――学園都市、第七学区
佐天「はぁ……。また今回も結果は変わらず、かぁ……」佐天「まあ分かってはいたけどね。前回の身体検査(システムスキャン)から まったく何も変わってないし。でも……」佐天「レベル0っていうのは、やっぱ嫌だな……」とぼとぼ佐天「幻想御手(レベルアッパー)の事件で反省して能力開発頑張ってるはずなんだけど」佐天「やっぱり『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』ってやつかな。でもあれって、つまりは妄想、だよね……」佐天「じゃあ私には妄想力が足りないってこと?ならばッ!」佐天「はああぁぁ……」ギュッ佐天(私はレベル5の能力者。能力はえ、えーと……そう!発火能力!!よく知らないけど、なんか強そうだし。今までもこの力を使って、なんか、こう……この街に巣食う悪と戦ってきたのだ!!あれ?でも学園都市の悪ってなんだろう?木山先生みたいな人かな?でもあの人は子供たちのために……ああッもういいや!!とりあえず出ろ!私の右手から、すごいほのーお!!)バッ「うッ、うわ!?す、すいません!!」佐天「あれッ!?本当に私、炎出しちゃったの!?」「うるせえんだよッ!!痛い目にあいたくなきゃ、さっさと金出しやがれ!!」「本当です!本当に今日はお金持ってないんです!!」
佐天(あ、あれって……)そぉっと不良1「おいおいッ。そんな見え見えの嘘ついてんじゃねぇよ!!」不良2「そーそー。正直になった方がいいんじゃない?」学生「本当なんですよぉ……。お金なんて持ってないんです……。だからかんべんしてください!!」不良3「へぇー……。じゃあお前“飛んで”みろよ」佐天(い、今時『飛んでみろ』とか、いつの時代の不良? いやいや!そうじゃなくて!!)学生「えッ!?」不良3「だから飛べって言ってんだろッ!!さっさとしろ!!」学生「は、はい!!」バッ……チャリンガサゴソ不良3「やっぱ隠してんじゃねぇか!!」学生「そ、それはけい○ん!4巻を買うためにの大事なッ!!きょ、今日が発売日なんです!!閲覧用と保管用とディスプレイ用とご飯の時隣に置く用に最低4冊は――」不良3「はぁ?知るかよ!」ガスッ学生「うッ!」不良1「そんな訳わかんなねぇもんに使うなら、俺たちが有効活用してやるよ!」ドスッ学生「んッ!」不良2「そ、そうだ!けい○ん!なんて4コマ漫画、聞いたこともねぇよ!大体けい○ん!が連載終了したら、俺はまんがタイムき○らで何読めばいいんだよ!!」バキッ学生「たん!!」佐天(あ、あの人は知ってる。て言うか、そんなこと考えてる場合じゃない!ど、どうにかしないと!?)オロオロ
不良3「俺たちに嘘をついた罪は重いぜぇ!」ドスッ不良2「そういう事だ!けい○んと一緒にお前も連載終了させてやる!」バキッ佐天(もうこうなったらッ!!)バッ佐天「あ、あんたら待ちなさいよッ!!」不良1「あぁ!?」佐天「い、今風紀委員を呼んだんだから!早くその人を離しなさい!!」不良3「はぁ!?何だとてめぇ!!」佐天「さ、さっさと逃げないと、全員捕まっちゃうんだからッ!!」学生「うッ!!」バッ不良2「あ、てめぇッ!!」ダダダッ佐天「えッ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!何でそっちが……!」学生「ゆ、唯ちゃぁぁぁあんん!!」ダッダッダッダッ……佐天「そんな……」不良1「おいッ!てめぇどうしてくれんだよ!!」佐天「そ、それは……」不良2「お、おいッ!!こいつさっき風紀委員を呼んだって!早くここから逃げたほうがいいんじゃないか!」不良3「風紀委員を呼んだんなら、わざわざ自分から出てきたりしねぇだろ。まあ、それが本当にせよ嘘にせよ、こいつをさっさとやっちまって逃げりゃあいい」不良1「そういうこった。へへへぇ……」ザザッ佐天「ちょ、ちょっと待って!?」佐天(なんで!?なんでこんなことになっちゃったの?少しは変われたと思ったのに……。強くなれた思ったのに。やっぱり力がないままじゃ何も変わらない!なんにもできない!!嫌だ!嫌だよ!!)不良1「おらッ!!死ねッ!!」ブンッ佐天(そんな……誰か、誰か……)佐天「誰か助けて!!」バシッ「女の子に容赦なく拳を振り上げるなんて、この街の連中はどうかしてるな」不良1「なッ、なんだてめぇ!?」「余りにも胸くそ悪いことが目の前で起こっていたんでね。少し我慢できなかっただけさ。気にするな」佐天(本当に助けに来てくれた!て言うか外国人!?)
不良1「ふざけてんのかてめぇ!!」「確かに、自分でも何でこんなことをしたのか不思議でならないね。本当はこんな面倒事を起こしたくはないんだが。それに馬鹿と遊んでいる暇もない」佐天(す、すごいこの人……。こんな状況なのに落ち着いてる。背もすごく高いし、めちゃくちゃ喧嘩が強いのかも……)不良1「て、てめぇ!やろうってのか!!」「残念だけど殴り合いは得意じゃなくてね。僕が得意なのは」パッ不良1「?」「こっちのほうさ」スッ佐天(カード?へんな模様が……)ゴオオオォォォ!!不良1「んなッ!?」ステイル「こういう訳だから、素直に退いてくれないかな?」佐天(手から炎が!!)不良3「てめぇ!!能力者か?」ステイル「ま、そういうことにしてくれると助かるな」不良1「そ、そんなことでビビってられるかよッ!発火能力者だろうがなんだろうがやってやる!!」ステイル「そうか。仕方ないね、じゃあ……」ヒュッゴオオオォォォ!! ドオオオォォォン!!不良2「ひ、ひぇぇぇ!?」ステイル「次は当てるよ」佐天(じ、地面が……)不良1「う、うわあぁぁー!!」ダッダッダッ不良3「お、おいッ!!くッ!!」ギロッ不良3「てめぇ……覚えてろよ!!」ダッダッダッ不良2「ちょ、ちょっと待ってくれよ!置いていくなよッ!!」ずさッ不良2「あ、あずにゃぁぁぁあん!!」ダッダッダッ……ステイル「ふぅ……。馬鹿な連中だ」佐天(す、凄い……。ほんとに一人でみんな追い払っちゃった。この人、高位の能力者だったんだ……)ステイル「ん?」佐天「あ、あの、えっと……た、助けてくれて、ありがとうございます!!わ、私柵川中学校1年の佐天涙子って……」ステイル「君」佐天「へ、あ、はいッ!!」佐天(あれ?私すごくテンパってる!?な、なんで?危ない状況から抜けだしたから気が抜けてるの?え、でもすごく緊張してるし!?よく考えたら今の状況って、すごくベタっていうか、漫画とかでよく見る展開じゃない!?命の危機(?)から救われる所から二人の出会いは始まってその後数々の困難を乗り越えて二人の絆は……って私何考えてるの!?お、落ち着けぇー!!)ステイル「君は馬鹿なのか?」佐天「落ち着け……落ち着け……。そう、私は馬鹿、私は馬鹿……ってええッ!?」ステイル「だから君はなんであんな馬鹿みたいな真似をしたのか訊いているんだ」佐天「馬鹿って!?困ってる人がいたら助けるのは、と、当然じゃないんですか?」ステイル「そんな『重い荷物を持ったおばあさんがいたから助けてあげました』みたいに言うなよ。あれはどうみても暴力沙汰だ。さっきの君の様子を見た限りじゃそれに対抗できる手段があったようには思えなかったけど」佐天「そ、それは……」ステイル「ああいう輩は金さえ手に入れば満足するんだ。何もできない君が来たところで状況は変わらなかった。君のやったことなんて無駄だったんだよ」佐天「確かにそうかも知れませんけど……。そんな言い方することないじゃないですか!それに貴方あの状況を最初から見てたんですよね?あんなに強い力を持った高位の能力者だったら、なんで助けてあげなかったんですか!!」ステイル「この街の人間を助ける義理なんてないね」佐天「じゃあ、なんで……」佐天(私のことは助けてくれたんですか……)ステイル「それに僕は――」クルステイル「能力者じゃない」佐天「ちょ、ちょっとッ!!……行っちゃった。なんなの、あの人?」
