ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」 > イギリス清教編 > 02


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『ランベスの宮』に無事全員を護送したステイルが最初にしたことは――


「やっほー。お邪魔してるぞインデックス、ステイル」


肺の底から大きく、息を吐き出して吸う事だった。



「なにをしているんですか、先代ぃぃっ…………!!!」



「なにって、別になぁ。キャーリサ」

「おかわりはいかがだー?」

「許可は出てるんだから、お茶して寛いでただけだし。……あ、一杯頼む」


あらゆる意味で英国最強の母娘はこんな時でも絶好調だ。


「……質問を変えましょうか。その脳味噌の配線はどうなっているんです……!」

「血圧が上がりても脳の中身は危なきよ、ステイル」

「…………」

「スルーなりし!?」


間の抜けた問答を繰り返す連中を見て、アステカ組……もといショチトルは呆然とする他ない。


「……インデックス、なんだアレは?」

「イギリスの先代女王と、現女王の妹なんだよ。あとついでに私の前任者」

「えぇー………………」


「……噂以上にクレイジーな国だな、イギリスは。学園都市と友好的なのも頷けるぞ」

「何を冷静に分析してるんだトチトリィィ……」


「とりあえず自分がご挨拶申し上げて来ましょうか」

「やめて! これ以上引っ掻きまわさないでお兄ちゃん!」


「まあ初めましてショチトルさん、お茶などいかがでございますか?」

「むっオルソラ、お客様にお茶を出すのは私の仕事だー」

「ああもうなんなんだこの状況はぁーっ!!」


イギリス清教に期待の新人が加わったと見てよさそうである。ご愁傷様。


その間にもステイルのなんかどうしようもない怒りは収まらず、彼の血管は断線寸前である。


「宮殿はどうなってるんですか! あちらの方がよほど安全でしょう!」

「騎士団長とウィリアムがいるから向こうは問題ないの。
 魔術防衛網ならこの『ランベスの宮』とて負けず劣らずで、
 さらにこの私がここに居る以上、母上の安全は確保されている」

「ここに居る理由にはなってません!」

「ちなみに私は久々の我が家に戻りてきただけにつき」



彼の顔色はその長髪と同じ色……を通り越して、光が逆流してきたようなそれになっている。

いい加減に死にそうだ。見せ場も作ってないのに。



「しょうがないじゃないか。可愛い娘に孫と一緒になって、
 『友人を助けてやって欲しい』、なんて言われてはね」

「母上、言われたのは私ひとりだし」



「え! ヴィリアンが……?」






「……私にも構って欲しきことよ……」



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バッキンガム宮殿には、毎度お馴染み騎士団長の怒鳴り声が響いていた。

