佐天「…アイテム?」9


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今までのあらすじ

佐天は学園都市の防諜部隊、アイテムに連絡する電話の女になる。

夏休みのさなか、学園都市内のいくつもの施設がサイバーテロの被害を受けていることが判明する。
そのサイバーテロを防ぐためにアイテムに出動命令が下る。

テロの首謀者はなんと佐天の友人の御坂美琴だった。
彼女はアイテムの構成員フレンダを辛くも撃破したが…?






――フレンダと美琴のいる施設

「ちょ…マジ?」


フレンダの上ずった声が聞こえる。
美琴に隙を突かれた彼女は今、危機一髪の状況だった。

幻想虎鉄(イマジンソード)がフレンダに一閃して振り落とされようとしている。
美琴は口元を歪め「さようなら♪」と言いながら刀を振り下ろしたが、その切っ先がフレンダを捉えることはなかった。


ズアアアアアア!

とてつもない光の奔流が美琴の至近を通過していく。その光の流れに幻想虎鉄が巻き込まれていく。
そして美琴が気付いた時にはすでに幻想虎鉄の柄から上の部分が消滅していた。


「ずいぶん頑張ったじゃない、フレンダ」


「む…麦野?それに滝壺も!?」


フレンダは突如壁が溶けてなくなった場所から出てくる麦野と滝壺を見る。
麦野は美琴を見据え、滝壺はフレンダの方に手をやりいたわってやる。

美琴は柄が無くなった幻想虎鉄の柄をハーフパンツのポケットに入れて後ろに下がる。
幻想虎鉄が消滅させられたのはあの二人の能力によるものだろう、と美琴は推測した。

「チ…新手か…」
(やっぱり施設を守ってたのはあの白人一人だけじゃないってことね、どいつもこいつも私より弱い癖に…)


邪魔しやがって…!と眉間にしわを寄せて苛立ちをあらわにする美琴は次の瞬間に施設の給水タンクを能力を使ってブン!と投擲する。



「うらァ!」


美琴の掛け声と同時に投擲されたタンクは麦野にめがけて一直線に進んでいくがそれが彼女に触れることはなかった。
投擲したタンクが麦野の前でかき消えたから。


(投げたタンクを消した?)


音もなくただチリの様に燃えてなくなったタンク。

「ったく…早漏が…少し待てって言ってるのがわからないのかにゃー?」

麦野は甘ったるい声で美琴の方を向きながら告げると、肩のあたりから一気に原子崩しを顕現させた。


フィー…と風を切る様な音が不気味に美琴の耳朶を打つ。
直後、白熱したビームが美琴に遅いかかり、彼女はそれを間一髪でよける。

綺麗にまとめた美琴の短髪が少しだけ焼けて髪が焼けたいやなにおいが周囲に漂う。


「こいつ…!」
(かなりの高位能力者…?誰…?)


美琴は学園都市第三位のレベル5だが、他のレベル5はあまり知らない。
知っているとしたら同じ常盤台で精神感応系では最高峰の実力を誇る心理掌握(メンタルアウト)とあの白い悪魔くらいだった。


(限りなくレベル5に近いレベル4…或いは…レベル5…?)


美琴は後退し、壁に磁場を形成しながら張り付き、目の前にいる能力者の対策を考える。



「ふふふ…まるでクモみたいね…」

「…ッ!!」
(ダメだ…今は我慢よ…取りあえず…体力を回復しなきゃ…)


麦野のせせら笑う声が美琴の耳に届く。
クモ、その一言に美琴は反応しそうになるが、今はフレンダとの戦いで疲れた自分の体力回復を目指すのが先決だ、と判断を下す。
相手の能力を把握しなければ対策は打ちようがない。

美琴が壁に張り付き、麦野達の様子をうかがっているさなか、麦野は一瞬滝壺を見てすぐ美琴に備えて、前を向く。

「滝壺…一応待機…フレンダの調子は?」


「目立った怪我はないよ…ただ相当疲れてる。大健闘だよ、フレンダ」


「結局…止めることは出来なかったって訳よ…はぁ…はぁ」


フレンダは申し訳なさそうに下を向きながら二人にぺこりと頭を下げる。
美琴との戦いは悔しいがフレンダの負けだった。
しかし、美琴を疲弊させるという、勲章ものの戦功をあげた。


「良いわ、フレンダ、そのまま下がってなさい」


フレンダは最初はその声に聞こえないふりをする。まだ戦おうと思ったのだろう。
しかし、「フレンダ」と語気を強くする麦野の前でははばかられ、おとなしく「わかった」と承服した。


