學園都市の総人口は、230万人。そしてその8割が學生、即ち子供である。ということで、街に点在する公園は健全な子供らに人気の憩い場であり、休日ともなれば結構な数の學生が集う。幼児が砂遊びをし、子供達が遊具で遊ぶ、のどかな光景。そんな休日の公園の長椅子で談笑する二名の男。刺々しい頭と、きんきらきんの頭。彼らの周りに人が寄り付いていないのは、その独特の見た目のせいであろう。上条「へいふはんがははあははへは?」饅頭を口いっぱいに頬張って、言葉にならぬ頓狂な声を挙げている少年。それを呆れた様な目で(といっても、それは黒眼鏡に隠れているのだが)見遣るもう一人が自分に飛んでくる唾や饅頭の切れっ端を手で掃いながら言い零す。土御門「とりあえず、それ、食いなや」そう言われた当麻は、顎を忙しく動かした後にごくりと一旦それを腹に落とす。上条「レヰルガンがまた現れた?」今度ははきはきと。土御門「ああ、つい二日前のことだにゃー」上条「二日前ってーと……あの嵐の日か」風が吹き荒れ、雷が鳴り響いていたあの日を思い出す。別の場所でも嵐が起きていたか、と小洒落たことを考えてみたり。青ピ「例の三人がやられたらしいのー」ベンチに腰かけた二人の後ろから青ピがヌッと顔を出してきた。その手には団子と飲み物缶を携えて。青ピ「ほれ、食いや」上条「いいのかっ? 有難たやぁ」青ピから受け取った三食団子を早速口に入れながらまたもぐもぐと始める。青ピ「まあ、今日の主役はかみやんやからなー」そう。今日は休日を利用して、当麻に學園都市を案内しているのだ。階級零の烙印を押されてから不貞腐れていた当麻だったが、饅頭と団子ですっかり機嫌を直したようである。土御門「青ピ、例の三人って……」青ピ「ああ、"音術使い"の三人組や」上条「もぐむぐ……それって、この前不良集団って話してた……」青ピ「ああ」そこで一旦言葉を切ると、青ピはやれやれと言った風に息を吐いた。青ピ「あいつら、レヰルガンに〆られたんやな」上条「……」思わずごくり、と喉が鳴る。土御門「誰も手が付けられんかった不良三人を一人で〆たんだにゃー……」青ピ「ああ、しかもただの不良やない 札付きの術士や」上条「とんでもない奴なんだな……レヰルガンってのは……」そして、そんなおっそろしい人間がいる街でこれから過ごして行くのだ。少し実家のある村が恋しくなる当麻だった。土御門「まあまあ、とりあえずレヰルガンに関する役立つ情報も集めてきたぜい」そう言って、気をほぐすように元春が肩に手を置いて微笑む。上条「情報?」土御門「ああ、と言っても噂程度だけどにゃー」青ピ「是非とも教えてもらいたいのー」青ピも身を乗り出して聞く。とにかく身に掛かる火の粉を防ぐには情報は不可欠だ。學園都市とはなかなかに気の抜けない所である。土御門「まずな、その格好は英国少年のようだ、と」上条「え、英国少年?」初っ端から驚いてしまい思わず聞き返す。土御門「ああ、何とかっていう帽子と……こう、ずぼんを……うん?」手振りで何かを伝えようとするが、元春も良く分かっていないらしく最後ははてなという顔をしてしまった。土御門「まあ、とにかく西洋人っぽい恰好だにゃー」とりあえず大雑把に結論付けて話を続ける。
土御門「それと、名前は御坂美琴 年齢は拾四 常盤台中等學校の二年生や」上条「御坂美琴、か へぇ、以外と普通の名前なんだな」青ピ「常盤台……成程なぁ」上条「? どうした?」溜息まじりに呟いた青ピと、それを訝しむ当麻。上条「その常盤台ってのはとんでもない不良校ってことだろ?」不良共を力で〆上げる中學生が在籍する程だ。余程苛烈を極める學校に違いない、と当麻が踏んだのは当然だろう。しかし、その問いに青ピは静かに首を振った。青ピ「いや、その常盤台ってのは學園都市でも指折りの……お嬢様學校なんや」上条「嘘だろ!?」お嬢様學校。その響きには男性諸君はあれやこれやの甘美な想像を掻き立てる不可思議な魅力がある。当麻の想像による、不良(わる)の集う荒んだ戦場とは掛け離れている単語だ。なるほど、彼が驚いたのも当然といえる。土御門「うん、まあ驚くのも分かるけどにゃー 当然っちゃ当然なんだぜい」上条「どういうことだよ」青ピ「前にも話したやろ? 僕らが階級で分けられ、かつ扱いも変わってくるっちゅーこと」ああ、と呟いて当麻は少し逡巡した。階級伍は此処では破格の身分が保障されるということ。