球磨川『学園都市?』 > 04


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 

 
「ちょっと出てくるのが早いんじゃないかなー」
 
彼女の登場に不満げな表情を浮かべつつも、口元はニタニタと歪んだままの佐天は、金属バットを肩に懸けながら言った。
 
「超電磁砲から助けてもらったくせにその言い草は無いんじゃないですか?とミサカは佐天涙子の表情に苛立ちを覚えます」
 
さっき公園で遭遇した妹達と同じ口調。それは目の前の彼女が妹達の中の一人という事実だった。
 
「だって主役はもうちょっとシーンを考えて登場するべきだよ!これじゃあまるで悪役だよ」
 
「ミサカは物語の主役になどなれませんよ、それについては貴女の方がよくご存じなんじゃないですか、とミサカは溜息をつきます」
 
「うっ……それは流石にひどいんじゃないのかなぁ~いっもうとさん!」
 
そんな掛け声の後、佐天は勢いよく彼女のスカートを捲りあげた。
 
そんな、以前と変わらないような笑顔で、以前と変わらない事をしている佐天。
 
違うところといえば、捲られる相手が初春ではないことと、その笑顔に似合わない返り血が付着している事くらいだった。
 
ただ、それが不気味に映る。
 
「ねぇ……貴女は何人目の妹達なの?」
 
敵として現れた友人に、さらに敵として現れた妹を前に、困憊した御坂は呟く。
 
缶バッジを着けた、存在しないはずの妹。
 
ありえないはずの答えが御坂の中でふつふつと湧き上がっては無理やり打ち消していく。
 
何かの間違いだと願う御坂の思いは、たった一言で瓦解した。
 
「何人目というのは製造番号の事でしょうか?」
 
「それでしたらミサカの製造番号は9982号です、と久しぶりの再会を交わしたお姉さまの質問に答えます」
 
……嘘だ。
 
 
 
嘘だ。
 
 
 
 
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
 
 
 
 
 
 
 
