佐天「…アイテム?」21


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あらすじ

テレスティーナはフレンダが暗部から足を洗おうとしていると疑念を抱き、麦野に連絡した。
麦野はその連絡を受け取る。果たして、どの様な対応をするのだろうか?






――麦野の住んでいる高級マンション

テレスティーナ…?一体誰なんだろうか。
麦野の携帯電話に送られてきたメールの送り主の名前に彼女は首をかしげる。


「ねぇ~、浜面ぁ。テレスティーナって誰だっけぇ?」


「いやぁー俺はしらねぇなぁ」


「どっかで聞いたことあるのよねー……」


「俺は外人の知り合いだったらフレンダくらいだなっ。ってか、麦野。胸当たってるって」


「ふふ、いいじゃない。さっきまで普通に抱き合ってたんだし」


麦野はそう言うと浜面の厚い胸板に顔を寄せる。
二人は今ベッドで仲良く寝ているのだ。


「で、そのテレスティーナって奴がどうしたんだ?」


携帯電話を見ている麦野。
浜面の胸板の辺りに麦野がいるので彼女の携帯電話に掛かったメールの内容をうかがい知ることは出来ない。



「……」


「おい、麦野?何か言えよ?」


「MARって確か警備員の一部署よね?」


「…そうなのか?今までさんざん警備員にはお世話になったが、そんな部署も組織も聞いたことがねぇ」


「あ、そ」


つい先程まで愛の言葉を囁いていた麦野は携帯電話を見てからというものの、何だか浜面に対して素っ気なくなってしまった。
浜面はそんな彼女の所作に寂しさを感じつつもその正体を確かめたいと思い、聞いてみた。


「さっきから警備員やMARだなんだって、一体どうしたんだ?」


「テレスティーナって奴から来たメールがこれ。信じられる?」


麦野はそう言うと見ていた携帯をぽいっと浜面に見せる。
彼女が腕を上げた拍子に浜面の視界にちらと綺麗な乳房が見え、彼はそちらに視線が向かってしまうが、なんとか携帯を受け取る。


浜面は自分のどうしようもない下心に内心で苦笑しつつ、携帯の液晶に映し出されている文字の羅列に目を通していく。
すると彼の表情がみるみるうちに曇っていくのが麦野からも分かっていった。


(ちょっとまて…フレンダが学園都市から出るってどういうことだ…?ってか何でこいつはそんな事知ってるんだ?)


浜面は自分の頭の中に思い浮かんでくる数々の質問を内包していきながらも、まずはこのメールの内容について審議しなければならない、と思った。
「なぁ、麦野」と彼は話しかけていた。




「この情報信じるか?」


「信じるも何も…いきなりこんな事言われてもってのが本音よね」


「うーん…アイテムを潰したい何者かによる罠?非公式ながら警備員の中にはMARという部署が存在するのは聞いたことがあるわ」


だから、と麦野は一言前置きを重ねる。


「組織の名前を名乗っておいて、私達の仲間割れを誘おうって魂胆かも知れないわね」


「かもしんねぇな。とにかく、招集かけますか、アイテム」


「そうね。……ねぇ、浜面。私さっき電話の女から連絡先教えてくれって連絡来たわよ?もしかしたら…それも何かと関係があるのかも知れないわね…」


麦野はこうしちゃいられない、と言わんばかりに携帯電話をかちかちと打ち込んでいく。
そして携帯を閉じると浜面の方を上目使いで見つめる。


浜面はその表情に赤面しつつも、自分の胸板にいる麦野をぐいっと顔の辺りまで引き寄せ、唇を重ねた。



――フレンダと滝壺の共同アジト 同時刻

ん…と小さく声を上げるフレンダ。
どうやら滝壺の方に寄っかかったまま寝ていたようだった。


(あれ…?私寝ちゃったみたい…、滝壺は?…隣にいるね…)


ちらと横を見ると滝壺は寝息を立てて寝ている。
しかし、このままここで寝てしまったらいつも寝る時間に寝れなくなってしまう。そう思ったフレンダは滝壺の肩をとんとんと優しくたたいて起こす。


「滝壺?起きよ?」


「……ん、フレンダ?あれ?寝ちゃってた?」


フレンダはうっつらうっつらとしている滝壺に「ちょっとね」と答えると、携帯電話を取り出し、メールを打ち込んでいく。
滝壺は隣でフレンダのメール編集画面をのぞき込む。


