一方通行「死んだ世界戦線だァ?」ゆり「ようこそ」3


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沙耶「上条君?もう行くの?」

仮面男(上条)「あぁ、確かめたいことがあるんだ」

絹旗「昨日、一方通行と超話してたことですか?」

上条「ああ。もう、覚悟は決まった」

沙耶「そう…早いわね。それじゃ、準備しますか」

仮面女2(絹旗)「私は聞きませんよ、まだ超消えたくないので」

上条「それでもいいさ。どちらにせよ、俺はそう簡単に消えるつもりなんてないから安心しろ」

仮面女1(沙耶)「そうよね、あたし達二人から始まったんだもの。勝手に消えられちゃたまらないわ」

上条「そうだな、沙耶」

沙耶「か、勘違いしないでよね!深い意味なんてないんだからっ。あたしは理樹君一筋なのわかってるわよね!?」

上条「あぁ…俺だって、あいつ一筋さ」

絹旗「ムス。超惚気がうざいです」

上条「戦う前に死亡フラグってか?」

沙耶「あら、なら何百回も死んでるあたしはどうなるのかしら…ってどんだけ間抜けなカミングアウトよあたし!」

上条は銃を握り締め、立ち上がる。

上条「ま、とりあえずあの学校を占領しに行こうぜ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ゆり「っ!来たわよ!」

日向「なに!?マジで来やがったのか」

やって来たのは一人。
仮面の男だ。
堂々と校門を飛び越えて入って来た。

ゆり「あなたの名前はもうわかってる。上条当麻さん?仮面を外したら?」

無言で仮面を外す上条。
その目は冷え切っている。

上条「…少ないな、たかが四人か」

ゆり「あら?今回は一人で来たみたいだけど、随分余裕そうね。あなたの右手が消す力だってのはわかってるわ。でもそれだけで、どこまでやるつもり?」

日向「俺たちを追い込めたら、増援を呼んでやるよ」カチャ

松下「悪いが、俺は柔道五段でな。見たところ鍛えてるようだが、寝技に持ち込んだら終わりだ」

大山「後方からのスナイプは任せーー」

大山「っ!?」ゾクッ

教室からスコープを介して上条を見ていた大山。

その上条がニヤリと笑い、大山と目が合った。

ゆり「とりあえず、目的を話してもらうわよ」カチャ

ゆりが銃を上条に向ける。

上条「いいだろう」カチャ

素早い動作で、上条も拳銃をゆりに向けた。

上条「言っておくが、俺はお前より素早く撃てるぞ」

ゆり「あたしの実力も知らずによく言えるわね」

上条「…お子様ごっこの戦いに、銃なんて持ち出してるやつに言われたくないな」

上条「昨日、言ってやっただろ?せめてあの忍者女を用意しとけば変わったかもしれないが」

上条「いいか、よく聞け。ーーお前が引き金に力を込めようとした瞬間、俺はお前を撃ち殺す」

ゆり「っ……」

ゆりは一方通行からの情報を思い出す。

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一方通行『あいつの名前は上条当麻。魔術だろォが超能力だろォが打ち消し、神の奇跡すらぶち壊した野郎だァ』

一方通行『一つの戦争が終わった。それから数年後、上条は必要悪の教会っつー組織に入ったンだ。そして二年間、体術や拳銃の扱いを学び、いくつもの戦線を潜り抜けてェきた。あいつは右手で魔術を消し、左手で銃を扱った。この世界の武器を打ち消したから恐らくこの世界でも、同じスタイルを使うだろォな』

ゆり『彼の右手は、この世界の何を消すことができるの?』

一方通行『調べてみねェとわかンねェが…簡単に言うとォ幻想殺しの本質は、常識外に存在するものの打ち消しだァ。この死後の世界は元からあンだろォな。だからあいつがここに居ても世界が壊れねェ。だが、誰かしらが創り出したもンは違ェ。土をこねて記憶を頼りに産み出した武器、パソコンを使ってェ能力を産み出した天使の能力。これらはあいつの右手で消せンだろォな。だが、安心しろ。俺ら人間は消せねェから。…NPCは知らンが』

一方通行『一つ、忠告をしてやる。俺ァあいつに勝ったことがねェ。過去二回負けてるンだ』

一方通行『だからな?…俺を倒せるつもりで向かわねェと、絶対に勝てねェぞ』

 

