ステイル「最大主教ゥゥーーーッ!!!」 > アステカ編 > 01


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現代において、世界は大きく三つに分けることが可能である。



第三次世界大戦を引き起こした科学サイドと魔術サイド。

これら二大勢力は基本的にそれぞれの分野に特化しており、お互いの技術が相入れることはまずない。



しかし二大勢力が鎬を削る傍らには、第三勢力が目を光らせているというのが歴史の常である。

科学と魔術、そのどちらをも利用しようとする者たち。

三次大戦を静観していた彼らはこれを好機とし、外交・戦場の両面から攻勢をかけるはずであった。



しかし蓋を開ければ、両サイドは多少は疲弊したものの深手を負うことはなかった。

魔術側に至っては終戦間際に三宗派のトップが手を取り合う、という全くの想定外。

先だって中米最大の魔術結社が事実上の壊滅状態に陥っていた『第三世界』は大きく動揺し、

科学と魔術が表面上だけでも友好的に歩む中、世界各地で徐々に混迷を深めていったのである。



「ステイル=マグヌスさんですね? お初にお目にかかります」


張り付けたような笑みを浮かべながら、どう見ても東洋人にしか見えないアステカの魔術師が会釈する。


「貴方が、土御門の『共犯者』か」

「『共犯者』、とは言い得て妙です。自分達の関係を表すにはこれ以上ない。
 さすがですね、土御門さん」

「よせやい、照れるぜい」

「…………軽口はいい」


どうにも腹に一物も二物も持ってそうな男である。

ステイルにとって、あの女狐を連想させる人格の持ち主は天敵と言ってもよい。

……天敵が多すぎる気もするが。



「なるほど、依然変わらず短気な方のようだ」


事実、早速表情も変えずに小型の爆弾を投げ込んでくるではないか。

ステイルも負けじと動揺を挙動に出さないよう努めて応じた。


「僕を知ってるのか」

「ええ、存じ上げておりますとも」


――優男は、ますます笑みを深めた。


「あなたには、自分の身の上話をしておく方が話の通りが良さそうですね」

「できれば、遠慮したいが……」

「まあ聞いてやれ、ステイル。お前にもなかなか興味深い話だと思うぞ」

「だったら、君がしたらどうなんだ……!」


口を挟んできた土御門に怒気を見せはしたものの、これ以上押し合っていても話が先に進まない。

ステイルは首だけ動かしエツァリを促した。



「インパクトの強い話から始めてしまいましょうか。上条当麻のことです」

「……!」

「掴みはオッケー、のようですね」


(まったく、本当に僕の周囲にはこんなヤツばかりだ)


胃以外に心臓まで痛むのを感じながら、ステイルは毒をすんでのところで胸中に収める。


「中米の魔術結社『翼ある者の帰還』は、かつて『幻想殺し』が周囲に
 科学魔術問わず引きつける、極めて強大な戦力を危険視しました」


――上条勢力。

ステイルがそのような不愉快なネーミングを知るはずもないが、心当たりならありすぎるほどにある。


「そして組織は上条当麻を抹殺すべく、刺客を放った。それが、自分の物語のプロローグですね」


「まあ、正確にはそのもう少し前に転機があったわけだが」

「いやですねえ。それをこれから話すところだったんじゃないですか」

「茶番はいいよ。次」


「上条勢力……あ、これは自分が勝手にそう呼んだだけですが。
 その存在を自分が監視するにあたって、あなたのことも調べていた、というわけです」

「なるほどね……。次」


「……気乗りしてないというか、普通に体調悪くないですかあなた?」

「一日三回の胃薬が欠かせない日々だよ……」

「…………手短にいきますね」


……横で大笑いしているアロハ野郎よりは良心の持ち合わせがあるらしい。



「…………監視対象の中に、自分の人生をレールから思いきり外してくれた女性がいました。
 ――御坂美琴。当然あなたもご存知ですね?」

「別にあの子が何かしたわけでもなく、お前が勝手に踏み外しただけ、って話だけどにゃー」



御坂美琴。知らないわけがない。

上条当麻が彼女を選ばなかったただ一つの理由である女性の名は、

ステイルにとっても特別なものだった。


「謝る、と言うわけではありませんが」


口を噤んだステイルを尻目にエツァリは続ける。


「上条当麻がみ……美琴さんを選んだのは、ひとえに自分との約束を守るためです。
 極論、そこだけでも承知して欲しくこの話を貴方にしたのですよ」



ステイルの脳裏に過ぎる、いつかの光景。


『どうしてだ。どうしてあの子を選ばなかった?』


――意味のない問いかけだった。あんなことをして、誰が報われるわけでもなかった。


(僕はあのとき、どんな答えが欲しかったんだ……?)


