氷結「………………」瞬間氷結の左拳が上条の鳩尾に入っていた。上条「が……あ…」ドサッ…耐え切れず上条はその場に転倒する。上条「クソッ……!」逃げようと思うものの、右足が氷漬けされているためそれも叶わない。そこへ、瞬間氷結が上条の側にまで歩み寄り見下ろしてきた。瞬間氷結「白井さんほど機敏に動けないけど……徒手格闘で彼女に負けるとは思ってないよ。じゃないと、本気の訓練で彼女に勝つことなんて出来なかったはずだからね」上条「御坂を……どうするつもりだ!?」地面から睨むように上条は瞬間氷結を見上げる。瞬間氷結「決まってるさ。法の下で裁きを受けてもらう。どんな犯罪者でもそれに例外は無い」上条「させると……思うか?」瞬間氷結「君が何の信念を持って彼女……御坂美琴を助けようとしているのかは知らないけど、こっちだって遊びでやってるわけじゃないんだ。だからこそ僕はいつも本気でやってきたし、数多くのスキルアウトの組織だって容赦なく潰してきた……」上条「自慢のつもりか?」瞬間氷結「自慢じゃないよ。僕はこの学園都市のためにやれることをやってるだけだ」本当に瞬間氷結は自慢する素振りも謙遜する素振りも見せず、事実のみを述べる。上条「そこまでして、この学園都市が守る価値があるとでも?」瞬間氷結「……確かにこの学園都市には一般人には縁の無いような『暗部』も存在する。君はその実態を知らないだろうけど、生半可な気持ちで介入出来るような世界じゃない」上条「………………」瞬間氷結「僕は『暗部』の世界で暮らしてる高位能力者の中にも何人か顔見知りがいるけど……彼らの普段の様子を見ていて『暗部』というものがどれほど洒落にならないのか、それは十分分かってるつもりだ。同時に、その『暗部』が、知らず知らずのうちにみんなが暮らす表の世界をジワジワと蝕んでいるのもまたこの街の現状……」隙を一つも見せず、瞬間氷結は凍てついたような目で上条を見ながら話を続ける。瞬間氷結「だからそんな『暗部』に好き勝手させないために、今も僕は、表の世界から日々『暗部』と戦っているんだ」上条「………………」瞬間氷結「分かるだろ上条当麻? 君も君なりの信念があって今まで数々の修羅場を潜り抜けてきたんだろうが、僕だって同じぐらい修羅場を潜り抜けているんだ。……そう、この学園都市を本当の意味で平和にするという信念と共にね」
ガッ!!と、そこで瞬間氷結は上条の右腕を踏みつけてきた。上条「ぐあっ!?」瞬間氷結「気付いてるよ。僕の隙を見て右足の氷を右手で溶かして攻撃の機会を窺ってたんだろうけど……それを僕が見逃すと思うかい?」足に力を込めつつ、瞬間氷結は上条に顔を近付ける。瞬間氷結「ただ君のほうは気付いてたかな? 今自分がどんな場所に寝てるのかを?」上条「!!!」上条の表情に焦りの色が浮かぶ。同時、今まで意識していなかった感触が背中越しに伝わってきた。上条「(しまった……!)」上条が焦るのも無理はなかった。何故なら彼は今、濡れた地面の上に背中を預けるようにして倒れていたのだから。上条「クソッ!!」瞬間氷結「遅い」ビキビキビキビキッ!!!!!!上条「!!!!!!」それは一瞬の出来事だった。上条は声を上げる間も無く、その身体を背中から氷で固められていった。美琴「当麻!!!!!!」それを見ていた美琴が叫ぶ。瞬間氷結「ここまでだ」瞬間氷結が背筋を伸ばす。彼の足元には右手以外を残して氷漬けにされていた上条の姿があった。瞬間氷結「ここは雨が乾いてなかったり噴水があったりと、まさに僕にとっておあつらえ向きの場所だった。いくら百戦錬磨の君でも、この状況で僕には勝てないよ」上条「――――――」しかし、氷漬けにされた上条は何も答えない。
美琴は止まるところを知らず、右腕が解放された勢いで上半身に力を込める。ビリビリビリッ……!そしてついに、彼女の上半身も地面から解放された。ただし、左腕だけはまだ地面に繋ぎ止められていたが。美琴「………」ギロリ間髪入れず美琴は地面に刺さっていた金属矢の1本を引き抜き黒子の背中を睨む。瞬間氷結「ん?」と、そこで何かの気配でも感じたのか瞬間氷結が振り返った。瞬間氷結「!!!!!!」彼が見たもの……それは、上半身と右腕が自由になった状態の美琴が、手にした金属矢で黒子を後ろから狙ってる姿で………。だが、気付いた時には遅かった。ドスゥゥゥッ!!!!!!!!黒子「!!!!!!!!!!」美琴は右手に握った金属矢を黒子の右太ももに突き刺した。黒子「あああああああああああっ!!!!!!」
美琴「………………」叫び声を上げ、電話を地面に落とす黒子。黒子「くっ……」ドサッ…何とか彼女は反撃を試みようとしたが、それも叶わず地面に倒れてしまった。瞬間氷結「白井さん!!!!」一部始終を見ていた瞬間氷結が黒子の元へ駆け寄ろうとする。だが………ビキビキビキッ……と、背後で何かヒビが割れるような音がした。瞬間氷結「!!!???」振り返る瞬間氷結。瞬間氷結「なっ………」見ると、氷漬けにされたはずの上条の右腕部分。その肘から手首に向かってヒビが何本か入っていた。バリィィィン!!!!
