土御門「天使が存在するんだ、悪魔がいても不思議じゃないぜい」


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窓もドアもないビルに土御門元春はいた。
目の前には赤い液体で満たされた巨大な円筒器の中に、緑色の手術衣を着て逆さに浮いている男、アレイスター・クロウリーがいた。

「今回の件については本当に関係ないんだな?」

土御門が普段とは変わり、真面目な雰囲気でアレイスターに話しかける。

「あぁ、今回は私ですら予想外の出来事だ」

どうやって話しているのかは不明だが、液体で満たされた円筒器の中から、やけにクリアな声が土御門に届いた。

「だが、それすらもプランに組み込むんだろ?」

「さぁな、それについてはお前には語れない」

やはり、といった回答に土御門は思わず舌打ちをした。
この男が喋るはずがないのは当然である。
たった数秒会話したところで、土御門は窓もドアもないビルの案内人により、外に連れ出された。

「はぁ…これから忙しくなるにゃー」

そうつぶやき、土御門元春は動き出す。
これから起こる出来事が、彼の予想以上に壮大な事件になるとは知らずに───。

 

 

午後七時十五分ごろ。
上条当麻は、穀潰しとしか思えないシスターに急かされるように夕飯を作っていた。

「とうまー?今日もモヤシなの?」

卓袱台にちょこんと座り、両手に持ったお箸を立てて、駄々をこねるようにインデックスは言う。

「仕方ないだろ?我が家は貧乏なんだから」

誰のせいでこうなっているんだ!と思いつつも口には出さす、上条は淡々とモヤシ炒めを作る。
何故言わないのかというと噛まれるから、ただそれだけだ。

「ほれ、できたぞー」

そんなこんなで、モヤシオンリー野菜炒めが完成し、不満を垂れるインデックスを余所に、上条はセコセコと夕飯を食卓に並べる。
いつもと変わらぬ日常。不満があるといえば、お金がないことくらいのこの生活。
そんな平凡な生活も次の瞬間にはぶち壊されることになろうとは、この瞬間の二人には予想外であり、妄想ですら考えたことがなかっただろう。

「ねぇねぇとうま!ニュースなんかよりカナミンが見たいかも!」

「物を食べながら喋るんじゃありません!お行儀悪いぞインデックス」

「そんなこと言ったって仕方ないんだよ!」

ご飯、テレビ、上条の順番で目を動かし、口を動かし、目にも止まらぬ速さで飯を食らう。
可愛く言えばハムスターのようで、それ以外だとただの暴飲暴食シスター…。
などと上条は考えていた次の瞬間。

「とうまが悪いんだよ!ニュース番組なんかっ──」

インデックスの言葉が途中で詰まった。
テレビを見ながら話していた上条には、箸が落ちる音だけが聞こえた。

「急いで食べるからそうなるんだぞ?」

どうせ喉に詰まらせたんだろうと思いながら、インデックスの方へ顔を向ける。
だが、インデックスは上条の後ろを見ていた。呆然とした顔で。
そして細い声で呟くように言った。

「誰…?」

「は?」

疑問に思った上条がインデックスの視線の先、自分の後ろを振り向くと、
そこには黒いレインコートを着て前のボタンはキッチリと閉め、髪はボサボサで無精髭を生やした日本人の男が気配も無く現れ上条を見下ろしていた。

上条と見知らぬ男、目と目があった瞬間、男はゆっくりと右腕をを上げた。
ただそれだけの動作で座っていた上条の身体は浮かび、壁際に吹き飛ばされてしまった。

「な、なんなんだ…!?」

いきなりの出来事に頭が付いていかない。
いったいこの男が誰で何が目的で…そもそもどうやって音もなく気配もなくこの部屋に入ってきたのか。
上条にはそういったことすらも考える余裕がなかった。
だから咄嗟に身体が動かなかった。目の前でインデックスが攫われようとしているのに。

