上条「なんだこのカード」 > Season1 > 12

上条「…ッ」

上条が倒れた。足がもつれて倒れることはいくらか有ったが、その間隔が狭くなってきている

絹旗「出血量が酷いです。応急処置でもいいからここでしてください」

敵は追手は来ないが、あまりいい場所では無い。建造物の下ではあるが死角が少ないのだ

(…ここでは危険ですね。せめてあの陰までは)

上条「いや、…せめてあの陰までは頑張る、さ 」

顔には血色が無い

絹旗「分かりました。せめて味方を呼んでは駄目ですか?」

上条「ここでは、盗聴され、るから。駄目だ」

苦々しそうな表情をして、上条を背負う為に屈む

絹旗「乗ってください。今度は私があなたを背負います」

無言でうなずき、絹旗に体を預ける

足が地面についてはいるが問題は無い

上条「…ありがとう」

意識を整理して、物陰まで駆ける

だが、自分たちにとって都合のいい場所とは、敵にとっても都合のいい場所であることは多い

そこには、敵兵が待ち構えていた

銃撃を加えられ、背の上条も応射する

背に有ったので盾となり足となった絹旗のお陰で大半は効率的に倒せた

だが、敵が撃ってきたのは対策された大口径の銃であり、背に上条を乗せていたので、気力によってなんとか倒れずに支えていたものの

敵が居なくなったこの時、力が抜けたようにして陰に倒れこんだ。

上条もそれに続いてしまうが、意識を切り詰めて、応急処置に専念する

(やはり、血が足りませんね。この際、ここで少し休息を取りましょう。最少量の血を作り出せます)

上条(最愛もダメージがあるからな。仕方が…無いか)

莫大なエネルギーを血に変換する。そして最低限のレベルで、足の応急措置と再生を行った

倒れこんでいる少女がふらつきながらも起き上がり、壁を背にして座っている上条の横へ来た

顔色が少し良くなった上条を見て安心している

上条「最愛、ここで少しだが休もう。で、俺は今から意識を失うだろうから、その間だけ守ってくれるか」

絹旗「分かりました。超任せてください」

言葉が軽い。精神的にも楽になったのだろう

絹旗の好調を感じとって、上条は意識を絶った

上条が寝始めてしばらくしたとき、急に雷が近くにまとまって落ちたような轟音が響いた

そしてとんでもない突風がフロアを駆け、建物が揺れ始める

絹旗(これは…不味い、ここ崩れる?!)

上条のほほを叩くが起きない。先ほどの轟音で起きなかったのだ。少々のこことで起きようハズもない

逃げる間もなく、建物が崩れ始める

上条を背負い、退避する

だが、男一人を背負って逃げるには、時間に無理が有った

予定の時間通りに、上条が目を覚ます

(早く、あの子を!)

はっきりしない意識の中で頭の中に響く声

そして視界に広がる光景は上条の意識を急速に回復させた

絹旗が上半身を残して、建造物によって潰れていた

相当量の出血で血が広がっている

上条「最愛!」

絹旗に近づき、声をかけて体を揺するも反応は無い

既に、事切れていた

(あなたを助けるために自分を犠牲にしたんです。さっきまで何とか生きてこっちを見ていたんですが…)

やり場の無い強い感情が上条のなかで駆け廻る

だが、悲しみを感じる時間は無かった

空に何かが通り過ぎたと思うと、轟音が響き、突風によって吹き飛ばされる

何とか物につかまってやり過ごすと、今度は空に巨大な黒点が一瞬現れ、そこへ物が強く引き寄せられ、慣性によって弧を描き ながら落下していく

上条「な、何が起きてんだ!」

また何かが高速で飛び去っていき、それを追うようにして黒点が複数現れる

衝撃波によって壊された破片が黒点へ引き寄せられ舞い上がる

(能力によるものなのか、兵器によるものなのか分かりませんが、何かとんでもないエネルギーのぶつかり合いが起きてますね


上条(畜生、こんなものに巻き込まれたらひとたまりもない。最愛の事を考えさせてくれさえしねえってのか)

(何が起きてるのか分かりません。とにかく、拠点へ戻らないことには)

上条「了解。…糞、糞、畜生ォォォォ!」

大きく叫んだ後、男は駆けた

 

 

 

 

