球磨川『学園都市?』 > 11


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「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら」
 
狂気の咆哮を響かせながら、一方通行の反射膜は形成されていない無防備な体へ向け引き金を引く。
 
しかし、今度の銃弾は大きく右に逸れてしまい、致命傷を与えるまでにはいかなかった。
 
その隙を利用し、一方通行は脇腹を押さえつつも立ち上がり、走って天井との距離を開ける。
 
背中に壁を背負う形だ。
 
(追い詰められましたァってかァ?だが距離をある程度あけてりゃァ演算は可能みてェだな)
 
そして、血流操作で止血をした後、生態電気の信号をも操り傷を癒そうとするが、目の前の狂った科学者はそれを許さない。
 
「死死しシssァクセェラァレエェェタァァァア!!」
 
げらげらと壊れたように笑いながら再び拳銃を向けて、発射する。
 
銃弾は一方通行の体を打ち抜かんとして頭部へと向かうが、演算が可能になった今、銃弾は天井の頭部へ向け反射される。
 
だが、それさえも天井に掠ることすらできない。
 
「おもしれェじゃねェかよォォォ!かかかかけけきくくくけけけここここ!!」
 
「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら」
 
双方からの狂った笑い声が部屋に木霊する。
 
一方通行が背面の壁を右手で思い切り叩くと轟音を鳴らしながら壁が崩れ去り、
 
鉄骨がむき出しになった破片が幾つかが彼の足元へ転がり落ちた。
 
そしてそれを両手一杯に抱えると、自らの上空へ放り投げる。
 
そのままベクトル操作で天井の頭上まで移動させ、一気に落下させつつも、先ほど失敗した突風も作成しぶつける。
 
「こォォォンな愉快な攻撃はァ、どォォするンですかァ!?」
 
頭上には凶器となった壁の破片、眼前には迫り来る突風。そして、一方通行が足踏みをし発生させた地割れ。
 
三方からの攻撃は通常なら避けきれる筈が、ない。
 
しかい、それでも天井は、その場を動かず立ち尽くしているだけだった。
 
突風が、破片が、地割れが、天井の立っていた場所を蹂躙する。
 
降り注いだ破片の粉塵で、天井の姿は確認できないが普通なら命中は必須だ。
 
通常の人間で普通の状態なら。
 
僅かに粉塵が晴れる。
 
徐々に浮かび上がる姿は、今だ大きく口を歪めながらげらげらと笑ったままだった。
 
そう、彼はもはや通常の人間ではなく負の人間であり、破綻した状態である。
 
結果、完全に目視できる状態になった天井の姿は無傷ではなく、悲惨なものだった。
 
一方通行の操作通りに攻撃が命中していれば、粉塵が晴れた先にあるのはただの肉塊にならなければいけない。
 
すなわち、天井が立っているということはまたしても攻撃は失敗に終わったということ。
 
しかし、笑い続ける天井の姿は、一方通行の攻撃が、全て失敗にならなかったことを表していた。
 
頭部からは血を垂れ流し。
 
背負う白衣も紅く染まり。
 
左手の親指を除く指はグシャグシャに変形し。
 
右足は先ほど打ち抜かれた出血だけでなく、膝の間接が逆に曲がっている。
 
だが、そんな姿になりながらも。
 
「げらげらげらげらげらげらげら!!殺す殺すころすころこすココロロスss」
 
天井亜雄は狂ったままだった。
 
「大人しく死ンでた方が楽だぜェ。あァ今のテメェには痛覚が無ィのか」
 
そんなボロボロの天井の姿を確認して、一方通行は己の勝利を確信した。
 
このまま物量で攻めきれば勝てる。
 
