佐天「…アイテム?」20


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――佐天の学生寮を監視しているベティとケイト

ケイトの無線が任務の更新を告げる。
全身漆黒の特殊部隊のいかめしい格好をしているこの人物に連絡をよこしたのは木原数多という猟犬部隊の指揮官だった。


げっ!木原さんか!俺なんかしたか?とケイトは自分がミスをしたかどうか考える。
あの人の前で失敗は決して許されない。無慈悲で有名な数多の前で生き残るには正確に、そう。まるで機械のように任務を遂行する事が重要なのだ。


『オイ、ケイト…砂皿緻密が学生寮を見渡せるホテルに移動したっていう情報が入った…猟犬部隊の他のメンバーが発見したそうだぁ。今から座標を送る』


「あ、はい!了解いたしました…!」
(良かった任務の更新か…!ったく!寿命が縮まるぜ…!)


ケイトは数多の指定してきた座標ポイントに向かうために準備を始める。
リューポルド社製のスコープをばらし、アタッシュウェポンケースにレミントンM24を収納していく。
その間にも監視を続けるベティを横目に見つつ、ケイトは指定された座標のホテルに向かっていった。


砂皿が宿泊している部屋の隣に移動しろ、との命令を受領したケイトは雑居ビルの一階に来た猟犬部隊の補給部隊から衣服やその他ツールを貰う。
雑居ビルの一階で特殊部隊の衣装からスーツ姿に着替え、オフィスマンの様な格好になったケイト。


「…準備は出来たか?」と同僚が彼に声をかける。
ケイトはあぁ、と小さく頷くと同僚の運転してきた2010年モデルのシボレーサバ―バンに乗り込み、砂皿緻密が構えているというホテルに向かっていった。



――柵側中学の学生寮付近のホテル

砂皿がステファニーのいるホテルに帰還する。
フレンダの連絡先を手にした彼はホテルのドアをノックする。


「MI」

『水』

「不足」

『ロシュフォート』


決められた言葉でお互いが本人であることの確認を取る。
がちゃりとホテルのドアをあけるとステファニーが今か今かと心待ちにしていた様で、「妹の連絡先は?」と目をきらきらと輝かせながらやってきた。


砂皿はステファニーの問いに答える前に、まぁ落ち着けとなだめ、さっと紙を渡す。


「これが…妹の連絡先?」


「あぁ」


「フレンダ…」


ステファニーはそうつぶやくと大切そうにそのメモ用紙を両手で抱きしめる。
まるでそこに妹のフレンダがいるかのように…。


「砂皿さん、それで…アイテムの連絡係と話しはつけてきたんですか?」


「あぁ…日常の連絡は取ってもらってかまわないが、学園都市から貴様の妹と貴様が脱出しようとしている事やそれにかんする連絡は取らないように言っておいたぞ」


「そうですか、ありがとうございます。ここで妹に私がメールしてしまえば…それも意味ない事になってしまう可能性が有り得ますよね…我慢しなきゃ…!」


ステファニーは妹に一言連絡を取りたい一心で携帯電話を取り出すが、メールを送ることは断念。
いつもは明るいステファニーの表情がこの時ばかりはしょんぼりとする。


「いつになったら…私はフレンダと…妹と会えるんですかね…?」


「アイテムのメンバーで話し合いをすると言っていた。それがまとまって貴様の妹が脱出行に参加した時だ」


しかし、と砂皿はステファニーの弁を遮りつつも話す。



「…その時には恐らく戦いは避けられないだろうな…」


「わかってます。妹を助け出すのに無傷でいようなんて思ってません!」


ステファニーはそう言うとぐっと両手に力を込める。













「私は妹の為なら悪魔にでもなります」



冗談交じりだろうか?
砂皿には表情こそ笑っているものの、その目にはゆらと滾る炎の様な雰囲気を感じ取ったそうだ。
彼もそのオーラに答えるようにあぁ、と力強く頷いた。



砂皿はそう言うと集音マイクをリュックから取り出し、ステファニーに渡す。
ステファニーは首をかしげつつも、集音マイクを壁にあてる。どうやら反応はない。



そう思い彼女は砂皿にぐっと親指をつきたてて砂皿の顔を見る。
視線に気づいた砂皿は首を横に振る。


その表情は曇っている。
どうやら憂慮すべき事態が起こっているようだ。



――アイテムの共同アジトの近隣マンション オスカー

マンションの部屋を急遽手配した猟犬部隊。
オスカーはそこの部屋から大胆にもカーテンをあけながらアイテムを監視していた。


ベランダを出るとその隙間からちらと双眼鏡を覗かせる。
二人の人物が居る事は確かだった。
それはソファに座っている二人の後姿で確認できる。


(あんな奴らを監視して何になるんだ?)