浜面「ちょ、さっきから何なんだ!コレは?」

仮眠から慌ただしく浜面が帰ってきた

建物が揺れ、モニターには時折砂嵐が表示される

室内にも音速衝撃の音が鳴り響いていた

フレ「あちゃ、不味い。仕掛けた罠が誤作動しまくってる」

少女が二人、頭を抱えて端末を操作している

白井「大半の監視カメラも砂嵐しか映しません。壊れたブラウン管状態ですの」

常盤台では謎が一杯のブラウン管のシステムも教えているのだろうか、とどうでもいい疑問を浜面は浮かべたが、至極どうでもいのでスルーした

そこへLV5の二人が入ってくる

浜面「おぉ、外の様子はどうだったんだ?」

麦野「駄目ね。電子線って言うかなんかもうぐちゃぐちゃよ。ぐちゃぐちゃ」

浜面「…わかるか!ぐちゃぐちゃなのは分かったが、何がなんだよ」

御坂「電子線の指向性から磁場まで、もっと言うと光まで不可解な動きをしてました」

浜面「光、って言うとなんだ?屈折でもしてたのか」

麦野「馬鹿ね、屈折なんて日常で腐るほど起きてるのよ。そんなこと報告したりしないわ」

御坂「早い話、時折生まれる黒点になんでもかんでも引き寄せられてるってことです。それで磁場とかが乱れに乱れて」

白井が大型のメインモニターに外の映像を拡大するして写し出す

浜面「黒点、ってのはやっぱりこれか」

その場に居た全員がモニターを見つめた

何かが一瞬で駆けたかと思うと、そのあとを追尾するように複数現れては消える黒点

そして次の瞬間、映像が途切れてカメラは使い物にならなくなった

白井「…今のが生きてる最後のカメラです」

浜面「これじゃ、監視に人を割くことになるな。しかし、ありゃ何だ? 」

麦野「こんなこと考えられるのは一つしかないわよ。ブラックホール以外に何が有るっての」

白井「そんなもの、通常ではまず考えられません。となると能力的な何かと思われますが」

御坂「この都市にブラックホール作るような能力者なんているの? 」

白井「前に初春に見せてもらったデータにはそんな人はいませんでした」

各々思考をしているようだが該当する人間などいない

滝壺「はまづら、速すぎて動きが捕捉できないけど、これはたった二人の戦いみたい」

浜面の服を引き、注意を引いて滝壺が話し出す

滝壺「さっきのカメラに一瞬写った速いのが一方通行で、黒いのを作ってる人は分からないけど。戦ってるのはその二人」

一呼吸おいて更に言葉を放つ

滝壺「この戦いのせいだと思うけど、さっきから凄いたくさんの人が死んでる。いきなり能力者になった人たちから、18学区とか学び舎の園の能力者まで、たくさん」

自衛の出来る能力者ですらそのようなのだから、無能力者はもっと酷いことになっているハズだ

モニター上の各学区の縮図表示に機能停止を表す赤表示が広がっていく。17学区に至っては既に機能破壊を表す黒表示だ。通電すらしていないらしい

幸い、この施設の有るところはまだ周りには機能制限を表す黄色か機能正常を表す緑の表示が僅かながらある。

彼らの主戦場となってはいないのだろう

麦野「そんなことに悲観しても仕方ないわ。この地区は安全みたいだし、誰が見張りに立つのか早く決めましょう」

御坂「そうね。カメラとかの防衛装置が壊れてる以上、ここを発見されて奇襲が来てもおかしくは無いわ」

浜面「なら仮にどちらかがやられてもいいように2人1組だ。でもって、もし敵が来たら反撃できる人間が内外に一人ずつほしい」

麦野「なかなか仕切ってくれるじゃない。なら私とフレンダ・第三位とツインテちゃんでいいでしょ。お互い気心も知れてるだろうし連携も取りやすいし」

浜面「了解だ。そろそろアイツも返ってくると思うけど、どっちがいk」

麦野「私が行くわ。フレンダ行くわよ」

フレ「あちょ、引っ張らないで欲しいわけy」

フレンダを強引に引きずり部屋から出て行った

白井「私が上に送ってあげることもできたんですのに」

浜面「気にするな、ついでに罠とか見るんだろうさ。滝壺、麦野たちの反応を常に捕捉しておいてくれ」

滝壺「わかった。頑張る」

浜面「でもって、第三位さん達はこの建物の耐久力を調べてくれ。この衝撃じゃ主柱にヒビが入っててもおかしくない」

御坂「御坂でいいですよ。了解しました」

部屋を出ていく少女らを見送り、ブラックの缶コーヒーをすすって浜面は椅子に腰を落とす

本来なら休息時間の予定だったが、そうもいっていられない

浜面(今の俺に出来ることは当たり前の指示統率だけだ。何か問題が起きたら対応できるかわかんねぇ。野郎、早く戻ってきやがれ)

 

 

 

フレ「結局、全滅だったわけよ」

罠などの確認をあらかた終え、監視をしている麦野の元へ返ってきたフレンダの開口一番のセリフがそれだった

麦野「だったら直すのは後にしたら。奴らまだ戦ってるから、同じこと何度もしたくないでしょ?」

近くの学区を一方通行が通ったのだろう、轟音と突風が押し寄せる

フレ「わっぷ、」

麦野が、突風によってバランスを崩しそうになったフレンダを引き寄せて支えてやる

フレ「ありがとう。そうね。いつ終わるのかわからないけど、その方がよさそうだわ、こりゃ」

端末を取り出してみるも、電波で動くそれは、圏外になったりフルになったりをかなりの頻度で繰り返し、使い物にならなかった

麦野「はぁ…こんな状況だから、あの人もすぐ帰ってくると思うんだけどなぁ」

フレ「それにしては遅いわよ」

麦野「…何か有ったかもしれないわね」

麦野の眼光が少し鋭くなったのが見てとれた

フレ「!…い、今ここを動いたってミイラ取りがってヤツだと思うけどねー」

麦野「分かってるわよそんなこと。でもなんか予感がするのよね」

その時、一方通行を追っていた小型BHが軌道を外れて近くの倉庫の屋根を吹き飛ばした

BH自体は能力圏を外れてすぐに蒸発したが、その屋根には軽装の起動鎧らしき骸があり、直撃した瞬間に何かが奥へ隠れたのを見逃す二人では無い

麦野「フレンダ!連絡は任せたわよ!」

反射的に敵の方へ跳んだ麦野を目で追って、フレンダはポケットの無線へ手を伸ばした

『はまっ…』

フレンダらしい無線の声が浜面に聞こえた、が、続きがなかった

コーヒーをこぼしてしまったが、気にも留めない

浜面「フレンダ!フレンダ!? 」

声を荒げるが、応答は聞こえない

焦燥が彼の体を駆け巡る

浜面「バレた?!クソッ!」

今は攻防の要であるLv5が両方とも近くには居ない

もしかしたら第三位の方も襲われているかもしれない

迂闊に連絡を入れ、戦闘中の彼女らの気を削いでしまう訳にもいかない

思考を巡らせる

出た答えは、すでにここは危険だということ

そして滝壺を守る必要が有るということ。この二つだ

浜面(上条の防衛方法に穴が無かったと仮定すると、敵はそれ以上の装備を持ってしてここを特定した可能性が有る)

滝壺の方を見て、ハッと気づく

浜面(もしかすると、能力者用のレーダーか何かか?ここにはLV5が多くいたから、外の戦闘が始まる前なら、それで特定さ れたとしてもおかしくは無い)

浜面(だが、敵にとっても、この状況下では高レベルな電子機器は使えないはずだ。ナチュラルな滝壺のような能力でもない限り)

浜面(となると敵は、外に麦野とフレンダという戦力が分断されたことを知った上で攻撃をかけてきたってことか?)

浜面(なら、少なくとも逃げることが出来るのは今しかない!)

拳銃を手に取り、予備弾倉をポケットにつっこむ

浜面「滝壺!逃げるぞ!」

左手を伸ばし、滝壺の手を取った

滝壺「…フレンダの反応が…分かった、ついていく」

主制御室を出ると、廊下には彼らのものではない重そうな足音が連続して響いていた

 

 

 

銃声が館内に響く

外からの轟音は今だに健在だったが、明らかに異質な音が内部から聞こえた

その音は、ここ数日を生き残ってきた少女たちのとって最早聞きなれた音だった

白井「お姉さま、今のは」

御坂「ええ、間違いないでしょうね」

傷ついた主柱がむき出しであるこの部屋には、施設への電源供給の配電盤があった

そこへ有無を言わず電撃を加える

配電盤がショートし、部屋の照明が落ちた。これで施設の全ての電源は落ちたはずだ

御坂「恐らく、あの浜面さんならもうこの施設から退去することを考えてるハズ。私たちも逃げましょう」

白井「分かりました。でも、逃げると言ってもどこへ?」

御坂「とりあえず、ここを出ることだけ考えましょう。出てから当麻に落ちあえそうな場所を考えるのよ」

御坂の言葉に、頷く

白井「しかし、それでは私の能力が使えませんね。どこに敵が伏せているかわからない以上、迂闊には飛べません 」

御坂「そうね…それじゃ、足で逃げましょう。施設の電気が消えたから、ここを目指して敵も来るはずよ」

配電室から出て、左から階段の方へ向かう。施設は基本的に左右対称でどちらからも回り込むことができたが、特に理由もなく左を選んだ

角から手鏡を使って覗き込むと、50mほど先の階段側から敵が複数こちらへ来ていた

薄いスーツに身を包み、HMDと一体化したマスクをかぶって、少し銃身が長めの銃を持っている

御坂(屋内戦にしては携行している銃の銃身が長い。理由は分からないけど、あれは私の電磁砲とっては都合がよさそう)