――数日前、聖ジョージ大聖堂ステイル「また、あそこへですか?」ローラ「そ、また厄介事が起こりそうでありけるのよ。正確には“厄介な事になりそう”な情報が入った、と言うたほうが正しきかしら」ステイル「今度も『告解の火曜(マルディグラ)』のような輩が?それとも『神の右席』ですか?」ローラ「今回はそれらに比べれば小物に過ぎぬわ。しかし状況は頭が痛きものね。昨日、学園都市に魔術師が数名侵入したるのを確認したのよ。すでにあちらの統括理事長に警戒すべしの旨を連絡したるけどあちら単独では奴らの尻尾を掴むのは難きものでしょうね」ステイル「学園都市に侵入した魔術師の特定は?」ローラ「一応は、と言いたる所ね。侵入した際の魔術の痕跡から彼らが『科学の子』を自称せし魔術結社であることが判明したわ」ステイル「『科学の子』?」ローラ「そう。彼らは『本来、科学とは神が人に与えた知恵の一つであり最終的には主の教えと一体になる』と主張する一種のカルト集団らしきなのよ。結社の長は科学の力と、主の教え、つまり魔術の力が混合せし時に生み出される『完全なる力』を背景に仲間を増やしていると聞きたるわ」ステイル「『完全なる力』、ね……」
ローラ「まあそんなの嘘っぱちも嘘っぱち、犬も食わぬ大法螺に決まりておるのよ。魔術と科学、『イギリス清教』と『ローマ正教』の戦争で不安と疑心の渦中にある心弱き者共を捕まえるために嘯いているに過ぎぬわ」ステイル「しかしそんな奴ら放っておいても問題ないのでは?彼らが何をしようと学園都市が勝手に対処するでしょう」ローラ「それがそうもいかぬのよ。その『科学の子』というイギリスの魔術結社でありけるからね」ステイル「馬鹿な!対『ローマ正教』『ロシア成教』との戦争の最中に学園都市との協力関係を乱しているというのですか?」ローラ「もちろんそうとは言うても結社の本拠地がイギリスにあるだけで『イギリス清教』との繋がりは殆ど無きものだけどね。彼らが学園都市の意向に注意を払わないのも不思議なことではないでしょう。でもこの戦争の中、徒に科学側との関係を悪しきものにするのは賢きことではないわ。という訳で、貴方には学園都市に潜入してもらうわ。その上で魔術結社『科学の子』を発見、彼らの目的を明らかにして頂戴」ステイル「彼らの目的が学園都市にとって好ましくない場合はそれを阻止しろ、ということですか」ローラ「勿論。そのために貴方に命じたるのよ」ニコッステイル「分かりました。それではすぐに学園都市に向かいます。それと最大主教(アークビショップ)……」ローラ「ん?何かしら?」ステイル「……何でまたそんな馬鹿口調なのですか?」ローラ「!!」ローラ「な、何を言うておるのよステイル!?ま、待ていなのよ!私も散々馬鹿口調馬鹿口調と罵られて苦心の末に見事正しき日本語を身に付けたるのよ!」ステイル「いえ、まったく以前と変わらぬ馬鹿口調のままですが……」ローラ「ががーん!なのよ……。それではこれまでの私の苦労は一体……」ずぅぅんステイル「ちなみに今回は誰に日本語を教えてもらったのですか?」ローラ「誰って、今回もつちみかどもとはるのヤツに……」ステイル「前にあいつはあてにならないと言ったでしょう!」ローラ「わ、私だって最初は神裂に教わろうとしとったのよ!!でも神裂のヤツ私が間違ったことを言いたる度に『このど素人が!!』と叱りつけたるのよ!かの如き鬼のもとで日本語を教わることなど聖書に刻まれたる如何な聖人にも難きことよ!!」ステイル「どうやったらそこまで神裂を怒らすことができるんですか……」ローラ「と、兎にも角にも、なのよ!ステイル、貴方は至急学園都市に向かい件の魔術結社を撲殺、滅殺、瞬殺してきなさい!!」
――学園都市、とある学生寮
ステイル「――という訳だ。協力しろ」上条「いやどういう訳!?前半はまだしも、後半は何だったの!?新しい萌えキャラの方向性ですか?『ドジっ娘馬鹿口調』萌え?」ステイル「顔と知性と品性のみならず、女性の趣味まで悪いとは……。上条当麻、僕は君の主からの加護の無さに同情を禁じ得無い」上条「……俺は部下からそこまで言われるお前の上司に同情を禁じ得無ぇよ」上条「……で、協力するのはいいにしても、俺は何をすればいいんだ?その漫画の神様が生み出した名作漫画の主人公みたいな名前の魔術結社がまだ何を企んでるかも分からないんだろ?」ステイル「いちいち難解な例えをするな。……確かに『科学の子』の目的は未だ不明だ。当面は僕と土御門で彼らの目的を探ることになる」上条「じゃあますます俺のできることはなさそうだけど」ステイル「君の出番が来るのは彼らの目的と潜伏先が分かってからだ。その時は僕と君の幻想殺しでやることになる。土御門はもう一つの仕事が忙しくて、そこまでは手伝えないらしい」
上条「もう一つの仕事……。学園都市側のスパイとしての仕事か……」ステイル「よく知らないけどそうだろうね。『科学の子』の目的を探るにしたって奴にやってもらう学園都市が掴んでいる情報を逐一知らせてもらうくらいのもさ。まあ、今回の相手はその程度で十分なんだけどね」上条「さっきも言ってたけど、それってその『科学の子』って奴らはそれほど強い魔術師じゃないってことなのか?」ステイル「そんな所さ。『科学の子』は数年前まで魔術結社にも満たない『結社予備軍』に過ぎなかった。それが活動規模と人員を増やし一応魔術結社と言われるまでになったのはつい最近のことだ。それほど厄介な相手にはならないだろう」上条「じゃあ俺は精々その保険、ってことか」ステイル「馬鹿に物分りのいいじゃないか。それに君にはそれ以外にもあの子を、禁書目録を守ってもらうという仕事もある」上条「おいおいッ!!奴らインデックスに手を出すつもりなのかよ?」ステイル「そんなことは言っていない。念のためだよ。魔術師がここに潜伏している以上、警戒してもらうのは当然だ。僕が真っ先に今回の事情を君に話したのもそのためさ」
上条「……分かった。インデックスのことは俺に任せろ。魔術師のことで何か分かったらすぐに知らせてくれよ」ステイル「言われなくたってそのつもりさ。君はただ僕からの連絡を待っていればいい。気楽なものだね」上条「現在進行形で『神の右席』から命を狙われている上条さんはどうやったら気楽でいられるのしょう…」とほほステイル「さあね。右手が着脱可能になるように練習でもすればいいんじゃないか?」上条「俺は超合金ロボットマジ○ガーZかよッ!!いや、待てよ……。カエル顔の先生に頼めば、あるいは……」ブツブツステイル「勝手にやってろ……。そうそう」上条「ん?」ステイル「柵川中学というのを知っているか?」上条「は?柵川中学?聞いたことねぇな。中学校のことならビリビリに訊けば分かるかも知れないけど……。て言うかどうしたんだよ、当然?」ステイル「いや、それならいい。じゃあ僕は引き続き情報収集に戻るよ」
上条「そうかい、よろしく頼むぜ」ステイル「いや、ちょっと待て」上条「なんだよ、まだ何かあんのかよ」ステイル「……『ケイオン』とはなんだ?学園都市が開発している兵器か何かなのか?」上条「……ステイル。まさかお前にそんなことを質問される日が来ようとは……。『兵器』……。そうだな、確かにあれは『兵器』だ。目映ゆいばかりの閃光と共に俺達の心を炎上させた、『萌え』という名の核兵器だよ。確かに俺も最初はバカにしてたさ『こんな何も起こらないダラダラした日常系アニメのどこがいいんだ』ってな。でもある時気付いたんだ。『日常は劇的であり、何気ない日々の中にドラマがあるんだ』ってことに。お前だって見たはずだ!1期の第11話で澪とりっちゃんが喧嘩するところを。見たはずだ。2期の9話でなんだかんだ言って唯の面倒を見てしまうあずにゃんのツンデレを。じゃあそこにドラマを感じたんじゃねえのか?ありふれた心のすれ違いや深まる友情に涙したんだろ?何気ない優しさや思いやりに枕を抱きしめずにはいられなかったんだろ?それを全部否定して、右手で触れれば消えちまうような幻想だったって言うのかよ!!違うだろ、お前だって気づいてるはずだ!その心に芽生えたものは紛れもない本物だってことに!!それならアニメとコミックスが終了したくらいで絶望してんじゃねぇ!!始めようぜ!俺達の『けいおん!』を!!ってあれ?いつの間にいなくなってたんだ……。ていうか、なんだったんだ、あいつ?」