自分みたいな下っ端には分かる訳がない、と思う反面、何故、暗部といえどもあんな小さい少女達を監視しなければいかないのだろうか?と頭にもたげてくる疑問を払拭しきれずに苛立ちを覚える。

今頃、他の奴らは何してるんだ?オスカーは自分と同じように数多に不意に名前を呼ばれた隊員とそれの交代要員達の事を考えながら少女達の私生活を監視する事に務めた。



――佐天の学生寮を監視しているベティ


結局何も起きないのではないか?
そんな不安がベティに去来していた。


(おいおい…さっき護衛の男が一回戻ってきたが…ありゃ何だったんだ?)


ベティはつい先程砂皿が再び戻って来た事を疑問に思いつつ、リューポルド社製のスコープを覗く。
交代要員はまだか?いい加減休みたい…。そんな気が沸いてくる。


監視要員は常にスコープに目を宛がい、監視する訳ではないのだが、いかんせん疲れる。
スコープを覗いていないときでも疲労はたまるものである。


(はぁーあ…ったく話し相手のケイトは砂皿とかいう傭兵野郎の監視に持ってかれちまうし…交代要員は来ないし…)


ベティがため息をついたときだった。
彼の無線がピカピカと光っている。彼の高感度無線機が何かを受信した合図だった。


おもむろにベティがスイッチを入れ、会話に応じる。

「はい、こちらベティ…」



『俺だ…ケイトだ。そっちの様子は?』


「無線で遊ぶなって、ケイト。ばれたら木原さんに殺されるどころじゃ済まないぞ?」


『いや…遊んでねぇ。あいつら、とんでも無いこと考えてやがる…!!』


「とんでも無いこと…?」


オウム返しの要領でベティがケイトの言ったことを聞き返す。
するとケイトは落ち着き払った様子で言い放った。


『妹を捜しているらしいぞ…で、妹の方はその事実に気づいていない。しかし、近い内にその作戦が実行に移される可能性をも示唆していた』


「本当か?」


『あぁ。先程高感度マイクでキャッチした情報だ…!今から姉のデータをそっちに送る!俺が送っても良かったんだが…!』


「わかった。お前がそこでキャッチした情報を俺に送れ…!そのデータを俺が木原さんに送る!」


一気にベティに緊張が走る。
どうやら砂皿のホテルの隣の部屋に移動したケイトは移動そうそうとんでもない重要情報を手にしたのだった。

『じゃあまた連絡する……ぴんぽーん…』


ベティの耳朶に不意に機械音が流れる。
ケイトはホテルの人か?と最後に無線機に吹き込み電源を切った。


恐らくホテルのインターホンが鳴った音だろう――そう考えた刹那、ベティの本能が警鐘を鳴らしていた。
そのドアをあけるな!ケイト!!



――砂皿達が宿泊しているホテルの隣の部屋のドア前

ぴんぽーん…。


砂皿緻密は弾を装填したグロック17を構える。
消音器をまとったそれを右手にちゃかっと構え、左手でインターホンをおす。


先程から隣の部屋に人の気配がする。
それを察した砂皿は怪しいと判断し、状況を伺う事にした。



「はいはーい」と陽気な男の声が聞こえてくる。
そしてその直後にがちゃりとドアが開くとチェーンロックがかかっているようでほんの僅かな所から男が顔を覗かせているのが見えた。


「どうしたんでしょうか?」


「いえ、こちらで何か音が聞こえたので、何かあったのかな、と思いまして」


「はぁ…音でしょうか」


「はい…」


砂皿とケイトが会話をしている最中、もう一つの動きがあった。
在日米軍から拝借した超高感度集音マイク。


念には念をの一環で砂皿緻密が両サイドの部屋にそれぞれ集音マイクを配置していたのが吉と出た。
どうやら敵さんは学園都市の治安維持部隊らしい。しかも隣にいるのは偵察任務の特殊部隊…。



角の部屋を予約できなかったのが悔やまれる所だったが、角を取れば柵側中学の学生寮が見えにくいという欠点があった。
学生寮が見えて護衛の任務を全うしやすい所は?そう考えるとやはり両サイドが空き部屋のこの部屋しかなかった。


しかし、チェックインした時にあいているとホテルマンが言っていたにもかかわらず、隣の部屋から人の声が聞こえてくるのは何故だ?
そしてその会話の内容が、自分たちに関する会話なのは何故だ…!?