「だったらァ何度でもぶち込んでやらァァァアア!!」
 
足元に転がる破片を蹴り付け、再び天井へ弾幕を放射する。
 
やはりその大半は目標から大きく逸れていくだけだが、何個かは天井の体へと突き刺さった。
 
「死なない俺は死なない死なない死なないシナナイシネナイ……」
 
流石に出血量が多かったのか、笑い声が止み、初めて天井は自身の体を気遣うように刺さった破片を取り除いていく、
 
その内の腹部へ刺さった破片を天井が引き抜いた瞬間、突如けたたましい警報が部屋に鳴り響く。
 
「なんだァ?」
 
追撃をするつもりだった一方通行も、その警報に動きが止まる。
 
そして、警報が止まったと思えば今度は機械的な女性の声のアナウンスが流れ出した。
 
――最終信号へコード三七五六四のインストール完了。三百秒後にプログラムが実行されます。繰り返します……
 
そう伝えるアナウンスの言葉の意味を、再び笑みを浮かべた天井の表情を見た一方通行は即座に理解する。
 
目の前のマッドサイエンティストは、あの時の様に打ち止めを利用した何かを仕組んだのだと。
 
「げら……げらげらげらげら!!終わる殺せる壊せれる!!」
 
今だ鳴り続ける無機質なアナウンスとは対照的に、歓喜の叫び声を上げる天井。
 
そして、一方通行は激昂する。
 
「テメェ……クソガキに何しやがったァ!?」
 
「お、おなじだ。あの時と……」
 
はたから聞いていれば天井の言葉の意味など理解ができない。
 
だが、一方通行には瞬時にその意味が解った。
 
「ウイルスか……!!」
 
ウイルス。
 
それは過去にも天井が打ち止めを上位固体とした、ミサカネットワークに繋がる妹達の全固体に強制的に命令信号を送らせる代物。
 
そして、一方通行が自身の能力と引き換えに食い止めたものだった。
 
「こ、今度は……あ、あの少年によって蘇った00001号から10031号を含めた全固体を対象にしている……」
 
「勿論、全固体というのは最終信号も入っているよ。げらげらげらげらげら」
 
アナウンスに自我を取り戻したのか、会話ができるところまで天井は戻ってきていた。
 
「ンだとォ!アイツは俺に実験をするよう言ってただろうがァ!!」
 
すがるように一方通行が叫ぶが、天井はそれを一蹴する。
 
「げらげら……貴様は自分に自分に害をなす敵の言葉を信じ続けるのか?……げらげらげらげら」
 
「それに……あの少年の能力名を知らないのか?げらげらげら」
 
そう言って狂った笑いではなく本当に愉快そうに天井は嘲笑する。
 
「球磨川禊……本当に傑作だ……いや、戯言かな?彼は能力だけじゃなく性格さえも“大嘘憑き”なのだから」
 
その言葉の後に部屋に残っていたのは、げらげらと笑い続ける天井の声だけだった。
 
「げらげらげら……さぁて一方通行よ。死んで貰おうか」
 
ずるずると体を引きずり、血の線を床に描きながら天井は一方通行へと近寄る。
 
しかし、一方通行は動かない。
 
混乱しているわけではない。
 
恐怖しているわけでもない。
 
ただひたすらにこの状況を打破する方法を考えていた。
 
(天井のヤロォを瞬殺すれば、まだコードの解除はできる……)
 
(クソッタレがァ……あの能力の前じゃァ時間がかかり過ぎンぞ)
 
既にアナウンスが刻んでいるタイムリミットは百五十秒を過ぎている。
 
思案する一方通行に対し、天井は再び呪いの言葉を呟きつつゆっくりと近づいてくる。
 
だが、一方通行にはその言葉は届かない。
 
(能力を解除したわけでもないのに、天井の攻撃は成功し、俺の演算は失敗……)
 
(つまり、何かしらの方法を使えば俺の攻撃も奴に届く)
 