――風紀委員一七七支部佐天「――ってことがあったってわけよ。もう最悪……」ぐでぇ初春「それは災難でしたね。でも一人で恐喝の現場に乗り込んでいくなんて感心しちゃいました!」佐天「えッ!あ、あははは……」テレテレ白井「感心してどうするんですの初春。その殿方の言った通り、風紀委員でもない一般の学生がそんな危険な真似をするなんてよろしくありませんわ」佐天「す、すいません……。って白井さんもあの人と同じこと言うんですか?」白井「少なくとも同じ意見ではありますわね。しかし初対面の女性に向かってそんな口の聞き方をするなんて失礼にも程がありませんの」佐天「そ、そうなんですよ!!一人のレディに向かったいきなり『馬鹿』って言うなんて礼儀がなってないっていうか、横暴っていうか……」初春「でも不思議ですね。カードを使って炎を起こす能力者なんて」白井「そう言われてみればそうですわね。発火能力は珍しい能力でもありませんがカードを使って能力を発動させるなんて聞いたことがありませんわ」
初春「うーん……。『自分だけの現実』を強化するための条件だったりするんでしょうか?もしくはそのカード自体が可燃性の物質で、炎を強めているとか?」佐天「そう言えばあのカード、変な模様が書いてあったような……」初春「どんな模様だったか覚えてますか?」佐天「うーん……一瞬だったからなぁ。えーと、確かこんな感じの……」カキカキ白井「ん?なんですの、これ?」初春「アルファベット、じゃないですよね?どこかの文字かもしれません。ちょっと調べてみます」カタカタカタ固法「ちょっと貴方たち、いつまでおしゃべりしてるの!少しは仕事しなさい」白井初春「はッ、はい(ですの)!!」固法「それに佐天さんも、何度も言うけどここは遊び場じゃないのよ」佐天「うー……。すいません…。そ、そうだ!私何か差入れ買ってきますね!」ガタッガチャ ドン!佐天「行ってきはにゃッ!!」
御坂「きゃあ!!佐天さん、ゴメンなさい!大丈夫?」佐天「だ、だいじょうぶれふ(鼻が……!)」白井「まあお姉様!わざわざ来てくださったのですか?」御坂「ええ、やっぱりちょっと気になって」佐天「?」固法「御坂さんまで……。あのね貴方たち、風紀委員支部は――」御坂「あ、固法先輩。これ差入れです」ガサ固法「……ッ!!これは『武蔵野牛乳』!!ちょうどなくなってたから買いに行かなくちゃって思ってたのよ。ありがとう御坂さん。今日は好きなだけここにいていいわ」フフフフ御坂「ありがとうございます♪」佐天(何この扱いの違い……)
御坂「それで黒子、何か分かったことはあった?」白井「残念ながら何も。それらしい情報はありませんでしたわ」ハァ初春「何かあったんですか?」御坂「それが、私のクラスメイトの行方が昨日から分からなくなってて……」初春「ええッ!!行方不明なんですか!?」佐天「なに、どうしたんですか?誘拐?」御坂「いやぁ、さすがにそれはないと思うんだけど……。 私、その子から相談を受けてたの」佐天「相談、ですか?」御坂「能力のレベルのことでね。中々レベルが上がらないからどうしようって。私も力になってあげたかったんだけど、その子、精神系能力でさ。私は発電能力だからイマイチ力になれなくて……」佐天「へぇー。常盤台の学生でもそんなことに悩んだりするんですね」
御坂「常盤台は入学条件がレベル3以上なんだけどその子はレベル3から能力が向上しないことが悩みだったの。常盤台は確かに優秀な学校かもしれないけど、実力主義的で特に能力に対するプレッシャーは他の学校よりも強いでしょうね」初春「そのプレッシャーに耐えられなくて家出した、ってことですか?」御坂「うん、そうなんじゃないかなって」佐天「お嬢様学校も色々と大変なんですね」白井「もちろんそれだけではありませんわ。高度な学習カリキュラム、厳しい校則、学生同士の苛烈な競争意識……。神経をすり減らす要因は数限りありませんの。私も学校では派閥作りにしか興味がないようなクラスメイトの相手をし風紀委員のお仕事では口うるさい先輩の小言を聞く毎日で――」固法「ああッ?」ギロリ白井「す、素晴らしく偉大な先輩の後を追うのに必死で、ま、毎日大変ですの……」あせあせ初春「あははは……。でも家出にしてもそこで何か事件に巻き込まれている可能性もありますし心配ですね」白井「その方のルームメイトにお話を訊いた所、行方が分からなくなっているのは正確には一昨日の夕方からだそうですの」初春「ということはいなくなったのは学校が終わった後、ということですか。御坂さん、その日その人はどんな様子だったんですか?」御坂「うーん……確かに元気はなかったけど、家出する程ではなかったような……。でも『このままずっとレベル3のままだったらどうしよう』って言ってたっけ」初春「……やっぱり本格的に捜索してみましょう。今日監視カメラの映像の申請を出せば明日にはその人の足取りを追えるはずです」白井「そうですわね。私たちも寮監ともう一度相談してみますわ」
御坂「ありがとう、黒子、初春さん」白井「んまぁ!!お姉様に感謝していただけるなんてッ!!お姉様、もっと言ってくださいまし!『ありがとう黒子、最高だよ黒子、愛してるよ黒子』と!!さあッ!!」ザササ御坂「あんたはたまに感謝してあげたらすぐ……コラ、抱きついてくるな!!」バリバリ白井「んああぁぁー!!お姉様の愛のムチ、イイッ!!でも今私が欲しいのは飴よりも甘美なお姉様のお言葉ですのに!!」ビリビリ御坂「うるさいッ!!」ビリッボンッ!初春「ああー!!私のパソコンが……!」佐天(やっぱりみんな能力のことで悩んでるんだな……。でもすでにレベル3のその人と、いつまで経ってもレベル0の私の問題は違う。私、どうしたら……)固法「あ、牛乳なくなっちゃった」佐天「早ッ!!」
――第七学区 セブンスミスト前佐天「初春のやつ、遅いなぁ。もう待ち合わせ時間過ぎてるよ」ピローン♪佐天「メール?」From:初春飾利Subject:ゴメンなさい!!寝坊しちゃいました(ノд・。)急いで向かってるのでもう少し待っていてくださいm(。≧Д≦。)m佐天「寝坊!?久しぶりの買い物だっていうのに!着いたら、お詫びに、クレープおごってもらうよ、っと」ピッピッピ ピローン♪佐天「はぁ……初春には一番高いやつ買ってもらおう」佐天(でも最近初春、風紀委員の仕事で忙しそうだったしな。しょうがない、今回は大目に見てやろうかね。クレープはおごってもらうけど。そして初春にはチーズチョコバナナ明太子クレープを、くふふふぅ……)「……だからさっきも言っただろう。僕にそんな義理はない。自分でどうにかしろ」佐天「あれ?あの人って……」
『お願いだから頼む!全財産が入った財布を落としちまって、食料が買えないんだ。このままじゃ俺はインデックスに……』『お腹減った!お腹減った!お腹減った!!もう限界なんだよ無理なんだよ耐えられないんだよ!!食べられるものならなんでも……。……そうだとうま、知ってた?パプアニューギニアに住むフォア族はね大切な人と一体になるために、その肉を食らうという文化を持っているんだよ……』『……インデックスさん、なんでそのようなことを突然仰られたのですか?そしてなぜゆっくりとこちらへ……。じょ、冗談だよな?上条さんは普段ろくな物食べてないし、きっとおいしくないと思うのですがッ!?うわぁぁぁ!!助けてくれステイル!!インデックスの目が飢えた野生のベンガルドラのそれだッ!!このままじゃ今夜の上条家の食卓にはイマジン鍋が並ぶはめにッ!!』「はぁ……。分かったよ。適当に食料を差入れてやる」『なるべく早く頼むぞ!!そうじゃなけりゃ俺は……ぎゃああぁぁぁ!!』ピッステイル「まったく。相変わらず手間のかかるやつだ」佐天「こ、こんにちはッ!」
