頑張ります。SSはよく書きますがこう言った形で書くのは初めてなので至らぬところが多々あるかと思います完結させて徐々にうpさせたかったのですが8割くらい書いたところでHDDが吹っ飛んだため書きながらあげることにしました遅筆です完結はさせます上琴になるつもりです性的描写入るかもですよろしくお願いします。
12月学園都市学園都市第七学区に存在する「窓のないビル」培養液が満たされたビーカーに逆さまに浮かぶのは学園都市統括理事長アレイスター・クロウリー。「その格好はどうかと思うが…」彼の眼前にはアロハシャツの上から学生服を羽織る男、土御門元春。「年中培養機に詰まって衣替えしないアンタには言われたくないぜい」土御門はサングラス越しにアレイスターを睨む。「…忙しいんだ、手短にしろ」「仕事だ、手筈はもう整っている」土御門は舌打ちをして、顔を歪める。「またか…お前も懲りない奴だな」アレイスターが視線で何かを促す。土御門が視線の先を見ると束ねられた書類が目に入った。やれやれといった様子で書類を手に取り、それから何も言うことなく去っていった。一人になったアレイスターは、培養機の中で静かに笑う。
「さて、今回は…どう動いてくれる?」
とある高校の職員室。この学校の教師である黄泉川愛穂は椅子に腰掛けながら終業のチャイムを待っていた。今はちょうど6限の途中。他の教師は授業のため全て出払っていたが、自身の授業が無いので、コーヒーを飲みながらぼんやりと考えごとをしていた。考えているのはここ最近学園都市と騒がせているある事件。警備員でもある彼女は最近その事件に引っ張りだこだった。「能力の暴走…か…私にはわからないことじゃんよ」と、そこへ一通の電話が掛かってくる。電子音を鳴らす電話へ手を伸ばし受話器を取る。「はい、こちら…」学校名を告げようとしたところで止まる。
聞こえてきたのはビープ音、FAXを知らせる音だった。「ったく…メールですればいい物を、資源の無駄じゃん」そう言いながら黄泉川は送られてきた書類に目を通す。送られてきたのはどうやら警備員関連の書類らしく、紙に小さな警備員の紋章がある。「──え…」驚きで時が止まった。手に持っていたマグカップを落としそうになる。何かの見間違いだ、ともう一度ゆっくりと読みなおす。しばらくして黄泉川は書類を机の上に置き「ふ…ざけんな」ガタン。と黄泉川は書類の上から机を力任せに殴った。
終業チャイムと共に伸びをするのは不幸少年こと上条当麻だ。「ふぁ~~」伸びをしながら本日これからの予定を考える。夕飯の買出し、帰宅、夕飯。(自由の身になってもやる事は変わらないか…)自由の身…というのも、上条家の居候シスターインデックスは、昨日イギリスへ帰国したためである。年末に大掃除を行うのはどの国でもお馴染みの習慣らしく、インデックスはイギリス清教内の大掃除の手伝いとやらに駆り出される羽目になった。人手不足、というのが表向きの理由だが、結局は彼女の絶対記憶能力が目的なのだろう、とステイルはつまらなさそうに言っていた。
魔術的な意味を持って配置させた物を掃除するために動かした後、それを元に戻す時少しズレが生じただけでもよろしくないのだとか。そこで役に立つのが彼女の絶対記憶能力。そして何しろ大きな組織だけあって大掃除にも1ヶ月といった時間が掛かるらしく、それに合わせてインデックスも回収された。あまり詳しいことはわからないし、裏の思惑も無いように感じられた上条はインデックスをすんなりと渡すことにした。『まぁ僕が着いている限り、この子の心配をする必要は無いよ』空港では何やらステイルが嬉しそうだったのを思い出すと、上条の背中に冷たい物が走った。そして今日に至る。