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ゆり「(一方通行君の言った通りだわ。この上条っていう人、あたし達より明らかに戦い慣れてる…!)」

ゆり「…それで…目的は何?」

上条「この学校を占領することだ」

ゆり「なっ!?」

日向「何言ってんだよ!この学校には他の生徒だって…!」


上条「だから、どうした?NPCなどただのプログラムだろ?」

ゆり「占領って…具体的には何をするつもり?」

上条「まずお前らは俺たちの下についてもらう。あとはこの学校のNPCを使わせてもらう」

ゆり「NPCを、使う?」

上条「そうだ。この学校のNPCの支配者は誰だ?」

ゆり「なに、それ…」

上条「はあ?…おいおいマジかよ」

上条「あー、お前ら何してたんだよ?じゃああれか、支配者はお前らが知らないやつってことか?…うわー期待外れにも程があんだろ…」

ゆり「な、何を言ってんのよ!?」

上条「……」

ゆり「支配者って…何よ…裏から操ってるやつがいるってこと!?」

ゆり「まるで、神様の真似事じゃない!そんなやつが…っ!」

カチャ!

ゆり「もっと、詳しく話しなさい…!」

上条「……」

上条「……はっ」

ゆり「神が、この学校にいるの!?どうなの!?早く!説明しなさい!」

日向「お、おい!ゆりっぺ!」

上条「もういいや。お前らに用はないから。好きに武装ごっこでもしてろよ」スタスタ

上条がゆりのほうに歩いてくる。
拳銃も下ろして、緊張を解いて。

ゆり「ま、待ちなさいよ!支配者ってどういうことなの!?」

上条「…それを教えてどうなる」スタスタ

ゆり「と、止まりなさい!撃つわよ!」カチャカチャ

上条「……」スタスタ

ゆり「止まれえぇぇ!」パン!

上条は、即座に身を屈めた。
弾丸を避けると同時、ゆりに向かって猛進した。
あまりの速さに対応が遅れるゆり。

パン!

パキン!

上から上条を狙った大山。
その弾丸を上条は横目で確認し、右手で消し飛ばす。
日向のサブマシンガンが上条を向く。
もう、上条はゆりを捉えていた。
ゆりが向けた銃をアッパー気味に弾く。
ゆりがナイフを構える。
上条の足がゆりの足を崩し、重心を崩す。
転びかけるゆりの腕を取るとナイフを消し、両腕を背中に回して身柄を拘束する。