上条は目の前の男との約束を守り、ステイルとの約束を完遂することはなかった。

彼の意志がどうであったとしても、それが事実であり、結果である。

別段誰が悪いと言う話でもない。

上条当麻を、あるいはこの男を責める資格など、ステイルには無いはずだった。



「………………終わった話だね」

「…………そうですか」


咥え煙草を上下に揺らしながら、ステイルは自嘲する。

――いったい、何が終わったと言うんだ。


「では、あとの話は端折って進めてしまいましょう」

「おいおい、こっからが本題だろうが」

「まあまあ」


肩の荷が下りたのか、エツァリは先刻よりハリボテ感の薄れた笑顔で大胆にのたまう。


「僕は事情が理解できればなんでもいいさ。続けてくれ」

「ではお言葉に甘えて――」



紆余曲折を経てエツァリは、かつての同僚とともに組織の残骸に追われる身となった。

いや、残りカスだけならばたいした問題にはならなかったのだ。

なにせ三人が身を隠したのは科学の中枢、学園都市だったのだから。

――問題は、エツァリが二冊の『原典』をその身に宿す、正真正銘の『魔導師』であるという点に在った。


「……それは、本当なのかい」

「ええ、この場でお見せしても構いませんよ?」

「勘弁してくれ……」


不幸中の幸いか、その情報は三宗派をはじめとする純正の魔術サイドに大々的に伝わることは無かった。

しかしエツァリは『第三世界』――特に中米に点在する魔術結社に、

反攻のための兵器として狙われる事となってしまったのである。



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見知らぬ人々に囲まれ、ショチトルは不安を堪えてあたりを見回した。

