とある世界の残酷歌劇 > 幕間 > 07


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――――――――――――――――――――







ずず…………ん…………。

遠くから音が聞こえた。

重く響くそれは地響きにも似ている。
建物全体が微動しパラパラと小さな砂のようなものが落ちてきた。

垣根は天井を見上げ目を僅かに細めた。

「……」

暗部に属する誰かが戦闘をしているのだろう。
他にも可能性はあるがこの場面でそれ以外の要素は考えられない。

味方、『スクール』の中には建物全体を振動させるような強力なエネルギーを発する能力者はいない。
もっとも砂皿が爆発物でも使ったなら別だが、アイツはそんな雑な仕事をするような玉じゃない、と垣根は自らの考えを否定した。

となれば、最も可能性が高いのは。

横目で麦野を見れば、思いつめたような沈鬱な表情を浮かべていた。



(心当たりがある、か。しかし『アイテム』の誰かだとしたら……相手は誰だ?)

現在この場にいるのは麦野たち『アイテム』と垣根たち『スクール』だけのはずだった。

砂皿は外部への警戒を担当させている。
緊急の埋め合わせである彼を信用していない訳ではないが、信頼し切るには足りない。
屋上あたりで主要連絡経路を抑えているはずだった。

そして残る二人は施設の制圧と『アイテム』の残り三名への陽動を担当している。
同系列の能力者か余程の特殊な例を除き『心理定規』はほぼ敵無しだ。

とすれば――。

(アイツか? いや、『アイテム』を相手には出来る限り交戦しないようにっつってある)

垣根の思い浮かべた頭に土星の輪のようなゴーグルを付けた少年。確かに彼ではない。
彼は『アイテム』の構成員ではない浜面と交戦し、既に死亡しているのだがその事を垣根が知るはずもなかった。

(って事は、まさか――)

嫌な予感がした。

少なくとも『アイテム』の誰かであろう人物が交戦している相手は施設の一般局員や警備員の類ではない。
能力者か、さもなくばそれに類する特殊能力を持った誰か。

学園都市の暗部に属する誰か。

(――『スクール』でも『アイテム』でもない、第三勢力がこの施設にいやがる――!)



「……麦野」

呼びかけ、垣根は横に立つ少女を見る。

こちらを向いた彼女は――、

――ああ。それだけで充分だ。

すぐにいつもの暗部組織『アイテム』のリーダー『麦野沈利』の顔に戻る。
そこにはもう弱々しい彼女の顔はなかった。

が、彼女が垣間見せた年相応の少女のような表情に垣根は頷く。

垣根は麦野に約束した。
彼女を、そして他の『アイテム』の少女たちを守ると。

彼女の信頼を勝ち取るためにも。
同時に自身のプライドを守るためにも。

そして、口にはしないが、ほんの一瞬だけ見えた麦野の表情に応えたいという小さな思いから。

「――――行くぜ」

両手をジャケットのポケットに入れたまま。
視線は往く先、射抜くように見据え。

ばさりと、背に白い羽毛に似た光が翻る。



「――――俺の女を泣かすヤツはぶち殺す」



学園都市序列第二位。

『未元物質』垣根帝督が出陣する。






――――――――――







「ほらほらどうしたんですか。足が遅くなってますよ」

背後からかけられる声に浜面は苛立たずにはいられなかった。

査楽の能力は常に相手の背後を取るものだ。
空間移動能力者を相手に背を向けるなど愚の骨頂でしかなかったが、この場合最良の選択とも言えた。

常に背後から距離を取る前方への疾走。
飛び道具を持たない事は今までの攻撃から承知している。
逃走し続ける事が査楽に対する最良の防御手段だった。

しかし浜面が手を引く滝壺が問題だった。

彼女は浜面の全力疾走についてこれるほどの体力を持っていない。

素の筋力や持久力はもちろん、体晶の副作用からか明らかに体調が芳しくない。
吐く息は荒く、不規則だ。顔面も蒼白で額に浮かんだ汗に前髪がべっとりと張り付いている。

ともすれば転びそうになる滝壺だが、それでも不規則な呼吸を抑え込むように歯を食いしばり必死に浜面についてきている。

(逃げるのも長くはもたない)

彼女の横顔に軽く視線を遣り浜面は思う。

浜面の勝利条件はこの場に麦野が登場する事だ。
それまで時間稼ぎができれば浜面の勝ち。それまでに掴まってしまえばゲームオーバーだ。




だが麦野との連絡を取る術がない。
携帯は通じず、他の連絡方法も持っていない。

下働きである浜面には緊急用の連絡手段が与えられていない。
そもそも彼女たちにしても連絡手段が潰されるのは想定外だったのだろう。

どうせそのような事態に陥ったとしても個々の能力で打開できる。そう高を括って慢心していた感も否めない。

チームワークを最大の武器にする『アイテム』だからこそ各個撃破が最大の弱点であり、
そこに付け込まれたのはリーダーである麦野の落ち度でしかないのだが今言っても仕方がない。