「なにしてるの?フレンダ」


「あー、ちょっとさ、近い内にアイテムのみんなには私がアイテムの事抜けるって事ちゃんといわなきゃなって思ってさ…明日にでも集まれたらな、って」


「明日はまだ仕事が入ってないから平気かもね、みんな集まってくれるかも」


フレンダは滝壺の発言に「そうだといいんだけどね」と相づちをうつ。
メールの編集が終わり、それを滝壺に見せると、「いいと思うよ?」と小動物の様にちょこっとだけ首をかしげる。



To:アイテムメンバー

Sub:明日

いつものファミレスに集まれる?時間は正午。
返事待ってるって訳よ( ´ ▽ ` )ノ




(絵文字なんて使って緊張感ないかな?ま、いっか)


フレンダが送信しようと思った時だった。
メール送信ボタンに自分の指を宛がったときだった。

突如、彼女の携帯の着信音が鳴る。
DAISHI DANCEのI Believe だ。



(このタイミングでメール?誰?メルマガ?)


ちょうど良いタイミングでメールが来て驚くフレンダ。
自分が作成したメールを送ろうとした矢先に一体誰よ?といらっとするが、その感情がわき起こったのも一瞬。
そのイライラは霧散していく。


「…む、麦野?」


フレンダはつい声に出していた。
全く同じタイミングで滝壺の携帯もバイブレーションが鳴動している。


フレンダは何故か嫌な予感がしつつも受信フォルダに蓄積されているメールを読む。







From:麦野沈利

Sub:明日

仕事なさそうだから、明日はいつものファミレスに正午にきてほしいにゃん☆



(どーゆー事?何で?麦野の事だから…暇だから適当にって感じでアイテム招集かしら?)


フレンダは特に麦野主催の招集には何もないと考えつつ、彼女から送られてきた受信メールを何度も読み返した。
そのうちに、フレンダは気づけば体が小刻みに震えていた。
今日、共同アジトに帰ってきて滝壺と話した内容に依るところがあるのかも知れない。


麦野はフレンダが学園都市の暗部を抜けることをよしとするか、それが最大の焦点だった。
そして、暗部から抜ける事を彼女がよしとする筈がない。


(私が姉の事探してるていう事が誰かに結局ばれたって訳?どうなのよ…!何でこのタイミングでメールが来るのよ?)


麦野の不意に送られてきたメールに動揺をしつつもフレンダは「了解☆」と返事を返す。
結局フレンダの作成したメールはアイテムのメンバーに送信されることなく、削除されてしまった。



――翌日正午 いつものファミレス

ランチで真っ盛りの店内。
いつもの窓際の卓に絹旗が鎮座していた。


(私が一番ですかね?)


絹旗はランチの時間帯で込んでいるレストラン内をぐるっとのぞき込む。
どうやら絹旗が一番最初に来店したようだ。


店員は絹旗が常連であるのを知っているのだろう。
五人分のナイフやフォークが入っているケースを持ってきた。
ことりとおかれる、それらが入ったシルバーケースを見つつ、彼女は思った。


昨日のメールは一体なんなんでしょうか?仕事は今日は休みなので映画でも見たかったのに…。
しかも、何でよりによって正午なんでしょうか?そんな疑問が頭をもたげてくる。


確かに午前中とか夕方から集合にすれば映画は一本くらいなら余裕で見れる。
ここ最近仕事が無い日はもっぱら映画を見ている絹旗は脳裏に麦野の顔を思い浮かべてちょっぴりいらっとしたりする。



「ごめん!待たせたって訳よ」


「ごめんね。きぬはた、待った?」


二人の女の子の声が掛かる。
絹旗は手にとって見ようとしていたレストランのランチメニューを一度卓において声の掛かった方を見直す。


「フレンダに滝壺さんですか、平気です、私も今きたばっかですから」


絹旗の声を聞きつつフレンダと滝壺は定位置となった座席に腰を下ろす。
今日の招集は一体なんなんでしょうね?と絹旗は首をかしげつつ二人に聞く。


「なんだろうね。私達もわからないんだよね?フレンダ」


「…う、うん」



フレンダがちょっと緊張している様に見えたのは目の錯覚か?絹旗は自問する。
よく見てみれば、目の下にくまができている。寝れていないのだろうか?


「まぁ、もうすこしで麦野達も来るでしょうし、それまでの辛抱でしょう。それより、フレンダ」


絹旗がフレンダを呼びかけると「な、なに?」とうわずった声を上げる。
明らかにおかしい。体調でも悪いのだろうか。絹旗はそんなフレンダを慮って「大丈夫ですか?体調悪そうに見えますよ?」と声をかける。



「ちょっとね……」


「ちょっと…?何ですか?」と聞くが、あはは…と気まずそうに笑いを浮かべるだけだ。
的をえない会話のやりとりに絹旗は辟易し、窓から見える道路に止まっている車列に視線を向けることにした。

するとファミレスの駐車場に入ろうとしてウインカーを出している黒い日産のセダンが一台見えた。
浜面の買ったセドリックだった。助手席には麦野も座っている。



(パシリなのに遅刻…超許しませんよ、浜面…!しかも麦野と一緒に来るとは…全く…!)



