【殲滅白書その2】そこは、先程までサーシャと五和が居た時計塔だった五和「うーん……ここは……ッ!」目を覚ますと、自分が椅子に座らされ、ロープで体を固定されている事に気付いたヴェロニカ「お目覚めかしら?五和さん。」五和「何の真似ですか!こんな事!」ヴェロニカ「暴れない方がいいわよ。タダのロープじゃないから。」五和「ッ…!」ヴェロニカ「それよりも、早いとこ話を進めましょう。単刀直入に話すけど、あなたにサーシャ・クロイツェフにここに来るように言ってほしいの。本当はサーシャを直接誘拐した方が手っ取り早いのだけど、彼女は中々強いし、たぶんオルガ一人じゃ勝てなかったでしょうから。出来るだけ穏便に事を運びたかったのよ。」
五和「で?それを私が承諾するとでも?あなた達は一体何者なんですか!?」ヴェロニカ「はぁ、めんどくさいわね。こういう強気で正義感のある人って本当にめんどくさい。私達は殲滅白書のシスターよ。」五和「殲滅白書!?ということは!」ヴェロニカ「そうよ。理解してもらえた?ならさっさと指示に従ってくれるかしら?」五和「聞いてなかったんですか?私は嫌だと言ったんですよ?」ヴェロニカ「そう。じゃあ、ここで死ぬけど良い?」五和「そんなものが脅しになると思ってるんですか?」ヴェロニカ「へえ、面白い事言うじゃない。」ヴェロニカ「じゃあ、ここであなたが断れば戦争になるけど、それでも良いかしら?もちろんあなたにもここで死んでもらうわ。」五和「戦争ですって!?」ヴェロニカ「私達はそれを避けるために取引してるのよ。一体戦争でどれだけの人間が無意味に死んでいく事か。私は嫌だし、あなただって嫌でしょ?」
五和「……」ヴェロニカ「この作戦が成功すれば、誰も死ななくて済むの。平和的でしょ?だかr」五和「ふざけるな!!!」ヴェロニカ「!?」五和「何が平和的ですか!そもそもあなた達が勝手に人殺しを始めようとしてるだけじゃないですか!!サーシャちゃんを引き渡せば誰も死なない?だから平和的?ぜんっぜんおかしいですよ!!」ヴェロニカ「そう。じゃあ戦争しかないわね。あなたのせいで無関係なシスターさんが沢山死ぬのね。心が痛むわ。」ヴェロニカ「そう言えば、サーシャはあなたの友人だったかしら?友情と多くの人間の命、はたしてどっちが重いのかしらね?」五和「サーシャちゃんは……あなた達から逃げて来たんですよね……?あなた達が誰も助けてくれないから、だから私達に救いを求めてきたんですよねぇ!!だったら答えなんか最初から決まってます!!例えどんな人でも、どんな事情があっても、敵でも味方でも、友達でもそうじゃなくても!!救いを求める人に手を差し伸べるんですよ!!」五和「救われぬ者に救いの手を!!それが私の唯一の信念であり、戦う理由ですから!!」ヴェロニカ「……」五和「戦争でも何でも勝手に起こせば良いじゃないですか!!私達は、自分の命惜しさに仲間を売る様な弱い集団ではありませんから!!あなた達みたいに、痛む様な心なんて持ってない人達には負けませんから!!」
その目に確かな意思が宿っているのをヴェロニカは感じたどんな言葉も脅しにも屈しない、そんな強い目をしているヴェロニカ「クッ…この…!」ローザ「ヴェロニカ、落ち着いてください。」ヴェロニカを宥め、五和の方を向くローズローズ「戦争を起こしたくないというヴェロニカの言葉は本当です。そして、彼女は本当はこんな手荒な真似もしたくはなかったのです。もう一度考え直して下さい。本当に私達の申し出を断るのですね?」五和「しつこいですよ」ローザ「そうですか。」そう言うと、ローザは透明な液体の入った小瓶と、口紅を取りだした最初にその小瓶に薬指を軽く入れ、指先に付いた透明な液体を唇に薄く塗ったそして次に、紫色の口紅をその上から塗るローザ「こちらとしてもあまり時間を掛けたくはありません。これも少々手荒な真似になりますが…」ローザは五和に顔を近づけた五和「一体なにをむぐ…」五和の唇を塞ぐローザすると、ローザの唇の紫が、五和の唇へと移っていく五和「これは…」ローザ「自白剤みたいなものですかね。