麦野は元より『アイテム』の面々は肝心の所で詰めが甘い傾向がある事は何となく察していた。

目に見えてそれが強いのはフレンダだが(この前『仕事』の後片付けをしていたら彼女の仕掛けていた爆弾に危うく吹き飛ばされそうになった)他の三人も浜面からしてみれば大して変わらない。

タイトルからしてC級臭がぷんぷんするホラー映画を嬉々としてレンタルしてきた絹旗は手持ちのプレイヤーでは形式に対応しておらず再生できなかった事に嘆いていた。
(なぜか浜面が学園都市中のレンタルショップをハシゴする破目になった)

紅茶に砂糖と間違えて塩をしこたま投入した滝壺は口を付けて吐き出していた。
(なぜか浜面が淹れ直しを要求された上に出したものも不味いの何だのと文句を言われ続けた)

セーフハウスのソファで寝こけていた麦野を起こそうとしたら寝惚けた彼女に抱きつかれた事もある。
(なぜか浜面が直後に完全に目を覚ました麦野に意識が飛び駆けるほど殴られた)

そんな事を思い返しながら浜面は鉄火場にも関わらず笑みが浮かんでしまうのを堪えられなかった。



少女たちの顔を順番に思い出し、隣から聞こえる吐息と手に感じる温もりに意識を向ける。

見た目も悪くない、むしろ全員が美少女と呼んでいいほどだ。
顎でこき使われようとも悪い気はしない。けれどそれとは別に――。

(ああ……結局のところ話は簡単だ)

学園都市の暗部組織、粛清部隊『アイテム』。

そんなおどろおどろしい肩書きは彼女たちには似合わない。
浜面は知り合って間もないが、平和で騒々しいあの時間こそ彼女たちには似合っていた。

できる事ならずっと浸っていたかった。
それが泡沫の夢である事は分かっていても。
たとえ鍍金だったとしてもあの時間が紛れもなく輝いていた事を浜面は知っている。

そう思えるからこそ。

(俺はとっくに、まいっちまってるって訳……か)

情に絆される馬鹿な男だと思う。

けれど、あのどうしようもなくちっぽけだけど素晴らしいと思えるものを取り戻すためにと。

浜面は滝壺の手を引いて走る。



(なんとかしてアイツを出し抜かねえとだが……)

背後に意識を向け浜面は酸素の足りない脳を必死に働かせていた。

殺すだの何だのと啖呵を切ったはいいが、真っ向から能力者に対抗できるとは思わない。

浜面が生きていられるのは単に運が好かっただけだ。
もし査楽が拳銃を持っていたらその時点で負けは確定していた。

そうでないにしても逃げ続けるしかない。
明確な対抗手段がない現時点において浜面はひたすらに逃走するしかないのだ。

第一の勝利条件は麦野との合流。
『明確な対抗手段』、それもとびきりのものを持つ麦野であれば査楽程度は造作もないだろう。
だが施設は広い。どこにいるのか分からない麦野を探す前に体力が限界に達する。

元より滝壺を気遣わなければならない。
彼女を人質に取られればその時点で負けが確定する。

しかし運気は浜面に向いている。
この場、戦場そのものが浜面の味方をしていた。

この素粒子工学研究所は重要性も機密レベルも高い施設だ。
だからこそ無能力者の浜面にも勝算がある。

研究所に詰めている多くは大人――能力開発を受けていない一般人だ。
だとすれば。

第二の勝利条件。先程の言葉通り、浜面が査楽を殺す。

(いざという時のための、一般人にも扱える対能力者用の手段が必ず用意されているはずだ――!)



『アイテム』にお鉢が回ってくるのだ。
何らかのトラブルがあった際、馬鹿正直に警備員に頼れるような真っ当な施設ではないのだろう。

高位能力者は戦略的な要になるほどの強力なものを持つものもいる。
絹旗や、先程の黒夜とかいう少女であればその辺りの研究所であれば単独で制圧する事も可能だろう。
麦野については言うにすら及ばない。超能力者の持つ戦力は個人であれ一軍に匹敵する。

そういう能力者との戦闘は戦車や戦闘機を相手にするようなものだ。
その辺りにあるような『普通の装備』では勝ち目がない。相応の装備がある。

移送速度が極端に落ちる階段は使えない。
エレベーターなどもってのほかだ。

だからこのフロアにそれがある事を祈るしかなかった。

(駆動鎧……は高望みしすぎか)