成程つまり……上条「階級が上の者は良い身分で良い學校に……ってことか」土御門「正解」ぴん、と指を立てて元春がにやりと笑う。いわゆる「やらしい」笑いというのはこういう物なんだろうと当麻は思った。上条「ふうむ」何となく、釈然としない。青ピ「ま、そないな難しい顔しててもしゃーないで ほら、飲む?」眉間に薄ら縦筋の浮かびかけた当麻に、青ピが持ち前の細目をさらに細めて持っていた缶を渡す。上条「お、ありがと」受け取った品をしげしげと眺めてみる。缶であるには違いないようだが、どうやら初めて見る型で、やけに縦長である。それに手触りの質も鉄のそれとは異なるようだ。上条「これ……缶詰、なのか?」かんづめ、という言い方に元春が「んは」と不思議な笑い声を出した。土御門「かみやん、飲み物缶は初めてなのかにゃー」少し悪戯っぽい表情を浮かべながら、顔をずいと近寄せてそんなことを聞いてくる。上条「ああ……何だろう、縦に長いし、なんだか薄っぺらだな……」こつこつと爪で缶の表面を叩きながら、横から下からじろじろと眺め回してそんな感想を述べた。青ピ「ああ、それ普通のぶりきの缶詰とちゃうで」上条「え?」青ピ「中に飲みもんが入っとる軽銀(アルミ)製の缶かんや」土御門「そっか 學園都市の外じゃあまだ軽銀は珍しいんだにゃー」上条「ああ、飲み物が入った缶なんて初めてみた」青ピ「んじゃ、"アレ"は?」そう言って指差す青ピの先には、公園の脇にぽつんと佇む大きな箱があった。箱といっても金属質の四角四面の堅物であり、見れば取っ手の様な物が正面からにょきりと生えている。上条「あれ……なんだ?」どう見ても遊具には見えないし、と頭を捻ってみるが、とんと見当も付かない。青ピ「あれ、自動販売機っちゅーんやで」上条「じどーはんばいき?」またも新しい言葉が出てきたぞ、ととりあえず説明を待つ当麻。青ピ「この缶、あれで買うたんよ」上条「買った? あの中に人でも入ってるのか?」売店の様なものか、と納得しかかる当麻だが、それを遮ったのは元春の声だ。土御門「ほら、あの子が今から買うみたいだぜい」見れば、齢七、八ぐらいの男児がとことこと件の箱に近づいている。少年は箱の前で立ち止まると、懐からがま口を取り出すと、いくらかの小銭を大事そうに摘みだした。そしてそれを箱の正面にある銭入れ口からと投入すると、おもむろに例の取っ手を両手でしっかりと握り込んだ。何をするのかと、当麻は食い入るようにそれを見つめている。と、男児がうんせと取っ手を引き回す。ぐるりとそれが一周した頃に、ごとんと何やら重い音が響いた。そして下に空いた窓に手を突っ込むと、そこから缶を取り出してみせた。ようやく得物を掴んだ彼の顔は一段と嬉しそうだ。上条「……驚いたな」青ピ「な、自動で販売するからくり箱っちゅー訳や」土御門「いかにも、學園都市、って感じだよにゃー」目を丸くする当麻の横でうむうむと頷く元春にどっから目線やねん、と青ピが突っ込んで、はたと話が止まる。青ピ「あれ、何の話やったっけ」土御門「確かレヰルガンは階級伍やからお嬢様學校、って話だったにゃー」指折り記憶をたどりながら話題を遡る。上条「そうそう、確か階級が高い方が良い學校に行けるっていう……」と、ここでふと引っ掛かる所があった。上条「ん? てことは……」青ピと元春の顔を交互に眺めてから、上条「俺達の學校って……」ぽつりと零してみる。階級零の自分が通う學校って……。青ピ「あー……まあ……」土御門「あは、うん、そういうことだにゃー」ぽりぽりと頭を掻く青ピと相変わらずにやけている元春の顔を見れば言わんとすることは分かった。が、ふと思い当って聞いてみる。上条「ん、でも、青ピと土御門は階級参だろ? 割と上級なんじゃねえのか?」測定場でやらかした通り、青ピは階級参の肉体強化。後に聞いた所では土御門も同様に階級参の肉体強化らしかった。青ピ「いや、実は肉体強化っちゅーんは術の中でも割と"扱い"が軽いんや まあ、単純な術っちゃ単純やしな」土御門「だからまー、"研究"し甲斐があんまりないんだろにゃー」腕組みをして首を傾げてみせる青ピと、その横で両手を広げておどけてみせる土御門。見た目も性格も余り似ていない二人だが、妙に息が合っている辺りは友情か、某教師への共通の愛か。上条「研究……か まあ、學園側にとっても『嬉しい』人間をちやほやすんのは当たり前か……」そう言いやってから、かくりと空を見上げてみる。利する人間を優遇するのは世の常だというのは分かる。だがそれで降り掛かる不幸に怯えながら暮らさざるを得ない少年がいることを知ってほしい、と切に思った。まあ、よっぽどの事が無い限り絡まれることも〆られることもないだろうが……。そんな心配事より、今はただ、透きとおるような空を見るばかりである。