絹旗は正午から少しだけ遅刻してきた浜面を見て、あの車を鉄くずに変えてやろうか思案する。
そんな事つゆ知らず、いや、そうなるのを避けたい。と意思表示しているかの様に浜面の車はウインカーを出しながらちょこちょこ道路を横切って駐車場に入ろうとしている。


浜面は運転席のミラーをあけてレストランの中を見ている。
どうやらアイテムがどこに座っているかどうか見ている様だ。
ファミレスのある車線とは反対方向側からやってきたセドリックはやがて駐車場に入っていった。



数分して浜面と麦野がやってきた。
浜面はすまん!遅れた!と入店して真っ先に絹旗達が座っている座席に向かって行くと謝った。
浜面が入店して一拍間が開いてから麦野が入店する。


「ごめん、ちょっと遅れちゃった」


軽く麦野は謝るとアイテムのメンバーをぐるっと一瞥する。
絹旗は何で浜面と麦野が一緒に来たか、聞き出したかったが、聞いて地雷でも踏んでしまっては…と思い、のど元まで出かかっていた質問をごくりと飲み下す。


そんな絹旗の葛藤等関係なしといった風に麦野はどかっと座席に腰を下ろす。



「浜面、コーラ」


麦野の浜面に対するオーダーが合図だ。
アイテムの女性陣はいつも通り、それぞれ飲みたいものを浜面に注文する。


「わたしはメロンソーダがいいな。はまづら」


「私も滝壺さんと同じやつでお願いします」


「……私は…水で」


麦野以外の三人が注文を済ませる。
浜面は了解、と言いつつ、内心に変な感覚を覚えた。


(ドリンクバーなのに、水でいいのかよ?フレンダ)


そう思った浜面は声をかける。


「おい、フレンダ、水で良いのか?ドリンクバーだぜ?後で注文するから先に飲んでも問題ないのは分かってるだろ?」


「…あ、あぁ。平気よ?また後で浜面に注文するって訳よ!」


「そっか、ならいいんだけど」


浜面はそう言うとドリンクバーにジュースを取りに行く。
絹旗は空腹を抑える事が出来なかったのだろう、近くを通りかかった店員にランチハンバーグセットを注文する。



麦野は珍しくシャケ弁当を持参し忘れたので、デザートのチョコパフェを頼む。


「フレンダも何か食べれば?」


麦野はフレンダに声をかける。
声をかけられた彼女はちらと麦野を見て「あ、良いって訳よ!あんまりお腹減ってないしさ」とぎこちない笑顔で答える。
そう。ならいんだけど、と麦野は一人頷くと浜面が他の客がドリンクバーを持っていくのを待っている。



(いつも、ドリンクバーありがとね、浜面)


他の面々の前では絶対に言えないことを麦野は一人内心につぶやく。
いたわりの目線を向けていた麦野はしかし、次には座席に鎮座しているアイテムの面々を見つめる。


「今日招集かけたのはさ」麦野が話しを切り出すと全員がゆっくりと顔を上げる。
浜面はまだドリンクバーでジュースを注いでいるが、麦野は昨日来たメールの事を言う。



「昨日テレスティーナって奴から連絡が来たのよね。で、そいつがさぁ…とんでも無いことを喋ってたのよねん☆」


絹旗はほうほう、と頷く。滝壺とフレンダは無表情に麦野を見つめる。
うるさいランチの時間帯にもかかわらず、この座席だけはリーダーの話しを聞こうと思い、話しを聞こうとする、静かな空間が展開されていた。



「…どんな連絡だったんですか?超気になります」


「それがね…フレンダ。ははは、あんたの事に関してだったのよ~」


絹旗の質問に麦野はそう言うと、信じられないとでも言うように笑い、フレンダの方を見つめた。
フレンダはそんな笑っている麦野の事を見つめながら「どんな内容だったの?」と抑揚の無い調子で言う。



「あなたが暗部を抜けるんじゃないか、ってだから警戒しろってメールが来たのよねー…」


「わ、私が暗部を抜ける?…意味わからないわ?大体、ここまで墜ちといて今さら抜けるなんて…」


フレンダはここで警戒線を引いた。
“今さら暗部を抜けるなんて…”と言いよどませ、この後麦野が喋るであろう答えを聞き出そうと考えたのだった。
願わくば「いや、私は別に構わないわよ?」と言ってくれるのを待つだけだった。



