「小萌「魔法名は『smilers100』【生徒達の笑顔のために】ですよー」6


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時刻はまだ日が過ぎ、やっと夜になった頃だろうか

??「ローマ正教、彼らは極東の人間達をサルと呼び、決して神の教えが伝わらぬ人間と考えている」

円卓を囲む12人の騎士の中の、オペラ歌手のように響くその声は、骨董品よろしく古びた甲冑を纏った大男から発せられる

??「しかし、かの聖人『フランシスコ・ザヴェーリョ』は極東の人々を決して見捨てず、布教活動に殉じた人だ」

??「それは何故か?極東の人々も我らと同じ人間だからだ。だからこそ、科学と言う『行き過ぎた教え』を捨てさせ、『科学と十字教』の両立した世界こそ我らの夢見た世界ではないか?同志諸君よ!」

ワーッ!と小さな部屋が沸き立つ

??「そして我ら『原理主義』、いや『福音主義』は、聖人ザヴェーリョの教えを経て、この時代に一つの灯を迎え入れようだはないかァァァッ!!」

ワァァァァァァッ!

盛り上がりは最高潮に達し、騎士達は最後の杯を交わしながら迫り来る武者震いを抑えようとしていた

??「剣を取れ!槍を取れ!真実と平和を求めた我ら福音主義こそが正しい、私は胸を張ってそう言える!」

??「このクーデターが成功すれば世界は終息する!輝しき未来に!!」

十字教の教えを守り、原理主義、ファンダメンタリストとまで罵られて来た彼らには輝しすぎる大舞台だった


ガッ

12人の騎士は一斉に立ち上がった

??「『主の元に福音の鐘を鳴らせ!!』」

一斉の掛け声と共に忙しく駆け出した騎士達は手に手に武器をとり、戦場へと向かった


真なる福音を鳴らす

それが彼らの使命


そして騎士達の福音は、もう目の前にあった――





バタンッ

例のタクシーを降り、黒い神父と小さな魔女は閑散とした海沿いの街を歩いた

ステイル「さて……あの探知が正確なら、『原理主義』の連中に遭うのももう少しだね」

独りごちながらも手は忙しく働いていた

小萌「それは…?」

ステイル「これはルーンさ。僕は小細工の必要な魔術師でね」

黒い服の中に何枚持っているのか、手際よくルーンを展開していた

小萌「にしても…その騎士さん達は本当にザビエルさんのノートで学園都市を…」

ステイル「ファンダメンタリスト、まぁ極右全体に言えることだが、奴らの一番怖いところはそれを絶対的に正しいと思い込むことさ」

ステイル「だから過激な連中は『聖戦』なんて託けて自爆テロを起こす」

小萌「…………」

ステイル「それがある意味宗教の一番恐ろしいところさ」

ステイル「それに、今の騎士達は『天使の力』を受けている。聖人に近い力を持った奴らと戦う、とでも言っておこうか」

小萌「聖人…………」

神裂やアックアという聖人に近い力。あまりにも強大であった

ステイル「まさか本物のカーテナを掘り出すとは……たまげたもんだ」

小萌「上条ちゃん達は…どうなんでしょう…」

ステイル「上条当麻のことだ…、死ぬようなことはないだろうね」

ルーンを展開する作業を止め、こっそりタバコに手を伸ばしたその時だった


ガチャ ガチャ…

重い金属の触れ合う音…

??「……魔術師か……騎士団の同士討ちよりはマシだな」

ステイル「……………」

??「たった2人での迎えとは、清教派も忙しいのか」

一人淡々と饒舌な喋りの展開を、ステイルは黙々と観察していた

今目の前に現れている十二の騎士達こそが、『福音主義』すなわち『原理主義』と呼ばれる騎士達であった

ステイル「…これはこれは…、まさか貴方が『原理主義』の連中を従えていたとは…。『騎士副長』(サブナイト)殿」

騎士副長「『必要悪の教会』か……。面白い面子だな」

それは単純に魔女の小萌を見下げて言った言葉だった