恐らく浜面が運用できるであろう戦力の内、最上級のものが駆動鎧だがそう簡単に転がっているはずもない。

たとえ運よく手に入ったとしてそのまま対抗手段となるとは考え辛い。
浜面は専門的な訓練を受けている訳でもない。かといって知識なしに動かせるものは――、

それ以上考える事はできなかった。

「あっ――」

息を呑む声が聞こえた。それと同時に突然手に力が掛かる。

見ずとも分かる。滝壺が転んだのだ。

「っ、滝……!」

彼女の名を最後まで呼ぶ事はできなかった。

振り返ればそこに、寒気のする笑顔を浮かべた査楽が立ち、手にした洋風の鋸を振り上げていた。

「残念。追いつきましたよ」

「――――!!」

浜面が何か言うよりも早く刃が振り下ろされた。



上段から振り下ろされる鋸。
袈裟懸けに切りつけてくる刃は浜面の左肩へ。

ひゅうっ、と風切り音と共に迫る。
浜面は驚愕に硬直しそうになるが、

「――こ――のおおおおおッッ!!」

思考を停止させてはいけない。

自分は何の能力も持たない凡人だ。
能力者を相手に棒立ちになる事こそ自殺行為に他ならない。
常に最速で次の手を模索しなければ即座に死に繋がる。

怒声を張り上げ浜面は迎え撃つように右足を蹴り上げる。

「らぁっ――!!」

相手の得物は鋸だ。日本刀ではない。
切れ味が悪すぎるそれは引かなければただの金属の板と変わらない――!

踏みつけるようにスニーカーで鋸の中ほどよりもやや手元を受け止めた。
鋸の細かな刃が靴底に食い込む嫌な感触が足裏に伝わってくる。
まさか受けられるとは思わなかったのだろう。査楽の顔が驚愕の色に染まった。



――これだから能力を笠に着てふんぞり返っている奴は気に入らない。

数日前まで浜面のいた無能力者の集団。
路地裏の吹き溜まりのようなところにたむろしていた彼らの共通見解はそれだった。

理念というほど大層なものではない。
別に政治的な、宗教的な、道徳的な思想に則って行動している訳ではない。

彼らは単にテストの点だけで偉そうにしている連中が鼻持ちならないだけだ。

たったそれだけの感情論。
所詮子供と言われればそれまでだ。

けれど確かにこの場においてかつて浜面がいたコミュニティの存在は能力という絶対的な壁を凌駕し得る要素となった。

査楽の攻撃手段は鋸。引かなければただの細長い金属の板。

それではチンピラ御用達の鉄パイプと何ら変わりない――!

「悪りぃな、足が長くって」

査楽が鋸を引くよりも早く、自分でも馬鹿な台詞だと思いながら蹴り返した。
                      ケンカ
「こちとら路地裏のチンピラ同士の殺し合いなら場数踏んでんだよ!」



「く――無能力者風情がっ――!」

いい加減に痺れが切れてきたのだろう。
査楽の口から乱暴な言葉が零れる。

――――それでいい。

浜面は内心ほくそ笑んだ。
      ゆうとうせい
彼らのような能力者は自尊心の塊だ。少し馬鹿にしてやればすぐキレる。

憤怒や羞恥に溺れる思考ほど御しやすいものはない。
動きも思考も単調に。たとえ高位能力者であろうとこれでは無闇やたらにナイフを振り回すのと変わらない。
                   ぶき
能力を持つ者の優位性は単に能力の有無だ。
使いこなせば確かに脅威となり得るが、なればこそ単純に振り回すだけでは能がないのと変わらない。

蹴り上げは一瞬の時間稼ぎでしかない。
またすぐに査楽は鋸を振り被り二撃目を繰り出してくる。

横薙ぎ。
浜面から見て左手からの、胸ほどの高さの一閃。

避け辛いが殺傷力は低い。
これではたとえ攻撃をまともに食らったとしても腕が邪魔をして死には至らない。
もちろん痛みは充分にあるだろうし片腕が使えなくなれば利き腕でなくとも不利になる。

しかし、例えばここで片腕を犠牲にして。
カウンターでナイフを相手の胸に叩き込んだら。

小さなナイフだ。
本来は武器ではなく、小枝を削ったり糸を切ったりするためのサバイバル用のもの。
精々が釣った魚の腹を割き頭を落とすのがいいところだ。
刃渡りは六センチに満たない。それ以上は銃刀法で取り締まられているためにこの長さが限度だった。

だが心臓の上から垂直に突き立てれば充分な威力を持つ。
肉を裂くにはか弱すぎ、骨に当たれば止まってしまうだろう。

ならば眼球ではどうだろう。
どうやっても鍛えられない人体急所の一つ。
頭蓋骨の最大の弱点。眼孔に突き立てればそのまま脳への一撃となる。

選択肢は無数にある。

査楽はそこまで考えられてない。
感情に沸騰しかけた思考では冷静な判断を下せない。
浜面の思考のその裏まで読む事などできはしない。

浜面は、自分は違う、と思う。
思い上がりではない。感情はマグマのように煮え滾っているが思考は驚くほど冷静だ。
浜面仕上という人格から思考だけが分離してしまったような錯覚さえ覚える。