御坂「黒子、頼んだわよ」

小声で、託す

いつも装備していた鉄の矢は囚われていた所で奪われていたので、釘や螺子を敵の頭脳へ転移させる

Hit.まず一人、痙攣しながら倒れた。残るは2人

同じ要領で飛ばす

目標の横の壁に着弾した。演算しなおすと、座標指定が狂っていた

移送先の指定が出来ないのだ

白井「そんなっ…!」

一人がもう一人からスッと5mほど前に出て、銃を構えた

咄嗟に角から引っ込む

聞きなれた音と共に打ち込まれたのは、青い稲妻を帯びた弾丸

今まで散々打ってきた銃撃であり、壁が抉れる威力を目の当たりにして、少女は確信した

御坂「電磁砲… 」

驚いた顔で御坂を見る白井

御坂「私の全力よりいくらか落ちるし、連射も出来ないみたいだけど、あれは間違いない。電磁砲よ。恐らく、高耐久性物質製の小銃にコンデンサ付けて蓄電して打ち出してるのね」

チャージが終了したようで、次の射撃が来る

御坂(でも、あれには莫大なエネルギーが必要なはず。あの軽装じゃあとても大型バッテリーや発電機を持っているようには見えないけれど)

更に壁が壊れる。ギリギリのところへ立っていたが白井に引っ張られた

白井「この廊下じゃ、身を隠すものが有りません。この階の周りの部屋は全て繋がっていますし、遮蔽物も多いです。そっちから回り込みましょう」

御坂「…そうね。ライフルとコインじゃ、分が悪すぎるもの」

麦野「逃げんじゃないわよ!」

BHによって屋根が壊れた建物の天井部分へ飛び入り、奥へ隠れた軽装鎧部隊を追う

天井の中央に大穴があき、そこから何かが下りるのが見えた

死体となっている鎧から擲弾らしきものをとり、大穴へ向けて投げ込む

爆発音を確認して、降りる

小型のコンテナから段ボールまで、多種の梱包に包まれた資材が多く配置されていた

爆発によって近くの木箱には穴があき、鉄製のコンテナには凹みがあった

球状に爆風が均等に拡がった後がありありと見て取れ、途切れは見えない

麦野(この分だとさっきの榴弾じゃ敵に被害は出てないわね)

天井まで整理されて積み上げられたそれらは、身を隠すには敵にとっても彼女にとっても都合のいいものだった

屋内は暗い。出入り口すら開いていないのだろう

麦野(チッ、この状況じゃ敵は暗視装備を持ってるわよね。先制されるのを承知で走り回るか)

詰まれた段ボールの陰に身を潜め、能力を正面に四角く広げて、壁まで一気に走る

側面に詰まれたコンテナに盾が当ったのを確認して、今度は一気に右へ駆ける

途中、詰まれた段ボールの間から銃撃を浴びせられ、同時にライトで体が照らされた

そのまま駆けて壁に当り、そこが側壁と側壁による角であることを確認すると

側壁の無い空間に壁を展開し、さっき銃弾とライトで照らされたときに掴んだ敵の情報から大体の位置を予測して、光線を放つ

資材を置いたラックが壊れ、詰まれた資材が崩れ落ちる音がした

敵に当ったかの確認をせずに、棒状にまとめた電子を使って後ろの側壁を豪快に破壊、建物から脱出。

倉庫の壁に棒を突きたてて、壁にそって一気に駆ける

中から棒が見えているのだろう、カァンカァンと壁へ銃弾が当たる音がするが気にしない

倉庫の一辺の側壁を、1.5mくらいの高さで切り落とすように端から端まで駆け抜けた

すると、側壁が外側に倒れこむ

一気に中を照らす光源となり、暗視装置を装備していた軽装鎧部隊は目がくらんだ

その瞬間を逃さない

麦野「少し装備が良すぎたみたいねぇ!!!」

見える範囲の敵を撃ち抜き、再度倉庫内へ走る

巨大な物が動く音がする。倉庫の巨大な引き戸を開けようとしているのだろう

麦野(この倉庫の扉から逃げるつもり?逃がすわけないじゃない!)

巨大な引き戸の方へ向けて適当に光線を放ちながら、追いかける

少し開いた間から、慌てて逃げ出そうとしている敵が目に入った

麦野「逃げんなよ!このフニャ○ン野郎どもがぁ!!!」

左右へ開きつつある扉の間へ向けて光線を放つ

直撃して、頭部が蒸発した死体がバランスを崩して倒れたのを確認した後、既に外へ逃げ出した敵を追う

半開きの引き戸の間から出た瞬間、擲弾筒から炸薬弾が飛んでくる

麦野(さっきの敵じゃない…!)

盾を展開して、身を守ると次なる攻撃が続く

その中の一人に、強い電流が銃の内部で駆け巡っているのが分かった

麦野「電磁砲!? 」

発射

殆ど質量を持たない電子による盾の防御可能範囲を軽く凌駕することを咄嗟に判断

建物内へ飛び込んだ

巨大な引き戸が拉げ、有り余る威力がコンテナを壁に打ち付けた

少し顔を出すと、電磁砲を撃ってきた敵を始め人らしきものはいない

麦野(…見失ったッ)

どこからか銃弾が飛来し、麦野の頭上の扉に当る。一方通行たちが戦っていなければ、命中していただろう

頭を戻し、倉庫内へ身を引いた

倉庫の巨大引き戸が完全に開いてしまった為、かなり奥まで行かないと狙撃手による攻撃は止まらなかった

倉庫の中ごろまで入った所で複数個所から爆発音がし、建物が揺れ出した

麦野「な、何よっ!?」

倒壊が始まった

天井が崩落をし始める。今はラックによって抑えられ完全に屋根天井が落ち込んでくるのを防いで入るが、いつまでもつかは分からない

麦野(ハン、慌てて飛び出した所を狙おうって寸法ね。バレバレよ! )

倉庫を支える柱が折れているのを、資材を効率よく置く為に配置されているラックが代わりに支えているこの状況を利用し

倉庫の扉がわと麦野が側壁を破壊した側の両端にあるラックから順次光線で破壊し、位置エネルギーに優先的な逃げ場を作り出す

ちょうどハの字に壊れたその中間地点に立つことで、敵がこちらを視認できる範囲を限定した

麦野が狙いを定める、崩れた倉庫の亀裂から敵が銃を構えて入りこむ

間髪いれずに入ってきた数人を打ち砕き、自分の場所の特定を許さない

投入した部隊がすぐにやられた為に敵も攻め手に欠いたのか、次が無い

麦野(クソ共が。とっと殺されに来なさい)

じりじりと時間だけが過ぎる

一方通行達の戦いは終わったのか、先程から轟音は聞こえない

今までとは異なる爆発音が響いた

麦野を守っていた右側の倒壊した倉庫であったものが麦野の居場所を圧迫するように動く

爆発によって瓦礫を吹き飛ばそうとしているのだ

麦野(外には狙撃手が構えてるってのに…仕方ないわ!)

