「なぁ美琴、それが終わったら、散歩に行かないか?」 さっきまで美琴お手製の料理が乗っていたテーブル。そこに肩肘をついてテレビを見ていた上条が、いましがた洗物を終えたばかりの美琴に言った。「え? さ、散歩?」 その言葉を聞いた美琴が、タオルで濡れた手を拭こうとしていた姿勢でどういうわけかギクリと身を震わせる。「ああ、散歩」 そう言って、上条はにこりと笑った。 彼の顔は明らかに、楽しそうな表情。だが固まったままの少女に注がれる視線には、絶対に断らないだろうという確信がこもっていた。「こ、公園って、あそこの、だよ、ね?」 さっ、と紅く染まる美琴の頬。その色が深みを増すのにあわせて、彼女の前髪が、パチパチと鳴り始める。「そうだぜ? ここから歩いていける場所つったら、そこしかないだろ?」「だ、だよね、あはは」 ごまかすように笑う美琴だが、彼女はそれが何を意味しているのか、十分にわかっていた。 上条と二人で、夜の散歩に行く意味が。
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