気付くと、元々乾いていた部分の地面以外のほぼ全てが氷漬けにされていた。ただし、例外として黒子と美琴がいた場所は何の変化もなかったが。瞬間氷結「少しでも氷の部分に足を踏み入れてみろ。1秒で足元から凍っていくぞ」上条「!!!!!!」瞬間氷結「これが僕の奥の手『全面氷結(ホワイトアウト)』だ。……こんな水で濡れた部分が多い場所でしか出せない奥儀だけど、レベル5になったら常時どこでも発動可能になれる代物だ」言って瞬間氷結は腰にぶら下げた細長い物体を取り出す。上条「それは………」瞬間氷結「水筒だよ。だが、僕を前にしてただの水筒だと思わないことだな」説明しながら瞬間氷結は手にした水筒の蓋を全て外す。上条「?」そしてその注ぎ口を左手で覆い、水筒を逆さまにしたかと思うと、次の瞬間、注ぎ口から離した左手についてくるように、水筒の中身の水が細長い氷となって伸び始めた。瞬間氷結「御坂美琴は砂鉄を集めて砂鉄剣なるものを作るみたいだけど……これもそれと似たようなもんだ。水筒の中の水を外に出したと同時、剣状に生成する。氷結剣でも凍結剣でも好きな名前で呼ぶといい」完成された氷の剣は、刀身部分は円柱状だったが切っ先は鋭く尖っていた。それを右手にして瞬間氷結は上条を見据える。瞬間氷結「死にそうな怪我を負っても後で医者に頼んで無理矢理復活させてやる。……だから、気を抜くなよ。下手したら……本気で死ぬぞ?」グアッ!!!上条「!!!!!!」瞬間氷結の最後の猛攻が始まる。
黒子「な……何をするんですの!!?? 触らないで下さいまし!!!!」美琴「黙ってなさい!!!!」止め処なく黒子の右太ももから流れる血。それを止めるために美琴は行動に出た。先程起き上がる時に地面に突き刺さった金属矢で破れた服の一部。その中で1番大きい物を手に取ると彼女はそれを黒子の足に巻いてきたのだ。黒子「触らないで!!! 敵の慈悲など受けたくありません!!!!」美琴「こうしないと血が止まらないでしょうが!!!!」黒子「嫌だ!!! 離して!!!!」美琴「………………」黒子「離せえええええええ!!!!!!」美琴「…………っ」ジタバタと黒子が動くため、美琴はなかなか上手く縛り付けることが出来ない。 黒子「敵に看護を受けるぐらいなら死んだほうがマシですの!!!」美琴「敵じゃない!!!」黒子「!!!!」ビクッ美琴が黒子の顔を見据え怒鳴る。美琴「あんたは……敵じゃない」黒子「?」美琴「私の……大事な……後輩なの」言って、美琴は再び黒子の足に顔を向ける。そんな彼女の顔は、まるでもう元には戻らない何かの現実を恨み、悲しんでいるようなそんな複雑な表情をしていた。黒子「………………」呆然と、黒子は美琴を見つめる。ギュッ!黒子「あっ……くっ」美琴「はい、後は病院で。取り敢えず応急処置はお終い」と、美琴が安心したような顔で言う。黒子が足に顔を向けると、確かに右ふとももに布がきつく縛られてあった。
ゴッ!!!!!!噴水の水が数m高く舞い上がり、徐々に凍結して竜の姿へと変貌する。それはまるで伝説の海の化け物『リヴァイアサン』のような姿をしていた。瞬間氷結「君は何としてでも僕がここで止める!!!!」上条「………………」氷のリヴァイアサンが口を開けて上条に襲いくる。だが………バギィィィン!!!!!!瞬間氷結「!!!!!!」上条はそれさえも右手で打ち砕いてしまった。上条「………………」瞬間氷結「……………はっ…!」目の前で粉々になり地面に落ちていく氷塊を見て、瞬間氷結は僅かに笑みを浮かべる。瞬間氷結「僕が………」静かに言葉を紡ぐ瞬間氷結。瞬間氷結「君のような右手を持ってたら……な……」やがて、力尽きたのか瞬間氷結は頭を垂れ動かなくなった。上条「…………………」ずっと黙っていた上条は、彼の姿を見て口を開く。上条「お前は立派な信念を持ってんだ……。俺の代わりに、この学園都市を頼む……」瞬間氷結「―――――――」
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