そこらで警護に当たっている騎士たちも、上司が御立腹だというのに動じることなく職務に当たっている。

よほど、焼き増しの効く風景であるらしかった。


「君たちだな!? キャーリサ様と先代を城外に出す手引きをしたのは……!」


その前に並んでどこ吹く風なのは、魔術結社『新たなる光』の四人である。


「んーん……。そんなことより私たちも繰り出していいですかぁ?」


代表して受け答えしているのは最も緊張感なく欠伸などかいているレッサーだ。


「良いわけあるかぁぁっ!! 言え! どうしてこんな事を……」


彼女の舐めきった態度にますますボルテージのあがる騎士団長を

押し留めたのは、雰囲気にそぐわぬ涼やかな声だった。


「騎士団長。どうか彼女たちを責めないでください」

「少しは落ち着いたらどうだ、我が友。また血圧が上がるのである」


「ヴィリアン様、ウィリアム……! も、もしや?」


わなわなと震えだす騎士団長に申し訳なさそうにしながら、第二王妹は続ける。


「姉君には、私からお願いしたのです。
 ……その、母君まで行ってしまうとは思わなかったのですが」

「ぬ・ぐ・ぐ…………」

「今さら連れ戻すことに意味はないだろう。彼女らの言うとおり、我らも討って出るべきだ」


理解者だと思っていた親友の一言に肩を落とし、悲しき中間管理職は力なく告げた。


「わかった……。好きにしなさい…………」

「さっすが~、ウィリアム様は話がわかるッ!」

「止すのである。……なぜだかとてつもなく後ろ暗い気分になる」

「さわらないで…………お願い、やめて……プフッ」

「誰も触ってないわよ、ランシス」


しかしこの連中、緊張感皆無である。

王室に毒されるとこうなってしまうモノなのだろうか。


ちなみに女王陛下は戒厳令の実施に加え、政治的策謀からも

国を守るべく孤軍奮闘しているのだが、ここで語られることはない。


「…………前代未聞ね」


平静に戻った騎士団長が部下の騎士に声をかけ、ウィリアムが抜ける守備体系の変更を伝える。


「……宮殿の守護は、我ら騎士団があたろう」

「では私が守るのは無辜の市民だ。無事は祈らないのである、我が友よ」

「私とて今さら、お前の為に祈ったりなどするか。妻のことならともかく……
 …………ゲッホンゴッホン! ヴィリアン様と女王陛下は任せろ」

「ああ。……では行ってくるぞ、ヴィリアン」

「はい……。この子たちと一緒に待ってるわ、ウィリアム」


ひとときの別れに際して、父でもある男は妻の腹部をしばし、愛おしげに見つめる。



――やがて家族に背を向けた時、そこには百戦錬磨の戦士がいた。



「味方だと思うと、頼もしいですねぇ」

「フッ……。よろしく頼むのである」


守るべきものを背に、ウィリアムは四人の魔術師に先だって歩み出す。




そうして男は、自らの人生そのものである戦場に飛び込んでいった。



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「ヴィリアン殿下が…………」

「理解したかい?」


粗方の事情を聞き終えたステイルは、しかしそれでも納得しきれなかった。


「しかし! そもそもこの件は、我ら清教派が始めたことです! 王室派や騎士派は……」

「無関係なのだから引っ込んでろ、とでも言いたいのか?」

「…………それ、は」


とたん、目の前の老婆がとてつもない巨人に様変わりした。


「イギリスは、我が国家だ。『第三世界』の連中が好き勝手することをこの私が許すとでも?」


ステイルは、言葉なく俯く。

しかしエリザードは覇気を収め、そんなステイルに優しく声をかけた。



「……そして、ロンドンを守るためのお前のたゆまぬ努力を、この私が知らないとでも?」


「なっ…………!!」


「ふふふ……だから、十年早いと言いけり」


「お前さんの『セキュリティ』にはみーんな助けられてるんだ。
 ……少しは、周りに見返りを求めな?」



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「ど、どうなってるんだコレは……!?」

ロンドンの『ギリギリ外側』、南の開けた郊外の地。

『半端者』の指揮官のひとりは青ざめた顔で目の前の惨状を見やっていた。


彼ら急ごしらえの『組織』は百を超える魔術結社が、

イギリスに対し乾坤一擲の反攻を行うために集まったものである。

構成人数は万に迫るという常識外れの烏合の衆、それが『半端者』(土御門命名)だ。


しかし、しかしである。

彼らはその半数以上を既に戦線に投入しているにも関わらず

ロンドン市内への侵入を果たした者はその十分の一にも満たない。

