背後を探る、が人影は無い

土御門(気のせいか…?)

見晴らしが良いであろう大通りを極力避け、ビルの合間の細道を抜ける

理由なく嫌な予感のしない方向へ無意識に向かってしまう

必然的に、区画側部の大通りを抜ける必要が出てきた

一応、左右を確認して、見える範囲に誰もいないことを確認するが、何か気に食わない

大通りと大通りの十字路の角に面したビルが残っていたため登って周りを確認する

遠目に見える例のビル以外にも付近の区画には殆ど形を変えずに残っているビルもあった

土御門(目標に至るまでの経路は…)

違和感に気づく

建物の倒壊によって経路がかなり限定されているのだ

土御門がいる位置からすると、既に方向性は一つで、戻らない限り迂回することもできない

土御門(ある程度は自然にできたものだろうが、人為的にわざと方向性を持たせて倒壊させたような個所もある)

土御門(無論、バリケードみたいになってるコンクリの塊を乗り越えるのは不可能じゃないが、間違いなく目立つ)

土御門(侵入者を対策しているとしか思えないな。間違いなく何かやるのを考慮に入れた末の事だろう)

ビルを下りる最中に、また気配を感じた。先程と違ってはっきりしている

気のせいでは無いと感じつつも、実際に感覚以外のものでは捉えていないので、仮想敵の居場所も検討が付かない

舌打ちを響かないようにしつつ、大通りを横断し、正面のビルの区画へ足を進めた

 

 

 

白井「ここは? 」

目が覚めた少女が居る場所は、どこかは分からないが、室内であることは確かだった。声が響き明りも無いのだ

後ろ手に体を縛られて、足も動けない状態だ。だが、前のように能力が制限下にあるわけではない

白井(…不自然ですわね)

一瞬で縄を抜けて両足で立ちあがる。暗くて状況が良く分からない

とりあえず、壁に向かって歩く

前に突き出した手が冷たい壁に当る

白井(コンクリート?やはり、ここは研究室の類ではないのでしょうか)

何か居場所を特定できる物は無いかと、壁伝いに歩く

全く変わらない壁がそのままある程度続いたが、右手に何かのスイッチが触れた

白井(これは…何のスイッチでしょう?ここが研究施設でないと仮定すれば、照明のスイッチである可能性は高いはずですが)

他にやることも無いので、力を加える

カチリ、と音が鳴り部屋に電気が付く。あまり照度は高くないようだ

目の前に広がったのは、コンクリート一色の四角い部屋

出入り口らしい物は見当たらない

部屋の角に何かあった

近づいてみるとそれが、人であることが分かる

四肢がもがれて、切断面から血を流す少女

白井「おねえ、さま…?」

少女の悲鳴が部屋に響いた。目には涙が溢れるが、そんなことには気が付かないほどに彼女は混乱していた

その御坂らしいものへ抱きつき、その顔を覗き込む

薄暗く、目の辺りが良く見えないが、口元が動いたのが分かった

生きている…? そのような期待が、少女の脳をかすめる

お姉さま―と声をかけようとした瞬間、それは急に笑い出した

悲鳴ととってもおかしくないような高音と低音が混じり合った、笑い声が部屋に響く

突然の事に驚き、屈んだ体勢のまま後ろへ飛ぶ

何かがおかしい。その異常を少女が感じたとき御坂らしきものの笑いが止まり、首が転がり落ちた

その首を拾い上げる

眼球が大きく上を向き、小さくヒヒヒという声をあげている。体から切り離されているのにも関わらずだ

先ほどとは異なった涙が、彼女の目元に溜まる。思わず投げ捨てた

御坂の首が小さな悲鳴を挙げて、再びヒヒヒと小さくつぶやき続けている

白井(なんなんですの、ここは…)

混乱と悲しみが彼女の脳を駆け巡る

カチリという音が鳴った。同時に照明が消える

暗闇に生首の声が小さく木霊する。このような状況では、精神の未熟な中学生が耐えようはずもない

全力で、先程スイッチがあった所へ駆け、スイッチを入れた

今度は急激な明るさに目が付いて行かず、思わず目を閉じる

 

 

 

 

 

