佐天「…アイテム?」24


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あらすじ

猟犬部隊の追撃から逃れたステファニーはちょうど柵川中学の学生寮にいたフレンダの姿を見た。
お互いに自分たちの事を確認した二人。


一方、大規模な学園都市のイベントに合わせて行われる事になった。
一ヶ月後に来る学園都市の独立記念日に合わせて自体は動き出すことになるだろう。





――柵川中学学生寮


「涙子!見た!?あれが私のお姉ちゃんなの!」


フレンダは先程まで姉がいた所を指さしている。
佐天は「うん、見たよ!」と頷く。



「良かった…少しだけでも会えて…」


佐天はフレンダに相槌を打つ。
そしてちらと彼女の表情を見てみようとすると笑いながらも大粒の涙をこぼしていた。


「…あー…ゴメン、情けないわね、結局私」


「そんな事ないと思うよ」


その後フレンダは「あー」とか「ふー」とか適当に深呼吸している。
そして双眸からは涙をぽろぽろと流しながら、姉と一瞬の邂逅を出来たことを彼女は心から喜んだ。


――雑居ビル


ステファニーの乗っていたハーレーは雑居ビルの中に巧妙に偽装されて配置されている。
当の本人は?


「…グ…ク…ッああ!イタいです…!砂皿さん!」


「我慢しろ!」


数多率いる猟犬部隊に追撃されたときに負った傷を治療していた。
幸い、貫通銃創と擦過しているだけなので、重傷は免れたが、暫くは安静が必要だった。


食料は約一ヶ月分。簡易トイレや傷の手当てをする応急キットはあるにはあるが、いつまで持つのやら。
しかし、この傷の痛みにも耐えなければなるまい。やっとフレンダと会えたのだ。後一ヶ月。


「砂皿さん…っつつ…痛い痛い!」


「仕方ないだろう。麻酔の量にも限界がある。ここで全て使ってしまえば後々の作戦に影響が出かねないぞ」


「はい…」


シュンと落ち込むステファニーの肩に砂皿が肩を当てる。
肩を露出している彼女は「ひゃう!」と突然に触れられた手の冷たさに驚く。


「終わりだ」



「あ、ありがとうございます…!」
(何だ、終わった合図ですか…いきなり触られたら緊張するじゃないですか…!)


雑居ビルの中でも半埋め込み式の地下に居住区に住んでいる二人。
他の部屋にはスキルアウトや住居様々な理由でなくしたアウトローな人々がすんでいる。
高層ビル群の間にひょっこり残ったゲットーの様な場所に二人は拠点を構えたのだった。



「脚の傷は擦過しているから消毒する…」


太ももの辺りを擦過している銃弾で出来た傷。
消毒するためにはレザーパンツを脱がなければならない。


「…ちょっと待って下さい…消毒は…自分でも出来ます」


「そうか」


ステファニーは砂皿がほかの部屋に向かうのを確認するとゆっくりとレザーのズボンを脱いでいく。
擦過したとレザーパンツがすれる度に想像出来ない痛みが全身を駆け巡っていく。


「…!…!」
(これ…痛すぎですよ…!)


気づけばステファニーは脂汗をじっとりとかいていた。
ステファニーはビクトリノックスの十徳ナイフを取り出して器用にレザーパンツを切ろうとするが良質のレザーなので刃がうまく入っていかない。


(クッソ…めっちゃくちゃ痛いじゃないですか…!)


結局痛みに耐えかねて、ステファニーは床にごろんと転がってしまった。



「砂皿さんー!消毒してくださいー…!」


ステファニーはじっとりと汗を掻いたまま助けを求める。
するとトレーニングを中断した砂皿がやってきた。


「すいません…自分では無理でした」


「ほら、言わんことない」


砂皿はそう言うと血がドス黒く凝固しつつある床を見ながら止血が出来ているのを確認するとステファニーから十徳ナイフを拝借し、丁寧にレザーパンツを切っていく。
すると擦過した傷跡が生々しく残っていた。
数十分の後、傷口は適切に治療され、包帯が巻かれた。


「あ、ありがとうございます」
(わ、私の脚みといてなんも思わないですか…とほほ…)


「困ったときは最初から頼むんだな」
(ったく…これだから綺麗な女は傭兵に向いていないんだ…こちらも集中しないと目移りしかねん)