上条「ああー……いい天気だなぁ」
見上げた青空には白い斑点のように雲がぽつぽつと湧いてはゆらゆらと揺れている。腹は饅頭と団子で満ち足りて、公園の長椅子で友人らとのんびりとくつろぐ。幸せとはこういうもんだろう。土御門「ほんとに、この前の嵐が嘘のようだにゃー」青ピ「ほんまに清々しいまでの晴れっぷりやなぁ でもかみやんの不幸ぶりなら雷ぐらい落ちるんちゃう?」そう言って青ピがけたけたと笑ってみせる。それに当麻も半ばにやけながら答えてやる。上条「おいおい、いくら俺が不幸だっつっても……」突如、耳をつんざくような、腹の底を打ち鳴らす様な轟音が鳴り響いた。釣鐘をお空の彼方から叩き付けたような「ひしゃげた」金属音。三人とも驚愕の余り体ごと飛び跳ねた。そして耳にどくどくと流れる鼓動を聴きながら、ゆっくりと、音の爆ぜた方を振り返る。いた。先ほどの自販機に、金属の塊の巨体に蹴りを入れて見事なまでに"ひしゃげ潰し"ているのは. . . . . .. .. .. . . . . . .何所かで聞いたような英国少年だった。土御門「嘘ぉ……」青ピ「あかん」上条「…………」どうやら俺は青空に雷を落とせるらしい。
───
───介旅「ふぅ……」理事長室から解放された初夜はマントの首留めを緩めて一息ついた。傍に居るだけであの緊張感とは……体を崩していても一大都市の長だけはある。介旅(腐っても鯛、か)いや、出世魚だから腐っても鰤、か?そんな軽口を叩ける程に余裕が出てきた頃、手元の資料に目を落とす。介旅「しかし、初めは面倒だったが調査業ってのも悪くない」ぺろりと唇を舐めて、束になった書類の表紙を眺める。『階級伍神術士 御坂美琴に関して 特秘』しばらくそれを眺めていたが、顔をあげると鼻歌を唄いながら歩き始めた。向う先は、談話室。愛しの妹分が待っているのだ(と初夜は思っている)。介旅「省帆にいい土産話が出来たぞぉ~♪」ちなみにご機嫌な足音を響かせているこの男が、彼女を下の名前で呼べるのは本人がいない時だけである。
───静まりかえった公園。そこに初めて興った音は、金属の塊が地面に落ちるごとりという音だった。美琴が自販機"だった物"から足を引き抜くと、いくつかの部品がぱらぱらと崩れ落ちた。そしてその"だった物"が腹を蹴られた拍子に吐き出した目的のブツを拾い上げる。美琴「南瓜入り番茶……外れね」少し眉間に皺を寄せながら、手にした缶を眺めてそう零した。相変わらず、彼女を除いて公園の時間は止まったままだ。散歩途中の男女は恐怖で動けないでいた。遊具で遊んでいた子供は泣きそうな顔でじっとしていた。先程自販機から飲み物を買っていた男の子はすぐ傍で立ち尽くした。.. . . .. . ..何人も動けず、言えず、また何も見ていなかった。そう、誰も何も見ていなかったことになる。ただ一人が為に在る時間。その切り取られた時間を動かしたのは、上条「何……してん……だよ……」目を丸くして絡まりがちな舌で呟いた少年。囁くような幽かな台詞だったが、静寂が包む止まった時間では暴君の耳に届いてしまった。暴君の首が、こちらへ向く。美琴「何、あんた 文句あんの?」自身を咎められた、と捉えた彼女はあからさまに苛立った視線をぶつけて来た。上条「え? いや、あの、」中學生とは思えぬ威圧感に少しのけぞりながら、何とか場を収めようと冷や汗を垂らす。