フレンダが後ろにとぼとぼと下がっていくと美琴を見つめていた麦野が口を開く。


「あんた、常盤台の超電磁砲?」

「…そうだけど…?」

「何であんたみたいな平和な世界に居る女がこの世界に首突っ込んでくるの?」

「あんたにいう義理が私にあるのかしら?」


美琴の返答に麦野は苦笑する。
確かにそうだ、美琴が麦野の質問に答える義理は全く持ってない。
しかし、麦野にとってかんに障る一言だった事は確かだった。


「生意気なガキ…」


麦野は腹から憎悪と共に一言絞り出すと人差し指を美琴に向ける。
同時、その先からビームが打ち出される。それをよけると美琴は一度回復のために目をくらませる。


(三人対一人じゃ分が悪すぎるわ…体力もけっこうやばいかもね…まずは先に施設の核の部分を破壊しなきゃ…)


美琴はこの場から撤退すると同時に施設の核であるコンピューター室を破壊しようと目論む。
その為の電力も残しておかなければならない。無駄に戦闘で使ってしまえば、再び実験が開始され、暴虐の嵐が吹き荒れる事になるだろう。


「動力室はどこ?核となる施設は…?」


侵入する前に施設の見取り図は頭にたたき込んだハズだったが、戦闘で目まぐるしく動いた末、おまけに部屋ごと融解する化け物ときた。
混乱した彼女の思考では施設の見取り図を思いだし、現在の地点を把握する事などほぼ不可能だった。


(どこかに…地図はないかしら…?)


美琴は部屋にこの施設の見取り図がないか探す。
とその時、肌が粟立つ感覚を覚える。本能が危ないと告げているのだ。
とっさに美琴は体をひねってビームを交わす。


ガガガガガガ…


進行上のあらゆるものをとかしつくすビームが美琴を融解させようとする。
しかしそれを美琴はぎりぎりで交わす。

攻撃された美琴はキッと麦野をにらみつける。
すると麦野も美琴の方を見ていたようで、二人はにらみ合う。


「よそ見禁止だぞー!学校で教わらなかったかにゃん?」


麦野の場違いな位に甘ったるい声が美琴の耳朶に届く。
何かを殴りたい衝動に駆られた美琴はしかし、いつまでたっても見つけることが出来ない動力室を手探りで探すよりかは…と判断し果敢にも麦野達と戦おうと決意を固める。


(体力の心配なんて…もういい…アイツ等を叩きつぶして、即座に施設を破壊する!)


磁力を利用して麦野から放たれる原子崩しを避けつつ反撃の機会をうかがう。
麦野の少し後ろには滝壺とフレンダが息を潜めて見守っている。


(先にあの二人から殺るか?特に…あの黒髪…雰囲気が尋常じゃない…何かしたのかしら?)


先程美琴が撤退する際にはフレンダに手をさしのべていた彼女はしかし今では目をカッと見開きまっすぐに美琴を見ていた。
それは睨みを利かすとかそんな生やさしいものではなく、まっすぐに、目をずっと見てくる、何とも形容し難い雰囲気を醸し出していた。

美琴は知るよしも無いのだが、麦野は滝壺に体晶を使うように指示した。
体晶とは能力の暴発を誘発するいわば劇薬である。
滝壺はこの薬を服用しなければ、能力を発露する事が出来ないのだ。



美琴が麦野の攻撃の回避に終われているとき、密かに麦野と滝壺の間で行われたやりとりがあった。
フレンダを介抱していると滝壺に投げかけられた麦野の一言。



『使っときなさい』



麦野の一言と同時にぽいっと何か捨てるようにシャープペンの芯を入れる容器の様な物が投げられ、両手で滝壺は麦野からそれを受け取る。
そしてその容器のふたをスライドさせ、僅かに出てくる白い粉をぺろと舐める。


『………』


滝壺は突如無言になる。


『どう?滝壺、あのクモ女の力、記憶した?』


『確かに記憶した』


いきなりだが、ここ最近、滝壺は能力を使ったことがなかった。
というか滝壺が能力を使う程の強敵が居なかった、と言った方が正しいのだろうか。


滝壺が能力を使ったのはこれで二度目。
一度目は同じ暗部組織のスクールとか言ういけ好かない長髪の男と麦野が戦っている際に使った。


垣根だか谷垣だかと言った能力者にアイテムは以前完敗した事があった。
その時に躍起になった麦野に滝壺は体晶を奨められて、その人物の“力”を記憶したのだとか。


“力”とはAIM拡散力場とか言う能力者が多かれ少なかれ体から出している一種の電波の様な物を指す。
滝壺は体晶を使用する事でそれを頭に記憶する事が出来るのだ。


彼女に記憶された物は永久に逃れることができない。
そう、滝壺はアイテムの照準であり測距儀でもあるのだ。


「悪いけど、あんたらに付き合ってる時間はない」


不意に美琴が麦野達に向かって言い放つと、目をつぶり砂鉄を右手の辺りに凝集させる。
原子崩しに消滅させられた砂鉄もあったが、まだそれなりの量が床に残っているはずだ。


