上条「なんだこのカード」 > Season1 > 04

デモ決行日 朝 上条の部屋

 

禁書「おはよう、とうま。土よう日なのに早いんだね」

上条「お。おはよ。前に言ったろ、今日は補修だって」

禁書「ん~そうだったかも。朝ご飯はある? 」

上条「昼の分まで有るぞ。一気に全部食べるなよ?あと、」

禁書「分かってる。今日はじっとしてるんだよ。本、昨日たくさん借りたから、今日だけじゃ時間が足りないかも」

上条「そう言えばなんの本を読んでるんだ?」

禁書「機械工学とか、プログラムとかだよ。この都市で機械の知識がないのは色々不便だからね」

上条「へぇ~。インデックスは理系なんだな」
適当な本を掴む
禁書「ちょ、とうまそれは見たらダメ!」

上条「案外年相応の本も読んでるじゃないか。カッコつけなくても、好きな本を読めばいいと思うぞ」

禁書「最近とうまがすごい余裕がある感じがする。もう、早くいかないと補習始まっちゃうよ!」

上条「ん、分かった。じゃあ行ってくる」

禁書(とうま、今日も多分帰りが遅いんだろうな。あ、晩御飯どうしよう)

学校方向にしばらく歩く
(多分、気づいてると思いますが)

上条(ああ、ド下手な尾行が居るな。しかも俺アイツと面識が有るぞ)

(今調べたところ、どうやら人為的にあなたの要監視レベルが上がってますね)

上条(青髪か、または仲間たちだな。囮にしたかったんだろうが、めんどくさいんです)

(まきますか?地図的には良い立地が有りますが )

上条(ホントに俺を尾行をするつもりなら、恐らく、アイツはダミーだ。もう一人、得意な奴がいるはず)

(同意見ですね。そっちがはっきりするまで今のままにしましょう)

浜面『今、ターゲットが学校方向へ進んでる。どうやらこっちには気づいてないみたいだ』

麦野「オッケー。その調子よ、浜面。このまま続けて」
無線の発信ボタンから手を離す

絹旗「しかし、浜面は尾行が超下手ですね」

麦野「あの馬鹿は理解しては無いだろうけど、役割は果たしてるからいいのよ」

滝壺「騙してるみたいで、はまづらに、悪い気がする」

麦野「騙される方が悪いわ。標的の男も負けないぐらいアホ面してるし、気づかれないでしょ。馬鹿とハサミは使い様って言うとおりね」

フレ『ハイハーイ。ちょっと、このままだと結局学校へ行っちゃうんだけど、どうするわけよ?』

麦野「今日は休みで補講も彼には入って無いハズよ。必ずどこかで方向を変えるはず。気にしないでおっかけて」

フレ『了解。体力には自信ないんだけどね』
通信が切れた

モニターに第一学区の情映像が入る
絹旗「第一学区に人が超集まり始めてますね」

滝壺「暑そう」

麦野「てっきりこっちいくと思ったんだけどね」

絹旗「こんなところで尾行は超無理です」

滝壺「蒸し暑いのは、嫌」

麦野「そりゃあ皆嫌に決まってるわ」

絹旗「これだけ集まってると痴漢とかいそうですね」

麦野「只でさえ汚い手が汗でベタベタなんて最悪」

絹旗「菓子の油でベタベタな自分の手を見ていってください。ちょ、顔に触れないでk」

 

第一学区 デモ集会

能力者の優遇を緩和しろ!
能力者による暴力に裁きを!
風紀委員の無能力者比率をあげろ!
無能力者にも発言権をよこせ!

等々のプラカードや叫び声が上がっている
参加者総勢約100万人。75%以上の無能力者が参加したことになる
都市人口の約35%が第一学区の広場に集まったことになり、かなり騒然とした雰囲気となっている
当然、湿度温度ともに異常な高さになっている
風紀委員や警備員が周りを取り囲んではいるが、如何せん、数が少なすぎるようだ

佐天(うわぁ、蒸し暑い。頭ははっきりしないし、こりゃあ倒れる前に帰らないと)

少し離れた場所へ何とか移動した。大分、気も安らぐ。落ち着くことができた
佐天(真ん中の大台で熱心にマイク持ってる人の周りにいる人とか、絶対にやばいだろうなぁ)