上条「その、なんていうか、ほら」ここは何とか、穏便に、納得してもらえるように……。隣の青ピと元春も、ことがどうなるのか固唾を飲んで見ている。ふと、当麻の目が美琴の後ろで立ち尽くしている子供に留まる。上条「あ、ほら、後ろの子も、きちんと金払って買ってんだしさ」猫撫で声を出しながら、やんわりと説得を試みる。上条「そうやって、ねぇ? 万引きみたいな、そういうことしちゃ、いけないと、思うんだけどなぁ?ね?」止まらぬ冷や汗を拭いもせずに、両手を広げてとにかく交渉に全力を注ぎ込む。上条「ね、教育的にも、ほら、あまりよろしくないしさ、ね」美琴「……」暴君にも小市民の声は一応は届いたらしく、当人は納得いかなげではあるがとりあえず許しを得られそうな雰囲気ではある。当麻の脳は生涯最速で回転していた。行ける。ここで駄目押しすれば行ける。しかしどうも好感触を得られていないような……どうすれば……。と、ここで古い記憶が当麻の脳天を貫いた。詩菜『当麻さんはあの人に似て女の子を誤解させやすいから……まあ、当麻さんの場合は逆に怒らせやすいのだけど』幼い頃、村の女の子に引っ叩かれて泣いて帰った日に母の詩菜が当麻に言った台詞である。詩菜『いい?怒られそうになったらいっぱい褒めなさい、女の子にはそれが一番だから。 やりすぎちゃ駄目よ?あの人みたいに好かれ過ぎるのは』後半はどこか遠い目をしながらも、普段からは想像の付かない彫りの深い凶悪顔だったため当麻は更に泣き叫ぶことになった。何はともあれ、今の当麻には金言である。女の子は、褒めれば良い。その単純な論がとても有難かった。今、すべきこと、それはひたすら誉めちぎるということだ。上条(しかし、何をどうやって褒めれば……)相変わらずこちらを睨み付けている彼女の機嫌を直すには。再び当麻の脳が回転を速める。中學生、女の子……。当麻の頭上に電球が瞬いた。つまりは年頃の女子な訳で、即ち女の子らしい、可愛らしいと褒めれば喜ぶに違いない!
上条「いや、その、ねぇ、うら若い女の子が~そんな、激しい、ねぇ、ことをするのは~」美琴「……」若干相手の視線が緩んだ気がする。お、行けるか?上条「ほら、君みたいな、女の子があんまり乱暴沙汰は、ねぇ、良くないかな~なんて」美琴「……」もう少し、あと少し。上条「ね、君はその、可愛いし、未来ある、か弱い女の子なんだからさ もっと自分を大事に……」時代によって、女性は細身が好まれたり色白が好まれたり、各時代によって好みは違うものの、"可憐"さが人気というのは不思議と共通している。然るに、当麻が彼女のことを『か弱い』と評したのは、その女心をくすぐろうとした狙いから出たのは理解に難くない。が、美琴「 な ん で す っ て ? 」それが良くなかった。上条「え?」美琴「あたしは……」ばちり、と一際大きな音が爆ぜた。彼女の周囲に青白い雷光が踊り跳ねる。逆鱗とは、こういうものか。龍とは、こういうものか。美琴「 弱 く な ん か な い ッ ! 」当麻の体の自由を縛ったのは、混乱でも、驚嘆でも無い。恐怖だ。圧倒的な力を視た、恐怖。美琴「滅打雷(めるぶら)ッ!!」美琴が突き出した片腕が青白く光ったかと思うと、その光が瞬時に手の先に収縮し、雷撃となって放たれる。雷神の怒れる迫撃が向かう先は、ただの……否、上条(終わった……)世界一不幸な、階級零。───
───介旅「なあ、重福」薄暗い部屋に掠れた声が投げられた。投げた先の少女は何の反応も示さず、ただ椅子の上で体育座りをしながら先程からずっと前髪をいじっている。会話の疎通が図れないと悟った初夜は一つ溜息を吐いてから、手元の書類をぺらりとめくった。介旅「理事長のお気に入りの子供らだが……面白いことが分かったぞ」少し期待を含んだ目で省帆を見やるが、特段興味を持ったようにも見えず相変わらず三寸先の指先を見詰めているばかりである。初夜は落胆を隠そうともせずに気落ちした声で続ける。介旅「例の零路鬥(レヰルガン)だが……あれは町民の出身だ まあそれは別段珍しくもない……が、」書類を読みながら淡々とした説明だが、その声が段々と喜色を帯びてきていることに省帆は気付いたようだ。先程からいじいじと髪を抓んでいた指が止まる。介旅「學園都市に来る前に、両親共に死んでいる しかも、だ」そこで言葉を切った初夜に、彼女はとうとう顔を上げる。冷たくも温い、二人の視線がかち合った。