「―――――」


美琴は集中してそれらを再び自分の手に凝集し、ハーフパンツのポケットから幻想虎鉄の柄を出し、融合させた。
すると先程より少しだけ短い幻想虎鉄を美琴は顕現させる事に成功した。


彼女は「いくわよ」と小さく一言つぶやくと一気に麦野に斬りかかった。


「うああああ!」


麦野はそれを交わし、原子崩しを顕現させ、膨大な力で美琴を消滅させようと目論む。
その第一弾が到達する前に美琴は麦野達が出てきた穴に入り、身をくらませた。


「チッ…すばしっこい女だ…クモじゃなくて狐ね…女狐」


独り言のように麦野は初めて出会った能力者の感想を言う。
彼女はフレンダに「常盤台の超電時砲だっけ…アイツ?」と問いかける。


「そう…名前は御坂美琴って言って…たわよ…はぁ…はぁ…」


壁に寄っかかりながらそう言うとフレンダは腰を落とし、座ってしまった。
滝壺に支えられていたのだが、どうにももう少し待たなければ歩けそうにないようだ。


「御坂美琴…あぁ…あいつが」


麦野は合点がいくように「ほうほう」と言いながら頷く。
実は麦野は超電磁砲の名前を聞いたことがあった。そしてその人物が第三位である理由も。

原子崩しと超電磁砲。
根っこのところでは似通っている能力。それらを所有している彼女たちの格付けは即ち学園都市に対して利潤を生むか否か、で判断出来る。

それは個々の能力差や優劣ではなく、学園都市にの能力者に対しての期待値としての格付けに他ならなかった。


「学園都市に利益をもたらす順番で第三位かぁ…ククク…」


麦野は思い出したようにつぶやくと「滝壺」と呼びかける。


「今、あの女狐はどこにいる?」

「ターゲット北西に二十メートル移動…今も移動している…」

「りょうかい☆」

ウインクをしながら麦野は手から原子崩しを顕現させ、その方角へ向けて放出するがなかなか当たらない。
しかし、判然としないものの、滝壺の報告で美琴の動きが徐々に鈍ってきている事が分かった。


(徐々に移動距離が短くなってきている…ここで滝壺を使うのは割にあわないか?)


滝壺は能力者を追尾する面ではどんな透視能力者や精神感応系能力者よりも能力者をサーチする事にひいでている。
反面、能力発露に際して起爆剤である体晶を使わなければならないといった弊害がある。


弊害とは単に薬品を服用する事を指し示す訳ではない。
体晶は体が徐々にむしばまれていく劇薬なのだ。
なので麦野も滝壺がいないとどうしても倒せないと判断した時のみ、体晶の使用を求めるのだった。


現に滝壺は激しい運動をしていないにもかかわらず、「はぁはぁ」と肩で呼吸をしている。
同じく疲労で疲れて座っているフレンダよりも見た感じではやばそうだった。


「ん…!また移動…した…今度は…」


滝壺は言葉の節々に疲労を滲ませながらも麦野に指示を出す。
麦野も的確にビームを放つのだがいかんせん、高速で動き回る相手では仕留めにくい。


ビームを発射した地点からターゲットに着弾するまでの数秒で敵も動く。
予知能力が無い滝壺はあくまで測定をした現行の位置だけを麦野に伝えるだけでなので、敵が移動している数秒のラグは埋めがたいのだ。
それをカバーする様に麦野の原子崩しは広範な破壊力を持って多少の誤差を無いものとしているのである。


しかし、それでも麦野の原子崩しは当たらない。
ここで麦野は推理する。


(私と超電磁砲の能力は根底では同種のもの?だとすると…超電磁砲の野郎…まさか…私の原子崩しを曲げているのか…?)


先程から感じ始めている妙な違和感の正体。
もしかしたら超電磁砲は原子崩しを屈折させているのではないか?という懸念。
麦野は滝壺から再度超電磁砲の方角を聞き直し、集中し、原子崩しを放つ。

数秒後、着弾が認められた物の、やはり途中で意図的に曲げられている様な感覚を彼女は感じた。


(やっぱり…曲げてるっぽいわね…)


ならばどうするか、麦野は冷静に思考を巡らす。

(曲げられるなら…何故逃げた?)