冷静に。冷静に。冷静に。
繰り返し、浜面は自身に。言い聞かせる。    バーサーカー
激昂は死亡フラグだ。キレたら負け。そもそも俺は狂戦士ってタイプじゃねえし、と嘯く。

思考は冷たく、氷のように。

鋭く、鋭く、研ぎ澄ます。



肉を切らせて骨を絶つ。確かに手段としては上等だろう。

しかし今ここでその手を使っていいものなのか。
査楽にしても黒夜にしても、浜面にとっては脅威以外の何物でもない。
左腕を犠牲にすれば査楽を仕留められるだろうが、その後更なる脅威が現れた場合に大きく不利となる。

殺傷はあくまで手段だ。目的ではない。
そこを履き違えてしまえば必ず失敗する。

第一優先は滝壺。
殺すのではなく生きる事、守る事が勝利となる。

故に浜面は起死回生のチャンスを捨てる。

手先の器用さには自信がある。
成功する根拠もなく己の技術だけを信じて。

蹴り上げた直後。
浜面は既に行動を起こしていた。

じいいいいいいいっ!! と着ているジャージのジッパーを下ろし最速最短の手順で左腕を抜く。
振り回す動きだけで袖を背を迂回させ、胸の前で裾を左手で、左袖を右手で掴む。

さながらアクロバットのようだ。
袖を抜く際に腕を引っ掛けてしまえば大きな隙を見せる事になる。
だが幸運にも――否、浜面は自負するとおりの技量をもって成功させる。

ひゅっ、と乾いた音。鋸の刃が空気を裂く。
予想通りに査楽は立て続けに二撃目を放った。

だから動きが単純なんだよ――!

左手に巻きつけるように握り締めた服の縄。

迫る刃をその内に受け止めた。



みしりと腕が軋む感覚。
しかし鋸の侵攻は止まる。

「なっ……!!」

まさか浜面がそんな行動に出るとは思っていなかったのだろう。
査楽の動きが一瞬止まる。しかし浜面はそれを見逃さない。

素早く左腕を二回転させ鋸に服を巻き付ける。

「げっちゅー♪」

慌てた査楽が鋸を引く。
ぶちぶちと嫌な音がするがそれだけだ。
服の繊維に刃が食い込み動きを阻害する。

そして二度目となる蹴り。
狙いは鋸を握る査楽の手。

「くぁ――っ!」

爪先が手首に突き刺さり査楽は思わず鋸を手放し後ずさる。

跳ね上がった鋸。
左手を離し右手を勢いよく右上に引く事で巻きつけた服が抜き取られ鋸が空中で独楽のように回転する。
そして刃の先端が上へ。柄は下へ。

左手で柄を握る。
金属特有の重量を逃がさず背後へと見送りながら査楽へと無呼吸で踏み込む。
そして。

「――――づぁぁああああっっ!!」

左手を力任せに振り抜いた。



恐らく、最高のタイミング。
武器を奪い、虚を突き、そして必殺の一手。

だが当たらない。

相手は空間移動能力者。
たとえ避けられないタイミングであっても認識された瞬間に攻撃は無力化する。

虚空に掻き消えた査楽。
その首が直前まであった場所を鋸の刃が切り裂く。

「ちぃっ――!」

浜面は舌打ちする。

このタイミングでも避けるか――!

査楽は臆病だ。
相手の背後に回るというその能力。
人質を取るというその選択。

それは常に相手の動きに注意を払っているという事に他ならない。
故に、最も敵に回した場合に組し辛い性質となる。

(どこに――)

考えかけて、考えるまでもなかったと思い返す。

査楽の目的はいわば浜面と同じ。
敵手の殺害は手段であり目的ではない。

背後に回るという能力の性質上、この場における可能性は二つ。

浜面か。それとも――、

「滝壺――!」

振り返ればそこには、彼女を後ろから羽交い絞めにする査楽の姿があった。



査楽は滝壺の首に右腕を回し引き摺り起こしていた。

彼女の両手は回された腕を剥がそうと抵抗しているが、指に力は入らず、弱々しくダウンジャケットを掻くだけだった。

「テメェ滝壺を――」

「動かないで下さい。滝壺さん、あなたも。あまり抵抗しないで下さいね」

ぐいっ、と見せ付けるように滝壺の顔を無理矢理起こし査楽は哂った。

「動けば、首を折ります」

「殺せないだろうが。殺せばそこでオマエの死は確定するからな。
 滝壺はオマエにとって大切な交渉カードだ。人質の殺害は複数人いてこそできる。
 盾がなくなればあとは一方的に蹂躙されるだけだ」