───当麻の体を光が包み込んだ。その荒々しい雷光の中で短い人生の走馬灯を見ながら先立つ不孝の覚悟を決めたのと同時であった。「対翔(たいしょう)!」. . . .. . ..腰を横ざまから強烈にどつき飛ばされた。上条「!?」美琴「ッ!?」突然の事態に当麻は驚愕するしか無い。横縞の景色が網膜を走ったかと思うと出し抜けに青空を映し、停止した。上条「んぁ……?」間抜けな声を出して隣を見やる。鮮やかな金色の髪がさらりと持ち上がった。土御門「やれやれ……これで俺も……目ぇ付けられちまったにゃー」ずれた黒眼鏡をずいと擦り上げて土を払いながら起き上る元春。美琴の攻撃が当たる瞬間に、当麻を腰ごと抱え上げて飛びのいたのだ。土御門「かみやん……流石に無術士じゃどうにもならないにゃー」口調こそいつも通りであるが、背中から立ち上る気色は常日頃の元春のそれでは無い。下駄を脱ぎ、裸足になると真正面から美琴を見据えた。土御門「勝負にならんのは……目に見えとる」ぎり、と拳を握り込む。土御門「だから……逃げろ」そう言うやいなや、元春は一直線に美琴の方へ駈け出した。階級参と階級伍、二つの級の絶望的な壁へ土御門「うおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」突っ込んだ。土御門「対翔!」その瞬間、元春は超人的に加速する。その姿は残像となってかき消えた。美琴("速さ"に特化した肉体強化か……)階級伍として、また術士狩りとして戦闘経験を積んだ美琴だからこそ、落ち着いて考察出来ているのだろう。それ程に元春の勢いは、風を切る音となって、地から噴き出す土煙となって一人の疾風を表していた。土御門「女だからと手加減はしないぜい!」一直線に突っ込む、それしか出来ないが、それ故に速く、強い。それが元春が得意とする術の一つ、『対翔』。敵が一人ならばこれ程適した術は無い。現に、認識速度を超えたこの攻撃が避けられたことなど……土御門(無い!)突っ込む勢いそのままに膝を抱え、振り上げる。土御門「そいやぁっ!!」美琴の頭へ上段廻し蹴りをお見舞いする。これで終わった、そのはずだった。美琴「棲雷」そう呟いた瞬間、今度は美琴の姿がかき消えた。土御門(くっ……)蹴り足をそのまま振り戻すと、再び己も俊足を駆って離脱する。奴もまた、疾風と化して来やがった……!土御門(何処だ!?)高速で流れる景色の中に、必死で少女の姿を探す。この電光石火の境地に早々に割り込んで来る辺りが階級伍たる所以か。元春の額に滲んだ汗が風切り音と共に空に散る。
土御門「何処なんだよっ!」美琴「ここよ」耳元で、聞こえた。今最も聞きたくない声を。心臓を鷲掴みにされたようだった。驚愕の表情で振り向くが。美琴「遅いわ」元春の背後にぴったりと、余裕の表情で着いて来る。この超高速の世界で。美琴「はぁ、期待してたけど……階級参ってとこかしら 所詮こんなもんね」いとも簡単に足を払われ、たまらずもんどり打って転げてしまう。高速で動いていたため、その勢いがそのまま己への痛撃となって、地に叩き付けられる。土御門「ぐっ……あぁあッ!?」派手に手足を投げ出しながら跳ね転がる元春。地に弾む体にざくざくと傷が、打撲が、打ち込まれる。そして公園の砂場に突っ込んで、ようやく止まった。土御門「くっ……」何とか起き上がろうとするが、美琴「もういいや つまんない」ハンチング帽を被った雷様が、見下ろしていた。その腕にぱちぱちと火花を散らしながら。 土御門「あ……」美琴「滅打雷」青白い光が瞬いたかと思うと、その雷撃が元春の腹を打ち抜いた。土御門「がッ……!?」びくんと体を仰け反らせると、それっきりぐったりと動かなくなった。流石に手加減をしたのか、気絶程度の電撃であったのは元春にとって幸いだった。しかし、気絶とは、即ち、敗北。自身の領域で勝負した挙句の、敗北。階級を超えることは……出来なかった。
美琴「ふぅ……」手応えの無さからか、つまらなそうに溜息を吐く美琴。彼女が耳に掛かった髪を掻き上げた、その時、突然彼女の視界が薄ら暗くなった。青ピ「うおおおおおおおおおおおおあああああああああ!!!!」素早く顔を上げると、そこにはあったのは空を覆う巨体。友人の仇に激昂した青ピが既に攻めに跳んでいた。怒りに満ちた拳を、振り上げて。 青ピ「唖槌!!」棲雷を用いた動きでそれをぎりぎりで避ける美琴。勢い込んだ青ピの怒涛の腕っぷしが、砂場の地面へ叩きつけられる。その瞬間、大地が揺れ、殴った周囲の土砂が一斉に舞い散った。さながら激しい噴火の様である。美琴「!」それに軽く驚いたのは美琴である。何となく避けてはみたが、想定外の威力であることに内心ざらつく物を感じた。美琴(今度は"力"特化型か……)美琴は反撃をするでも無く、静かに構えながら佇むのみである。そして隕石が落ちたかのような大穴を砂地に空けながらも、青ピは攻撃を緩めない。青ピ「唖槌ッ!」今度はもう一方の腕を振りかぶり、こちらの出方を窺っている様子の美琴へ殴りかかる。