球磨川『学園都市?』 > 後日談・幻想殺しの場合 > 03


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研究所崩壊当日の深夜、窓の無いビル。 
 
学園都市統括理事長アレイスター=クロウリーはある人物を待っていた。 
 
今しがた球磨川禊の死体を回収した垣根帝督がビルの案内人とコンタクトをとったことを確認したので、もうまもなくこの場に現れるだろう。 
 
そしてどこからともなく、室内へ現れた一つの影。その姿までは確認が出来ないが恐らく死体をかついでいる垣根が居る。 
 
「無事回収できたようだな……」 
 
労いの言葉などはない。「回収して当たり前だ」と言わんばかりの対応である。 
 
しかし、垣根からの返答はない。 
 
「どうした?未元物質よ。報告をしたまえ」 
 
アレイスターの言葉でようやく歩を進め、その人物の姿を確認することが出来る。 
 
確かに、垣根帝督はそこにいた。 
 
ただし、後頭部に螺子を螺子込まれて垣根は既に死んでいて、死んだはずの球磨川に担がれていたのだが。 
 
『どうも、統括理事長さん』 
 
何食わぬ顔、文字通り何食わぬ顔で頭を下げ、挨拶をする球磨川は、頭をあげると同時に垣根の死体を無造作に放り投げた。 
 
あの、アレイスターが無表情の中に困惑の色を見せている。 
 
それほどまでに現在の状況は異常だった。 
 
「はて……確か君は死んだはずではなかったのかな?」 
 
『確かに死にましたよ。でも僕はこうして生きているから、そんな事はどうでもいいじゃないですか』 
 
「いつ未元物質を?」 
 
『垣根ちゃんが案内人さんと話をしている時に、後ろからちょと螺子を入れさせてもらいました』 
 
「なるほど……」 
 
いつかのような抑揚のない内容の無い会話が続く。 
 
だが、アレイスターとしては計画を大きく遺脱した現状は好ましくない。
 
【大嘘憑き】という前代未聞の能力を持つ球磨川禊の回収。 
 
有り体に言えば今回アレイスターが球磨川の転向を許可した理由はそのようなものだった。 
 
大嘘憑きの試運転という名目を掲げていた球磨川の不意を打って殺害、回収。 
 
それはそんなに難しい事ではなく、成功すればアレイスターの「計画」を大きく省略できるはずだったのだ。 
 
しかし、現実は球磨川禊は生きている。 
 
『さて、貴方の目的なんて分かり切っていますし、それを邪魔立てするつもりもありません』 
 
自身の頬から肩へとかけて染みついた血液をハンカチで拭き落しながら球磨川は言う。 
 
「何が目的だ?」 
 
『最初にお話しした大嘘憑きの試運転、てのも目的の一つですよ。ただ本命は種を蒔くことでして』 
 
種を蒔く。その言葉にアレイスターは即座に意味を理解した。 
 
「幻想殺しの回収か」 
 
アレイスターは幻想殺しこと上条当麻と球磨川禊の過去については把握している。 
 
『回収なんて嫌な言い方をしますね。僕はただ友達に戻っていつか力を貸して欲しかっただけなんですよ』 
 
「言っておくが幻想殺しは私の計画の中でも最重要でね。簡単に手放す訳にはいかないのだよ」 
 
『ん。だから言っているじゃないですか。計画の邪魔をするつもりはないって』 
 
いまいち要点を得ない語りをする球磨川だったが、アレイスターはそれだけで意図を掴んだようだ。 
 
「なるほど。種を蒔くとはそういった意味か」 
 
『ええ、だから貴方が進めている計画が完了する頃には、花が咲くはずですから』 
 
それはきっと綺麗で、毒々しい花なのだろう。 
 
この時点でアレイスターと球磨川禊の交渉は終了していた。
 
「もし断ると言ったら?」 
 
だがアレイスターは少しばかり抵抗をして見せる。もちろん断るつもりは、ない。 
 
球磨川もそこは重々承知の上で、こう言った。 
 
『学園都市のレベル1からレベル5までの能力者を皆殺しにします。勿論そこには貴方も含まれていますよ』 
 
にっこりとほほ笑む球磨川に、アレイスターも口元を少しつり上げる。 
 
「それは困りものだ。よかろう、君の計画とやらにも乗らせてもらうよ」 
 
アレイスターはその後に「ただし」と付け加える。 
 
「未元物質だけは元に戻してやってくれ。大事な第二候補なのでね」 
 
その言葉に深く頷くと、垣根に手を添え傷を戻す球磨川。 
 
気を失っているのだろう、起きる気配はない。 
 
『これで大丈夫ですか?それじゃあ僕は約束を守りに行かないといけないので失礼します』 
 
アレイスターの返答も聞かず、すたすたと闇の中へ消えていく球磨川。 
 
転送前にこんな言葉だけを残して去って言った。 
 
『垣根ちゃんと麦野ちゃんにはお返しをするので、邪魔はしないでくださいね』 
 
そして、球磨川が研究所で上条と再会した翌日の早朝。 
 
二基の風車に螺子で張りつけにされている、瀕死の垣根帝督と麦野沈利の姿があった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
一年後・箱庭学園 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『僕といれば君は世界一不幸になれる』 
 
