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フレンダ「で、誘うはいいとして、まず何処に行く?」
一方「そォだな…チマチマ第六学区歩くのもよさそォだけどよ…あの二人の事だから…
この一番デカイ遊園地が良いンじゃねェか?」
フレンダ「うん。まぁ割かし悪くないわね」
一方「そンでジェットコースターに乗る」
フレンダ「…初っ端から?」
一方「あァ、景気付けにこの『世界最長落差最大の360度回転式ジェットコースター・《恐震》』ってやつn」
フレンダ「馬鹿じゃないの?」
一方「あァ!?」
フレンダ「あのねぇ…開園して間もない時に乗るかっつーの」
一方「じゃァ何が良いンだよ」
フレンダ「そうね…アトラクションなら演出系とかそういったものがいいかもね」
一方「つまり軽いもンからって事だな?」
フレンダ「そういう事」
フレンダ「ただ…それはあくまで一般…常識の範囲での話」
一方「?」
フレンダ「私はあえてジェットコースターを推すわ」
一方「おおォォおおおォォィィィィイイイイイイいいいいいいい!!!!!!!」ガタン
フレンダ「ちょっ」
一方「テメェ!!俺の最初の意見聞いてたかァ!!悪ィのは耳か!?頭かァ!?」
フレンダ「落ち着きなさい。麦野呼ぶわよ」
一方「チッ…」
フレンダ「あの二人は絶叫系を一般人と違う概念で捕らえている節があるわね。だからまぁ大丈夫」
一方「じゃァ何が駄目なンだ?」
フレンダ「問題はアンタがいきなりデカイアトラクションを選んだ事。ジェットコースターでも軽い感じの奴がベストね」
一方「その確証はあンのかよ」
フレンダ「麦野はまず間違いない。あの正確だから最初にだらだらとした物を選ぶと途中から売店から動かなくなるわ
滝壺も麦野に倣って売店から動かなくなるかもね」
一方「そいつはマズイな…」
フレンダ(まぁ麦野からしたら滝壺の護衛だから自分勝手にはならないだろうし滝壺もラビットとデートする手前そんな事はしないわ)
フレンダ「更に、麦野たちに軽い絶叫系を味あわせといてさっきラビットが選んだ目玉ジェットコースターを意識させる」
一方「おォ!」
フレンダ「これで麦野はその目玉ジェットコースターを楽しみにしながら遊園地を歩けるって訳よ」
一方「…もし間違ってたらどォすンだ?」
フレンダ「サインがあるわ」
一方「サイン?」
フレンダ「まず麦野のことだから変なものを選んだらアンタ相手にそう激怒しないでしょ。むしろ
『あ~!それ面白そう!』とか無茶に振舞うわ。正解なら「へぇ」とかそんな感じじゃない?」
一方「わかった」
フレンダ「結局、アンタが最初に選ぶのは…コレ!平均よりも少し短い感じのジェットコースター『ハヤブサ』って訳よ」
一方「間違ったら買う缶詰の量3つ減らすからな」
フレンダ「わかった。そのかわり反応通りなら美食倶楽部お願いね」
一方「…完治したらな」
フレンダ「ハハッ…最近の医療技術は脊髄もくっつくからね…リハビリがてらに付き合ってもらうわよ」
一方「ケッ…杖突きにリハビリたァ笑えねェな」
~~~~~~~~~
麦野「あーなかなかスリルあったじゃない」
滝壺「うん。風が涼しかったね」
一方(…正直音速以上の移動が出来る奴がジェットコースターにスリル感じンのか?)
一方(そンで…あとは適当に麦野さンと滝壺のリクエストを聞く…だったか。とりあえず滝壺だな)
一方「滝壺、次ドコに行きてェンだ?」
滝壺「…あれ乗りたい」
麦野「あれって…コーヒーカップ?」
一方(コーヒーカップっつったけどよ……地味だったから盲点になってたぜ)
麦野(何コレ。どういったアトラクションなんだろ?)
滝壺(大きいコーヒーカップ⇒上から大量のコーヒーが注入⇒三人でコーヒー風呂)ワクワク
係員「えーではコーヒーカップ運転を始めまーす」リリリリリリリrrr......
麦野(えっ動いた!?)
