「小萌「魔法名は『smilers100』【生徒達の笑顔のために】ですよー」5


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今までのあらすじ

『魔術』によって傷ついてゆく生徒達を見て、高校教師月詠小萌は『魔術師』になる決心をする

イギリス清教の計らいで『エーテルの魔女』となった小萌は後方のアックアすら軽く蹂躙し、最終的には撃破してしまう

それでも生徒達のため、魔女でありながら教師を続ける小萌であった


だがそんな小さな魔女に、魔術サイドの波が容赦なく押し寄せる……







小萌「あっ、もうこんな時間ですー」

高校教諭月詠小萌は思い付いたように携帯を手にした


発信先は、例の同居人

小萌「結標ちゃーん!どこほっつき歩いているんですかーっ?」

小萌「今日という今日は野菜炒めが作れるように頑張るって事で、先生はお腹を空かせて待っているのですー!」

結標『………………』

小萌「女の子が料理が出来なければならないということではないですけど、色んなスキルを覚えていた方が、進む道の幅も広がるもので……」

結標『……直球で言うけど急用できたから野菜炒めは無理みたいね』

小萌「ええっ!?今日もなのですか!じゃあ野菜を冷蔵庫パンパンにするほど買ってきた小萌先生は…」

結標『それは良かったわね。ベジタリアンは長生きするわよ』

そういうと結標は一方的に電話を切っていた

小萌「『今日も』ですか…」

小萌だってそれなりのベテラン教師である

レベル4の才能をもつ結標淡希がどのような事情を持つかは推測がつく

しかし、それも彼女の道。今の小萌にはそれを見守ることしか出来ない

小萌(…結標ちゃんは自分の道がちゃんとありますからねー……)


するとつけっぱなしのテレビから、また似たような報道が流れていた

『先日未明に発生したユーロトンネル爆破事件以来、フランスとイギリス両国はEU間での対応や経済的打撃も受けており……』

小萌(……ま、先生も忙しくなりそうですねー)

