―――第七学区、とある廃ビル、六階の一室女子高生「う、うーん……」上条「お、気が付いたか?」女子高生「……あれ、ここ、どこ? 私、なんで、こんなところに……」フラフラ上条「おいおい! 無理して立ち上がろうとすんなよ」女子高生「すいません……。あの、私、なぜこんなところに? ここは一体どこなんですか」上条「説明するとすごく長くなるんだけど……。 えーと、簡単に言うとですね、貴女は誘拐されてしまったわけで……」女子高生「ゆ、誘拐!?そう言えば私、学校の帰りに本屋さんに寄って、それから……」上条「誘拐犯は、魔術……じゃない、能力で学生の意識を操って このビルまで連れてきたらしいんだ。ほら、他にも同じような学生がいるだろ?」学生たち ぐったり……女子高生「本当だ……。貴方も誘拐されて、ここに?」上条「いや、俺は誘拐された学生たちを助けに来たんだ」女子高生「ということは貴方は風紀委員の方なんですが?」上条「風紀委員? 違う違う。ただの学生だよ、俺は」女子高生「ただの学生? なんでわざわざ風紀委員でもない貴方がここに?」上条「うーん、上条さんにも食料をたらふく恵んでもらったという 何事にも代えがたい恩義があったりするわけなんですが……。 でもまあ、当たり前なんじゃね? 誰かが困ってて、それを知っちまったら、助けに行くなんてさ」ニコッ女子高生「あッ……///」上条「?」女子高生「あ、あの……/// 私、最近ずっと好きだった人にフラれてしまって それで、誘拐された時も、すごく暗い気分で歩いてて……」上条(そう言えばステイルが、学生を誘拐した魔術は 負の感情に働きかけて発動させる術式である可能性が高いって言ってたな。 もしかしてこの子もショックなことがあったから、魔術にかかったってことか?)女子高生「その、すごく絶望的で、生きる目的を失って…… もう、私、何言ってんだろ……!」上条「だ、大丈夫! 落ち着いて! 愚痴くらいならいくらでも聞くからさ」女子高生「は、はい……/// それで私、その人のために、ずっと料理を勉強してたんです。 それで、その……代わりに、私の料理食べて、くれませんか……///」上条「えッ? すごく嬉しい申し出なんだけど、なんで俺が?」女子高生「それは……///」「あ゛―――!! あんたッ!!」上条 「ッ!?」女子高生「ッ!?」上条「ビリビリ!? なんでお前がこんなとこに?」御坂「それはこっちの台詞だッ!! なんであんたがここにいんのよ!!」上条「いや、それには非常に深い事情がありまして……」御坂「!?」御坂「もしかして、ここにいた誘拐犯を倒したのってあんたなの?」上条「俺って言うか俺の仲間が―――」白井「誰かと思ったらまた貴方ですの。事件の影にはいつもいらっしゃるのですね。 まるでどこぞの少年探偵ですわ」上条「白井? お前がいるってことは、この誘拐事件に風紀委員が動いてるのか?」白井「いえ、この誘拐事件には上層部からの圧力がかかっているため 今回の行動は独断専行、風紀委員の活動外のものですわ。 しかしこのビルには一応風紀委員と警備員が向かっていて…… って貴方はなぜこれが誘拐事件だとご存知ですの?」上条「悪い。白井、御坂、ここにいる学生は頼んだ!」ダッダダダッ……御坂「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!! 事情くらいは説明して―――」女子高生「せ、せめて名前だけでも―――」御坂「え?」女子高生「え?」白井「相変わらずマーキングに熱心な殿方ですのね。 まさしく『類人猿』といった感じですの」御坂「ままま、マーキング!? あんた、あいつに、な、何されたのよ!!」ビリビリ女子高生「いえ!? ただあの人に助けてもらっただけで―――」御坂「助けてもらっただけって、『マーキング』されたんでしょ!! 白状しなさいよ!!」女子高生「されてません!! ていうか『マーキング』って何?」白井「お、お姉様! 落ち着いてくださいまし!」アセアセ御坂「落ち着いてなんかいられないわよ!! 『マーキング』よ!! 『マー』の『キング』よ!! 王様なのよ!! 落ち着いていられるわけないでしょ!!」白井「いえ、意味がよく……」御坂「そんなこと言ったって、黒子が言い出したんじゃない!!」白井「それはただ、言葉の綾で―――」白井「ッ!?」キョロキョロ御坂「大体自分の言葉には責任を……ってどうしたの?」白井「お姉様!! 佐天さんがどこにもいませんわ!!」御坂「そんな……!」キョロキョロ御坂「いない……! それに私のクラスメイトも……!」白井「貴女、この部屋にいる学生の他に、中学生くらいの髪の長い女の子を見ませんでしたか?」女子高生「いえ、私もあの人に助けられて、ついさっき気が付いたばかりなので……」御坂「どういうこと! あの女、やっぱり嘘をついてたっていうの!」白井「……可能性はありますわね。お姉様のクラスメイトはこの連続誘拐事件の最初の被害者。 佐天さんは最後の被害者。それに監視カメラの映像からも分かるように 佐天さんのときだけ能力による誘拐ではなく その場で強引に攫っていきましたわ」御坂「つまり私のクラスメイトと佐天さんは 誘拐犯にとって、何らかの意味で『特別』だったってこと?」御坂(そう言えば今まで気にしてなかったけど、なんで佐天さんには能力を使わなかったの? こんなふうに考えたくはないけど レベル0の佐天さんを『能力者』として誘拐する意味はないはず。 