終礼までの時間雑誌でも読もうと、今朝購入した雑誌のページを適当に捲ったところで。「にゃ~カミやん。今日この後どうするんだにゃ~」ボーっとしていたところを背後から土御門に手を回され、軽いヘッドロック状態となる。「いっつもカミやんは用事がある言うて帰る割には女の子とドキドキイベント満喫してるみたいやからなー今日は逃がさんでー!」青髪が手をワキワキしながら迫ってくる。「そんなわけねーだろ!大体俺だっていつもいつも不幸事に巻き込まれたくて巻き込まれてるんじゃねー!」「ふーん…だそうですよ土御門サン!」「そうらしいですにゃー」ニヤニヤとしている二人を見て嫌な予感しかしない上条。「あの…一つ聞きますが。なにを根拠にそのような不敵な笑みを浮かべてるんでせうか?」二人は顔を見合わせた後、視線を下に落とす。その先には先ほど上条が開いた雑誌がある。問題はその記事だった。
『能力者がまた暴走!一般学生にも負傷者!』ここ最近噂になっているニュースだ。ニュース番組をあまり見ない上条に詳しい事はあまりわからないが、どうも能力者の能力が暴走しその周囲の人間に危害を加えているとかいう。無能力者であり、仮に能力者が近くで暴走しても幻想殺しの宿る右手がある自分にはあまり関係の無いニュースだった。「にゃーどうせカミやんは暴走した能力者を助けだそうとか思ってるんじゃないのかにゃー?」「なんやて!?それでその可愛い能力者を救った後、カミやん色に染めていくってわけやな?わかったで!なんて極悪非道なやつや!」「助けるとして、何でその能力者が可愛い設定なんだよ!」と、見事な突っ込みを入れたつもりだったが。「にゃー!とりあえず助けるつもりだったんだにゃー」違ったように解釈されたらしい。
別の言い訳を考えようとするが暴走した二人は言っても聞かない。こうなると小姑のごとく、言うこと言うことに突っ込んでくる。「不幸だー!」やはり自由の身になっても変わることは何も無かった。両手をワキワキさせながら迫る青髪を前に上条は初めからロックされたままの土御門の腕の中でジタバタと暴れる。クラスの連中は連中で「いつものことだ。平和だー!」と言わんばかりに遠巻きに見ている。
頼れるはずの吹寄も姫神と会話していて知らないふり。やはり自分は不幸だ。いつも通りだ。平和だ。などと諦めかけたところで。
「はーい終礼を始めますよー」その時上条にとっては、教室へ入ってきた担任、月詠小萌が本当に天使のように思えた。そしてその天使は上条たち一行を見るなり、少しムっとした顔をして歩いて来る。よかった。と上条は心の底から思った。これから自分を含めて小言をグチグチと言われるのはいただけないが、この状況を打開できる唯一の手だった。しかし、「上条ちゃーん。さっき黄泉川せんせーが何やら怖い顔で上条ちゃんのこと呼んでましたよー何か悪いことでもしたんですか?せんせーも黄泉川せんせーとは長い付き合いですがあそこまで怖い顔は見たことが無いのです」え、という上条の反応よりも先にバカ二人が反応する。「にゃー!なんという、黄泉川先生言うたらあの爆乳美人教師だにゃー!カミやん、今回は一体どこでフラグを立てんだにゃー!」「ホンマやで!きっちり話してもらおか!」遂に攻撃体勢に移る二人。「だー!不幸だー!」やはり自由になっても何も変わらなかった。
職員室「だからっ!わけがわからないじゃん!」放課後の職員室で携帯に向かって怒鳴り声を上げるのは黄泉川愛穂。電話の相手はさっきFAXを送ってきた彼女も所属する警備員の支部である。「どう考えてもおかしいじゃん!上条当麻は学生、それがなんで…」支部のほうからは上の決定としか言われなかった。黄泉川自身も抗議の電話を入れているが、支部のほうでもその「上」に相当抗議したはずだ。抗議もしないような腐った支部ではないのは、所属する黄泉川自身が一番わかっている。わかってはいるが…「…」黄泉川は少し黙りこみ、冷静に考える。「わかった…ただこの件は、私に任せてもらうじゃんよ」相手の返事も待たず、黄泉川は電話を切った。溜め息を付き、両手で頭を掻く。「あ、あのー」その時後ろから少し怯えたような声が掛かった。