学園都市に住むこの魔女は、予感していた



ピピピピ ピピピピ…

案の定、かかってきた携帯電話。画面には『ステイルちゃん』と着信が出ている

ピッ

小萌「もしもしー?」

ステイル『月詠小萌かい?ステイル=マグヌスだ。手短に言う、イギリスに来て欲しい』

小萌「…だと思いましたよー」

ステイル『…すまない、なら話は早い。こちらも上条当麻と禁書目録を召集する事態だ』

小萌「はいはいおーけーですよー。ならすぐに向かいますからー」

あらかじめ魔術薬品を仕込んだ箒、久しぶりに着る魔女のコスプレ

すかさずそれを手にとった月詠小萌はその瞬間から『エーテルの魔女』になる


小萌「では簡単に説明して貰えますかー?」

エーテル魔術で姿を巧みに隠した小萌は一瞬にして学園都市上空を抜け、超音速旅客機よりも高速でイギリスに向かう

その間に携帯は電波式ではなく魔術的に受信できるように設定し直していた

ステイル『もしもし、では話すよ?』

小萌「おーけーですよー」

ステイル『事はユーロトンネル爆破事件だ。イギリス王室直々にこの事件の魔術的方面から禁書目録を介して解明するのが今の名目だ』

小萌「やはりあの事件でしたかー…」

ステイル『しかし最大主教の考えではイギリス3人王女のいずれかが不穏な動きをしている。その解明に禁書目録を使うつもりだ』

小萌「すると…」

ステイル『そう、これから何らかのことが起きるのは明白だ。そしてもう一つの噂ではローマ正教が後ろで何らかの手回しをしているらしい…』

小萌「ローマ正教が?」

ステイル『そう。ローマ正教は致命的な損害を受けている。だからこそイギリス三派のいずれかを利用するつもりかも知れない』

現在、裏の裏では清教派、王室派、騎士派の三派が互いに牽制し探りを入れている状態であり、とにかく複雑である

小萌「つまり、とっても複雑な事態だというのは分かりましたー…」

ステイル『ああ…。正直な話、もう手遅れかも知れない。その時は……また貴女を危機に晒すことになるかも知れないが…』

小萌「私の心配は無用です!今はこれから起こる事態を見極めましょう…」

小萌はようやくヨーロッパ圏上空に差し掛かるところだ

あと10分もあればイギリスに到着する

小萌「上条ちゃんとシスターちゃんは?」

ステイル『安全……と言える状況ではないのは確かだ…』

小萌「……分かりました」

申し訳なさそうに報告するステイルも非常に忙しそうに動作しているのが分かった

小萌「とにかく、私が何とかしますから」

神の右席を単身撃破した『エーテルの魔女』のその一言は、頼もしい限りだった





ステイル「ふぅー……、遠路遥々、ご苦労さま」

小さなオープンカフェに、タバコを加えた黒い神父と箒を抱えた小さな魔女が座っている

奇妙と言えば奇妙だが、それなりに絵になっているので存外溶け込んでいた

小萌「いいんですか…?こんなとこでくつろいでいて…」

ステイル「とりあえず説明しよう。今はどうやら清教派の諜報部もロンドン市内の警備に駆り出されているらしい…」

小萌「つまり…情報がないと?」

ステイル「ああ…。今分かっているのは騎士派が怪しいと言うこと。だが騎士派全てが怪しいのか一部が怪しいのか、大規模なのか小規模なのか分からない」

小萌「下手には動けない…ですか…」

実のところ清教派にも裏切り者がいる可能性を踏まえて、この調査知っているのはローラとステイルと一部諜報部のみ

ステイル「下手に動けない。だからこそ学園都市の貴女を呼んだのさ」

学園都市にいる小萌が裏切り者だという可能性は一番低い、と言うのが小萌を呼びだした理由だった

ステイル「今は『新たなる光』とか言う組織が『何か』をしでかそうとしている…。恐らく3人の王女のいずれかの依頼を受けている」

小萌「それの警備で清教派の方々はいないと…」

ステイル「ああ…。しかし清教派はイギリス三派の中で一番纏まりまがない。だから裏切り者がいるかもしれないし、逆に独自に動いている奴もいるかもしれない…」

小萌「やりにくい…ですねー…」

ステイル「全くだ…。なのに当の本人最大主教とは連絡もつかない…」

小萌「……………」

つまりはことが始まってからしか動けない…ということ



ピピピピ ピピピピ

ステイルの携帯が鳴った

ステイル「……!?諜報班か!」

魔術信号を受信した骸骨のストラップが赤く光り、通話を開始する

ステイル「もしもし」

諜報部『ステイル、分かりました!これはクーデターです!首謀者は第二王女キャーリサ、及び騎士団全てです!』

テロだとでも踏んでいたステイルには驚愕の事実だった