ステイル「騎士団の中でも聡明な貴方が、『十字教原理主義者』、ファンダメンタリストだったとはね…」

騎士副長は騎士団長よりも年配で、騎士団長と仲が良い、と言うよりも騎士団長も一目置くような変わった存在だった

誰とでも折り合いはよく、癖のない人物で騎士団の中では珍しいタイプの人間だった

聡明でありつつも独特な雰囲気を醸し出す彼はどことなく謎の人物とも言えた

騎士副長「クーデターはもうじき完了する。貴様達も無駄な抵抗はしない方がいいのではないか?」

??「っと、こっちも先を急ぎたい。そこをどくか肉塊になるか、さっさと選んでくれよ」

ステイル「……元先槍騎士団部隊長か…」

騎士副長「ガウェイン、そう早まるなよ」

ガウェイン「ちっ………」

槍を抱えたガウェインと呼ばれた男は不満そうに後ろに下がった

ステイル「ガウェイン……。『円卓の騎士』の真似事でもしているのか。ふん、さすがは原理主義様だ。すると貴方がランスロットかい?」

騎士副長「……まぁコードネームと言ったところだ」

ガウェイン「早く肉塊にされたいようだ、なぁガヘリス」

ガヘリス「ああ、貴重な時間だからな、まだかよランスロット」

ステイル「元鉄斧騎士団部隊長まで……。騎士団全てがバカバカしく思えてきたよ」

騎士副長「我らの信条は一つだ。ただ場を荒らして来た魔術師風情に分からんだろう…」

ステイル「…なら、どうする?」

空気が歪んだ

そう騎士副長が知覚した時には一拍遅かった

あの神父も後ろの魔女もいない

その時、後ろから爆音が鳴り響く

ステイル「『吸血殺しの紅十字』!!」

ドバァァァッ!

本物の魔術師の炎は存外鮮やかに輝くものだ、と騎士副長は感じていた

ステイル「魔術師が場を荒らしてきた?貴様らみたいな世間知らずの宗教右派団体には言われたくない台詞だな!」

ドバッ!

炎とは別方向からの謎の衝撃に一人の騎士が吹っ飛んだ

小萌「学園都市へは…行かせません!」

騎士副長「ふんッ!目くらましからの奇襲とは、さすが魔術師だな」

ステイル「古い考えばかりに固執する原理主義のざれ言よりマシさ…」

ステイルが後方に姿を現すと既に12人の騎士達は迎撃の陣を為していた

騎士副長「同志よ!この魔術師はたった今から大英王国の敵となった!!」

ワァァァッ!と12人とは思えないような歓声があがる

ガウェイン「そうこなくてはな!!」

一級品の量産聖槍(ロンギヌス・レプリカ)を担ぎ、ガウェインは槍を前に繰り出す


小萌「魔法名は『smilers100』――学園都市はやらせませんッ!」

ギンッ!

量産聖槍に対し小萌の箒が鎬を削る


ステイル「さあて……僕も名乗らせてもらおうか…」

ゾワッ…と、何か雰囲気の違う炎の魔術師に騎士達すら後退りをする

ステイル「魔法名は『sacrificium931』、【我が身は守る人の生け贄となれ】!!」バッ

小萌「……ッ!?」

小萌がローラから聞いていたには、ステイルの魔法名は少なくともこんな名前ではなかったはず…


【守る人の生け贄】

それは二人の女性を命にかけた、ステイルの全身全霊の言葉だった――――



ステイル「『巨人に苦痛の贈り物を!』」ドバァッ

騎士達の陣を割るように巨大な炎剣が頭上から降りかかる

ステイル自身が天草式の布陣などを参考にルーンの配置を意識して変えてみた結果、文字通り火力が数段上がっていた

ガヘリス「芸がないなぁ、魔術師!!」バッ

それでも分厚い防御術式の盾と鎧には炎は通じず、鉄斧騎士団部隊長のガヘリスが襲い掛かる

ステイル(『鉄の斧』………イソップ童話をモデルとした霊装とは珍しいな)

ガヘリスの持つ斧は『鉄の斧』
イソップ童話『金の斧』がモデル。この『鉄の斧』は泉の女神である古代ギリシャのオリュンポス十二神の一柱であるヘルメス神の与えた霊装だと言われる。