滝壺(コーヒーは!?)
一方(コイツ……動くぞ!)
ぐるぐるぐる
麦野(え……何……?これをどうするの……!?)
滝壺(そっか!ボタン!ボタンを押してないから!)
一方(ヤベェ!何か知らねェが麦野さンがそわそわしてる!滝壺は何か挙動不審だぞ!?)
係員(あの11番のカップ……三人ともハンドルに手付けずに固まってるけど大丈夫かしら……?)
係員2(ほら、あの白髪の人とオレンジ色の女性がにらみ合ってて
もう一人は必死に視線を逸らそうとしてるでしょ?きっと修羅場なんだよ)
係員「おつかれさまでしたー」
一方「……」←気まずい
麦野「……」←気まずい
滝壺「……」←思った以上に期待はずれだった
「あー……やっぱりラビット超てこずってますね」
『あれだけ事前にアトラクションの情報を集めとけって言ってたのに……』
「恐らくラビットの事ですからコーヒーカップがアトラクションだと知らなかったんでしょうね」
『いやー。見てて全然飽きないわー。最近のテレビは全部網羅してたから退屈だったのよねー』
「あ!次行くみたいですよ」
『おっと!カメラ向けて!……あれは売店!?』
「でもすぐ出てきましたね……」
『ズーム機能ONっと……三人とも手に持ってるのは……コーヒー?』
「なんで?」
『さぁ……?』
~~~~昨日の夜~~~~
ガチャ
フレンダ「あ、悪いわね何度も呼び出しちゃって」
絹旗「まさかまた缶詰を買って来いとか言うんじゃないですよね?買い物は9時までって言ったじゃないですか」
フレンダ「いやーまさかぁ。ちょっとした独り言を言うだけよ」
絹旗「独り言……?とうとう頭がやられましたか?独り言というのは一人d」
フレンダ「明日ラビットと麦野と滝壺がデートする」
絹旗「!!」
フレンダ「ただ、麦野は留守中に絹旗が私の世話をすると信じているし、ラビットも絹旗が行きたいと言ったら
無茶してでも連れて行こうとするだろうし、滝壺もアンタを信頼してるもんなぁー」
絹旗(……つまり私はラビットたちにデートの予定地を訊く事は出来ない……
それが遊園地みたいな入場制限があるなら当日尾行してもまず見失うっ……!)
フレンダ「まぁ私がそのラビットのデートをけしかけたんだけど上手くいくかなぁ~?」
絹旗「……フレンダ、何が望みですか」
フレンダ「買い物の依頼権の夜10時までの延長、レンタルビデオの依頼権の追加」
絹旗「ぐっ……わかりました。つまり今すぐ買い物に行けって事ですね……?」
フレンダ「さっすが~絹旗!愛してるわよ~!」
絹旗「……鯖缶二つとコーン缶ですね」
フレンダ「あとDVDで『怒れる12人の男』、『現生に手を出すな』、『切腹』をお願い」
絹旗(超渋いのばっか…)
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
一方「結構回ったな」
滝壺「あのクロス・エレベーターっていうのが面白かったね」
麦野「クロス・エレベーターって……あのゆっくり動くだけのやつ?」
滝壺「うん。ゆっくり動くのって落ち着くから好き」
一方「滝壺のリクエストは粗方回ったな。麦野さンはどこか行きてェ場所とかあンのか?」
麦野「え?私?」
一方「あァ、どっかあるンだろ?」
麦野「私は……」
一方「なンでもいいぜ(まだ目玉のジェットコースターには寄ってねェが、麦野さンが行きてェなら行くか)」
麦野「……私は……私は、いいや」
滝壺「!?」
一方「……」
麦野「……」
一方「……あァ!?悪ィ麦野さン、端末で検索しても六学区はおろか学園都市に『イイヤ』なンてトコh」
麦野「そ、そうじゃなくてさ」
麦野「私は、遠慮するよ」
一方「ハァ!?なンでだ!?(チクショォ!どっかで選択ミスったか!?考えろ……考えr)」
麦野「だってこれ、滝壺とラビットのデートじゃない」
滝壺「!」
一方「!」
麦野「私は滝壺の護衛って事だから…まぁコブって事なの。だから滝壺とラビットのデートを邪魔したり干渉したりしたくはないわ」
一方(……選択ミス以前の問題だったな……前提からして駄目だった……麦野さンさえ誘えればと思ったが……)
滝壺「……」
麦野「って事でさ、ラビットがレベル5だって知ってるけど、ラビットが一応来てくれって言うもんだからね」
一方「……確かにな」
麦野「確か15分ほどは能力が使えるんでしょ?だったら私ここで待ってるからさ、
ラビットと滝壺は二人で観覧車でも乗ってきたら?ホラ」
一方「……いいのか?」
麦野「ハハ……それって私を心配してくれんの?大丈夫だって、不良共がナンパしてきても数の問題じゃないって」
一方「いや、そォいうm」
麦野「いいからいいから。滝壺も!」
滝壺「……じゃ、いってきます」
麦野「はいはい、行ってらっしゃい」
一方「……わかった。滝壺、行くぞ(……麦野さン)」
麦野「……はぁ、行ったわね」
バシュッ!ジジジジ......