だとしたら、能力を使わず強引に誘拐するほど 『能力』以外に誘拐犯が欲している価値が、佐天さんにはあったってこと?)白井「そうするとここにいる学生たちは捨てて 佐天さんとお姉様のクラスメイトだけ連れて逃げた可能性がありますの。 あの女がこの事件の首謀者だとすると、二人はもう……」御坂「……ッ!」ダッ白井「お姉様!!」御坂「私はあの二人を探す! あの女もまだそんなに遠くには行ってないはずでしょ! 黒子はここにいる人たちをお願い!!」白井「ちょっと、お姉様ッ!?」御坂 ダダダッドンッ!御坂「きゃあッ!?」ドテッ「うわッ!?」ドテッ御坂「イテテ……あぁッ!?」佐天「御坂さん!? 御坂さんがどうしてここに?」白井「佐天さん!? はぁー……良かったですわ、無事でしたのね」佐天「白井さんまで!? もしかして、私を助けに?」御坂「そういうこと。友達が行方不明になって、私たちが大人しく待ってるわけないじゃない」佐天「ははは……確かにそうですね
御坂「でもホント良かったわ。佐天さんたちだけあの女に連れ去られたと―――」女子学生 ビクッ御坂「あッ!? やっぱり貴女も無事で―――」女子学生「ゴメンなさい!!」御坂「え?」女子学生「あの、えっと、私……」女子学生 グッ……佐天「大丈夫ですよ。ほら、勇気出して!」女子学生「は、はいッ! 御坂さん、私、御坂さんに謝らなくちゃいけないんです。 誘拐された日、私は御坂さんに黙って限定『およげゲコ焼きくん』を手に入れてたんです。 御坂さんにはずっと能力開発の悩みも聞いてもらって、それにゲコ太の話もできて……。 嬉しかったんです。御坂さんとお話できて……。 競争の激しい常盤台では、グスッ、悩みの相談なんてなかなかできないし グスッ……ゲコ太が好きだって言ったら、他の人には『子どもっぽい』って馬鹿にされるし。 なのに、私……グスッ……御坂さんを裏切るようなこと、して……」御坂「……」スタッ、スタッ御坂「あのさ、その『およげゲコ焼きくん』、私にくれない?」女子学生「えッ?」御坂「もうすぐ手に入る、タイ限定『ワイクルーゲコ太』と交換で、ね?」ニコッ女子学生「う、う、うぅ……。御坂さんッ!!」ギュッ御坂「そんな泣くことないでしょ。お互い限定ゲコ太が手に入るんだから」ギュッ女子学生「グスッ、グスッ……。はい……!」ギュウッ白井「がん゛どう゛でぎでずの゛……!! うぐぅ、黒子、涙で前がみえませんの!!」佐天(イイハナシカナー?)白井「うぐッ、うぐッ……おっと、そうでしたわ」カチャ白井「もしもし? はい、全員無事保護いたしましたわ。 はい? ええ、もちろん無事ですわよ」白井「佐天さん」佐天「はい?」白井「貴女のことを一番心配していた方が」スッ佐天「?」佐天「もしも―――」初春『佐天さん大丈夫ですかッ!!! 意識ありますかッ!!! どこか怪我してませんかッ!!!』佐天「う、初春?」キーン初春『お腹へってませんかッ!!! 眠たくありませんかッ!!! おトイレ大丈夫ですかッ!!!』佐天「だ、大丈夫だって。そんな心配しなくても―――」初春『心配しますよッ!!!』佐天「初春……」初春『心配するに決まってるじゃないですか!! 突然いなくなって……。もう、心配かけないって、言ったのに……』グスッ佐天「ご、ごめんごめん!! 泣かないで初春!! ほら、今度は私がクレープ奢ってあげるから! 初春の好きなチーズチョコバナナ明太子クレープ」初春『そんなの、グスッ……好きじゃありませんよーッ!』佐天「あれ? そうだったっけ?」初春『そうです……。佐天さんには、たくさん、美味しいクレープ 奢ってもらうんですかね……』グスッ佐天「アハハッ、そうだね。約束する……」初春『絶対ですからね!! 約束しましたからね!!』佐天(御坂さんも白井さんも、それに初春も私を心配して助けに来てくれた)ギュッ佐天(私はまた……助けられた)
―――第七学区、とある廃ビル、八階ドゴオォォ――――――ン!!黒衣の男「ウゴォォッ!?」黒衣の男 バタッステイル「これで一通り片付いたか」ステイル(しかし奴らの言う『総裁』とかいうのはいなかったな。 一足先に逃げられたか)ステイル「まあ、目的を阻止できただけでも良しとするか」「おーいッ!! ステイル!!」ステイル バッボオォォォ――― ド―――ン!!上条「うおッ!?」パンッ!ステイル「ちッ」上条「アブねぇ……。 おいッ! いきなり何すんだ!?」ステイル「すまない。まだ敵が残ってるのかと思って」上条「絶対嘘だろ! さっき『ちッ』って言ってたし! ガッツリ攻撃する気だったじゃねぇか!!」ステイル「五月蝿いな。小さいことを気にしてると、将来禿げるぞ」上条「オヤジを見る限り、当分禿げねぇよ。たぶん。 そうだ! ステイル、もうじきここに風紀委員と警備員が来るらしいぞ」ステイル「学園都市の治安維持組織か。それじゃあ長居は無用だな。 最終的なこいつらの処理は学園都市の上層部に 手を回しているはずだから心配要らないが、この場の対処は任せたよ。 僕がこの場にいると少し面倒なことになりそうだからね」上条「はぁ? ちょ、おま―――」ステイル「Good-bye, bald mole(さよなら、ハゲモグラ君)」ダダダッ……上条「何を言われたか分かんねえけど、どことなく不幸だぁーッ!!」
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