無能力者代表「ここに集まった諸君、残念ながら我々はこの街では負け組だ!何故なら我らには特異な現象を起こす能力がな いからだ!そういった能力を持つもの達がある種の天才であることは認めよう
だが!ここに集まった100万人の同士諸君らの中になにがしかの天才や能力のあるものがいないと言うことがあるだろうか?
答えは否だ!天才的な数学能力を持つ者、天才的な文章作成能力を持つ者、天才的なリーダーシップを発揮するもの…数えればきりがない。数々の天才がこの中に埋もれているはずだ
だが!そのようなものがこの街では評価されず!才能を埋没させている!何故なら超自然現象を引き起こすことが出来ないか らだ!この事とそれら天才的な才能となんの関係性があるというのだ
超自然能力を持たない者に価値が見いだされないこの現実はおかしくはないか
そして!残念ながらそのような天才的な才能をも持たないであろう、私を含めた大多数の無能力者よ!諸君らにはなにも才能が無いから役たたずだと思っている人がいるかもしれない
だがそれは間違っていると私は断言する!考えてほしい。果たして戦争で英雄さえいれば勝つことが出来るか、仮に勝てたと しても一人の英雄だけでそこを占領統治出来るか。出来はしない
もっと日常的な例をあげよう。たった一人の天才的なカリスマと経営能力を持つ人だけで、会社を成長させ運営させることが 出来るか。出来はしない
つまり天才だけではなにも大事を成し得はしないのだ!何をするにも諸君らは必ず必要だ!一人一人ではなく集団として、時 には一人の兵として、必ず必要なのだ
先日、痛ましい事件があった。我らの急進派とも言えただろう人々が武器を手に立ち上がった。私は彼らの蛮行を決して正当化するつもりはない
だが!彼らの勇気に学ばねばならないところがある。それは能力者に向かって立ち上がることができた勇気だ!都市の不平等 を暴力的ではあれ、変化させようとした大義だ !
彼らは今の我々にない、人間的な強さがあった!考えてみろ!彼らの恐れを!一人で軍一師団の働きが出来るという高位能力者を相手に貧相な武器で立ち向かった、その恐れを封じた、強い意思を!
今ここに100 万の同士がいる。一人一人は弱くとも、この人数のの強い意思が集まれば、理事会の差別主義者共にだって無視はできない!さあ叫べ!諸君らの希望を!その平等への賛歌は何者にも負けない正当性を持つのだ!」

 

人間という生き物には、洗脳を受けやすい環境がある
自分の自律的な意識 が抑えられ、他人の言葉を意識的に聞き入ってしまった時は、それに当る
つまり100万という人数の人間が集まり、異常な湿度と温度があるこの場はまさに洗脳・刷り込みといった行為に対して、まさしく適所であった
逆に、同条件で自分のアイデンティティーを否定されるような発言を聞くと、強力に否定したくなり、恐怖を覚えるのもまた 人間である

多くの人間が声を荒げる中で、事件は起きた
過酷な環境の中で、少女が一人、倒れてしまった
それを見た風紀委員があわてて駆けつけようとするが、デモ参加者が邪魔で中々助けに行けず、力で押しのけようとした
それが不味かった
冷静な思考が断たれたデモ参加者の何人かに、風紀委員が暴力で強引に集会を止めようとしていると見えてしまった

「風紀委員がデモを止めに入ったぞー!!」

こんな声が上がった
これが連なり、大きな声になって全体に行きわたる
風紀委員にそのような指示は出てなかったが、この場にいる恐怖と、蒸し暑さで、それに沿うような動きをしてしまった

「デモは中止です!至急解散してください!」

「解散しろ!デモは中止!中止だ無能力者ども! 」

解散しようとするデモ参加者を案内する風紀委員もいれば
解散に抵抗しようとするデモ参加者を、能力を使って強引に押しのけ、中央の大台へ向かおうとした風紀委員もいた
それらは、中央大台にいる者の目には、デモを強引に中止させようとする都市運営者側の意思として映った
無能力者代表「諸君!残念ながら統括理事会は我々の希望を拒否し!このような答えを向けた!だが!諦めてはいけない 我々の正しさは未来永劫揺らぐものではない!各自行動を起こし、必ずや本当の平等を手に入れようではないか! 」
そう言って、彼は引きずりおろされた
第一学区は大混乱となった
警備員、風紀委員共に統率のとれた動きは出来ず、飛び交う指示で混乱をさらに深めていった

 

 

第7学区 上条の高校まで後わずか

 

フレ(学校の正門まであと100m。かなりグダグダ歩きながらここまで来た。流石に何か有るはず。まさか、わざとおびき寄せている? )

フレ(とすると、学校の周りにはすでに敵の味方が配置されている可能性があるわね。ここは先に学校周辺の安全を確認しておくべきかしら)

フレ「学校までもうすぐよ。これじゃ流石に何もないって方がおかしいんじゃない?」

麦野『そうね。待ち伏せの可能性もあるとすると、ここからノークリアで浜面を尾行させるのは危険かもしれないわ。フレン ダ、先に行って安全を確認して』
本来ならば浜面の事など捨て置きたいが、隣に滝壺が居る以上、彼の安全を考慮しないわけにはいかない。こんなところで無駄に対立の溝を作るのは得策じゃないと麦野は判断した

フレ「アイサー。じゃあ先に学校に行くわ」

(ようやく焦らしの効果が出ました。真の追跡者が見つかりましたよ)

上条(学校まで残りわずか。やっこさんが先行しようとするのは当然だし、読み通りだな。それで、そいつはどこにいる?)

(すでに学校内部へと入りました。カメラ映像はコレ)

上条(了解。じゃあ本気で動きますかね!)

突然、浜面の視界から、上条が消えた 道へ飛び出し、辺りを見まわす
浜面(しまった!ロストしちまった!)

とっさに無線を取り出し、発信ボタンを押そうとしたところで、発信器が銃弾で射抜かれる
弾が飛んで来た先を見ると男が立っていた

上条「よう、久しぶり」

そう言って、サイレンサー代わりに使って、穴の開いてしまったペットボトルを投げ捨てる

孤立無援で相手は銃を持っているターゲット。この状況を浜面はすぐに理解した。下手には動けない
浜面「…お前、何をしたんだ?」

上条「言えないから、お前らにこうして追われてるんですよ。とりあえず、追跡するコツを教えてやろうと思ってな。」
接近する上条

浜面「この状況で何言ってんだテメェ?!」

上条「敵の死角への潜り方、こうやるんだよ」

そういって浜面の視界から消え、首筋に衝撃を与えた
上条(さて、ようやく行動できるようになったが、どうする?)