「すいません…以後気を付けます。所で砂皿さん、どれくらい潜伏するんでしょうか?」



ステファニーは砂皿からどれくらい潜伏するか聞いていなかった。
というのもステファニーの性格だと「一ヶ月も潜伏出来る訳ないじゃないですか!」とか愚痴をこぼしそうだったから。
つい今し方考えていたステファニーに対する女に向けた感情を払拭し、砂皿は弁を続ける。



「…俺の計画だと大規模なイベントがあるまで潜伏しようと思っている」


「大規模って言うと…まさか…大覇星祭とか…学園都市独立記念日とかまでですか?」


砂皿は言うか言うまいか逡巡したが、ステファニーに大まかな予想だけどな、と前置きをして告げた。
するとステファニーは砂皿の予想とは全く違う反応を示した。


「妹を救出する事も出来て、一ヶ月も砂皿さんと二人っきり…フフ…!これは…これこそイベントですよ!」


肩と脚を包帯でくるまれている女は傷口からジンジンと発せられている痛みもなんのその、という風に立ちあがる。
そしてその直後に「いったーい」と言って再び床に崩れ落ちるのであった。
砂皿はこの女となら一ヶ月の潜伏は苦ではないな、と思った。



――同日 MARのオフィス


木原を乗せたムラーノは猟犬部隊のオフィスではなく、妹のテレスティーナが指揮しているMARのオフィスに到着した。
ここの機材は優秀で警備員のメンバーが利用するハイテク機材が揃っている。


「わりぃな、テレスティーナ。お前ん所の機材をちょいとかりるぜ?」


「あら、お兄さん久しぶりね?別に良いわよ?ここの機器の使用権限は私が持っているから、どうぞ使って下さいな」


数多はテレスティーナに軽く会釈をするとムラーノの車内に据え付けられていた車載カメラを取り出したファイルを持っている隊員をオフィスに入れる。


「何か解析するの?」


「あー…さっきまでカーチェイスをしててだな、それで砂皿の野郎と同じホテルから出てきた女がつえぇのなんのってよ」


「襲撃でも喰らったの?」


「まぁ、そんな所だ。前のヴァンガードがぶっ壊されて隊員三人死亡、一人大やけど、で援軍が追いつく間に負傷しつつも相手は逃げ切りやがった」


「あらま。かなりの腕前のようね」


「認めたくねぇがな」


数多はそう言うとテレスティーナから解析室のカードキーを受け取ると部屋に入る。
テレスティーナも興味があるようで、猟犬部隊の何人かと一緒に部屋に入っていった。



MARの解析員達がムラーノから回収した車載カメラの解析を行っていく。
その間に数多の無線に交信が入った。


『…こちらズユース…砂皿緻密の移動経路判明しました…現在立川近辺の雑居ビル群に潜伏している模様』


「わかった。良くやった…踏み込めそうか?」


『いえ…こちらからは見えませんが、奴ら先ほどなにやら敷設している様に見えました』


数多は「敷設ぅ?」とうざったそうに交信しているズユースに向かって吠えた。


『こちらからはあまり見えませんが…恐らく毒ガスかと…超望遠レンズで見た結果何ですが…』


「今投影機はない。口頭で説明しろ、ズユース」


数多はズユースがファイルを送ろうとしたのを一度中断させて無線交信で正確に伝えるよう言った。


『はっ…ただいま超望遠レンズで解析した結果………』


言いよどんでいるズユースに数多は「おい、コラ、しかり言え」と発破をかける。



『VXガスに収納方法は酷似しています。しかし、ステンレス容器に収めるのではなく、透明の容器に収納していますね…正確な種類は判別不可能です…』


「ほう…VXガス…或いは違う種類だとしても安易に踏み込めねぇな…」


『はい。…部屋に近づいた瞬間におだぶつ……という事も有り得ます…!』


「敵ながらあっぱれだな、こりゃ」


数多は独り言の様につぶやく。


(普通のVXでさえ相当な威力だ…あれが改良型だとしたら…質がワリィなオイ)


数多は透明の容器に収納されている改良型のVXガスを想像しつつ、交信を切った。
するとちょうど解析のアルゴリズムが終了した様で、解析員達は「おお」と歓声を上げていた。というのも解析されたファイルに映っている女性はかなりの美人だったからだ。


