球磨川『学園都市?』 > 18


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全てを虚構にする事ができる。 
 
それが球磨川禊の欠点(マイナス)であり過負荷(マイナス)であり不能力(マイナス)の正体。 
 
悪意も善意も渾然一体とし、全てを無に返す。 
 
傷をなかったことに。汚れをなかったことに。距離をなかったことに。視力をなかったことに。筋力をなかったことに。 
 
磁力を、ベクトルを、努力を、理性を、知性を、結果を、過程を、記憶を、生を、死を、世界を。 
 
森羅万象を虚構にする能力。 
 
『それが大嘘憑き(オールフィクション)』 
 
その言葉に学園都市が誇る二人の超能力者は言葉を失い、驚愕していた。 
 
「勝てるわけ……ないじゃないの……」 
 
思わず御坂の口から漏れる諦めの声。一方通行も口にこそ出さないが、似たような意見を持っていた。 
 
自身の持つ長所が、能力が、存在証明が通用しない相手にどう立ち振る舞えばいいのだろうか。 
 
『とは言っても、まだまだ無くしたての欠点だからね。把握してない部分も沢山あるんだよ』 
 
だからまだ諦めないで、とあろう事か二人を励ますように、しかしどこか愉快そうに話すのは絶望の象徴である球磨川。 
 
『黙ってないでお喋りしようよー。それとも僕みたいなのとは喋りたくないのかな?』 
 
『やれやれ、いくら僕がモブキャラみたいな顔立ちだからって差別するのはよくないと思うな』 
 
『僕だって君たちと同じ人間なんだからさ。仲良くしようよ』 
 
ピースサインを向けて屈託のない笑顔を浮かべる球磨川に対し、いまだ口を利けないでいる二人。
 
「よォ…御坂美琴(オリジナル)」 
 
「なによ」 
 
一方通行が御坂へ囁く。 
 
「こりゃァ勝ち目がねェかもしンねェなァ。いっそ二人そろって逃げるかァ?」 
 
「冗談。佐天さん達を置いて逃げるわけないじゃない」 
 
「さっき敗北宣言したのはどなたでしたっけェ?」 
 
「勝てなくても、止めるのよ」 
 
「ふゥン……」 
 
コソコソと話す二人が囁き会っている姿をじっと眺めている球磨川。 
 
「それなら、一つギャンブルに出てみようじゃねェか」 
 
「え?」 
 
「よく聞けェ」 
 
そして、一方通行から持ちかけられたのは一つの作戦。 
 
だがそれは作戦とは到底いえる物ではなく、仮説を前提に置いたいわば希望だった。 
 
伝達が終了し、いくらか驚いた表情を浮かべる御坂だったがしっかりと頷き了解をする。
 
『作戦タイム終了かい?それじゃどっからでもどーぞ』 
 
「ハハ!」 
 
余裕を崩さずノーガードで迎える球磨川に、一方通行は短く笑う。 
 
「後悔しないでよね!」 
 
御坂がそう叫ぶと共に二人の作戦が実行された。 
 
『わぁお!ミナデインみたいだね!!』 
 
御坂から放たれた無数の雷をまるで河川敷から花火を眺めているかのように暢気に待ち受ける球磨川。 
 
それをあえて避けず全身で受け止め、自らの体を傷つける。 
 
『あれぇ?なんだか体が動かないぞ』 
 
雷の熱で服が焼け、露出した皮膚の所々が焼け爛れても笑顔を崩さない。 
 
「そのまま死んどけェ!糞野郎ォォォォ!!」 
 
一方通行は絶叫しながら先ほどの攻撃と同じよう無数の崩れたコンクリート片を飛ばす。 
 
これすらも受け入れ体中の至る所に穴が開き、右腕にいたっては引きちぎれて肩から伸びる数本の筋繊維で繋がったままぶら下がっていた。 
 
「く……」 
 
その光景に思わず目をそらそうとするのは御坂だった。 
 
いくら攻撃が無効化され傷が治るとはいえ人間が壊れていく様は直視するには耐えがたいものである。 
 
「攻撃をやめんじゃねェ!!」
 
「くっそおおおおおおおおおおおおお!!」 
 
一方通行の叱咤により、球磨川を“殺す”決意を固めた御坂は磁力で床から一本の鉄骨を取り出し、球磨川の心臓めがけて飛ばす。 
 
『それは避けなきゃ不味いかなぁ』 
 