ステイル「まったく。相変わらず手間のかかるやつだ」佐天「こ、こんにちはッ!」ステイル「ん?君は……」佐天「そうです、あ、あの時の『馬鹿な』中学生です!」フンッステイル「あー、そうか。東洋人の顔は見分けが付かなくてね。分からなかったよ」佐天 イラッ!ステイル「で、まだあの時言いたりないことでもあったのかい?」佐天「べ、別にそういう訳じゃありません。ただ姿が見えたから……。こんな所で何やってるんですか?」ステイル「仕事さ。もちろん君には何の関係ないもないけどね」佐天(ホントにこの人口が悪いっていうか意地悪っていうか。大体なんで私わざわざこの人に話しかけたんだろう?)佐天「あ、もしかして何か悪こと企んでるんじゃないですかぁ?貴方学園都市の人じゃないですよね?」ステイル「確かにこの街の人間じゃないが、なぜ分かった?」佐天「ここでそんな修道服着てる人なんてほとんどいませんしこの前『この街の連中は~』とか言ってたじゃないですか」ステイル「それほど突飛な格好だと、僕は思わないけどね。さっき見た白い学ランを着た五月蝿い男の方が僕よりも注目を集めてたけど」佐天「(白い学ラン?)やっぱり海外から学園都市を乗っ取りにきたエージェントじゃ……ってあれ?この前能力使ってましたよね?学園都市以外でも能力開発ってしてるんですか?」ステイル「君はくだらない映画の見過ぎだ。それに前言っただろ?僕は能力者なんかじゃない」佐天「えッ!?じゃあこの前の炎はどうやって……」ステイル「君だって名前くらいは聞いたことはあるだろ。『魔術』さ」佐天「『魔術』って『0930』事件の!?外国の科学的超能力開発機関のコードネームですよね?」ステイル「そう言えば科学側はそういう解釈をしていたんだったな」佐天「じゃあやっぱり悪モノじゃないですか!!早く警備員に通報しないと……」オロオロ
ステイル「落ち着け。そして携帯から手を離すんだ。面倒事は御免だからね。僕は別に学園都市をどうこうしたいわけじゃない。魔術側も一枚岩じゃないんだ。あらゆる組織と宗派に分かれている。『0930』事件を引き起こし、科学側と敵対してるのは『ローマ正教』だろ?僕たち『イギリス清教』は少なくとも君たちと敵対する気はない」佐天「あれ?そうだったっけ?でも結局は学園都市とは別の場所で能力開発を受けた能力者ってことですよね?」ステイル「何度も言わせるな。『魔術』は『超能力』とは違う。『超能力』については詳しく知らないが、『魔術』とは生命力を魔力に変え魔法陣や霊装という式を通して超常現象を起こす宗教学的な側面を持つ技術のことだ」佐天「は、はい?魔力?霊装?」ステイル「ま、科学側にいる君たちには理解出来ない話だろう」佐天「つまりは『超能力』とはまったく別のものってことですか?」ステイル「そういう事だ。基本的に才能に依拠している『超能力』とは……いや、その目は信じていない目だな」佐天「だってそれってゲームに出てくるようなメラゾーマやアギダインみたいなのがあるってことですよね?そんなの信じろって言われても……。大体そういうのって普通隠すものですよね。あっやしーなぁ」ジトー
ステイル「隠す必要があるのは個々人の魔術の秘密であって『魔術そのもの』じゃない。実際魔術が公に晒された例も歴史的にはあるしね。そもそも僕からしてみれば未だに『超能力』の方が信用できない。はっきり言って不気味だよ。君だって人の心を読み取ったり、自由自在に瞬間移動できたりすんだろ?」佐天「……できませんよ、私には。レベル0なんだから」ステイル「レベル0?」佐天「能力を持たない人のことです。つまり超能力なんて使えない、一般人ってことですよ」ステイル「フン、つまりは落ちこぼれってことか」佐天「落ちこぼれってッ!!だからそんな言い方しなくても……。ああッ!もう、そうですよ!!私は『馬鹿』で『落ちこぼれ』なんです!『力』なんてないんです!!そんなんだから困ってる人がいても助けられないし何かあって私は友達に頼ることしかできないんです!!」
エーナニアレ ケンカ? ワカレバナシデモシテンダロステイル「お、おいッ!!いきなりそんな大声出すな!」ウワーアノカレシゼッタイフスキルアウトダヨ カミアカイシ アイテチュウガクセイジャナイ? ロリコンスキルアウト?ステイル「はぁ……」ステイル「君はなぜ魔術が生み出されたか知ってるかい?」佐天「なん、ですか、いきなり?」ぐすステイル「才能のない人間が、超能力のような才能のある人間に対抗するためさ。魔術はそういう技術なんだ。君に超能力の才能があるのかないのか僕には分からないが誰かを助けたり護ったりするのに才能が絶対必要なわけじゃないだろ?君が言ってる『力』っていうのは、そういう、ものなんじゃないか?」ポリポリ佐天「……何なんですか。馬鹿にしたと思ったら今度は励ましたり……。意味が分かりません……」ステイル「僕も意味が分からない。こんな説教臭いこと言うのは趣味じゃないんだ。……きっとどこかの説教馬鹿の影響に違いない」
佐天「あーもういいです!!大丈夫です!!」ゴシゴシ佐天「ウジウジ悩むなんて私らしくないし。よく知りもしない人にここまで言われるなんて情けないです!」ステイル「そうしてくれると助かるよ」ハァ佐天「名前!」ステイル「は?」佐天「名前教えてください。『よく知りもしない人』よりは『名前くらい知ってる知り合い』に説教されたと思ったほうがましですからねぇ」ステイル「君の言っていることは本当に分からない。理解に苦しむよ。……僕の名前はステイル=マグヌスだ」佐天「私はこの前も名乗りましたけど佐天涙子と言います。ていうか何歳なんですか?煙草吸ってるから二十歳以上ですよね?」ステイル「いや、一四だけど」佐天「はぁ!?一四歳!!ってことは私の一個上!?全然見えない!!ていうか私は一個上の見ず知らずの人にあそこまで説教されたってこと……?」ずぅぅん
ステイル「そ、そこまで説教していないだろ!?」佐天「しましたよ!!いや、したよ!!うん、ステイル君ね。ちゃぁんと覚えたから!もう敬語使ったりしないから!!」ステイル「はぁ……もう勝手にしてくれ」佐天「と、当然だよね!落ち込んでる『知り合い』を励ますくらい。うん、うん。ステイル君が落ち込んだ時には私がビシッっと励ましてあげるよ。あは、あはははは……。はぁ……。まあこんなことで落ち込んで、私まで『失踪』するわけにもいかないし」ステイル「『失踪』?なんのことだ?」佐天「最近『失踪』、っていうか『家出』が流行ってるんだって。悩みや不安を抱えてる人がいなくなることが最近多いって聞いたよ。私の友達のクラスメイトもいなくなっちゃって、まだ行方が分かってないし。でもその失踪が少し変で、初春、わたしの友達の風紀委員も本当に家出なのか疑ってたな」ステイル「その『失踪』はいつから起こってるんだ!」ガシッ
佐天「えッ?えーと御坂さんから聞いたのが一昨日でその人が失踪したのが確かその前の日、いや二日前だったから……。私が知ってるのは四日前からだけど」ステイル「……」佐天「あ、あの、ステイル君?さすがにずっと肩を掴まれているのは苦しいといいますか、は、恥ずかしいといいますか……///」ステイル「ああ、すまない。そうか『失踪』、ね……」佐天「あの、どうかしたの?」ステイル「いや、別に。大したことないじゃない。じゃあ僕はそろそろ行くよ」佐天「ああ、じゃあ私も。友達がもうすぐ来ると思うし」ステイル「ちょっと待て。これを」スッ佐天「何これ?あ、あの時のカードだ」ステイル「日本では確か『お守り』というものがあるんだろ。それみたいなものだ」
佐天「『みたいなもの』って……。なんかテキトーだなぁ。これも『魔術』なの?」ステイル「そうだよ」佐天「……突然爆発したりしないよね?」ステイル「君が僕のことを他人に話さない限り、ね」佐天「やっぱりステイル君は悪モノだったんだ!?おのれ魔術師!!」ステイル「冗談だよ。それは本当に『お守り』みたいなものさ」佐天「ホントに?ま、ありがたくもらっておくよ」ステイル「それは少しばかり君を守ってくれるはずだ。これで君がまた馬鹿なことをしても僕が助ける義理はなくなる」佐天「ぐぅ……。今に見ておきなよ。私もいつかステイル君よりすごい『力』を身に付けてやるんだから」フンスステイル「フ……。その時を楽しみにしてるよ。まあ、能力者に遅れを取るつもりはないけどね」タッタッタッタッ……
佐天「あ、ありがとう!」佐天(『お守り』ねぇ。能力を身に付けるってことは学業成就、とか?もしかして私にも『魔術』が使える『お守り』だったりして!?いや、そんなの『お守り』って言わないか)佐天(『才能のない者が才能のある者に対抗するための技術』か……。ていうことは私にも使えるってことなのかな?だったらちょっとほしいな。ステイル君みたいに炎を出せたりしたらカッコいいだろうな……)ホワンホワン初春「佐天さん!!遅れてすいません!!」ドン佐天「うわぁ!!う、初春!?」サッ初春「すいま、せん!ハァ、遅れ、ちゃって。昨日、夜遅くまで、ハァ、ハァ風紀委員の仕事を、してた、ので……」グッタリ佐天「お、落ち着いて初春!もう走ってここまで来たの?そこまで急ぐことなかったのに」初春「だって、佐天さん、ハァ、今日のこと、楽しみにしてたし……」佐天「その前に初春に倒れられたら元も子もないよ。その様子だと、まだ朝ごはん食べてないんでしょ?セブンスミストに行く前に、クレープ屋さん寄ってこうよ」