能力を噴射させて倉庫を一気に離脱

元の拠点の入口に大穴をあけて中へ突入した

タンタンターン、と浜面持つ拳銃がリズムよく火を吹く

2階と1階を繋ぐ吹き抜けから階下を走る敵へ向けて発砲したのだ

軽装であった為か、一人が倒れる

それを確認して、滝壺を休息室に行くよう指示を出した

銃撃と同時に拡散した残る二人の足止めをするため、階段のへ近づかないように続いて銃を乱射する

あっという間に1弾倉を使い切り、そのタイミングで滝壺を追うようにして休憩室へ入った

窓ひとつないそこは立て篭もるには良い。だが、彼らの目的は脱出だ

浜面(考えろ。ここで立てこもっていてもジリ貧だ。敵はもうすぐ下まで来ていた。なら上に逃げるか)

浜面(待てよ。フレンダがやられたみたいだが、アイツが見張っていた所は狙撃は難しい。ということは近接した敵にやられたってことか。上からも来ている可能性が有る)

浜面(クソ!打つ手がねえ…)

銃の再装填を終えたタイミングで部屋の扉が開く

一見しては見えない所へ隠れていた為、すぐに敵の攻撃が有るわけではない

敵の場所を一方的に抑えている状態だ

瞬間、照明が落ちた

浜面(今だッ!)

身を乗り出し、両敵に銃弾をお見舞いする

倒れた敵に追撃を加えて命を完全に刈り取り、装備を奪う

浜面(大方、御坂達の機転だろうな。助かったぜ)

暗視ゴーグルを奪ったが、外の戦闘による磁気嵐のせいで上手く機能していなかった

即座に脱ぎ捨て、死体を覗き込んでいた滝壺の腕を取った

滝壺「はまづら、この人たち能力者みたい」

衝撃の発言

浜面「なんだって?!何の能力だよ」

滝壺「この人は麦野や第三位さんと同じ系統。でもそんなに強くなかった」

浜面「連中、マジで能力者を思うがままに作れるってのかよ。でも逆にコレは使えるよな」

滝壺「うん。私が敵の位置を教えてあげる。今施設に居る能力のある敵は14人」

浜面「14!?結構な数じゃねーか」

滝壺「屋上から入ってきた人と下から入ってきた人が居るみたい。今、一階に3人いる。階段そば。また上がってくるよ」

聞くや否や、部屋を飛び出し、身を低くして階段に銃口を向ける

照明が落ちても、一階は窓から光がこぼれていて、薄暗いながらも敵は視認できた

発射方法を切り替えるスイッチを切り替え、単発らしきものにセットしてトリガーを引いた

青稲妻を帯びた銃弾が発射され、階段ごと二人が吹き飛んだ

浜面(何だコレ!?)

続いてトリガーを引いたが、弾が出ない。銃を見るとplease chargingの文字が赤で表示されている

先程の攻撃で位置がバレた為、敵の反撃が放たれる

咄嗟に身を伏せると、敵も同様、尋常ではない威力の射撃だった

後ろにあった主制御室の壁に大穴が空き、隙間から外の光が入ってくる

慌てて休憩室に飛び込んだ

銃のスイッチを見ると、フルオート・セミオート・EMLの文字があり、浜面はEMLにセットしていた

浜面(さっきのはコレか)

フルオートにつまみを変更し試射すると、予想より反動が大きかったが分かっていれば問題は無い

滝壺「残ってる人が近づいてる。この階のトイレの前」

トイレからこの部屋までは、吹き抜けとこの部屋の壁にはさまれた廊下を通る必要が有る

つまり一本道だ

滝壺と部屋を出て、片腕で銃を持ち、その腕だけ廊下へ出してトリガーを引き続けた

先程の電磁砲によって消音装置が壊れてしまった為、大きな音と共に銃弾が立て続けに発射される

一マガジン撃ち尽くし、覗き込むと、敵は倒れていた

念の為、拳銃で頭部に数発撃ちこみ、頭が確実に変形したのを確認して弾倉と各種擲弾を奪う

滝壺「はまづら、上!」

と、休憩室の前から滝壺が叫んだ瞬間、階段側で擲弾が爆発した

直撃には至らなかったものの炸裂した手榴弾の破片が浜面に襲いかかる

銃を持っていない左腕で頭を守ったが、その左腕と腹部脚部に数ヶ所裂傷と破片が食い込んだ

フルオートで銃を煙の中へ乱射しながら、壁に体重を任せて廊下を後退する

途中から滝壺が肩を貸して休憩室へ入り、家具の陰に身を伏せる

動くたびに破片が食い込み、浜面の集中力を削ぐ

心配そうに滝壺が覗き込み、浜面の拳銃を奪った。

どうやら戦う気らしい 。反動で、彼女にはまともに扱えないだろう

浜面(なんとか、しねぇと)

そう思った瞬間、彼らが隠れていた部屋の壁が割れ、多くのフルメタルジャケット弾が打ち込まれた

御坂(磁気嵐が酷い。これじゃ敵の位置が読めない)

地下一階の実験室で身を低くしながら御坂は独り言ちた

周囲に展開している電磁波が御坂から離れれば離れるほどに不安定となり、敵の捕捉を難しくしていた

その上、照明は完全に落ちているので周囲は暗く行動を阻害する

幾度目かの電撃を放ち、強引に周囲の電磁波を落ち着かせ、更に照明の役割も果たさせる

手には常にコインを持ち、一応即反撃できる体勢ではある

白井「上が騒がしいですが、滝壺さんたちは大丈夫でしょうか」

御坂「銃撃音がしてる間は大丈夫よ。問題は止んだ時」

御坂(上の銃撃が終わった時、もし浜面さんたちがやられちゃったんなら敵が更に増える。この階の敵を倒しきる前に敵が増えるのは不味いわよ)

カチャ、と扉の開く音が複数聞こえた

どうやら階段そばの扉と、後ろの御坂達が部屋に入った扉から敵が入ってきたらしい

敵の位置が粗方では分かった。足音からして、そこまでは離れていないハズだ

あらかじめ決めていた通り、白井が階段側の敵に、御坂が後ろ側の敵の方向へそれぞれ攻撃をかける

コインを弾き、続けざまに稲妻も放った

電磁砲は外れ、稲妻が空間を照らす

そこに敵の姿は無かった。扉を開けただけの、ブラフのようだ

御坂(フェイクだった?これじゃ位置を晒しただけじゃない)

白井の方は、仮に位置がおかしくても確実に敵に被害を与える為、棚のガラスを水平方向に飛ばす

ガラスが割れる音がした。どうやら敵には当らず、壁にも刺さることなく地面に落ちたらしい

そのままガラスが落ちて割れるということは指定位置通りということになる

白井(おかしいですわ。さっきは全然見当はずれでしたのに。やはり敵が何かを使っている?)

稲妻の光から敵が逆算して電磁砲を放つ

御坂の近くの机が吹き飛んだ

御坂(そっちは充電時間がかかることは分かってんのよ!)