ゆり「っ…!」

右手でゆりの両腕を拘束すると、上条は左手に持つ銃をゆりのこめかみに向けた。

上条「動くな!」

ゆり「っ!」

日向「くそっ!」

上条「武器を捨てろ」

ゆり「ダメよ!あたしごとを撃ちなさい!」

ギチッ

ゆり「ぐぁっ!あ、あぁあああー!」

上条が腕を締め付ける。

上条「聞こえなかったのか?全員武装を解除しろ!」

日向「っ!…わかったよ」ガチャ、ストン

松下「仕方ないか…」ガチャ、ドスン

大山「窓から捨てればいい…?」

上条「お前は部屋の電気を付けて、両手をあげていろ」

大山「わ、わかった…」

上条「…よし、いいだろう」


一方通行「なァーにが良ィんだァ?三下ァ?」


上条「なっ!?」ビク

SSS「!?」

スタスタと。
一方通行が校舎から歩いてくる。

上条「お前…寝てたんじゃ…」

一方通行「へェ?よォーく知ってンじゃねェかよォ?なァんでだかなァ?」ニタニタ

上条「っ、どうして」

一方通行「よくある手だよなァ?敵勢力にスパイを送り込むなンざよォ?」

日向「えっ…!?」

ゆり「スパイ!?」

一方通行「オマエら気付いてなかったンか?」

上条「クソ、気付かれてたのか」


一方通行「あァ。なァゆり、TKを最近見ねェんじゃねェか?」


SSS「!?」

日向「まさか…」

松下「冗談だろ…」

大山「う、嘘だぁ!」

ゆり「そういえば…こんな大事が起きてるのに…一度も顔を出さないで…でも前からいつもフラフラしてたし…」


一方通行「アイツは、上条達のスパイなンだよ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

沙耶「はぁっ…はぁっ…」

沙耶は夜の校舎を疾走していた。

ふと、視界の端に光を感じた。

沙耶「誰!?」

それは銀色に光る二丁の拳銃。

沙耶「…Oh…what doing?」

沙耶「TK?」カチャ

TK「Do you know?」カチャ

TK「I 'm a double agent」

沙耶「…You make a bad choice」

TK「The choice is mine.…moreoverーー」

TK「They are my friend」

沙耶「“Friend”?…i…i don't understand! what does the word “Friend” mean!?」

沙耶の頬から涙がこぼれ落ちた。

沙耶「I know nothing about it. because i was dead……!!」

沙耶は構える拳銃に力を込める。
仮面の下に、涙をこぼしながら。

沙耶「(ねぇ…理樹君?)」

沙耶「(あたしに教えてよ、“Friend”の意味)」

パン!

銃声は、一つだけ聞こえた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方通行「なァ?上条、オマエらはスパイされてたンだよなァ?」

SSS「えっ!?」

上条「どうやら、その様だな。ことごとく情報が間違っている」

ゆり「ダブルスパイってこと…?でもあたしそんな事命じてない…」

一方通行「はっはァ!そりゃそォだろうよ、なにせオマエら」

一方通行「アホだからなァ」

ゆり「んなっ」

一方通行「オマエらがバカやってる間にあいつァ情報集めてくれてたンだよ。さっきTKから言われたンだけどな」

一方通行「俺には三つの選択肢があるらしいぜェ?このまま過ごして消えるか、かつての戦友と再び組むかーー」

一方通行「オマエらSSSと一緒に上条を撃退するかだとよォ」ニヤ

上条「…一方通行。オマエだってこの世界に来たんだろ?なら俺たちの側に来るべきだ」

一方通行「なァに言ってンだァ?俺ァちゃんと満足して死んでンだよォ。何故ここに来たかなンて知らねェがな」

上条「……なら、お前に俺らを止める資格はない」

一方通行「知ったことかよ。上条ーーいや、三下ァ、てめェがやってるこたァ三下がやる手口なンだよ。ンだァ?その面はァよォ?てめェが今なにしてンのかわかってンのかァ?なってねェなァ、本物の悪ってェもンを見せてやるぜェ」

一方通行「俺ァ今からSSSだァ?いいな、ゆり?」

ゆり「えっ、う、うん」

一方通行「オーケイ、じゃァまず三下ァーー」


一方通行「俺の仲間を、ゆりを離しやがれェ!」

上条「断る」

一方通行「そォ言うと思ってたぜェ」スタスタ

一方通行は一歩一歩、上条と上条に拘束されるゆりに向かって、歩み寄る。

上条「それ以上こっちに来るな」

一方通行「……」ピタ

日向「お、おい。どうすんだ?一方通行。近寄れねえんじゃどうしようもないぜ」

一方通行「……ゆり、俺が隙を作ったらァ自力で逃げられるか?」

上条「そんなことはさせない」

ゆり「あなたが、やってくれるなら…あたしはそれに従うわ」

一方通行「よォく言った。ちったァ利口じゃねェか」

ゆり「っ!」

日向「一方通行が微笑んだ!?ってゆりっぺがまさか赤くなってる!?マジかよ!」

ゆり「う、うっさいバカ日向!なんで暗闇でわかんのよっ」

上条「……はぁ。わからないな、どうしてお前がこんな連中を仲間にするのか」

一方通行「俺ァ教師とか向いてたンかもしれねェなァ。こういうバカ共を導いてやるよォな熱血教師がよォ」

ゆり「教師……」

上条「…それがお前がここに来て為すべきことなのかもな。だからバグとしてやって来たか」

日向「なるほどな…」

松下「だがどうやって隙を作るのだ?」

大山「状況は変わらないよね」

一方通行「膠着状態を破るのは戦術じゃねェ、会話だ」

上条「俺の動揺でも誘う気か?」

一方通行「聞きてェンだろ?生前のよしみだァ嘘は吐かねェ、超電磁砲がどォなったかを教えてやンよ」


一方通行「御坂美琴はァ、死んだンだよ」

 

 

 

 

 

