佐天「…アイテム?」19


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あらすじ

佐天がフレンダと滝壺と一緒にテレスティーナの所属しているMARに向かう。
そこでステファニーと共に行動している傭兵砂皿緻密の情報をキャッチする。



その砂皿が佐天の護衛役としてテレスティーナの連絡でやってきた。
砂皿はフレンダに伝言して欲しいと佐天に告げる。



一方で木原数多とテレスティーナはその行動に不審を感じつつ、徐々に部隊を集め始めていた。






――ランクルで待機するステファニー


助手席でFEN(在日米軍放送)を垂れ流しにして聞いているステファニー。
しかし、視神経は飽くまで柵川中学学生寮の周辺に集中している。



ステファニーの乗っているランクルの後方にある雑居ビル。
彼女はそのビルをちらと見る。
逆光でよく見えないが、雑居ビルの屋上に僅かに何か光って見えた。



(ん?)


おかしい、とステファニーの戦場で培った勘が黄ランプを照らしている。
彼女はその信号に素直に従うことにした。



素早くランクルの運転席に移動して予備のキーをポケットから取り出す。
ドアの横に着いているサイドミラーのスイッチに手をあてて角度を調整してみる。



サイドミラーが適角に移動するのを確認したステファニーは再び助手席に移動する。
FENから流れるKanye Westの「Slow Jamz」のトラックに決して揺られることはなく、冷静に雑居ビルに居るであろう何かの正体を精査しようとする。


(にゃはーん。監視されちゃってますねぇ~)


悠長なことを一人内心につぶやきながらも、彼女の採った行動は迅速だった。
まずは砂皿に連絡。携帯電話で砂皿の番号にワン切りする。



そしてもう一度ミラー越しに監視している人数の正体を見極めようとする。


(一人…いや、二人?獲物はレミントン…?アキュレシーかしら…)


ともあれ、中距離から遠距離にかけての狙撃銃だと吟味する。
そして次に、得物は一つだけ?と推測する。



一人はスコープに片目を押し当ててアイテムの連絡係の部屋を監視している。
恐らく砂皿とアイテムの連絡係が接触している所がキャッチされているだろう。



妹を救出しようとする計画がばれた?と思い、舌打ちをする。
射殺するか?と一瞬考えたが、待機。


情報はばれていない。
砂皿さんが裏切り者でも無い限り平気です、と自分に言い聞かせる。



(と言うことは…何かしらの思惑が…?)



自分達以外の何かしらの勢力が動く気配をざわとステファニーは感じた。
しかし、その正体が何者か定かではない。


しかし、はっきりしている事がある。
アイテムないしはアイテムの連絡係は監視されている。



途端、ステファニーの内面にめらと燃え上がる炎。
妹も監視されている?



そう考えるといてもたっても居られなくなり、ステファニーは苛立ちを隠せない様子で切歯扼腕する。


彼女はガムを食べて風船を作り、イライラをごまかすのだった。



「は?そのステファニーって言う人は、フレンダちゃんの知り合いじゃないんですか?」


「姉妹だ。君はフレンダから知り合いと教えられていたそうだったが、ステファニーという人物はフレンダの姉だ」


佐天はそう言われると驚いて、仕事用の携帯電話を取り出し、アイテムのプロフィールを確認していく。
名前はフレンダとだけ。佐天は確か、ステファニー…なんだっけ?と長ったらしい名前を思い出してみよう思い、ステファニーのデータを引き出す。


(ステファニー=ゴージャスパレス…変な名前…じゃ、フレンダも…?)