的確に球磨川の左胸、つまり心臓めがけて飛来する一本の鉄骨。 
 
残った左手で頬を掻く球磨川は苦笑いを浮かべ、傷もそのまま横にそれて回避をしようとするが、 
 
頭上に浮かぶ自らを覆い隠すほどの鉄板に気がつく。 
 
「悪ィがこの攻撃は一方通行だァ。進入も回避も禁止ってなァ……」 
 
一方通行は口元を歪めながら自らの右手の親指だけを立てて首元を切る素振りを見せ、そのまま手首を返し親指を下に向ける。 
 
その先にある球磨川の運命と、この悪魔のような物語を締めくくるように言葉を添えて 
 
「ジエンドだ」 
 
遥か上空から勢いよく球磨川へ落下を始める鉄板。 
 
鉄骨は回避できるかもしれないが、その傷ついた体では大きい動作ができないのか、球磨川は鉄板を見上げる。 
 
『う、おおお!死ぬ!これは死ぬ!くそおおおおおおおおおおお!!』 
 
そうして巨大な鉄板は、叫びをあげる球磨川へと落ちていった。
 
一方通行の作戦とは、天井戦と同じく物量で攻めきるという単純なものだった。 
 
大嘘憑きの効果範囲、発動条件などはわからなかったが、 
 
磁力とベクトルを別々になかったことにしたことから、複数の事柄を同時に虚構にすることはできないと一方通行は考えた。 
 
それならば、回復をする暇を与えず全力で攻撃を続ければいい。回避をする間を与えず全霊で殺せばいい。 
 
それが、もはや希望ともいえる一方通行の考えた作戦の全貌だった。 
 
この作戦において、一方通行や御坂は最初の一撃を与えることを課題としていた。 
 
多面攻撃を仕掛けたところで、最初の攻撃と同じようになかったことにされるのが落ち。 
 
だから一撃さえ与えれば動きを止めれ、なおかつ回復と回避の二つの処理を与えれる。 
 
その後は、弾幕のように攻撃を繰り出せば勝機はあると思っていたため、球磨川の油断した状態は正直二人にとっては僥倖といえたのだった。 
 
勝てる。 
 
二人は落ち行く鉄板を眺めつつ少し安堵していた。 
 
事実、処理に追われた球磨川はこうして鉄板の下敷きになろうとしているのだから。 
 
この作戦は成功といえよう。 
 
だが。 
 
『なんちゃって』 
 
だが。それは仮説が正しかった場合の話である。
 
球磨川はそう言って、鉄板と鉄骨、それに体の傷を同時に虚構にし何食わぬ顔で立ったままだった。 
 
「なっ!!」 
 
目の前の光景に信じられないといった声を上げるのは御坂。 
 
一方通行は自らの希望を打ち砕かれ苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべている。 
 
『同時に消せないと思った?』 
 
球磨川は相変わらず笑顔を浮かべているが、二人にはそれがただただ不気味に見える。 
 
両手には何も持たず、背筋を伸ばした良い姿勢のままスタスタと早足で二人へと歩み寄りながら言葉を続ける。 
 
『二人のレベル5なら何とかなると思った?』 
 
その言葉はまるで呪詛のようで、何かの呪いのようで。 
 
『僕が攻撃を受けたから、切実な表情を見せたから殺せると思った?』 
 
二人の足を地面へ縫い付ける。 
 
『どれだけ自分達が重要な役回りだと勘違いしてたのかな?恥ずかしげもなく』 
 
これが恐怖、これが絶望、これが過負荷。 
 
『この物語に主人公は一人だけ。悪役も僕一人だけ。それ以外は舞台袖へ下がって頂戴』 
 
二人は逃げるという選択をしなかったことを後悔していた。 
 
『一方ちゃん。どうだい?これが殺される恐怖だよ』 
 
一方通行は何も言えない。最強と呼ばれ無敵を目指した少年ですら目の前の最悪の前ではただの人間だった。 
 
『美琴ちゃん。今から僕がミサカちゃん達の敵討ちをしてあげるね』 
 
御坂は立ち竦む。その胸にはただ恐怖と後悔の渦が巻いているだけで他には何も考えることができない。 
 
『心配しないで。ミサカちゃん達を殺した犯人と仲良く戦っていた君も、仲良く殺してあげるから』 
 
そして笑みを浮かべたまま螺子を取り出した球磨川。 
 
その螺子はプラスを螺子伏せる象徴。 
 