(戦う程の電力は無いから?)


(それとも私達と戦うよりも何かしらの目的がある?或いはその二つか…?)


(絹旗に施設の核のコンピューターは防衛する様に厳命した、仮に超電磁砲が絹旗に戦いを挑んでもおいそれと絹旗は負けないだろう…)


(いや…なら何故最初から絹旗の待機している施設に行かない?超電磁砲はオトリか?)

様々な推論が頭に浮かんでは消える。
麦野は携帯電話をお姉系のワンピースドレスのポケットから取り出すとGPSで現在の位置を確認する。


(ここが…現在地…動力室と…当該施設の核になっている接続地点…あぁ…ここで待機してりゃあ勝手に来るだろ…?)


ここからそう遠くない地点に動力室と当該施設のコンピュータールームに接続する場所を見つけた。
若干大きいホールほどの大きさだ。
麦野は携帯を閉じると、滝壺とフレンダに撤退するように言い、そこへ向かおうとする。

「そうそう、フレンダ、滝壺あんたらはもう帰りな。電話の女には私から連絡しとくから」


「え?だってまだ終わってないよ?」


「そうだよ。むぎの。私だってまだいけるよ」


二人は撤退を拒み、なお衰えない闘志を見せるが、いかんせん滝壺にしろ、フレンダにしろ、体力的に一杯一杯なのは誰の目にも明らかだった。


「バカ、お前等肩で呼吸してるじゃない、さっさと休んで、後詰めは絹旗に任せてさっさと撤退しなさい」


二人はなお、「でも…」と抗弁してくる。
その素直に共闘しようとする姿勢は麦野にとっては嬉しかったが、正直足手まといだった。
それに相手が常盤台の超電磁砲とあればタイマンでけりをつけたい、と熱望する自分がいたのも正直、思う所だった。


「滝壺、あんたはよく頑張った。フレンダ、滝壺が体晶使ってヤバイのは分かるよね?」


「う、うん」


「じゃ、さっさと愛銃持って撤退しなさい」


フレンダは思い出した様に崩落した階段の下にあるアキュレシー・インターナショナルを思いだし、痛む体の節々に耐えるよう言い聞かせ、遠回りをして取ってきた。
彼女は安全装置をしっかり入れると背中に背負う。
そして滝壺に肩をかして「よいしょ…っと」と一人ごちると二人でとぼとぼとSプロセッサ社の出口に向かっていった。

麦野は撤退していく二人を見届けると美琴が来るであろう接続地点に向かっていった。

コツンコツンとブーツが床を踏む音が施設内に響く。
麦野はフレンダと他あ旗壺が撤退完了した事をフレンダのメールで確認した。
そしてしばらく連絡が来なかった絹旗からも連絡が来ていた。


どうやら長点上機学園の研究者を裏切り者として捕縛したそうである。
連絡が来た携帯を閉じると、麦野は壁に寄っかかる。


(はぁ…滝壺…ライバルかぁ…)


(ってライバルって認めてる時点で私は浜面の事が好きなんだな…)


(私の事認めてくれる男なんて浜面くらいしかいないよ…だから…滝壺の所にいかないで…)


美琴に追い詰められてピンチの状態のフレンダを助け出すために向かっていく時に話した内容。
実は滝壺が浜面の事が好きという事実。
麦野は確たる証拠もないのだが、勘で浜面は滝壺の事だ好きなのではないか、とずっと思っている。
そして今日発覚した新事実。滝壺は浜面の事が好き、と言うこと。


麦野は今まで能力者故に煙たがられ、まともな恋愛を送った経験が極端に少なかった。


今ではスクールとか言う組織の親玉をやっている垣根とかいう男と付き合った事もあったがうざくてすぐ別れた。
上から目線でごちゃごちゃうるさかったから振った。泣きながら。


(ってなーんで思い出してるのよ、クソ垣根の事なんざどうだっていい)


(浜面…私の言うことも聞いてくれて、私にしっかり意見してくれる…)


浜面と一緒にいると落ち着く。麦野はそう思っていた。


(けど…浜面…いっつも滝壺の事ちらちら見てさ…私がどんな格好してもあんまり良い反応しないし…)


戦いに身を置く者のいっときの小休止。
麦野は元彼の垣根と浜面、そしてライバルである滝壺の事を考えていた。


(はぁ…今日浜面とあえるかな?)


仕事が終わったら浜面にちょっと会いたいな、と考えている時、人の気配がした。
片手には幻想虎鉄、背後には無数の人形爆弾をひきつれた美琴だった。


再び女の戦いの幕が切って落とされようとしていた。
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