バカ二人から逃げ出した上条は、職員室で電話に怒鳴り散らす黄泉川愛穂に恐る恐る声を掛けて、素晴らしい睨みを受けた後、校長室へ連れられた。(いやいやいや…校長室しつってもうどう考えてもヤバい話しかしないでしょう…遂に留年…出席日数がやっぱりアウトだったのか!?くそう…不幸だ)きっと豪華であろうソファーに座らされ、目の前にはジャージ教師黄泉川と名前の知らない校長が座っていた。(あーでもゴリラじゃないだけマシだよなぁ…あのゴリラならひと通り話が終わったら鉄拳喰らわされそうだし)いろいろ考える暇があるのは、黄泉川と校長が何やらヒソヒソと話しているからだ。それほど自分の留年が急な話だったのだろうかと考えていると。「上条当麻!」「はっ…はい」突然黄泉川に声をかけられ肩を大きく震わせる。突然黄泉川に声をかけられ肩を大きく震わせる。と、黄泉川のほうは上条の名前を口に出したきり、何やらうんうんと考え込んでいる。「あ、あのー」しびれを切らせた上条から逆に声をかける。しかし黄泉川は黙り込んだまま。微妙な空気が流れる校長室。校長は窓の外を見たままで「今日も部活動が盛んですな」とでも思っていそうだ。「あー!もう!」黄泉川が頭をぐしゃぐしゃと掻きながら叫ぶ。上条は全く以て意味がわからない。そこまで留年決定者に留年を告げるのが苦な仕事なのだろうか。「上条当麻!今から言うこと、よく聞くじゃんよ!」ようやく話が始まるのか、と上条は背筋を今一度伸ばす。「先に言っておくけど、これは十分拒否可能!少しでも嫌だと思ったら嫌って言うじゃん!わ か っ た ?」あまりの気迫に上条が小さく「はい」と返事をすると、バン!と机の上に何やら書類を突き付けられる。見るのが恐ろしかった上条は突き付けられた瞬間閉じていた目を、恐る恐る開いていく。と、そこにあったのは。
「任命状…?」まず目に入ったのは大きく書かれた文字。それをそのままを口に出す。理解できず尋ねたつもりだが、黄泉川は腕を組みながら目を閉じている。訳の分からない上条は、仕方なく読み進める。「ここ最近学園都市内で多発している能力者暴走事件について以下の者を臨時のアンチスキルとして任命する。上条当麻。え…」何かの冗談かと思ったが、書類の最後に書いてあった「学園都市警備員総本部」という文字とその判子は本物の証拠だろう。「近頃騒がせてる事件は知ってんじゃんよ」黄泉川がようやく口を開いた。「近頃の…事件?」
「ニュースでよくやってるじゃん。能力者が暴走して周りに危害が及ぶっていう」「あぁ…そういえば」さっきの雑誌にも載っていた事件だ。「確かに現状、アンチスキルでも抑えきれてないじゃん。それで何を血迷ったのか、上はアンタに助けを求めることにしたらしいじゃん」「俺に…」ちらりと、上条は自分の右手を見る。どんな異能も打ち壊す、幻想殺しが宿った右手。学園都市上層部が指示を出したのはその情報を知っているためだろうか。「で、どうするじゃん?」「え…」あまりに急な話だったので、心の整理がうまくできない。「悩んでるのか?それならやめるじゃん。アンチスキルは危険な仕事、そもそも学生に押し付けるって考え自体間違ってるじゃん」「いや、そのー」きっとこの黄泉川はこの話には猛反対なのだろう、一度ゆっくりと考えてから…とはいかないようだ。あまり考えることなく、上条は答えを出した。