上条「死ん……?」

一方通行「死ンだ。てめェが殺されてすぐにな」

上条「う、そだ……」

一方通行「嘘じゃねェ。即死だった。俺とエツァリが到着した瞬間だ」

上条「うそだろ…」

一方通行「超電磁砲はオマエに寄り添って死ンでた。戦いは、俺らが倒して終った。まァ次のでけェ戦いがあって、そこで最後に俺ァ死ンだンだがな」

上条「そんなはず、ない」

一方通行「エツァリはそこで死ンだンだけどな?てめェと超電磁砲が一緒に死ンだから、ちゃんと約束を果たしてくれたってェ笑ってたぜ?だからあいつはこの世界には来ねェ」


上条「嘘だと言えーー!!」


一方通行「全て、事実だ」


上条「あ、あぁああ…」

一方通行「超電磁砲は、死ンだ。だがこの世界には来てねェ」


一方通行「わかンだろ?あいつは満足して死ンだンだよ」


上条「う、あ…あ、あぁぁああああああ!」

 

上条「……」

一方通行「もう、いいンじゃねェか?」

上条「な、に…?」

一方通行「オマエは超電磁砲が心配で仕方なかった。だがよォ、超電磁砲はちゃァんと満足して死ンだ」

上条「……」

一方通行「あいつァ次の人生に走り出したンだ。もう会えねェよ。だからもう、オマエがやることなンざ」

上条「…ふ、はは」

一方通行の言葉を遮り、上条は途端に笑い始めた。

上条「は、はははははははははは!なんだよ、そりゃ」

ゆりに向ける拳銃がカチカチと震える。

上条「美琴が、満足して死んだ?」

上条「だから、どうした…」

一方通行「……」

上条「それで?俺はあぁ、よかった。なんて言って消えるとでも?」

上条「一方通行さ、お前満足して死んだんだよな?はは、やっぱそんなお前にはわかんねえよ」


上条「俺は何が正しいか、何を為すべきかなんてどうでもいい。ただ、神を殺したいだけだ。それこそーーお前にはわかんねえだろうがな…!」


上条が、ゆりに向けていた拳銃を上空に向けた。
立て続けに二発。
深夜の校庭に銃声を響かせる。
それは合図だ。
校庭に潜むいくつかの影が動いた。
白い翼が夜闇で羽ばたいた。
一方通行は目を見開く。


垣根「ハッ、やっと出番かよ。よぉ一方通行、元気してたか?」

一方通行「なンでてめェがいるンだよ」

麦野「なんでかしらね?わからないなら、第一位の頭脳は空っぽなのかしら」ツカツカ

垣根「違げえねえな」バサバサ

仮面男(音無)「こいつらが、敵…なのか?」

上条「ああ、そうだ」

音無「だって、この状況じゃまるで俺たちのほうが悪役じゃないか!」

上条「こんな世界に悪も正義もない。戦いに美学なんて持ち込むなよ」

音無「っ、そ、そうかよ」

垣根「はは、そりゃ上条よ、一方通行への当てつけか?」バサバサ

麦野「ていうかリーダーはどうしたの?」

上条「あいつなら、校舎内を探索してる。どこかにおかしなところがないかを探してな」

垣根「ふぅん。それじゃ俺たちはこいつらを地に伏せさせればいいんだな?」バサバサ

一方通行「クックククク」

一方通行「だァれに向かって言ってンだァ?三下どもが」

一方通行の反応は早かった。
完全にゆりのことから意識が逸れた上条。
上条の顔面を狙って小石を蹴り飛ばす。
ベクトル操作を使い、弾丸のような速度で発射される。

上条「うおっ、と」

上条が身を屈めてそれを避ける。
ゆりから手が離れる。
同時、ゆりが全力で踏み込む。
上条が再びゆりに手を伸ばす。
一方通行に向かって走り出すゆり。
上条は伸ばしかけた手を戻した。
一方通行が風を起こして、ゆりを優しく包むように拾い上げたためだ。
ゆりは一方通行の元に落とされる。

