佐天「…アイテム?」28


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あらすじ

フレンダはスクールにアイテムの隠れ家を吐いた。
その代わりにスクールからの処刑を帳消しにした。

その情報を元にスクールはアイテムの隠れ家を攻撃した。
そこで麦野は心理定規によって自分の人間関係の距離を調節されるてしまう。

彼女は一体どうするのか…?





――第三学区の半壊した個室サロン


心理定規の能力によって他者との距離を調節された麦野沈利。
垣根の未元物質から受けた傷は多少痛むが、麦野の能力の使用に関して大きな影響を及ぼすほどのモノではなかった。


(滝壺と浜面は絹旗が逃がした…そしたらうざったいスクールに復讐しなきゃ…滝壺の能力が使えるならピンポイントで未元物質が展開される前に垣根の野郎を即殺出来る)


にやりと麦野の表情が暴悪に歪む。
それは笑いともとれない、寧ろ悲しそうな表情の様にも見える。


彼女はお気に入りの黄色いコートのポケットにある携帯電話を取り出して、滝壺と一緒に逃げた浜面に電話をかける。



「はーまづらあ。そっちに滝壺利后はいるかな?」


電話越しに出た浜面はどうやらまだ滝壺と一緒に居るようだった。
浜面のうわずった声で分かる。


「ゴチャゴチャと騒ぐなよ。これから「スクール」に逆襲開始。滝壺のチカラを使って追跡させるの。そっちにいるならさっさと連れてきて。死んでも結果を出してきてもらうからね」


彼女はそう言うとまだ電話の先でなにやら騒いでいる浜面の独り言には耳を貸さず話し続ける。



「スクールの追っ手がそっちに行ってるけど、適当に逃げてこっちに向かってきて頂戴。GPS電波でこっちに来てね☆死んだら許さないからねぇ☆」


冷静に考えて浜面と滝壺で垣根と心理定規から逃げて麦野の元に向かう事など出来るわけなどないのだが、そんな簡単な事も考えられない程、麦野は冷静さを欠いていた。
彼女はピッ!と電話を切ると、半壊している個室サロンから出て行く。



(まずは…スクールを叩きつぶす…あのドレスのクソビッチと垣根の野郎には原子崩しでダルマにして市中引きずり回しの刑だにゃん☆)


麦野はコートに着いている汚れを手でぱっぱと払い、サロンの部屋を出て、エレベーターを降りていく。
フロントはサロンの上階で起きた騒動で慌てふためいている。


(…浜面と滝壺…はこっちに向かってくるとして、絹旗も呼ばなきゃね☆)


そこで麦野はもう一人、ふと思い出す。フレンダだ。


(まずは裏切り者から消さなきゃ……!)


麦野はフレンダに電話をかけるものの、通じない。
電話を拒否しているのだろうか?


麦野は内心ではスクールに勝てないと思っていた。
しかし、研究所と先ほどのサロンの戦いで大敗し、このまま負け続きでは…という思考が働いた。



(そうよ…裏切り者を倒してから…そ、その次にスクールよ……!)


麦野は冷や汗をぬぐってサロンを出るとサロンで起きた抗争でいち早く警備員や風紀委員が集まっていた。
彼らは付近に飛び散ったガラス等を回収している。


そして、その光景を見ようと集まっている人だかりの中に金髪のブロンドの女がいた。



(あれ?フレンダ…あんな所でなにしてるのかにゃん?)


麦野はサロンの入り口からヒールの音をこつこつと立てて階段を下りていく。
その最中にフレンダが偶然にも彼女の方をちらと見た。



「フレンダーそんな所でなにしてるのかにゃー?☆」




話しかけられたフレンダは麦野の姿を認めると一目散に走っていった。
鬼の様な形相を浮かべている麦野はフレンダを追撃していく。



フレンダは走る。全力で!
振り向けば麦野が追撃してきていた。


「はっ…は…はっ……」


背後には狙撃銃や様々なツールを収納しているケースを背負っている。
七から八キロほどある重荷を途中で捨てればよかったと思ったフレンダだったが、そこまで考える余裕はなかった。


フレンダは重荷を背負い、走りつつ、スカートのポケットから携帯を取り出し、ステファニーに連絡する。
予め作っておいた未送信メールには集合地点の座標が指示されている。
そこに行けば姉と会えるという寸法だ。



(集合場所に行けばお姉ちゃんと会えるって訳よ!だから、そこまで、何とか捕まらないように走って…逃げなきゃ…!)