データにはフレンダとしか名前が記載されていない。


佐天はアイテムのメンバーにフレンダと呼ばれている彼女の本名に今まで何ら興味を示してこなかった。
しかし、今になってみれば、名だけで、姓がない人なんて、存在しない、と当たり前の事を思い出す。


「フレンダ=ゴージャスパレス…フレンダの本名だ」


「フレンダちゃんの本名が…それ」


砂皿はそうだ、と力強く頷く。


「そしたら…フレンダ…は姉に会おうと…?」


「そうなるな…」


「で、砂皿さんがフレンダと会いに来たって事ですか?」


砂皿はあぁ、と再び頷くが、佐天はその表情をみる前に下のフローリングに目を向けていた。
どうするつもりなの?それが彼女の最初に頭にもたげた疑問だった。


(フレンダは姉と会ってどうするつもりなの…?知り合いに会うってだけなら…)


知り合いに会うだけなら学園都市のどこかで落ち合える。
しかし、フレンダは昨日の夕方からついさっきまで知り合いを探すと称し、MARのテレスティーナの所まで足を運ぶ程の行動力を見せた。


学園都市で会うだけならばここまでのことはするだろうか?いや、しないだろう。


「君には言っておくが、姉は妹を救出する気だ。君にも協力して貰いたい」


佐天が頭をひねって今後、フレンダがどういった行動をとるか予想している最中に、彼女の体に衝撃が突き抜けていく。
救出?と自分の言った言葉の意味を頭で反芻し、理解しようとする。



まさか、学園都市から脱出するつもりなのだろうか?
姉と妹、二人とも学園都市で仲良く暮らすつもりなのだろうか?


種々の疑問が頭に浮かび上がって来て、それらは氷解する事なく、佐天の脳にストックされていく。



「じゃあ…フレンダとその…お姉さんが遭遇した場合…一体どうするつもりなんでしょうか…?」


「救出してから…以後は…さぁな…だが、学園都市にいる事は無い」


「…そうですか……私はどうすればいいんでしょうか?」


「だから、協力して頂きたい、と言ったはずだが」


「協力…何をすれば良いのかわかりません」


「学園都市は暗部に居るフレンダがここから脱出する事を決して許す筈がない」


暗部で仕事をしている人物は即ち学園都市の見せたくない面を外部の世界に伝わってしまう可能性があった。
技術で他国に大差をつけて先頭を行くこの地の防諜に実は子供達を使ってしました、なんて事が漏洩してしまった場合、他の諸国からの信頼は失墜する事は火を見るよりも明らかだった。



アフリカや中東の諸国と同様に子供兵がいるなんて事が知れたらそれこそ学園都市とその自治を認めている日本の信用に関わる重大問題だ。
佐天は子供ながら、こんな事が表に出たらまずい、と思いつつも自分はどうすればいいのだろうか、とただ悩む事しか出来なかった。


「…フレンダがもし学園都市から出るといった場合、砂皿さんはその脱出を手助けする…って事ですか?」


「あぁ」


「その…お姉さんは今、どこに?」


「下のランクルの中に居る」


「……そうなんですか」


佐天は自分の知らない所でフレンダの脱出計画が進行しているんだな、と気づく。
しかし、と思う。フレンダの連絡先を知らないから、砂皿はここにきたのではないか?


『貴女(あなた)の知り合い…いや、組織の構成員であるフレンダに連絡を取って欲しい』


砂皿は確かにそう言っていた。
しかし、佐天はフレンダの連絡先を知らないのだ。



「じゃ、私はフレンダの連絡先を聞いて、あなたに伝えれば良いんですよね……」


「そういう事になる」



その後は?
フレンダはどうなる?

佐天はその後の事を想像した。アイテムは一体どうなるのだ?まさかそのままフレンダが抜けて何もない、という訳にはいかないだろう。
全く予想が付かない今後の展開に、彼女は息を?む。



と、その時だった。


プルルルルルル……


砂皿の携帯の着信音が佐天の狭い学生寮の部屋に木霊する。
佐天はわずかながら肩をふるわせて着信音の音源の方を見つめる。



しかし、砂皿はその携帯を取り出して通話することはなかった。
携帯はそのワンコールの後、切れてしまった。



きょとんとしている佐天を横目に見つつ、彼はステファニーからか、と考えつつ、ポケットに入っている電話を取り出す。
何か見つけたのだろうか?と砂皿はステファニーから掛かってきたワンコールの意味を考える。



(ひとまず…この場から退くか。ホテルもここの近くが良いだろう…)



まずは調布近辺にあるホテルから、護衛がしやすい様に彼女の家から程なく近い所に居を構える必要がある。
そう考えた砂皿は自分の連絡先が書いてある紙を佐天に渡す。



「フレンダの連絡先、頼んだぞ」と砂皿が言い、部屋を出ようとすると、不意に佐天から「待って下さい」と声が掛かった。
「ん?」と砂皿が後ろを振り向くと、なにやら不安げな表情の佐天が視界に映った。



「アイテムは…どうなるんでしょうか?」


「……」


暫く沈黙が彼女達の居る空間を支配する。



「……アイテムのメンバーに伝えるかどうかは君が決めろ」
(いきなり押しかけて自分で決めろ、っていうのもひどいか…?)