ヘルメスは能弁、体育技能、眠り、夢の神とも言われ、この『鉄の斧』は手に持つと、思考するだけで斧が自ら動くという優れた霊装である

ガヘリス「遅ぇなッ…!」バッ

『天使の力』の恩恵と『鉄の斧』の斧とは思えない俊敏性は高く、すぐさまステイルに斬り掛かる

ステイル「仕方ない、魔術師の戦いって奴を教えてやるよ」

モワァ……

霧がかかったと思った時にはステイルの体は真っ二つに斬れ、消えた

ガヘリス「なん…だ…」

ガウェイン「怯むんじゃねぇガヘリス!」

戦争屋である騎士団は小細工を得意とする魔術師との戦いは不得手だった

とは言ってもこの力の差では騎士達が圧倒的に有利なのは変わりない

騎士副長「ただの目くらましだ…」

先程の魔女もいない

こちらが有利な状況で出を探るのは有効な手段であろう

ガウェイン「ほら、皆自慢の武器を用意してきたんだろ。なら仕事させなきゃなぁ」

各々が自慢の武器をこの日のために調達、調整してきた

騎士副長「ああ…相手は二人とはいえ武器を振るうには問題ない」

福音を奏でる武器が、各々の手に握り締められる



小萌(…前回の時みたいにはいかないですねー…)

2対12では分が悪い

上空の魔女とりあえず様子を伺っていた

小萌(じゃあ、こっちは派手に行かせて貰うのですー)バッ

騎士達の頭上から魔女が落ちてきた

小萌「ほいッ!」ドッ

ドガァッ!エーテルをそのまま力のハンマーと化し、騎士達へ叩きつけた

ガウェイン「魔女狩りとは、懐かしいな!!」バッ

飛んだガウェインを小萌が迎撃する

ドバッ ギリッ!

小萌「上空では私の方が有利みたいですねー」パッ

ガウェイン「ッ!?」

ドバンッ!

調子に乗ったガウェインを地面にたたき付ける

ボワァァァ

下ではステイルが火力頼みに炎を展開している

小萌(この調子なら…)

姿を隠しながらの上と下から奇襲、だったが騎士達も無能ではない

騎士副長「上の魔女が邪魔だ。トリスタン」

トリスタン「了解」

ギギギ……

トリスタンと呼ばれた騎士は返事と同時に既に弓を引いていた

バッ! ダグッ!

小萌(弓…矢……!?)

小萌は思わずバランスを崩した。ただの弓矢ではなく、かなり高威力である

幸い上空飛行の際には分厚い防御術式を施してあるが、それをも破るようなミサイルのような威力の弓矢だった

ステイル(ちぃ……『必中聖弓』(フェイルノート)か…)

円卓の騎士の一人トリスタンが作ったと言われる弓の霊装

それ自体にも改造が施してあるためにかなりの威力を誇る弓である

ステイル(あんな霊装…どこから引っ張り出してきたんだ…!)

ローマ正教の手回しか、とにかく手に追えないほどの霊装揃いであった

ステイル《月詠小萌、こいつらの霊装は正面から当たって勝てるものじゃない。奇襲を中心に動くんだ》

小萌《了解ですー!》

ステイルと小萌は暗闇に身を隠すが追撃は止まない

ドバッ バシュッ!

小萌「くっ…」

1対多数の形に不慣れな小萌は本来の実力も発揮できずに追撃をくらう

しかし無数の槍と剣が繰り出される戦いだが、炎の魔術師は勇敢に戦っていた

ステイル「我が身を喰らいて力と為せ!顕現せよ、『イノケンティウス』!!」

グワアアアアァァァ!

炎の巨人の咆哮が海辺近くにこだまする

予想よりも遥かに巨大な『イノケンティウス』に騎士達もたじろいでいる

ステイル「凌げよ…イノケンティウス」

小萌「ここからですよー!」

すると『万物に似ている』というエーテルを支配する小萌は箒を槍のように持ち出した

ガウェイン「槍術の真似事かぁー?」

嘲笑するガウェインに構わず、小萌は遠間から一突きした

ガゴンッ

ガウェイン「がっ……!?」

転倒するほど強い衝撃が鎧を無視して体に伝わった

小萌「エーテル使いを舐めないことですねー」

ガウェイン「魔女……ッ!」

『天使の力』を受けている今、生身でくらっても倒れはしないものの、ダメージは蓄積される

ガウェイン「ガァァッ!!」

ギンッ!

鮮やかに槍を繰り出したガウェインはやはり本物の騎士だと言えた

優秀な魔術師であるが体術、格闘術まで心得ていない小萌に槍は厳しかった

小萌「………ッ!」バッ

苦汁の表情を浮かべる小萌

ギシッ ドガッ!

他にも多数の騎士を相手にしているこの状況は、やはり優勢とはいえなかった

小萌「『第五の元素エーテルは万物類似の特性を示す』!」ギッ

バムッ!

空間が凹むような衝撃が伝わり騎士達は吹っ飛ばされる

しかし戦い慣れている騎士には吹っ飛ばされるのはむしろ好都合であり、その隙に陣を変えたり攻撃を仕掛けたりする

小萌(『陣』そのものは崩せない……!?)