箱庭学園二年マイナス十三組の教室内にて、球磨川は机に両足を乗せて組み、後頭部に両手を添えている態度の悪い少女に言い放った。 
 
少女の名は名瀬夭歌(なぜようか)。現在球磨川が敵対している生徒会の会長を務める黒神めだかの姉に当たり、本名は黒神くじらという。 
 
顔面を包帯でグルグル巻きにし、額にはナイフが刺さっているいかにもな格好の名瀬は、球磨川の言葉にギィと醜く歪める。 
 
「ときめくね」 
 
今回、球磨川が名瀬に持ちかけている提案、それは「生徒会を裏切り過負荷側へ付け」というもの。 
 
球磨川の文句に心揺らいだ名瀬は即答で「今日から俺は二年マイナス十三組の名瀬夭歌だ」と言いつつ、その包帯を解く。 
 
そこから現れた顔はとても整っており、百人中誰もが振り向くであろう顔立ちだった。 
 
生徒会を裏切った名瀬は球磨川に、これから集まる過負荷のリストを提示するよう要求し、球磨川はあっさりそのリストを差し出す。 
 
「へー流石に知ってる名前もないでもないな」 
 
ペラペラとリストを流し読みしている名瀬は、ある一人の転校生の名前に手を止めた。 
 
「おいおい、人が悪いぜ。こんな隠し玉があるなら俺なんて必要ないだろう?」 
 
そこに記載されている一人の男子生徒の名前に名瀬は見覚えがあった。 
 
いや、少しでも血生臭い裏の世界に触ったことがあるものなら誰もが聞いたことがある名前。 
 
『いや、実はその子は選挙に間に合うかわからないんだ。無事に転校できるかも怪しいものでね』 
 
『僕は悪くない』と相変わらずの笑顔を浮かべる球磨川。
 
名瀬は見覚えがあると言ったが、実際にこの少年の姿を目撃したことがある。 
 
バイオテクノロジーの世界的権威である彼女は研究の為、各地の施設を回ることが多かった。 
 
その中で学園都市と呼ばれる、もはや一つの国と現わしても語弊の無い巨大な「研究施設」に招致された時だ。 
 
名瀬が少年を目撃したのは。 
 
学園都市では超能力という力の研究を進めており、ランク付けされた「モルモット」達が生活していた。 
 
炎を生み出し、水を操り、瞬間移動をし、電撃を繰り出す。 
 
学園都市内ではそんな非日常の光景が日常であり、名瀬もいくらか驚いた記憶があった。 
 
そんな中、学園都市の観光中に一人の少女が少年に対して電撃を放った瞬間を名瀬は目撃した。 
 
心の中で「ご愁傷様」とつぶやいた名瀬だったが、少年は電撃に対し右手を差し出しただけで打ち消したのだ。 
 
それが、名瀬が学園都市で最先端の科学に触れたことより、超能力というスキルを見たとことよりも彼女に衝撃を与えることとなり、 
 
残りの滞在期間で少年の事を調べたのである。 
 
調査結果の中には名瀬の知りたい情報は一つもなかったが、学園都市を去った後、噂でこの少年の逸話を聞くことがあった。
 
最強の超能力者を倒した。 
 
世界中に人脈を持つ。 
 
戦争を終わらせた。 
 
全てを殺す。 
 
そして、学園都市を崩壊させた。 
 
噂だという分を差し引いた所で、火の無い所に煙は立たないと言う。 
 
実際に彼は噂に近い事をやって来たのだろう。 
 
『その子と僕は友達でね』 
 
驚いている名瀬に球磨川の声がかかる。 
 
そして名瀬は生徒会庶務・人吉善吉の母である人吉瞳の言葉を思い返した。 
 
――この学園に集結している過負荷の中でも、二人は球磨川君に匹敵する。 
 
名瀬は理解する。間違いない、この男が球磨川に匹敵する二人の内の一人だと。 
 
『やっと、花が咲いてくれたんだ。幻想だけじゃなく、全てを殺すほどの魅力をもった花を』 
 
『早く、会いたいな』 
 
球磨川は心底嬉しそうな笑みを浮かべながら天井を仰ぐ。 
 
名瀬は溜息をつき、リストを机の上に投げ捨てる。 
 
 
一番上になったそのリストにはこう書かれていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
所属・二年-十三組 
過負荷・幻想殺し 
氏名・上条当麻 
備考・転校生
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして物語は 
 
過負荷と異常と特別と普通の戦いへと 
 
進んでいく―― 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
球磨川『学園都市?』 
 
VeryVery BAD END
 
 
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