フレンダは未送信メールを送信する。
送信結果が出ると直ぐに携帯をしまって再び走っていく。



(結局…サロンの野次馬が気になったからこんなヘマやらかしたんだわ…ったく私のミスって訳よ……!)



しかも、彼女は自分がスクールにアイテムの居場所を教え、その内の一カ所のサロンにちょうど麦野達が退避していたのも不運だった。
しかし、今はそんな事を後悔したり、愚痴ったりしている場合ではない。
自分の生命の危機だ。後ろを見れば、怒りに身を任せた麦野が追撃してくるではないか。



フレンダはいち早くステファニーと決められた場所へ向かう。
それが先決だった。彼女は携帯のGPSに登録されている座標を確認しつつ、足を運んでいく。


麦野はまだ着いてきているが、姉が先に居るはずだ。


着けば助かる!


そう信じてフレンダは集合場所にやっとの思いで着く。そこは立体駐車場だった。
多くの車が止められている。


(ここにお姉ちゃんがいるの…?)


フレンダは足音が麦野にばれないように静かに歩いて行く。
ついさっきまで追跡していた麦野は居なくなったようだったが、まだ油断は出来ない。
フレンダは周囲を見回し、麦野がいない事を確認し、車と車の間で携帯を取り出す。


(お姉ちゃん、今どこにいるの?)


辺りを見回すと車やバイクが整然と置かれているだけだった。
麦野はどこなんだ?フレンダは辺りをキョロキョロと見渡し、がばっと背後を振り向くと、とそこには笑いとも言えない、ただ、口元をぐにゃりと歪めている女がいた。



「どこに逃げようとしてるのかにゃん?フレンダぁ!?」


甘ったるい麦野の声がフレンダの耳朶に響く。
その声を聞くやいなや、フレンダの体全体が震える。


「む、むぎ、麦野…」


「ったく噛みすぎだっつーの…おもしれー……ふふ…この裏切り者の白豚が」


裏切り者、その一言がフレンダの胸にぐさっと突き刺さる。


「あ…あは…えへ、へ…結局謝るって訳よ…はは…」


「はーーーー?」


麦野は「アタマ大丈夫?」と人を小馬鹿にするように耳に手を当ててフレンダに話しかける。


「フレンダちゃん☆そんな大きい荷物持ってどこにいこうっていうのかにゃー?まさか脱走ぅぅ?」


「あ…あはは、これは…その、私の武器入れてるケースだから……」


「ふーん…そっかぁ」


じゃあ、と麦野は一言。



「何で裏切ったんだぁ?フレンダぁ!!オイ!!!!」


麦野に裂帛の気合いで怒鳴られたフレンダは小さく「ひっ!」と震えた声を上げる。
彼女は抗弁することも出来ず、じりと歩み寄ってくる麦野にただ足をがたがたと震わせる事しかできない。



「麦野、その、本当にごめん…謝るって訳よ……麦野なら負けないと思ってさ……!」


フレンダは謝りつつ思った。
姉と一緒にこの学園都市から、いや、麦野沈利から逃げ切ることなど無理だ、と。
フレンダにそう思わせるだけの気迫が麦野にはあった。


(スクールに負けたから、裏切り者の私を消しに来たって事?)


スクールのリーダー垣根帝督と心理定規。
彼等の能力を持ってすればアイテムを壊滅させる事など容易い事だった。
麦野がここにいるということはスクールを倒したか、スクールに負け、それを補完する為に何か新しい事をしようと目論んでいるのかも知れない。


(結局、麦野が私の事を許せない気持ちは理解出来るって訳よ……私が仲間を売ったわけだし……)


「麦野?私、そのゴメン…」


フレンダは気づけば今にも泣き出しそうな表情で麦野に謝罪していた。
しかし、その程度でアイテムの女王がフレンダを赦すわ訳でもない。


「改まっても無駄だっつーのゴミ」



「……」


「あーむかつくわ。お前ここで死ね」


麦野はそう言うと掌から鮮やかに光る、原子崩しを顕現させる。
こうなったらいよいよヤバイ。フレンダはあたふたと辺りを見回すが誰もいない。ただ静謐を保ったうす暗い立体駐車場がたたずんでいるだけだ。