(武器流入の裏を取るなら、都市の流通を管理してる所へ行かないと。恐らく、データベースには偽装された記録しか無いでしょうし)

上条(偽装の痕跡、つまりどこかで搬入物が書きかえられているログとか、有りもしない所へ発送される予定の記録、長期的 に置きっぱなしになっていたものの 記録、そして第19学区へ大量に発送された記録やその改変のログを見つければいいわけだな)

(えらく説明口調ですが、理解できてるなら良いです。行く先はデータを最優先・最速で弄ることが可能な行政区でしょうかね )

上条(つまり、第1学区だな。今の状況はどうなってる?デモは?)

(大混乱中です)

上条(よし、今がチャンスだな)

 

 

第一学区

混乱は続く
如何せん人数が多く、掌握しきれない治安部隊の行動の悪さがさらに混乱を呼ぶ
当初から離れた位置にいた、佐天はこの混乱を最初からずっと見続けている

佐天(なんなの、何がどうなってるの)

佐天(なんで警備員は働かないの?なんで風紀委員は言ってることが人によって違うの?)

佐天(なんで潰されてる人を助けないの?)

佐天(やっぱり、能力者優先なの?)

そしてまた一人、圧死した人が彼女の視界に入る。潰れて、周りにいた人まで血が付いている
良く見るとそれは、デモに参加した学生では無く、果敢に避難誘導をしていた風紀委員の少女だった

ついに風紀委員にも被害が出た

すると、悲鳴と怒号で良く聞こえなかったアナウンスだが、耳を澄ますと、言っている言葉に今までは無かったフレーズが挿入されていた

「~、中央のデモ参加者は動かないでください。風紀委員は誘導・鎮圧行動をやめ、各支部へ退避せよ。各自脱出時の自己防衛の為の能力行使は許可する。外側の~」

今までにない悲鳴が上がった
主に能力者によって構成される、風紀委員たちが、自己の脱出経路を開くため、100万人の中で能力を使ったのだ
すでに熱と湿度でまともな思考が出来なくなている彼らにとって、守るべき生徒たちはただの壁にしか見えないのだろう

人だかりの中で火球や爆発、竜巻などが巻き起こる
当然、無能力者には身を守るすべなど無い

佐天(ああ、風紀委員が、能力者が、無能力者を、壊シテイク。ヤメテ。ワタシタチヲコワサナイデ)

かなり離れていた佐天の方まで逃げ惑う人の波が押し寄せる

 

青髪「危ないで、嬢ちゃん!」
たまたまそこに居合わせた青髪が放心状態の彼女の壁となり、なんとか踏み砕かれずに済んだ

青髪「こんなところで突っ立ってたらあかんよ!死ぬ気なん?ぉぃ、オイ!もしもーし?!」

青髪(反応が無い。仕方がないが安全な所へ避難させるか)
少女を抱え、建物へ移動する

青髪(ここならしばらくは安全か)
抱えていた少女をソファの上におろした

青髪(これが仕事とはいえ、自分の組織がこういう混乱と虐殺の原因を作ってるってのは、悲しくなる)

青髪(何度懺悔しても地獄行きは変わらないだろうな)
建物の部屋から出て廊下へ進む

唐突に頭へ小銃が突き付けられる 押してあけた扉の影に潜んでいたようだ

手塩「おとなしく、してもらおうか 」

青髪「こんなお姉さんに狙われるようなことしたっなー。僕?」

佐久「ふざけるな。この学区で何をしていた?吐いてもらおう」
本来、彼らは監視した後に青髪を殺す予定だったが、今まで見つけることができなかったために、内容を聞き出しておく必要があった

青髪「嫌だと言ったら?」

佐久「お前が助けた娘を殺す」

佐久「そんなことはどうでもいい。言わなければ殺す。それだけだ 」
佐久が扉に拳銃を向けた。適当な狙いをつけ、引き金を引く
もしかしたら、彼女に当ったかもしれない

佐久「良かったな。女には当って無いみたいだぞ?」

手塩は佐久の行動を見て少し苛立っているようだ。銃口が震えている
それ以上に銃を向けられた人物の肩の方が揺れていた
青髪「あのさ、僕は今自分の仕事に若干イライラしてるんだ」

佐久「今更罪の意識に苛まれてるのか?そんな意識が― 」

青髪「でね、今、挑発を受けたらどうなるか、分かる? 」

佐久「お前は無能力者のゴミ野郎だ。どうしようもないだろ」

青髪「そうさ、無能力者だったよ。つい昨日まで」

青髪「この仕事の過程で得た力だ。正直、反吐が出る。でもな」

青髪「今だけは一番有意義に使えそうやわ」

手塩は青髪が動くのを見て、すぐに引き金を引いた
が、弾が出ない
佐久も拳銃を向けて撃ちこむがやはり出ない
直接殴りつけようとするが、今度は拳が上がらない

手塩も佐久もそこで動けなくなった

青髪「動けないやろ?」

そう言って腰からナイフを取り出し、二人の喉元を切り裂く

青髪「僕は優しいから痛みは伝達せえへんようにしたる。多分気持ちよく死ねるんやないかな?」
しばらく二人から噴き出す血を見ていた

ブロックの残りの二人が駆け付ける。
尋問のために後方から鉄綱を連れてきたのだろうが、仇となった 二人には佐久と手塩が立ち話をしているかのように見えた。
首から血を出している以外は