一方で侵入に失敗し命からがら逃げ出し戻ってこない脱走者や、

戦線復帰できない負傷者は二千を越え――




――残る二千五百は、躯すら残さず燃え尽きていた。


「あ、あり得るのかこんなことが……」

男の脳裏に過ぎる、一つの可能性。

ロンドンには、数年前からまことしやかにある噂が流れていた。



――この街には悪意を持った侵入者を焼き尽す、『守護神』がいる――と。



もちろん『組織』もこの都市伝説を軽視したわけではない。

事実、噂が流れ始めた時期からロンドン市内での魔術的事件の発生は

外部から見てもはっきりわかるほどに激減しているのだ。

焼き尽す、という一節からその筋で有名な一人の魔術師を連想した彼らは判断した。



多方面から一斉に侵攻すればいかに凄腕とはいえ所詮、身一つの魔術師である。

他に聖人を抱えているとしても、『原典』の奪取は不可能ではない。



追いつめられた焦燥感に、内部からの土御門の巧妙な誘導も手伝った。

――かくして彼らは、神罰吹き荒れる死地へと赴いてしまったのである。



そしてつい先刻。

男の部下はロンドンに踏み入った瞬間、前触れもなくかすかな『熱』を感じだした。

そこで違和感に歩みを止めてしまえば良かったのだが、元より彼らには後が無い。

欲望か絶望か、はたまた狂気か。とりつかれたかの様に前進する彼らの妄執を――



ゴオオオオウウッッ!!!



――――赤々と盛る紅蓮の炎が断ち切った。





「どうだ、ウチの『セキュリティシステム』は?」



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ステイル=マグヌスは専守防衛に長けた魔術師である。



彼がインデックスと、その周りの世界まで含めて守るためにとった方法とは――




「……南で二十八人。今ので二千六百、か」











――――『陣地』そのものを、極端に巨大化してしまう事であった。





ステイル=マグヌスの現在の『陣地』は、ロンドン全域である。





彼は『日課の散歩』と称して毎日のようにステルス化を施したルーンを市内に配置してきた。

数年をかけて街に自らの魔力を行き渡らせ結界を張ったステイルは、

かつて「三沢塾」に自身の力を充満させ、レーダーとした錬金術師のように――



――霧の都の『魔術の流れ』を把握する存在となった。



「大丈夫、ステイル……?」

「……ご心配なく。僕がするのは敵の位置を連絡することのみ、…………です」

「………………すている…………」



次に彼が着目したのは、魔術世界では語り草となっている

「0930事件」で用いられたとされる『天罰術式』であった。

ステイルは『神の火』に由来するこの術式を再現することに――不完全ながらも、成功した。



『自らの陣地内で、強力な「悪意」を抱いた者を、それに応じる「熱」の苦しみでかき乱す』



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「後は『天罰』で抵抗力の落ちた敵をレーダーで捉えて、
 街中に張り巡らせた『爆弾』をボン! ってなわけだ」

「こんな、ことがぁっ……!!」


ただ一人残された哀れな子羊を前に、土御門元春は感情のこもらない眼差しを向けた。

長期に及ぶスパイ活動の中で、権力や金への執着を捨て、平穏を選んだ者を彼は数多く見てきた。

もちろん事情があって残らざるを得なかった者もいるだろう。

しかし、欲に塗れてこんな場所まで来てしまった連中と

そうでない者を区別してやるほどの甘さを、彼は持ち合わせてはいない。

それにどうやら、目の前の男は前者であるらしかった。


「くそっ、原典が! 原典さえあれば私はぁぁっ!!」

「見苦しいな。あんた、ちゃんと下調べしてきたんだろ?」

(都合のいいように誘導したのはオレなんだけどな)

「黙れっ、黙れえェッ!!」


露骨な権力欲。

この世の日陰を渡り歩いた土御門からすればさほど汚らわしいものでもない。

科学の暗部とて似たようなもの、と言うよりは

即物的な欲望に基づいているのならいくらかマシだ、とさえ思える。



しかし同情の余地があろうが無かろうが、土御門には関係などない。


最後通牒がわりに一層冷えた視線を男に送る。



「ま、せめてこれだけ覚えてから死ぬんだな」



そしてゆっくりと、彼らを破滅させた『モノ』の名を告げた。



「この街にはな――――










   ファイアウォール
――『守 護 神』っつう、神様がいるんだよ」



いぇーい 続いてしまうZE!


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