これこそが『現代の騎士』の表れであり、戦闘方法であった

個々は突出せずにカバーする形での戦闘形態

ステイル《このままじゃジリ貧だ…、月詠小萌、貴女は一旦下がれ》

小萌《……了解です…》

ステイルのイノケンティウスの弱点も騎士達は知らないわけではない

さすがに数万枚のルーンを剥がそうとは思わないが、空気、水といった属性術式で攻撃すれば動きは鈍くなり弱ってゆくのだ

ステイル(イノケンティウスも…絶対完璧な魔術じゃない…)

何だか魔法名に『最強』とか入れてた自分が恥ずかしく思えた

小萌「ふっ!!」バッ

フワッと空に浮いた小萌は騎士達の追撃をうまくかわせた

トリスタン「しぶとい魔女だ……」ギギギ

バンッ

小萌「……ッ!?」フッ

放たれた弓矢は強く誘導し小萌をかすめたが、小萌はその矢を叩き落とした

ガウェイン「隙が多いなぁッ!!」バッ

その隙をつくように高く真上に跳躍した槍の騎士ガウェインが小萌の横に位置した

小萌「……ま…」

先程の矢で態勢は著しく崩れた

ここで攻撃を受ければ間違いなく地面に落とされる

そうなれば、もう逃げられない…



しかし、その瞬間だった




ブワァァァッッ!

風の砲弾、と呼べるような現象がガウェインにぶち当たっていた

ガウェイン「がぁッッッ!……な…に……」ザッ

ステイル「風の…術式だと…」

??「『Wind Symbol/海風の砲弾(シーバースト)』っていう説明でよかったかしらね?」

海風の強い浜辺を、一人の女が歩いていた


ステイル「…オリアナ…トムソンだと…」

オリアナ「あ~ら、坊やだったのね。今回は足手まといになってないかしら?」

ステイル「貴様……どちらの味方だ」

突如オリアナの参戦に戸惑うステイル

オリアナ「酷いわねぇ、今の攻撃を見てなかったの?」

騎士副長「すると…貴様は我らの敵か」

オリアナ「その通りよ、『福音の騎士』さん」

ガウェイン「『追跡封じ』のオリアナ・トムソンか……。調度いい、今までの因縁を晴らしてやるよ!」

オリアナ「因縁?まぁそんなこともあったかしらねぇ…」

ステイル「まさか騎士団まで敵に回していたとはね…」

オリアナの本職は運び屋であり、凄腕の魔術師でもある

そのために幾度かイギリス騎士団まで相手にしていたことはあるが、大抵はオリアナが逃げ切る形で勝利していた

ステイル「……貴様のことだ、僕達に味方する意味は深く問わないが…油断するなよ。奴らはそこらの騎士とは違う」

オリアナ「分かってるわよ。お姉さんだって覚悟ぐらいあるもの」

するとオリアナはビリッと単語帳のようなものを口で破る

小萌「ルーン…じゃない…、単語帳?」

ステイル「『速記原典』、タチの悪い『原典』の一つさ…」

身をもってその『タチの悪い原典』を体感していたステイルに、オリアナの強さは痛いほど分かっていた

オリアナ「お姉さんの魔法名は『Basis104』【礎を担いし者】。ということで、あなた達の好き勝手されると世界は無茶苦茶になっちゃうの。わかる?」

フッ

破いた単語帳の紙を優しく吹くと、同時に水の槍が騎士達の陣を割った

ドバァァァッ!

ステイル(やはり…コイツもとんでもない化け物だな…)