山手「佐久…? 」

青髪「君らも、コイツの仲間やんな。ゴメン」

二人の足が爆発し、血が噴き出す
彼らは一瞬で失血死を起こした



青髪「別に彼女は何も関係あらへんよ?たまたま助けただけや」

 

第7学区

フレ「浜面?はーまーづらー!起きろ!」
意識を失った彼のほほを叩く

浜面「うん?おはようフレンダ?」

フレ「よし 」
フレ「浜面を発見したわ。結局、GPSの最後の場所で伸びてた」

麦野『了解。聞いた?良かったわね、滝壺。じゃあ一度、車に戻ってきなさい』

浜面「え、っと、なぜフレンダが?」

フレ「面倒だから車に戻ってからね。とっとと戻るわよ!」

車中
浜面「つまり、俺が囮だったってわけだな!」

麦野「しかも、どうやらそれが読まれてたみたい。ちょうどフレンダが離れたときにアンタが襲われたのよ」

絹旗「超油断してました。相手も浜面クラスの馬鹿面だったので」

浜面「おいそこ!凹むだろ!」

滝壺「でも、はまづらが無事だったから、良かった」

フレ「はいはい、御馳走さん。で、どうする麦野」

麦野「こうなっちゃ、可能性に賭けるしかないわ。第一学区へ行きましょう。オラ!さっさと運転しろ! 」

浜面「了ー解」

絹旗「第一学区、相当混乱してますね」

麦野「身を隠すにしても、なにか工作するにしても、今の第一学区なら最適よ。ただ、浜面がやられて結構たってるから、行っても既に事を成して逃げてるかもしれないけど」

 

第一学区 夕方

上条(ひっどいな)

(はい。予想よりひどいですね。どう見ても踏みつぶされた以外の方法で亡くなってる人もいるようです)

いわゆる死屍累々である
警備員とデモ参加者自身が誘導と、救助を行っていた

広場はほとんど赤く染まり、すでにわけが分からなくなった死体が大量に転がっている
ざっと見ただけで、1万人は死んでいるだろう
そしていまだに騒然としていた

(良い機会と言えば、そうなります。あの高層ビルが流通管理部門が入ってますから、行きましょう)

上条(この現場を見捨てていくのは心許無いが、仕方ない。行こう)

ビルの前には警備員ではないが、武装した人間が立っている
上条「すいませーん。都市外部から大型の輸入物を頼みたいんですがー」

武装男「今日は休みだ。お引き取り願おう」

上条「わっかりました。また来ますねー」

上条(なんで重武装した人が入口守ってるんだ?)

(大方、なだれ込んでくる人を止めるのが役割か、あるいは)

上条(すでに一度侵入されて手酷くやられたかのどちらかだな)

(建物を観察してみましょう)

建物の周りを一回りする
上条(あちゃー。裏口から大窓に至るまで、入れそうなところは全部武装したのが居やがる)

(後者だったようですね。流通をになうという性質上、襲撃に備えてシステムダウンさせるとか、そう言った防衛策がとれない以上、当然の措置かと)

上条(なぁ。ここって流通以外に何が入ってるんだ?)

(治安維持部門の発令所なんかもありますね。都市防衛を総合的に担ってる建物なんでしょう)

上条(治安部門か。そういえば、あの惨状の原因は何になってる?)

(警備員・風紀委員共に指示が混乱し、生徒主体の風紀委員まで被害が出たので、公開放送により風紀委員を優先して退避させたからとなっていますが)

上条(…いくらかおかしい点が有るよな。100万人もあつまったところで人の動きを管理する場合、管理する側は当然、インカムだのヘッドセットだので、雑音対策して個々人に直接指示が行くようにしてあるはずだ)

上条(じゃあ、なぜ指示が混乱するとか、アナウンスで退避命令を出したんだ?)

(…治安部門のHQが有るココが厳重に警備されているということは)

上条(そう。十中八九、侵入者によって指示伝達の妨害を加えられたんじゃないかな。無線を壊された、または無線で精神の動揺を誘うような音声を流されたかのどっちか)

(だとすると、内部犯では無く、外部から強引に押し入った形でしょうね。襲撃でもされないと、こんな警備体制は敷かれないでしょうし)

上条(襲撃された時は、流石にこのレベルの厳戒態勢では無かっただろうけど、治安部門の頭だ、実弾による防衛体制ぐらいは敷かれていただろう)

(となると魔術師や能力者でもなければ押しこみは出来ないでしょう)

上条(ああ。超常現象を起こす能力については、本国はレベルが学園都市には劣る。そして歴史的には新興国家であるため魔術師関係とも縁が薄い。一般的な物理現象内での軍事技術なら間違いなく世界一だろうが、最強の1兵卒を作るという面では秀でていない)

(ここには対能力者用の装備設備も有るでしょうから、相当高位の能力者でもない限り難しいでしょうね。それなりの特殊部隊による襲撃でもない限りは)

上条(だが、本国は、今年になって量子コンピュータが完成し、尋常じゃない科学技術を得た。脳内に高度情報演算装置を設 置できるレベルにまで。そして、広範な能力の基礎である第二位を手に入れ、研究したとすると)

(人工的に高位の能力を付与する技術が出来た?)