数多は解析員達の歓声に釣られて振り向くと大型プロジェクタに反映されている金髪ブロンドの女性の姿が見えた。
こちらを見て不敵な笑みを浮かべている白人だった。


「こいつ…まさか」


「ステファニーよ、これ」


数多の思考がテレスティーナの声で中断される。
「知っているのか?」と数多はモニタに投影さえているステファニーを指さす。


「えぇ。コイツ、以前学園都市の警備員で働いていたわ。同じ白人だったから記憶に残ってるわ」



「なぁるほど…そしたら…砂皿の野郎と一緒のホテルから出てきて且つ、猟犬部隊に攻撃を加えたって事はだ…」


「えぇ。砂皿と共に行動していると、みていいんじゃないかしら。しかも、アイテムのメンバー…恐らくフレンダでしょうけど…接触をはかってる可能性があるわね」


「そしたら…今直ぐにでも雑居ビルに襲撃をかけたいが…正体のわからねぇ毒ガス祭ときたか…実際に毒ガスなのかよ?」


「そればっかしはわからないわ。実際に言ってみないと」


「しかたねぇ、猟犬部隊から行かせるか。オイ、今無線で聞いてた奴ら」


『………』


何人かの隊員の交信音が聞こえてくる。
しかし、この状況で名乗りを上げた場合、待っているのは死以外ないのは明白だった。



「聞こえねぇのか?なら、お前等の親に行かせるぞー?いいんだなぁ??」



『…………………ズユース…了解しました』

『………………………リシャール了解です』

『………………………………テオ了解です』




突如掛かった死の呼びかけに反抗する余地はなかった。
男達は死ぬと分かってていても数多の命令に承服せざるをえなかった。
親に行かせる…それが荒唐無稽な冗談ではない事を猟犬部隊は承知していた。ならば…本当に苦渋の決断だが自分が行くしかあるまい。例え死ぬとしても…!


彼らは念じた。どうか、あれが致死性のガスではありませんように…と。


「戦場じゃぁ諦観は美徳だぁ。行ってこい」


まさにお前が言うかと、と言いたい衝動に駆られているだろう猟犬部隊の隊員達はしかし反抗出来なかった。
テレスティーナは「ひどい人」とぼそっと言うが、数多に「ん?んんん?」と凄まれて「好きにすれば?」と首を横に振った。



「じゃぁ、お前等の勇姿はこっちで見届けてやるから、頑張れ。突撃時刻は最終下校時刻を回ってからだ。いいな?」



『サー……』



数多は勿論男達の断末魔を見届けることなどなかった。
そして毒ガスが用いられたという形跡でだけ確認する。周囲に人が居なかっせいで、周辺にどれほどの影響を与えたかは確認出来なかったが。



「これで毒ガスを使ってるって事が判った。なら、うかつに忍び込むのは不可能だ…」


じゃあどうするの?とテレスティーナが数多に聞き返す。


「…なぁにあっちだってぐずぐずしてられねぇ筈だ…学園都市の大規模なイベントに乗じて作戦を実行するに違いねぇ…」


「ここ一ヶ月くらいだと…そうねぇ…大覇星祭か…学園都市の独立記念日だろうな…!」


「我慢比べって事ね?」


「あぁ。こっちから言って、無駄に戦力を減らす訳にはいかねぇからなぁ…!」


数多はそう言うと従えてきた猟犬部隊と一緒に自分のオフィスに帰って行った。
テレスティーナは帰って行く彼らの背中を見つめていた。





果たして、砂皿達が期待している様な出来事は一ヶ月後に起きるのであろうか?
アイテム、電話の女、猟犬部隊、MAR、グループ、スクール、御坂美琴、そして砂皿緻密とステファニー。

一ヶ月後、皆が交わるとき、キリキリと絞られた戦弓は放たれるのであった。



――学園都市独立記念日当日 佐天

この一ヶ月ちょっと、色々あったと言えば、あったし、いつも通りの平凡な日常と言えばそうだったかもしれない。
学校に行く者、潜伏する者、仕事を忠実に行う者、交渉権を獲得しようと躍起になっている者…様々な人の運命が交わり、時に激しくせめぎ合う。


佐天涙子は携帯電話を持ってそわそわしていた。


(ったく…ここ一ヶ月スクールにお株を奪われてばっかだったわね)


ため息混じりに仕事用の携帯電話をいじりながら彼女は思う。
大覇星祭は何事もなく終わった。
そして…今日、学園都市の独立記念日。何かが起きる事は確かだった。
というのも前日の夜のこと……






『明日、フレンダ脱出作戦を決行する』





昨夜砂皿が佐天の家にやってきて一言報告した。
彼女はこくんと頷くことしか出来なかった。


ついにやってきたのか。そう思うと彼女はなぜだか眠れなかった。



結局…砂皿さんの読み通り、独立記念日の前に暗部組織の幾つかが動き出した…どうなるのよ?)