学園都市側に自分たちが目論んでいる計画が露見しつつある。
そう考えた砂皿はステファニーと共同して会話が聞こえてくる隣の部屋にお邪魔することにした。


「本当に知らないのか?今ここで音がしたんだぞ?」



「いや、こっちの部屋では聞こえてこなかったが…?」


ケイトは砂皿との会話に応じつつ、自分がドアをあけてしまった軽率さを呪った。
簡単な監視任務だと思っていた。



“油断するなよ”


木原の言葉がケイトの頭の中に反芻してゆっくりと淡い水玉のようにはじけていく想像を浮かべる。
このまま強引にドアをしめるか?いや、待て、さっきからジーンズの後ろに当ててるその右手は何だ?傭兵っ!


怒鳴って、一気にドアを締めようとケイトは一瞬で考える。
そこから一度練り直しだ。そこでちゃんと詳細を木原さんに伝えて…正規部隊で殴り込みをかけて一網打尽だっ!!


(3、2,…)


「だぁーめですよー!ぴしゅ!」


ケイトの背後から間の抜けた女の声が聞こえてくる。
しかしケイトはその声が耳に入ってその言葉の意味を理解するまでの間に意識が遠のいていった。
背後から撃たれたのだった…。


ケイトは永遠の眠りについていった。



――ケイトの監視していた部屋

「学園都市の治安維持部隊か…」


ステファニーが窓から侵入し、男の背後から撃った。
死亡が確認出来たので、身元の確認を行っていく。
どうやら身分を証明する者は何も持ってない。


特殊部隊の隊員の胸ポケットから出ていた彼女か?それとも妻?と一緒に撮った写真を砂皿は忌々しそうに眺め、丁寧に元の位置に戻してやる。


「この通信機で連絡をとっていたそうですねぇー」


学園都市製の無電池無線電話を取り上げる。
この隊員が使っていた電話だろう。


「俺たちがしていた会話の内容は聞かれていたか…?送信記録も見れれば良いんだが…」


砂皿はそう言うと無電池電話をステファニーから受け取る。
送信記録は見る事が出来ないようだった。


しかし、はっきりしたことがある。
それは砂皿達も監視されているという厳然とした事実だった。



――猟犬部隊のオフィス

「おせぇ…何で連絡が取れねぇんだ!!」


木原数多はいらだっていた。
砂皿とかいう傭兵の周囲に不穏な動きが展開されている、とベティから連絡が入り、直接聞いてみようと木原はケイトの無電池電話に連絡をかけているのだが通じない。


(まさか…監視がばれて殺られちまったのか?おいおい、ケイト、そりゃないぜ?)


猟犬部隊は良く訓練された特殊部隊だ。
ベティが調べあげた経歴を読む前に数多もその経歴の輝かしいウォーモンガーっぷりにあきれていたが、まさかこんなに簡単にやられるわけがない、そう思った。


(って待て待て。確かベティの報告だと砂皿って奴は部屋の中で誰かと会話してたんだよな?まさか連れてきた女でもあるめぇし…一体誰だ?)


数多はデスクに猟犬部隊の作業用のデスクにすわりながら推測を巡らしていく。
砂皿という男と通話をしていたのは一体誰なんだ?男なのか、女なのか?


数多はベティとケイトが取っていた交信内容を思い出す。
正確な音声記録として残しておらず、数多はベティに交信する。


「オイ、ベティ」


『はい、木原さんですか』


「さっきのてめぇとケイトの交信を思い出せ。傭兵は誰と会話してたって言ってた?」



受話器越しにベティの頼む、という声が聞こえてくる。
交代要員の男性に関し任務を引き継いだのだろう。



『はっ!“妹を捜しているらしいぞ…”とケイトは申しておりました』


数多はその話しを聞くとにやりと笑う。
妹ねぇ…。わかった、と数多は頷く。


「引き続き関し任務に当たれ、順に交代要員は派遣するからローテーションしろ、オーバー」


『はい!了解しました』


数多はベティの元気の良い声を受話器越しに聞きつつ電話を置いた。
そしてデスクに散らばっているファイルをざっと見ていく。

それを照らし合わせるように机の上においてあるパソコンから情報バンクにアクセスしていく。


(アイテム…アイテム…姉妹がいる奴を洗えばいい…)



数多の広いデスクのパソコンに入力されていく情報。
学園都市の統括理事会とほぼ同等の権限を持っている彼にとっては学園都市にいる或いは関わったことがある全ての人物のデータを照合できる立場にいる。


(麦野沈利…絹旗最愛…滝壺壺后…一人っ子……)


(で、アイテムの連絡係、佐天涙子…こいつは弟がいる…でも、学園都市外か、なら会えるな…何も捜索するほどじゃない)


(フレンダ…カナダのカルガリー出身。どうしてこいつだけ名だけで登録されているんだ?外人だからか?)