その螺子は巨悪なマイナスの権化。 
 
その螺子は二人の終わりを告げる物。 
 
『それじゃ、天国で会おう』 
 
球磨川は螺子を振り上げる。 
 
二人は思わず目を瞑り、その時を待つだけだった。
 
振り下ろされる螺子が刺さる音だろうか?ドゴッという鈍い音が御坂の耳に飛び込んできた。 
 
おそらく一方通行が刺されたのだろうと、恐る恐る瞼を開き状況を確認する。 
 
「え……?」 
 
螺子伏せられた一方通行の姿を想像していた御坂は目に映った光景を疑った。 
 
無理もない。倒れているのは一方通行ではなく、球磨川禊だったからだ。 
 
そこにはさっきまではこの場に居なかった人物が息を切らしたまま、振り切った拳を伸ばしている少年が一人。 
 
一方通行も目の前の人物に驚き、どこか不機嫌そうな表情を浮かべている。 
 
当然だろう。その少年はかつて一方通行を撃破した少年なのだから。 
 
そして恐らく少年に殴られ吹き飛んだであろう球磨川は対照的に嬉しそうな表情を浮かべていた。 
 
「ふざけんじゃねぇぞ……」 
 
ゆらりと腕を下ろし、球磨川に向けつぶやく少年。 
 
「何が過負荷だよ。何が負能力だよ……」 
 
その姿からは抑えきれない怒りが漏れているのがわかる。 
 
「関係ない人まで不幸にして、不幸から抜け出そうとした人まで巻き込んでんじゃねえよ!!」 
 
とうとう少年は叫びだしてしまった。
 
「テメエ知ってるんだろ!?御坂の友達が自分の感情抑えてまで友達でいようと努力してたことを」 
 
「必死になって能力者になろうと頑張ってたことを!」 
 
「それだけじゃねえ!妹達がどんな気持ちで死んでいったのか、生き残った奴等がどんな決意で今を生きてるのか!」 
 
「必死に今を生きてるんだよ!死んでいった妹達のことなんざ一瞬たりとも忘れてねぇ!」 
 
「御坂だって同じだ!苦しんで、悩んで、涙を流して、葛藤して、それでも前向いて生きてるんだ!」 
 
「どれだけ不幸だろうと、どれだけ欠点だらけでも皆幸せになろうって必死にもがいてんだよ!!」 
 
「一方通行があの日から何をして過ごしたのかも知ってんだろうが!」 
 
「許されるつもりはねえって十字架背負って、命を懸けて打ち止めを、妹達を救ったんだ!」 
 
「死んで許されるならコイツはとっくに死んでるはずだろうが!?でもこうやってコイツ生きてる」 
 
「そうやってどうしようもない現実に抗って、もがいて生きてる奴等をテメエは何で不幸にしようとしやがる!」 
 
「どうしようもない運命(マイナス)を持っちまったアイツだって頑張ってんだろうが!」 
 
「後悔して、懺悔して、それでもアイツは笑ってるんだ!!」 
 
「どうしてそれが分からない!?なんで分かろうとしねぇんだよ!!」
 
「なんでテメエはそれを邪魔することができるんだ!!」 
 
少年は叫ぶ。 
 
それは、球磨川に弄ばれた者達の気持ち。 
 
平等を望んだ佐天涙子の願い。 
 
一万回死んだ妹達の痛み。 
 
それを受け止め生きる妹達の重み。 
 
過酷な運命を背負う御坂の悲しみ。 
 
許されることのない一方通行の苦しみ。 
 
存在証明を無くした姫神の悩み。 
 
巨大な負を抱えながらも懸命に生きる青髪の想い。 
 
それを全て、目の前に居る大嘘憑きに向けぶつける。 
 
それは少年の―― 
 
上条当麻の心からの言葉だった。 
 
「立てよ最悪(本物)。俺の最良(偽者)で正してやるよ!」 
 
見下ろす球磨川に向け上条は右拳を突き出す。 
 
「テメエが何でもなかった事にできるって言うんなら……全てを不幸にすると言うんなら――」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「その幻想をぶち殺す!!」 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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