佐天はこの一ヶ月、フレンダを護衛に付ける事はしなかった。それには特に意味はない。
強いて理由付けをするとすれば、自分の身に危険を感じられなかったから。


今、佐天はジョセフに向かっている。
そう、アイテムの構成員達が待機しているレストランだ。


今日は祝日。家に居てもつまらない。いや、そんな理由で彼女はアイテムの会合に来たのではない。
いつもアイテムの面々がどんな会話をするか。それをこの目と耳で見聞きしてみたかった。



そして、何より、フレンダが今後どういった行動を採るか…。例え同行出来なくても、今日フレンダの顔を見ずにはいられなかったのだ。
色々な事を考えながら歩いているとレストラン「ジョセフ」の駐車場が見えた。
浜面の仕事用の車、シボレー・アストロが停まっている。既に会議は始まっているのだろうか。



(おーおー…話してますねぇ、アイテム)



佐天がちらとジョセフの窓をみるとアイテムのメンバー四人が待機していた。
それぞれが思い思いの行動をしているようだ。
その姿を見つつ、彼女はジョセフの入店口に足を踏み入れる。


――麦野沈利


彼女は久しぶりに入った仕事にワクワクしていた。しかし、その反面緊張もしていた。


垣根帝督。第二位の怪物。未元物質を繰る男。



自分の思った物質を構築できうる限りまでの範囲なら作り出せる。
麦野は彼に対して面識があった以前付き合った事があるから。


しかし、そんな事は戦いになってしまえば関係ない。
任務を遂行してしまえば明日からはまた普通の日々。浜面にたっぷり抱いてもらうのもいいかも。



そんなことを考えながら彼女はふと気づいた。
朝ごはんにいつも食べる鮭弁当にいつもの惣菜が乗ってないのだ。






「あれ?今日のシャケ弁と昨日のシャケ弁はなんかは違う気がするけど。あれー?」



――絹旗最愛


超、超、一ヶ月ひまでしたね。
いや、アイテムに入ってからスリリングな日常を過ごしたことはあるだろうか?
絹旗は自分に言い聞かせる。


正直彼女は自分の能力をふんだんに使った戦いをしたことがなかった。しかし、
電話の女からここ最近入った情報に依れば今回の相手はスクール。


かなりの強敵であることには間違いない。
相手は得体の知れないヘッドギアの男、プロスナイパー、心理操作に長けた女、そして第二位の男。


いきなり本番の殺しあいだ。
こればっかしはうまく行くかわからない。しかし平静は保たれている。いける気がする。


そんなことを考えながら寡黙に、じっと映画のパンフレットを読んでいく。






「香港赤龍電影カンパニーが送るC級ウルトラ問題作……様々な意味で手に汗握りそうで、逆に超気になります」



――滝壺理后

スクール…学園都市第二位を擁する組織。
その組織の他にも幾つかの組織が学園としないで行動を開始したようだった。


それは即ち学園都市の治安を守る組織「アイテム」に出撃命令が下るのと同義だった。
今日はもしかしたら相当な激戦になるかも知れない。


しかし、その激戦下で行われる一つの脱出劇。
その伸展がどうなるか。滝壺は気が気でなかった。



(…フレンダ…見た感じ普通だけど、昨日も遅くまで起きてたし、やっぱり緊張してるのかな?)



滝壺はぽーっと眠そうな視線を虚空に向けながらも、とらとフレンダの方を見ると元気そうに大好きな缶詰をつついていた。
その光景に滝壺は苦笑しつつ能力者達が発する力場の波に揺られるのであった。






「……南南西から信号が来てる……」



――フレンダ=ゴージャスパレス

ついに来たか。
それが正直な感想だった。


涙子程じゃないけど、私もクソ度胸の持ち主かな?と彼女は思った。
というのも昨日の夜まで学園都市から抜け出すなんておよそ絵空事のように感じられたからだ。


流石に昨日の夜は緊張したが、夏休みの最終日以降、昨日の夜までは取り立てて緊張したり不安に駆られることはなかった。
もしかしたら真剣にむきあってないだけかもしれないが。


(お姉ちゃんの事、少しでも見れたのが大きいのかな?)