ひどいと思いつつも砂皿としてはフレンダを助け出すだけ。
そしてそれを阻止する者を排撃するだけ。
後の事は正直、知った事ではなかった。


「…そうですか…では、フレンダの姉が助けに来たって事はフレンダに伝えときます…その時に、今後どうするか、本人とアイテムの他のメンバーに話してみます」


「そうしてくれ」


砂皿はそう言うと、ブーツを履き、部屋を出て行った。
自分の身があの男に護衛されていると思う安堵の気持ちの反面、いつしか学園都市から居なくなる護衛。
そしてその時には恐らく居ないであろう、フレンダ。


(アイテムは…どうなるの?)


様々な思いが一緒くたになる。
しかし、佐天は携帯電話を起動して麦野に連絡を取ることにした。




To:麦野沈利

Sub:久しぶり~

よっ☆

いきなりで悪いんだけど、フレンダの連絡先分かる?><
知ってたら教えてくれ~




タブレット型携帯電話をピコピコと押して
麦野に連絡する。あとは返事が来るのを待つだけだった。



――麦野沈利の住んでいる高級マンション


「おい、麦野、携帯鳴ってるぞ?」


「取ってぇー、はーまづらぁ」


はいよ、と浜面は答えながらマホガニーの机の上で鳴動している携帯を手に取る。
麦野は浜面から携帯電話を受け取るとメールフォルダを開いてみることに。


(また電話の女から?ってかあの女、私より年下って分かってるくせにタメ口かよ…ったく…)


(で、肝心の内容っと…はいはい、ってフレンダの連絡先?)


フレンダ単独に寄せられる仕事の案件なのか?と麦野は一瞬予想を巡らすが、それはないと否定する。
今まで絹旗にしろ、フレンダにしろ、単独の仕事の場合でも必ず麦野を通して伝達されて行われていた仕事の案件。


(さては電話の女…何かあったか?)


脳裏にちらと思い浮かぶ電話の女の表情。



つい数ヶ月前までランドセルを背負っていた小便臭いガキに何か企む狡知は蓄えられていないだろう、そう考えた麦野は電話帳からフレンダの連絡先をドラッグする。
そしてコピーすると電話の女に送信するメールに貼り付ける。これで完了だ。


(よし、これで送信っと…)


メールが送られた事を指し示す送信完了の文字が浮かび上がると画面は自動的に切り替わり、待ち受け画面に。
その画面には浜面と遊んだ時のプリクラ画像が貼り付けられていた。
最近のゲームセンターではプリクラを赤外線で携帯に移送する事が出来るのだ。


「ね、浜面?」


「何だ?」


「電話の女がフレンダの連絡先を聞いてきたんだけど、どういう事かしら?」


「いんや、よくわからねぇな…?仕事の案件?」


それはないわ、と麦野は言い返す。
ま、いっかと頭の片隅に追いやると麦野は浜面に抱きつく。


ここ数日、麦野と半同棲生活を送っている浜面はこの甘えてくる麦野が大好きだった。
普段裂帛の気合いで任務を遂行し、鬼の様な強さを誇る麦野。
そんな彼女が唯一女の子の様に振る舞える場所が浜面という男にはあった。



――柵川中学学生寮

「あ、連絡来た」

砂皿は一度装備を整えて近くのホテルで警護すると言ってきたので佐天は連絡を待つ。
携帯のメール受信フォルダを見ると麦野からだった。


フレンダの連絡先が記載されているメールだ。
これで砂皿緻密と行動を共にしているフレンダと連絡が取れる。


(案外にチョロかったわね…)


これでフレンダと知り合いというステファニーが会えるわけだ。
昨日から続く人捜しの様な任務は終了したと言うことだ。


けれど、と佐天はあごに手をやり、考える。



フレンダは姉にあってどうするんだろう…?そして私達は?