一方通行「返してもらったぜェ」

麦野「あん?お姫様取られちゃったわよ?」

上条「構わないさ」

上条「俺はリーダーの後を追う。お前らはあいつらを拘束でもしといてくれ」

垣根「はいはい、了解っと」

麦野「さぁてこいつらはどれだけ出来るのかなーん?」

上条「……」バッ、ツカツカ

一方通行「おい待て三下ァ」

上条「なんだ」

一方通行「NPCが、人間じゃねェって言ったなァてめェ」

上条「そうだな」


一方通行「オマエは死んでいったクローンのあいつらにも同じことが言えンのかァ?あァ!?」


上条「ふざけんな…」

上条「あいつらは人間だ…」

上条「じゃあな」ツカツカ

一方通行「…………」

 

 

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沙耶「はぁ…はぁ…」

沙耶は仮面を取ると、流れる涙を拭いた。

沙耶「…はぁ…なめないでよ、あたしはこれでも凄腕スパイなんだから…」

沙耶の持つ拳銃からは煙がたっている。
廊下に伏すTKの二丁の拳銃が、火を吹くより速く、沙耶がTKの左胸を撃ち抜いたのだ。

沙耶「あたしは…はぁ…諦めるわけにはいかないんだから」

TKを置いて歩き出す。

カツカツ、とわざとらしい足音が聞こえた。

沙耶「またSSSかしら?」

違った。
小柄な男子生徒。

男「貴女は誰ですか?うちの学校の生徒ではないようですけど」

沙耶「(NPCってこと?構う必要はないわ)」

男「僕は生徒会の副会長です。校内は関係者以外立ち入り禁止ですよ?」

男「それもこんな夜中に。生徒会長を呼んで判断を仰ぎますか。それとも教師を呼びましょうか?」

沙耶「知らないわよ」

ペラペラと喋る男を沙耶はNPCだと判断し、無視をしようとする。

男「僕の目を見ろ」

沙耶「だから何がーー」

そして、沙耶は見た。
妖しく光る目を。

沙耶「あっ……」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

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一方通行「俺が黙ってオマエを逃がすと思ってンのかァ?」

ダンッ、と一方通行は地面を弾いた。
上条が振り返る。
一方通行が必殺の両手を構える。
それを上条は予測し、一歩後ろにステップして構える。
迫り来る一方通行に右手を構える。
そして、一方通行の顔面に左拳を打ち込む。

一方通行「(これはフェイント、もしくは目くらましかァ?)」

右手以外で触れたら最後。
それは上条がよく知っていることだ。
一方通行の読み通りだった。
上条は左拳のフェイントを引き戻し、その勢いに乗って前のめりになる。
強く握られたのは右拳。
一直線に己に向かう一方通行の両の手を避ける。
腕と腕の合間を縫うようにすり抜け、一方通行の懐まで潜り込む。
上条の拳は確実に一方通行の心臓を狙っていた。

一方通行「(ッ!?マジィ!ンなもン食らったら確実に死ンじまう!)」

ベクトル操作で馬鹿みたいな勢いを出す一方通行。
そんな状態で心臓に上条の拳をぶつけられるのは、確実な死を意味する。
高速道路を疾走するバイクの運転手の心臓が、固定された鉄の槍に突っ込むようなものだ。
上条の拳は一方通行の心臓をえぐり、貫通するだろう。

一方通行「ッッ!クッソがァ!」

ベクトルを反対方向に操作し、緊急回避を行う。
上条の拳からすんでのところで逃げる。

グッ、と上条が踏み込んだ。

一方通行「ぐがァパァッ!?」グシャッ

上条の拳が一方通行の顎をアッパーした。

地面を転がる一方通行。

上条「垣根っ!」

垣根「おう、任せとけ」

上空を舞う垣根が、地に伏す一方通行に向かう。

一方通行「ンだァ?」

二枚の翼が肥大化した。
それで一方通行の上空を陣取り、翼をぐるりと伸ばしていく。

一方通行「チッ、面倒くせェ真似を」

一方通行を、白い壁が包んだ。
視界一面が白となり、密室にされた。

一方通行「ンなもンすぐに脱出ーー」

ガクン、と一方通行の体が崩れ落ちた。

一方通行「ぐァ、はっ…!」

何が起こったのか、すぐにわかった。

一方通行「てめェ…く、…そがァ…」

酸素が、なくなっていた。
それだけではない。
どんな化学現象が起こったのか、急激に酸素を奪われていく。
白い壁が吸い取るように、酸素を吸収していく。

一方通行「(二酸化炭素を、酸素にベクトル操作する!)」

だが、二酸化炭素に異物が入り込んできた。
垣根の作り出す、存在しない物質だ。
結合する異物。
取り除くのにかなりの手間がかかる。
ベクトル操作に時間がかかる。

遂には一方通行は演算しようとするも、脳の酸素がなくなり、演算が止まる。
そのまま、一方通行は意識を失って倒れた。

垣根「俺の未元物質に常識は通用しねえ」

薄れる意識の中で、そんな声を聞いた気がした。

 