ステイル「なに……!?騎士団全てを相手しろと…!?」

諜報部『まだ騎士団は動いてませんがあと数分の限界でしょう…。カヴン=コンパスの魔女部隊には出動要請をすませましたが…』

ステイル「ちぃッ!!これじゃテロどころか内紛、クーデターじゃないか!国が終わるぞ!」

小さなオープンカフェで突如叫ぶ黒い神父に客は唖然としている

小萌も状況を察知し、人払いを実行した

諜報部『そしてもう一つ…。騎士団の一部がローマ正教と繋がっていました。その一部組織は別の動きをすると報告があり…』

ステイル「どいつもこいつも……!」

諜報部『要するにキャーリサと騎士団のクーデターとは別に、その組織の狙いは………学園都市』

諜報部の魔術師はただならぬ一言を告げた

ステイル「なっ……!?どういうことだ!この情報はどこからどこまでが…」

すると電話の向こう側がやけに騒がしくなっていた

諜報部『もしもしステイル!あなたはこちらの組織を潰して下さい!そして騎士団の………があッ!!』

ガッ ガガッ ザザ…

途切れる通話はそこで切れた

ステイル「ちぃッ!……もう動いたのか…」

小萌「ど、どういうことですか……」

ステイル「……第二王女と騎士団のクーデターだ…」

小萌「ええ!?」

ステイル「しかしもう一つ、騎士団の一部がローマ正教と通じ学園都市を狙っている」

小萌「そんな…でもそれは相手も…」

ステイル「そいつらはこの事態をいいことにイギリスをクーデターよりも最悪の状況に持っていくだろう…」

小萌「……………」

ステイル「今学園都市を攻撃したらどうなると思う?学園都市とローマ正教ロシア成教同盟を相手戦争になるぞ…」

クーデターによる混乱、一部騎士団による学園都市攻撃

それはイギリスが一瞬にして国家滅亡を辿ることになるのだった―――


ステイル「やはりここは手をつけられていないようだな…」

イギリス清教の拠点の一つ、サザーク大聖堂にやってきたステイルと小萌には勿論やるべきことがある

ステイル「とにかく学園都市への攻撃だけは阻止する。宗教的な力も政治的な力も、今のイギリスは学園都市に遠く及ばない…」

突出し、学園都市攻撃を目論む一部騎士団を潰す。そのためにサザーク大聖堂での情報収集を試みるのだ

小萌「しかし…今は混乱状況で情報だってまともに…」

ステイル「何を言っているんだい?必要悪の教会はその道のプロさ」

地図大の古びた白紙の紙に紫のルーンを置くと、直ぐさまにイギリス全体が浮かび上がる

ステイル「僕自身土御門みたいに探索魔術を持ってないが、ここには霊装が山ほどあるからね」

小萌「じゃあすぐに分かるのですねー!」

ステイル「相手はただの戦争屋の騎士団だ。容易いよ」

古びた紙はイギリス全土を正確に書き出す

時間はかかるが、確実な方法はこれしかなかった

ステイル「…しかし第二王女や騎士団長に逆らってまで学園都市を潰しにかかる…」

小萌「ローマ正教への裏切り者…なんですかね?」

ステイル「いや…このタイミングはひっかかるね…」

するとステイルは霊装保管庫へ再び足を運んだ

小萌「まだ何かあるのですかー?」

ステイル「たしか…通信傍受の霊装があったはずだ…」ガサゴソ

小萌「き、騎士団内部の情報を傍受するのですかー!?」

ステイル「ああ…、恐らくこの場所を探知されるだろうけどね」

逆探知される、それは一つの賭けだ

今や『天使の力』を得た騎士団を相手するのは聖人を相手するのに等しく、バレれば一瞬にして駆け付けるだろう

例の探索魔術はまだ終わらないが、その間にステイルは通信傍受霊装を稼動させる

ステイル「さあ……やるか…」

ピラミッド型をした安い置物のようなそれは、エメラルド色に発光し始めた

『い……がの……部隊…』ザザッ

小萌「ちょっと聞こえてきました…」

ステイル「ちっ…テレズマの干渉か……」

強大な力のテレズマが自然とジャミングの役割を果たしているのだ

ステイル「聞こえないのか…!」バンバン

古いテレビを叩くようにステイルはその霊装の頭を叩いた

『……はどうした?……だ!……いつはファンダメン……の……くにんをとれ!清教派のトップは……』

ステイル(まさか………)

合点がゆく。これなら合点がゆく

ステイルの中で絡み合った紐がじわじわと解けていった

小萌「す、ステイルちゃん?何か分かったのですかー?」

ステイル「静かに!」

通信傍受はまだ続いていた

『……のファ……は…ジェズ教会で……は止めさ…!な…』

ステイル「ジェズ…教会?」

小萌「??」

断片的だがそれなりの情報を得て、ステイルはそれらを繋げてゆく

ステイル(確かジェズ教会は……)