宗教裁判や魔術師の尋問で、本当の事を喋らせる薬みたいなもの…といっても、実際は単に人の心を操って都合のいい事を喋らせたりするだけの薬ですけど。」五和「心を操る!?」ローザ「似たような薬はイギリスの処刑塔でも使われていたみたいですけど?まあもっとも、今はこれに対抗するための薬もありますし、裁判や尋問での使用が確認されたら判決が無効になってしまいますが。効果時間もせいぜい一時間程度と長いとは言えませんし。」ローザ「ですから、手っ取り早く私の指示に従ってもらいましょうか。」五和「うっ…」視界がぐにゃりと歪んだ自分というものがどこかへ消えていきそうな感覚…覚えているのはそこまでローザ「では、早速ですがサーシャ・クロイツェフをここに呼び出してもらえますか?」五和「はい」五和の目には、先程の様な強い意志は微塵も無く、光すらも感じられない
Prrrrrサーシャ「おや、誰からでしょう?」ディスプレイを確認すると、発信者は五和だったなんとなく嬉しくなって顔がニヤけてしまうサーシャ「第一の質問ですが、どうかしましたか五和?」五和「……さい」サーシャ「第二の質問ですが、よく聞き取れないのでも少し」五和「時計塔の最上階へ来て下さい。」サーシャ「第三の質問ですが、今からでしょうか?しかし、もう遅い時k」五和「来てくれないと私……死にますよ?」サーシャ「五和?…一体どうしたのですか!?」五和「ちなみに、一人で来て下さいね。もしも誰かと動向を共にしていたり、周囲に魔術師およびシスターの存在を確認したら、すぐに死んじゃいますから。」サーシャ「五和!?いt!!」そこで電話が途切れたサーシャ「五和……」アニェーゼ「どうしたんですか?なんか叫んでたみたいですけど」ルチア「五和という言葉が聞こえましたが、天草式のですか?彼女に何が?」サーシャ「第一の解答ですが!すみません!ちょっと用事が!」アニェーゼ「サーシャ、私達は仲間ですよ。それを分かってますよね?」サーシャ「……第二の解答ですが、それでもこれは私一人で行かなければなりません。」そう言うと、サーシャは二人の前から逃げるように走り去って行ったルチア「…アニェーゼ、これは」アニェーゼ「分かってますよ。サーシャは一人で抱えたりはしません。おそらく、誰にも言えない状況なんでしょう。そう脅されてるんだと思います。部隊で今すぐ動ける人間を集めて下さい!それと、すぐに天草の方に連絡を!」ルチア「分かりました!」
サーシャは無我夢中で走っているどう考えてもおかしい。五和があんな事を言うはずが無いし、それ以前に明らかに友人を呼び出す様な口調ですらない嫌な予感がする唯一心当たりがあるとすれば、彼女がかつて所属していた殲滅白書…サーシャ「はあ…はあ…」さすがに寮から時計塔までは、遠くは無いがそれなりに距離はある全速力で走って来たので、さすがのサーシャでも両手を膝小僧に乗せて体重を掛け、息を切らしていたそれでも止まるわけにはいかないサーシャは時計塔の壁を調べ始めた。すると、今日自分と五和が発見した秘密の扉はすぐに発見できた。帰り際に結界を修復して元通りにしたはずなのに、その結界が再び破られ、扉が露わになっている。サーシャ「間違いありませんね。」サーシャはいくつかの扉を開け、再び巨大な魔法陣の中心に立ったサーシャ「五和、今助けに行きますよ。」サーシャの体は最上階へと移転されていった
サーシャ「……やはり、あなた達でしたか。」オルガ「やっほー♪久しぶりだねー!」サーシャ「第一の解答ですが、馬鹿を相手にしてる時間はありません。」オルガ「酷ッ!」サーシャは移転先で最初に遭遇したオルガを無視し、中央の一番大きな扉を開けたヴェロニカ「あら、早かったわね。」サーシャ「第一の質問ですが、どういう事でしょうか?」ヴェロニカ「安心して、彼女は傷付けてないから。ちょっと心を操らせてもらってるけど。」サーシャ「五和!」五和「……」親友の声にも全く反応しない。彼女の右手にはナイフが握られている。ヴェロニカ「さて、おとなしくロシアまで同行してもらえるかしら?」