球磨川『学園都市?』 > 16


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御坂が研究所に突入し、一方通行が球磨川に敗北する数時間前には上条は既に研究所内へと入っていた。 
 
それなのに御坂が球磨川と邂逅した場に上条が居なかった理由。それは不意打ちによる催眠ガスの攻撃によって意識を失って別室に居たためである。 
 
場面はとある研究所の一室。球磨川と佐天涙子の会話から始まる。 
 
「球磨川さんの言うとおり、初春や御坂さん、白井さんは私を見捨てませんでした」 
 
「自らが不幸(マイナス)になってまでも、私を助けてくれた……」 
 
嬉々として球磨川にそう話す佐天。現状が理解できないのか御坂達は呆然と二人を眺めているだけだった。 
 
『でしょー?だから涙子ちゃんは一人ぼっちじゃないんだよ。お友達が居るし何より僕が居るんだから、さ』 
 
『うっかりお友達を殺しちゃっても僕が全部〝なかったこと”にしてあげるよ』 
 
『さて、ところで君達はどうしてこんな所まで来たのかな?涙子ちゃんを保護するのが目的じゃなかったの?』 
 
『それとも、そこの風紀委員さんの敵討ちとか?嫌だなぁそれはさっき水に流したじゃないか』 
 
『とりあえずこっちにおいでよ。お茶でも飲もう』 
 
両手に螺子を携えたままおいでおいでと手招きをする球磨川の元に佐天と9982号は歩み寄る。 
 
「佐天さん!!」 
 
その友人の姿に思わず初春が叫ぶ。その叫びに佐天は一度振り返り微笑を向け、すぐに球磨川の元へと行ってしまった。 
 
同時に振り返った9982号も御坂に何か言いたげな目を向けたと思えば踵を返しさっさと歩いていってしまう。 
 
「……」 
 
初春と白井は目の前の光景に立ち竦んでいるままだったが、御坂だけは何かを考えるよう腕を組んでいた。 
 
「佐天さん!妹さん!こっちに戻ってきてください!」 
 
「そうですわ!もうわたくしの敵討ちなどどうでもいいですから、一緒に帰りましょう!」 
 
二人の悲痛な叫びも佐天には届いていないのか、歩みを止めることはなく球磨川の隣に立つ佐天と9982号。
 
「球磨川さん、ありがとうございました」 
 
佐天はそう言うと深々と頭を下げる。球磨川はそんな佐天の行動に少し意外そうな表情を浮かべた後、 
 
身振り手振りを含めて『気にしないでよ』と答えた。 
 
そんな姿をじっと見つめる9982号。 
 
「それと、ごめんなさい」 
 
頭を上げたと同時に、白井にされたように球磨川の後ろに周り、両腕を球磨川の両脇から通しがっしりと拘束した。 
 
『えーっと……なに?涙子ちゃん式の謝罪方法?』 
 
佐天の行動に首をかしげる球磨川はさして抵抗をしようともせず、佐天に質問をする。 
 
「球磨川さんのおかげで、普通の能力とはちょっと違いますが、力を手に入れることができました」 
 
「球磨川さんのおかげで、何も考えずにこの負能力をふるう事ができました」 
 
「球磨川さんのおかげで、本当の意味で皆と友達になれました」 
 
「だから心から感謝しています。でも……」 
 
佐天が言葉を紡ぐ中、9982号はナイフを取り出す。 
 
『!!』 
 
初めて、球磨川が動揺の表情を浮かべる。 
 
「皆は私のために不幸(マイナス)になってくれた……だから、今度は私が幸福(プラス)になって皆と同じ場所に行きます」 
 
「佐天さん!」 
 
佐天と9982号の意図にようやく気がついた御坂が慌てて駆け寄ろうとするが、 
 
9982号が脹脛にナイフを突きたて痛みを御坂へ委託することで、足を止めた。
 
「っつ……ミサカも球磨川禊へ伝えたいことがあります、とミサカは痛みを堪えつつ言葉を発します」 
 
「アンタ……!!」 
 
自らの妹へ言葉をかけようとするが、痛みのせいでうまく考えがまとまらない。 
 
「再びこの世へ戻していただき、感謝しています。感情を残していただいて感激しています」 
 
「貴方がお姉様とミサカを戦うように仕向けなければ、このような感情も生まれなかったでしょう」 
 
「自分の為、そしてなにより他人の為に何かをしたいという気持ち――これがあの時お姉様を奮い立たせた感情なのですね」 
 
「だから、ミサカも佐天涙子と同じ考えです。ミサカは、再び生まれたミサカ達は全員で幸せ(プラス)になりたい、と」 
 
「全てを元に戻してくれた貴方に対し、刃を向けるのは心苦しいですが観念してください」 
 
『い、いやだ……助けてよ……死にたくない』 
 