外人でも暗部落ちしている奴は何人も居る。
決してそれはおかしいことではないのだが、数多が気になったのはフレンダという人物が名だけ暗部に登録されていると言うことだ。


(オイオイ…学園都市側はこんなに雑な仕事してたのかよ…?)


(今は学園都市のミスなんざどうだっていい…!このフレンダとかいう奴の身を洗わないとな…!)


数多は自分の権限をフルに使って情報データを見ていく。
しかし、いかんせん、名だけで金髪ブロンドの少女の親族を見つけることなど出来る訳がない。


二百数十万という数の学生が居るこの学園都市の各地に住んでいる外国人のデータを一度全部洗うか?と数多は考えるが膨大な作業になるだろう、と判断して辞める。
むしろ学園都市にその姉が住んでいない可能性の方が高い。
姉は外部から救出に来たと見て良いだろう。


(…そうか…砂皿とかいう傭兵の周囲を探ってみれば良い…!)



(そうと決まれば話しがはえぇ…!)


数多はそう考えると砂皿緻密の周囲の関係を調べていく。
調べていくと数多の顔がにやと歪む。


(砂皿緻密…こいつの経歴は確かに化け物だ…市ヶ谷の特殊作戦遂行軍か…で、フランス、スペインの傭兵部隊…でオーストリアのコブラか…すげぇ…!)


(で、この化け物と一緒に行動しているのは…?誰だ…?)


(…ステファニー…ゴージャスパレス…こいつか?)


数多はステファニーの詳細を調べていく。
金髪のブロンドヘア。カナダはカルガリー出身。
かつてはカナダ軍に所属しており、その後学園都市で教鞭を握りつつ警備員としても活躍。


砂皿緻密ほどではないしても彼女の経歴も立派な軍人だ。
二人を猟犬部隊にオファーしてみたいと数多は思った。しかし、それは敵わないだろう。
彼らは既に数多の頭の中では敵として認識されたのだった。


(ステファニー=ゴージャスパレス…コイツがフレンダとかいう奴の姉か?)


確かにフレンダよりも年上だ。
そしてブロンド。何より出身地がカナダのカルガリーという共通点。
かなりの確率で二人が姉妹であると言える。



(これは一応…作戦発動とみて良いのか?それとも…捜索だけという線も有り得る…もう少しだけ様子を見るか?)


数多が思考を巡らしている最中だった。
がちゃりとドアがあく。


「クカカ…こンな夜中に引きこもり宜しく何パソコンいじってンだァ?」


「テメェか。いやな、まだ決まった訳じゃねぇが、学園都市内で何かが起きそうな予感がするんだ」


「反乱か何かか?」


「あくまで俺の予想だが…逃亡だなこりゃ」


「へェ…。誰が逃亡するんだ?」


「アイテム…テメェも名前くらいは知ってるだろ?」


「あぁ…まだ暗部に墜ちてからまだ日は浅ェが名前くらいなら」


「その中の構成員の内の一人が姉の救出の元、学園都市の暗部から抜ける可能性がある」



一方通行。
最強の名を欲しいがままにしている男。


得体の知れない男に敗北を喫し、学園都市の絶対能力進化計画は凍結した者の、依然一方通行の操るベクトル変換能力に魅せられる者は多い。
一方通行は絶対能力進化計画が自分の敗北で頓挫した事で簡単に言えば暇になったのだ。


かといって統括理事会が彼を学園都市の闇から下野させることはなかった。
彼に新しく与えられた任務はグループという組織に加われ、という命令。


命令を出してきた組織はうざったいから取り敢えず全員ビルの屋上のタワーにブラド公宜しく串刺しにしてやったが。
それすらも不問にして統括理事会は学園都市の治安を守るために暗部に彼の参入を求めたのだった。


ツリーダイアグラムの破片…即ちレムナントを回収使用とした女をそうそうと片付け、暗部に加わらせた。
にゃーにゃーうるさい頭の切れる男と魔術師と自称してはばからない男をくわえて誕生した組織『グループ』