初春「そうですね。はぁ、私もお腹ペコペコです。あ、佐天さんの分も私が出すんだった……」ずぅぅん佐天「へへー、ゴチになりますッ!ささ、そうと決まれば早く行こう行こう!」初春「あ、待ってくださいよ佐天さん!」タッタッタッタッ佐天「そう言えば夜遅くまで風紀委員の仕事してたって?」初春「はい、そうなんです。前に御坂さんが言っていたクラスメイトの件なんですけど中々足取りがつかめなくて。はぁぁぁー……」佐天「こら、女の子が大口開けて欠伸なんてしちゃいけません。それにしても大変だね。でもこの前『監視カメラの映像を使って足取りを確かめる』って言ってなかった?それでも分からないの?」初春「そうなんです。最後に監視カメラに映っている姿は確認できたんですがそれから先の足取りが分からないんです」佐天「つまり監視カメラの映像に映らない場所に行った、ってことだよね」初春「そうなりますね。学園都市にも監視カメラの死角をゼロにすることはできませんから。それに御坂さんのクラスメイト以外にも、行方不明になる学生が増えてきてるみたいなんです」佐天「『失踪』の流行か……。ねえ初春、これって本当に『家出』なのかな?」初春「分かりません。それについては風紀委員でも意見が分かれてるんです。確かに失踪者はみんな友達関係や学校のこと自分の能力のことで悩みを抱えてたみたいなんですけど『家出』するほどのものかって言われると……」佐天「そもそも学園都市の学生ってほとんど学生寮で暮らしてるわけだからあんまり家出する意味がないよね。常盤台の寮みたいな所だと違うのかも知れないけど」初春「そうですよね。それに失踪者が出始めてからそろそろ一週間経ちますけどまだ誰も見つかっていないのも気になります。近々風紀委員と警備員の合同対策本部が設置されるんじゃないかって固法先輩が言ってました」佐天「家出だったら人騒がせ話だよね。いくら周りに家族がいないっていっても友達や先生、初春たちみたいな風紀委員にも迷惑をかけてるし」初春「私たちの場合はそれも仕事のうちですけどね。本当にただの家出だったらいいです」
佐天「私はぜっったい家出なんてしないよ!もうみんな迷惑をかけるのは嫌だしね……」初春「佐天さん……」トコッ、トコッ、トコッ初春「そうですよ。佐天さんには一杯迷惑かけられてきましたから。そろそろ私が佐天さんに迷惑かける番です」佐天「おぉ、言ったな初春!初春にも家出するくらいの悩みがあるんだ?」初春「そりゃあ私にも悩みくらいあります!固法先輩はガミガミ五月蝿いし、白井さんは変た……ちょっとおかしいし。そういう佐天さんには悩みあるんですか?」佐天「もちろん!私は花も恥じらう乙女なんだよ!悩みの一つや二つ――」初春「へー、乙女な佐天さんにはどんな悩みがあるんですか?恋の悩みとか?」佐天「こ、こここ、恋ッ!?そ、そんなのあるわけないじゃん!!」初春「そうですよね。佐天さんは『花より団子』って感じですし。食べたいものが多すぎていつも悩んでるんじゃないですか?」
佐天「うーいーはーるぅー……。それはちょーと聞き捨てならないなぁ。初春におごってもらうクレープ、一個追加だねこれは」初春「冗談ですよ、佐天さん。それにそんなに甘いもの食べると太りますよ」佐天「むぅー。どうせ私は食べ物のことしか頭にありませんよー」初春「拗ねないでくださいよ。あ、そうだ。佐天さんに伝えておくことがありました」佐天「何?大食いチャレンジのお店情報とかじゃないでしょうね?私は別に大食いキャラじゃないんだよ」初春「違いますよ。前に言ってた助けてくれた人が持っていたカードの模様のことです」佐天「へッ!?ああ、あれね……。そ、それで何か分かったの?」佐天(一応ステイル君にさっき会ったのは言わないほうがいいかな?何か訳ありみたいだったし。うん、別にこのカードが本当に爆発しないか怖がってるわけじゃないんだよ)初春「どうやらあの模様、『ルーン』っていうみたいですね」佐天「『ルーン』?」初春「はい、えーと……」ガサゴソ
ぱか カタカタカタ初春「『ゲルマン語の表記に用いられた文字で、ラテン文字が普及するまでは広く使われていた。現在では占いや宗教的儀式、呪術などに見られる』とあります。その人もお守りみたいな感じで持ってたのかも知れませんね」佐天「『お守り』……」佐天(ステイル君が本当に言った通り『魔術』を使う人なのかそれともあれは『超能力』だったのかは分からない。でもこれが『お守り』で、少しだけ私を守ってくれるのは本当であるような気がする……)ギュッ佐天「……ありがとう、ステイル君」ぼそ初春「何か言いました?」佐天「ううん、なぁーんにも!!さあ初春、今日は思いっっきり遊ぶよ!まずはクレープ屋さんのメニュー全制覇だ!」ダッダッダツ初春「そ、そんな沢山無理ですよ!私のお金全部なくなっちゃいます!!」タッタッタッ……
――第七学区、とある廃ビルローブの女「それで、今のところ何人連れてきたのかしら?」黒衣の男「現在一〇人の能力者を奪取することに成功しています」ローブの女「『奪取』なんて言い方しちゃダメよ。あの子たちは自らの足でここに来たんだから。それにあの子たちには私たちの輝かしい未来の為に協力してもらわなきゃいけないのよ」黒衣の男「しかしそろそろ『必要悪の教会』の連中に感づかれるのでは?学園都市に侵入したのはおそらくすでに発覚しています」ローブの女「そんなことは百も承知よ。それに貴方がそれを心配する必要なんてないわ。貴方ただ私の言うことを聞いていればいいの。そうすれば『完全なる力』をその手にできるはずよ」黒衣の男「し、失礼しましたッ!!」ローブの女「それじゃあ早く自分の仕事に戻って。やるべきことはまだまだあるわ」黒衣の男「はッ!!」タッタッタッ……ローブの女「フフフ……さて、『必要悪の教会』はどのくらい頑張ってくれるのかしら?」
――第七学区、とある公園
ガコンッ上条「すげぇ、今日は普通に出てきた……。不幸じゃない……。おい、ステイル、『イカスミカルピス』と『ホットラムネ』、どっちがいい?」ステイル「なんだその二択は!?もっとましなチョイスはできなかったのか」上条「せっかく上条さんがインデックスの捕食(?)から救ってくれたお礼にジュースでもおごってやろうというのに。じゃあ『イカスミカルピス』な」ポイッステイル「しかもよりによってこっちか……。まあいい」プシュゴクゴクステイル「ッ!?なんだこれは……!学園都市でもサマンの呪いを開発していたというのかッ!!」上条「はいはい、もうそういうリアクションはいいから。それで魔術師について何か分かったのか?」
ステイル「……ああ、どうやら奴らはこの街の人間を誘拐しているらしい」上条「誘拐!?でもそんな派手なことをやれば学園都市側に簡単に気づかれるんじゃないのか?」ステイル「どうやら奴らは魔術でターゲットの行動を操り、『家出』に見せかけているらしい。その『家出』が発生した時期も『科学の子』が侵入した時期と一致するしまず間違いないだろうね」上条「その『科学の子』って連中の目的は、『完全なる力』っていうのを手に入れることだろ?それとどう学園都市の人間を誘拐することに繋がるんだ?」ステイル「さあね。『完全なる力』を得るというお題目がどこまで確かなものか分からない。科学に疎い魔術師たちに能力者の力を見せることで結社の求心力を強めるつもりかも知れない。言ってみればただのパフォーマンスの道具に使おうってわけさ」上条「でもそれなら誘拐された人たちに危害を加えている可能性は少なくなるな」ステイル「そうだね。そもそも彼らに学園都市を敵に回す理由はないはずだ。土御門に確認させたが、誘拐された人間の中にそれなり強い能力者もいるそうだし案外すでに自滅しているかもね」