涙目で懇願する球磨川など無関係にギラリと刃を光らせ、ナイフを振り上げる9982号。 
 
二人は、自らの手を汚してまでもこの男を排除しようとしたのだ。 
 
「駄目です!!」 
 
その瞬間、初春が渾身の力を込め叫ぶ。 
 
一瞬9982号の動きが止まった瞬間白井が空間転移で球磨川と9982号の間へ割り込み、思い切りナイフを蹴り上げ弾き飛ばす。 
 
そして、跪きながら御坂がナイフを威力が弱くなっている電撃で破壊した。 
 
「風紀委員として、一人の人間としてそのような行動は見過ごせませんの!」 
 
白井が激昂する。 
 
「アンタ達の気持ちは分かるけど、それはやりすぎよ。せいぜい一発殴るだけにしなさい」 
 
「ま、その殴る役目は私のものなんだけどね」 
 
不適な笑みを浮かべて御坂は立ち上がる。痛みはもう無い。 
 
そして狼狽する球磨川のそばまで近づいた。
 
『美琴ちゃん、でよかったよね……ありがとう助かったよ……』 
 
先ほどの攻防に驚き、手を離してしまった佐天の拘束から逃れた球磨川は、両膝を床につきながら御坂に感謝の言葉を伝える。 
 
『まったく、驚いたよ……まさか二人がこんなことをするなんて……』 
 
冷や汗を流しながら、信じられないといったように首を横に振る球磨川。 
 
「ずいぶんと二人を信用してるみたいね」 
 
冷たい氷のような言葉を球磨川に吐く御坂。 
 
『当たり前じゃないか!成り立てとは言え二人は僕と同じ過負荷(マイナス)で負(マイナス)で敗北者(マイナス)なんだぞ!!』 
 
『それがこんな行動にでるなんて、まるで悪夢だよ!!』 
 
『もう何も信じられない!!せっかく悪役になってまで皆の仲を取りまとめようとしてあげたというのに!!』 
 
『なんで僕ばかりこんな目にあわなければならないんだ!!なんで大事な仲間に裏切られなきゃいけないんだ!!』 
 
今度は急に立ち上がり怒号を撒き散らす球磨川の姿に、御坂は少し疑念を抱いた。 
 
御坂はこの球磨川という男は人を人とも思わない人でなしで、仲間だのなんだのという感情は持ち合わせていないと思っていたからだった。
 
それがどうだ。目の前にいる男は二人を大事な仲間と称し、挙句は全ては自分たちの為に悪役に徹していたというのだ。 
 
御坂は、辛そうに叫ぶ球磨川の姿を見て、少し同情をしてしまった。 
 
『一方ちゃんだって急に僕に襲いかかって来たから仕方なく攻撃をしただけなんだ!』 
 
『だからこうして直ぐに戻(なお)してあげるつもりだったんだよ!』 
 
そう言って球磨川は倒れ付す一方通行の体へ手を添える。すると刺さっていた螺子は消えうせ、一瞬のうちに傷が治っていった。 
 
『だから、これ以上僕を責めないでくれ!攻めないでくれ!』 
 
とうとう球磨川はその両目から涙を零してしまう。
 
「お姉様……」 
 
そんな球磨川の姿を見て、最初に口を開いたのは白井だった。 
 
「この殿方は抵抗するつもりは無いみたいですし、今後風紀委員で監視をつけるように申請します。なのでここは……」 
 
「黒子?」 
 
被害にあった白井の口からそんなことを言われてしまえば、御坂は何も言い返せない。 
 
「もちろん、許すつもりはありませんわ。しかし無抵抗の相手をこれ以上責めるのはいささかやりすぎかと」 
 
「それに、そうすれば誰も傷つきませんわ」 
 
暴力を暴力で返すのでは何も解決にはならない、と白井は言いたいのだろう。 
 
目には目を、ではいずれ世界は盲目になる。と言った言葉があるようにその先に待っているのは破壊の物語でしかない。 
 
確かに白井の言うとおり、佐天は帰ってきたし、妹達は全て無事。これ以上ない状態ともいえた。 
 
「皆がいいって言うなら、私はそれでかまわないけど……」 
 
御坂が周りを見渡すと、全員が頷いた。それを確認すると御坂は大きなため息をつきもう一度球磨川を睨み付ける。 
 
「今回は見逃してあげるけど、二度と同じようなことはしないこと!いいわね!」 
 
「もしこの警告を無視したら、全身全霊でアンタを焼いてやるわ!!」 
 
『わかった……二度とこんなことはしないよ』 
 
伏し目がちに了解する弱弱しい球磨川の姿をみて、完全に御坂の中に戦意は無くなっていた。
 
「はぁ……なんか拍子抜けね。黒幕がアンタみたいな三下だと」 
 
「まぁいいじゃありませんか、一応アンチスキルに連絡を取ってこの方の身柄を拘束するまでは監視しておきましょう」 
 
「はい、それでは通報は私が」 
 
「球磨川さん、ありがとうございました。それとごめんなさい。もう一度言っておきます」 
 