そうは言うものの浜面の背には薄ら寒いものが走る。
浜面が動けない事には変わりなかった。

万が一にも彼女を殺されてしまっては。

それだけは絶対に避けなければならない。



沈黙、いや……膠着。

浜面は手を出すことができず。
査楽もまた、滝壺を盾にすれど不用意には動けない。

互いに千日手のこの状況、先に次の手を打ったのは査楽だった。

「とりあえず、そうですね」

顎でしゃくるように指し、査楽は笑った。

「それ、返してくれませんか?」

浜面は視線を向けぬまま手に持つ鋸を意識する。

唯一の武器だ。査楽が他に武器を持たないとすればこれは大きなアドバンテージとなる。
手放せば圧倒的に不利になるのは明白だった。

だが浜面に拒否権はない。
彼が滝壺を殺せないとは分かっていても従う外ないのだ。

「……、……」

「早くしてください。時間稼ぎなど無駄な事は考えぬように」

査楽の腕の中の滝壺は疲れきったのかぐったりとしている。
もがいていた両手はだらりと下ろされ、不規則な荒い息を吐いている。

選択肢はない。



「……分かった」

そう言って浜面はその場にゆっくりとしゃがむ。
鋸を床に置き、そしてまたゆっくりと立ち上がる。

「そうです。そのまま後ろに――」

下がれと。

言う前に浜面は鋸を査楽の方へと床を滑らせるように蹴り飛ばした。

「っ――!」

攻撃ではない。
それにしては速度はあまりにお粗末だし、単純に査楽へと蹴って寄越したつもりだったのだろう。

だが長すぎ先端と柄の部分で比重の違う鋸は査楽の左手方向の壁へと向かう。
くるくると回転しながら平坦な床を滑り、そして壁にぶつかりかつんと音を立てる。

「ちっ――」

舌打ちし、思わずそちらに目を遣った瞬間。

どづっ、と鈍い音と共に右腿に激痛が走った。



「ぎぁ――――――っ!!」

その瞬間三者が同時に動く。

査楽は苦痛の悲鳴を上げ思わず拘束の手を緩め、

浜面は無言のまま二人に向かって駆け出し、

そして滝壺は、自分が突き立てたナイフを引き抜き査楽の手を振り解いて浜面へと駆け寄る。

浜面は自分の持っているツールナイフを使わなかったのではない。
使えなかったのだ。滝壺に渡していたから。

万が一にもこのような状況になった時のために。
彼女の自衛手段として浜面はたった一つ持っていたちっぽけな武器を渡していた。

そして幸か不幸か想定していた場面は訪れ、浜面の計は功を奏す。

打ち合わせなしのぶっつけ本番。
目配せすらなしに行われた二人の連携に驚嘆すべきだろう。

両手を広げ駆け寄る滝壺を浜面は抱き留める。
首に回された手は優しく、そして強く抱擁するためのものだ。

浜面は止まらない。速度を落とさず、半ばぶつかり押し返すように彼女を抱き上げる。

止まれない滝壺の下半身は速度を保ったまま、彼女の踏み切りによって方向を変え上へ。
救い上げるように出された浜面の左手によって膝を下から抱えられ、そのまま浜面に抱き上げられる。

そうして浜面は、滝壺を抱いたまま。

「――――っらぁぁああああ!!」」

二人分の体重を乗せた蹴りが、今度こそ完全に虚を突かれた査楽に叩き込まれた。



蹴り飛ばされた査楽には目もくれず、反動を不恰好に着地する事で逃がした浜面は再度疾走する。

なにせ絹旗の全力の蹴りを食らっても平然としていた男だ。
この程度が決め手になるとは到底思えない。

浜面は走る。
腕の中に少女を抱き、廊下を駆け角を曲がる。

「滝壺。大丈夫、か」

呼吸を乱さないように注意しながら浜面は問いかける。

「大丈夫。ごめんね、大分前から結構楽になってた。走っててあんまりにも疲れたから転んじゃったけど」

……つまり今までの具合の悪そうなのは全て演技だった訳だ。

「――ははっ」

思わず笑いが零れる。

「なんだオマエ、女優でも、目指すつもりか?」

「アカデミー賞はもらったかな」

このような状況にも関わらずそんな事を平気な顔で嘯く滝壺。
浜面は愉快で仕方がなかった。

――本当に傑作だ。

どうしてだろう。
こんな絶望的な状況で、具体的な打開策などなく都合のいい幸運に頼り切っているにも拘らず。

――まったく負ける気がしねぇんだなぁこれが……!