――佐天の学生寮を監視しているベティとケイト


「さっきの男が砂皿緻密か…」


「そう言うことになるな」

二人の足下にlころがるカップラーメンの容器。
ケイトは監視をベティに引き継ぐと情報バンクにアクセス出来る端末をノートパソコンに接続し、データを走査する。


(砂皿緻密…どんな男なんだ?)


数多の妹でMARの指揮官であるテレスティーナの厚意でアイテムの連絡係の護衛を仰せ付かった砂皿という男に興味が湧くのは自然な流れだった。
レミントンのスコープをぱたりと閉じて、最新の暗視ゴーグルを使って監視するものの、何も変化はない。
暗視装置から浮かび上がってくる彼女の生活はたまに携帯電話をいじったりするだけで取り立てて普通の暮らしだった。


夏の長い陽が暮れ始めている。
砂皿緻密が一度連絡係の暮らしている寮からどこかへ向けて帰ってから既に二時間ほどが経過していた。


二人は再開発で慌ただしい立川のビル群を見つめる。
無機質な建築物がもの言わぬプレッシャーを与えているようにケイトには映った。



と、そこでダウンロード中のデータが更新された。
ピピピと機械音が雑居ビルに小さく響くと、ケイトがモニタに映し出された文字を目で追っていく。
音を聞いたベティもついついモニタに目をやってしまう。


「おい、どうなんだ?」



一瞬モニタを見て再び監視体勢に移行するベティはケイトがなんてやつだ…と驚く声を聞き逃さなかった。
ケイトは「今から…砂皿緻密の経歴を読みあげる…」と少し震える声で言う。
ベティは暗視装置でアイテムの連絡係である佐天を監視しつつ「な、なぁにビビってんだよ?」と少しだけ震える声で茶化す。


「砂皿緻密…高校卒業後、自衛隊に入隊、五年間市ヶ谷の特殊作戦群に所属、後、フランスとスペインの傭兵部隊に所属」


「以後、民間軍事会社に就職した後、オーストリアのコブラ特殊部隊で教官後、フリーに…っておい、コイツ一級の暗殺者じゃないか?」


ケイトはパソコンに映し出されている目つきの悪い男の顔を見つめながら端的に感想を述べていく。
こんな奴があの連絡係の護衛なのかよ、と一瞬弱気になったケイトはちらと前を向く。


ベティもケイトが読み上げた砂皿の経歴に驚いている様で暗視装置に佐天の宅を見つめがなら「あぁ」と小さい声で首肯するのをケイトは見逃さなかった。



「油断は禁物だな…」


「そうだな…俺にもそいつの経歴しっかり見せてくれ」


暗視装置から一度目を離し、ベティはケイトが調べたデータに目を通す。
ケイトはベティがごくりと生唾を呑み込むのを見逃さなかった。


「こいつ…相当な手練れだ…」


「あぁ…」


二人は先程までスコープに映っていたいかめしい目つきの傭兵を思い出し、震えつつもアイテムの連絡係の寮の監視行動を続ける。



――学生寮の近隣にあるホテル

砂皿とステファニーは調布近辺のホテルから移動し、立川近辺のホテルに拠点を移動した。
と言うのも、砂皿に入った依頼の為だ。


「さっきのワンコールは一体どうしたんだ?」


「その事なんですけど…私達かアイテムのどちらかが、監視されている可能性がありますね。或いはその私達とアイテム、どちらも…」



「成る程…アイテムの連絡係の彼女の家も…か?」


「えぇ。恐らく…。しかも狙撃銃を携帯していました…にしても、アイテムの連絡係の護衛の依頼とか、ちょっとおかしいですね」


「おかしいとは?」


「だって、変じゃないですか?私達が私の妹を助け出そうとしているのに合わせて、学園都市側が牽制球を放ってきたとしか思えないですよ?」


「…なんとも言えないな…ただ、電子機器による通信は辞めた方が良いかもしれないな」


「傍受される危険…ですか?」


「あぁ。学園都市の技術は数年から数十年進んでいる。その事は貴様が一番知っているはずだぞ?ステファニー」


ステファニーはえぇ、と頷きながら答える。



彼女は砂皿が机に置いた佐天の連絡先が記されているメモ用紙を見つめる。


(あの紙に書いてある連絡先からフレンダの連絡先を聞いて、すぐにでも…連絡を取れれば…!)