やはり術を駆使した、渾身の一撃。喰らえば一たまりも無い……!機関車同士が衝突したかの様な、凄まじい破砕音が気を震わせた。青ピの唖槌が、間違いなく"殴っていた"。しかし、青ピ「嘘や……」美琴の『それ』が、しっかりと"受け止めて"いた。美琴「荒腕(あるかな)」ぎし、と『それ』が軋む。美琴の右腕から先に、黒々とした巨大な『腕』が生えていた。彼女の電磁力を用いた、金属操作の極致。青ピ「砂鉄で作った……腕……」棲雷で補強した腕力に、砂鉄で作った巨大な腕。砂鉄を多く含む砂場だったからこそ可能な術ではあるが、瞬時にその判断を下したのは流石というべきか。とにかく青ピの強力を持ってしても、鋼の強度を誇る鉄(くろがね)の壁は破れなかった。美琴「……あんたも終わりかぁ じゃあね」少女の指がするりと敗者へ向けられる。その決着を、確実に叩き付けるために。「やめろおおおおおおおおおおおおぉぉぉッ!!」突如、咆哮が上がった。そして、駆け出すちっぽけな影があった。もう既に公園にいた人間らは巻き込まれぬように遠くへと"避難"しているはずだ。ということは、 上条「うおおおおおおおおおおおぉぉおおッ!!」全力で疾走する当麻の先には、今まさに電撃を放たんとしている美琴の姿。美琴「……チッ」少女は面倒くさそうに、青ピに向けていた指を向かってくる当麻へ向け、閃光と共に雷を放った。そして、青ピ「がふッ……!?」青ピの腹に、その巨大な黒拳を深々と埋め込んだ。全身を貫く鈍い衝撃に、青ピは膝を付き、その意識を失った。終わり。一瞬で当麻と青ピを片付けた彼女だったが、物足りなそうに目を臥せる。美琴「あーあ……弱い奴ばっかり」そう言って、溜息を吐こうと肺に息をためた瞬間、上条「おおおおおおおおおぉぉぉッ!!」ちっぽけな影が、勢いを失わずに走って来た。美琴「ッ……!? 嘘……」上条「歯ぁ……」驚愕。完全に気を呑まれた美琴は、動けない。これまでの勝率の高さが故に、予想外の状況には心が追い付いてくれない。当麻がその右手を……とっさに掲げた右手を、振りかぶる。上条「 食 い し ば れ ッ !!!」美琴の頬に、渾身の拳を 叩き込んだ。
───何が起こったのか、分からなかった。いくら俺でも、親友二人をあんな……あんな嬲り者にされて、黙ってられる程出来た人間じゃない。ただ、駆け出した。雄叫びを上げて駆け出した。原始人なんてもんじゃない。ただの剥き出しの山猿だ。村から出て来た俺にはお似合いじゃないか。"零路鬥の美琴"の指がこちらへ向くのが見えた。猟銃で狙われた哀れな山猿。それが今の俺だった。そのはずだ。あいつの手からほとばしった光が、雷が、俺へ突進してきた。だが、その時俺の、山猿の、ちっぽけな右手が動いた。野生の本能って奴か?牙を向いてあんぐり口を開けた青白い雷獣に、それを『圧し潰す』ように右手が突き出た。敵う訳無いよな? 雷様に、すっぽんでも無いただの一匹の猿風情が、手の平一個でどうにかしようなんてよ。だが、その瞬間だった。右手に、指に、掌に、腕に、肩に、凄まじい"反動"が来た。反動──俺の右手が、光を"押し潰して"いた。手に触れた部分から、その怒涛の光は、淡い粒となって粉雪のように散った。打ち消す。打ち消す。打ち潰す。びきびきと激しく震える右手を、歯を食い縛って押し留めながら、必死で前へ、前へ、『掘り進ん』だ。行け。行け。行け。
だしぬけに、病室で月明かりに照らされた、刀夜の顔が目の前に浮かんだ。雷光が舞い散る修羅場の中で、幻想の父がゆっくりと口を開く。「その目なら、大丈夫だよ お前は」言ってくれた。あの日、病室で、父さんが、言ってくれた。「もう行け」行け。行け。行ける。行くんだ。俺が……!上条「おおおおおおおおおぉぉぉッ!!」網膜にけたたましく光が瞬く。腕はしっちゃかめっちゃかに打ち震える。奥歯が武者震いに任せてがちがちと喧しい。が、ひたすらに、進む。駆ける足を止めない。心を止めない。. . . . .. . . .俺はあんたの息子だ……ッ! と、突然右手の反動が一気に消えた。眼前の景色が色の豊かなそれへと切り替わる。. . . .. .ついに突貫し終えた……!しかし目の前で展開していたのは、親友の青ピが膝を付く、その姿だった。腹に、馬鹿馬鹿しいぐらい巨大な拳を食らいながら。その腕を繰る主から、目を離さない。放さない。逃がさない。許さない……!上条「歯ぁ……」こちらを向くその表情……目をまん丸に広げた、可愛らしい女子中學生、だ。が、ためらわない。腕から生えてる無骨なそれは、似合わない。だから、目を覚まさせてやる。『これ』で……ッ!上条「 食 い し ば れ ッ !!!」握り込んだ拳を、駆け出す勢いそのままに乗せて淡く桃に染まった可憐なほっぺたへ一切の手加減無しに肉に骨に歯に行け行け行け行け行け行けご不快極まる、しゃ生々しい感触と共にり 叩き込んだ。───