応用性にすぐれたオリアナは1対多数の戦闘にも慣れており、そして『陣』そのものを崩すことにも周知していた

オリアナ「さあ…『福音の騎士』さん達は、どこまでお姉さんを楽しませてくれるかしらねぇ?」

異色の魔術師3人が揃った

そしてここから、本当の戦いが始まろうとしていた―――


ガウェイン「この手の魔術師が3人と来たか……。ふん、面白そうじゃないか」

ドスンと槍を短く持ったガウェイン

そろそろ『遊び』が終わりということを示しているらしい

オリアナ「この国はクーデターで今大変なの。だからお姉さんもあなた達だけに構っていられないわ。分かるかしら?」

そんなオリアナの挑発に乗らないところはさすがにエリートの騎士達だ

陣を変えたと思えば12人を割り振り4対1の形で囲みだす


ビリッ

ガウェイン「ッ!?」

警戒していたガウェインだったが、気づいたらオリアナは速記原典を書き終えていた

ガウェイン「貴様…ッ!」バッ

咄嗟に前に出たガウェインだったがオリアナの魔術はもう発動したらしい

オリアナ「『Wind Symbol/潮風の重量』」

ガウェイン「ぐっ…!?」ドッ

ガウェインの体は一気に重くなった

オリアナ「武具の重さを変える魔術よ。いいハンデじゃなくて?」

ガウェイン「…ああ、4対1じゃつまらんからな…」

ガウェインの発言は見栄を張ったものではない

事実騎士達もそんな考えなのだろう

ガウェイン「これで遠慮はいらねぇな!!」バッ

ビュッ!とガウェインの槍が先程よりも速く繰り出される

オリアナ(さすがに精鋭をかき集めた『福音の騎士』…お姉さんの肉弾戦じゃ話にならないわね…)

オリアナの魔術というのは万能に近いが万能な訳ではない

その時の自身のコンディション、環境により存外制限されている

今の環境の場合は海辺な為に、使うのは風と水属性が有利なのだ

オリアナ(逆に…決定打はない。そこはあの二人に任せるしかないわね…)

それがオリアナの分析であった



ステイル「『吸血殺しの紅十字』!!」ドバッ

文字通り高火力で騎士を翻弄するステイルだったが、彼の魔力も無限ではない

ステイル(環境は海辺…。僕の属性との相性は最悪だ…)

本来ならばルーンにより周囲の地脈などの恩恵を少なからず得られのだが、海辺という環境ではそれも期待できなかった

案の定イノケンティウスもフル稼動は難しく今は出現できないのだ

ガヘリス「なんだ?芸がないんじゃないか炎の魔術師!」バッ

さっきよりは速度は落ちたとはいえ、スムーズな動きをみせる『鉄の斧』は非常に厄介だった

ステイル「まさか」バァッ

ステイルは両手から球状の炎を爆発させるとガヘリスはそれをもろに喰らう

ガヘリス「ぐっ…危ねぇなコイツは…」

瞬時に『鉄の斧』によりガードしたガヘリスはまだピンピンしていた

ステイル「…まだまだ、僕の『マジック』はこれからさ」

まだまだこんなものでは終われない

それが今のステイルだった



騎士1「ダァァッ!」バッ

小萌「はっ!!」ビリビリ

小さな魔女、月詠小萌はまだまだ戦っていた

小さな箒の先にはエーテルにより帯電させた『エーテルの雷』が宿り、多様に変化する技にさすがの騎士達も焦りを感じていた

小萌「さっきより威勢がよくないですねー?」

騎士副長「…………」

騎士副長は相変わらず剣すら抜かずに傍観していた

騎士1「魔術師風情に何が分かるかァ!!」バッ

ドガッ!剣を振り回す騎士だったが小萌には当たらない

小萌「分かりたくもありません!あなた達のやっていることは……」

小萌がフラフラの騎士に対し、箒を振りかざした時だった



ガギィィンッ!

騎士副長「決着は、私の手でつけよう」

小萌「……ッ!」

急に飛び出した騎士副長は剣と箒を切り結んだ

騎士副長「この剣を抜いたからには、もう後戻りは出来んぞ」

小萌「…………ッ」

気迫に満ち溢れた騎士副長だったが、小萌から見てもあまり特殊な剣には見えなかった

ただしかし

小萌は確実におされていた

ギギギギ…

小萌(そん…な…)

バッ!と小萌は距離をとった

騎士副長「後戻りは出来んと言ったはずだ!」バッ

ギンッ!ギンッ!

しかし騎士副長の猛攻はとまらない

小萌(この剣が…いや…攻め方が違う!?)

騎士副長の攻め方は直接小萌に斬りかかるというよりかは、わざと箒に切り結ぶような振り方なのである

騎士副長「箒の調子でも悪いか?」ギンッ

小萌(箒の…調子?)