目の前に広がったのは、見慣れた光景。隣に御坂が座り、目の前には初春、佐天が座している

 

何度も彼女らが話をした、あのファミレスでの風景だった

となりに御坂がいたので、小さな悲鳴と共に、立ち上がって距離をとる。太腿に手を伸ばし、鉄矢がいつでも飛ばせる状態にした

佐天「なに?急に敵意丸出し?これは事件の予感ですな初春警部」

初春「誰が警部ですか。でも、どうしたんですか白井さん?顔色も良くありませんよ」

御坂「ほんとよ?どうしたの?」

おかしい。さっきまで自分はこんな状況にはいなかった。そのように理性は告げる

しかし、ショックと混乱で安楽な方へ、思考がズレていく

白井「いえ、少々ウトウトとしていただけですわ」

席に戻り、目に溜まった涙を拭きながら、答える

失ったはずの日常に回帰した彼女の思考は次の光景についていけない

涙を拭いきって平穏なハズの世界で目を開く

目の前で、二人分の骸骨が、髪が生えた骸骨が、ストローを口にし、人の頭の中身をすすっていた

目を見開いて、目の前の光景を理解しようとした

良く見るとそれは、御坂の頭部である。瞬間、体の右側に重みを感じる

恐る恐る右を向くと、頭部の無い常盤台の制服を着た胴体が、首から脈に合わせて一定のリズムで血を噴き出しながら、よりかかっていた

顔へ血がかかる。恐怖で意識が飛ぶ

白井「…ッハァ!…ハァ、ハァ」

自分にかかっていた掛け布団を飛ばし、ベッドから身を起こした

初春「あ、目を覚ましましたね。今日は一体どうしたんです?」

病室のような部屋で飛び起きた白井の側方から声がかかる

今日は、という言葉に若干の恐怖を覚えながら、目を横に流した

臓物を垂れ流しにしながら、こちらを覗き込む見慣れた3人の姿があった

 

 

 

『目標が第二区画へ移動』

 

青髪「了解。”餌”を動かす。ブレイクブレイク、回収部隊、”貢物”の準備は?」

『支障無し。現場到着まで2分』

青髪「了解、着き次第引き渡しを開始する。各員、手はず通りに頼むぞ」

青髪の取り巻きが各自各々の持ち場に移動していく

上条「慌ただしいな」

青髪「まぁね。ここからが見せ所やからな」

青髪が結標の方向を見る。女性はどこかへ消えた

この辺りの衛星写真を広げた。近日中に撮ったものらしく、今の学園都市が映し出されている

『標的が第二区画中腹で”餌”を視認した模様。動揺しているようです』

無線で標的とやらの動きを補足しているようだった

(餌という表現を使っている以上、標的を釣ろうとしているようですね)

上条(恐らく餌はさっき消えた彼女だろうな)

(となると釣られてるのはあの人の仲間か何かでしょうか。相変わらずいけ好かない策が得ですこと)

地図を見ながら無線の応対をしているところへ違う無線が入った

『貢物、到着いたしました。ゴースト、補足。反応、すぐ近くです』

青髪「よっしゃ、完璧や。引き渡しに移るで」

思い通りに物事が進み、笑みを浮かべる青髪を上条はただ見つめるだけだった

 

土御門「結標…?」

大通りを渡った先に、自分が探している女らしい姿が一瞬見えた

何かの罠かもしれない、と思いつつも注目はそこへ固定される

大通りで囲まれたビル群の区画の小道の中心へ、彼女がさっきまでいた位置へ、駆ける

土御門(アイツは…?)

辺りを見回す。今度は、隣の区画の中心にその姿がある

明らかに自分を誘導しようとしている。その意思が明確に感じとれる動きだった

土御門(ということは、俺の存在は場所まで完璧に抑えられている訳だ)

土御門(しかし、俺を誘導させて一体、何の価値が有る)

立ち止まって考えていると、顔の横を弾丸が通過した

土御門(フン。俺が思いのままに動かなかった場合はすぐに殺せる、というわけか。分かったよ)

結標がこちらを向き、手招きした

それに従い、駆けだした



一方(あれは…青髪?ありえねェ。アイツは俺が確かに)

目的のビルの付近まで何の事も無く接近した一方通行の視界に、先日共にこの都市を破壊した人物がいた

そしてその付近に立つ目的の男

一方(上条も一緒に居やがる。さて、コイツはどンな状態なンだ?)