───何が起こったのか、分からなかった。私の戦いは、いつも通り、いつも通りだった。いや、いつもよりも"ちょろい"喧嘩のはずだった。何よ、ちょっとばかし飲み物を頂戴しただけじゃない。あたしが何したって、周りの大人も、警邏も、何にも言わない。唯一黒子だけは口うるさいけど……。だから、とやかく言われる筋合いはない。いつも通り、自販機を蹴り飛ばして、缶を獲って、それで終わり、だったはず。なのにこいつは……こいつが、いちゃもん付けてきた。そうよ、こいつが絡んで来たんじゃない。先に。だから、ちょいとばかしレヰルガンで脅してやった。大いに痛がって泣いて帰れば、それで良かった。良かったのに。あいつの友達風情の奴が邪魔して来た。挙句、歯向かってきた。だから、潰した。あたしは強いから。他の奴は弱いから。あたしは悪くない。強いから。強い。あたしは強い……のに、強いはずなのに。. . .. . .. . . .何でこいつは私に向って走って来てるの。私は撃った。確かに、滅打雷を撃ってやった。こいつに。なのに、どうしてよ。 こいつは拳を振りかぶってる。私は動けない。嘘、こんなの、現実じゃない。あと五尺拳が飛んでくる。あと四尺こいつが何か叫んでる。何、聞こえない。聞きたくない。あと三尺聞こえた。歯ぁ食いしばれ?何それ、何言ってんの。あと二尺何言ってんのよ、あたしは御坂美琴よ?零路鬥の美琴よ?あと一尺階級伍の神術士で誰も逆らえなくて街の喧嘩じゃ負けたこと無くていっぱい訓練して鍛練して強さをひたすら求めて零路鬥を身に付けて色んな術も練習してたくさん使えるようになって実戦で経験を積んでどんどん強くなって大人だろうがじゃっぢめんとだろうがあんちすきるだろうがどんな奴らだろうがあたしが全部全部ぜんぶ邪魔する奴は全部全部ぶっ飛ばしてやるって絶対もう負けないんだ絶対二度と負けないんだあたしは強くなきゃいけないんだあたしはあたしはあたしは強あと……ほっぺたに、なにかがさわった。…………───
───介旅「何が起こったと思う?」綺麗で無い眼鏡レンズ越しに、初夜の目が揺れ、嗤う。誰が見ても"いやらしい"笑いなのだが、余程省帆の興味を引いたことが嬉しいらしい。興味を持たれたのはお前自身じゃなくて話題の方だ、と可哀想なことを言うのは無粋だ。重福「………」その嬉々とした問いに彼女は沈黙で答える。冷えた目線だけ投げ付けて、それっきり無表情を保つのみだ。そんな様子でも初夜の機嫌はうなぎ昇りを維持しているようで、やや絡まりがちな舌で弁を振い続ける。介旅「この、御坂美琴の両親だが……実家のある武蔵国で死亡……寿命でも、病死でも、」事故でも無い、そう言って唇を舐めてみせる。介旅「さてさて、じゃあ自殺か? それも違う」と、そこで一旦言葉を切り、膝上で指を組むとゆっくりと背筋を伸ばし、目を細めて愛しの省帆を眺める。そのやや不躾かつ不可解な視線に纏われて、彼女は眉間に皺を寄せた。そしてとうとうその口が物憂げに開かれる。重福「……何が、あったの……」溜息の様な台詞を漏らし捨てる。苛立った様子を隠そうともしていない。しかし鈍いのか慣れているのか、初夜は全く怯むことも無く、言い放った。介旅「殺されたんだよ」重福「………」特に、驚いた様子も無い。學園都市の"裏"の世界に身を置いているせいだろうか。介旅「……誰に、だろ? ああ、殺した奴の名前はちょっと良く分からないんだよなぁ」重福「……!」流石にそれには反応を示した。下手人の、名前が分からない。逃亡して捕まっていない、ということだろうか。 介旅「くくく……多分、考えていることとは……違う」ぴん、と指を立てて勿体つける初夜。もはやそれは放っておくことにしたのか、やや不機嫌な顔で目を落とす省帆。介旅「武蔵国……って言っただろ? 何か思い出さないか?……と言っても、お互い幼かったしなぁ」何か言外に言いたげなものを含みつつ、相変わらず余裕の表情を崩さない。