立体駐車場から数十メートルも走れば明るい市街地に繋がるのだが、それはフレンダにとってどこか遠い世界のように感じられた。


「ま、待って!麦野!結局、裏切ったのは謝るから、ね?」


「今更、命乞い?フレンダ」


「否定は……しないわ」


フレンダは麦野の目を見てそう言うと「ダメかな?」と潤んだ目で彼女の機嫌を伺う。
しかし、麦野はフレンダの懇願に頑として答える気はなかった。


「アイテム売っといて今更そんなの聞き入れるわけねぇだろ、バカかお前。頭にウジでも沸いてるんじゃねぇの?」


「……本当に、もう二度と、裏切らないから…今度こそ」


「ホント?なら生まれ変わったら次のアイテムでは裏切らないようにするんだなぁ!フレンダァ!!」


麦野はそう言うと原子崩しを極細の形状で顕現させると右足のふくらはぎの辺りを小さく撃ち抜く。
フレンダは「あ…」とぼーっと自分の撃ち抜かれた傷を見る。
一拍の間を置いてから貫通した傷口からごぽっと勢いよく血が出始めた。



「…ッ…ああ!!」


麦野の放った原子崩しはフレンダのふくらはぎに一㎝ほどの貫通穴を作った。
そして後には肌の焼ける独特の臭いが辺りに立ちこめた。


「む、むぎのぉ…いたいよ、すごくいたいよぉ…!」


「ぷ、ふふふ!ほんのちょっと貫通しただけじゃないーフレンダぁー☆まだまだ☆」


「じゃ、次はどこにしようかなぁー?」


まるで無邪気な子供の様な調子で麦野はフレンダに指を指しながら次の原子崩しをどこに照射するか吟味している様だ。


「まって!お願いだから!…何でも言うこと聞くから……!」


ごく僅かな傷だけでこの痛み。
もっと大きい傷が出来たら痛みは尋常ではないだろう。


「何でも言うこと聞く?じゃあ……そうだなぁ、ここで死ね」


「…そ、それ以外で……!だ、だめ……?絶対にミスしないからさ……?死にたくないよ…ね?」


フレンダの思考の中には既にここで姉と合流する事は消え失せていた。
麦野に命乞いをして助けて貰う、その事で彼女の頭はいっぱいになっていた。


「ミスじゃねぇんだよ!何度も言わすな、フレンダっ!!」



口角泡を飛ばしながら麦野は怒鳴る。


「お前の戦い方は確かに無能力者の中でも最高峰の部類だと思う、けどな、フレンダ。お前は裏切ったんだよ、この私を、アイテムをっ!」


「……う、うん……」


「だったらけじめつけなきゃ納得できねぇんだよ!こっちだってスクールと戦って、意味不明な能力で原子崩しもきかねぇ!で、垣根の野郎からはフレンダは裏切っただぁ?」


麦野は自分の怒りを洗いざらいぶちまける。
それを目の前で見ているフレンダはただ、出血する足を押さえ、恐怖に震えながら麦野の弁を聞く事しかできなかった。


「だから、殺す。絶対にゆるさねぇ!私はな、スクールの奴らに捕まって何だかしらねぇけど心理定規とかいう奴に頭いじられてんだよ!!何が何だか、もうわかんねぇんだよッ!」


「む、麦野…」


「何でお前がスクールに情報を売って逃げて、私は心理定規に頭を覗かれなきゃいけんぇんだよぉぉぉぉぉ!!!」



瞬間、ゴアっ!と勢いよく原子崩しが放たれる。
あらゆる遮蔽物に妨害されることなく彼女の粒機波形高速砲の光が拡散する。


「…私はなぁ…この指輪だって誰としてた指輪だったかつぅのもわからねぇんだ…」


「……」


麦野は自分の右手に嵌っているペアリングを大切そうに抑える。
それが誰と一緒に買いに行ったものなのかも分からないのに。



「……お前だけまんまとこの学園都市の闇から逃げようなんて絶対に許せねぇ!」


フレンダは返す言葉が全く思い浮かばなかった。
スクールに投降したフレンダと、同じく投降する意志を最後に見せた麦野の違いは?