目の前に妹と連絡を取ることが出来るかもしれない連絡先が記されている。
彼女達は知らないが、事実、佐天はアイテムのリーダー、麦野からフレンダの連絡先を教えてもらい、ステファニーに送信しようとしていた。




ステファニーは妹と連絡を取れない事に歯がみした。
しかし、もし学園都市側が何らかの手段で警戒行動を取っていた場合、うかつに連絡を取ることは出来なかった。



学園都市のなんらかの技術によって砂皿と佐天の行った行動が傍受されるとも限らない。
そう思った砂皿はNECの最新式の暗視装置でもう一度学生寮の付近を監視する。
ステファニーが先程車内でワン切りコールをよこしてきた事で佐天が監視されている事を知った砂皿。



現在も雑居ビルの屋上でひそひそと隠れながら監視している工作員とおぼしき連中がちょこんと見える。
何が始まるんだ?砂皿は推測する。


「もう一度アイテムの連絡係と話しをしてくる」


「…既に私達の会話や通信記録が傍受されてる…と?」


「いや、その線は薄いと思う。まだ、我々は何もしていないしな…ただ、念には念をだ…」


「そうですね」


砂皿は立ち尽くしているステファニーの横を通り過ぎ、ガチャリとドアをあける。
眼下に小さく見える柵川中学の学生寮へ砂皿は再び向かっていった。



――柵川中学学生寮

「さーって、フレンダの連絡先も分かった事だし、さっさと連絡しちゃいますか」


不意に掛かってきたマコチンとの電話も終わり、佐天は仕事用の携帯を取り出し、先程貰った砂皿の連絡先を打ち込んでいく。
そしてそこにフレンダの連絡先を貼り付けして完了。


と、その時だった。
ドアのノック音が鳴る。俺だ、と佐天の護衛に就任してまだ数時間の男、砂皿がそこにいた。


「あれ?また来たんですか?一体どうしたんですか?」


「…もうフレンダの連絡先を俺の携帯に送ったか?」


佐天はいや、まだです、と答える。
砂皿は良かった、と一言つぶやく。


「何か問題でもあったんですか?」


「既に誰かに監視されてる可能性がある」


「か、監視ですかぁ?」


「あぁ」


ホントですか?と目をぱちくりしている佐天をよそに砂皿は暗視装置から出力した粗い目の画像を見せる。



佐天はその画像を見せられて。どうすれば…?と何をしたらいいか分からない、といった風に首をかしげる。


「取り敢えず、そのまま生活してくれれば問題はない…ただ、フレンダと連絡を取るのは辞めた方が良い。あと俺にもだ」


「何でですか?」


「普段の友人との交信は良いとしても、イレギュラーな内容の交信は慎んだ方が良い。監視されている危険があるかもしれない」


佐天はそんな…と驚きを露わにする。
何故、監視される事になったのだろうか?と疑問が頭にもたげてくる。


「恐らく…君が今日フレンダ達と一緒にテレスティーナの所に私の所にいったからだろうな…」


「何でそれで監視をされる事になるんですか?」


「君たちアイテムが何か企てている、と考えたんだろう…」


「では…フレンダが学園都市から抜け出すっていう計画には気づかないまでも、何かしようと考え、一応監視を出したって事ですか?」


「あぁ。そう見るのが大筋だろう」



砂皿は佐天の暮らしている学生寮が展望できる付近のホテルに拠点を構えた。



カーテンの隙間から暗視装置をちらとだけ覗かせ、佐天に危険が及ばないか監視していた。


その時に小さく見えた監視の兵隊の画像を佐天はちらと思い浮かべる。





(何よ…事態はそんなに深刻って事…?)