状況を把握するために、上条と青髪の元へ

そこへコンテナを搭載したトラックが進んできた

一方(チ、冗談じゃねェぞ)

簡単に回避した。回避してすぐ、その車は止まる

座席から人が降り、後部のハッチがオートで開く

中から現れたのは、人一人が入りそうな筒状の物が付いた機械の塊だった

「これが、そっちが我々に渡せる最大のサンプルという奴かね」

軍服を着た人物が部下を従えてこちらへ寄ってきた

青髪「そうですよっと」

青髪が返答しながら、機械の操作盤らしき部分に手を伸ばし操作する

ガス圧が抜けるような音と共に横になった円柱部分が縦になり、筒状になったガードが外れ、巨大な円柱ビーカーが現れた

中はガラスで満たされており一人の遺体が入っていた

一方(打ち止めァ…!?)

頭部とそれ以下の部分が離れてはいるが、間違いなくそれは一方通行の思う少女だった

「フン。あいにく私には死姦趣味も少女嗜好も持ってはいないんだが」

明らかに失望した風な声を出しているのを無視して説明を始める

青髪「この子はこの都市で行われた能力者量産実験によって生まれた一個体にすぎない」

「ほう。それはそれは大層な物じゃないか」

青髪「量産自体ははっきり言って失敗以外の何物でもないが、同量産固体間でこの子を頂点とした特殊な意思共有方法が出来上がってね」

青髪「その方法には特殊なデバイスなどを必要とせずに、視覚をはじめとする感覚や記憶情報を共有することが出来る」

「続けてくれ」

青髪「僕らの研究機関曰く、君たちの軍が持つ電気使いの特殊能力に関する技術の範囲内で、デバイスを用いない情報共有シ ステムを作り出すことが出来るだろうとのことだ」

「そして、この少女がそのサンプルということか」

青髪「必要なら、生きている同量産品を君たちに供与してもいい。とにかく、この遺体は君たちの物だ。保存状態は見ての通 りで、脳機能は停止している。だが、解剖解体すれば、いくらでも十分なモノは取れるだろう」

青髪「こんな死体、それ以外に使い道は無いんだ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ。なんならここで脳だけを取り出してゴミな体は捨て去ってくれてもいい」

青髪「できれば死んでいない状態で渡したかったんだがね。先日のアレで拘束具が誤作動したようだ。全く迷惑な話だよ」

打ち止めの遺体が出てきて、衝撃が一方通行に走った

だが、今はそれよりも強い怒りが彼の体を満たしている

一方(テメェの都合で殺しといて、その上ゴミとぬかしやがったかコイツは。フザケルノモタイガイニシロヨ)

保存装置に打ち止めの亡骸が格納されていく

一方(これ以上打ち止めをテメェらの好き勝手にhyq[]g……!!)