 

上条「……それじゃ、後は任せたぞ」

垣根「へいへい。さーてそこのカワイコちゃん、覚悟は決まったかな?」ニヤニヤ

ゆり「うそ……」

日向「一方通行が…やられた?」

松下「マズイな、こいつらも超能力者だ」

上条「……」バッ、タッタッ

上条はその場を走って離れる。

校舎の窓を蹴破り、侵入する。

上条「……」ダッ、タッタッ

階段を駆け上がる。

ユイ「にょわぁっ!」

上条「っ」ビクッ

上条「だ、誰だ!」グイッ

ユイ「わぁっ!ぐ、あぁぁあ!い、痛いです!い、い嫌ぁ!」

上条は背中に回って押し倒し、腕を拘束する。
膝を背中の少し上の辺りに押し込んで体重をかけ、重心を捉えて動けなくする。

ユイ「や、やだぁ!痛い痛い!誰!?」

上条「…この学校の生徒だな?」

ユイ「ひぃっ、は、はいぃぃ!」

上条「今、俺の顔を見たか?」

ユイ「み、見てないです!暗闇で!ホントに何も見えませんでした!」

上条「…そうか。こんな時間に何をしている?」

上条はベルトに挟んだ仮面を取り出して装着する。

ユイ「あ、あの」

上条「何を、していた?」グイッ

ユイ「ぐ、あァぁあああ!バ、バンドが終わったので!ちょっと自動販売機に向かってたところです!」

上条「バンドだと?」

ユイ「は、ハイィィ!食堂を貸し切って生徒たちにライブをしてました!」

上条「……その制服、SSSだな?」

ユイ「え、ええ…」

ユイ「あっ、でもでも!今言ったことは嘘じゃないですよ!?」

上条「なら話せ。お前が何を何のためにやっていて、それがSSSとどう関係しているのか」

ユイ「は、はい」

そして、ユイは説明した。
天使、陽動部隊、トルネード、食券確保、消えないように、などなど。

ユイ「ですから今トルネードが終わり、他の人達は食堂にーー」

ひさ子「ユイっ!?」

上条に乗りかかられているユイを見つけ、ひさ子が血相を変えて走ってくる。

上条「チッ、動くな!」ガチャ、チャキッ

ひさ子「!?」

上条は拳銃をユイの頭に押し付け、ハンマーを起こす。

上条「…そこで、止まれ」

ひさ子「……」

上条「お前も、SSSか?」

ひさ子「ああ、あんたは何者なーー」

上条「黙れ。俺の質問に答えろ。今、こいつを呼んだな?お前も陽動のバンドメンバーか?」

ひさ子「…あぁ」

上条「こいつから大体のことは聞いた。これより俺たちはお前らを拘束するんだが、知らないよな?」

ひさ子「なっ!なんだよそれ!」

上条「ゆり、っていうお前らのリーダーに確認するんだな。今頃校庭で地べたに転がっているだろうが」

ひさ子、ユイ「っ!?」

上条「それで、トルネードの部隊はのんきに飯食ってんのか。ははっ」

ひさ子「……」

上条「…フン、いい眼だ。ほら、行けよ」

ひさ子「なに?」

上条「どの道お前ら全員拘束するんだ。俺は拘束班じゃないから、お前らを拘束するのは手間だしな」

上条「だから校庭でお前らの仲間同様に、まとまって俺の仲間に捕まってくれたほうがいい」スクッ

上条はユイの上から立ち上がり、拘束を解いた。

上条「行けよ」

ユイ「……行きましょう、ひさ子さん」

ひさ子「あぁ…」ダッ

上条「……さて、沙耶と合流するか」

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校庭ーー

ユイ「っ!?」

SSS「!?」

そこは、地獄だった。

人だったモノ、肉片が飛び散り、鮮血が水溜りを作っていた。

それを見て、誰もが息を呑んだ。

ガチガチに震えて、その場からしばらく動けなかった。

地獄の中心には、一人の悪魔がいた。

彼以外、誰もが倒れている。

二枚の、巨大な漆黒の翼。

それを背中に生やす彼は、

鮮血を飛ばして舐める彼は、

紛れもない悪魔だ。

一方通行「dgkprpsjbtkepwncotnfjkdop」

最強の超能力者が、そこには君臨していた。

 