上条(その技術で能力者になった諜報員によってここを襲わせたとすると…)

(筋は通ります。が、仮定的要素が多すぎますね。第一、能力者を強引に作れるようになったとすると、本国がここの技術を盗もうとする必然性が下がります。もっと高次の目的が有るのかもしれませんが、現実的ではないかと。技術的には可能でしょうけど)

上条(だよな。現実的じゃない。だが本国の目的ははっきりしていない以上、考えられることだ。仕事の最終目標の理由だって 変ってくる)

(なんにせよ、私たちがここから武器侵入の裏を取るのは当面難しくなってしまったという現実は変わりません。怪しまれな い内に帰路につきましょう)

 

 

第一学区 デモ広場

浜面「やっと着いたぜ」

麦野「遅すぎよ!列車の方が早いくらいじゃない! 」

浜面「無茶言うな!対向車線から車が溢れてつっこんで来まくったんだ。よく無事故で来れたと褒めてほしいレベルだぜ。混乱してて列車も動いてないし」

フレ「で、ここまで来たけどどうするのさ」

絹旗「こんなグロ注意な所、超歩きたくないですよ」
壊れたマネキンの墓場のような広場が、傾きつつある日の光に照らされ、鮮やかな朱で現実味を失わせていた

滝壺「あそこ、ターゲットが歩いてる」


上条(大分人数が減ったな。死体も粗方見えないし)

(清掃工機で回収とは、まるでゴミ扱いですね)

上条(仕方ないさ。すでに顔が分からないような死体と飛び散った臓物ばっかりだからな。人が手でやるのはきつ過ぎる)

(さっさと帰りましょう。あなたの精神衛生上でも、良くないようです)


滝壺「ね?」

麦野「やるじゃない。とりあえず報告しときますか。滝壺、どの当りから見てた?」

滝壺「あのビルのそばの小道から出てきたところから」

麦野「フレンダ」

フレ「はいはい。送信っと」 カチャカチャ ターン!

Telllllllllll~
麦野「もしもし。あーはい。はい。わかった。了解よ」
プツ

絹旗「とんでもないレスポンス速度ですね。何か有りましたか」

麦野「標的の捕縛に変更。あのビルを襲撃した奴との関連で、尋問したいんだってさ」

麦野「で、絹旗行って頂戴。一瞬でやられた浜面はともかく、フレンダや滝壺向きの相手じゃないし」

絹旗「わかりました。超やられちゃった浜面の仇を討ってきますよ」

浜面「いや捕縛だから、殺すなよ」

絹旗「それくらいの加減は出来ますから、では」

 

 

歩いていると、上条の視界にうずくまっている少女が入った

上条「もしもし、大丈夫かい?」

少女は顔を上げ、こちらを見た
表情は硬く、色も薄い
絹旗「その、血を見たら、気分悪くなっちゃって」

上条「仕方ないさ。吐き気はある?飲み物でもいるか?」

絹旗「そこまでしてもらわなくても超大丈夫です。でも、その」

上条「なんだ?言ってごらん」

絹旗「さっきこけたときに落としちゃったポシェット、あれなんですけど」
指を指した方向に落ちている。周りは土と血が混じり、汚れている

絹旗「周りが血だらけで、近づけなくて」

上条「ん、取ってきてやるよ。ちょっとまってな」
上条が後ろを向く

完全に後ろを向いたタイミングで絹旗が後頭部めがけて飛びかかる
拳が後頭部に直撃した

上条「痛った!上条さん殴られるようなことはしてないはずですが」
頭を擦りながら振り向く

絹旗「、ッ」

一撃で仕留められなかったので、拳を次々と繰り出した
上条「ちょっと、ちょっと待てって!」

何発かかわし両手を掴む

 

上条に両手を封じられたので股間に狙いを合わせ、急所を狙う。その判断は瞬時だった
とっさに手を離し、距離を取った

(この娘、戦い慣れしてますね。今朝の追手の一味でしょうか)

上条(だろうな。頭を狙ったのもそのためか。首筋だったらアウトでしたよ)

(用心して能力範囲を広げていてよかったかもしれません。あの子の手の表面付近が異常な質量を帯びてます。そのままあなたに攻撃当たると吹き飛びますから、全身に能力範囲を広げます)

上条(了解。華奢な体で、奇襲の背面攻撃に失敗しても攻撃を続ける、この子は恐らく接近戦に特化した能力者だな)


絹旗(右手どころか全身どこを殴っても効かない。情報と違う。これじゃ近接戦では私はただの中学生ですね)

絹旗(…なら)
近くのベンチを投げようとベンチへ近づいた
が、上条に一気に距離を詰められ大物を掴ませてくれない
小物を投げても投げ先を読まれて当りはしない

絹旗は、無意識だが徐々に間合いを広く取ろうとした

(どうします?逃げようとしてますが)

上条(前線に出てくるのはどうせそこまで情報を持つ人間じゃないだろうし、あの子からは、攻撃されるまでに狙われてることが分かった時点で十分さ)