彼の体がそこにいた全員に認識される

黒い翼を携え、周囲に目に見えるレベルで空気の乱流を発生させる人間が急に各陣の首脳の前に現れた

理性による能力の現出では無い、彼なりの、暴走

瞬時に一番手前にいた軍の将校が舞い上がり、地面へ叩きつけられた

暴風によって弾け飛んだ血が周囲の人員にかかる

軍が一斉に攻撃を開始した

土御門「一体、何が起こっている…」

ビルの元まで誘導された土御門の前で一方的な戦闘が起きていた

争いの中心に居るのは、何かの装置の上の一方通行

兵は電磁砲を乱射しているが届く前に軌道が捻じ曲げられ、代わりにプラズマ化した金属の塊が兵隊を襲っている

軍の兵隊は次々と薙ぎ払われているが、それとは趣を別にした兵装の部隊はやられている兵を盾にして効果的に攻撃を防いでいる

最後衛に居るのは上条・結標、そして青髪

そこへ向かって一方通行が放った羽が向かう

上条は自分の腕を用いて身を守り、青髪は結標と共に移動することで攻撃を回避した

一方通行は何かを守っているかのようにそこを離れない。遠距離攻撃を繰り返している

ついに電磁砲を乱射していた軍の部隊は全滅し、ひたすら攻撃を防いでいた部隊に本格的に攻撃が集中する

特に青髪に対しては目に見えて攻撃が苛烈になった


結標「………」

目には見えないサイズの粉塵が青髪と結標を襲う

青髪と同時に攻撃を避け続けるのは能力的に限界が有り、攻撃が苛烈になるにつれて、目に見えて一方通行の攻撃が避けきれなくなってきた

回避優先が青髪になっているのか、青髪にはほとんど怪我は無い

青髪「この子予想以上に使えんなぁ」

そう青髪が言った瞬間に、結標に羽が直撃した

その場に仰向けで倒れ、出血が拡がる。だがそれでも青髪を一方通行の攻撃から守っていた

攻撃は青髪に集中していたため、被弾はしなくなったが、出血が酷い

青髪「これまでやな」

周りの部隊員も死傷者が増えてきた

青髪がポケットから端末を取り出し、簡単な操作をする

すると、一方通行が守っていた保存装置が動きだしビーカーを守る円柱が立ち上がる

まともな意識でない一方通行はそれに気が付かない

いや、あまりにも青髪への攻撃に固執し過ぎていたのだろう

次の瞬間、円柱が打ち止めの遺体が入ったビーカーごと射出された

反応が一瞬遅れた一方通行が、それについて行く

その遅れた一瞬でかなりの距離を稼ぎ、ビルの周辺の異常は去った

土御門が倒れている結標の下へ走った

誰も止める者などいない。死屍累々という理由もあったが、既に結標の利用価値が低下したためでもあった

土御門が結標の上半身を胸に抱える

出血量的に助からないのがわかる

土御門「結標… 」

胸に抱えた結標の目と土御門の目が有った瞬間、結標の目から一筋の雫がこぼれる。そして、息が無くなった

最期を看取った土御門が青髪へ向けて銃を構える

青髪「君にはそんな役割は期待してない。所詮は一方通行のサブプラン。ただの予備さ」

青髪「だから、そんなことをしてもらっても困るんだよ」

見下した言い方に、怒りを抑えきれない

土御門「ふざけるのもいい加減にしr…!」

言葉尻は聞き取れなかった。理由はシンプル。土御門の頭に銃弾が貫通したためだ

死体となってもなお、青髪の方向を睨んでいるのは流石だが、他の敵への警戒を死んだものとして怠ったのは過ちだった

 

 

土御門の声に続いて銃声が聞こえたため、廃墟の陰で身を隠していた上条が戻る

状況を確認して、多くの兵が死に、土御門が死に、一方通行がいなくなり、結標が仰向けで動かなくなっているのを見て、口を開く

上条「一体、どこまでやれば気が済むんだ」

言うと同時に胸倉をつかむ

青髪「放しや。君は君の役割を果たせばいいんだ」

上条「へッ!あの子が死んでいる時点でそんなもの不可能だろうが!」

手を放さず、吐き捨てるように言った

青髪「考えてみ。一体、何のために結標の脳を弄ったと思う?何のために白井を拉致したと思う?」

邪悪な笑みを浮かべて上条に語りかける

上条に掴まれたまま端末を操作した

白井が結標と同じような首輪をし、同じような表情で現れた

驚きを隠せず、思わず胸倉から手を放す

青髪「もとより、計画済みに決まってるやろ」

白井の頭に右手を乗せてみるが、変化が無い

青髪「無駄や。その子の精神は魔術でも能力でもない方法で既に完全に壊れとるからな。もうただの人形でしかない」

再び上条の目に怒りの感情が現れる

(やめましょう。無駄です)

制止を食らったが、青髪に殴りかかった

愚直なまでに素直な、かつ強力な右ストレート

簡単にカウンターを貰い、仰向けに崩れ落ちた

青髪「残念ながら君の能力は攻撃に向いてない。もっとも、僕をここで殺せば連動してあの第三位も死ぬことになったんだけどね」

白井が倒れている上条の側による。見下ろしたその顔は光の加減か、泣いているように見えた

青髪「さて、そろそろ行ってもらおか。準備は出来てるよな」

上条「もうたくさんだ。とっとと終わらせる。早くしてくれ」

青髪が子供のような笑顔を作り、上条の体に白井の手が触れた

暗く広い部屋。中央にある円柱状の何か

上条の目の前に広がったのはそれだけだった

アレイスター「予定より少し遅いが、待っていた」

目の前に液体に浸かった男がいた

上条の仕事は拉致である。返事をせず、状況を確認した

(まずは、あのビーカーから取り出しましょう)