「そうよねぇ☆フレンダだけ勝手に暗部から抜けたら、残された私達だけでアイテムやれって話になるもんね?テレスティーナとかいう野郎の見当違いよね?」




「結局、アイテムに対する情報戦を挑んできた奴がいるって訳ね!ったく…誰がデマ飛ばしてるんだか…!」



ダメだった。
麦野はフレンダの予想通り、この街の暗部から抜けることをよしとしない人だった。
むしろ、フレンダの学園都市から脱出する事に「冗談じゃないの?」とでも言い出しそうな雰囲気だった。
フレンダは自分が深い海におもりをくくりつけられて沈んでいく気分を味わう。



麦野はフレンダにその事を聞くと満足そうな笑みを浮かべて、パフェが来るのを待っている。
フレンダはそんな麦野を視界に捉えつつ、思う。

何故、テレスティーナが自分の脱出情報を知っているか?
昨日は電話の女に姉とコンビを組んでいる傭兵までつけてくれた。もしかして、自分が姉ではなく、”知り合い”と姉との関係を正直に述べなかった事で嫌疑をもたれたから?


先日テレスティーナは、フレンダ(と滝壺、そして佐天)に協力する姿勢を見せた。
しかしながら、彼女は何故フレンダを抱えている組織『アイテム』の長、麦野にフレンダの裏切りとも取れるメールを送ったのか。


(どうなってるのよ…この状況)



フレンダに取ってわからないことだらけだった。



(結局…私は、テレスティーナに裏切られたって訳!?)


フレンダの中で疑念が猜疑心になり、沸々と怒りに変わっていく。


(護衛はどうなったのよ?涙子にはお姉ちゃんのパートナーの傭兵がついたのかしら?)

なら、まだ学園都市から脱出するチャンスはある。とフレンダはおもう。


「…組織内がぎすぎすしたり、内ゲバなんて真似したくないけど、再確認ね」と麦野が再びフレンダに問い掛ける。
一メートルあるかどうかといったファミレスの卓を隔て、麦野とフレンダが相対する。



二人以外は言葉を発しない。
ドリンクバーから人数分のジュースや水を取ってきた浜面も、普段とは違う雰囲気に呑まれ、日産のロゴが彫られている車のキーを弄る事位しか出来なかった。
再確認?とフレンダは首を傾げる。彼女はへへんと鼻をならすそぶりをする。



「麦野も結局人を信じないねぇー!私がアイテムから抜けるぅ?結局、意味不明って訳よ!」
(ここで本当の事を言ったらダメって訳よ……!)


「信じていいのね?フレンダ」


麦野はその両の眼でフレンダをいすくめる。フレンダは回りの皆にばれない様にゴクリと生唾を飲み込む。
二人以外のアイテム構成員はそんなやりとりを同じく生唾を呑み込みながら展開を見守っていた。


(信じていいって…結局……一番その言葉が辛いって、麦野)


フレンダの心にずきりと響く麦野の言葉。自分は嘘をついたことになる。
結局はテレスティーナが警戒の意を込めて麦野にメールを送った。


フレンダは誰に嘘をついても、騙しても、あらゆる謗りを受けようとも、成し遂げなければいけない目的がある。
それにしても、ちくりと刺すような胸の痛み。アイテムに、自分に嘘をついたことになる。


そんな事は把握していない麦野は学園都市暗部から抜け出さない。その誓いを信じてもいいか、とフレンダにした問い掛けが帰ってくるまで、じぃっと彼女の瞳を見つめた。
時間にしてみればほんの数秒の沈黙だった。沈黙が長引けば長引くほど、フレンダが学園都市から抜け出すのではないか?という嫌疑を与える事になってしまう。
嫌疑を思考する時間を与えまい、と考えフレンダは答えた。








「うん」







麦野の「信じていいのね?フレンダ」という質問に対してフレンダ自身が言った答だった。



フレンダはにこと笑いながら彼女に応える。
表面上の表情とは裏腹に、彼女の心臓は高鳴る。そして早まる鼓動。
嘘をついてこんなにも胸が痛いなんて、と彼女は思った。胸が焼けるように熱い。


「そう…ね、」



麦野はフレンダの屈託の無い笑顔を見てほっと胸をなで下ろす。
「こんなデマ情報に惑わされるなんて、うちらもダメだにゃーん☆」と笑いながら麦野が言うと、場の空気が少しだけ和やかになった気がした。



「大変お待たせしました、ご注文の料理になります」


店員が料理を運んでやってきた。
アイテムのメンバーは少し遅めの昼ご飯にする事にした。
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