「!!」ガサッ
麦野「さっきから目障りなんだよ。出てきな」
絹旗「……これ顔出した瞬間撃たれません?」
フレンダ『逃げても蜂の巣だから出るしかないでしょ』
絹旗「ま、待ってください!私です!絹旗です」
麦野「……まさかと思ったけどやっぱり尾行してきたのか」ハァ
絹旗「まさかと思っていたなら撃たないで下さい!!」
麦野「あはは!ごめんごめん。で……」
ガシッ
フレンダ『ヒイッ!!』
麦野「全部吐け。それとももう一度下半身とグッバイしたいか?」
フレンダ『ごめんなさいマジでごめんなさい』
~~~~~~~~~~~~
滝壺「……」
一方「……」
係員「はい、次の方~どうぞ」
一方「……乗ンぞ」
滝壺「……」コクリ
係員(倦怠期ってやつかな……?いやそれにしては雰囲気が……何なんだこのカップル)
一方「……」
滝壺「……」
一方(……やっぱ、申し訳ねェよなァ……)
滝壺(……らびっと)
一方滝壺「「あの」」
一方「あ……悪ィ」
滝壺「ううん……ごめん」
一方「いや、滝壺からいいぞ」
滝壺「うん……らびっと」
滝壺「ごめんね、私邪魔しちゃったね」
一方「!!」
滝壺「わたしわかってるんだ。らびっとがアイテムが好きだってこと。そしてむぎのは特別だって事」
一方「そ、それh」
滝壺「最後まで聞いて。お願い」
一方「……わかった」
滝壺「私も、きぬはたも、ふれんだも……むぎのも……みんならびっとが好きなの」
一方「……ウレシイ話だな」
滝壺「たぶんあのチケットも……むぎのと二人で行きたかったんだよね」
一方「……あァ」
滝壺「私……卑怯な事しちゃった」
一方「……」
滝壺「もうらびっとは麦野と行ったら……わたしとの約束を二度と果たしてくれないような気がして……」
一方「……」
滝壺「だから……ごめん。私のワガママに付き合ってもらって。らびっとがそれに文句一つ言わずに来てくれてすごく嬉しかった」
滝壺「……」
一方「……もうしゃべっていいのか」
滝壺「……」コクリ
一方「滝壺」
一方「言いてェ事はそれだけか」
滝壺「……?」
一方「他にもっと言いてェ事とかあンじゃねェの?
『今日は楽しかった』とか『また来たい』とか『今晩のご飯が楽しみだ』とかよ」
一方「俺は微塵もお前を嫌いだとか邪魔だとか言ってねェし思ってねェ」
滝壺「!」
一方「それよか今回は俺もお前に謝らなきゃならねェ。滝壺、悪かった」
滝壺「どうして……?」
一方「本来だったら俺とお前でデートすべきだったのをよ、麦野さンを巻き込んじまってな。
麦野さンにも滝壺にも迷惑かけちまった。すまねェ……」
滝壺「……」
一方「だから……仕切りなおしだ」
滝壺「……?」
一方「また今度、次は二人でどこか出かけようぜ。」
滝壺「!」
一方「次はお前の好きな場所に連れてってやるよ。だから」
滝壺(……むぎのは幸せ者だね)
一方「そンな風に自分を否定したりすンじゃねェ」
滝壺(こんなに優しい人に愛されてる)
一方「まァただ……強引に言い寄るのは勘弁して欲しいぜ」
滝壺「……?」
一方(……自覚なし…か。案外コイツの能力って強引なモンなンじゃねェのか?)