拳銃を取り出し、アレイスターへ向けて発射する

鈍い音がなった

上条(やっぱり駄目か)

傷一つ付かなかったビーカーに触れ、見上げた

接合部分らしき所も見えない。上部に見えるパイプが走っている部分に打ち込んでも結果は同じだった

そうこうしていると、ハングドマンと視線が交差する

アレイスター「無視されるのは面白くない。せめて反応だけでもしてくれるかな」

上条「こっちはお前をここから出すことしか興味は無い。それも構わないなら、相手になるぞ」

ビーカーの周りを調べる為に形にそって回る

アレイスター「今の君のその態度では、込み入った話はできないだろう。どれ、外の様子を見るがいい」

上条のちょうど正面に外の光景が映し出された

戻ってきた一方通行が青髪の喉元を片手で掴み上げ、青髪の体が破裂する

打ち止めの遺体が襲われることが無くなったからか、一方通行から例の翼は消えていた。冷静さを取り戻したのだろう

同時に、少し離れたところで立っていた白井が倒れる

これは青髪の狙い通りだったのか、それとも一方通行が戻ってくるのが予想より早かったのか、今となってはわからない

アレイスター「今のは、君がここに入ってきて銃を撃つまでに起きたことだ」

アレイスター「分かっているだろうが、すでに君はここから出る手段が無いんだよ。私がどうにかしない限り」

映像を見てもうひとつ彼には分かったことが有った

上条「御坂…」

アレイスター「残念だが、彼女は彼と一蓮托生だったようだ。だが、これでもう君を縛るものは無くなった。それでも君は私を無理にここから出そうとするかね」

既に外部の映像は絶えていたが、上条はじっと映像が有った所を見つめて答える

上条「分かったよ。それで何だ。俺なんかと、何の話がしたいんだ?」

目を細めて上条の返答を聞き、肯定の答えを得て、巨大な映像を投影した

町全体が廃墟と化した、学園都市の今

アレイスター「これが現在の学園都市だ。200万を超えた人口も最早見る影も無い。このことについて、少なからず君にも関係はあるはずだ」

上条「何が言いたい。俺の責任を今更問いたいってのか?」

怒気を含んだ上条の物言いを簡単に聞き流し、言葉を続ける

アレイスター「ここから立て直すには少々手間がかかり過ぎてね。膨大な時間がある私と言えど、その手間は惜しい」

アレイスター「特に、人材面での立て直しが辛い。外見が同じでも同じ能力を持つことが出来ないことは君も知っているだろう」

アレイスター「もしこの状況から、失った人々を取り戻すことが出来るとしたら、君は手を貸してくれるかい?」

あまりにも現実的でない提案がなされた

(どういうことでしょう。私の考えうる限りでは、それを可能にできる方法など、現実味のない一つを除いてありませんが)

アレイスター「その方法だよ」

上条「!?」

思わず後ずさりした

(…今のは偶然でしょうか)

アレイスター「偶然ではないよ。君の意思も私に伝わっている。例えれば周波数を合わせたようなものだ。私は機械にも少々 詳しいのでね」

上条「それで、その方法ってのは何だ?」

アレイスター「少し考えれば分かる。とてもシンプルな方法、とでも言おうか」

アレイスター「私自身、かなり長い時間を生き長らえているのだが、確率論では寿命は当の昔にに過ぎているの」

アレイスター「仮に不老不死の人間が出たとして、その寿命が有限であるのは有名な話だ」

上条「事故や事件とかに巻き込まれる可能性が有るからだろ。それぐらいは知っている」

アレ「その通り。現代ではおよそ1,000年という計算結果が出ている。そして私の今までの生涯はおよそ1,700年だ。その上この70年あまりは厄介な連中にも追われていたりしていた」