「へぇ…木原クンの猟犬部隊が惨敗したら、俺もアイテムをぶっつぶすのに参加して良いかなァ?」


「抜かせ。猟犬部隊は警備員の能力者対策方法を熟知している意味でも特殊な部隊なんだ。貴様達に出撃命令が下る前にこちらで鎮圧する」



「はっはは…いいねェ…いいねェ…そしたら余ったアイテムの女ども…確かあそこは全員女だと?皆殺しは辞めな」


「あ?何でだよ?裏切り者は許さないに決まってるだろぉが」


「…いや、最近女とヤってねェ…クカカ…ご無沙汰なんだわ。しかも、最後にヤったのがよォ…」


「ぷっひゃひゃひゃ…だっせぇぜぇ?一方通行ぁ?あのクローンが初めてで、最後もあのクローンってかぁ?あーひゃっひゃっひゃ…ったく…婦女子暴行はお前の専売特許だからなぁ…」


くだらない話しに二人は興じる。
一方通行と他に三人がいるという『グループ』。
彼らの出撃命令はいつくだるのだろうか?


「でよォ、実際には俺等グループが招集かけられるのはどういったタイミングなンだ?」


「猟犬部隊が壊滅してもお前等には出動命令はくだらないだろうな…もし仮に猟犬部隊が潰されたとしたら…」


数多はその極悪な人相をさらにぐにゃりと歪め、笑いながら言う。


「俺ともう一つの部隊が動く」



「はっ!たいそうなこった。研究者が戦うとか、見物だねェ…!」


「相変わらず口のへらねぇ野郎だ」


「ハッ!知ったことかよ!」


「ほら、そろそろ行け、俺も疲れてんだ。猟犬部隊の一人と連絡が取れねぇんだ」


一方通行は数多からその話を聞くとご愁傷様ァと全く悲しそうな表情を浮かべずにオフィスから出て行った。



――MAR司令部のビル

テレスティーナは兄である数多からフレンダとその身辺に起こりうるであろう事態の推測をしていた。

(うーん…本当にフレンダが学園都市から脱出しようとしているっていう証拠がないんだよね)


(猟犬部隊の隊員から連絡が来ないって話しだけど…恐らく殺られたと見ていいでしょーね)


連絡が来ない。
それだけで事態は進んでいるのだと理解することが出来る。


定期的に連絡をよこせと厳命しているにも関わらずここであえて抗命する理由がない。
しかも、最後の連絡を聞く限りだと、任務続行を唱えていた…とすればその後に連絡が入ってこないのはおかしい。


(こっちから牽制球を打ってみるか?兄は飽くまで関し任務…いや、それとも一度上に掛け合ってみるか?)


テレスティーナは統括理事会にこの不穏な事態の事を告げようかどうか逡巡する。
統括理事会にアイテムの事を報告しても、結局はアイテムの管理をしっかりしていないのはだれだ、と限りなく責任の所在を曖昧にする日本的責任転嫁、または責任をないがしろにするシステムが発動する事は否めなかった。


統括理事会の頂点に君臨するアレイスターに言って支持を仰ぐという手もあるにはあるが、いかんせん得体の知れない輩だ。
テレスティーナは治安維持に関与している必要最低限の統括理事会の面々にだけその事を伝えようと思い、ホットラインを取り出した。


テレスティーナは軍事や学園都市の防備に興味を持っている連中にだけホットラインをつなぎ、現況を説明した。
数人の統括理事会の男達はテレスティーナに任せると言う。


(トカゲの尻尾かい…私は)



数十分かけて現況を説明し、しばらくの間に帰ってきた言葉は「君の思う通りにやってくれ」の一言だった。
何でもやっていいと解釈してしまいたくなる反面、その責任はお前一人だけが取れ、と言われたようなものだった。


しかし、テレスティーナには愛国心ならぬ、愛都心というものがあった。
自分を木原一族の列にくわえた貰った事に対する感謝。それは常に彼女の心にあった。


自分を育ててくれた学園都市の治安が乱れるのを未然に防ぎたいと彼女は強く思う。
テレスティーナは自分の内面にガラにも無くそんな気持ちがあることに苦笑しつつも、即座に行動に打って出た。


(まずは…アイテムのリーダーに連絡…っと)


(…情報バンクに接続…麦野沈利の連絡先…これね…)



テレスティーナはパソコンに文章を打ち込んでいく。
その作業は程なくして終わり、彼女は椅子にぐっとよっかかり背筋を伸ばす。











To:麦野沈利

Sub:無題

フレンダがアイテムを抜けようと画策している模様。
警戒されたし。


by MAR指揮官 テレスティーナ=木原=ライフライン
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