上条が、後方へバックステップし、大きく距離をとり、構えを解く

絹旗(逃がしてくれるってわけですか。超癪に障りますけど、そうさせてもらいましょう)
上条に背を向け、一気に走って逃げた。逃げながら無線を入れる

絹旗「駄目でした。」

麦野『無事そうね。なのに駄目って、逃げられた?』

絹旗「いえ、超ムカつきますが、逃がされました。彼の幻想殺しは全身にわたってましたので能力による攻撃が、通じません。体術面でも彼の方が上ですし、対抗手段がありません)

麦野『わかったわ。そのまま帰ってきなさい』

しばらく逃げたところで、一息ついていると浜面の車が来る
浜面「乗れよ。麦野が行った」

上条「今度は美人なおねーさんですか」

麦野「本当に面倒だから、降参してくれない?」

上条「流石に捕まるわけには行かない立場なんですよ」

近場のビルへ逃げ込む

麦野「逃げんな!」

上条(さっき逃げた子の仲間だとすると、より強い人ってことだよな?)

(ええ、Lv5の4番手「原始崩し」です。内容はこの通り)

上条(電子を操る能力、ね。被弾すると被害は?)

(生身の部分に攻撃が当ると確実に死ねます。が、問題ありません。不確定要素満点の第二位の時と違って、私が周りの空間のデータを全力で収集する必要も無いので、四支だけの拡大では無くて、体全域のカバーが可能となりますから)

上条(レベル5を殺すと、本格的に狙われかねないから、どうにかして手を引かせるか)

階段を登り切り、扉の鍵を銃で撃ちぬき、広い会議室へ侵入する
そして部屋の入口のすぐ脇に立ち、銃を構える

音が近づいてくる。部屋の入り口までもう少しといったところだろう

すると急に上条が身を隠している壁が突如壊れ、光線が当る
着ていた服が一瞬で燃え去った為、軽微な火傷が出来たが皮膚以下へ直接的なダメージは無い

麦野「やっぱり、効かないわけね」

上条「対能力者にとってメタだからな。俺は」

麦野「その余裕、ムカつくわッ!」
複数の白線が上条めがけて飛ぶ
だが、上条の体に被害は出ない

麦野「絹旗の情報の通りね。能力攻撃は効かない。でも、何も考えずにここまで来たと思ってるの?」
麦野の体の周りから、無数の白線が放出される

上条「数打てば解決するって問題じゃないぞ?」

麦野「私はそこまで馬鹿じゃなくてね。最大の問題はお前がどっかの建物の中に入ってくれないとこれは出来なかったってことかしら」
言いながら乱射を続ける

麦野「でも勝手にこっちの望み通りの動きをするんだから、内心嬉しさで飛び跳ねそうだったわよ」

麦野「さぁ!ここでくたばっちまいなぁ!瓦礫に押しつぶされてねェェェェ!」

先程より太い無数の白線が当り一面に乱射され、ビルが穴だらけになり、一気に崩壊が進む

上条には物理的に潰されるのは耐えようがない
また、この高さから飛び降りると、たとえ助かってもすぐに捕まってしまう域の怪我をしてしまう
逃げ場がなかった

倒壊が進み、まともに立ってられほどになった
このタイミングで麦野が自分の安全を確保するため、上方向に大きな穴を開けた

上条は麦野めがけて飛び、押し倒す
麦野「お前ッ!離せ!コラッ! 」

上条「こっちもこんなところで死ぬ気は無いんでな!」

麦野の計画では、逃げ場を無くし、移動できなくなるギリギリまで自分の退路を示さないつもりだった
上条の身体能力を考えた上で、限界まで粘ったはずだった。だが、上条の身体能力と体勢維持能力が想定以上だったのか、彼は飛んで、抱きついてきた
これは予想外で且つ、問題が有った。自分を完全に助けるために、さらに上条が死なない程度に能力を使って飛んでくる瓦礫や破片から守る必要があったのだ
それを知らず、安全地帯だとして上条は飛んできたのだろう

麦野(冗談じゃない。これじゃ私まで巻き込まれる可能性が)

(トウマ、これは不味いです。彼女は倒壊のシュミレートをせずに、能力で身を守って脱出するつもりだったようです。今簡単に シュミレートしましたが、上の穴だけではとても助かりません)

上条(マジかよ!でも、もう揺れがひどくて離れられませんよ。ここで能力を解除したら撃たれるし)

(仕方ありません。全力で防衛態勢でいきます。では、幸運を)

上条「すまん!でも、お前は守ってやるから!身を丸めて小さくしろ! 」

麦野「アタシに命令すんじゃねぇ!いいからどけよ! 」

上条「もう間に合わねえんだよ!コンクリートだぞ!んなことはどうでもいい!いいから身をかがめろ!」

危機的状況において、無力を実感した時、人間の脳は混乱してしまう
そんなときに命令されると、もはや従うほか無いのだ
結論をあげれば、麦野は身を小さくし上条の体に覆われた

直上からの崩落は少ないが、崩れていくコンクリートが二人の周りから圧迫するように押しつぶした

第7学区
一方「んでェ、青髪の動向は掴めたンですかァ?」
土御門「いや、まだだ。だが今日青髪が第一学区にある都市治安部門本部の襲撃を行った。そして先ほどその第一学区でアイツを追ってた暗部組織を皆殺しにした可能性があるとの報告が入った」