上条「…つまり何かの方法でそういうのを避けてきたと」

アレ「察しが良いな。だが満点ではない」

アレ「避けることが難しいこともあるのは君も分かるハズだ 」

上条「待てよ。自分の死が”避けれない”んじゃどうしようもないじゃないか。それこそ過去を変えない限りな」

アレ「それだよ。私は自分の死が免れることが出来ないと判断した場合や、自分の脈や呼吸が止まった時、過去へ戻ってやり直してきたのだ」

アレ「そうでもしなければ伝染病に感染したり、事件事故から身を守りきることはできない」

上条「だから今はこの完璧な”ハコ”に閉じこもっているということか」

アレ「その通り。そして私個人の逆行にも尋常ではないエネルギーが必要となる。故にいざというときに使えないこともあった。軽い気持ちでやるものではない。最終手段だ」

アレ「パラレルワールドという概念は知っているだろう?過去が変われば未来も変わる。それは異なる世界であるという概念 だ。だがね、経験上世界というものは一つの始原から終結までつながろうとする性質が有る。ある種の慣性のようなものだ」

アレ「その安定しようとする力はかなり強い。つまり単純に過去へ戻っただけでは、安定しようとする力に押し負けてしまう」

※現実にどっかの物理学者さんが発表した考えで、例を挙げると父親殺しのタイムパラドックスは拳銃で撃ち殺そうとした場 合、銃弾が不良品になったり、何かによる妨害が発生して父親を殺そうとさせてくれないというものでした

アレ「故に、今を変えるためにはその安定しようとする力に対抗しなくてはならなくてね」

アレ「私一人の些細な変化ですら莫大なエネルギーが必要なのだが、この都市の関係する全てにおける今を変えるためのエネ ルギーは私一人の比ではない」

上条の方をじっと見つめる

アレ「そこで君だ」

アレ「”幻想殺し”、いや”相対するもの”よ。君の中に居る彼女の存在が、既に君の能力の本質を示しているだろう?」

今度は逆にアレイスターの方をじっと睨みつける。一寸の間が生まれた

上条「…俺に何を”殺し”て欲しいんだ?」

意図が伝わったようで、笑みを浮かべる

アレ「この星さ。それくらいの規模が必要だ。しかもそれでも戻せるのは10日前後だろう」

(駄目です。確かに理論上は可能です…しかし、そのような使い方は私の制御可能領域を逸脱しています。とても制御などできま せん。失敗したらどうなるか)

アレ「問題ない。予定通り君が来たんだ。こちらの準備はできている」

上条の横に、椅子が現れる。座れということなのだろう

意を決して、座る。肘掛へ両手を置くと同時に手足が固定された

アレ「少々痛いが、我慢することだ」

椅子の側部から、電極とも注射針とも言えないようなものを先端に付けた管が多数出現し、まるで上条を貪る様に突き刺さる

声を殺すようなうめき声を上げながら、上条が耐える

アレ「性質上、麻酔も使えないのでな」

上条「…今まで、先に死んでいった、連中、に、比べれば、これ、ぐらいで、音を上げるわ、っけには、いかねえよ」

頭を覆うようにできているHMD付きの被り物が装着された。視界には数式やグラフが多数同時に展開され、今後のシュミレー ションが表示される

右上に大きく表示されているのが、実行のカウントダウンなのだろう

アレ「例えば失敗してもこの建造物は独立して機能する。手加減はいらない。存分にやりたまえ」

残り150秒

目を閉じて、ここ2週間ばかりの事を思い出す

多くの人が死んだ

知らない人から、身内まで

120秒

上条が見てきた光景は正直、気持ちのいいものではない

故に、それを防ごうという意思に繋がる

90秒

自分が殺した敵

一方的に虐殺される無力な人々

60秒

強力な力と力のぶつかり合い

無力な自分

30秒

助けられなかった人

守れなかった約束

15秒

最期の姿と表情

5秒

二度目は、繰り返させない

1秒

そう固く、自分に誓う



GOというサインが大きく表示され、抑えていた全ての制限を取り払う

 

 

 

 

視界が白に染まった

 

 

 

 

 

 

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