コインを連続して弾いた

階段そばの扉付近の棚陰に伏せていた敵を棚ごと蹴散らす

白井「流石お姉さまですわ」

御坂「気を抜かないで。確認してるだけで敵はあと一人。下手するともっといるかも知れないわ」

御坂を前に白井を背に、背中合わせで階段側へと身を動かしていると、白井の視界に敵の銃のコンディションモニターの明りが目に入った

反射的に、釘を飛ばす

が、当ったような動きは無い。それどころかこちらに銃口を向けているようだ

瞬間、前を向いていたはずの御坂が白井を抱きこむようにして倒れかかる

体の上に電磁砲が走った。実験装置に当りガラスが割れる

白井が御坂と共に立ち上がった状態になるようにその場で転移し、御坂が反撃を加える

敵のそばでコインの軌道が曲がるように動いたが異常な速度慣性を持った電磁砲を曲げきるには至らず、体の左側が吹き飛んで即死した

計3人を迎撃したことになる

白井「なぜ敵の攻撃を察知出来たんですの?」

御坂「ああ、ようやく磁気嵐が止んだのよ。戦いが終わったようね。敵も装備が正常機能し始めたから、位置が読めたの」

堂々と、倒した敵の武器を奪いに動く。少なくとも、この階には敵が居なくなったのだろう

御坂「上の銃の音、無くなったわね」

白井「お姉さま、ここを出るにはどうしても階段から上に行かなくてはいけません。浜面さんたちの様子を見ますか」

能力も平常運転に戻り、武器も手にした御坂には余裕が出てきたようだ

御坂「そうね。行きましょう」

銃を構え、階段を上りはじめた

 

 

大砲の弾のように拠点内に戻ると、吹き抜けから3人以上の敵が銃を撃っているのが見えた

敵はこっちに気が付いたようだが、そんなことは関係ない

閃光一閃のもとに複数の体を貫通させ、上下に分かれた人間だったものが倒れたのが見取る

この瞬間に全滅させることは無理だったようで、仲間がやられたのを確認した敵部隊は瞬時に散会し、麦野のいる吹き抜けからは視認できなくなった

麦野(動きが良すぎるのよ、こいつら! )

その場で数発、予想される位置へ光線を放つ、が効率が悪い

麦野(流石にこの吹き抜けをそのまま飛び上がるのは分が悪すぎる、だからと言って、階段から上がるのも)

手段を一通り考える思考の為、ほんのわずかな時間、その場で固まってしまった

薬を使ってでも集中し続ける有能な狙撃手は、その僅かな隙を見逃さない

左肩に銃弾が突き刺さった

外で彼女を狙っていた狙撃手が、彼女が開けた大穴を通して、今だに狙い続けていたのだ

戦場高揚でハイになった彼女の中で大量に流れるアドレナリンが彼女の痛みを忘れさせ、同時にそれが蛮行のきっかけとなる

狙撃手から逃げると言う事と敵を追うという事が、自分で危険と判断していた思考を撤回させた

吹き抜けから柱を駆け上がるように噴射上昇し、宙返り

いくらかの敵が一瞬視界に入る

麦野(そこ!そコ!ソコォォ!)

瞬く間に3人の敵を蒸発させた

無論、敵にとってもコレは一種の奇襲となり動揺はあった。が、沈静剤が脈と脳波によってスーツから瞬時に注入され判 断復帰は早かった

麦野からは死角になっていた残り部隊が電磁砲を応射する

慣性の法則に従って落ちる麦野の少し下を偏差射撃

ハイになった人間の集中力判断速度は凄まじい。危険な電子の流れを感じて水平方向へ電子を放射して回避運動を落下途中に追加する

1階へ着地した麦野へ、先ほどとは違う敵の電磁砲が向けられる

狙撃手の事も有る、最初からじっとしているつもりなど彼女には無かった

即座に狙撃手には死角になるであろう前方に飛び、電磁砲を構えていた敵が居る廊下の下へ逃げ込み、光線を放つ

股間から体を割かれるようにして焼け落ちた敵の血が彼女の頬に触れた

敵は、電磁砲は一撃の威力が大きいが、高速で移動する敵には不向きであると判断し、通常弾で弾幕を張りだした

愚策

異常な高電流高電圧を小型な容器に無理やり蓄電された状態を維持し続けた銃の位置が、彼女には丸分かりとなってしまった

そしてこのような壁や床を貫通させるくらい、彼女にとっては難など無い

敵が居る位置と自分の位置から、自分に向けられる銃口がどこを向くのかを判断し、的確に先を読む

麦野「いい大人がちんけなオモチャに頼ってんじゃねーよ!カス共が!!」

広くない室内を高速で移動しつつ一人、二人、と倒していく

麦野「ラストだァ! 」

わざわざ二階へ上がって、最後の敵の四肢をバラバラにするように攻撃を放ち、最後に頭を消し飛ばした

敵を一掃したことで、彼女の狂気が徐々におさまっていく

同時に体の力が抜ける

無理やり筋肉を動かし、更に体に急負担をかける短距離高速移動を繰り返したため体が悲鳴をあげだした

特に、狙撃された左肩からの出血が酷い

麦野(こんなところで、くたばらない…わ、よ)

失血死しないよう、崖っぷちの意識の中、自らの肩へ光線を近づけ皮膚を焼こうとした

だが、どんどん下がっていく集中力がそれを妨げる

麦野(まだあの人、帰ってきて、ない…のに)

視界が黒で埋まっていった

 

 

慎重に一階へ上がると、穴だらけだった

その上、その穴からは大体血が滴っている

1、2階に敵の反応は無かったので銃を下ろし、その凄惨たる現場を見る

白井「凄いですわね…」

今までの事で死体を見るのには慣れたが、ここに転がる死体は違う

恣意的と言えるほど、千切れたり、体の一部分が円形に取り除かれていたりなど、狂気殺人の現場のようだった

御坂「そうね。敵はいないみたいだから、黒子は上を調べて」

はい。という声が聞こえたときには白井が二階の廊下で歩いていた

一階に転がっている死体は銃弾によるもの、強力な何かに貫かれたと思われるものがあり、ここでの戦いが混沌としていたであろうことが分かる

白井「お姉さま!こっちへ!」

白井の声が階下に響いた 言われるがまま、半ば崩れた階段を駆けあがる

主制御室前の廊下に倒れている麦野の姿が有った

左肩から大量の出血をしていて顔には色が無かった

傷口には白井が来ていたシャツが割かれて巻かれているが、血の勢いは止まらない

既に赤く滲んでいた

白井「この後ろにある穴は、傷口を自分で焼こうとしたのでしょう。手遅れかもしれませんが、これ以上失血を許すわけにもいきません。お姉さま焼いてくださいまし」

頷き、麦野の肩の皮膚を焼いて血を止めた。そのまま、首筋に手を当て脈を測る。弱弱しいがまだ微弱に脈が残っている

 

御坂「体温が低すぎる。黒子、休憩室から毛布取ってきて」

返事が聞こえ黒子が消え、少し経って毛布を抱えて帰ってきた

御坂「遅かったわね。場所分からなかったの?」

白井「…スミマセン。ですが、ここは私が見ます。お姉さまも休憩室へ行ってください。…とても…」

少し声が上ずっていた

無言で麦野の体へそっと毛布を巻き始めた白井に言われるがままに、休憩室へ向かう

そこには、毛布をかけられて、滝壺を覆うように抱えた浜面があった

二人の目は閉じられて、滝壺もまた、浜面に抱きついているようだった

まさか寝ている訳ではあるまいと思い、悪い予感がしながらも毛布をめくり、銃から取り外したライトで照らす

毛布の下には彼らの腹部以下が、隠されていなかった

すこし離れたところに、大小不揃いの足のような何かが4本ほどまとまって転がっていた

よく見ると残された胸部以上にも所々穴が開いている

白井が遅れた理由を察し、感情を整理して麦野の元へ戻る

御坂「…どう? 」

白井「変わりありません。いつまで持つか、今ここで事切れるか、それとも回復するかなんて医者でもないと」

御坂「そうね」

彼女とは一度は命のやり取りをした間柄である。浜面と滝壺の事をも、理性で整理した今の御坂は目の前の麦野に対し、極力感情を抱かなかった

しばらく、沈黙が場を支配する

 