「とうま!」

インデックスの声が上条の耳に届いた時には、既に正体不明の男とインデックスの姿は無かった。
突如として姿を消したのだ。

「………」

あまりに一瞬の出来事に上条は言葉がでない。

吹き飛ばされた体勢で呆然としていること十数秒、家のチャイムが鳴った。

「今度は何だ…?」

手を付いてゆっくりと立ち上がり、ふらつきながら玄関へ向かう。
玄関のドアを開けて目の間に立っていた男は───。

インデックスが攫われていたほぼ同時刻。
一方通行はこれまでの事を暗部から与えられた隠れ家のソファーに寝そべりながら考えていた。
学園都市に突如として“天使”に似た何かが現れた0930事件。
「ドラゴン」と呼ばれる学園都市の最重要機密。
そして自分でも知らなかった黒い翼の正体。
これらのことを整理していたその時、上条宅で起きた出来事と同じように、いきなり男が現れた。
大富豪のイメージをそのまま映し出したような、中年小太りで黒いスーツに身を纏い、様々な装飾品を身に付けたイギリス系の男。

「なンだてめェは…」

咄嗟にチョーカーのスイッチを入れ、ソファーから飛び退いて男から距離を取る。

「そう恐れるな、一方通行」

男は左手中指に付けたゴールドの指輪を右手でくるくる回しながら低い声で言った。

「誰だって聞ィてンだろォが!」

いつでも動ける状態で一方通行は男に吠えた。

「お前に危害を加えるつもりは無い。助けを求めに来た」

「はァ?」

「私はウリエル、天使だ」

その名を聞いた瞬間に一方通行は呆れ返り、体勢を崩すして嘲笑う。

「ぎゃはははは。ウリエル?天使?てめェ俺を笑わし来たンですかァ?」

「お前も見ただろう?科学で作られた天使の姿を」

男は一方通行の言葉など無視をして淡々と続ける。

「そしてお前自身のその黒い翼。科学の力ではない。まぎれもなく天使の片鱗だ。」

「………ハッ!ありえねェなァ。この世に天使なんざ存在するわけがねェ」

「そうか、信じないか…」

男がそう言った瞬間、部屋中が光で包まれ、まぶしさのあまり一方通行は目を閉じた。
数秒間、目も開けられないほどの光が瞼を通して感じられ、
それが終わって目を開けてみても、目がその場の光に馴染むまでにしばらくかかった。
そして周りの光景が見えてきたころ、一方通行は思わず呟いた。

「なンだこれ…」

今まで部屋の中に居たのに、目の前に広がっていたのは、見たこともない場所。
学園都市ではないことは一方通行にも分かった。
レンガでてきた建物の廃墟がずらりと無造作に並んでいる。

「ここは何処なンだ?」

その問いにいつの間にか一方通行の横に立っていた男は答える。

「“今”ではないどこかの国だ」

外より二十年は科学技術が進んでいる学園都市の能力者の中で第一位の一方通行でも、
さっきの現象について説明できなかった。理解不能だった。

「何がどォなってやがる………」

疑問しか残らない一方通行の目の前に、白人と思われる一人の男が歩いていた。
その白人男の頭上から、黒い煙のようなものが降りてくる。

「おい、あれはなンだ」

黒い煙は白人の男の身体に染み込むように入っていった。

「取り付かれたか」

一方通行の横に立っている男がそう言うと、“取り憑かれた”という白人の男は辺りに人がいないか確認するような動作をとり、
高さ10mはあろうと思われる建物へ飛び移った。

「肉体強化の能力者か?」

「いや、違う。悪魔だ」

「悪魔だとォ?」

一方通行にまたしても疑問が残った。
天使だの悪魔だの、本当に存在するのか、という疑問だ。

そんな疑問を抱いている一方通行の真上から“取り憑かれた”白人の男が飛び降りてきた。
ベクトル操作の能力を持つ一方通行は、白人の男が襲ってこようとも微動だにせず、ベクトルを操作し白人の男を10mほど吹き飛ばした。

