昼下がりのロンドン、聖ジョージ大聖堂。その中庭で神父服の男が紫煙を燻らせていた。
「はぁ……」
煙と共に大きく息を吐く長身赤髪の神父―ステイル=マグヌスに向けて目の前に立つ女が口をとがらせる。
「なぜにそのような溜め息をついたる、ステイル?私の護衛がそれほど気の重くなりたる仕事といいける?」
珍妙にまとめられた、身長のゆうに1.5倍はありそうな銀髪を左右に揺らしながら絶世、と言っても過言でない美女がステイルを糾弾する。
神々しささえ感じられる美貌にそぐわぬ稚い仕草は、ステイルの拍動を少なからず速める効果があった。のだが。
彼女の美貌は現実逃避の受け入れ口としては悪くないが、そうも言ってはいられない。
「はぁぁぁ………………」
問いかけには答えず、先ほどより更に長く呼気を逃がす。これ見よがしに、である。
「……言いたいことがありけるなら、はっきり言ったらいいと思うにつき!」
「ならば一つ質問があります、最大主教(アークビショップ)……」
ステ「その馬鹿げた口調は、土御門の差し金ですか……!」
イン「え?ローラが最大主教たるものこの口調でって……」
ステ「(元)最大主教ゥゥーーーッ!!!」
ステ「内にも外にも問題児が多すぎるだろう!どうなってるんだイギリス清教は!?」
イン「むむ!心配は無用なりてよステイル!私が最大主教となるからにはしっかり改革を」
ステ「それ以前に貴女の食費が財政を圧迫しているんですよ!」
イン「わ、我らの父は食物を粗末にしたることを第一の罪として定めて……」
ステ「今の問題発言は教義を揺らしかねませんよ!?」
ワーワーギャーギャー
イン「……フゥ、ハァ……」
ステ「ゼェ……ハァ、と、とにかく、明日にはローマから就任祝いの使者が到着します。その前でこんな間抜けな……」
イン「……やっぱりステイルも、私には無理だと思いけるの?」ウル
ステ「…………ッ!?」アセ
イン「……」
ステ「い、いや、違うんだそうじゃなくて」アセアセ
イン「無理しなくてよきよ、うすうす自分でも身の丈に合わぬこととは」グス
ステ「違うッ!!」
イン「!」
ステ「君は……貴女は、神を愛し、神に愛される高潔な聖職者だ。多くの人が疑いようもなく、貴女に救われているのだから」
ステ(……君を救えたのは、ただ一人だけだったが、ね)
イン「……す、すている……?」
ステ「んっ、ああ、とにかく……必要悪の教会は皆、貴女を認めている。自分をあまり下に置かれると、彼らも悲しみます」
イン「そっ、か。うん、わかった。」
ステ「口調の方はまあ、おいおい直していけばいいでしょう。今は明日の公式訪問について詰めなければ(とりあえずあの女狐を今すぐ遠隔操作で塵に……)」
イン「あっ!」
ステ「ッ、今度はなんですか?」
イン「明日のことで思い出したる!もとはるが公式の場ではこの……」ゴソゴソ
ステ(いやな予感しかしない)
イン「『神にご奉仕☆メイド風あーくびしょっぷ』を着るべし!と」
ステ「土御門ォォォーーーーーッ!!!!!」
大聖堂に、本日二度目の絶叫が響き渡る。
すっかり『必要悪の教会』の、いやイギリス清教のメインツッコミに定着したすているくんにじゅうよんさいのこれからやいかに!
最終更新:2011年06月11日 18:24