一方の彼女は必要な情報以外は遮断したようで、床に落とした目を逸らそうともしなかった。介旅「生米事件」ぴく、と省帆の頭が揺れた。. . .介旅「武蔵野国で、大名行列に割り込んだ英国人商人が斬り殺された事件……と、いうのが表向きだが」初夜は身を乗り出して言葉を紡ぐ。.. . . .. ..介旅「実は、その時斬り殺されたのは一人だけじゃないんだよ」省帆が顔を上げる。その目が、しっかりと、初夜のにやけた視線とかち合う。. . .介旅「ある幼子が、英国人が乗る馬に釣られて一緒に割り込んじまった」初夜の笑い気味に開いた唇は、既に乾いていた。何故、美琴の両親は殺された。何故、下手人の名前が出ない。何故。 .. . .. ..介旅「それを庇った親たちは、侍共によってたかって殺されたんだ」───
───上条「はぁーっ……はぁーっ……」大仰に息を吸い吐きしながら、当麻は半ば茫然と現状を見ていた。確かな感触があった。自分は、この、女子中學生を、美琴「………」数間吹っ飛び、砂場に大の字で倒れ伏すこの少女を、零路鬥を、上条「倒した……のか?」 そこで右手の拳がひりついていることに気付く。余程の力で殴ったのだろう。皮が少し向けていた。ともすれば、拳を叩き込まれた方は無事では済まないはずだ。上条「………」殴り飛ばした少女をやや心配そうな面持ちで眺める。上条(死んでない……よな?)..その不安を、気遣いを、期待を剥ぎ取る様に、美琴の指がぴくりと動いた。
美琴「………っ」ぱちり、と目が開く。眺める青空が信じられない、といった表情だ。だからこそ、雷を落としたがっているに違いない。美琴「……あたしは…………あたしはぁ………」腫れ上がった左頬を触れることもせず、ただ、怒りに燃えた目を、輝かせる。と、そばに落ちているハンチング帽に気付いたらしい。ふっ、と自嘲気味に一旦鼻を鳴らすと、帽子を拾い上げ、ゆっくりと頭に乗せた。それは、彼女の中で"仕切り直した"示しだ。示したのは、覚悟。美琴「強くなきゃ……いけないんだぁぁぁぁ……ッ!」上条「………」一度は、天に逆らった。それが吉と出るか凶と出るか。二度目の嵐の雷鳴が、段々と、近付いて来る。ちなみに当麻は御神籤の類では、大凶しか出したことが無い。
介旅「生米事件、この日本國にとってこれ程"重大"な"つまらない"事件も無いだろう?」熱の峠は越えたのか、やや落ち着いた声を絞る初夜と、とりあえずそれを黙って聞く省帆。介旅「英国からの、報復……そしてそれを切っ掛けに……幕府による鎖国の崩壊……」くくっ、と乾いた笑いが零れた。介旅「斬り捨て御免したと思ったら艦隊が"御免下さい"とやって来たんだからなぁ……くくっ」ざまあ無い國だよ全く、と言い零してから、いつの間にかずり落ちていたらしい眼鏡を持ち上げてみせた。聞き役の彼女は相変わらずの無表情を保ったまま、じっと虚空を見つめていた。その表情から内心は読み取れない。介旅「御坂美琴が強さにこだわる理由……そして、あの……くくっ、異国人ぶった格好……」重福「………」強さにこだわることが、彼女の歓びであり、懺悔。そして、異国が彼女にとって……己の親を嬲った武家社会を粉々に踏み砕いた、強さの象徴だったのだ。.. ..親を殺させた悪あがきだ、と初夜は言い放ち、それっきり口を噤んだ。部屋に沈黙が降りる。初夜は相変わらずにやけ面ではあるが、指を絡ませながらせわしなく唇を舐める風情は何やら底知れない。先程から一言も発さず、微動だにしていない省帆は見た目こそ大人しい女児だが、瞳の奥は昏く、深く、やはり底が見えない。"裏"だと、二人を知る者は言う。何故年端の行かぬ彼らが裏の人間たりているのか……それはおいおい明らかになって行くだろう。
と、だしぬけに"じー"と低い呼び音が部屋の空気を震わせた。それまで彫刻の様だった省帆がのそりと立ち上がると、音の発信源である電信機箱の傍へ駆け寄り、箱が吐き出した紙切れを手に取る。じじ……と鳴きながら次々と紙が流れてくる。それには点と線の羅列しか無いが、省帆は黙々とそれを読み走る。そして紙に目を落としたまま、ぽつり、と零した。重福「零路鬥と…………………………『幻想殺し』が」學園都市でも。動いた。歴史が。事件が。重福「衝突」───
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