~~~~~~~~~~~~~
麦野「なるほどねぇ……つまり元はといえばアンタがラビットをけしかけたって事ね」
フレンダ『うん……』
麦野「で、何でそんな事したの?てかラビットもよく動いたわね」
絹旗(そりゃラビットの超本命があなただからですよ)
フレンダ『それは……言えない。ラビットに聞いてよ』
麦野(もしかしたらラビットが私に何か相談とかしたかったとか?まあいいか)
麦野「それにしてもラビットモテモテねー。フレンダからしてみればいい暇つぶしの相手だし
絹旗と滝壺に至ってはもう骨抜きときた」
絹旗「い、いえ!ね?私は滝壺さんと麦野の身の安全をですね……」
麦野「?なんで私の身の安全なのさ」
絹旗「いやだからラビットが麦野を襲―――」
ガシッ
一方「よォ超チビガキィー。元気かァ?」
麦野「あら、早かったわね。おかえり~どうだった?」
滝壺「うん。すごくよかったよ。……なんできぬはたが居るの?」
一方「チッ……テメェら付いてきやがって……行きてェなら言やァ良いのによ」
絹旗「だ、だからそういう事ではなくですね!!」
一方「?全員で行動すンのはいつもの事だろ」
麦野「あーあ……これからどうしようかね」
フレンダ『ラビット、アレ乗った?』
一方「あァ……そォいやァまだだったな」
絹旗「……果てしなく嫌な予感しかしません」
一方「よし、ンじゃ行くぞ」
麦野「あー……いよいよあれかぁ……(怖いというより酔いそうだねー)」
滝壺(シートが2席……)
一方(隣は麦野さンと座りてェ)
絹旗(ちょ、ちょっと待ってくださいもしかしてみんな乗るのってあのジェットコースターですか!?)
一方「チビガキ、カメラ持ってンなら先頭だろ」
絹旗「……わかりました。でしたらラビットも先頭お願いします」
一方「ハァ?なンで俺が」
絹旗「おやおや。学園都市最強はジェットコースター一つで超ビビっちゃう小物でしたか」
一方「……テメェ良い度胸だな」
絹旗「それに麦野と滝壺さんは既にスタンバってますが」
麦野「私吊らす形のジェットコースターって初めてなのよねー」
滝壺「有袋類の子供みたいでかわいいよね」
絹旗「さ、覚悟は決まりましたか」
一方(チクショォ……麦野さンの隣が……)
絹旗「それとも私が隣で不服でしたか?」
一方「あァ?」
絹旗「……いえ、なんでもないです」
フレンダ『じゃ、撮影しっかりやってよー!』
絹旗「わかってますって」
絹旗「ラビット」
一方「あァ?」
絹旗「ラビットの一方通行の能力は空を飛べますか?」
一方「出来ンぞ」
絹旗「私も一応出来ます」
一方「オゥ」
絹旗「ですがこの高さからの垂直落k」
それからの記憶はかなり曖昧ではっきりしだしたのは帰りの車の中でした。
目に蒸しタオルを当ててリクライニングしたまま動かない麦野
いつも以上に目を空中に泳がせてぶつぶつと独り言をつぶやく滝壺
そして黙々とハンドルを握るラビットが運転する車内はかつて無いカオスっぷりで
視界の隅に映った不透明な袋3つが惨劇を物語っていました
途中で私がカメラを落としたのをラビットが拾ってくれました。後日改めて内容を見たのですが
360度のシートの回転に加えてスパイラルループ線に入った時は画面越しにでも酔いが伝わってきそうでした。
画面の端に白目を剥きながら気絶してる私と珍しい麦野の絶叫と「金髪ゥゥ!!!」と叫ぶラビットの声が印象的でした
帰った時のご飯はカレーの予定でしたが、全員一致でサラダに決まりました
―-絹旗の日記より抜粋――
最終更新:2011年03月08日 18:16