 
こんな現実は
 
こんな幻想は
 
こんな悪夢は
 
嘘に
  
   決
 ま
っ  
   て 
  る
 
 
「あーあ妹さんが空気読まないから御坂さんが壊れちゃったよ」
 
「むっその発言には責任転嫁をしようとしている意思が見られます、とミサカは散々お姉さまを追い詰めた貴女に対し頬を膨らませます」
 
「うそうそ~冗談だってば、妹さんったら可愛い~」
 
「ふん、っぷぷわ、膨らましている頬を突かないで下さい、っとミサカは~」
 
「ほーれもっと突いちゃうぞ~」
 
その場に崩れ落ち、なにかひたすら呟いている御坂を余所にじゃれ合う佐天とミサカ9982号は、最早彼女の事など見てはいなかった。
 
「それじゃ、我らがボスの所へ戻りますかー」
 
「そうですね、とミサカは同意します」
 
ひとしきりお喋りをして、御坂の前から去ろうとしている二人を呼びとめる声。
 
「佐天さん!」
 
その声は、レベル5の御坂美琴の実力を持ってしても止められなかった、佐天涙子の足を止めた。
 
彼女はこの声をよく知っている。
 
無邪気で、照れ屋で、泣き虫で、怖がりな女の子。
 
それでも、自分の信念を持った強い女の子。
 
落ち込んだ自分を励ましてくれた女の子。
 
大好きな親友。
 
初春飾利の声だった。
 
「なんで……?」
 
その姿に、初めて佐天は動揺の色を見せた。
 
友人をどれだけ痛めつけても、どれだけ心を壊してもその余裕を崩さなかった彼女は、たった一人の少女の前で言葉を失っていた。
 
「佐天さん!なんで御坂さんを!」
 
項垂れている御坂の肩を抱き、キッと自分を睨みつける初春の表情は、佐天にとって初めて見るものだった。
 
初春は一瞥をしたあとすぐさま御坂の肩に自分の肩を入れて立ち上がろうとする。
 
もう、彼女は佐天の事など見ていない。
 
ただひたすらに御坂の事だけを気にかけ、その全身をもって彼女を支え続けている。
 
そんな姿が。
 
自分を無視して誰かに尽くす親友の姿を、佐天は許容できなかった。
 
「初春?ほら一週間も連絡しなかったんだよ?心配じゃなかった?」
 
「ただ漫画喫茶で堕落していただけでしょう?」
 
「わ、私も能力者になったんだよ!?ちゃんと自分の力で……」
 
「球磨川に後押しでもされたんでしょう?」
 
「レベル5の御坂さんにだって勝てたんだよ!?ねぇ、初春」
 
「…………」
 
まるで両親にかまってほしかったが為の悪戯をした子供のように初春に話しかけるが、その全てを拒絶され、沈黙が流れる。
 
「……いんですか?」
 
「え?」
 
初春は振り向かないまま、言い捨てるように口を開いた。
 
「友達を傷つけた人間に能力を与えられ、それで友達を傷つけて佐天さんは楽しいんですか?」
 
そんな人間だったのならもう関らないでください、とはっきりと拒絶の言葉を投げかける。
 
「うううううううういいいいいいいはるううううううううううううう!!」
 
その言葉を引き金に、今度は佐天の何かが切れる音がした。
 
そして金属バットを構えて、初春に向かって叫びながら歩み寄る。
 
「楽しかったよ!楽しかったよ!いつも無自覚に無能力者を見下す能力者共を叩きのめせて!」
 
「私の能力でレベル0まで戻した時のあの表情は絶対に忘れられない!」
 
「才能?努力?そんな言葉では簡単に割り切れるわけがない!」
 
「だから球磨川さんは言ってくれたんだ『皆平等にしちゃおうよ』って!」
 
「その為には私の負能力(ちから)が必要だって!私の長所(けってん)が必要だって!」
 
「この不平等で負平等な世界を平らにしたいっていつも思ってたんだよ!」
 
全ての感情を吐き出しながら彼女は歩く。
 
もう、そのバットの射程距離内に初春がいた。しかし彼女は振り向かない。何も言わない。
 
「でも、初春が居なくなるなら楽しくなんかないよ……」
 
そう呟いてバットを振りあげた瞬間、何かがバットを貫いた。それは、見覚えのある何本もの鉄矢だった。
 
「だったら、今からでも謝って、謝って、そこの底から這い上がりなさいまし!佐天さん!」
 
そして聞こえてきた声の方角に目を向ければ、月をバックに宙を舞うツインテールの少女。
 
「私たちは、決して貴女を見捨てませんわ」
 
そう言って、白井黒子は優しく微笑んだ。
 
 
深い深い意識の奥底。暗い暗い感情の暗闇。
 
何もかもを遮断してしまう闇に覆われた世界に、何もかもを拒絶してしまう陰に隠れた世界、
 
そんな絶望しか残っていない世界に―――
 
声が、飛び込んできた。
 
現実を信じれなくなった。
 
幻想は受け入れなかった。
 
悪夢は覚めてくれなかった。
 
全部が嘘だと思うほど、全てが夢だと思うほど。
 
心は既に壊れていた。
 
でも。この声は―――
 
この声は、かけがえのない相棒の声だった。
 
この声は、この闇から救ってくれる声だった。
 
この声は、また私を立ち上がらせてくれる声だ。
 
そして、心に満ちた暗雲は徐々に光に崩され消えていく。
 
―――く……ろ……こ……?
 
 
「……黒子?」
 
御坂美琴は、気がつけば友人である初春飾利の肩にしな垂れ引きずられていた。
 
非力な彼女は息を切らし懸命にその体を支えながらも、その言葉に気が付き目を向けた。
 
「御坂さん!よかった気がついたんですね!」
 
目が合った途端、その両目に大量の涙を溜めながら御坂の体へと抱き、その胸の中ではばかることなく嗚咽を漏らす。
 
「初春さん……?どうして、ここに?」
 
目が覚めた途端にこの場に居るはずのない友人に泣きつかれるという、いきなりの状況に思考回路の回転が追い付かず、
 
ばつの悪そうな表情で頬を掻く。
 
そんな言葉に彼女は胸から顔を離し、涙と鼻水でクシャクシャになった顔のまま口を開いた。
 
「御坂さんは、絶対一人で無茶をするだろうと思って……GPSと盗聴器をこっそり着けさせてもらったんです……」
 
「あははは……信用されてなかったのね……」
 
そんな初春の言葉に引きつった笑顔を浮かべる御坂だったが、状況がまさに一人で無茶をした結果なので、何も言い返すことが出来なかった。
 
「それで、佐天さんと出会ったって聞こえた瞬間には、もう風紀委員支部から飛び出してました」
 
彼女の居た支部からこの場所までは、結構な距離がある。こんな時間ではバスも走っていないので恐らくは走って此処に向かってきたのだろう。
 
よく見れば彼女の制服は汗でびっしょりと濡れていた。
 
「現場に着いたら、御坂さんが倒れてて、佐天さんが笑ってて……」
 
その言葉は先ほどまでとの言葉に比べても、よわよわしいものだった。
 
「御坂さんを病院へ連れて行こうとしたら、佐天さんがバットを振りかざしてきたんですけど……」
 
初春は、最後まで言い切らず、視線を御坂から外したので、それを追う。
 
そこには、入院しているはずの白井黒子と自分を敗北させた佐天涙子が交戦していた。
 
「……白井さんが助けてくれました」
 
「……そうだったの」
 
空間転移を繰り返し、宙を舞う後輩の姿を眺めながらつぶやく。
 
やはり先程の声は嘘なんかではなかったのだ。
 
「ゴメン、初春さん」
 
「え?なんで謝るんですか?」
 
突然の謝罪に戸惑う初春。
 
「私、佐天さんを助けてあげることを諦めてた」
 
「彼女の言葉に耳を塞いで、目を閉じて、会話を止めて……逃げてたんだ」
 
「でも、それじゃ駄目なんだよね」
 
そう言って戦う二人の後方に佇む、自分と瓜二つの少女へと目を向ける。
 
「悪いこと言い合って、お互いに傷ついて、たまには殴り合いの喧嘩もして……そうやって向き合って、歩み寄るのが友達なんだから」
 
その顔は、緊張や恐怖に怯えたものではなく……中学校2年生らしい、とても爽やかな笑顔だった。
 
「……はい!そうですね」
 
「ぜーんぶ終わったらまたあのファミレスでお話しましょうか。もちろん……」
 
肯定してくれた友人にうなずいた後、そんな提案をしてみる。その言葉の続きは言わずとも同じだった。
 
「さて、と。散々カッコいいこと言ってみたけど、今の佐天さんが本当に必要としてるのは初春さんのようだから……」
 
「佐天さんを助けてあげて。私と彼女の喧嘩はその後でやるから」
 
その言葉に、初春は黙って頷く。
 
そこで笑顔を崩し自身の妹でありクローンでもあるミサカ9982号を睨みつけて御坂は言った。
 
「私はあのバカ妹とちょっと姉妹喧嘩でもしてくるからさ」
 
 
 
 
※作者による佐天さんの能力についての補足。

能力範囲は半径50m高さ50m地下50mの円柱。

作中でも言ってますが、彼女より低い運動能力なら近づけば《上がります》
 
 
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。