「ハッ!悪魔と聞いてどンなもンかと思ったが、ただの人間じゃねェか」

「悪魔を信じるか?」

横に立つ男は言った。
そして吹き飛ばされた白人の男のところまで歩いて行くと、白人の男の額に手を当て、何語かわからない言葉を発した。
すると口、目、鼻、耳、穴という穴から白く眩い光が漏れ出し、白人の男からさっきの黒い煙が湯気のように出て行き、上空へ消えていった。
そして白人の男はその場に倒れこんだ。

「悪魔に取り憑かれると、身体はボロボロになり最悪の場合は死ぬ」

さきほどまで、白人の所にいた男が瞬間移動でもしたかのように一方通行の目の前に現れては言った。
そして再び目の前が光で包まれ、元居た部屋へと戻ってきた。

「世の中には天使と悪魔が存在する」

そして男は確かにそう言った。



玄関を開けると、そこに立っていた男は───。

「なんだ、土御門……か」

「ようカミやん、さっきの物音はなんだにゃー?」

陽気な感じで土御門は上条に尋ねるが、上条のいつもとは違う雰囲気を見て顔色を変える。

「なにかあったのか?」

「………」

しばらく沈黙が続く。
その間、上条は何度も喋ろうと口を開けては閉じてを繰り返していた。
そして言い難そうに、頭を掻きながら今さっき起こった事について話し出した。

「───インデックスが攫われた」

「なっ、それは本当か!?」

いつもの口調とは違い仕事用とやらの口調で、さっきまでのふざけた雰囲気は今の土御門にはなくなっている。

「話を聞く限りじゃ、そいつは悪魔の仕業だ」

「悪魔」という単語を聞いた上条の顔は驚きを隠せていない。
誰もがこういう反応になるのは当然だといえば同然だが。

「はは…土御門、今はふざけてる場合じゃねぇんだ」

「ふざけていない」

やはり真剣な面持ちで、そして冷静に土御門は言う。

「カミやんも天使なら見ただろ?」

「ミーシャ=クロイツェフか…」

ここで話が長くなりそうだと感じた上条は、そこで土御門を家に入れさっきまでインデックスがいた場所に座らした。
散らかしっぱなしだった食器等も片付け、二人分のお茶を入れ直し、土御門と向き合うように座った。

「で、悪魔だったか…本当にいるのか?」

「天使がいるんだ、悪魔がいても不思議じゃないぜい」

上条の雰囲気がいつもと同じように戻ったと感じ取った土御門も、いつもと同じような口調に戻った。
ただし、真剣な面持ちは崩さずに。

「気配もなくいきなり男が現れたと言ったが、そんな芸ができるのは天使か悪魔くらいだにゃー」

そして、と土御門は続ける。

「天使がカミやんやインデックスに用があるとは思えないしな」

「ん…?悪魔がインデックスに用があったってのか?」

「あぁ、どんな用かは知らんが何かあるはずだぜい」

次に土御門はとんでもないことを言い出した。

「天使と悪魔が戦争をおっぱじめやがったんだにゃー。それで必要になったんだろう」

数秒ほど、上条の動きが止まる。

「そして、勝った方がこの世界を支配するんだぜい」

「……じゃあ、天使に勝ってもらえば……」

「いや、違うぜ」

土御門は人差し指を立てて、横に振りながら言った。
そしてその後、全人類が我が耳を疑うことを言う、それは……。

「……俺たちが勝つんだにゃー」

「は…?」

上条の頭が更に混乱する。
今ですら辛うじて着いてこれているか…くらいだろう。

「悪魔が勝てばこの世界は地獄だ、それはわかるにゃー?」

「あ、あぁ…」

「天使が勝てばこの世界は天国、ではなく地獄だ」

「その意味がわかんねぇ」

「多くの天使達は人間を嫌っている。天使は何よりも愛していた神に、自分達より劣等な人間を“神より愛せ”と言われてるんだぜい?」

「……」

「それに反逆したのが、今は魔王サタンとも言われる元全天使の長であるルシファーだにゃー。
 そして、そのルシファーの意見に賛同した天使は約半数近くもいるんだぜい」

上条の度重なる沈黙に、土御門はまだ続ける。

「どっちが勝っても俺たちに未来はない」

 

                                                   つづく

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