「フレンダ!お前は前にファミレスで集まったとき言ったよな?裏切らないってなぁ!それが結局どうなったよ?今やお前が裏切ったせいでこんなざまになっちまった!!」


ここまでアイテムが崩壊してしまった理由は他にも挙げられるだろうが、しかし、フレンダの裏切りがもたらしたものが大きいだろう。


フレンダは思う。
麦野の指輪。あれは恐らく浜面と買った物だろう。
心理定規は能力を使って浜面と彼女の距離を引き剥がしたのだろう。



「お前を殺さなきゃ気が済まねぇ…!大人しく私に殺されろ、フレンダ」


「……結局…………」


フレンダは麦野のモノを見る様な目で完全に射すくめられ、再び自分の体が震える感覚を覚える。
彼女は恐怖の余り、歯はカチカチと不協和音を立て、体のありとあらゆる水分が下半身に集まっていく感覚を覚える。


ここで惨めに体液を流すような醜態は晒したくない。
フレンダの最低限の生理反応が彼女の失禁という最悪な行為を食い止めようとする。


麦野はフレンダにさらに歩み寄ってくる。
身構えるフレンダに対して彼女は思いっきり蹴足を喰らわせる。


「…っが…っ…!」



「がっは…!い、っ……!」


「いーざまだぁ。こりゃ。よし!ここで提案しましょ☆このまま撲殺されるか、原子崩しであっさり殺されるか、どっちがいいかにゃん?」



麦野に謝罪して赦して貰えるならば、生かして貰えるならば、何でも良い!
とにかく、生きたい!死にたくない!

フレンダは生への執着を渇望した。今回はダメでも、またやり直せば良い!いつかまた脱出する機会をうかがえば良い!
その時に姉を見つければいい!


「…死に…たく…ない……!」


死にたくない。それがフレンダの本音だった。



「まだそんな事言うのかよ!てめぇは!!白豚!仲間を売った醜悪な態度を晒し腐りやがれっ!!」


麦野はそう言うと踏みつけていたフレンダの背中から一度ヒールを離し、今度は先ほど出来たふくらはぎの傷口を思いっきり踏みつけた。


「や…ひぃ……っがっっ…!」


「痛いかぁ?フレンダ?さぁ、どっちのこーすで死にたいのかにゃん?☆」


諦念。
フレンダはステファニーが来ない、と思い、痛くない方が良いな…と消え入りそうな声で言った。
つい先ほどまで考えていた生への渇望は消え失せていた。この痛みには耐えられそうにない。

フレンダは力を振り絞って後ろを見ると麦野のヒールがずぶずぶとフレンダのふくらはぎの貫通穴に入り込んでいるではないか。



「…はぁい、フレンダちゃんはもれなくぅーーーー、原子崩しで真っ二つの刑に決まりましたぁ!パチパチ」


「…痛くし…な、っう…!」


「ゴチャゴチャうっせぇんだよ、フレンダ」


麦野はそう言うと原子崩しを顕現させる。
彼女は光の刀のようにまっすぐに伸びた原子崩しを演算し、補強し顕現させる。



「あぁ…麦野、結局、ゴメン…ね、迷惑かけて……」


フレンダは覚悟を決めたその時、立体駐車場に間の抜けた着信音が響き渡る。






♪I believe miracles can happen









DAISHI DANCEの着信音が立体駐車場に響き渡る。



フレンダは“信じれば奇跡は起きる”このフレーズが大好きで、わざわざ有料のサイトに登録してダウンロードしてしまったくらいだ。
この曲をかければ姉にも会えるかも、とフレンダは思い、それ以降、着信音はずっとこれ。ゲン担ぎの様なものだ。


この着信音がなったと言うことはステファニーがここに来た事を知らせる合図だった。



「オイオイ、裏切りモンが奇跡を信じるってかぁ?そりゃおかしいんじゃねぇのか?」


「…こ…こ…だよ……!」


「あん?誰に向かって叫んでるんだ?それとも愉快なキチガイ時報時計になっちゃたのかにゃん?」







「お姉ちゃん――――――――――!!!」







フレンダの叫び声が響き渡る。
立体駐車場がごうんごうん、と大きな音を立てて動きはじめた。
するとランクルが他の階層からやってきた。


その中にいるドライバーは女。白人で麦野よりも年上でモデル体型。
彼女はランクルの運転席からずいっと半身を乗り出し、SR25を構えている。



「砂皿さんの見よう見まねですけど……」


ステファニーは立体駐車場の中をだいぶ探した。
そしてやっと見つけた!妹、フレンダ。



ランクルから半身を乗り出し、砂皿の愛用しているSR25を構える。
既に弾は装填してある。


リュポールド社製のスコープ一杯に映し出される栗色の髪の女。アイテムのリーダー、麦野だ。



「私の妹に手を出さないでほしいですねー」



ステファニーは軽い調子で言いつつ、麦野に照準を合わせる。
普段狙撃などした事のない彼女がこの場で砂皿の銃を選んだ理由は、今まで高確率で狙撃を成功させてきた彼に対する験担(げんかつ)ぎの意味合いもあった。