「球磨川禊。貴方に頂いた命は決して無駄にしません、とミサカは決意を表明します」 
 
全てが終わったと、少女たちは思い思いの言葉を口にする。 
 
だだっ広い研究室内にはさっきまでの殺伐とした雰囲気が嘘のように、朗らかなムードが流れていた。 
 
「おっねぇさまー!寮に戻ったら約束を果たしていただきますわ。ぐふ、ぐふふふふふ」 
 
「だぁー!それは忘れろー!!」 
 
「お姉様、ミサカはアイスが食べたいです、とミサカは物欲しそうな表情を浮かべます」 
 
「あー!そういえば一週間も休んでるから宿題がやばい!!」 
 
「大丈夫ですよぉ佐天さん。私がしっかり教えてあげますから」 
 
それは、とても微笑ましい光景だった。 
 
そんな中、球磨川が口を開いた。 
 
『美琴ちゃん、ひとつだけお願いがあるんだ』 
 
「……なによ?」 
 
怪訝な表情を浮かべ、球磨川のお願いを聞くことにする御坂。 
 
『この外部メモリのプログラムを調整中のミサカちゃん達に使ってやってくれないかい?それで全ての調整が終わるんだ』
 
「怪しいわね……」 
 
『本当だ、信じてくれよ僕を』 
 
メモリを受け取りそれを摘むようにして持ち上げじっと観察する御坂。 
 
「大丈夫ですよ御坂さん。どんな用途のプログラムか分かりませんが私が解析しますから」 
 
「その花頭が解析したら、無害かどうかをミサカが判断します」 
 
「は、花頭って……!!」 
 
「初春さんやアンタが判断してくれるんなら問題ないわ。分かった、やってやるわ」 
 
『ありがとう。調整室はC棟にあるからね』 
 
御坂は初春と9982号を連れて部屋を後にしようとする。 
 
「お姉様わたくしもいきますの」 
 
「御坂さん、私もついていきます」 
 
球磨川と同じ空間に居たくないと無意識に思った白井と佐天も同行すると名乗りを上げる。 
 
「じゃあコイツの監視はどうすんのよ?」 
 
さすがに球磨川を一人にしておくことはできないと危惧した御坂の問いに白井は手錠を取り出して答える。 
 
「これで拘束しておけば問題ありませんわ。では参りましょう」 
 
「じゃ、すぐ戻ってくるから変な真似しないでよね」 
 
球磨川を支柱に手錠で拘束し、御坂達は部屋を出ようと球磨川に背を向ける。 
 
当然、その時球磨川が口元を歪めた事に誰も気がつかなかった。
 
「えーっとC棟は左で」 
 
最後尾についた白井の声が途中で途絶える。 
 
異変に気がつき全員が振り向いた瞬間、背中に螺子を螺子込まれ顔面から倒れこむ白井。 
 
「!!」 
 
いつの間にか、御坂達の真後ろには螺子を持った球磨川が凄惨な笑みを浮かべていた。 
 
「アンタ!手錠を!!」 
 
『だめだよ、あんなもので僕を拘束した気になっちゃ。ついこの間「金田一少年の事件簿」を読破した僕の気分は地獄の傀儡子なんだからね』 
 
よく分からない例えを出しながら螺子を9982号、佐天へと突き刺す。 
 
9982号は負能力の委託対象を無差別に設定していたのか、それとも一瞬で気を失ってしまったのか御坂や初春に痛みが伝わることは無かった。 
 
あっという間に、残りは二人となってしまう。 
 
「さっき約束したことを忘れちゃったのかしら!?」 
 
佐天が気を失ったことにより公平構成の効果も解除されたのか、体中から放電しながら御坂が声を張り上げる。 
 
『約束は覚えてるよ。二度としない、でしょ?だからこうして一度はしたのさ。いや三回さしたから三度かな?』 
 
「初春さん!逃げて!!」 
 
その言葉に初春は直ぐに廊下を走り抜けていく。 
 
御坂の言葉は「私を置いて逃げろ」という意味ではなく「電撃に巻き込まれるから逃げろ」という意味だと理解したからだった。 
 
倒れ付す三人に電撃が当たらないように、御坂は壁に含まれる鉄へ磁力を発生させ壁走りで部屋の中央へと移動する。 
 
『カッコいいね。人生で一度は言ってみた台詞だよ。でもそれって死亡フラグじゃないかな?』 
 
再び両手に螺子を出現させた球磨川は御坂と向き合う。 
 
「確かに死亡フラグよ。ただしアンタのね。後悔しなさい!佐天さんを先に気絶させなければ私の能力は制限できてたことを!!」 
 
ポケットからコインを取り出し、球磨川へと向ける。 
 
それは、御坂の最強技の構え。 
 
「いっけえええええええええええええええええええええええ!!」 
 
そして、出力最大の超電磁砲を球磨川へと放射した。
 
 
ツールボックス

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