ステイルは無言で携帯を出すとどこかにかけだした

小萌「え!?ステイルちゃん今はテレズマのせいで魔術通信は…」

ステイル「電波の方の通信さ」

使い分ける柔軟さも必要なのが魔術師である

ステイル「……もしもし?聞こえてるかい?」

オルソラ『あらあら、ステイルさんなのでございますね』

この状況に似つかわしくないゆったり口調は、オルソラそのものであった

ステイル「とりあえず今話しができる状況かい?」

オルソラ『ふふふ、まだ大丈夫なのでございますよ』

まるで隠れんぼを楽しむかのような口調は緊張感がまるでなかった

ステイル「最大主教ですら連絡がとれない、連携をとるほど必要悪の教会は器用じゃないが、重要な質問がある」

オルソラ『何でございましょう?なんならシェリーさんに代わりましょうか?』

その側でシェリーがギャアギャア喚いている声を確認して、とりあえずステイルは安堵した

ステイル「ローマ正教出身の君なら分かるだろう。ジェズ教会って知らないかい?」

オルソラ『ジェズ教会?それならローマ正教管理下にある教会でございます。ジェズ教会とボン・ジェズ教会がございます』

ステイル「何か変わった霊装やら鍵やらが隠されてはいないのかい?」

オルソラ『それなら、ジェズ教会は一つ特徴があるのでございますよ―――』





カチャ

ステイルは携帯をしまう

小萌「ステイルちゃん、分かったのですか!?」

ステイル「話は後だ。とりあえずここから逃げよう」

通信傍受霊装を使ったので、テレズマ干渉下とは言え逆探知の可能性は拭えない

一刻も早く逃げる必要がある

ステイル「探索も終了しているな…」

地図大の霊装を丸めて雑にポケットにしまいこむとステイルと小萌はサザーク大聖堂を後にした


ステイル「小萌、移動するよ」

小萌「ど、どこにですかー?」

するとステイルは一台のタクシーを止める


ガチャ バタン

ステイルは先程の地図大の紙霊装を広げる

運転手「お客さんどこまで?」

ステイル「……ボストンまで頼む」

小萌「ボストン…?」

ボストンはロンドンからさほど遠くない海に近い街

ステイル「領収書は出るかい?」

運転手「ああ、はい」

ステイル「なら出してくれ。宛名は『イギリス清教最大主教』で」

抜かりない魔術師、ステイル=マグヌスの算段はもうこの時点からついていた……





シェリー「う………」

オリアナ「全く…こんな暴れ散らかして…いろいろと後片付けが大変そうね」

派手で露出の激しい女の側にはゴスロリ服のライオン女が寝そべっている

騎士団相手に暴走していたシェリーを止めたのがオリアナ=トムソンその人だった

オリアナ「さて……お姉さんの契約的にはもう終わっても良さそうだけれど…」

一時的にイギリスと契約を結んだ『追跡封じ』のオリアナの仕事はもう終わったと考えていいだろう

いや、もうイギリス自体が混乱の渦中であるためそんな基準もあるか分からない

オリアナ「けど……まだまだ面白くなるのはこれからみたいね」

ガガ… ザッ…

情報収集に使っていた一枚の単語帳サイズの紙から雑音が聞こえる

オリアナ(カーテナ・オリジナル…テレズマの干渉が酷いわね)

暫く何をしようかと考えていると雑音の中から興味深い単語が聞こえてきた

『のファンダメ……奴だ!……が来て……学園都市は今………』

オリアナ(あらあら…酷いことする輩もいるものね……)

雑音から拾った単語で憶測を立ててゆく

その憶測では一部騎士団が暴走し勝手に動いている状況。学園都市に攻撃をしかけるという最悪な方向に、だが

オリアナ(このテレズマなら探索迎撃はされないはずね…)

それに相手は騎士団。魔術師と比べれば小細工では劣る

オリアナ(お姉さんも、あの坊やを見ていたら……ちょっと熱くなっちゃったわね)