然り。
主人公というものは元来そういう存在だ。
                           ヒーロー
そしてこの場において浜面仕上は間違いなく主人公だった。

……この場においては。



「ジャージ、脱いじゃったね」

滝壺はぼそりとそんな事を言う。

「私とお揃いだったのに」

こんな状況にも関わらずそんな事を言ってからかってくる程度には彼女にも余裕ができたのだろう。
それとも冗談を言って浜面を元気付けようとしてくれているのか。

返事に困ってだんまりを決めていると滝壺はさらに続ける。

「はまづら。はまづらこそ大丈夫?」

とは言うが滝壺は心配する様子ではなく――どちらかといえば気遣うように問いかける。

「えっと。その……重くない?」

「妙な事訊くなよ。ここで頷くほど俺は馬鹿じゃねえし、実際、なんて事ねえよ」

そう言う浜面の足は本来のものより明らかに遅いし、息も上がっている。
いかに軽いといえど年頃の少女が一人。十や二十ではすまない。
彼女の正確な体重については言及せぬが華というものだ。



「……ううん。前から思ってたけど、はまづらって馬鹿だね」

「オマエ何――」

思わず言い返そうとして、しかしそれ以上の事を浜面は言えなかった。

首に回された両腕にほんの少し力が込められる。
そして抱きつき、頬にキスするように顔を近付けた滝壺は浜面の耳元で囁いた。

「――今まで言わなかったけどね」

耳をくすぐる彼女の声と吐息に思わずどきりとする。

「はまづらのそういう馬鹿なところ、実は結構好き」

そう言う彼女の顔は、見えない。彼女もまた同じだろう。
浜面は前を向き、駆ける足の速さを落とさずにぼそりと。

「…………あんまりからかって気を緩めさせないでくれよ」

「本当の事なのに」

くすくすと笑う滝壺の吐息が耳をくすぐった。

……本当に顔が見えなくてよかったと思う。

彼女の言葉の真偽は定かではなかったけれど、不快になるなんて事は絶対にない。
事が済んだらその辺りについてゆっくりと話を、純情な男心を弄ぶ罪についてじっくりと説教してやる事を胸に誓う。

――そう、少なくともそういう場面には、まだ早い。



生と死を巡る攻防は終わってはいない。
その事を最も早く察知したのは他でもない滝壺だった。

「っ――はまづら!」

彼女の表情が険しく張り詰める。

「来るよ――!」

どれだけの速度で駆けようとも背後に着いて離れない。
そう、相手は空間移動能力者。どれだけ逃げようとも必ず追い縋る。
相手の背を追う能力を相手に逃げ遂せる事など不可能に等しい。

その能力の発現の前兆を滝壺は察知していた。

彼女の持つ異能、『能力追跡』は能力者の放つAIM拡散力場と呼ばれる一種の気配のようなものを察知する。

世界の特異点。
絶対の法則を塗り潰すその絵筆を滝壺は観、油の臭いを嗅ぐ事ができる。

査楽の絵の具は相手の背に回る空間移動能力。
ならばその絵の具が現れるのは背に向かってだ。

纏わり着くような不快な気配が伸びてくる。
どろりとした泥のようなものが浜面の背に張り付こうとしている。
それが放つ悪臭が滝壺の人の域を超えた能力によって形作られる感覚器官に届く。

だが彼女は何もできない。滝壺理后という名の少女はただの観測者だ。
常人には理解できないものを見、聞き、嗅ぎ、触れ、味わう事はできてもただそれらを感じる事しかできない。
彼女の能力は抗う術を何一つ持たない脆弱で矮小なものだ。

だからこそ浜面仕上が必要となる。

無能力者。学園都市のおちこぼれ。
高位能力者から見れば道端の石ころ同然の存在が彼女を守る。
彼は世界の条理を捻じ曲げるような異能は持ち合わせていない。

だが、世界の――物語の流れを読む術には長けている。

勘と称されるもの。第六感、これもまたある意味では人の域を超えた能力なのかもしれない。
具体的に予知じみた虫の知らせがある訳ではない。

ただ、この場に用意された浜面が取れる限りなく無限の選択肢。
その中で最も冴えたものが何となく分かるのだ。

それは浜面の能力の域を超えず、けれど明らかに度を逸した可能性。
無限分の一の正解を何千だろうと何万だろうと当て続ける『才能』。

故に、彼の行動は常に間違わず、常に最良手となる。



背後に現れるという能力の特性。
その最大の弱点を浜面は既に掴んでいた。

視線を下げる。その先には滝壺の顔。
いつもの気だるげな表情はなりを潜め、眼光は鋭く、浜面の背の先、背後を見据えている。
綺麗な瞳だ。僅かに潤んだような色は憂い帯びているようにも見える。

浜面は彼女の瞳を注視する。

黒曜石のような瞳。



その中に唐突に翳りが写り込む。



瞬間、浜面は強引に身体を捻り斜めに踏み切り飛び込んだ。
滝壺を抱きかかえたまま、左前方へと抉るように。
                         ひめい
無理な運動に足の筋肉と骨と血管が軋み痛みを上げる。
だが今この状況。そんな事は些細な問題だ。