上条「そんな間抜けなオチが待ってたら助けるんだけどな……。それにしても土御門の奴、忙しいって言ってた割には仕事が速いな。多重スパイの名前は伊達じゃない!ってとこか」ステイル「いや、土御門にやってもらったのは情報の確認だけだ。学園都市で起こっている誘拐については僕自身がつかんだ情報だよ」上条「はあ?この街の住人でもないお前がどうやって学園都市で失踪が起こってるなんて分かったんだよ?」ステイル「たまたま知り合った学生に聞いてね。この街の人間は総じて警戒感の薄い連中だと思っていたけど、案外まともなのもいるものだ」上条「……ちなみにお尋ねしたいのですが、それは男、なんですよね?」ステイル「いや、女の子だが?」上条「んだと!?ふざけんじゃねぇ!!こっちは腹ペコのインデックスにマジで食われる5秒前、MK5だったのに女の子と仲良くなってた、だと……。リア充爆発しろ!!」ステイル「なッ!?そ、そういうのじゃない!!今日もたまたま会っただけで……。大体そんなことは一番君には言われたく――」上条「ああ、なんで私上条当麻が出会う女の子は皆噛み付いたり電撃浴びせてきたり日本刀アクションゲームに引きずり込もうとする奴らばっかりなのでしょう……」ずぅぅん
ステイル「……」ステイル「奴らの目的が誘拐なら、この街に長居するとは考えられない。早急にケリを付ける。土御門の情報から奴らの潜伏先がこの第七学区であることはほぼ確定したから魔術の痕跡を辿って潜伏先が見つかり次第一気に叩く。いいな?」上条「はぁ……分かったよ。で、俺はその潜伏先が見つかるまで待機してりゃあいいんだな?」ステイル「そんなに時間をかけるつもりはない。いつでも出撃できるようにしておくことだね」上条「つっても俺の場合、この右手を使う以外に選択肢はないんだけどな」ステイル「じゃあ僕は潜伏先の探索に戻るよ」上条「ああ。そうだ、ステイル。今日うちに飯食いに来ないか?誰かさんが差し入れてくれた食料が大量にあることだし。さすがにあの量なら暴飲暴食暴力の三つそろったインデックスさんにも一日で食い切られる心配がないからな」ステイル「……遠慮しておく。君と馴れ合うつもりはないね」上条「……そうか。じゃあそっちのほうは任せたぜ」ステイル「君に言われるまでもない」クルッタッタッタ……上条「男のくせツンデレかよ。律儀に頼みを聞いてくれてる時点すでに馴れ合ってんじゃん」
――第七学区、ゲームセンター『ACQUA Back」前
佐天「いやぁー、今日は久々に思い切り遊んだなぁ!」初春「そうですねー。それのおかげで財布はかなり寂しくなっちゃいましたけど」トホホ佐天「何言ってんの初春、人生は楽しまなくちゃ損!!まだまだ若いんだからさ」初春「佐天さんなんかオバサン臭いです。それにしてもひどいですよ!チーズチョコバナナ明太子クレープなんてゲテモノ食べさせた上に昼食であんなメニュー頼むなんて……」佐天「♪明太子パスタにチーズリゾット、ドルチェピッザはバナナのせ~♪また食べに行こうね!」初春「絶対に嫌です!!うッ……今でも私の口の中で世界のまずさが競い合うように地獄の交響曲を!」佐天「冗談だって。さ、今日は十分遊んだし、そろそろ帰るかな」初春「そうですね。もう完全下校時間も近いですし」
佐天「あぁー、一度でいいからオールでカラオケとかしてみたいなぁ。完全下校時間過ぎたらお店はもちろん交通機関まで止まっちゃうなんて厳しすぎだよ」初春「そうですね。大学生の多い第五学区とかなら別かもしれませんけど。そうだ!また前みたいにパジャマパーティーやりたいですね」佐天「そうだね!あ、でもこの前みたいに白井さんのスケスケネグリジェは勘弁して欲しいかも」初春「ですよね。同性でもさすがに目のやり場に困るというか……。もう白井さんの“アレ”さ加減には私もついていけません。一七七支部の最後の常識人である私がいなくなったらあそこはどうなっちゃうんでしょう」はぁ佐天「(初春が段々毒舌キャラに!?)こ、今度は御坂さんと白井さんも一緒に遊びたいよね」初春「そう言えば放課後一緒にお茶することはあっても、一日中遊ぶのって最近してないですね」佐天「そうそう、最近御坂さんって妙に忙しそうにしてない?もしかして御坂さんに彼氏がいるって噂、本当なのかな?」初春「その話、白井さんの前では絶対にしないでくださいね。『アノルイジンエンガー!!』って当然叫び始めますから。でも御坂さんなら彼氏がいてもおかしくないですよね。レベル5でお嬢様で、その上可愛いなんて、モテないはずがありません!」佐天「でも御坂さんが彼氏とイチャイチャしてるところなんて想像できないよね。なんと言ってもツンデレだし」
初春「んー、ああいうタイプの素直になれない女の人って男の人はちょっと苦手だったりするんでしょうか?」佐天「何言っての初春、ツンデレは世界の正義だよ!!ジャスティスだよ!!ツンデレに萌えない男などいるだろうか?いやいるわけないッ!!」グッ初春「どうしたんですか佐天さん!?なぜいきなりそんな主張を」佐天「いやあ、天の声が突然聞こえてきてね……。あ、私晩ご飯の買い物して帰るから」初春「そうですか。じゃあ私はこっちなので。あ、そうだ佐天さん、この前みたいに危険なことに首を突っ込まないでくださいよ。御坂さんみたいに、あっという間に悪い奴らを蹴散らしたりなんてできなんですから」佐天「もう、初春は厳しいなぁ。分かってるって。じゃあまた明日、学校でね」初春「はい、また明日」タッタッタッ……佐天(いやあ、今日は遊んだ遊んだー。まあ、私の方も今月の生活費は心許ない感じになっちゃったけど……)タッタッタッ佐天(でも御坂さんに彼氏か……。それが本当だったらどんな人なんだろう?きっと年上だよね。意外に御坂さんって子どもっぽいところあるからそういう部分を受け止めてくれる男の人に惹かれるんじゃないかってルイコはルイコは推測してみる)
佐天(でも御坂さんツンデレだからなぁ。きっと自分の気持を素直に出せてないんだろうな。しつこく言い寄られてる男を諦めさせるっていう名目でデートに誘ったり罰ゲームって言って携帯のカップル契約してたりしたら面白いなぁ……。ってこれじゃあ付き合ってなくない?片思い?)佐天(ああ、私も恋したいなぁ。もう中学生なんだもん。恋愛くらいしなくちゃね!でも私これまでモテたこととかないしな。女子力低いのか?まあ、いつも友達のスカートめくってる女の子っていうのもちょっと考えものだよね……)佐天(よーし、これを機にイメチェンでもしてみようかな。はッ!ツンデレは正義!なんだから私もツンデレキャラになればいいんじゃん。『あ、あなたのためにスカートめくってるわけじゃないんだからッ!』あれ?なんか違う?)佐天(とりあえず形から、髪型をツインテールにでもしてみるか。いや、それだとツンデレじゃなくて変態淑女に――)ドン佐天「キャッ!?」「あら、ごめんなさいね」
佐天「い、いえ!?こちらこそすいません!」ぺこり佐天(あー、妄想のせいで前見てないなんて……。妄想力だけはレベル5だよ。気をつけなきゃ)タッタッタッ「ねえ貴女」佐天「は、はい?」佐天(なんだろうこの人。外国の人?服もなんだか古めかしいっていうか……)「貴女はどこの魔術師さんかしら?」佐天「えッ!?ま、魔術師?」「貴女からは僅かだけど魔力を感じるわ。それで魔術師じゃないなんて言い逃れは難しいと思うけど。でもその様子だと戦闘向きの魔術師ってわけでもないみたい。諜報担当かしら。私たちのことでも探っていたの?」ズズズ佐天「ち、違います!!何のことですか?私は魔術師なんかじゃ――」佐天(どういうこと!?魔術師って!?この人もステイル君みたいな魔術師なの?でも何で私が……)
「そんなに動揺しちゃって……。とっても可愛いわ、貴女って」ズズズ佐天(ゾクッ!!)佐天「わ、私急いでるので!!」ダッダッダ「あら、そんなに急いでどこに行くの?」佐天(逃げなきゃ!!よく分からないけど、この人は何かヤバい!!)ローブの女「貴女は私と一緒に来てもらうのよ?」スッ佐天「!?」ドンッ!!佐天(う、しろから……たす、けて……)ドサッローブの女「ウフ……」黒衣の男 ズズッローブの女「連れていきなさい」黒衣の男「は!!」
――風紀委員一七七支部