サーシャ「第一の解答ですが、私はイギリス清教所属のシスターです。こんな真似が許されると思ってるのですか?それに、なぜ私なんかを?」ヴェロニカ「大義名分ってやつ?それなら問題無いわ。あなた、国際指名手配犯だから。」サーシャ「なぜ…?そんな…」ヴェロニカ「容疑は国家機密情報の漏洩に関する何とかかんとか。まあ身に覚えは無いだろうし、嘘なんでしょうけど。その他にもテロ計画や国家反逆罪とかまあ適当に寄せ集めて色んな容疑をかけられてるみたいよ?とんでもない冤罪ね。当然、国籍の離脱なんて却下されてるわ。」サーシャ「第二の質問ですが、どうして私ごときのためにそんな…」ヴェロニカ「あなたを欲しがっている人が居るみたいよ?まあどうでも良いけど、そう言う事だから大人しく連行されてもらえないかしら?」サーシャ「第三の質問ですが、拒否した場合は?」ヴェロニカはローザを一瞥したすると五和は、手にしたナイフの切っ先を自分の喉に当てた
サーシャ「……!」ヴェロニカ「さーて、どうする?」サーシャ「……分かりました。あなたの言う通りにします。」ヴェロニカ「そ、物分かりが良くて助かるわ。ローザ、サーシャに手錠と拘束衣を」ローザ「つまらないです」ヴェロニカ「ローザ?」ローザ「もっと抵抗すると思っていたのですが、何ですかその腑抜けた態度は?」サーシャ「…何が言いたいのですか?」ローザ「以前のあなたは、もっと自分のすべきことに対して冷徹で一途だったはずです。いつからそんな顔をする様になったのですか?」サーシャ「質問を繰り返します、何が言いたいのでしょうか?」ローザ「甘いと言ってるのですよ。まさか友情とかいう幻想に絆されてこんなにもあっさり受け入れるなんて、甘過ぎるのですよあなたは。」
サーシャ「幻想なんかじゃありませんよ。」ローザ「幻想ですよあんなもの。簡単に壊れるし裏切られる。ちょっと信頼して心を許したら、いつのまにか勝手に退学届を出された上に除籍処分になってるんですから。」ヴェロニカ「うっ…」オルガ「それはヴェロニカが悪いですねー」サーシャ「第一の解答ですが、あなたには理解できないだけです。」ローザ「理解したくありませんし、殲滅白書にはそんなもの必要ありません。」ローザ「と言うわけで、目も当てられないほどに腑抜けになってしまったあなたを矯正する必要があるみたいですね。五和!」五和「はい」ローザの命令で、五和はナイフを捨て、代わりに槍を構えた練習用では無い。殺傷能力を持つ海軍用船上槍だ。ローザ「サーシャ、今からあなたに彼女と戦ってもらいます。もちろん、ちゃんとトドメをさしてもらいますよ。」
ヴェロニカ「ちょっとローザ!あなたいい加減n」ローザ「黙れ。」ヴェロニカ「はい。」オルガ「あちゃー、完全にドSモードに入っちゃってますねー」アーニャ「眠い…」サーシャ「第二の解答ですが、あなたは馬鹿ですか?私がそんな事をするわけ無いでしょう?」ローザ「じゃあ今すぐ五和には死んでもらいましょうか?言っておきますが、本気で戦わなかったら殺します。あなたがとどめを刺さないなら私が殺します。10分以内に決着を着けなかったら殺します。ちなみに気絶させるのは無駄ですよ?もともとは尋問用の薬なんですから、気絶なんて生易しい事を許すはずが無いでしょう?」サーシャ「……第三の解答ですが、私はあなたが大嫌いですこの腐れ外道。」ローザ「私は昔のあなたなら結構好きでしたよ?五和!」ローザの合図と共に五和が突進してきた