敵である女の子を死力を尽くしてまで救いだしたあの少年

敵であった時も全力でぶつかってきたあの少年に、オリアナもなんらかの熱を受けとっていた

オリアナ「たまには熱くなるのも悪くないわね…」

ゴスロリ魔術師を置いて、『追跡封じ』の魔術師は気まぐれに足を運んだ

別にイギリスのためでも、騎士団への復讐のためでもない

ただの気まぐれで、誰かが少しでも幸せになるのなら

そして、誰かの『礎』を担える役になりたいと―――


ブロロロロ…


深夜のロンドン郊外に一台のタクシーが走る

クーデター侵略は順調に進んでいるらしく、ロンドン市民が軍により家からの退去を命令されていた

騎士団を把握すると言うことはイギリス国軍も管理下にあるために、軍はこのような仕事をやらされている

勿論ステイルはこのタクシーに人払いの一種である術式を使用しているので、一般の人間である軍人達の検問には引っ掛からなかった

運転手「……て、テロですかね…こんな深夜に…」

流石の運転手も怖じけづいているようだが、後ろのデカい黒服神父と小さな魔女を蔑ろにする訳にも行かないので目的地までは連れていくようだ

ステイル「ああ…ロンドンも物騒になったものだ」

そういうステイルは、正方形のルーンにペンで何かを書いている

ステイル「…………」スッ

無言で小萌に渡すと、ジェスチャーで体に貼れと命令した

ステイル《あーあー、聞こえるかい?》

小萌《ああ、はい聞こえるのですー》

それは簡易的な通信魔術だった

ステイル《さすがにこの運転手に話を聞かれる訳にはいかないからね。とりあえず話を要約するよ》

小萌《了解なのです》

ステイル《まず、僕が例の通信から傍受した内容だが…》

ステイル《学園都市攻撃を目論んでる奴らは『キリスト教原理主義者』、ファンダメンタリストという奴だ》

小萌《原理…主義…》

原理主義とはあまりいい響きではない、というのが小萌の印象だ

事実『原理主義』とは右よりな組織であり、某宗教原理主義などはテロリストとして認識されるのが主である

それが危険なのは、政治的な極右でなく、宗教的な極右だからというのが大きいであろう

ステイル《元々イギリス騎士団は実に古い歴史を持っていて非常に有能な組織だ》

ステイル《それを見ればファンダメンダリズムが残っていてもおかしくはないが…、それを踏まえ騎士団は内部の改革も行って来たし、イギリス王室指導の下その種の撲滅には力を注いできた》

実際に、十三騎士団が有名なイギリス騎士団であったが、それすらも合理化の波で統合され一つの騎士団としての改革がなされている

小萌《じゃあ何故こんなことが…》

ステイル《ファンダメンダリズム自体は穏やかな形で残っていた、騎士団の誇りとしてね。だがイギリスが学園都市と友好的になったり、そのせいで清教派との中が最悪な状況になったり……。うちの聖人は一人で騎士団の奴らをボコボコにしたしね》

小萌《……………》

ステイル《そんなこともあれば誇り高き騎士のメンツはがた落ちさ》

ステイル《そしてそれに火を付けたのがローマ正教の手引きだ》

小萌《どのような手引きを?》

ステイル《とりあえずは霊装の手引き。他にもいろいろと唆したんだろう》

魔術サイドと科学サイドでここまで混乱化すれば確かに不満も積もる

それが魔術サイドでありながら学園都市の味方をするイギリスならば、もっともな話

ステイル《つまり……当然の如く不満は爆発した。もしかしたら騎士団長や第二王女も見逃しているかもしれない…。そこまでバカだとは思わないが、クーデターを起こすような奴らだ、信用ならないね》

小萌《……………》

学園都市との摩擦はローマ正教とだけではない

イギリス全体にも軋轢は広がっていた

これも時代と状況が生み出した結果なのか?