白井「あーーッ!!だめですわ、何も分かりませんの!!」ドサッ御坂「うーん、ここまで調べて何も分からないなんて」白井「失踪する直前の映像をいくら調べてみても、失踪者に不審な動きはありませんし失踪者に共通する要素もすべて第七学区で起こっているということ以外に見当たりませんの。お姉様、やはりこれは単なる家出なのではないでしょうか?」御坂「ここまで何もないとそう考えたくもなるわね。でも……」白井「そうですのよね、家出をするには動機が弱すぎますの。失踪者の周りの人に聞いても失踪者が抱えていた悩みは誰もが一度は抱きそうなものばかり。確かに悩みなんて人によって捉え方が違うものですがそれならとっくに学園都市は家出した学生で溢れかえっていますわ」ぐでー御坂「そうよね。何か明らかにおかしいのは分かってるんだけどその証拠がまるで見つからないって感じ……。あ゛ぁーー!!なんかこう、イライラする!!」ビリビリ
白井「このままでは黒子もストレスで失踪してしまいそうですの!お姉さまぁーん♪ここはお互いのストレスを解消するためにスキンシップを!!」御坂「いきなりあんたは何言ってのよ!!」白井「何を仰りますのお姉様!これは、ハァ、やむを得ず行う緊急手段ですわ!肌と肌を通わせることによって、ハァ、リラックス効果が、ハァ得られることは、ハァ、科学的に証明されてますのよ、ハァハァ。さあお姉様!!ハァハァ、黒子と抱きしめるという会話をッ!!」御坂「ハァハァ気持ち悪いのよッ!!だ、か、ら、勝手に抱きつくな!!」バリバリ白井「ああぁぁーんッ!!この電撃でお姉様のストレスが解消されるなら本望ですわ!!それに私まで気持ちイイなんて、これはなんという永久機関ですの!!」御坂「いい加減黙りなさい!!」バリバリ白井「ああぁぁーーんんッ!!ストレスフリーですの!!」固法「五月蝿い!!こっちまで気が散る!!」バンッ白井御坂「す、すいません……」
固法「あー、ほんとイライラするー!飲まなきゃやってられないわ」ゴクゴク御坂「固法先輩、今日牛乳何杯目?」ヒソヒソ白井「分かりませんが、足元に4つほど武蔵野牛乳のパックが落ちていますわ。もう完全に牛乳ジャンキーですの」ヒソヒソ固法「あぁ!?あんだって?」ギロリ白井「な、何でもありませんの……(完全にスキルアウト時代に戻ってますわ)」ガチャ ドン!初春「し、白井さん!!大変ですッ!!」白井「どうしましたの初春!?そんなに慌てて」御坂「何かあったの?」初春「佐天さんが、佐天さんが……」白井「佐天さんがどうかなさったのですか?」初春「佐天さんが行方不明なんです!!」
白井「な、なんですって!?」御坂「そんな!?行方不明って、もしかして例の……」初春「さ、佐天さん……佐天さん……!!」オロオロ白井「ひとまず落ち着きなさい初春!固法先輩!!」固法「分かったわ。とりあえず他の風紀委員支部に佐天さんの情報を掴んでいないか問い合わせてみる」ガチャ御坂「それにしても、佐天さんまで……」白井「初春、行方が分からなくなる前の佐天さんはどんな様子だったんですの?」初春「は、はい?」白井「何かに思い悩んでいたとか、何か思い当たることはありませんの?」初春「……白井さん、それってどういうことですか?」白井「いや、だから佐天さんが自ら姿を消すような理由はあったのかと――」初春「佐天さんは自分からいなくなったりしません!!」固法白井御坂「!!」
初春「佐天さんはそんなことしません!!絶対にありません!!昨日も言ってました。絶対家出なんてしないって、みんなに迷惑かけるのが嫌だからって!!だから、わたし、佐天さんがまた、事件に巻き込まれたんじゃ、ない、かって……。うッ、うッ、うー……」ボロボロ白井「う、初春……」固法「……」御坂「……ごめん、初春さん。私たち、佐天さんのことほんの少しだけど疑っちゃった。似たような事件が続いてたせいもあるけど、信じてあげられないなんて友達失格だよね。本当にごめんなさい」ぺこり初春「……グスッ」白井「ご、ごめんなさい、ですの」ぺこり初春「いえ、いいんです。信じて、くれれば……」グスッ白井「よ、よく考えれば佐天さんは強い子!ちょっとやそっとで家出するような方ではありませんでしたわ」御坂「じゃあ、何かに巻き込まれって、こと?」初春「佐天さん、大丈夫なんでしょうか?」固法「ええ、はい、そうですか、そちらのほうでも情報は……はい……」白井「この様子では、芳しい情報はなさそうですわね」御坂「……でも突然の行方不明と情報量の少なさ。やっぱり一連の事件と同じ――」固法「なんですって!?」初春白井御坂「!!」
固法「そんな!!でも、何で……!はい、はい……分かりました」ガチャ白井「どうしたんですの?」固法「……とりあえず佐天さんに関してはどの風紀委員支部も情報を持ってないみたいだわ。それともう一つ、近日中に発足される予定だった風紀委員と警備員合同の連続失踪事件対策本部は見送りになったみたい」白井「どういうことですの!?事件にしても家出にしても何からの対応策を取るべきですのに!」固法「分からないわ。風紀委員と警備員で対策本部を作ることはほぼ決まっていたみたいなんだけどどうやら学園都市上層部から横槍が入ったみたい。証拠不十分だから、そんなことに労力を割く必要はないって」白井「そんな馬鹿なことがありますの!現に学生が行方不明になってますのよ!!」固法「私に聞かれたって分からないわよ!!」初春「佐天さん……」グスッ白井「どうすればいいんですの……」御坂「……」
御坂「……やっぱり佐天さんの失踪は、連続失踪事件と関係あると思う」初春「ッ!!だから佐天さんは自分からいなくなったりなんて――」御坂「そうじゃない。連続失踪事件も家出じゃないんじゃないかってこと」白井「失踪した全員が何かの事件に巻き込まれたってことですの?」御坂「いくら状況がはっきりしないっていっても、これだけ失踪者が連続するのはおかしいわ。黒子、今何人の人が行方不明になってるんだっけ?」白井「えーと、現在のところ10人、佐天さんを入れた場合11人になりますわね。それもすべてここ一週間ほどのことですの」御坂「この短期間にこの人数、家出する理由があったっていってもこの状況は説明できない。それによく考えみれば私のクラスメイトだった家出なんかしたとは思えない。確かに自分の能力のことで悩んでいたけど、あの子だって突然いなくなってみんなに心配なんてかけたくなかったはずよ。佐天さんと同じように、ね」初春「御坂さん……」初春 ゴシゴシ初春「私、この事件のこともっと調べてみます。そして佐天さんを見付け出してみせます!」
白井「しかしどうするんですの?対策本部が見送りなったということは事実上これ以上この件に口を突っ込むなという、学園都市上層部の警告。そもそも捜査ができないのならば、手の出しようがありませんわ」初春「……」ジー白井「ど、どうしたんですの初春?」初春「……白井さん。白井さんって、月平均何枚始末書を書いてるんでしたっけ?」白井「何なんですのいきなり。それは、まあ……月に、6枚くらいは……」初春「その白井さんが少しくらい捜査妨害が入ったからって諦めるんですか?その始末書だって『己の信念に従い、正しいと感じた行動をとるべし』っていう言葉の通り動いた結果じゃないんですか?その言葉は、私が勇気づけられた言葉は嘘だったんですか!!」白井「う、うぐッ……。初春のくせに言いますわね。……仕方ありませんわ。この白井黒子そこまで言われて動かないほど野暮な女ではありませんの!」
初春「それでこそ私の知ってる白井さんです!!じゃあ私は監視カメラの映像から昨日私と別れた後、佐天さんがどうなったか調べてみます」カタカタ白井「分かりましたわ。それでは私はもう一度その他の失踪者の失踪直前の映像を確認してみますの」カタカタ固法「じゃあ私は対策本部見送りについてもっと調べてみる。乱雑開放(ポルターガイスト)事件の時に協力してくれた警備員の人に訊けば何か分かるかも知れない」ガチャ御坂「よーし、じゃあ私は……。そうだ、しらみ潰しにスキルアウトを縛り上げて情報を――」白井「お姉様。くれぐれも無茶な真似は謹んでくださいまし。お姉様が面倒事を起こされても今の黒子にはフォローするだけの余裕がありませんの」カタカタ御坂「面倒事って!?そんな言い方しなくても――」初春「御坂さんはここでおとなしく待っていてください。お願いします」カタカタ御坂「……はい」固法「御坂さん、牛乳切れてるから、ちょっと買ってきて」御坂「それはお断りします!」固法「oh…」