最も優先されるのは滝壺の無事。
先程の虚を突く手は二度は通用しない事くらい分かっている。
だからもう滝壺を奪われてはいけない。絶対死守せねばならない。

鋸の刃が切り裂いた風を背に感じながらも浜面は死角からの一撃を避ける。
先ほどまでとは異なる、遊びも余裕もない殺意の塊でしかない攻撃。
リーチのある鋸の刃は走ったところで逃げられるようなものではない。

けれど浜面は回避してみせた。
頭の悪い空間移動能力者はなぜ避けられたのかが理解できないだろう。

背後、死角に回るというその能力。その最大の弱点は。

――要は死角を死角でなくしてしまえばいい。

自分の背後を見る事ができれば容易に避けられるのだ。
鏡の前に立ってしまえば死角は消え去る。
いくら背後に立とうともそれがばれてしまえばその優位性は失われる。

浜面は滝壺の瞳に映る背後の状況を見て最善のタイミングで回避行動に移った。
最良手の前に査楽の稚拙な攻撃など当たるはずもない。



加えて、滝壺がナイフで刺した傷。
足に深い刺し傷を持っていては痛みにまともに歩けない。立つ事すらままならない。

もし査楽が万全であったならば。背後への移動に加え更に踏み込む事で回避をさせなかっただろう。
けれど浜面は『最後の手段』と引き換えにそれを封じた。

差し引きでは優位性はゼロだろうが結果として査楽は最後の最後で詰める事ができない。

普段の倍近い負荷に膝関節が軋む。
滝壺を抱えたままの運動には無理があった。
だがそれを押し殺し浜面は折り曲げた膝を再びばねのように伸ばし加速する。

前へ。前へ。前へ。

立ち止まらない。振り返らない。全力で疾走する。
背後に聞こえる苦悶の声を無視して浜面は駆ける。

そして。ようやく目的のものを発見する。



(中央制御室――――!)



案内表示を確認し、浜面は一目散にその扉へと駆け寄る。

扉は僅かに開いている――普通そんな状況はありえないだろう。
が、だからといって躊躇している余裕はない。足で蹴りつけるように扉を開けその中へと身を躍らせた。


ばんっっ!! と大きな音を立て扉が壁を叩く。
中央制御室。その名の通り研究所そのものを総括するための部屋だ。
カメラモニターや何を意味しているのかも分からない計器類が壁一面をびっしりと埋め尽くしている。

そこでまず最初に感じたのは、空気。

むせ返るような血の臭い。
血と脂のべっとりと貼り付くような空気が室内には充満していた。
                         、 、 、 、、 、、
もっと直接的に表現するのであれば――飛び散っていた。
血肉が辺り一面にばら撒かれたそこはまるで戦場跡か、さもなければ屠殺場か生肉工場だ。

多分、元は研究所の職員だっただろう。
そういう到底人の形には見えないモノが散乱していた。

まるで爆撃にでも遭ったような有様だった。
銃撃ではこうまでいかない。刃物や銃器ではなく、蹂躙するような破壊がここであった事は間違いない。

「っぐ――――」

喉がえずきそうになるのを飲み込みながら浜面は意図的に感情を殺す。

今必要なのはこの悪夢めいた光景に顔を顰める事ではない
素早く辺りを見回す。死体は路傍の石ころと同じようなものだと言い聞かせて黙殺した。

何に使うのか分からないスイッチで埋まった操作盤。
何を意味しているのか分からないメーター類。
どこを映しているのか分からないモニター群――、

「――――麦野」

半分以上が砕かれるか何も映していないモニターの中。
どこかも分からない廊下を歩く超能力者の少女の姿を見つけた。

566 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] 投稿日:2011/04/16(土) 00:17:13.03 ID:ysMFY1nFo [2/5]
俯瞰するような画面の中、そこに『アイテム』のリーダーがいた。

しかし――。

「…………誰だ、コイツ」

彼女の隣に立つのは誰だ。
浜面は思わず小さく呟いた。

くすんだ金髪にいかにも高級そうなジャケットを羽織った優男。
一見ホストのようなその風体には似合わない、どこか刃物のようなギラついた気配を纏った少年。

モニターの中で薄く笑む彼は、麦野と何やら話ながら――、

『――――――』

ふっ、と。

視線を上げ、彼がこちらを見上げた。

「っ――――」

それは偶然だったのかもしれない。

しかし浜面には彼がモニター越しの視線を感じたように思えた。
               カメラ
そして彼は軽く手を挙げこちらに指を差す。
親指を立て、人差し指を向け、残る三指を握るその形は――。



――――――BANG



ぶつん、と。
跳ね上げるような手の動作と同時にカメラの映像が途切れた。

「――――!」

それは完全に偶然の産物だったのかもしれない。
けれど――浜面にはどうしても――。

彼が超能力者第二位『未元物質』垣根帝督だという事を浜面は知らない。
そして、滝壺も。



彼が何者なのか。
どうして麦野と共にいるのか。

浜面の理解の及ぶ範疇ではなかったが、何にせよ彼女の無事は確認できた。
もっとも麦野が危機的状況に陥っている可能性など考える必要もないのだが。

思考を戻す。
数秒の間とはいえど意識を完全にそちらに持っていかれてしまった。
それはこの状況では致命的なものとなり得るというのに――。

――――こつ、と。

靴音が響いた。

(しまっ――!)