ふと小さな箒を見ると、既にボロボロで激しく消耗していた

小萌(ま…さか…)

騎士副長「それがこの剣の特徴、とでも言っておこう」

騎士副長「かの『聖剣』、エクスカリバーを作りだした魔術師マーリン。その魔術師は何を恐れたと思う?」

小萌「!?」

魔術師マーリン、イギリスにおける伝説的な魔術師として名高い。エクスカリバーを作った魔術師としての技術も相当なものだった

騎士副長「自らが作りだした『聖剣』そのものだ」

小萌「……………」

騎士副長「『武器を殺す』為の剣。それが『聖剣殺しの剣』(キル・カリバーン)」

小萌「……………ッ」

騎士副長「さすがに箒を相手にするのは少しばかり本来の用途とは違うから手間がかかるようだな」

バッ!と再び前にでてくるとまたもや箒に向かい剣を振り下ろす

騎士副長「騎士団長の『ソーロルムの術式』もこいつとならいい勝負ができるものだ」

『ソーロルムの術式』で攻撃力をゼロにされようが、騎士団長のフルティングに触れてさえしまえば『殺せる』のだ

小萌「『エーテルの雷は弓となり矢となれ』」

ブゥン…

淡く光るエーテルに包まれた雷の矢は、雨のように騎士副長に降り注いだ

騎士副長「つまらんな」

バシッバシッ!

まるで虫を追い払うように矢を払った

騎士副長「魔術そのものを消すほど万能ではないが、干渉そのものは受け付けん。故に壊れはしない」

別名『不壊の剣』と呼ばれたその剣は、テレズマのような莫大な魔力はともかく、魔術の干渉は受け付けず物理的な干渉もほぼ受けないために長年新品同様で運用されていた

騎士副長「さあどうするか、『エーテルの魔女』?」

窮地とはこのことだろう、小萌はそう思うしかなかった





そして小萌はもう一つ思ってしまった



ヒーローとは



この窮地に現れるものなんだと――――


ズバァァァァッッ!!

水面から何かが飛び出して来て、それは瞬時に小萌の目の前を駆けていった



騎士副長「あ………」

騎士副長の腹から背にかけて走った青白い光


小萌「―――――!?」

状況が飲み込めないのは無理もない

それは実に『速い』から


騎士1「な………ぁ……」

情けない声を上げた騎士


小萌はその騎士の方向へ振り向くと、騎士は地に伏せていた


ステイル「……ば…バカ…な………」

オリアナ「……………」

ほかの騎士達も例外なく倒れていた





ドスッ

3人の魔術師の後ろの方で何かを地上に刺す音がした


??「『福音の騎士』……まるで予想外のことをしだすのであるな」

小萌「ッッ!?」


聞き覚えのある声


アックア「こんなバカげた幻想を持つ騎士達にばかり構っていられないである。貴様達も早く第二王女との決戦へ合流しろ」

小萌「後方の……アックア…」


かの聖人、後方のアックアだった――――



小萌「あ……あなた…は…」

アックア「もう神の右席ではない。今はとりあえずこの国の内乱を抑えるのが私の目的である」

見るからに巨大な剣『アスカロン』を地上に刺し、右手で支える姿だが


左腕が、ない


小萌「あなた…その左腕は…」

アックア「貴様がやったのである。貴様のあの術式から逃れるのに左腕一本が代償なら安いものである」

小萌の発動した『グリム・セオレム』

『神の右席』そのものの矛盾を魔術化する対神の右席の魔術

それにより絶命したと思われていた後方のアックアが再び小萌の前に現れたのだ

アックア「しかし、幸い聖人の力を自由に振るえるほどの『聖母の慈悲』は残っているからな」

小萌「で、でもなんで…今…」

アックア「少し小細工をしてる最中である。その最中に『福音の騎士』の存在を知った。さすがに『聖剣殺人の剣』と真っ向勝負は避けたいから不意打ちをしたまでである」

ステイル「…ということは上条当麻達の状況も知っているのかい?」

アックア「ああ、今は第二王女との決戦に向かっている」

ステイル「……なら早く行った方がよさそうだ…」

アックア「だから早く行け。私はもう少し時間が掛かりそうである」

ドバッ!!その言葉を残し、片腕の聖人は闇夜の街に飛び去って行った


ステイル「まさか…生きていたとはね…」

小萌「……………」

急な展開だったが、とにかくアックアは味方だということは証明された

オリアナ「…ならお姉さんはこれ以上参戦しても無駄そうだし…、とりあえずこの騎士達の後始末をしておくわ」

ステイル「分かった。ならば月詠小萌、次は決戦だ」

小萌「……………」

ステイル「…覚悟は…出来てるかい?」

小萌「覚悟なら、魔術師になった時から出来てるのですよー」

いつもの軽い調子で返事をした月詠小萌とステイルは、遂にクーデター決戦の場へと舞台を移す

戦いを終わらす、たったそれだけの簡単な理由だった―――
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