一方「襲撃ィ?無能力者に好きにやられるような所じゃないだろあそこはよォ」

海原「いえ、どうも何らかの能力によるものみたいです。これを 監視カメラの映像を流す」

数秒のものだったが、いきなり本部の警備を行っていた人間の足が爆発し、中から出てきた人間の侵入者に向けた銃は発射したされず、爆発物らしき小物を投げつけたが、不発だった

結標「これじゃ、短すぎるし、能力の特定ができるほどじゃないわね」

土御門「人間の身体を操作、さらに物質の操作もおこなった可能性がある」

一方「これだと念動力の一種か何かだな。エラくピンポイントに使ってるが、この映像で能力の規模を決めるわけにはいかねェ」

土御門「この足爆発の死に方だが、同じ方法でやられた跡のある死体がさっき言った暗部組織ブロックのものだ。同じ学区内で見つかっている」

結標「ってことはあんな奴らに、土御門やエツァリを巻きまくってる奴が見つかったの? 」

土御門「情けないことに今日の半日はダミーに騙され続けていた。まさか、あのデモをそのまま利用されるなんて思っていな かったしな」

一方「あるいは、能力に自信があるのか。いずれにせよ前より脅威は増したわけだァ」

海原「そうですね。急に能力者になったと考えた場合、敵組織の規模が計りしれません」

土御門「とりあえず、有効な手掛かりが今は無い。同様に行動しているメンバーに足で稼いでもらおう」

 

第一学区

急に線状の光を放ち倒壊したビルのそばに車が一台とまった
普段なら、多くの野次馬が居るのだろうが、デモ中の風紀委員が使った能力などで傷ついた建物は多数あり、この現場には人が居なかった

浜面「…オイ、本当に、この中なのか?」

フレ「このビルの中をGPSが指してる。間違い無いハズよ」

絹旗「滝壺さん! 」

滝壺「駄目。やっぱり麦野の反応が無い」

車内の空気が重くなる

浜面「まさかとは思ったが、やっぱり麦野は… 」

絹旗「とりあえず、GPSの反応のあるところを探しましょう。行きますよ浜面」

浜面「ぉ、おう」

窒素装甲と一般青年が瓦礫をどけ、残りの二人が動かない鉄筋を工具で切り分ける

男子生徒のシャツ地が瓦礫から顔を出した
周りの瓦礫を取り除くと、頭部以外、特に四支がちぎれ有らぬ方向へ向いてしまっている男と
その男に守られている女が出てきた

浜面「グェッ…。コイツはもう駄目か?」

男をひきはがし、男の容体を確認した
滝壺「 ! 麦野の反応が戻った。まだ麦野は生きてる」

フレ「そっちの男に比べれば、外傷も少ないわ。少々荒っぽいけど、これで」

スタンガンを取り出し、設定をうんと下げる
バチッ
絹旗「麦野!むぎのっ!」
体をゆする
瞼が震え、意識を取り戻した
麦野「ンッ。…助かった、のね」
体を起こす。当りを見まわしボロボロの上条が視界に入った

麦野「ターゲット生きてる?」

浜面「いや、どう見ても、ってまだ息が有る。スゲーこいつ生きてやがる!」

少し笑顔を浮かべた
麦野「何とか、捕縛、出来たわね。さぁ、病院へ運んで。死亡させちゃ捕縛にならないわ」

 

第7学区 夜 上条の部屋

禁書(とうま、おそいなぁ)

スフィンクスで遊びながら、時間をつぶす

禁書(お腹すいたよう)

禁書(わざわざ、私に部屋から出るななんて言ってる時点で絶対何か有るんだよ)

禁書(でも、約束しちゃったし)
ピソポーソ

禁書(誰か来たんだよ)

バタム
ステイル「こんばんは、インデックス」

禁書「…こんな時間に来るなんて何の用なんだよ?」

ステイル「上条当麻から直々に連絡があってね。今日は君の待っている彼は帰ってこないよ。で、僕は彼の代わりの護衛さ。」

禁書「え、とうまはどうしちゃったの?」

ステイル「どうもここの連中に捕まったらしい。それで、君はどこかの組織に常に狙われていたらしいから、僕が護衛と生活補助をしばらくやらせてもらう。いいかな?」

禁書「…そう。わかった、じゃあ晩御飯が欲しいんだよ」

ステイル「準備してあるよ。さっそく頂こう」


禁書(やっぱり何かあったんだね。捕まりそうになっても私のことを気にかけてくれるのは嬉しいけど)

禁書(私を危険から遠ざけようとして、とうまが危険に陥るんじゃ、ちっとも嬉しくないんだよ、とうま)

 

次の日 早朝 第10学区 某病院

上条(どうやら、生きているようだな)

(各臓器の稼働率は40%、四肢は左腕以外無くなり、左腕も手は残って無いですね。幸運なのは、動けるはずが無いわけですから、拘束などされていません)

上条(普通に絶望的だ)

(どうします?端末も取り上げられましたし、正直、手当の方も現状維持といったレベルです。脳を精査されると、私も見つかってしまいますし)

上条(まず、ここがどこか把握しないと)

目を開ける
どうやら右目をやられたらしい。右側は見えなかった

上条(病室だな)

よく見ると右隣に、女が座っていた
上条(昨日戦った「麦野沈利」だったかな?)