そんな中、空白に耐えかねたのか

白井の口が開いた

白井「その、根拠は全くないのですが」

御坂「何よ? 」

白井「なんとなくで、確証が有るような分かりませんが、血が騒ぐって言うか、その」

御坂「なんなの?はっきり言いなさい」

白井「その、あの殿方がかなり近くまで帰って来ている感じがします」

御坂「…確かに、外の迷惑な戦いも終わったことだし、そろそろ帰ってくるかもね」

本当は、本来上条の体で生成されたナノマシンが黒子の体内で壊れず残っていることから来るものなのだが、彼女らが知る由もない

御坂に投与されたナノマシンは既に目的を終え、死滅している

白井「本当に敵が居なくなったのかも分かりませんし、お姉さまが見回りついでに迎えに行ってはどうかと。いざとなれば この方は私が移動させることが出来ますし」

しばらく沈黙があった

私情を挟まずに、冷静に考えているようだ

御坂「そうね。アイツが戻ってくる来ないに関わらず、見張りはしないと。私の方が広範囲を効率よく探せるし、そうよ」

極力、そう言った感情を抑えていたが、漏れが出た

白井の目に、御坂の口元が僅かに緩んだのが見て取れる

白井「では、お願い致しますわ」

銃を構え、腰に擲弾をひっかけて彼女は走り出した

 

 

 

上条(クソ。結局確保してた道の大半が使い物にならんな)

(そうですね。でも、もうすぐですよ。あぁ、ここも駄目みたいですね)

幾度目かの回り道をして、ようやく珍妙な形をした研究所が、彼らの拠点が視界に入った

ここまで来る時と同様に、多くの建物の大半が大きく歪んだり、完全に倒壊などしていたが、この地区はまだマシな方だった

しかし、この拠点周辺になるとあきらかに様子が違う

弾痕や各種榴弾・擲弾を使った跡が有り有りと見られ、中でも拠点のそばに建っていた倉庫は山の字を描くように、明らかに不自然な壊れ方をしていた

嫌な予感を感じさせざるを得ないその光景に、一旦落ち着いていた彼の心が焦り出す

上条(ふざけんな!どうなってんだよ!なんなんだ、畜生!)

(落ち着いてください。取り乱しても意味が有りません)

そう伝え、沈静化の為のホルモンを分泌させる

強制的に落ち着きを取り戻したが、嫌な予感が消え去ったわけではない

壁に拳を打ち付けた。ゴンという鈍い音が響く

何とかして心を落ち着けたいようだった

本来ならば目を忍んで通る経路だった所へ顔を入れた

上条(駄目だ。この罠も壊れてやがる。あのカメラも)

(あの黒点が作り出した磁気嵐のせいでしょうね)

上条(となると、敵の侵攻にも気が付かなかったかもしれないな)

(そうですね。あのように無茶苦茶な存在があったら、御坂さんや麦野さんの敵把握能力も機能しないでしょうし)

上条(アクティブ系だろうがパッシブ系だろうが、あれじゃ計器がまともな数値を演算できないだろうから、一見敵にとっても同条件だ。でも…)

(ええ、本筋の人たちは計器不能条件でも戦う訓練・経験があります。が彼女たちにはそれが無い以上)

上条(とんでもなく不利だったってことだよな。ああ駄目だ。考えれば考えるほど、クソッ!)

また壁を殴る。そろそろ拳が内出血を起こしそうだ

カン、という小気味の良い音が鳴った。同時に近くに気配が生まれる

(後ろです!)

腰の拳銃を引き抜きながら腰を回し、同時にこっちへ銃を構えた敵の頭へ銃を向けた

上条「御坂!」

御坂「当麻!」

銃を下ろした上条に、御坂が銃を放って抱きつく

御坂「馬鹿!遅すぎるのよ!アンタが遅いせいで…!」

上条「一体、何が有った。皆無事か? 」

涙目で上条を見上げ首を横に振る

そして御坂が口を開いた瞬間の事だった

(当麻! )

御坂めがけて、何かが飛んできた

潜んでいた狙撃手が、チャンスを狙い続けていたのである

戦闘モードの上条と抱きついていた為、御坂は電磁波による飛来物の探知が出来ていなかった

無論それは狙撃手の読み通り

上条も瞬時に理解したため、自らの身を呈した

上条「グッ…!」

腹部へ銃弾か直撃、弾は貫通した

御坂「当麻!? 倒れこんだ上条に慌てて御坂がしゃがみこむ」

上条「…逃げろ」

上条の手を引き、起こそうとしている御坂の手を振りほどこうとしながら言った

御坂「何言ってんのよ?!アンt」

上条「いいから逃げろってんだよ!」

自らの痛みを我慢して強引に手を振りほどいた

これで御坂は敵の攻撃を探知して、防壁を作ることが出来るハズだ。上条はそう確信していた

が、追撃

肩に当り、悲鳴と共に衝撃で御坂が飛ばされる

当の本人も理由が分からない。明後日の方向で、辺りに散らばる瓦礫に含まれる、磁性を帯びるものがいびつな形で集合し、盾となっ ていた

御坂(そういえば、さっき黒子の時にも、こんなことが有ったっけ)