垣根ーー

何が起こったのか。

黒い翼が脅威だということを、垣根は理解していた。

あれはピンチの時に現れるものだと。

だが所詮、人間の身体を動かしているのだ。ならば生命活動なしには不可能。

だから、一方通行から確実に酸素を奪い、血液中に酸素が流れないようにしようとした。

上手くいった。

一方通行は、体内で二酸化炭素と水を材料に酸素を作り出そうとするだろう。

人工的な光合成として、さらに光エネルギーの代用エネルギーをベクトル操作で生み出し、学園都市の最新化学技術の真似をするのだ。

一方通行の能力はベクトル操作。水素と酸素を化学反応させて電気を取り出すことなど造作もない。

体内でエネルギーを生み出し、二酸化炭素と水を材料に酸素を生み出し、酸素と二酸化炭素を半永久的に循環させようとするだろう。

それを破るために、垣根は二酸化炭素と結合する物質を生み出したのだ。

これだけの操作をする一方通行に、二酸化炭素から異物を取り除かせる。

そんなことをしていては、必要量の酸素が間に合わず、倒れるだろう。

完璧だった。

なのに、

何故か一方通行は立ち上がった。

垣根は一つだけ見落としていた。

ここが、死後の世界だということを。


一方通行「rbetogwtkotffjiekleqi」


一方通行は、酸欠で死んだのだ。

そして、再び元の身体に戻った。

このタイミングを、死んでも生き返るということを垣根は完全に忘れていた。

どれだけのベクトルをかき集めたのか、一方通行は触れてもいない垣根の身体を締め付ける。

垣根「ぐ、あぁああ!」

垣根の意識が飛ぶ。

ブシュッ、音を立てて垣根の身体にが弾けた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ゆり「っ…う、……っ!?」