じっと見下ろしていた彼女の口が動く
麦野「気がついたようね。残念だけど、地獄の始まりよ」

麦野「明日から尋問が始まるわ。そんな体だけど手加減はしてくれないでしょう。たぶん死ぬわ。でもその前に、一応、礼を言っとこうかと思ってね」

当麻の額に手をのせ、話を続ける
麦野「あんたのせいで死にかけたけど、あんたのお陰で目立った外傷もなく助かった。ありがと」

麦野「その上、大サービス。選ばせてあげるわ。ここで死ぬか、尋問中に薬中毒になって死ぬか」

声をだそうとしたが音にならない
上条「…ぁ…ヒュ…フス」

麦野「肺もかなりやられてるから喋れないはずよ。殺して欲しいなら首を縦に、嫌なら横に振って」

躊躇無く横に振った

麦野「そう。やっぱり、諦めないのね。じゃあ頑張って」

扉でもう一度振り返り上条を見て、麦野は部屋から出て行った

(そういえば、あなたが倒れている間に、英国魔術師組に禁書の保護をするようにという内容を送っておきました。もっと も、今まで襲われる兆候は無かったので、しばらくは大丈夫でしょうけど)

上条(今のあいつには護衛よりも、大量の食事の準備が必要だだろうな。あんがと)

(さて、彼女が言うには、今日中に何とかしなくてはなりません。もちろん方法は有りますよ)

上条(全力を出せばいいわけだな)

(ええ。副作用を再生に回します。学園都市全体を一瞬でも覆いきれば、充分でしょう。問題は死ぬほど痛いだけです)

上条(…再生はどれぐらいかかる?)

(時間はざっと2時間。まだ朝日すら上がってませんから、誰かに気づかれることも無いでしょう)

上条(oh.あの痛みを2時間ですか。上条さん今度こそ死にますよ)

(その上、非常に強い睡魔に襲われます。体は復活しても、身体能力や代謝能力が格段に下がっているので、本能的に休もうとしますから)

上条(俺の意識が無くなっても、お前だけで体を動かすことは出来るか?)

(本能的な生物の防衛行動なので、私だけで何とかっていう問題じゃ有りません。睡魔を止めるために強引にホルモンバラン スを弄りすぎると、障害が出ますし)

上条(どうあっても睡魔と闘いながら、脱出しなきゃならんのね。学校の授業中みたいだな)

(じゃあ、やりますよ?ちなみに、今全力で痛みを抑えるようにしていますから、演算を能力に回すと傷本来の痛みが戻ります。だから耐えてくださいね。では)

上条(ちょ、心のzyんギャアアアアアアアアアアアアアア!、う、よ、ウワアアアアアアアア!)

MNW
ミサカ17911号(今一瞬ですが、ネットワーク落ちませんでしたか? )

ミサカ14235号(この時間は欧米組みしか基本的に接続していないはずです。処理落ちは無いでしょうから、大方、管理者がベッドから頭から落ちたとか、些細なことでも有ったんでしょ)

ミサカ15849号(ログには1.02秒ほど落ちて、再起動したとなってますね。14235号の予想どおりでしょう)

ミサカ17683号(!皆さん、今は打ち止めと感覚共有しないほうがいいです。寝惚けてるのか開いてますけど、おすすめしません)

 

 

同時間 黄泉川部屋

一方通行の体を揺する姿があった

打止「一方通行、トイレまで付いてきて!ってミサカはミサカは涙目でお願いしてみたり」

一方「…あァ?だから心霊特集なんて見るなって言っただろうが。仕方ねェな」

立ち上がる一方通行
その瞬間、ネットワークの代替演算が停止した

ソファに打止を押し倒すように倒れこむ

打止「えっ、一方通行?ってミサカはミサカは驚きながらも少し嬉しかったり、あっ」

一方「すまン、急に演算が、ってェ?!」

恐怖で限界まで尿意を我慢していた、打止の寝巻きの太もも辺りに液体の染みが広がっていった

黄泉川「こんな夜明けに大声だして、一体どうしたじゃん?お、おお?」
一人の少女の頬に雫が溢れた

同時間 上条の部屋

ステイルが台所に立ち、朝食の準備をしている

ステイル(昨日は少し気が沈んでいたからようだし、朝食を少し豪華にしてあげようかな)

ガスコンロをひねるが、火が付かない
ステイル(アレ?つかんな。仕方が無い。ここは僕の炎で)

煙草に火をつける程度の火を出そうとしたが、出ない
ステイル(アレ?絞りすぎたか?もっと火力をあげようか)

今度は手の平大ぐらいの火を出そうとした
日頃料理をしない人間は往々にして換気扇をつけるのを忘れがちである
そして、彼は不運なことにガスを出しっぱなしにしていた
そこに手の平サイズの炎が急に発火したことでガスに引火し結構な音が部屋にこだました
ボフッ

禁書「ん~、こんなに朝早くからなんなんだよぅ」

見ると、コンロ周りが黒く焦げてしまっていた。
当然、ステイルの顔も

禁書「えっと、自爆するのは勝手だけど、部屋を壊さないで欲しいな」

14歳の頬にも雫が溢れた

 

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最終更新:2011年03月08日 19:22
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