飛ばされながら、自動演算の自分の盾の指定座標がまるで文字化けしているかのように、いびつな物になっていることに気が付いた

上条「御坂ぁ!」

さらに追撃、御坂の右太股を撃ち抜いた

獲物の手足を順に引きちぎり、最後に致命傷を与える人間らしい陰湿な攻撃

当る度に御坂から悲鳴が上がる

最悪のショーが上条の前で繰り広げられる

上条「…止めろ」

更に追撃、御坂の右腕に風穴が空いた
獲物の手足を順に引きちぎり、最後に致命傷を与える人間らしい陰湿な攻撃

当る度に御坂から悲鳴が上がる

最悪のショーが上条の前で繰り広げられていた

上条「…止めろ」

更に追撃、御坂の右腕に風穴が空いた

上条「止めろ、止めろ、止めてくれぇぇぇ!!!」

銃声が響く

目の前の御坂には着弾しない

外した?!いや狙って外したのか?だったらなぜ…

一瞬、そんな思考をした。さっきまでなにもなかった場所から声が聞こえる

青髪「止めて、欲しいかい?」

上条の目と耳が幻を見ていない限り、その見た目と声はクラスメートの声だった

片腕で、意識の無い白井を抱えている

青髪「取引しようか。これから僕らは最終目標に入る。かみやんも参加する。代わりに御坂ちゃんの攻撃は止める。どうや?」

白井は、詰めなのだろう。もしここで断ると、白井の頭をぶち抜き、更に敵に心理的重圧を科すための

上条「分かった!なんでもする!だから御坂を、助けてやってくれ! 」

目を細くし、頬笑みを浮かべる。だが、目は笑っていなかった

青髪「か~みや~ん。僕は『止める』と言っただけや。『助ける』なんて一言も言ってないで? 」

上条の顔に激怒の表情が浮かび、拳銃を向ける

冷静にそれを蹴飛ばし、逆に銃を御坂の頭へ向け、引き金を引こうとする

上条「止めろ!止めてくれ…頼む」

すがるような表情を見せた上条に満足したのか、銃を戻す

青髪「そんなに言うなら仕方ない。御坂ちゃんも治すよ。僕とかみやんの仲やしねー」

無線を取り出し、指示を喋る

命令が終わった瞬間、御坂が消えた

それ見て安心したのか、上条の意識は途切れる

上条も消えた。残るは白井を抱えた青髪だけ

青髪「ふん。僕とかみやんの仲、か。よう言ったものや。…僕は初対面だったってのに」

独り言を話しきるかきらないかで、青髪も消えた

土御門「一方通行のヤツ、やり過ぎだにゃー…」

瓦礫の中から、義妹が着ていたものと同じ服装の布切れを握りしめて彼はつぶやいた

陰から細い腕が一本飛び出している。既に脈は無い

それが彼の義妹なのかは定かではない。が、彼女が通っていた校舎は既に原型を留めていなかった

彼自身も四肢には傷を負っている。弾痕などでは無く、もっと原始的な擦り傷や打撲である

これでも良くなった方だった。彼が立っている周りには生臭い、死の臭いが到る所で感じとられた

死体の種類は子供から武装した大人まで様々だ

回りに生きている人の姿はない

義妹を心配してここに訪れたが、来ない方が良かったかもしれないと彼は思い始めた

何者かの気配を感じ、身を瓦礫に隠す

「…地区の崩壊を確認。生存者は少女が二名。重傷。判断を乞う」

英語での無線が耳に入った。米兵が被害確認をしに来たようだ

『規定通り、我が軍所属者以外の重傷者は殺せ』

「了解。」

運ばれていた少女達を下ろし、所持していた銃で殴る

重傷だった彼女らは、ろくな悲鳴をあげることなくその命を散らされた

土御門(確かに、この状況下ではあの子たちは無価値だ。足手纏いでしかない、が)

更に握りしめた拳からは、爪が食い込んで血が滴っていく

土御門(ここでリスクを負う必要も無い。そのままやり過ごすんだ)

激情に至ろうとする我が身を抑えつつ、彼は更に息を潜めた

「くそったれ!俺たちは日本に餓鬼を殺す為に来たってのか」

「仲間もたくさん巻き込まれた。全く、上は何を考えてやがんだ?! 」

「聞いた話じゃ、試験体の暴走がこのファッキンな状況の原因らしいぜ?」

「オイオイマジかよ。そいつはクソ迷惑な話だな。ふざけんなってんだ! 」

「落ち着け。とにかくだ、こんな死体の山からとっとと引き上げようぜ。次は?」

「あっちだ。行くぞ」

愚痴を言いながら兵が去るのを見届け、体の硬直を解く

土御門(青髪絡みってことから、奴らの仕業かとも考えていたが、この状況は奴らにも予想外なのか )

彼らの発言からこの現状の整理をする

土御門(当然、旧都市側のほうも現状の原因ではないだろう。となると)

土御門(都市機能が根本的に崩壊したこの都市ではお前の影響力は低下したハズだ、アレイスター)

土御門(奴はどうでる?どう考えている?直に会ってみるのもいいかもしれない)

土御門(手短な方法は消えた今となると方法を纏める必要があるな)

土御門(結論として、えらく遠回りさせられたが、ステイルと合流しない限りどうしようもないか)

出発するため、無意識に握りしめた拳を緩めると、手元から布切れが落ちていった

 

 

 

絹旗「次は、あの映画にしましょう。超オススメですよ?」

そう言って上条の手を引く少女に戸惑いながら、上条は引かれるまま客席にすわる

映画はしばらくどうでもいい日常が描かれていた

時折寒いギャグを繰り出しながら、徐々にその日常は崩れていく

「爆撃だ!逃げろ!崩れるぞ!」

主人公とヒロインが戦争から避難するために逃げ込んだ建物が轟音と共に崩れ始める

主人公が振動によって転倒した

それをヒロインが手を差しのべ、起こすのを手助けする。だが、その間にヒロインは怪我をしてしまっていた

それに気が付かず、駆けだす主人公

「早くこっちへ、メアリー?!早く!急ぐんだ!メアリ、メアリィィィィィィィ!」

主人公が建物を脱出し、振り返るとヒロインは後ろで止まっていた。そこでようやく主人公は自分を助ける為にヒロインが怪我をしてしまっていたことに気づく

建物の崩壊により彼女は見えなくなった。絶望的である

画面が暗転してスタッフロールが映し出された

言うまでもない糞映画だった

絹旗「ヒロインは主人公を助けたために死んじゃいました」

絹旗「でも私思うんですよ。この主人公が、あの時、身を呈して助けに行けば結果は変わったんじゃないかなって」

隣の席に座っていた少女がこちらの顔を覗き込んで話を続けている

心なしか表情が薄くなっているように見えた

絹旗「まるで、どこかの誰かさんみたいですよね」

一気に気勢が細くなり、同時に冷たい表情をする

絹旗「自分を助けてくれたのに、その子の危機の前では悠長に寝ていた、誰かさんに良く似ているんですよ」

絹旗「もし動いていたら、結果は変わって、死なずにすんだかもしれない」

少しの間を置いて、小声で話始める

絹旗「ねぇ、私は貴方を助けたのに、ど う して 私 を た す け て く れ な か っ た ん で す か?」

隣の少女がすがるような声をあげて上条を手で引いた

 

 

 

気が付いたら上条は絹旗が瓦礫にはさまれた場所にいた

上条の左手を引く手にはさっきまでの力が無く、同じくあげていた首は力を失ったように真下へ向いている

背中にどうしようもない悪寒が走り、力を失った絹旗の手を振りほどくと、その手にひかれて上半身が完全に下半身を離れた

上条「ッ、ハ…」

その光景に思わず腰が抜けてしまう。何とかそこから離れようと座った姿勢のまま手で自分の体を引きずる

ふと、体の後ろへ伸ばした手に何かが触れた

絹旗の方を見ながら後ろへ下がったので、それが何なのかわからない

上条はこの状況を好転させてくれるようなものを願って、顔を後ろに向けた

それは、御坂だった

四肢からは血が垂れ顔は苦痛で歪んでいる

御坂「当麻、痛いよ…死んじゃうよ…何とかしてよ…助けてよ…」

蒼白の顔で言葉を発する

御坂「どうして私ばっかり撃たれるの…守ってよ…痛いよ」

穴のあいた腕を伸ばして、なんとか上条の方向へ手を伸ばす

その震えた手を上条が掴むと、穴のあいた部位から腕が引きちぎれた

御坂「嫌い、痛いよ助けて助けて助けて助けて」

御坂はただただ助けてと呟くだけの何かと化した

男は声にならない悲鳴を吐く

悲鳴をあげたことで腹部に違和感を感じた

見ると腹部から相当量の血が流れていて意識が遠のいていく

このまま意識が遠退けばこの地獄のような惨状から逃げることが出来ると、半分、上条はそれを自ら受け入れていった

 

 

 

夢から抜け出し、現実感の無い現実へ戻ってきた

腹部に包帯が巻かれていて、体には感覚が無かった。麻酔が効いているらしい

ベッドは寝汗でかなり湿っていた。夢のせいなのか、怪我のせいなのかは不明だ

(おはようございます。ずいぶん魘されていましたね)

上条(あ、ああ、少々、酷い夢を見させられたんだ。むしろ現実の方が夢であってほしいけど、昨日の事は現実なんだろ?)