必死に思考を回転させて糸口を掴もうとするが、その答えは見つからない。
 
「失敗、成功、失敗、成功、失敗、成功……」
 
ぶつぶつと呪文のように呟き続ける一方通行。
 
反射膜の形成が乱れて気がくころには、天井の能力の効果範囲へと入っていた。
 
「げらげらげら。一方通行、こんな俺でも成功する時が来たようだぞ。まさに失敗は成功の母であるとはこの事だな」
 
銃口を向け、天井の放った言葉で一方通行は遂に天井攻略の尻尾を捕まえた。
 
「そォか!」
 
足元のベクトルを祈りながら操作した一方通行は、なんとか天井の能力対象距離から外れることができた。
 
この時、ベクトル操作が失敗していたら、勝負は天井に軍牌が上がっていただろう。
 
だが、千分の一、万分の一の確立で“成功”した一方通行はこの瞬間勝利を確信した。
 
――プログラム実行まで残り百秒……
 
もはや解説をしている場合ではない。
 
一方通行は急いで床を砕き弾丸を作成し、右手に握ると、天井の右足を貫いたときと同じように大きく振りかぶった。
 
そして、思い切り破片を天井に“当たらないように”投げ飛ばした。
 
「げらげらげらげら!どうしたぁアクセラレー……ッタ!!」
 
明らかに当たらない筈の起動を描いた破片の弾丸は、何故か天井の眉間を打ち抜いた。
 
不気味な笑顔のまま崩れ落ちる天井。
 
即死、だった。
 
勝利の余韻に浸ることなくすぐさまモニタに向かって、コードの解除を開始する一方通行。
 
そして、直ぐにプログラム解除のアナウンスが流れ出した。
 
「結局、まァた失敗しちまったみてェだな」
 
事切れた天井を見下しながら、一方通行は吐き捨て、打ち止めの入っているビーカーの前に歩いていった。
 
「よォ……クソガキ」
 
目を瞑り、蹲りながらビーカーの中に浮かぶ少女に一方通行は話しかける。
 
プログラムが解除された今、少女の意識はその言葉によって少しずつ覚醒した。
 
酸素マスクを外しゴポリと笑う少女の口から大きな泡が漏れ、自分が今呼吸ができないことに気がつき慌てふためく。
 
「なァにやってンだよ……」
 
慌てて酸素マスクを口にはめた後、再び笑顔を浮かべる少女の行動に少し呆れつつ頭を掻く。
 
そして一生懸命口を動かして何かを伝えようとする少女。
 
「アァン?「早くここから出してーってミサカはミサカは懇願してみる」だァ?」
 
一方通行の言葉に自らの意思が伝わった事が解り、一層笑みを深くする少女に対し、彼はある悪戯を思いついた。
 
「だが断る」
 
「~~~ッ!!」
 
同居人の黄泉川が収集している漫画の中の台詞を模倣してみる一方通行にビーカーの中の少女は怒りを露にし、激しく口を動かす。
 
「……「そんなこと言うと演算機能を切っちゃうよってミサカはミサカは脅してみたり」……」
 
今そんなことをされたら洒落にならない。
 
一方通行は小さな交渉人の要求を大人しく聞き入れ、ビーカーの端末を操作し中の液体を排出させた。
 
「やっとあなたに言葉が伝わるねってミサカはミサカは大喜び!!」
 
液体が全て無くなったとたん、狭いビーカーの中で飛び跳ねながら喜ぶ少女こと打ち止め。
 
「うっせェ!少しは静かにしやがれェ!!」
 
「照れちゃって可愛いなぁ~ってミサカはミサカは小悪魔の笑み!!」
 
「そンなくだらねェ事どこで覚えやがった!」
 
「え?芳川の持ってた雑誌だよ?ってミサカはミサカは首を傾げてみる」
 
「芳川ァ……帰ったら血流操作かコンテナ降り注がれるか好きな方を選ばしてやンよォ……」
 
「そんな恐ろしいこといわないで、さっさとこのビーカーを開けて!ってミサカはミサカは密閉空間に嫌気がさしてたり!!」
 
「わァったよ、ちょっと待ってろォ……ってンン?」
 
これ以上の寸劇は不毛だと思った一方通行が、ビーカーの開閉を操作しようとするが、なにやら鍵穴があるのを発見して小さく唸る。
 
打ち止めはそんな姿を見てアホ毛を揺らしながら首を傾げていた。
 
「あァ……こりゃまた原始的だなァ。でもまァこの学園都市じゃ逆に安心ってかァ?」
 
そして、物言わぬ天井へ歩み寄ると彼の白衣をまさぐり鍵を探す。
 
「あなたは何をしてるのってミサカはミサカはあなたの性癖を疑ったり……」
 
「露骨に引くなァ!!鍵を探してンだよ……あったあった」
 
思いのほか簡単に見つかった鍵を掌の上で転がせつつ打ち止めの入っているビーカーへと引き返す。
 
そして鍵穴に鍵をさした、その瞬間。再びアナウンスが流れ出した。
 
――最終信号へのプログラム解除及び天井亜雄の生体反応が停止後六十秒の経過を確認……
 
そのアナウンスは、天井が用意した自爆プログラムの起動を知らすもの。
 
――守秘の為、この研究室の爆破を開始します。開始まで残り百五十秒です。研究室内の研究員は直ちに避難してください……
 
爆破という単語に慌てて鍵を回す一方通行だったが、鍵はロックされ回らなかった。
 
絶望のカウントダウンが始まる。
 
 
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