御坂(それにしても何なんだろう、この事件。踪者同士に、性別、年齢、学校、もしくは能力の共通点はなし。あるとしたら第七学区ってくらいだけど、失踪者はみんな学生だから特に意味はない。それに監視カメラで確認できた失踪者がいなくなる直前の様子にも不自然なところはなかったし……。……ということは、もしかして――)初春「佐天さん!!」ガタッ白井「どうしたんですの!?」初春「こ、これ!昨日私と別れた後の佐天さんが映っている監視カメラの映像です!さ、佐天さんが……!」白井「なッ!?」御坂「ちょっと、そんな……」御坂(女の人と話してた佐天さんが突然倒れて、後ろにいた男に連れ去られてる……!)固法「これって……」白井「れっきとした誘拐事件ですわ!!」
御坂「そうね。この映像からではよく分からないけど後ろの男が佐天さんの気を失わせたようにも見えるわ」初春「そんな、佐天さん……」御坂(あれ、この女の人……)御坂「分かった!!」白井「どうしたんですの!?」固法「御坂さん、何が分かったの?」御坂「佐天さんの誘拐とこれまでの誘拐事件の共通点ですよ!黒子、私のクラスメイトが映ってる監視カメラの映像出してもらえる?」白井「えーと、失踪直前の様子ですから……五日前の午後七時の映像でよろしいんですの?」御坂「ううん。その数時間前、確か午後五時頃、屋台のたい焼き屋さんに立ち寄ってる時……そう、あの子が五〇名様限定『およげゲコ焼きくん』ストラップをもらってる時の様子よ!!」初春「……」固法「……」
白井「……お姉様、私の記憶が確かなら佐天さんには、お姉様のようなお子様じみた趣味はなかっと思いますが……」初春「……酷いです御坂さん。私たちがこんなに佐天さんのことを心配しているのに……。こうなったら以前のお泊り会の時に撮った御坂さんのあられもない姿の写真を餌に学園都市の男共に佐天さんの捜索に協力してもらいます……」御坂「ち、違うって!!私が言いたいのはそのことじゃないの!ゲコ太は重要じゃなくて、いやもちろん私的には重要だけど……大体なんであの子あの日たい焼き屋さんで限定ゲコ太グッズが配られてるって教えてくれなかったのかしら?同じゲコ太ファンなら情報を共有しあうのは当然でしょ?なんで独り占めしたがるの『およげゲコ焼きくん』なんて私も欲しいに決まってるじゃんそりゃあ私だって一〇〇個限定彦根城コラボ『ゲコにゃん』を散々自慢しちゃったけど別に仕返しすることないんじゃ……」初春「『二時間以内にこの子(.jpg)を発見できたらレベル5第三位『超電磁砲』のエロ写メうp』……」カタカタ御坂「ご、ごめんなさい!!そうじゃないの!ちょっと黒子、早くその時の映像出してよ!!」白井「りょ、了解ですの」カタカタタンッ
初春「これは……!」白井「お姉様のクラスメイトの後ろに、佐天さんと話していた女が!!」御坂「あの女、どこかで見たことがあると思ったのよ。こんなこの街ではなかなか見ないローブを羽織った女なんて余計に印象的だし」白井「失踪直前の行動に気を取られていて気付きませんでしたわ。今回ばかりはお姉様のお子様趣味のおかげと言わざるを得ませんの。お姉様はこの時の映像、食い入るように見つめていらっしゃいましたものね」御坂「い、今はいいじゃないそんなこと!初春さん、他の失踪者についても最後の映像の数時間前のものを確認してもらえない?」初春「分かりました。やってみます」カタカタ白井「しかしこの女は何者ですの?偶然お姉様のクラスメイトの映像に映っていたとも思えませんが」御坂「私たちはこの事件を失踪者に共通点がなかったから『家出かそうでないか』っていう視点でしか考えてなかった。そうじゃなくてこの連続失踪事件が家出でも外出中に偶然何かの事件に巻き込まれたのでもないとしたら?」
固法「連続誘拐事件……。おそらくこの女は精神操作系の能力者で失踪者に能力を掛け、後で調べられても分からないように数時間後に彼らをどこかへ連れていった。能力を掛けて操作している彼らの足で」白井「不覚ですわ。『学生が短期間に多数している失踪している』という事実だけ見れば誘拐事件だと気付けそうなものですのに……!」御坂「この事件に関わっている人たちにはどうしても『家出するほどではないが失踪者は悩んでいた』っていうことが頭から離れなかった。それがこの事件を複雑にしていたのよ。この女やその仲間が能力でそれを知ったのか、それとも自分たちで事前に失踪者たちについて調べていたのかは分からないけど、まんまとしてやられたわ」固法「これはもう学園都市上層部がどのこうのって問題じゃないわね」御坂(学園都市上層部がこの件について手を引くように警告しているのだとしたら上層部もこれを黙認してるってこと?あの絶対能力進化計画、妹達の時みたいに……。させない!あんな酷いことは、もう二度と、絶対に……!)初春「確認しました!四日前に失踪した中学二年生の男子学生と三日前に失踪した高校一年生の女子学生の、失踪する数時間前の映像にそのローブの女の姿を見つけました!」御坂「決まりね。ローブの女が今回の連続失踪いえ連続誘拐事件に関わっってるのは間違いないわ」
白井「そうですわね。早急に誘拐された学生たちの居場所を見つけなければ。初春!」初春「はい!これが精神を操作された上での誘拐事件なら誘拐された学生の最後の映像から、彼らが向かったおおよその場所が特定できるはずです。そこが誘拐犯の拠点もしくは誘拐した学生たちを移動するための場所のはずです」カタカタ白井「場所が特定でき次第、私が現地に向かいますわ。お姉様は――」御坂「黒子、お願い。私も連れて行って」白井「お姉様、何度も言いますがこれは風紀委員の仕事で――」御坂「分かってる。でも私だってじっとしてられない。私のクラスメイトや佐天さんが酷い目にあってるかも知れないっていうのに、ここで待ってるなんてできない」白井「……お姉様」固法「そうね。御坂さんには白井さんに同行してもらったほうが助かるわ」白井「固法先輩!?」固法「今のところ連続失踪事件としては風紀委員も警備員も動けない。それに佐天さんたちを誘拐した犯人の実力も規模も未知数。少しでも戦力は欲しいわ」御坂「お願い、黒子!」
白井「……はぁ。分かりましたわ。今回は特別にお姉様にも捜査に協力していただきますの」固法「これは捜査じゃないわ。殴りこみよ。今でも私たちがこの事件に対してアクションを起こせないのは変わらないもの」白井「『殴りこみ』って……。まるでスキルアウトのようですわね」固法「風紀委員としてのルールが適応できない以上、これは無法者のやってることなのよ。私も適当に嘘を並べて、現地に風紀委員と警備員が出動されるようにやってみる。さすがに目の前で異変が起これば、見逃すことはできないでしょ?」御坂「そんなことしたら、固法先輩は故意に虚偽を報告したってことで罰を受けるんじゃ……!」固法「そのくらい責任は持つわよ。もちろん、貴女たちが殴りこみをかけるっていう『私の命令に従った』行為についてもね」白井「……固法先輩。まあ『捜査』であれ『殴りこみ』であれ『己の信念に従い、正しいと感じた行動をとるべし』という言葉私の正義(ジャッジメント)は変わりませんが」御坂「カッコつけちゃって」クスッ白井「戦いに赴く前に口上を述べるのは淑女の嗜みですのよ、お姉様」
初春「場所、特定できました!第七学区……地区です!そこに今は使われていない廃棄された建物が多数あります」白井「お姉様!」御坂「ええ、行くわよ、黒子!!」白井「はいですの!初春、貴女はここに残ってバックアップを」初春「わ、私も行きます!!」白井「……そうさせてあげたいのはやまやまですが犯人の居場所も目的も曖昧な今の状況では常に情報を収集、分析して私たちを支援するバックアップは必要不可欠ですの。初春、貴女の戦場はそこではなくて?」初春「…分かりました。白井さん、御坂さん、あの……」御坂「大丈夫。佐天さんは絶対に無事に連れて帰ってくるから」グッ御坂(そうよ。もう二度とあんなことは起こさせない。私が絶対に止めてみせる!!)
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