ゆりは起き上がり、その惨劇に目を見開いた。

敵は全て全滅。

一方通行は背中から黒い翼を生やして暴れている。

ゆり「止めなきゃ…」

腰を上げ、校庭へ降りる階段の前で立ち尽くすSSSメンバーに気付く。

ゆり「恐怖して、誰も動けないのね……」

ゆりは今の一方通行にあまり恐怖を抱かなかった。

彼の笑顔を見たからだろうか。

ゆり「一方通行君…」スタスタ

歩み寄り、声をかける。

一方通行「ffjeohepwntpwnoftspdbj」

聞こえていないのか。

ゆり「ねえ、一方通行君」スタスタ

危ない、とSSSの誰かが言った。

だがゆりは止まらない。

撒き散らすベクトルで飛んできた石が、ゆりの頬を裂く。

それでも、止まらない。

一方通行の正面に立つ。

ゆり「あたしね、初めて出会った時あなたのことを怖がっての」

一方通行「howngptrdpcnroehgospep」

ゆり「でもあなたは岩沢さんの望みを叶えてあげた。手伝ってあげた」

ゆり「あたしは、まだ消えたいなんて思えないけど……けど、あなたは間違いなく岩沢さんを救ってあげたんだと思う」

ゆり「あたしはね、なんだかずっとあなたのことを気にかけてたの」

一方通行「wgtdatmjpgumtpatgtdp」

ゆり「ずっと、一人で全て悟っているかのようなあなたが、気になってた」

ゆり「あなたは満足して死んだと言ったわよね。でも、あなたは幸せに満ちた人生を本当に過ごせてたの?」

ゆり「違うわよね。あなたの、その悲しげな目を見ればわかる。どうしようもなく苦しんで、頑張って生きてきたんだよね」

ゆり「それでも、最後には満足して死んだ。自分の人生を呪わずに死ねた。そんなあなたにとって、あたし達のやっている事は幼稚に思えたでしょ?」

ゆり「そんなあなたが、あたし達SSSに入ってくれると言った。嬉しかった。なんなんだろうな、この気持ち…」

一方通行の翼がゆりを狙う。

ゆり「ねぇ、あたし達を導いてくれるんでしょ?ーー先生?」

ゆりに触れる寸前で、翼が止まった。

ゆりはニッコリと笑った。

ゆり「うん、やっぱり一方通行君は一方通行君だ」

ゆり「そんな悲しそうな顔で暴れるのはもう、やめようよ」

ゆりは翼の合間を抜け、一方通行に抱きついた。

ゆり「ねえ、目を覚まして?一方通行君」

一方通行の翼がゆりを突き刺そうとする。

しかしギチギチと音を立てて止まる。

しばらくそうした後、翼は消え、一方通行は気を失った。

倒れかかってきた一方通行を抱きかかえ、ゆりは優しく微笑んだ。

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それからどれだけ時間が経ったのか。

再び目覚めた垣根は、学校の外だった。

垣根「助かったぜ」

絹旗「全く、超負けててビックリしました。三人とも私が超運んだんですよ」

垣根「で、お前の仕事は?」

絹旗「超完了しました。SSSの武器庫を発見し、超焼き払って来ました。対天使のためにギルド連中を連れ出したことを、リーダーが超教えてくれたので簡単でしたよ」

垣根「後は、あいつらがどうなるかで俺たちは次の行動を考えたほうがいいな」

 

 

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沙耶「え……」

目を覚ました沙耶。

そこは、芝生の上で。

木に寄りかかって寝ていたようだ。

沙耶「ここは……うそ……」

そこには懐かしい学校が見えて。

自分がいるのは、その中庭だと気付いた。

理樹「あ、やっと起きたね沙耶」

沙耶「え…うそ、うそうそうそ…!りり理樹君!?」

優しく笑う、最愛の人がいた。

理樹「もう、沙耶ったらぐっすり寝ちゃうんだから。僕も一緒に午後の授業サボるハメになったじゃないか」

沙耶「え、え、え」

理樹「ん?どうしたの沙耶?」グッ

沙耶「うひゃあっ」

顔を寄せられ、沙耶は変な声をあげてしまう。

沙耶「りりり理樹君!」ズササッ

理樹「…いきなり離れてどうしたの?」

沙耶「え!や、その、あの…うぅぅ…そ、そうよ!恥ずかしかったのよ!いきなり大好きな人に顔を近付けられてめちゃくちゃドキドキしちゃってあれこれキスされちゃうのヤダヤダ嫌じゃないけどなんて考えちゃうぐらいドキドキして恥ずかしかったのよ!どうよ、滑稽でしょおかしいでしょ笑えばいいじゃない!何一人発情してんだこいつって笑えばいいでしょ笑っちゃいなさいよあーはっはっは!って!」

沙耶「あーはっはっは!」

理樹「うん、いつもの沙耶だね」

沙耶「そこで微笑むなぁー!」

キーンコーンカーンコーン

理樹「あ、チャイム鳴ったね」

沙耶「あぅ。……てあれ、なんであたしここにいるんだっけ…」

理樹「まぁまぁ、気にしないで」

沙耶「いや、ちょっと待って、あたしは何か…」

理樹「じゃあローソンとセブンイレブンどっちに行こうか」

沙耶「そうねぇ、だったら……って!なんでそんな話になってるの!?」

理樹「え?だってローソンだよ?」

沙耶「おかしな理樹君が来たぁー!なんでそんなにコンビニネタが好きなのよぉ!」

理樹「あはは、沙耶は面白いなぁ」

沙耶「違うからね!?今ボケてたの間違いなく理樹君だからね!?」

理樹「あはは。…あ、恭介ー!」

恭介「おう、お前ら何授業サボってんだよ怪しいなぁ」

理樹「沙耶が寝ちゃってね。ほら、沙耶行こう?」

沙耶「え?どこに?」

恭介「俺たちリトルバスターズは、今野球をしてるところじゃないか。寝ぼけてんのか?」

理樹「沙耶は寝ぼすけだなぁ。ほら、行こう沙耶」

理樹が伸ばした手を、掴もうと沙耶も手を伸ばす。
自然と、笑みが浮かぶ。

ーーその幻想をぶち壊すーー

突然聞こえたその一言で、そんな世界が壊れた。

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