浜面は己の愚に歯噛みしながら振り返る。
そこには――。

「……鬼ごっこはそろそろ終わりですか?」

ズボンの右を赤黒く染めた査楽が扉に寄りかかるように立ちこちらに視線を向けていた。



「……」

浜面は無言で査楽を見返したまま、腕に抱いていた滝壺をそっと降ろす。

「背後に回られないように、ですか。確かに私の出現位置が決まっている以上そのポジションは安全でしょうね」

浜面はスイッチや計器の並ぶ操作盤を背に立つ。
滝壺を胸に抱くように。彼女もまた査楽に向いて――背を浜面に預け立っている。

「いやはや、まんまとしてやられましたよ。まさか無能力者を相手にここまで苦戦するとは。
 瞬時に私の能力を見抜き、対策を講じ、裏を掻いた。能力に対処した上でこちらの足を傷付け機動力を失わせる。
 ……結果ここまで逃げおおせた。敵ながら天晴れと言うべきでしょうか」

口調こそ軽いまま捲くし立てているものの査楽の表情は硬い。

その言葉は恐らく浜面に対してのものではない。
彼自身のプライドを守るために何だかんだと理由をつけて納得しようとしているだけだろう。
浜面を無能力者と吐き捨てた彼が納得できるはずもないのだが、そう思い込もうとする事で自己を保とうとしているに過ぎない。

「……しかし。ここでチェックメイトです」

細身の鋸を構えなおし査楽は、右足を引き摺るようにして、ゆっくりと浜面と滝壺へと近付いてくる。

「まさかオマエ、高位能力者の優等生が泥臭い殴り合いで俺みたいなチンピラに勝てると思ってるのか」

「……まさか。ええ、まさか。そんな事思ってるはずがないでしょう?」

浜面の挑発するような言葉に査楽は一瞬表情を引きつらせるが、それには乗らないとばかりに笑みを向ける。

「能力に頼りすぎましたね。我ながら汗顔の至りです。ここまでいいようにされるとは」

そう言って査楽は右足を庇うようにしゃがみ込み、足元に散らばっていた残骸の中から黒い塊を抓み上げる。

「っ――」

背に嫌な寒気が走る。

「やっぱりここは単純に、文明の利器に頼る事にしましょう」

意図して辺りの様子から目を逸らしていたがために見落とした。
査楽の手にしたのは――ありふれた人殺しの兵器。

どこにでもあるような、何の変哲もない拳銃だった。



(職員が拳銃持ってるなんてどんな研究施設だよここは――!)

心中の叫びは今となっては後の祭りでしかない。
浜面の焦燥を他所に査楽は鋸を左手に持ち直し、右手の内で拳銃を遊ばせながら言葉を続ける。

「殴り合いなんて面倒な事はしたくないですよ。あなたはいかにも、ケンカ強そうですしね。
 しかし真正面からの正攻法――銃器の武装はどう対処しますか、無能力者?」

「――――ハッ」

小さな笑いに査楽は眉を顰める。

そのような反応をする時点で、矢張り彼はどうにも頭が悪いと浜面は断じる。

――だから、獲物を前に舌なめずりするなんて三下のやる事なんだよ。

浜面の意図を測りかねたのだろう。
査楽の動きが一瞬止まる。

それだけあれば充分だ、と浜面は。

「――――滝壺」

腕の中の少女の耳元で囁く。
彼女を抱く左手に少しだけ力を込め。

右手は恋人を愛撫するように――背後の操作盤へと伸ばし。

「悪い。少し我慢してくれ」

顔は向けずとも分かる。
左腕を握り返してくる細い指に力が微かに込められたのを合図に浜面は彼女に心中で謝って。

「あのな、能力者。文明の利器ってのは」

赤いボタンを覆う透明パネルを跳ね上げ指を滑り込ませた。

――浜面の指が重なるボタンの上にはこう書いてある。





   【 EMERGENCY / CAPACITY DOWN 】





「馬鹿な無能力者の俺にもボタン一つで扱えるようなのを言うんだよ」

言葉と共に、かち、と小さな音を立ててボタンが押された。








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