「やらせてください」上条の答えに黄泉川は大きく目を見開く。「なっ!何言ってるじゃん、アンチスキルの仕事は遊びじゃ無いじゃんよ!この事件だって、実際にアンチスキルが何人もやられてる。ウチの隊の奴もだ。アンタに例外なんて無いじゃんよ!」「わかっています。でも、こうやって……アンチスキルの上層部から必要とされているのに、断って、そのせいでアンチスキルの人や一般人が傷ついていくのを傍観していくつもりはありません。やらせてください」「ッ…!」黄泉川は上条の胸倉を掴み、その手とは逆の手に力を込め、上条の頬を殴った。校長が制止しようとするが、睨みで返す。転がった上条をもう一度持ち上げ、ギリギリと歯を鳴らしながら上条を睨む。対する上条も黄泉川から目を逸らさずに、もう一度言った。「やらせてください」「─…」
やがて黄泉川はゆっくりと上条を下ろした。「わかった…でも、アンタの活動は常に私の監視下で行うじゃん」「…はい!」「こうなった以上、アンチスキルでの私の命令は絶対じゃん。逆らったらそれで終わり、さっさと抜けてもらうじゃん」さっきまでの力強さは無く、黄泉川はふらふらとした足取りで校長室を出て行く。「あの…俺はこれから…」上条も承諾したものの、これからどうすればいいのかまったく分からない。と、既に校長室のドアを開けた黄泉川が囁くように言った。「この後、そのまま支部に行くじゃん。いろいろ手続きもあるじゃんね、帰る準備ができたら駐車場に来ること。あとこのことは他言無用じゃん」気を抜くと聞き逃してしまいそうなほど小さな声を聞き、それを頭の中で整理することで上条の頭はすでにパンク状態だった。「返事は!?」鬼のような形相で睨まれ、上条は固まった。「はっ…はい!」ぎこちない返事を上条がすると、黄泉川はまるでリストラを告げられたサラリーマンのように、校長室から出て行った。上条もさっきから冷や汗ダラダラな校長に軽く会釈をして校長室を出たが、
「にゃー!」「うぉわ!土御門!」出て早々に土御門に捕らえられた。「はっはーカミやん。校長室に呼ばれて、遂に留年決定かにゃー?この時期に伝えられる奴も珍しいぜよ」「ちげーよ。ただの呼び出しだった」「その呼び出しで何を言われたんだにゃー?」「…」「あれれー?もしかして留年決定じゃなくて留年予備軍だったのかにゃー?」「そ、そうだよ。とにかく課題貰ったから、この後上条さんは忙しいんです!」「そうかいそうかい、なら悪いことしたにゃー」ぱっ、と今まで拘束していた上条を放す土御門。「じゃ、その課題とやら…がんばるんだにゃー」「お、おぅ。じゃぁな」
一瞬、あらゆる方向で活動する土御門にはこの件を話そうかと考えたが、後が怖い。それに土御門ならもしかしたら既に何かを知っていたのかもしれない。(とにかく…)廊下を走りながら上条は今一度、右手を見つめる。(そうだよ…今まで傍観してたなんて俺らしくなかったじゃないか。俺が無能力者だからって、幻想殺しがあるからって…俺の周りには御坂や白井、一方通行みたいに能力者がいる…それにクラスの奴が被害を受けないなんて保証もない。そいつらが暴走した時に止められるのは、そいつらを守れるのは…俺の右手じゃないか)右手を一度ゆっくりと開いてから、力強く握る。(やってやるぜ…アンチスキル!)と、熱い決意を胸に教室へ走るが「廊下を…走るなー!」「だー!不幸だー!」早速ゴリラに出鼻を挫かれる臨時警備員、上条当麻だった。上条が去った校長室前で、土御門は学校では見せない笑みを作っていた。「ふふん…なるほどにゃー」
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