ほんのわずかな少し希望をもって尋ねた

(…残念ですが、としか)

上条(そう、だよな)

体を起こし、現状を確認する

病院の個室で、窓も無くかなり殺風景である

脳波を調べるパッチが煩わしかったので腕で取り払った

同時に、部屋のドアが開いた 。上条の意識が戻ったのを確認したらしい

青髪「おはようさん。怪我はよくなったかい?」

上条「…御坂はどうなった?」

無視されたが、表情を変えない

青髪「見てみ」

そう言って、壁にどこかの病室の映像が流された

布団によって呼吸補助マスクの付いた顔以外は見えないが、映像の横に表示された生命に関わる数字データが彼女の生存を告げる

布団の盛り上がり的に、四肢のいずれかは失われたようだが

青髪「分かってると思うけど、彼女は君にとっての人質やから、これがどこかは言えへんよ」

上条「生きてるのが分かっただけで十分だ」

好きなように使えとばかりに、そのモニターのリモコンを上条に渡した

青髪「さて、お仕事の話といこうか。かみやんにかかっている麻酔はあ数時間で切れるはずや」

両手を合わせて上条の目を見ながら言葉を続ける

青髪「かみやんの準備が出来次第僕らの組織の最終目標を詰めに行く」

青髪「つまり、アレイスターの確保、や」

青髪「今の僕にはさしたる力も無いし、奴が何か魔術を使ってきたら、止めることもできん」

青髪「だから、君に行ってもらう。必要そうな装備は君が求める限りの物を出す」

青髪の方は見ず、ただベッド上で壁に映し出された御坂へ焦点を合わせて上条は青髪の言葉を聞いていた

青髪「さて、かみやんには了承の答えしか用意されていないけど、承諾してくれるかなー?」

じっと、じっと見続けていたが、返事をした。肯定の頷きひとつだが

それを見届けて、ほなさいならと青髪は部屋を出て行った

(私たち単体で行かせるということは予備プランもあるということなんでしょうね)

上条(だろうな。奴らの利することなんてしたくは無いけど、やるしかないよな)

(彼らには代わりが居ますが、御坂さんにとって私たち以外に生命を続ける術はありません。成功させて、条件が良くなるのを狙いましょう)

映像だけで音声は再生されていないが、御坂の口元がまるで何かを呟くかのように動いているのが上条には見て取れ、意思を固めたのだった

 

 

 

一方「一体、どこに居やがるンですかぁ? 」

超巨大地震と超強力な台風と大空爆が一度に行われたかのような町の仲を歩きながら一人つぶやく

前からいくらか監視の米兵部隊が歩いてくるが今の彼には関係の無いことだ

まるで一方通行などその場に居なかったかのように、通過していった彼らの装備品から情報を取り出そうとする。が、該当するものは無い

昨日からずっと一人の男を探し続けたがその手掛かりすら掴めない

現状の学園都市では誰かに聞くことも、端末にアクセスすることもできない為無理もないことではある

外部へ露出していた機械の大半は機能を失い、電気自体が通っていない場所ばかりである為に今やあの異常な監視体制は全く機能していなかった

もっとも、その中央も完全に倒壊している以上、電気や機械が生きていいても情報を触ることすら難しいだろう

故に時折来る兵隊の携帯端末のみが彼の主な情報源だった

一方(ほォ、俺が戦ってる間にこんな所で戦闘が有ったンだな)

情報の断片をまとめ上げると、どこぞの研究施設を中心に高位の能力者がまとまって敗北したというものが出来上がった

その場所へ向かうと明らかに他とは異なった廃墟群が有った

深い血だまりが何もない道の真ん中にあったり、倉庫が人為的に壊されていたりなどである

空薬莢や擲弾の破片なども転がっていた

巨大なアンテナのあるその中心の研究施設の屋上には金髪の少女の死体が有った

首が体から切り離され、碧眼の目は見開いたままだ

一方(こりゃあ、そろそろ腐臭がわくぞ)

手で無線機を握ったまま死んだのであろう、転がっていた無線機の跡がくっきりと手についていた

露出している部分からは腐敗網の始現が見られた。腐敗が進行している証拠である

開いたままの屋上のハッチから下へ降りる

地上3,4階となるアンテナの制御装置が固まった階層にはこれと言って変化は無かった

だが、2階に下りてから状況は一変した

猛烈な腐臭とハエなどが室内に充満していた

見落としを少なくするため、あえて五感を守らないように反射を切っていた事を彼は後悔することになった

鬱陶しいハエを突風で吹き飛ばすと、さらに詳しい状況が見える

軽装だが最低限の装備を備えた上で突入した兵が所々で四散したり穴が空いたりなどして死んでいる

施設はそこらかしこに大穴が空いていたり、外見とはかなり印象の異なった状況だった

一方(一体こン中でなにをぶっ放しまくったンだ?かなりの高火力兵器でも乱射したのかよ)

彼の疑問は二階の壁で座るようにして死んでいた第4位が視界に入ったことから解決される

肩からの出血は適切とは言えないが応急処置が施されていた。直接的な死因はそれでは無い

胸にぽっかりと銃弾が打ち込まれた跡がそれだ

一方(怪我で気を失ったところをズドンってかァ、コレは)

ただの人間の死体となった第4位を良く見ると、携帯端末が側に落ちていた

おそらく、死後硬直後に体が壁から滑ったことにより落ちたのだろう

手に取り、データを一瞥すると探している男の寝顔が写った写真があった

第4位の身につけているストッキングと思わしきものが彼の首の後ろにあることから、彼と彼女にはそれなりの接点が有った ことがうかがい知れる

一方(第四位がこいつらに襲われて死ンだってことは接点が有った三下も巻き込まれた可能性がある、か)

端末を床へ捨て、麦野へは背を向ける

ふと、廊下の左側に空いた大穴から二人の男女が抱き合うようにして死んでいるのが見えた

彼らの関係はともかく、そのフォルムが一方通行に訴えかけてくる

一方(死ぬ時だろうとなンだろうと、一人ってのは…)

目を伏せ、感情に流されそうになるのをなんとか理性で押し留める。打ち止めが頭脳に現れては消えるのを押さえているのだ

止まっていてはますます悪化しそうだったので吹き抜けから飛び降り、急いでこの施設を後にした

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最終更新:2011年03月08日 19:23
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