御崎市。 首都圏近郊に位置する、県内でもそれなりの大きさを誇る市。 市の中央を真南川が流れ、そこから東半分が市街地、西半分が住宅街というつくりをしている。 そして―――とある"徒"が、"都喰らい"と言う秘法を進めていた場所である。 ここに、一人の少年がいる。 彼は、当然のように自分の『日常』を暮らしていた。 いや、暮らしている、と思っていた。―――それは、すでに無くなっているとも知らずに……
七月十八日 ここは、御崎市にある御崎高校。そこの生徒の一人、坂井悠二は悩んでいた。 夏休みでの、金の使い道を、である。 長い休み、親しい友人とどこかに出掛けたくもあるが、買いたいゲームやマンガもいくつかある。悠二(ゴールデンウィークのときは池達と遊び行っちゃったんだよな……) 悠二がぼけー、と考えていると、後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。池「おーい坂井、ちょっとこっち来てくれ」 悠二を呼んでいるのは、悠二と中学時代からの友人、池速人だ。 通称、『メガネマン』。クラスの誰からも信頼されている、悠二とは親友と言ってもよい間柄である。 そんなメガネマンの周りには、クラスメイトの佐藤啓作と田中栄太、緒方真竹に吉田一美がいる。
悠二「夏休みのことか?」池「勘がいいな。みんなでどこか遊び行こうって話だよ。坂井も来るだろ?」 佐藤「やっぱり夏って言ったら海だろ、海!!」田中「そーだよな!! 水着のねーちゃんとかいっぱい……ぐはっ!?」緒方「田中変なこと考えすぎよ!!」田中「大丈夫だよ、オガちゃんには期待してないから。あっ、吉田さんは楽しみかな」吉田「そ、そんなぁ……」悠二「ははは……」キーンコーンカーンコーン佐藤「やべ、授業始まるぞ」池「じゃあまた続きは放課後だね」悠二「あぁ、そうだな」
―――
放課後 話し合いの結果、結局海へ行くことになった。佐藤と田中の強い希望が通ったように見えるが、実は一番行きたがっていたのはメガネマンかもしれない。悠二「あーぁ、結局またゲームもマンガもお預けかぁ……」 帰り道。悠二はそう呟いた。どうするか決めようとは思っていたが、あっさり決まったことに、 少し不満があるようだ。悠二(ま、海も楽しみだけどね) とすぐに前向きになった悠二は、海へ行くメンバーを思い出してみる。一人はメガネマン。 佐藤と田中は高校に入ってからの悪友だ。中学時代は、荒れていたと聞くが、今はそんな面影は一切ない。 緒方真竹も、そんな二人と同じ中学らしい。「可愛い」というより「格好いい」顔立ちと、文字通り竹を割ったようなカラッとした性格で、男女分け隔てなく好かれている。 最後の一人。吉田一美。控えめな印象ながら、よく見ると可愛い容姿の少女。プールの授業のときは、意外なスタイルの良さを披露(本人の意思ではなく)していた。悠二(吉田さんの水着姿か……) 一瞬想像し、しかしすぐに頭から取っ払った。少し顔が赤くなっているのは夕暮れのせいにする。
そんなことを考えていた悠二は、気付いていなかった。 彼のすぐ後ろを歩く、細身のクラシックなスーツを着た、物静かそうな老紳士が悠二のことをじっと見ていることに。??(あれが、"零時迷子"の"ミステス"……) 老紳士の名前は、"屍拾い"ラミー。 ―――彼は、坂井悠二の運命を知っている。 しかし、告げる気はなかった。ラミー(さて、"狩人"が残した"存在の力"も回収したし、零時迷子も見れた。そろそろ向かうとするか) そして、老紳士は一瞬で消える。悠二の目に少したりとも入ることなく。 彼の、次の目的地は、"学園都市"。そこにそびえる"窓の無いビル"。
考えごとをしながら歩くと、目的地に速く着く気がする。 悠二は、自らの家のドアを開ける。悠二「ただいま、母さん」千種「おかえりなさい、悠ちゃん」 こうして、彼の『日常』は、まだ続いていく。 しかし、坂井悠二は、すでに『非日常』の世界に足を踏み入れていることを、まだ知らない。
―――??「あぁ、もう!! また逃げられた!! くそ、逃げ足だけは速いんだから!!」??「おいおい、まぁ奴が一枚上手だっただけだろう? 我が麗しの酒盃(ゴブレット)、マージョリー・ドー。」??「うるさい、バカマルコ。こっちはただでさえあのクソバカな土御門の野郎に新しい"付箋"くれ、なんて言われて頭きてるのに、さらに"徒"まで逃がすなんて……」??「……と、文句を言いながらも、"学園都市"へ行くつもりなんだよなぁ、我が優しき姫君マー……げふっ!!」??「ただ前からあそこには行ってみたい、って思ってただけよ、バカマルコ」 運命は廻る。 その動きを止められる者はいない。 第一.五章 終
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