佐天は自分の身に危険が及んでいるのでは?と思う。
しかし、自分ではどうしようもないし、護衛の男の顔をみて佐天は少しだけ安心した。


佐天は砂皿に入手したフレンダの連絡先を渡す。
彼はそれを受け取るとすっくと立ち上がり、学生寮を出て行った。



――アイテム共同アジト


「涙子、護衛の人と接触したのかな?」


「どうだろうね?」


フレンダは心配そうな表情を滝壺に向けて浮かべる。
姉と二人組んでいるという傭兵。
その傭兵とコンタクトを取れれば一緒に行動している姉と連絡を取ることが出来るかもしれない。


そんな一縷の望みにかけたフレンダはアジトに一緒にいる滝壺の肩に寄っかかる。
ソファに座っている二人。
後ろから見ると金髪のブロンドが黒髪にもたれかかる様に見える。

滝壺は肩に寄っかかってきたフレンダに動揺することなく、ちらと少しだけ見つめる。


「ねぇ、フレンダ?」


聞いておきたいことが彼女にはあった。
それは今後のアイテムという組織の存続も掛かっている非所に重要な議題だ。


なぁに?と甘えるような声でフレンダは滝壺に答える。


「お姉ちゃんが見つかったら……フレンダはどうするの?」



「……結局、問題はそこよね…」


「このまま、学園都市にいるつもりは…」


「ないわよ…うん……」


姉が見つかって、それでもアイテムで命をすり減らしてこの学園都市に殉じる…最悪だ。
姉を見つけるため、少しでも何か手がかりがないかと思って入った暗部組織。


姉が見つかったからには暗部を抜け、学園都市から去り、さっさとどこかに住んで、普通に学校に通って…といきたいところだ。
しかし、おいそれと学園都市からでられるものか。


学園都市から逃げる…。
高校に行かず、暗部に身をやつしているフレンダが学園都市から出ようとした時、「はい、いいですよ」という訳がない。


「…じゃあ、アイテムから抜けるってこと…?」


「うん…そうなるかな」


「麦野達にも言うの?」


「……言った方が良いかな?」


「……わからない…むぎのの性格だと…」


滝壺は思う。
アイテムのリーダー麦野にフレンダがアイテムを抜けると言ったら…彼女は恐らく烈火のごとく怒るであろう。
怒らないにしても「いいわよ?」という訳がない。麦野はそういう女だ。



アイテムという身内の中から出る裏切り者、彼女は、フレンダがいかなる理由を告げようと、そう判断し、フレンダの学園都市の脱出行を認めないだろう。


(裏切りは許さない…私がアイテムを辞めるって事が、もしばれたら…?)


フレンダは麦野の怒りに狂った姿を想像する。
最悪、死も考えなければなるまい…普段は服や美容の話しに興味が有り、博学の彼女だったが、ひとたび戦闘になると目的を達成するまで執念深く、それを遂行しようとする。
そして、任務に失敗や不備があればそれを補い、補完しようとし、他の目標を見いだす。


そんな彼女がフレンダの脱出行を納得するか…?
話してみなければわからない…一体どうすればいいのか。
フレンダは思考を巡らすが、どうすればいいか検討も付かない。


「話してみようよ…?きちんと順序だてて話せば…ね?」


「……麦野も分かってくれるかな?」


滝壺の双眸に映るフレンダは日中、姉と接触できるきっかけを掴んだ時の嬉しそうな表情とは打って変わって、今にも泣き出しそうな表情だった。
そんな表情を目の前で見せられた滝壺は、ここ最近しているように、ぐっと自分の方に泣き出しそうなブロンドの少女を引き寄せる。



「…滝壺?」


「まだなにもしてないよフレンダ。考えすぎは止そうよ」


「うん…そうだね…、次の仕事で全員が集まったときにちゃんと言ってみる…」


「言うタイミングはフレンダが決めたほうが良いよ。私はそれを支持するから」


「支持してくれるのは……それだけ?」


「…ううん。フレンダが決めた事は支持する…暗部から抜けるって話しも、ね?」


フレンダは滝壺の肩に体を預け、目をつぶる。
彼女の頭を滝壺の小さい手がゆっくりとなでていく。その動作がたまらなく心地よかった。
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