サーシャ「!」頬を海軍用船上槍の先端が掠め、僅かに血が出るサーシャ(速い、今日の練習の時よりも格段に速いですね)それはつまり、五和が本気でサーシャを殺そうとしているという事だサーシャ「どうすれば…!」バキン!術式で強化したノコギリで槍を受け止めたが、その刃が耐えられずに折れてしまったローザ「どうしたのですか?あなたなら簡単に殺せるでしょう?」サーシャは今すぐローザの綺麗な顔にバールをぶち込んでやりたい気分になったローザ「余所見なんてらしくないですね」ドスッ!サーシャ「うッ!」槍の柄の部分で思い切り腹を殴打されて、そのまま吹っ飛び、壁に叩きつけられたドガッ!サーシャ「ぐっ…がハッ…!」背中に鋭い痛みが走る。脇腹は、肋骨をやられたかもしれないだが、そんな事情などで待ってはくれない五和は倒れ壁にもたれ掛かってるサーシャを完全に刺殺しようと、凄い勢いで槍を突いてくるサーシャはそれをバールを打ち付けてそらし、さらに槍を下から思いっきり蹴り上げる。そして五和の体重が後ろへグラついた瞬間を逃さずに、すかさず足払いをして五和を後ろへ転倒させた。ローザ「どうしたのですか?転んだ今なら殺せますよ」サーシャ「ぐっ…!」体がふらつくそれでも今ならあのムカツク女を殺せるだろうか?しかし、そんな事を考えている間に再び五和は立ち上がり、サーシャを殺そうとしてくるローザ「はぁ…とんだ期待外れですね。薬の効果もあと持って3分ってとこですか。人を操るのは難しいものです。」その言葉はサーシャに希望の光を与えた。あと3分持ちこたえればこの状況から…ローザ「残り2分間を戦わせて、殺せなかったら残り一分の間に自殺してもらいますか。」希望の光は一転して絶望に変ったローザはそれをわざと狙ってこの様な言い方をした事は、彼女の悪魔の様な笑顔から分かるどうする?後一分で五和を殺さなければ、どのみち五和は自害する考えている間にも五和に壁際まで追いつめられるサーシャ「そう言えば、五和には好きな人がいるんですよね…?」五和「……」サーシャ「第一の解答ですが、あなたにはまだやらなきゃならない事があるはずです。私と違って…」カラン!ヴェロニカ「サーシャ…どういうつもり?」サーシャは握っていたバールを離し、床に落としたそして、両腕をゆっくりと広げた。まるで全てを受け入れるかのようにヴェロニカ「いけない!ローザ!」ローザ「五和!攻撃中止!」だが遅かったドスッとサーシャの肉を貫く音が部屋に響く
サーシャ「がふ…!ぐっ…がはっ!!」大量の血を吐き出すサーシャ腹部を海軍用船上槍で貫かれている五和は槍を引き抜こうとしたが、サーシャは最期の力を振り絞ってそれを阻止するサーシャは渾身の力で海軍用船上槍の柄を握ったまま、壁を背にして床に崩れ落ちたそこでちょうど三分魔法が途切れ、五和が絶望する時間が始まる
意識が戻った時、最初に目に飛び込んできたのは、大量の血液が目の前の壁にペンキの様に塗られていた事次に、その血を絵をなぞる様に下を向くと、金髪の少女が崩れ落ちているのを確認したあまりにも変わり果てた姿だったので、最初はそれがサーシャだとは気付けなかったそして、サーシャの腹部には三股の槍が刺さっているその槍を先端から順にたどっていくと、そこには自分の手が……五和「あ、ぁ…あ…あ…ああああああああ!!!!」五和は槍から手を離し、頭を抱えて膝を付いたどうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?なぜ!?なぜ自分が大切な友達をこんな……サーシャ「いつ…わ…」血まみれのサーシャが口を開いたのを聞き、五和はとっさサーシャの方を見たサーシャ「に…げて……早く……逃げて……!」しかし五和はそれを無視する五和「ああ…早く……早く応急処置を!!回復術式を!!」五和はヴェロニカ達をどけて自分の鞄を漁り始めたヴェロニカ達はそれを見ている事しかできなかったローザ「……なぜです…サーシャ・クロイツェフ…なぜそこまで出来るのですか?たかが友人のために……理解できない…」ヴェロニカ「仕方ないわ。ここは五和を始末し、早急にサーシャを奪還しt」?「させませんよ!」オルガ「あれー?」ヴェロニカ「なっ…なぜあなた方が!」そこには蓮の杖を構えたアニェーゼとルチア他部隊のシスター達が居た建宮「五和!」そして天草式も同行しているアニェーゼ「どうやら、サーシャの予想通行ルートに殲滅白書のシスターを何人か待機させていたみたいですね。そのうちの一人をとっちめて吐いてもらいましたよ。後は簡単な誤認術式を発動させて、10人一組でバラバラにわけて殲滅白書の魔術師を探させました。