佐天の暮らしている学生寮にやってきた時、バイクの排気音が聞こえた。
音に釣られて窓を見てみると姉の姿が。
あれだけで、フレンダは今まで姉を探してきた苦労は全て吹き飛んでしまった。



(今日で…学園都市の闇からおさらばになるって事よね…結局うまく行く訳?)


砂皿からは何も連絡が来ない。
しかし、連絡先は交換している。後はいつ、いかなるタイミングで連絡が来るか。それだけだった。



腹が減ってはいくさは出来ない。日本人の口にすることわざをフレンダは思い出す。
そして大好きな鯖の缶詰をつつく。






「結局さ、サバの缶詰がキてる訳よ。カレーね、カレーが最高」


――砂皿緻密 ステファニー=ゴージャスパレス


「いやー…やっと出れますね、砂皿さん☆」


「あぁ。一ヶ月と少しか…長かったな」


砂皿とステファニーは立川郊外の雑居ビル群から出てきた。
一ヶ月以上籠城していたにもかかわらず、特にその表情からは疲労は感じられない。


毒ガスという実物でのブラフを利用したせいもあってか、この一ヶ月は外出するのを極力控えていた事以外は特に変化はなかった。



「恐らく…私達の行動も監視されちゃってるんですかねぇ?」


「あぁ」


二人は悠長なことを言いつつ、地上に出る。
恐らくこの時点で学園都市の治安維持部隊の照準に二人は映っているのだろうが、二人は何故撃たれないのだろうか?


それは彼らが持っている毒ガスに起因しているだろう。
一ヶ月ほど前猟犬部隊の三人の隊員が哀れにも毒ガスを浴びて死んだ。

毒ガスの成分は二人しか知らないのだが、彼らの手にはしっかりそれを治めた容器を手に提げていた。
仮に狙撃が成功したとしてももしショックを与えてしまって毒ガスがまき散らされでもしたら?


左手にはアタッシュウェポンケース、右手には数珠つなぎになっている透明の容器を納める透明のスーツケース。
背中には大きめのリュックを背負っている。恐らくそれぞれの得物が入っているのだろう。


砂皿とステファニーは雑居ビルの影に巧妙に偽装されているハーレーに乗り込む。
今回の運転は砂皿だ。


「行くぞ」


「はい」


ハーレーは心地よい排気音を上げ、一ヶ月以上の籠城直後とは思えない、健康な様子の二人を学園都市のビル群に向けて送り届けていった。
7


――木原数多

「へぇー…やっと動いたかぁ。待たせやがってよ」


数多は砂皿達が雑居ビルから出てビル群に向かっていった報告を聞いた。
彼は思う。結局はあいつらは必ず学園都市を出るのだ。そこで一網打尽にしてしまえばいい。


(一方通行の奴は悔しがってたなぁ、仕事が入ってそっちにいけねぇとか言ってたわ)


一方通行は実はアイテムと戦うのを熱望していた。
しかし、ここ最近慌ただしい学園都市の内情と世界情勢によって治安維持部隊が著しく不足している状況で一方通行擁するグループにも治安維持の要請が入ったのだった。


(まぁ、あいつなら命令無視してでも飛んできそうだが…果たしてねぇ…?)



数多は首の骨をコキンと鳴らすと妹であるテレスティーナに学園都市と日本の境の警備を強化するように要請した。
すると「人手が足りないけど頑張るわ」と頼りない返事が。


(チッ…猟犬部隊からも少しだしてやっかなぁ…)


そう思った数多は増援を送る旨を伝える。
ここ一ヶ月で新たに補充された人員達で新旧の隊員が混同している猟犬部隊。



(あいつらも呼んでやるかねぇ)


数多はそう思うと“あいつら”を呼んだ。



「呼びましたか?とミサカは猟犬部隊指揮官に質問します」


「あぁ。呼んだぜ。お前等にも出撃命令が下る可能性がある」


「了解しました。では、しばらくはここで待機ですね?とミサカは隊長に命令の確認をします」


「あぁ。そうだ、待機だ。頃合いを見て俺がお前等を呼ぶから、そんときその場所に来い」


数多の命令を復唱した御坂美琴のクローン四人はオフィスを後にした。
他の隊員達も集合しており、猟犬部隊の一部は数多の命令で出撃する事になった。
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