小萌は両方に属する人間としてそのような自問に捕われた

ステイル《それともう一つ、霊装の話だ》

小萌《ローマ正教からの手引きの…ですか?》

ステイル《ああ、奴ら中々面白い物を引っ張り出してきたよ》

懐に手を入れタバコを取り出そうとしたが、車内は禁煙&小萌が無言でムッとなったため止めた

ステイル《………、奴ら日本に攻撃するって言ったろう》

小萌《はい》

ステイル《その霊装だ。しかも日本でしか発動できない非常に稀な霊装。何だと思う?》

小萌《え?……日本限定…、十字教関連なら…天草式とか…》

ステイル《流石にそれはないよ》

小萌《なら幕末頃の話ですかね?シーボルトとかポンペとか、外人さんが多く来ましたし》

ステイル《幕末は大して布教は行われなかったさ》

小萌《なら……戦国時代?》

ステイル《ご名答》

ステイル《上条当麻は伊能忠敬を知らなかったからね、こんな会話も成り立たなかったろう》

小萌《》

上条ちゃん…………


ステイル《話を戻すとその霊装は戦国時代に作られたもの》

小萌《確かに戦国時代にはキリシタン大名が多くて、天草式もそこからの発展ですよね?》

ステイル《ああ、長崎の大名の大村とかいう奴は熱心なキリシタンだったために、長崎をイエズス会に寄進したこともあったらしい。つまり昔の長崎は外国領だったんだよ》

小萌《そんなに影響が……》

ステイル《ちょっと本題からズレてしまったが、ここまで十字教を布教したの誰だと思う?》

小萌《……あっ……もしか…して…》

そう

かの有名な

ステイル《霊装の名前は『ザヴェーリョ・ノート』。フランシスコ・デ・ザビエルの記した魔導書さ》

小萌《フランシスコ…ザビエル》

ステイル《イタリア語読みではザヴェーリョ、日本語に近く読むとザベリオってとこさ》

小萌《あの人魔術師だったんですか?》

ステイル《魔術界では高名な魔術師さ。イエズス会を立ち上げた一人で非常に有能な魔術師で聖人でもあった》

小萌《せ、聖人……》

ステイル《極東にまで布教したほどの人間だ。聖人でない方がおかしいくらい偉大な人さ》

ステイル《それに魔導書まで書いてみせたと言うんだから、完璧としか言いようがないね》

魔導書記官、聖人、魔術師と3拍子揃った完璧な人物、それがフランシスコ・ザビエル

ステイル《イエズス会日本通信と言うザビエル記した日本布教の報告書みたいなのもあるんだが、実はこれも魔導書を作るための資料だったらしい》

小萌《じゃあ、逆に何でザビエルはその魔導書を今まで使わなかったんですかー?》

ステイル《彼は人徳ある心優しい人物だった。魔術は人民を守り、神に捧げるものだと信じていた》

ステイル《最初は日本の人民を幸せにさせるべく、布教させるための魔導書を記したが、それは魔術による強制的なものだと悟りこの魔導書は封印した》

小萌《……………》

ステイル《使徒十字よりは強制力がないものの、日本人全員に十字教を信仰させるくらいの力はある》

普通の魔導書は持つ人間に魔導書を『広まらせる』変わりに強大な力を与えるが、この魔導書は限定的で自ら『広まる』という特殊な魔導書である

ステイル《ザビエルも強固な封印をしていたみたいだが、それすらも解いて持ちだしてくるとは、守護聖人を侮辱してまでこんなことをするローマ正教がイカれてるよ》

小萌《とにかく、その魔導書の発動は…》

ステイル《日本でしか発動できない。魔導書自身が日本の地脈などを計算して力にするからね、下手したら日本に着いた途端発動させられる。だからボストンで止める》

小萌《わかりしまた……》

小萌はギュッと小さな箒を握りしめた



外はさらなる闇夜に包まれ、軍のトラックが行き来する程度の閑散ぶりだった

運転手はいよいよ怯えだしたが、黒い神父の険呑にのまれ、仕方なくと言った感じでタクシーは走り続けた


ステイル《偉大なる聖人を侮辱し、魔導書を悪用するのは……実に許し難いな…》

小萌《……それに…学園都市はやらせないです…》

一人の神父と一人の魔女は

イギリスのため、学園都市のため

守らなければいけない国があった―――
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