みんな蜘蛛の子を散らすように逃げやがりましたよ。」殲滅白書の方は、せいぜい3人一組程度に分かれて監視していたそこに10人一気に来られてはたまらないちなみに隠れた殲滅白書の魔術師を探し出す役割は天草式の術者が担った。もともとが隠密行動を得意とする天草式は、逆に隠密行動を行う魔術師を探し出すのにも長けている。そうしないと、自分達を狙う幕府から生き残れなかった天草式の歴史の賜物だ。ヴェロニカ「くっ…ここは一端引きましょう!」アニェーゼ「させませんよ!」アニェーゼはナイフを取り出したしかしヴェロニカ「アーニャ!」アーニャ「どーん」突然アーニャの周辺に炎が巻き起こり、その炎を壁にぶつけた凄まじい破壊音と共に壁が崩れるアニェーゼが術式を発動するよりも早く、四人はそこから素早く逃走していったヴェロニカ「まったく、対象を殺しかけるなんて何を考えてるのよ!」ローザ「すみません、つい…」オルガ「サーシャが死んじゃったらどうするんですかー?アタシのサーシャが。」ヴェロニカ「今はサーシャの無事を祈るしかないわね。作戦を練り直すわよ。すぐに部隊の人間を呼び集めなさい!」作戦は失敗したそれはすなわち、殲滅白書とイギリス清教の小規模な戦争の勃発を意味している五和はサーシャの前に膝をついている彼女の目は涙で赤く腫れていた五和「サーシャちゃん、どうしてこんな…」サーシャ「いつわ……これでいいのです…」五和「良くありませんよ!こんなことって…」涙が止まらなかった自分の犯してしまった誤ちも、またしても大切な人を守れなかった自分の弱さも全てが自分を責め立ててくるサーシャ「泣かないでください……あなたは…何も悪くない…」なぜそんな事が言えるなぜそんな笑顔でいられる五和には理解できない五和「サーシャちゃん……意味無いですよ、やっぱり……優しさなんて…誰も守れないじゃないですか!!!あなたをこんな目に遭わせてしまうなら、優しさなんてなんの価値もありませんよ!!こんな優しさなんて!!誰かを傷付けるだけじゃないですか!!!誰も幸せになんてなれないじゃないですか!!」
泣きながら激昂し自分を責め立てる五和を、サーシャは優しく諭すサーシャ「そんな事ありませんよ……」サーシャは自分の血で濡れた手を伸ばし、五和の頬に触れたサーシャ「あなたの優しさに、私は助けられました……もしも五和を殺していたら、私は一生後悔していたでしょう……一生苦しみ続けていたでしょう……そんな地獄から…あなたは私を救ってくれた。……あなたに出会う前の私なら、きっとあなたを殺していた……しかし、あなたが教えてくれた優しさが、正しい答えを教えてくれたのです……ありがとう、五和……。」サーシャの顔には苦しみも怒りも無いただただ穏やかで、優しかったあの時、そう天使の様な頬笑みを見たあの時と同じように五和「どうして……どうしてあなたはそんな顔ができるのですか…?なぜあなたを殺そうとした私にありがとうなんて……」サーシャ「決まってるじゃないですか…」サーシャは再びにっこりと笑うサーシャ「第一の解答ですが、私はこんなにも幸せじゃないですか……」五和はたまらずサーシャを抱きしめたサーシャは声を上げて泣く五和を宥めるように、よしよしとその頭を優しく撫でてあげる
こんな最期も悪くないと思えたこんなに穏やかな気持ちで死んでゆけるなら、それはきっと幸せな事なのだろうありがとう、五和……幸せというものをあなたは教えてくれた……顔から血の気が無くなっていくだんだんと痛みも感じなくなってきた疲れたので、ちょっと眠ろうもしかしたら、もう目を覚ます事は無いかもしれないけどそれでもこんなに幸せな気分で最期を迎えられたのならきっと永遠に幸せな夢を見続ける事ができるかもしれないできる事なら、今度は幸せな夢の中で五和に会いたいもしもまた会えたなら、また私と友達になってくれるだろうか?大丈夫、彼女は優しいからまたあの時計塔に、広場に、一緒に……
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