普段は派手に弾丸をばらまくステファニーはしかし、今回はしっかりと麦野のこめかみにターゲットを合わせる。


ぽかんとしている麦野としきりに姉の事を呼ぶフレンダ。
その光景を視野に入れつつ、ステファニーはSR25を構え、引き金を引く。
優しく、絞るようにしてゆっくりと、狙いは正確に。



タァン!



セミオートのマガジンから一発が薬室に装填され、撃鉄が高速で7.62mmNATO弾を打ち出す。
それは麦野が原子崩しを顕現し、ステファニーを車ごと、否、駐車場まるごと抹消しようとするよりも早く彼女に襲いかかる!



マッハ3を越えるスピードの弾丸と麦野の原子崩しの放出は後手に回った麦野にとって分が悪かった。
仮に同時に弾丸と原子崩しが発射された場合、弾丸は消滅するが、この場合は完全にステファニーに軍配が上がることになった。


「ぐ…っあ!」


ステファニーの弾丸が麦野の右目の付近を擦過していく。
砂皿と違ってピンポイントでの狙撃はやはり難しい。しかし、敵に傷を与えた事は確かだった。



(やっぱ砂皿さんみたいにうまくはいきませんか)


ステファニーはそう思いつつも麦野の行動を制した事でよしとする。
彼女の目標となった麦野は右目を押さえつつ、ランクルに乗っているステファニーをぎろっとにらめつける。


「誰だよ…!てめぇ…!」


「そこにいるフレンダの姉、ステファニー=ゴージャスパレス」


「…フレンダに姉が…?」


片目からの出血を抑えながらステファニーとフレンダを交互に見る麦野。
その姿は血の涙を流している様にも見えた。


「へぇ…そういう事かぁ…フレンダぁ…いいわねぇ…あんたには身内がいて…!」


麦野はそう言うと右目からぽたぽたと滴り落ちる血を気にせず、原子崩しを発動させようとするが、ステファニーがSR25で彼女の左腕を容赦なく撃ち抜く。


「がッ…!」






「私の妹に手を出すな!!」






穏やかで、しかし、激しい視線が麦野を射すくめた。
ステファニーにの気迫で麦野は自分の体が震えるのを知覚する。



直後、麦野は腕を押さえ、右目から血を流したまま、その場に倒れ込んだ。
フレンダは自分を抑えているものがなくなって,身軽になると痛む足を引きずってランクルの方にとぼとぼと歩いてきた。
ステファニーもランクルから降りると、SR25を持ったまま、フレンダの方に駆け寄ってくる。


「フレンダ!」


「お、お姉ちゃぁぁん!」


もう二度と離すことが無いようにステファニーはぎゅっと抱きしめる。



「大丈夫だったか、フレンダ?」


「うん!大丈夫だった…けど、」


けど?とステファニーは自分の首筋の辺りに顔を埋めているフレンダに優しく問いかける。


「色んな人、裏切っちゃった……」


「今は…自分が生き延びることだけを考えて…ね?」


ステファニーはそう言うとフレンダが返答するのを待たずに、彼女の華奢な腕を自分の肩に乗っけて歩き出す。


「…ここから…どこにいくの?」


「学園都市から出るよ…」



「護衛の人……砂皿さんは……?」


ステファニーはフレンダの質問に対して「わからない…」と不安げに漏らす。
けど、と彼女は語気を強くして言う。


「砂皿さんは絶対死なないよ、フレンダ。あの人はそんじゃそこらの奴と戦っても負けやしないよ」


そう言うとステファニーはランクルの助手席のドアを開けて、フレンダに入るように促す。
麦野が倒れているのを尻目に、ステファニーとフレンダを乗せたランクルが立体駐車場を出て行った。
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