奇抜な格好をしたリーダーらしき女性の後ろに群がる数十人のシスター。

少女趣味の服装を纏った、ちょっと……いやかなり少女には見えない女性。

ここまで護衛してくれた女性からは温かみを感じる。……例えるなら、おしぼり的な。

長髪ポニーテール以上に、嫌に露出度の高い服装が印象に残る女性。

そして、兄と慕う人の知人を通して、今まで幾度となく電話越しに助言をくれた――

他の全てが霞む美貌を誇るこの集団のトップ、最大主教。



女子寮なのだから当然のことなのだが、見事なまでに女女女。

更に揃いも揃って美人どころとなるといかに同性とはいえ、ショチトルは気後れを隠せない。


「な、なあトチトリ……エツァリはどこに行ったんだ?」


この場でもっとも心の許せる親友の袖を引き、ショチトルは自らの最大の不安をぶちまける。

二十代半ばだというのに幼さの残る彼女の仕草に、数人のシスターが鼻を押さえてのけぞった。

…………大丈夫かこの寮。



「まったくお前は……この歳になってまーだ『愛しのエツァリお兄ちゃん』と
 離れ離れになるのが堪えられないのか?」

「おまっ、ちょっ、何を言い出すんだトチトリィィ!!??」



二人の香ばしいやりとりに、シスターどもから今度は黄色い悲鳴が上がる。

そうそう、そういう反応が正しいんだよお前ら。



「愛しの!」

「お兄ちゃん!! とミサカは(ry」

「ブラコン!? ねぇブラコンなの!?」

「なんと背徳的な……これは主への冒涜です!!」

「いやいや、義兄妹で血のつながりが無いってパターンこそ至高だぞー」

「どのみちガチよ今の反応! ねぇそのエツァリさんとどこまでイってるの!?」

「かーっぺっ! 結局男持ちですかい! どいつもこいつも貞操観念がなってやしねーです!!」

「んもーそんなこと言ってるから行き遅れるんですよシスター・アニふがっ!!」

「あらまあ、膝枕とは甘酸っぱいですねぇ」



一部怨嗟の声も混じっていたが(時間軸がおかしいのも居る気がするが割愛)とにもかくにも姦しい。

女三人姦しいとは言うが、少なく見積もっても五十人はこの場に居るのだ。

姦しい×16である。



「あ……う…………ええぇぇぇぇ…………?」


ショチトルの混乱やら羞恥心やらが極限に達しようとしたそのとき――



「静かになさいっ、あなたたち!!!」

乱痴気騒ぎを切り裂く凛とした声が一閃した。

声の元はまとめ役たる最大主教……では当然なく、エプロン姿の聖人のものであった。



「彼女たちは長旅で疲れているんです。くだらない話をしてる暇があればまず休息でしょう!」


いまいち迫力に欠けるがそこは腐っても(腐ってないけど)聖人、怒らせては後が怖い。


「まったくですね! ほらあなた達、やんなきゃならねー事が山積みでありやすよ!」

「「「「「はーい」」」」」


女子寮の男持ち率に嘆いていたアニェーゼ=サンクティス二十四歳も

ようやく正気に戻り、シスターをぞろぞろと率いて寮を出ていく。


「それではお土産を楽しみにしてくださいませ」

「お前は行くんじゃねぇ!!」


またジンバブエにでも行くつもりだったのだろうか。


「…………ヤレヤレなんだよ」


「それでは、女子寮の中をご案内させていただきます、とミサカは久々の仕事に奮い立ちます」


女子寮の管理人――ショチトルにはどこか見覚えのある顔――に連れられ、寮内を見学して回る。

比較的まともな人格の者ばかりだったことも手伝って、ショチトルの緊張も徐々に和らいできた。



「ここがお二人の部屋です。では中に……」

「あ、すまない。……ちょっといいだろうか?」

「何かご不明な点がありましたか、とミサカは自らの説明に不備があった可能性を危惧します」


いよいよ二人が暮らす相部屋の前に来たとき、ショチトルが突然声をあげた。


「いや、そういうわけでは! ……その、最大主教殿はお時間のほう、大丈夫だろうか?」

「んー? 第一の解答だけど、遠慮しなくていいかも。
 それから私の事は、インデックスって呼んでくれると嬉しいな!
 ……これ、電話でも言ったよねー?」

「す、すまない! 面と向かうと、やはり失礼なのではないかと……
 それでは皆さん、できればインデックスと二人きりで話をさせて頂きたいのだが」


残りの面々は――特に火織と五和は――顔を見合わせると頷いて、


「いいでしょう、私たちは下の食堂で待ちます。何かあれば呼んでください」


ぞろぞろ連れだって、階下へ降りていった。


「それじゃ、中に入ろっかにゃー」

(…………にゃー?)


質素な内観のワンルームに机とベッドが二つ、それに小さな箪笥だけが備え付けられている。

インデックスとショチトルはお互いベッドに座って向き合った。


「まずは、お礼を言わせて欲しい。……何から何まで、大変お世話になりました。
 それだけ、二人きりで伝えたかったんだ」

「…………ふふ。困っている人を見たら思わず手を差し伸べちゃう。
 イギリス清教にはね、そんなおかしな病気に罹ってる人がたくさんいるんだよ」

「……それは、とても素敵なことだ」


今までショチトルが殆どエツァリ達としか共有したことの無い温かさが、この場所には溢れている。

――自然と、笑みがこぼれた。



「身体の方は、その後変わりないの?」

「ああ。こうして二本の足で立てるのも、あなたと、あのお医者様のおかげだ」

「……くすぐったいなあ。あなたの体に残った最後の『毒』を抽出する方法は、
 ついさっき、確立が終わったんだよ」

「……ほ、本当なのか? こんなに早く?」

「私ひとりでは無理だったけど、たくさんの人に協力してもらったから。
 …………エツァリに教えたら、ものすごーく喜んでくれるかにゃー?」


なごやかに進む会話の中、にやりとほくそ笑んだインデックスがやおら舵を切る。

前触れもなく揺らいだ足場に対応できず、ショチトルは狼狽した。


「ななななな、なんでどいつもこいつもアイツの名前を出すんだぁっ!!!」

「べっつにー? 私は依頼人に報告しなきゃならないだけで他意は無いし」

「ウソをつくなぁっ!!」

「ふふ…………照れなくてもいいのでございますよー」

「照れてないっ!!」



ショチトルをひとしきりからかった後、改めてインデックスは話題を振った。

「でもいいよね。強くて冷静で格好いいなんて、理想の男性かも」

「…………ストーカーでさえなければな」

「…………あー…………」

選択肢を間違えたことを悟ったインデックスの頬が引きつる。

と同時に、この話を続けると『どこ』に辿りつくか明確に意識してしまう。





「そっか…………エツァリは、みことの事が好き、だったんだよね……」





二人の間に初めて、気まずい沈黙が降りる。

しかし全ての事情を把握しているわけではないショチトルは

問題が野郎の側にあると思いこみ、ピンポイントで墓穴を掘ってしまった。



「ま、まあ! 過去の話だ! 今はストーキングしてるわけじゃあない!
 エツァリも彼女の側には信頼できる男が居ると言っていた!」

「う、うん…………。それは良かった……ね?」



ショチトルの認識では、インデックスと美琴は単なる友人でしかなく、

その間に立つ『男』の正体など彼女が知る由もない。

決して悪気がある訳ではないのだが――



「そ、そうだ!」



――だが、彼女の失敗は残念ながらこれに留まらない。



「わたしの事はもういいだろう! あなたの方こそどうなんだ、インデックス?」


続くにゃー


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